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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202441(P2018-202441A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/16 20060101AFI20181130BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20181130BHJP
【FI】
   B23K26/16
   B23K26/21 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-109377(P2017-109377)
(22)【出願日】2017年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 亘
(72)【発明者】
【氏名】牧野 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 武広
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA83
4E168CB04
4E168CB08
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4E168EA15
4E168EA17
4E168EA24
4E168FC04
(57)【要約】
【課題】レーザ光の光路を横切る方向に空気を流す場合に、その空気がレーザ照射位置に流れ込むことを抑制できるレーザ溶接装置を提供する。
【解決手段】レーザスキャナ本体6から照射されるレーザ光の光路Lよりも空気の流れ方向の下流側に案内板73bを備えさせ、レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ方向が、該空気の流れ方向の下流側に向かってワークW上のレーザ照射位置Woから離れる方向に変更されるようにする。これにより、レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ方向の延長線上にワークWの一部が存在する場合であっても、この空気がワークWの一部に衝突することは回避され、この空気の流れ方向がワークWの一部によって反転されてワークW上のレーザ照射位置Woに流れ込むといったことは抑制される。その結果、ワークW上のレーザ照射位置Woでの加工環境が乱されることが抑制できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに向けてレーザ光を照射するレーザスキャナ本体と、該レーザスキャナ本体から照射されたレーザ光の光路を横切るように一方側から他方側に向けて気体を噴射する噴射ノズルとを備えたレーザ溶接装置において、
前記レーザ光の光路よりも前記気体の流れ方向の下流側に配設され、前記レーザ光の光路を横切った後の前記気体の流れ方向が、該気体の流れ方向の下流側に向かって前記ワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に変更されるように、前記他方側に向かうに従って前記ワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に延在する案内板を備えていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ溶接装置において、
前記案内板における前記気体の流れ方向の上流側端には、前記レーザ光の光路よりも前記気体の流れ方向の下流側に配設され且つ前記レーザ光の光路を横切った後の前記気体の流れ方向に沿う方向に延在する導入板が連続して設けられていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項3】
請求項2記載のレーザ溶接装置において、
前記噴射ノズルは複数設けられており、これら噴射ノズルは、それぞれから噴射されて混合された気体が前記導入板と前記案内板との境界部に向かう流れとなる向きに配置されていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のレーザ溶接装置において、
前記レーザ光の光路を横切った後の前記気体が流れる流通空間を挟んで前記案内板との間に所定間隔を存して対向する位置には、前記レーザ光の光路側へのヒュームの巻き込みを防止するヒューム巻き込み防止板が配設されていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項5】
請求項4記載のレーザ溶接装置において、
前記ヒューム巻き込み防止板は、前記ワーク上の前記レーザ照射位置に向かう側の面が凹状の曲面で形成されていることを特徴とするレーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ溶接装置に係る。特に、本発明は、ワークに向けて照射されるレーザ光の光路を横切る方向に気体を流すようにしたレーザ溶接装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、レーザ溶接装置のレーザスキャナ(スキャナヘッドと呼ばれる場合もある)には、レーザ光学系を構成するミラーやレンズの前側(レーザ光を照射する側)に保護ガラスが設けられている。これにより、レーザ溶接時に加工点(ワーク上のレーザ照射位置)から飛散してくるスパッタがミラーやレンズに衝突することを防止し、これらミラーやレンズを保護している。
【0003】
