【課題】濃縮水用定流量弁の流量検知に特化した流量計を追加する必要なく、濃縮水用定流量弁の異常を検知すること、延いては、RO膜やポンプを延命することが可能となる逆浸透膜分離装置を提供する
【解決手段】逆浸透膜分離装置1は、濃縮水ラインL3に設けられる定流量弁5と、排水ラインL5に設けられ、装置外へ排出する排水の流量を調整可能な排水用開度調整弁8と、排水用開度調整弁8の開度を制御する排水用開度調整弁制御部32と、定流量弁5の異常を検知する異常検知部34とを備える。ポンプ制御部33が加圧ポンプ2を停止させ、排水用開度調整弁制御部32が排水用開度調整弁8の開度を固定し、定流量弁5の一次側の第1圧力が所定圧力以上ある条件で、異常検知部34が、排水の流量である検出流量値に基づいて、定流量弁5の異常を検知する。
前記異常検知部は、前記定流量弁に設定された設定流量値と、前記検出流量値との差分が所定範囲以上にある場合に前記異常を検知する、請求項1又は2に記載の逆浸透膜分離装置。
前記異常検知部は、前記排水用開度調整弁の開度と、前記第2圧力とに基づいて、前記流量検出部の流量の想定値を算出し、前記検出流量値と前記想定値との比較結果に基づいて、前記流量検出部の異常を検知する、請求項5に記載の逆浸透膜分離装置。
前記異常検知部が前記異常を検知すると共に、前記検出流量値が所定値以下の場合に、前記排水用開度調整弁制御部は、前記排水用開度調整弁の開度を高くする、 請求項1〜6のいずれか1項に記載の逆浸透膜分離装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.第1実施形態>
<1.1 逆浸透膜分離装置の構成>
本発明の第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1の全体構成図である。本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1は、原水ポンプ12と、原水側インバータ13と、原水圧力調整手段としての給水用開度調整弁14と、加圧ポンプ2と、加圧側インバータ3と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール4と、定流量手段としての定流量弁5と、逆止弁6と、排水流量調整手段としての排水用開度調整弁8(比例制御弁)と、透過水流量調整手段としての透過水流量調整弁15と、制御部30と、を備える。また、逆浸透膜分離装置1は、定流量差圧検出手段としての一次側圧力センサPS1と、定流量差圧検出手段としての二次側圧力センサPS2と、吐出圧力センサPS3と、第1流量検出手段としての第1流量センサFM1と、第2流量検出手段としての第2流量センサFM2と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0019】
また、逆浸透膜分離装置1は、原水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、排水ラインL5と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
原水ラインL1は、原水W1をRO膜モジュール4に供給するラインである。原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。原水ラインL1の下流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。原水ラインL1には、上流側から下流側に向けて順に、原水ポンプ12、給水用開度調整弁14、二次側圧力センサPS2、合流部J2、加圧ポンプ2、吐出圧力センサPS3、RO膜モジュール4が設けられている。
【0021】
なお、原水ラインL1を流通する原水W1には、原水W1の供給源(不図示)から直接供給される原水に限らず、例えば、原水W1を濾過処理装置(除鉄除マンガン装置、活性炭濾過装置等)、硬水軟化装置等の前処理装置により前処理された原水も含まれる。
【0022】
原水ポンプ12は、原水ラインL1を流通する原水W1を吸入し、加圧ポンプ2へ向けて圧送(吐出)する装置である。原水ポンプ12には、原水側インバータ13から周波数が変換された駆動電力が供給される。原水ポンプ12は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0023】
原水側インバータ13は、原水ポンプ12に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。原水側インバータ13は、制御部30と電気的に接続されている。原水側インバータ13には、制御部30から指令信号が入力される。原水側インバータ13は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を原水ポンプ12に出力する。
【0024】
