【課題】第2金型に対し第1金型をセンタリングできるように第1金型を支持体に移動可能に支持する鍛造装置において、第1,第2金型相互の直接係合を回避してセンタリング精度を高める。
【解決手段】第2金型D2が嵌入し得るガイド面Gfを有して第1金型D1及び支持体B間に配設されるガイド部材Gが、第1金型の外周面D1oに摺動可能に嵌合、支持され、ガイド部材Gと支持孔Bhとの間に、ガイド部材Gが支持体Bに対し金型配列方向と直交する方向に移動するのを許容する第1の隙間C1が設けられ、ガイド部材Gと支持面Btとの間に、ガイド部材が第1金型に対し金型配列方向で摺動するのを許容する第2の隙間C2が設けられ、第1,第2金型相互を接近させたときに第2金型D2がガイド面Gfに嵌入することで、ガイド部材Gが第1の隙間C1の範囲内で支持体Bに対し移動すると共に第1金型D1もガイド部材Gに追従移動してセンタリングが行われる。
所定の配列方向に配列されて相対向面に成形面(21,22)を各々有する第1,第2金型(D1,D2)と、前記第1,第2金型(D1,D2)のうちの少なくとも一方を他方に対し前記配列方向で接近・離間するよう駆動可能な駆動手段(7V)と、前記第1金型(D1)を前記配列方向と直交する方向で移動可能に支持する支持孔(Bh)を有する支持体(B)とを備える鍛造装置において、
前記第2金型(D2)が摺動可能に嵌入し得るガイド面(Gf)を有して前記第1金型(D1)及び前記支持体(B)間に配設されるガイド部材(G)が、該第1金型(D1)の外周面(D1o)に前記配列方向で摺動可能に嵌合、支持され、
前記ガイド部材(G)と前記支持孔(Bh)の内周面(Bhs)との間には、該ガイド部材(G)が前記支持体(B)に対し前記配列方向と直交する方向に移動するのを許容する第1の隙間(C1)が設けられ、
前記ガイド部材(G)と、前記支持体(B)に設けられて該ガイド部材(G)に前記配列方向で対向する支持面(Bt)との間には、該ガイド部材(G)が前記第1金型(D1)に対し前記配列方向で摺動するのを許容する第2の隙間(C2)が設けられ、
前記第1,第2金型(D1,D2)のうちの何れか一方を他方に対し前記配列方向で接近させたときに、該第2金型(D2)が前記ガイド面(Gf)に嵌入することで、前記ガイド部材(G)が前記第1の隙間(C1)の範囲内で前記支持体(B)に対し前記配列方向と直交する方向に移動すると共に、前記第1金型(D1)が該ガイド部材(G)に追従移動して、該第2金型(D2)に対し該第1金型(D1)がセンタリングされることを特徴とする、鍛造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来構造では、上型及び下型相互をセンタリング時に直接係合させることで、支持体に対し水平移動可能な(即ちフローティング機能を持つ)上下一方の金型(第1金型)を、他方の金型(第2金型)に対しセンタリング方向に水平移動させる。そのため、上型及び下型相互が直接係合する際に、その係合部に働くこじり力が、フローティング機能を持つ第1金型に直接伝達されて、第1金型のセンタリング方向へのスムーズな移動(即ちフローティング動作)を阻害して、センタリングの精度を低下させるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、従来構造の上記課題を解決することができる鍛造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、所定の配列方向に配列されて相対向面に成形面を各々有する第1,第2金型と、前記第1,第2金型のうちの少なくとも一方を他方に対し前記配列方向で接近・離間するよう駆動可能な駆動手段と、前記第1金型を前記配列方向と直交する方向で移動可能に支持する支持孔を有する支持体とを備える鍛造装置において、前記第2金型が摺動可能に嵌入し得るガイド面を有して前記第1金型及び前記支持体間に配設されるガイド部材が、該第1金型の外周面に前記配列方向で摺動可能に嵌合、支持され、前記ガイド部材と前記支持孔の内周面との間には、該ガイド部材が前記支