また、この特許文献1では、レーザスキャナから照射されたレーザ光の光路を横切る方向に空気を流すことで(以下、この空気の流れをエアブローという)、前記スパッタを、このエアブローにより押し流して排除し、スパッタが保護ガラスに付着することを防止している。これにより、スパッタが保護ガラスに付着した状態でレーザ照射が行われた際に、このスパッタが吸熱してしまってワーク上のレーザ照射位置にレーザ光のエネルギが十分に到達しなくなったり、保護ガラスが損傷したりすることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザ光の光路を横切った後の空気の流れ方向の下流側にワークの一部や他のワーク等の構造物が存在する場合であって、エアブローの流線がこの構造物に衝突する状況では、このエアブローの流線方向が構造物によって変更され(流線方向が反転され)、空気がワーク上のレーザ照射位置に流れ込むことがある。
【0006】
図9は、従来技術におけるエアブローの課題を説明するための模式図である。この図9に示すものは、レーザスキャナaの内部に2個のレンズb1,b2が収容され、このレーザスキャナaにおけるレーザ光の出射開口部近傍に保護ガラスcが取り付けられている。そして、図中の左側に、空気を噴射するエアブローノズルdが配設されている。この図9に示すように、レーザ光の光路lを横切った後の空気の流れ方向の下流側にワークwの一部である垂直部w1が存在している場合、エアブローの流線がこの垂直部w1に衝突し、この流線方向が反転されて空気がワークw上のレーザ照射位置eに流れ込むことになる(図中の矢印を参照)。
【0007】
このような状況になると、レーザ照射位置eでの加工環境が乱されることになり(例えばレーザ照射位置eへの空気供給量が過剰となり)、溶接不良が発生してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザ光の光路を横切る方向に気体を流す場合に、その気体がワーク上のレーザ照射位置に流れ込むことを抑制できるレーザ溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、ワークに向けてレーザ光を照射するレーザスキャナ本体と、該レーザスキャナ本体から照射されたレーザ光の光路を横切るように一方側から他方側に向けて気体を噴射する噴射ノズルとを備えたレーザ溶接装置を前提とする。そして、このレーザ溶接装置は、前記レーザ光の光路よりも前記気体の流れ方向の下流側に配設され、前記レーザ光の光路を横切った後の前記気体の流れ方向が、該気体の流れ方向の下流側に向かって前記ワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に変更されるように、前記他方側に向かうに従って前記ワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に延在する案内板を備えていることを特徴とする。
【0010】
この特定事項により、レーザスキャナ本体からワークに向けてレーザ光を照射することでレーザ溶接が行われる際、ワーク上のレーザ照射位置からスパッタがレーザスキャナ本体側に向かって飛散したとしても、噴射ノズルから噴射されている気体によってスパッタが押し流されることで該スパッタはレーザスキャナ本体には到達し難くなる。そして、この噴射ノズルから噴射されている気体は、レーザ光の光路を横切った後、案内板によって案内され、その流れ方向は、下流側に向かってワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に変更されることになる。このため、レーザ光の光路を横切った後の気体の流れ方向の延長線上(気体の流れ方向が変更されなかったと仮定した場合のその流れ方向の延長線上)にワークの一部や他のワーク等の構造物が存在する場合であっても、気体が構造物に衝突することは回避され、気体の流れ方向が構造物によって反転されてワーク上のレーザ照射位置に流れ込むといったことは抑制される。その結果、ワーク上のレーザ照射位置での加工環境が乱されることが抑制できて、溶接不良の発生が抑制される。
【0011】
また、前記案内板における前記気体の流れ方向の上流側端には、前記レーザ光の光路よりも前記気体の流れ方向の下流側に配設され且つ前記レーザ光の光路を横切った後の前記気体の流れ方向に沿う方向に延在する導入板が連続して設けられていることが好ましい。
【0012】
これによれば、噴射ノズルから噴射され、レーザ光の光路を横切った後の気体の流れを、その流れ方向に沿って延在する導入板によって案内した後に、案内板によって、その気体の流れ方向を、下流側に向かってワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に変更することになる。案内板における気体の流れ方向の上流側端にあっては、気体の流れ方向が変更される起点となる(気体の流線が案内板に衝突する)ことに伴って圧力が高まることになり、気体の流速が低くなる可能性があるが、この案内板における気体の流れ方向の上流側端は前記導入板の存在によってレーザ光の光路から離れた位置に設定されているためレーザ光の光路を横切る気体の流速に影響を及ぼすことは殆どない。つまり、このレーザ光の光路を横切る気体の流速を高く維持でき、この気体によるスパッタの押し流し効果を十分に得ることができる。
【0013】
また、レーザ光の光路を横切った後の気体の流れ(案内板に達するまでの気体の流れ)は導入板によって案内されるため、レーザ光の光路を横切った後の気体の流れが拡散してしまうこと(ワーク上のレーザ照射位置側に向かって拡散してしまうこと)を導入板によって抑制した上で、この気体の流れ方向を案内板によって変更することができる。このため、気体の流れが拡散してその一部がワーク上のレーザ照射位置に流れ込んでしまって該レーザ照射位置での加工環境が乱されるといったことを抑制できる。
【0014】
前記噴射ノズルは複数設けられており、これら噴射ノズルは、それぞれから噴射されて混合された気体が前記導入板と前記案内板との境界部に向かう流れとなる向きに配置されていることが好ましい。
【0015】
これによれば、各噴射ノズルそれぞれから噴射された気体の大部分を、案内板の長さ方向(気体の流れに沿う方向)の略全体に亘って流すことで、その流れ方向を、ワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に確実に指向させることができる。このため、気体の一部がワーク上のレーザ照射位置に流れ込んでしまうことを確実に防止できる。