本実施形態においては、制御部30は、原水ポンプ12が原水W1を所定の一定圧力値で吐出するように、原水側インバータ13を制御する。原水ポンプ12により付与される原水W1の前記一定圧力値は、原水ラインL1を流通する原水W1を加圧ポンプ2に供給可能な圧力値に設定される。これにより、給水用開度調整弁14よりも上流側の原水ラインL1において、原水W1の原水圧力は、一定圧力値となる。本実施形態においては、原水W1の原水圧力を、例えば、0.2〜0.5MPaの間の一定圧力値に設定している。
【0025】
なお、本実施形態においては、原水ラインL1に原水ポンプ12を設けたが、これに制限されない。供給源から供給される原水W1の原水圧力が十分に確保されていれば、原水ポンプ12を設けなくてもよい。例えば、原水ラインL1の上流側において、水頭圧差を利用することで、原水W1の原水圧力を確保するように構成してもよい。
【0026】
給水用開度調整弁14は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1に設けられる。給水用開度調整弁14は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力を調整する弁である。ここで、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1は、合流部J2を介して、循環水ラインL4に接続されている。循環水ラインL4は、接続部J1を介して、濃縮水ラインL3に接続されている。濃縮水ラインL3の定流量弁5よりも下流側の部分において、接続部J1と定流量弁5の二次側とが接続されている。つまり、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力は、定流量弁5の二次側の圧力と同じであると看做すことができる。
【0027】
給水用開度調整弁14は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の原水圧力を調整することによって、定流量弁5(後述)の二次側の圧力を所定の設定圧力値に調整して、定流量弁5の一次側の圧力から二次側の圧力を減じた差圧(以下「定流量弁差圧」ともいう)を調整する。なお、定流量弁5の二次側の圧力は、給水用開度調整弁14と合流部J2との間に配置される二次側圧力センサPS2(後述)により、検出二次側圧力値として検出される。
【0028】
給水用開度調整弁14は、制御部30と電気的に接続されている。給水用開度調整弁14の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を給水用開度調整弁14に送信して、流路断面積を調整することにより、流動抵抗(すなわち、圧力損失)を徐々に変化させることができる。この調整により、給水用開度調整弁14は、合流部J2よりも上流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力を調整する。
【0029】
給水用開度調整弁14の上流側を流通する原水W1は、前述の通り、所定の一定圧力値の原水圧力が確保されている。そのため、給水用開度調整弁14により調整される給水用開度調整弁14よりも下流側の原水圧力は、後述する制御部30により、原水ポンプ12により吐出される原水圧力の所定の一定圧力値以下となるように制御される。
【0030】
二次側圧力センサ(以下では、「第2圧力検出部」とも呼称する)PS2は、原水ラインL1における給水用開度調整弁14と合流部J2との間に配置されている。二次側圧力センサPS2は、元来は、給水用開度調整弁14と加圧ポンプ2との間の圧力を検出する機器であり、更には、接続部J1と合流部J2との圧力が等しいことから、定流量弁5の二次側の圧力を検出二次側圧力値として検出する機器である。前述したように、合流部J2よりも上流側であって給水用開度調整弁14の下流側の原水ラインL1を流通する原水W1の圧力は、定流量弁5の二次側の圧力と同じである。そのため、二次側圧力センサPS2は、給水用開度調整弁14と合流部J2との間において原水W1の圧力を検出することで、定流量弁5の二次側の圧力を検出二次側圧力値として検出することができる。二次側圧力センサPS2は、制御部30と電気的に接続されている。二次側圧力センサPS2で検出された検出二次側圧力値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0031】