持体に対し前記配列方向と直交する方向に移動するのを許容する第1の隙間が設けられ、前記ガイド部材と、前記支持体に設けられて該ガイド部材に前記配列方向で対向する支持面との間には、該ガイド部材が前記第1金型に対し前記配列方向で摺動するのを許容する第2の隙間が設けられ、前記第1,第2金型のうちの何れか一方を他方に対し前記配列方向で接近させたときに、該第2金型が前記ガイド面に嵌入することで、前記ガイド部材が前記第1の隙間の範囲内で前記支持体に対し前記配列方向と直交する方向に移動すると共に、前記第1金型が該ガイド部材に追従移動して、該第2金型に対し該第1金型がセンタリングされることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記第1の隙間に第1弾性体が配設されることを第2の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記第2の隙間に第2弾性体が配設されることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、第1,第2金型が両金型の配列方向で互いに接近・離間可能である鍛造装置であって、第1金型を両金型の配列方向と直交する方向に移動可能に支持する支持孔を有する支持体を備えるものにおいて、第2金型が摺動可能に嵌入し得るガイド面を有して第1金型及び支持体間に配設されるガイド部材が、第1金型の外周面に両金型の配列方向で摺動可能に嵌合、支持され、第1,第2金型相互を接近させたときに、第2金型がガイド部材のガイド面に嵌入することで、ガイド部材が、ガイド部材と支持孔内周面との間の第1の隙間の範囲内で支持体に対し両金型の配列方向と直交する方向に移動すると共に、第1金型がガイド部材に追従移動して、第2金型に対する第1金型のセンタリングが行われる。
【0010】
これにより、センタリング時には、第1,第2金型に対し各々摺動可能なガイド部材を介して第1,第2金型相互が係合して、第1金型を第2金型に対しセンタリング方向にスムーズに移動させることができる。即ち、センタリングの際に従来装置のように第1,第2金型を相互に直接係合させる場合は、その係合部に働くこじり力が、フローティング機能を持つ第1金型に直接伝達されてスムーズなフローティング動作を損なう虞れがあるが、本発明によれば、センタリングの際に第1,第2金型の相互間を、その両金型に対し各々摺動可能なガイド部材を介して連係させることで、第2金型が第1金型に及ぼすこじり力を効果的に低減できるから、第1金型を支持体に対しセンタリング方向にスムーズに移動(即ちフローティング動作)させることができ、これにより、第2金型に対し第1金型を精度よくセンタリングすることができる。
【0011】
また第2の特徴によれば、ガイド部材と支持孔内周面との間に設けられる第1の隙間に第1弾性体が配設されるので、センタリング前には、第1弾性体の弾性力を利用してガイド部材を支持孔内方空間の中央側に弾発保持することができる。これにより、センタリング時には、第2金型のガイド部材への嵌入により、ガイド部材(従って第1金型)を支持孔の中心軸線から見て何れの方向にもスムーズに移動させることができて、センタリングを的確に行うことができる。また、鍛造装置が、例えば横型の鍛造装置である場合でも、センタリング前にはガイド部材を重力方向に偏ることなく支持孔内方空間の中央側に弾発保持できるから、センタリングを的確に行うことができる。
【0012】
また第3の特徴によれば、ガイド部材と、支持体に設けられてガイド部材に両金型の配列方向で対向する支持面との間に設けた第2の隙間に第2弾性体が配設されるので、第1,第2金型相互が接近して第2金型がガイド部材に接触する際に、ガイド部材が第2の隙間の範囲内で第1金型に対し摺動することが許容されるばかりか、その接触の際の衝撃を第2弾性体の弾性力で効果的に吸収でき、その衝撃に因る各部の破損、損傷を未然に効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態を
図1〜