【0016】
前記レーザ光の光路を横切った後の前記気体が流れる流通空間を挟んで前記案内板との間に所定間隔を存して対向する位置に、前記レーザ光の光路側へのヒュームの巻き込みを防止するヒューム巻き込み防止板が配設されていることが好ましい。
【0017】
レーザ光の光路を横切った後に案内板によって案内された気体は、その周囲に存在するヒューム(ワークの金属材料が昇華することによる金属蒸気等)を巻き込むことになるが、案内板との間に所定間隔を存して対向する位置にヒューム巻き込み防止板が配設されていることにより、前記気体が流れる空間のうちヒュームが巻き込まれる領域は、このヒューム巻き込み防止板から外れた領域、つまり、レーザ光の光路から離れた領域となる。これにより、レーザ光の光路やレーザスキャナ本体におけるレーザ光の出射側にヒュームが巻き込まれることが前記ヒューム巻き込み防止板によって抑制される。その結果、ヒュームがレーザ光の光路に流れ込んだりレーザスキャナ本体におけるレーザ光の出射部分(例えば保護ガラス等)にヒュームが付着したりしてワーク上のレーザ照射位置に到達するレーザ光のエネルギが十分に得られなくなるといった状況を抑制することができる。
【0018】
また、前記ヒューム巻き込み防止板は、前記ワーク上の前記レーザ照射位置に向かう側の面が凹状の曲面で形成されていることが好ましい。
【0019】
ワーク上のレーザ照射位置から飛散したスパッタがヒューム巻き込み防止板(ヒューム巻き込み防止板においてワーク上のレーザ照射位置に向かう側の面)に衝突した場合、このスパッタは、ヒューム巻き込み防止板によって跳ね返されることになるが、このヒューム巻き込み防止板においてワーク上のレーザ照射位置に向かう側の面は凹状の曲面で形成されているため、このスパッタがレーザスキャナ本体側に跳ね返ることは抑制される。つまり、スパッタがヒューム巻き込み防止板によってレーザスキャナ本体側に跳ね返ってレーザ光の出射部分(例えば保護ガラス等)に付着するといったことが抑制される。これにより、ヒューム巻き込み防止板の機能(レーザ光の光路やレーザスキャナ本体におけるレーザ光の出射側にヒュームが巻き込まれることを抑制する機能)を維持しながらも、このヒューム巻き込み防止板の存在に起因してスパッタがレーザスキャナ本体におけるレーザ光の出射部分に付着するといったことが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、レーザスキャナ本体から照射されたレーザ光の光路を横切った後の気体の流れ方向をワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に変更する案内板を備えさせている。これにより、レーザ光の光路を横切った後の気体がワーク上のレーザ照射位置に流れ込むことが抑制され、このレーザ照射位置での加工環境が乱されることが抑制できて、溶接不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るレーザ溶接装置を示す概略構成図である。
図2】レーザスキャナの一部を簡略して示す正面図である。
図3】レーザスキャナの一部を簡略して示す左側面図である。
図4】レーザスキャナの一部を簡略して示す右側面図である。
図5】レーザスキャナの一部を簡略して示す下面図である。
図6】レーザスキャナの一部を簡略して示す斜視図である。
図7】実施形態に係るレーザ溶接装置によるレーザ溶接動作を説明するための図である。
図8】実施形態に係るレーザ溶接装置におけるヒューム巻き込み防止板によるスパッタの跳ね返り方向を説明するための図である。
図9】従来技術におけるエアブローの課題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、自動車の車体の製造工程で使用されるレーザ溶接装置に本発明を適用した場合について説明する。特に、本実施形態では、リモートレーザ溶接が可能なレーザ溶接装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0023】
−レーザ溶接装置の概略構成−
図1は、本実施形態に係るレーザ溶接装置1を示す概略構成図である。この図1に示すように、レーザ溶接装置1は、レーザ発振器2、レーザスキャナ3、溶接ロボット4、および、ロボットコントローラ5を備えている。
【0024】
レーザ発振器2はレーザ光を生成する。この生成されたレーザ光は、光ファイバーケーブル21を経てレーザスキャナ3に導かれる。レーザ光としては、例えば炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ等を用いることができる。
【0025】
レーザスキャナ3は、光ファイバーケーブル21を経て導かれたレーザ光を、鋼板(複数枚が重ね合わされた鋼板)で成るワークWに照射する(図1の一点鎖線を参照)。レーザスキャナ3の内部には図示しないレンズ群や複数のミラーが収容されている。レンズ群としては、レーザ光を平行光にするためのコリメートレンズや、レーザ光をワークWの加工点(ワークW上の所定のレーザ照射位置Wo)において焦点を結ぶように集光させる集光レンズ等が備えられている。また、各ミラーはそれぞれ1つの回動軸を中心に回動可能に構成されている。これらミラーによってレーザ光を走査し、ワークWの所定範囲内でレーザ光を走査することが可能となっている。これにより、レーザスキャナ3自体を移動させることなくレーザ光の照射方向を変更することが可能であり、ワークW上のレーザ照射位置Woを所定領域内で移動させることが可能となっている。各ミラーは例えばガルバノミラーを用いて構成することができる。
【0026】
溶接ロボット4は、レーザスキャナ3を移動可能とするように構成されている。この溶接ロボット4は、多関節ロボットによって構成されている。具体的に、本実施形態のものでは、ベース台41、ベース台41の内部に収容された回転機構(図示省略)、関節42,43,44、および、アーム45,46,47を備えている。回転機構の回転動作および各関節42,43,44によるアーム45,46,47の揺動動作により、レーザスキャナ3を任意の方向に移動することが可能となっている。