なお、本実施形態においては、二次側圧力センサPS2による、定流量弁5の二次側の圧力の検出位置を、給水用開度調整弁14と合流部J2との間の位置としたが、これに制限されない。二次側圧力センサPS2は、定流量弁5の二次側の圧力が検出できれば、この位置に制限されない。定流量弁5の二次側の圧力は、原水ラインL1における給水用開度調整弁14と加圧ポンプ2との間を流通する原水W1の圧力や、濃縮水ラインL3における定流量弁5と接続部J1との間を流通する濃縮水W3の圧力や、循環水ラインL4を流通する濃縮水W3の一部W31の圧力や、排水ラインL5における接続部J1と排水用開度調整弁8との間を流通する濃縮水W3の残部W32の圧力と、同じである。そのため、二次側圧力センサPS2の検出位置は、定流量弁5の二次側の圧力を検出できる位置であれば、例えば、濃縮水ラインL3における定流量弁5と接続部J1との間の位置や、循環水ラインL4における接続部J1と合流部J2との間の位置等でもよい。
【0032】
加圧ポンプ2は、合流部J2よりも下流側の原水ラインL1に設けられる。加圧ポンプ2は、合流部J2よりも下流側の原水ラインL1において、原水ラインL1を流通する原水W1を吸入し、RO膜モジュール4へ向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ2には、加圧側インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ2は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0033】
加圧側インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。加圧側インバータ3は、制御部30と電気的に接続されている。加圧側インバータ3には、制御部30から指令信号が入力される。加圧側インバータ3は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0034】
吐出圧力センサPS3は、加圧ポンプ2の吐出圧力(運転圧力)を検出吐出圧力値として検出する機器である。吐出圧力センサPS3は、加圧ポンプ2の吐出側近傍に配置されている。本実施形態では、加圧ポンプ2から吐出された直後の原水W1の圧力を、加圧ポンプ2の吐出圧力とする。吐出圧力センサPS3は、制御部30と電気的に接続されている。吐出圧力センサPS3で検出された原水W1の検出吐出圧力値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0035】
RO膜モジュール4は、加圧ポンプ2から吐出された原水W1を、溶存塩類が除去された透過水W2と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール4は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール4は、これらRO膜エレメントにより原水W1を膜分離処理し、透過水W2及び濃縮水W3を製造する。
【0036】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール4で分離された透過水W2を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール4の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、需要箇所の装置等に接続されている。透過水ラインL2には、透過水流量調整弁15、第1流量センサFM1が設けられている。
【0037】
透過水流量調整弁15は、RO膜モジュール4で分離された透過水W2の流量を調整可能な弁である。透過水流量調整弁15は、透過水ラインL2における第1流量センサFM1よりも上流側に配置されている。透過水流量調整弁15は、制御部30と電気的に接続されている。透過水流量調整弁15の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を透過水流量調整弁15に送信して、弁開度を制御することにより、透過水W2の流量を調整することができる。
【0038】
第1流量センサFM1は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を第1検出流量値として検出する機器である。第1流量センサFM1は、透過水ラインL2に接続されている。第1流量センサFM1は、制御部30と電気的に接続されている。第1流量センサFM1で検出された透過水W2の第1検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第1流量センサFM1として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0039】
濃縮水ラインL3は、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3を送出するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J1において、循環水ラインL4及び排水ラインL5に分岐している。
【0040】