図4に基づいて以下に説明する。
【0015】
本実施形態の鍛造装置Aは、所謂縦型の鍛造装置であって、固定のベース面(例えば工場のフロア等)上に設置、固定される下型支持台Bと、下型支持台Bに設けた上面開放且つ有底の支持孔Bhに支持される下型D1と、下型D1の真上に配列される上型D2と、上型D2を昇降可能に支持する上型支持体Uと、上型D2を下型D1に対し上下方向(即ち両金型D1,D2の配列方向)及び水平方向(即ち上記配列方向と直交する方向)に駆動可能な駆動装置7とを備える。
【0016】
駆動装置7は、本実施形態では上型支持体Uに対し上型D2を昇降駆動し得る昇降駆動手段7Vと、上型支持体Uを水平面内で何れの方向にも駆動し得る水平駆動手段7Hとを有する。水平駆動手段7H及び昇降駆動手段7Vの構造は、鍛造装置において従来周知であるため、説明を省略する。
【0017】
下型D1及び上型D2の相対向面(即ち型締め時における互いの当接面)には、鍛造用成形面21,22がそれぞれ形成される。また下型D1及び上型D2には、各々の鍛造用成形面21,22に開口するパンチ孔h1,h2が設けられ、その両パンチ孔h1,h2には、鍛造時に金属素材30を加圧するための下部パンチP1及び上部パンチP2がそれぞれ上下摺動可能に嵌挿される。下部パンチP1及び上部パンチP2には、その各々を下型D1及び上型D2に対し昇降駆動し得るパンチ駆動手段8V,9Vが連結される。尚、パンチ駆動手段8V,9Vの構造も、鍛造装置において従来周知であるため、説明を省略する。
【0018】
下型D2は、下型支持台Bにおける支持孔Bhの水平な底面部Bhb上に、支持孔Bhの中心軸線から見て何れの方向にも所定範囲で摺動し得るように載置、支持される。即ち、下型D1は、後述するように、上型D2に対するセンタリングのために下型支持台Bに対し水平移動し得る所謂フローティング機能を有している。
【0019】
尚、本実施形態では、下型D1の底面を摺動可能に載置、支持する支持孔Bhの底面部Bhbが、下型支持台Bと実質的に一体の(即ち相対移動不能に固定した)底面形成部材24で構成されるものを示したが、例えば、下型支持台Bとは別個独立した底面形成部材24を下型支持台Bに上下摺動可能に支持させ、図示しない昇降駆動手段で底面形成部材24(従って下型D1)を下型支持台Bに対し昇降駆動できるようにしてもよい。但し、その場合の底面形成部材24の上限位置は、その上限位置でも下型D1及び上型D2相互の型合わせ面が後述するガイド部材G内に収まるように設定される。
【0020】
而して、下型D2は第1金型の一例であり、上型D2は第2金型の一例である。また下型支持台Bは支持体の一例であり、昇降駆動手段7Vは駆動手段の一例である。
【0021】
また本実施形態の鍛造装置Aは、下型D1及び下型支持台B間に配設されて上型D2に対する下型D1のセンタリングに用いるガイド部材Gを更に備える。
【0022】
ガイド部材Gは、これを上下に貫通する円形孔状のガイド孔11iを中心部に有していて、例えば平面視で矩形状に形成される。即ち、ガイド部材Gは、ガイド孔11iの周壁を構成する部材本体部11と、部材本体部11を下型支持台B上に所定の移動範囲で移動可能に支持する一対の支持腕部12,12とを備える。各支持腕部12は部材本体部11(より具体的には上記周壁の上部分11u)と一体に形成される。
【0023】
部材本体部11、特に上記周壁の下部分は、支持腕部12の下面12fよりも下方に円筒状に延出する下側筒部11dを構成しており、その下側筒部11dの内側を上記ガイド孔11iが同心状に通っている。下側筒部11dは、下型支持台Bの支持孔Bhに遊隙(即ち後述する第1の隙間C1に相当)を介して嵌挿され、これにより、下側筒部11dの外周面11doは、支持孔Bhの内周面Bhsに同心状に囲繞される。また支持腕部12の下面12fは、下型支持台Bの上面(特に支持孔Bh周辺部のガイド部材支持面Bt)に上方から係合し得るように対面する。
【0024】