【0027】
ロボットコントローラ5には、予めオフラインティーチングによって、溶接箇所に向けてレーザスキャナ3を移動させるための情報(各関節42,43,44の回動角度量等の情報)が記憶されている。そして、車体製造ライン上の溶接工程まで車体が搬送されてきた際に、ロボットコントローラ5からの制御信号に従い、前記情報に基づいて溶接ロボット4が作動することで、各溶接箇所に対して順次レーザ溶接が行われていくことになる。
【0028】
−レーザスキャナの構成−
次に、前記レーザスキャナ3の構成について説明する。図2図6は、レーザ光の照射方向を下向きとした場合において、レーザスキャナ3の一部(後述するレーザスキャナ本体6)を簡略して示す図であり、図2は正面図、図3は左側面図、図4は右側面図、図5は下面図、図6は斜視図(斜め下側から見た斜視図)である。
【0029】
以下では、前記集光レンズの光軸に沿う方向(図2における上下方向)をZ方向とする。また、このZ方向に直交する方向であってレーザスキャナ3の幅方向(図2における左右方向)をX方向とする。また、前記Z方向に直交する方向であってレーザスキャナ3の厚さ方向(図3における左右方向)をY方向とする。そして、前記Z方向において図2の下側(レーザ光を照射する方向)をZ1方向と呼び、図2の上側をZ2方向と呼ぶ。また、前記X方向において図2の右側をX1方向と呼び、図2の左側をX2方向と呼ぶ。また、前記Y方向において図3の右側をY1方向と呼び、図3の左側をY2方向と呼ぶ。
【0030】
図2図6に示すように、レーザスキャナ3は、レーザスキャナ本体6およびエアブローユニット7を備えている。
【0031】
(レーザスキャナ本体)
レーザスキャナ本体6は、ワークW(図1を参照)に向けてレーザ光を照射するものであって、内部に前述したレンズ群や複数のミラー等が収容されている。レーザスキャナ本体6の側面(Y1方向側に位置する側面)61には、前記光ファイバーケーブル21が接続されるコネクタ62が設けられている。つまり、このコネクタ62を経てレーザスキャナ本体6の内部に導かれたレーザ光が、各ミラーによってその方向が変更され(Y2方向からX2方向に変更された後、Z1方向に変更され;レーザ光の光軸を示す図2の一点鎖線を参照)、エアブローユニット7の内部空間を通過してワークWに向けて照射されるようになっている。
【0032】
また、このレーザスキャナ本体6の側面(Y1方向側に位置する側面)61には、溶接ロボット4のアーム47が接続されるアーム取付部63を有している。
【0033】
(エアブローユニット)
次に、本実施形態において特徴とする部分であるエアブローユニット7について説明する。
【0034】
エアブローユニット7は、レーザスキャナ本体6から照射されたレーザ光の光路L(図7を参照)を横切る方向に空気(気体)を流すことで、レーザ溶接時にワークW上のレーザ照射位置Woから飛散してくるスパッタが、レーザスキャナ本体6の出射開口部近傍に取り付けられた保護ガラスG(図2および図7の破線を参照)に付着することを防止するためのものである。
【0035】
このエアブローユニット7は、前記レーザスキャナ本体6におけるレーザ出射面64(Z1方向側に位置する面;図2における下面)に取り付けられている。このエアブローユニット7は、ユニット本体71、エアブローノズル(噴射ノズル)72a〜72d、ガイドフィン73、および、ヒューム巻き込み防止板74を備えている。
【0036】
ユニット本体71は、平板状の複数のパネル71a〜71dが一体的に組み付けられて成っている。具体的には、Y1方向側に位置する前面パネル71a、この前面パネル71aに対向するようにY2方向側に位置する背面パネル71b、Z2方向側に位置する入射側パネル71c、この入射側パネル71cに対向するようにZ1方向側に位置する出射側パネル71dが一体的に組み付けられて構成されている。そして、入射側パネル71cがレーザスキャナ本体6のレーザ出射面64にボルト止め等の手段によって取り付けられている。
【0037】
前記入射側パネル71cおよび出射側パネル71dには、前記レーザ光の光軸が通過する位置に対応して、レーザ光を通過させるための開口71e(各開口のうち出射側パネル71dの開口71eのみが図5および図6に現れている)が形成されている。これにより、前記各パネル71a〜71dで囲まれた空間(ユニット本体71の内部空間)が、レーザ光の通過空間として構成されている。前述したように本実施形態に係るレーザ溶接装置1は、レーザスキャナ3自体を移動させることなくレーザ光の照射方向を変更する(ワークWの所定範囲内でレーザ光を走査する)リモートレーザ溶接が可能となっている(図7におけるレーザ光の光路L1,L2を参照)。このため、前記開口71eは、このレーザ光の走査範囲に対応するべく比較的大型の開口で形成されている。なお、このユニット本体71の内部空間は、後述するようにエアブロー空間(スパッタを押し流すための空気を流す空間)としても構成されている。
【0038】
エアブローノズル72a〜72dは、レーザスキャナ本体6から照射されたレーザ光の光路Lを横切るように一方側(X2方向側)から他方側(X1方向側)に向けて空気を噴射するものであって、ユニット本体71におけるX2方向側の部分に配設されている。本実施形態では、4本のエアブローノズル72a〜72dが備えられている。これらエアブローノズル72a〜72dは、ユニット本体71におけるX2方向側の部分においてZ方向に沿って一列に配置され、その先端部(X1方向側の先端部)がユニット本体71の内部空間で開口されている。具体的に、各エアブローノズル72a〜72dは、それぞれノズル固定ブラケット76,76,…(図3を参照)に支持されており、各ノズル固定ブラケット76,76,…が、前記ユニット本体71の前面パネル71aおよび背面パネル71bにそれぞれボルト止め等の手段によって固定されていることにより、各エアブローノズル72a〜72dはユニット本体71に支持され且つその先端部がユニット本体71の内部空間で開口されている。