濃縮水ラインL3には、上流側から下流側に向けて順に、一次側圧力センサPS1、定流量弁5、接続部J1が設けられている。
一次側圧力センサ(以下では、これを「第1圧力検出部」とも呼称する)PS1は、定流量弁5の一次側の圧力を検出一次側圧力値として検出する機器である。一次側圧力センサPS1は、濃縮水ラインL3におけるRO膜モジュール4と定流量弁5との間に配置されている。一次側圧力センサPS1は、制御部30と電気的に接続されている。一次側圧力センサPS1で検出された原水W1の検出一次側圧力値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0041】
定流量弁5は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の流量を所定の一定流量値に保持するように調整する機器である。定流量弁5において保持される一定流量値は、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調整誤差を有するものを含む。定流量弁5は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁5は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0042】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3から分岐するラインであって、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3の一部W31を、原水ラインL1におけるRO膜モジュール4及び加圧ポンプ2よりも上流側の合流部J2に返送するラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J1において、濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、合流部J2において、原水ラインL1に接続されている。循環水ラインL4には、逆止弁6が設けられている。
【0043】
排水ラインL5は、接続部J1において濃縮水ラインL3から分岐され、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3の残部W32を装置外(系外)に排出するラインである。排水ラインL5には、第2流量センサFM2、排水流量調整手段としての排水用開度調整弁8が設けられている。
【0044】
排水用開度調整弁8は、排水ラインL5から装置外へ排出する濃縮水W3の残部W32の排水流量を調整可能な弁である。排水用開度調整弁8は、排水ラインL5における第2流量センサFM2よりも上流側に配置されている。排水用開度調整弁8は、制御部30と電気的に接続されている。排水用開度調整弁8の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を排水用開度調整弁8に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮水W3の残部W32の排水流量を調整することができる。
排水用開度調整弁8における制御部30による制御の詳細は後述する。
【0045】
第2流量センサFM2は、排水ラインL5を流通する濃縮水W3の残部W32の排水流量を第2検出流量値として検出する機器である。第2流量センサFM2は、制御部30と電気的に接続されている。第2流量センサFM2で検出された濃縮水W3の残部W32の第2検出流量値は、制御部30へパルス信号として送信される。第2流量センサFM2として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。
【0046】
<1.2 制御部の機能ブロック>
制御部30は、CPU、ROM、RAM、CMOSメモリ等を有し、これらはバスを介して相互に通信可能に構成される、当業者にとって公知のものである。
【0047】
CPUは逆浸透膜分離装置1を全体的に制御するプロセッサである。該CPUは、ROMに格納された各種プログラムを、バスを介して読み出し、該各種プログラムに従って逆浸透膜分離装置1全体を制御することで、
図2の機能ブロック図に示すように、制御部30が、給水用開度調整弁制御部31、排水用開度調整弁制御部32、ポンプ制御部33、異常検知部34、警報発報部35の機能を実現するように構成される。RAMには一時的な計算データや表示データ等の各種データが格納される。CMOSメモリは図示しないバッテリでバックアップされ、逆浸透膜分離装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される不揮発性メモリとして構成される。
【0048】
給水用開度調整弁制御部31は、給水用開度調整弁14の開度を制御する。