【0039】
これらエアブローノズル72a〜72dには、図示しないエア供給管を介してエアポンプが接続されており、このエアポンプから圧送される空気が各エアブローノズル72a〜72dに分流され、これらエアブローノズル72a〜72dからユニット本体71の内部空間に向けて空気が噴射されるようになっている。
【0040】
各エアブローノズル72a〜72dは、それぞれの中心線の方向が僅かに異なっており、それに伴って、それぞれにおける空気の噴射方向が互いに異なることになる。ここでは、4本のエアブローノズル72a〜72dのうち、最もZ1方向側(図2における下側)に位置するエアブローノズル72aを第1エアブローノズル72aと呼び、この第1エアブローノズル72aに対してZ2方向側に隣接するエアブローノズル72bを第2エアブローノズル72bと呼び、以下同様に、Z2方向側に向けて順に配置されたエアブローノズルを、第3エアブローノズル72c、第4エアブローノズル72dと呼ぶこととする。
【0041】
各エアブローノズル72a〜72dそれぞれは、Z2方向側に位置するエアブローノズルほど、その中心線の延長方向がノズル先端側に向かってZ1方向側に傾くように(下側に傾くように)配置されている。このため、Z2方向側に位置するエアブローノズルほど、そのエアブローノズルから噴射される空気の流線方向もZ1方向側に傾く(下向きとされる)ことになる。図2における一点鎖線f1は第1エアブローノズル72aから噴射された空気の流線の方向を表し(この流線の方向はX1方向に沿っている)、一点鎖線f2は第2エアブローノズル72bから噴射された空気の流線の方向を表し、一点鎖線f3は第3エアブローノズル72cから噴射された空気の流線の方向を表し、一点鎖線f4は第4エアブローノズル72dから噴射された空気の流線の方向を表している。
【0042】
各エアブローノズル72a〜72dから空気が噴射されると、この空気がエアブローとしてユニット本体71の内部空間を流れることで、このユニット本体71の内部空間では、X1方向に対して僅かにZ1方向側に傾いた方向(図2における斜め下向きの方向)に空気が流れることになる。レーザ溶接時にワークW上のレーザ照射位置Woから飛散したスパッタがユニット本体71の内部空間に入り込んだ場合の該スパッタの飛散方向はZ2方向またはこのZ2方向に対して僅かに傾斜した方向となっている。これに対して、ユニット本体71の内部空間を流れている空気の流れ方向はZ1方向側に傾いている。つまり、この空気の流れは、スパッタの飛散方向に対して反対向きの流れ成分(Z1方向の流れ成分)を有している。このため、ユニット本体71の内部空間にスパッタが入り込んできたとしても、このスパッタを保護ガラスGに到達させることなく、エアブローにより押し流して排除し、スパッタが保護ガラスGに付着することを防止できるようになっている。
【0043】
ガイドフィン73は、レーザスキャナ本体6から照射されたレーザ光の光路(ユニット本体71の内部空間におけるレーザ光の光路)Lよりも前記空気の流れ方向の下流側に配設されて、前記各エアブローノズル72a〜72dから噴射された空気の流れ方向を案内するものである。
【0044】
このガイドフィン73は、空気の流れ方向の上流側に位置する導入板73aと、この導入板73aにおける空気の流れ方向の下流側端に連続する案内板73bとにより構成されている。具体的には、1枚の金属板が所定角度をもって折り曲げられることにより、この折り曲げ部分の一方側(X2方向側)が導入板73aとして構成され、他方側(X1方向側)が案内板73bとして構成されている。以下、導入板73aおよび案内板73bそれぞれについて説明する。
【0045】
導入板73aは平板状の金属板で成り、その一端縁(X2方向側の端縁)が前記ユニット本体71に溶接等の手段によって接合されている。また、この導入板73aにおけるZ2方向側に位置する面(図2における上面)73cの大部分は、前記出射側パネル71dにおけるZ2方向側に位置する面(図2における上面であってX方向に沿って延びる面)に連続し且つこの面に対して所定の傾斜角度をもってZ1方向側に傾斜(X1方向に向かうに従ってZ1方向に傾斜)している。具体的に、この導入板73aにおけるZ2方向側に位置する面73cは各エアブローノズル72a〜72dそれぞれから噴射された空気が混合された状態での流線の方向に沿うようにX方向に対して僅かに傾斜(図2における下側(Z1方向側)に傾斜)している。言い替えると、この導入板73aは、ユニット本体71の内部空間を通過するレーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ方向に沿う方向に延在して、このレーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れをガイドするようになっている。例えば、この導入板73aは、X1方向に向かうに従ってZ1方向に向けて25°程度の傾斜角度をもって傾斜している。
【0046】
案内板73bは、導入板73aのX1方向側の端縁に連続した平板状の金属板で成り、導入板73aの一端縁(X1方向側の一端縁)からX1方向に向かうに従ってZ2方向に向けて所定の傾斜角度をもって傾斜している。つまり、この案内板73bにおけるZ2方向側に位置する面(図2における上面)73dは、X1方向に向かうに従ってZ2方向に向けて所定の傾斜角度をもって傾斜している。例えば、図2に示す状態において水平方向(X方向)に対して50°程度の傾斜角度をもって傾斜している。つまり、この案内板73bは、ユニット本体71の内部空間を経た後(レーザ光の光路Lを横切った後)、導入板73aに沿って流れる空気の流れ方向(レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ方向)が、X1方向に向かうに従ってZ2方向に向けて所定の傾斜角度をもって傾斜する方向となるようになっている。即ち、この案内板73bは、空気の流れ方向を、その流れ方向の下流側に向かってワークW上のレーザ照射位置Woから離れる方向に変更するように案内する構成となっている。この案内板73bが、本発明でいう「レーザ光の光路よりも気体の流れ方向の下流側に配設され、レーザ光の光路を横切った後の気体の流れ方向が、該気体の流れ方向の下流側に向かってワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に変更されるように、前記他方側(X1方向側)に向かうに従ってワーク上のレーザ照射位置から離れる方向に延在する案内板」に相当する。
【0047】
前記導入板73aと案内板73bとの境界部A、つまり、導入板73aにおける空気の流れ方向の下流側端と案内板73bにおける空気の流れ方向の上流側端とが繋がる部分Aは、各エアブローノズル72a〜72dそれぞれから噴射された空気が混合された状態で流れる流路上に位置している。言い替えると、各エアブローノズル72a〜72dは、それぞれから噴射されて混合された空気が導入板73aと案内板73bとの境界部(導入板73aにおける空気の流れ方向の下流側端であり案内板73bにおける空気の流れ方向の上流側端でもある部分)Aに向かう流れとなる向きに配置されていることになる。
【0048】
ヒューム巻き込み防止板74は、前記レーザ光の光路L側へのヒューム(ワークWの金属材料が昇華することによる金属蒸気等)の巻き込みを防止するためのものであって、レーザ光の光路Lを横切った後の空気が流れる流通空間Bを挟んでガイドフィン73との間に所定間隔を存して対向する位置に配置された円弧形状(Y方向から見た形状が円弧形状)の金属板で成っている。このヒューム巻き込み防止板74は、その一端縁(X2方向側の端縁)が前記ユニット本体71に溶接等の手段によって接合されている。
【0049】
また、ヒューム巻き込み防止板74の円弧形状(ヒューム巻き込み防止板74においてワークW上のレーザ照射位置Woに向かう側の面74a(以下、内面74aという場合もある)の形状)は、凹状の曲面となっている。これにより、ユニット本体71の内部空間にスパッタが入り込んできた際に、このスパッタがヒューム巻き込み防止板74の内面74aに衝突した場合の跳ね返り方向が、レーザスキャナ本体6側とならないように、Z1方向とX2方向との間の方向に跳ね返される形状とされている。
【0050】
具体的には、このヒューム巻き込み防止板74の内面74aの全体に亘って、各位置での接線に対して直交する方向が、Z1方向とX2方向との間の方向となるような内面形状となっている(例えば図2における点O1における接線に対して直交する仮想直線S1や、点O2における接線に対して直交する仮想直線S2を参照)。
【0051】
また、前記ガイドフィン73およびヒューム巻き込み防止板74それぞれにおける、Y1方向側の端縁同士の間およびY2方向側の端縁同士の間に亘ってカバー板75a,75bが設けられている。つまり、ガイドフィン73およびヒューム巻き込み防止板74それぞれのY1方向側の端縁に亘って前面側のカバー板75aが設けられ、ガイドフィン73およびヒューム巻き込み防止板74それぞれのY2方向側の端縁に亘って背面側のカバー板75bが設けられている。これらカバー板75a,75bの外縁形状としては、Z1方向側に位置する端縁が前記ガイドフィン73の導入板73aおよび案内板73bの形状に略合致し、Z2方向側に位置する端縁が前記ヒューム巻き込み防止板74の形状に略合致している。また、これらカバー板75a,75bのX2方向側の端縁は前記ユニット本体71に接合されている。これにより、エアブローユニット7は、ユニット本体71、ガイドフィン73、ヒューム巻き込み防止板74、各カバー板75a,75bによってダクト形状に構成されている。これにより、前記各エアブローノズル72a〜72dから噴射された空気は、ユニット本体71の内部空間を流れた後、ガイドフィン73の案内板73bとヒューム巻き込み防止板74との間に形成されている空間からエアブローユニット7の外側に排出されることになる(図7において空気の流れを表す矢印Aiを参照)。
【0052】
(レーザ溶接動作)
次に、前述の如く構成されたレーザ溶接装置1によるレーザ溶接動作について説明する。
【0053】
車体製造ライン上の溶接工程まで車体が搬送されてきた際に、ロボットコントローラ5からの制御信号に従い、前記情報に基づいて溶接ロボット4が作動する。これにより、レーザスキャナ本体6が所定位置まで移動され、対象とする加工位置に対してレーザ光を照射するレーザ溶接が行われる。この際、図7に示すように、レーザ光は、レーザスキャナ本体6のレーザ出射面64に形成されている出射開口部、保護ガラスG、および、入射側パネル71cの開口を経た後、ユニット本体71の内部空間を通過し、出射側パネル71dの開口71e(図6を参照)からワークW上の所定のレーザ照射位置Woに照射されることになる。
【0054】
このレーザ溶接の開始に伴い、前記エアポンプが作動し、このエアポンプから圧送された空気がエア供給管を介してエアブローノズル72a〜72dに分流され、これらエアブローノズル72a〜72dからユニット本体71の内部空間に向けて空気が噴射される。
【0055】
前述したように、各エアブローノズル72a〜72dから噴射される空気の噴射方向は互いに異なっており、これら空気が混合されて成るエアブローは、ユニット本体71の内部空間にあっては、X1方向に対して僅かにZ1方向側に傾いた流れとなっている。つまり、前述したように、この空気の流れは、スパッタの飛散方向に対して反対向きの流れ成分を有している。このため、前記出射側パネル71dの開口71eからユニット本体71の内部空間にスパッタが入り込んできたとしても、このスパッタが保護ガラスGに到達することは抑制される。このスパッタは、ワークW側に戻されるか、または、エアブローに沿ってガイドフィン73側に流されることになる。
【0056】
また、この空気は、レーザ光の光路Lを横切った後、ガイドフィン73の導入板73aにおけるZ2方向側に位置する面(図2における上面73c)に沿って流れる。つまり、この導入板73aによって空気の流れがガイドされることにより、この空気の流れが拡散してしまうことが抑制される。