排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を制御する。また、後述の異常検知部34が異常を検知すると共に、第2流量センサFM2が検出する濃縮水W3の残部W32の排水流量値(これを、以降では「検出流量値」とも呼称する)が所定値以下の場合に、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を高くしてもよい。
【0049】
ポンプ制御部33は、加圧ポンプ2の動作を制御する。
異常検知部34は、ポンプ制御部33が加圧ポンプ2を停止させ、排水用開度調整弁制御部32が排水用開度調整弁8の開度を固定し、定流量弁5の一次側の圧力である第1圧力が所定圧力以上ある条件で、検出流量値に基づいて、定流量弁5の異常を検知する。
また、異常検知部34は、定流量弁5に設定された設定流量値と、検出流量値との差分が所定範囲以上にある場合に、定流量弁5の異常を検知してもよい。
また、異常検知部34は、上記の第1圧力が所定値となるように、給水用開度調整弁制御部31が給水用開度調整弁14の開度を調整した際、第2流量センサFM2が検出する濃縮水W3の残部W32の排水流量値に基づいて、定流量弁5の異常を検知してもよい。
また、異常検知部34は、排水用開度調整弁8の開度と、給水用開度調整弁14の下流側での原水の圧力である第2圧力とに基づいて、第2流量センサFM2の流量の想定値を算出し、検出流量値と想定値との比較結果に基づいて、第2流量センサFM2の異常を検知してもよい。
警報発報部35は、異常検知部34が異常を検知した際に、警報を発する。
【0050】
<1.3 第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置の制御方法>
図3のフローチャートは、逆浸透膜分離装置1の制御方法を示す。
【0051】
ステップS1において、ポンプ制御部33が、加圧ポンプ2の動作を停止する。
ステップS2において、排水用開度調整弁制御部32が、排水用開度調整弁8の開度を固定する。とりわけ、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を全開とすることが好ましい。
【0052】
ステップS3において、給水用開度調整弁制御部31が、給水用開度調整弁14の開度を調整する。具体的には、給水用開度調整弁制御部31は、定流量弁5における差圧が一定値となるように、すなわち、定流量弁5の一次側の圧力である第1圧力が所定値となるように、給水用開度調整弁14の開度を調整する。ここで、定流量弁5における差圧としては、例えば、0.1Mpa前後の圧力とすることが可能である。
これらのステップS1〜S3により、定流量弁5を流れる全水量を、第2流量センサFM2が検知することが可能となる。
【0053】
ステップS4において、定流量弁5に設定された設定流量値と、第2流量センサFM2が検出する検出流量値とがほぼ等しく、設定流量値と検出流量値との差分が所定範囲以下にある場合(S4:YES)には、処理は終了する。一方で、設定流量値と検出流量値との差分が所定範囲を超える場合(S4:NO)には、処理はステップS5に移行する。ここで「所定範囲」とは、例えば、検出流量値の0.1倍と定義することが可能である。すなわち、「設定流量値と検出流量値との差分が所定範囲以下にある」とは、設定流量値が検出流量値の0.9倍以上1,1倍以下であると定義することが可能である。
【0054】
ステップS5において、異常検知部34が、ステップS4における比較結果に基づき、異常を検知する。
【0055】
ステップS6において、警報発報部35が、警報を発報する。
【0056】
ステップS7において、逆浸透膜分離装置1は、バックアップ運転を実施する。具体的には、正常運転時の過去のデータ、すなわち、二次側圧力センサPS2の検出値と排水用開度調整弁8の開度と定流量弁5における流量と回収率との関係性、及び、現時点における二次側圧力センサPS2の検出値に基づいて、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を調整し、処理を終了する。
【0057】
なお、上記のステップS1〜S7を実行する前に、異常検知部34は、排水用開度調整弁8の開度と、給水用開度調整弁14の下流側での原水の圧力である第2圧力とに基づいて、第2流量センサFM2の流量の想定値を算出し、検出流量値と想定値との比較結果に基づいて、第2流量センサFM2の異常を検知すると、なおよい。
【0058】
また、上記のステップS7において、定流量弁5の膜詰まり等により、検出流量値が所定値以下となった場合には、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の調整として、開度を高くすることにより、回収率を下げて、循環比低下に伴う膜詰まりを暫定的に抑制してもよい。
【0059】
<1.4 第1実施形態が奏する効果>
上述した本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1においては、ポンプ制御部33が加圧ポンプ2を停止させ、排水用開度調整弁制御部32が排水用開度調整弁8の開度を固定し、定流量弁5の一次側の圧力である第1圧力が所定圧力以上ある条件で、第2流量センサFM2が検出する排水の流量値に基づいて、定流量弁5の異常を検知する。
このため、定流量弁5の流量検知に特化した流量計を追加する必要なく、定流量弁5の異常を検知することが可能となる。
【0060】
また、逆浸透膜分離装置1は、異常検知部34が異常を検知した際に、警報を発する警報発報部35を更に備えてもよい。
このため、異常が発生したことを、警報により認識することが可能となる。
【0061】
また、異常検知部34は、定流量弁5に設定された設定流量値と、検出流量値との差分が所定範囲以上にある場合に異常を検知してもよい。
このため、定流量弁又は流量計のいずれで異常が発生しても、異常を検知することが可能となる。
【0062】
また、異常検知部34は、定流量弁5の一次側の圧力である第1圧力が所定値となるように、給水用開度調整弁制御部31が給水用開度調整弁14の開度を調整した際、検出流量値に基づいて、定流量弁5の異常を検知してもよい。
このため、第1圧力と、給水用開度調整弁14の下流側での原水の第2圧力との差圧が一定値となるように、給水用開度調整弁14の開度を調整した際、誤差が発生することがあるが、この誤差の影響を低減することが可能となる。
【0063】
また、異常検知部34は、排水用開度調整弁8の開度と、上記の第2圧力とに基づいて 、第2流量センサFM2の流量の想定値を算出し、検出流量値と想定値との比較結果に基づいて、第2流量センサFM2の異常を検知してもよい。
本発明においては、流量検出部の検出値を用いて、定流量弁の異常を検知することが可能であるが、流量検出部が故障していた場合、このような検知が不可能となる。この点、請求項6に記載の方法により、予め流量検出部の異常を検知することが可能となる。
【0064】
また、異常検知部34が異常を検知すると共に、検出流量値が所定値以下の場合に、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を高くしてもよい。
異常検知部が異常を検知した際に、バックアップ運転として、第2圧力に基づいて排水用開度調整弁の開度を高くすること、又は処理水の流量を低くすることにより、非常時に回収率を下げることが可能となる。
【0065】
<2.第2実施形態>
<2.1 逆浸透膜分離装置の構成>
本発明の第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aについて、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1と同一の構成要素については、同一の符号を用いて示し、その機能の説明は省略する。
【0066】
逆浸透膜分離装置1Aは、逆浸透膜分離装置1が有する構成要素に加えて、校正用に用いられる第2定流量弁5Aと、第1流路切換弁16と第2流路切換弁17とを、更に備える。
【0067】
第2定流量弁5Aは、濃縮水ラインL3に、定流量弁5と並列して設けられ、後述の方法により、定流量弁5に異常が発生しているか否か判断する際の校正に用いられる。
【0068】
第1流路切換弁16及び第2流路切換弁17は、RO膜モジュール4で分離された濃縮水W3を、定流量弁5側、又は、第2定流量弁5A側に切り換え可能な弁である。第1流路切換弁16及び第2流路切換弁17は、例えば、電動式又は電磁式の三方弁により構成される。第1流路切換弁16及び第2流路切換弁17は、制御部30と電気的に接続されている。第1流路切換弁16及び第2流路切換弁17における流路の切り換えは、制御部30から送信される流路切換信号により制御される。
【0069】
第2実施形態において、異常検知部34は、濃縮水が定流量弁5を経由した際の第2流量センサFM2の検出流量値と、濃縮水が第2定流量弁5Aを経由した際の第2流量センサFM2の検出流量値とが異なる場合に、異常を検知する
【0070】
<2.2 第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置の制御方法>
図3のフローチャートは、逆浸透膜分離装置1の制御方法を示す。
【0071】
ステップS11において、ポンプ制御部33が、加圧ポンプ2の動作を停止する。
ステップS12において、排水用開度調整弁制御部32が、排水用開度調整弁8の開度を固定する。とりわけ、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を全開とすることが好ましい。
【0072】