【0057】
この導入板73aの端縁(X1方向側の端縁)を通過した空気は、案内板73bに達する。この案内板73bは、空気の流れ方向の下流側に向かってワークW上のレーザ照射位置Woから離れる方向に変更されるように、空気の流れを案内する構成となっているため、この空気がワークW上のレーザ照射位置Woに流れ込むことは抑制される。これにより、レーザ照射位置Woでの加工環境が乱されることが抑制でき、溶接不良の発生が抑制されることになる。
【0058】
従来技術にあっては、図9を用いて前述したように、エアブローの流線がワークwの垂直部w1に衝突し、この流線方向が反転されて空気がワークw上のレーザ照射位置eに流れ込むことがあり、この場合、レーザ照射位置eでの加工環境が乱されて、溶接不良が発生してしまう虞があった。特に、近年、加工時間の短縮化を目的としてレーザ光の高出力化を図った場合、スパッタの発生量が増加する傾向にあることに鑑みてエアブローの風量を増加させていることに起因し、空気がレーザ照射位置eに流れ込む可能性が高くなってきている。また、車体の溶接作業の高効率化を図るべく、レーザスキャナaを車体内部(車室内)にまで移動させて溶接作業を行う場合、レーザ照射位置eの周囲に様々な板金パネルが存在することになるのに起因して、エアブローの流線方向が反転されて空気がレーザ照射位置eに流れ込む可能性が高くなってきている。更には、前述したように、スパッタの飛散方向に対して反対向きの流れ成分を有するエアブローを行っている場合に、そのエアブローの流線がワークwの一部や他のワーク等の構造物に衝突しやすくなり、それに起因して空気がレーザ照射位置eに流れ込む可能性が高くなる。
【0059】
本実施形態では、前述したように、案内板73bによって、空気の流れ方向の下流側に向かってワークW上のレーザ照射位置Woから離れる方向に変更されるように空気の流れが案内されるため、この空気がワークW上のレーザ照射位置Woに流れ込むことが抑制され、レーザ照射位置Woでの加工環境が乱されることが抑制できて、溶接不良の発生を抑制することができる。
【0060】
また、案内板73bに案内されてエアブローユニット7から排出される空気の流速は比較的高く、その周囲に存在する空気を巻き込むことになる。前記レーザ溶接にあっては、レーザ照射位置Woでヒュームが発生しており、このヒュームが、前記エアブローユニット7から排出される空気の流れに巻き込まれることになるが、本実施形態にあっては、前記ヒューム巻き込み防止板74が設けられていることにより、前記空気が流れる空間のうちヒュームが巻き込まれる領域は、このヒューム巻き込み防止板74の先端位置(X1方向側の端縁位置)よりもX1方向側の領域となる。つまり、レーザ光の光路Lから離れた領域においてヒュームが巻き込まれることになり(図7においてヒュームの巻き込みを表す矢印Hを参照)、このヒュームがレーザ光の光路Lに流れ込んだり保護ガラスGに付着したりしてワークW上のレーザ照射位置Woに到達するレーザ光のエネルギが十分に得られなくなるといった状況を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るレーザ溶接装置1は、前記ミラーによってレーザ光を走査することで、レーザスキャナ3自体を移動させることなくレーザ光の照射方向を変更するリモートレーザ溶接が可能となっている。このため、図7で示したレーザ溶接を行っている状態から、ミラーによってレーザ光を走査することで、例えば、図7における二点鎖線L1で示したレーザ光の光路を二点鎖線L2で示したレーザ光の光路に変更してワークWに照射し、前述したレーザ溶接でのレーザ照射位置Woとは異なるレーザ照射位置Wo’にレーザ光を照射してレーザ溶接を行うことができる。この場合、レーザ照射位置Wo,Wo’が変化することに伴ってスパッタの発生箇所も変化し、このスパッタがレーザスキャナ本体6に向けて飛散する場合の飛散方向も変化することになる。このような場合においても、前述の場合と同様に、エアブローによって、スパッタが保護ガラスGに到達することは抑制される。また、案内板73bによって、空気の流れ方向の下流側に向かってワークW上のレーザ照射位置Wo’から離れる方向に変更されるように空気の流れが案内されるため、この空気がワークW上のレーザ照射位置Wo’に流れ込むことが抑制され、レーザ照射位置Wo’での加工環境が乱されることが抑制できて、溶接不良の発生を抑制することができる。
【0062】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態では、レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ方向が、該空気の流れ方向の下流側に向かってワークW上のレーザ照射位置Woから離れる方向に変更されるように、前記空気の流れを案内する案内板73bが備えられている。このため、レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ方向の延長線上(空気の流れ方向が変更されなかったと仮定した場合のその流れ方向の延長線上)にワークWの一部や他のワーク等の構造物が存在する場合であっても、空気が構造物に衝突することは回避され、空気の流れ方向が構造物によって反転されてワークW上のレーザ照射位置Woに流れ込むといったことは抑制される。その結果、ワークWのレーザ照射位置Woでの加工環境が乱されることが抑制できて、溶接不良の発生が抑制される。
【0063】
また、案内板73bにおける空気の流れ方向の上流側端にあっては、空気の流れ方向が変更される起点となる(空気の流線が案内板73bに衝突する)ことに伴って圧力が高まることになり、空気の流速が低くなる可能性があるが、この案内板73bにおける空気の流れ方向の上流側端は前記導入板73aの存在によってレーザ光の光路Lから離れた位置に設定されていることになるためレーザ光の光路Lを横切る空気の流速に影響を及ぼすことは殆どない。つまり、このレーザ光の光路Lを横切る空気の流速を高く維持でき、この空気によるスパッタの押し流し効果を十分に得ることができる。
【0064】
また、レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れ(案内板73bに達するまでの空気の流れ)は導入板73aによって案内されるため、レーザ光の光路Lを横切った後の空気の流れが拡散してしまうこと(ワークW上のレーザ照射位置Wo側に向かって拡散してしまうこと)を導入板73aによって抑制した上で、この空気の流れ方向が案内板73bによって変更されることになる。このため、空気の流れが拡散してその一部がワークW上のレーザ照射位置Woに流れ込んでしまって該レーザ照射位置Woでの加工環境が乱されるといったことを抑制できる。
【0065】
また、各エアブローノズル72a〜72dは、それぞれから噴射されて混合された空気が導入板73aと案内板73bとの境界部(導入板73aにおける空気の流れ方向の下流側端であり案内板73bにおける空気の流れ方向の上流側端でもある部分)Aに向かう流れとなる向きに配置されていることから、各エアブローノズル72a〜72dそれぞれから噴射された空気の大部分を、案内板73bの長さ方向(空気の流れに沿う方向)の略全体に亘って流すことで、その流れ方向を、ワークW上のレーザ照射位置Woから離れる方向に確実に指向させることができる。このため、空気の一部がワークW上のレーザ照射位置Woに流れ込んでしまうことを確実に防止できる。
【0066】
また、前記ヒューム巻き込み防止板74が配設されていることにより、前記空気が流れる空間のうちヒュームが巻き込まれる領域は、このヒューム巻き込み防止板74から外れた領域、つまり、レーザ光の光路Lから離れた領域となる。これにより、レーザ光の光路Lやレーザスキャナ本体6におけるレーザ光の出射側にヒュームが巻き込まれることがヒューム巻き込み防止板74によって抑制される。その結果、ヒュームがレーザ光の光路Lに流れ込んだりレーザスキャナ本体6の出射開口部近傍に取り付けられた保護ガラスGにヒュームが付着したりしてワークW上のレーザ照射位置Woに到達するレーザ光のエネルギが十分に得られなくなるといった状況を抑制することができる。
【0067】
また、このヒューム巻き込み防止板74は、ワークW上のレーザ照射位置Woに向かう側の面が凹状の曲面(前述した曲面で成る内面74a)で形成されているため、スパッタがヒューム巻き込み防止板74に衝突した際に、このスパッタがレーザスキャナ本体6側に跳ね返ることは抑制される。つまり、スパッタがヒューム巻き込み防止板74によってレーザスキャナ本体6側に跳ね返って前記保護ガラスGに付着するといったことが抑制される。これにより、ヒューム巻き込み防止板74の機能を維持しながらも、このヒューム巻き込み防止板74の存在に起因してスパッタが保護ガラスGに付着するといったことが抑制される。
【0068】
具体的には、図8に仮想線で示すように、ヒューム巻き込み防止板74’を平板(図8において鉛直方向に延びる平板)で構成した場合には、図中に矢印Iで示すようにスパッタがヒューム巻き込み防止板74’によってレーザスキャナ本体6側に跳ね返ってしまう可能性が高く、保護ガラスGにスパッタが付着する虞がある。これに対し、本実施形態では、ヒューム巻き込み防止板74の内面74aを凹状の曲面で形成していることにより、図中に矢印Jで示すようにスパッタがヒューム巻き込み防止板74によってレーザスキャナ本体6側に跳ね返ってしまうことが抑制され、保護ガラスGにスパッタが付着するといったことが抑制される。
【0069】
(他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0070】
例えば、前記実施形態では、自動車の車体の製造工程で使用されるレーザ溶接装置1に本発明を適用した場合について説明したが、その他の部材のレーザ溶接を行うためのレーザ溶接装置に対しても本発明は適用することが可能である。
【0071】
また、前記実施形態では、空気の流れ方向を案内するガイドフィン73を導入板73aおよび案内板73bによって構成していた。本発明はこれに限らず、ガイドフィン73を案内板73bのみによって構成するようにしてもよい。但し、この場合、案内板73bによって空気の流れ方向を変更する位置がレーザ光の光路Lに近付きすぎないようにすることが望まれる。このため、例えばユニット本体71のX方向の長さを長く設定し、このユニット本体71におけるX1方向側の端縁位置を、前記実施形態のものよりもX1方向側に位置させて、案内板73bの端縁位置(X2方向側の端縁位置)とレーザ光の光路Lとの間に所定間隔を設けておくようにすることが好ましい。
【0072】
また、前記実施形態では、エアブローユニット7に、ガイドフィン73とヒューム巻き込み防止板74との間に亘ってカバー板75a,75bを設けていた。本発明は、このカバー板75a,75bは必ずしも必要ではなく、このカバー板75a,75bを設けない構成としてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、エアブローユニット7においてレーザ光の光路Lを横切る方向に流れる気体を空気としていた。本発明はこれに限らず、その他の気体を使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、保護ガラスへのスパッタの付着を防止するためにレーザ光の光路を横切る方向に気体を流すようにしたレーザ溶接装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 レーザ溶接装置
3 レーザスキャナ
6 レーザスキャナ本体
72a〜72d エアブローノズル(噴射ノズル)
73 ガイドフィン
73a 導入板
73b 案内板
74 ヒューム巻き込み防止板
W ワーク
Wo レーザ照射位置
A 導入板と案内板との境界部
B 流通空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9