ステップS13において、給水用開度調整弁制御部31が、給水用開度調整弁14の開度を調整する。具体的には、給水用開度調整弁制御部31は、定流量弁5における差圧が一定値となるように、すなわち、定流量弁5の一次側の圧力である第1圧力が所定値となるように、給水用開度調整弁14の開度を調整する。ここで、定流量弁5における差圧としては、例えば、0.1Mpa前後の圧力とすることが可能である。
これらのステップS1〜S3により、定流量弁5又は第2定流量弁5Aを流れる水の全水量を、第2流量センサFM2が検知することが可能となる。
【0073】
ステップS14において、濃縮水W3を定流量弁5に流通させた上で、第2流量センサFM2に排水の流量値を検出させた後、制御部30から送信される流路切換信号により、第1流路切換弁16及び第2流路切換弁17における流路を切り替えることにより、濃縮水W3を第2定流量弁5Aに流通させた上で、第2流量センサFM2に排水の流量値を検出させる。
濃縮水W3を定流量弁5に流通させた場合に、第2流量センサFM2が検出する検出流量値(これを、以降では「第1検出流量値」とも呼称する)と、濃縮水W3を第2定流量弁5Aに流通させた場合に、第2流量センサFM2が検出する検出流量値(これを、以降では「第2検出流量値」とも呼称する)との差分が所定範囲以下にある場合(S14:YES)には、処理は終了する。一方で、第1検出流量値と第2検出流量値との差分が所定範囲を超える場合(S14:NO)には、処理はステップS15に移行する。ここで「所定範囲」とは、例えば、第2検出流量値の0.1倍と定義することが可能である。すなわち、「第1検出流量値と第2検出流量値との差分が所定範囲以下にある」とは、第1検出流量値が第2検出流量値の0.9倍以上1,1倍以下であると定義することが可能である。
【0074】
ステップS15において、異常検知部34が、ステップS14における比較結果に基づき、異常を検知する。
【0075】
ステップS16において、警報発報部35が、警報を発報する。
【0076】
ステップS17において、逆浸透膜分離装置1は、バックアップ運転を実施する。具体的には、正常運転時の過去のデータ、すなわち、二次側圧力センサPS2の検出値と、排水用開度調整弁8の開度と、定流量弁5における流量と、回収率との関係性に基づき、現時点における二次側圧力センサPS2の検出値に基づいて、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の開度を調整し、処理を終了する。
【0077】
なお、上記のステップS1〜S7を実行する前に、異常検知部34は、排水用開度調整弁8の開度と、給水用開度調整弁14の下流側での原水の圧力である第2圧力とに基づいて、第2流量センサFM2の流量の想定値を算出し、検出流量値と想定値との比較結果に基づいて、第2流量センサFM2の異常を検知すると、なおよい。
【0078】
また、上記のステップS17において、定流量弁5の膜詰まり等により、検出流量値が所定値以下となった場合には、排水用開度調整弁制御部32は、排水用開度調整弁8の調整として、開度を高くすることにより、回収率を下げて、循環比低下に伴う膜詰まりを暫定的に抑制してもよい。
あるいは、とりわけ定流量弁5が壊れた場合には、第2定流量弁5Aをバックアップ運転時に用いる定流量弁としてもよい。
【0079】
<2.3 第2実施形態が奏する効果>
上述した本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aによれば、第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1と同様の効果が奏される。
【0080】
また、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aにおいては、濃縮水ラインL3に、定流量弁5と並行に校正用の第2定流量弁5Aが設けられ、異常検知部34は、濃縮水W3が定流量弁5を経由した際の検出流量値と、濃縮水W3が第2定流量弁5Aを経由した際の検出流量値とが異なる場合に、異常を検知してもよい。
これにより、異常の原因が、流量計ではなく標準の定流量弁にある場合に、当該異常を検知することが可能となる。
【0081】
<3.変形例>
上記の逆浸透膜分離装置1及び1Aにおいては、通常の逆浸透膜分離装置と同様に、RO膜が目詰まりした場合には、膜交換や膜洗浄等を実施することが可能である。
【0082】
また、二次側圧力センサPS2の検出値と、第2流量センサFM2の検出値と、排水用開度調整弁8の開度との三者の関係、更に厳密には、水温を含めた四者の関係が、排水用開度調整弁8の特性値として既知の場合には、逆浸透膜分離装置1及び1Aの運転時に、排水用開度調整弁8の開度と、二次側圧力センサPS2の検出値から想定される本来の第2流量センサFM2の流量想定値と、第2流量センサFM2の実際の検出値とを比較して、第2流量センサFM2が正常であることを確認することが可能である。