またガイド孔11iは、上部が本発明のガイド面Gfとして機能するものであり、そのガイド面Gfには、上型D2の先部D2a(即ち下端部)外周が摺動可能に嵌入可能である。またガイド部材Gは、ガイド孔11iの少なくとも下部(本実施形態では中間部及び下部)において、下型D1の外周面D1o上部に摺動可能に嵌合、支持される。即ち、本実施形態のガイド孔11iは、これの上部が上型D2の先部D2a外周を摺動可能に嵌入させるガイド面Gfとして機能する他、少なくとも下部が、下型D1の外周面D1oに対する摺動支持孔としても機能する。尚、本実施形態では、ガイド孔11iの、ガイド面Gfとして機能する部分の内径と、上記摺動支持孔として機能する部分の内径を同径としているが、異径としてもよい。
【0025】
そして、ガイド面Gfの上方開口縁部には、上型D2のガイド面Gfへの嵌入を案内する上向きテーパ状の面取りGfaが設けられる。一方、この面取りGfaに対応して上型D2の先端部外周縁にも面取りr(本実施形態では横断面円弧状のアール)が設けられる。従って、それら面取りGfa,rにより、上型D2の先部D2a外周をガイド面Gfに容易且つスムーズに嵌入させることができる。
【0026】
ガイド部材Gの各支持腕部12は、これを上下に貫通する複数の貫通支持孔12hを有しており、各貫通支持孔12hの内周面には上向きの中間段部が形成される。そして、各支持腕部12は、貫通支持孔12hを通して下型支持台Bに螺挿した複数のボルト14により下型支持台B上に保持される。
【0027】
各ボルト14の頭部下面と下型支持台Bの上面(より具体的にはガイド部材支持面Bt)との間には、フランジ部15fを上端に有する円筒状のカラー15と、カラー15上面に隣接するワッシャ16とが挟着される。カラー15は、貫通支持孔12hに緩く挿通されると共に、フランジ部15fを貫通支持孔12hの上記中間段部に係合させる。またカラー15の中心孔にはボルト14の軸部が貫通する。そして、下型支持台Bには、カラー15及びワッシャ16を介してボルト14が所定の螺合位置に締結される。
【0028】
このようなボルト14の下型支持台Bへの締結状態では、支持腕部12の貫通支持孔12hとカラー15との間に径方向遊隙s1及び軸方向遊隙s2が設けられる。そして、径方向遊隙s1に対応して、部材本体部11の下側筒部11dの外周面11doと支持孔Bhの内周面Bhsとの対向面間には、ガイド部材Gが下型支持台Bに対し水平移動するのを許容する、径方向の第1の隙間C1が環状に設けられる。また軸方向遊隙s2に対応して、ガイド部材Gの支持腕部12の下面12fと、下型支持台Bの上面(即ちガイド部材支持面Bt)との対向面間には、ガイド部材Gが下型支持台Bに対し下方に所定量移動するのを許容する、上下方向の第2の隙間C2が環状に設けられる。
【0029】
第1の隙間C1には、第1の隙間C1を維持すべく、環状をなす第1弾性体としての第1のOリングR1が設けられる。第1のOリングR1は、本実施形態では部材本体部11の下側筒部11dの外周面11doに凹設した例えば2か所の第1環状リング溝g1にそれぞれ嵌着される。従って、ガイド部材Gは、ガイド部材Gへの上型D2の未嵌入状態(
図1,
図3参照)では、第1のOリングR1の弾発力により、支持孔Bhの内方空間の中央側(即ち、支持孔Bhの中心軸線から見て何れの方向にも偏りのない適正な待機位置側)に弾発保持可能である。そして、その弾発保持状態では、第1の隙間C1がガイド部材Gの全周領域に亘って略均等に確保される。尚、第1のOリングR1の設置個数は、1個だけでもよく、或いは3個以上でもよい。
【0030】
一方、第2の隙間C2には、第2の隙間C2を維持すべく、環状をなす第2弾性体としての第2のOリングR2が設けられる。第2のOリングR2は、本実施形態ではガイド部材Gの支持腕部12の下面12fに凹設した第2環状リング溝g2に嵌着される。従って、ガイド部材Gは、上型D2のガイド部材Gへの未嵌入状態では、第2のOリングR2の弾発力により、支持腕部12の下面12fがガイド部材支持面Btより上方に第2の隙間C2だけ浮き上がった待機状態に弾発保持可能である。尚、第2のOリングR2は、第2の隙間C2に径方向に間隔おいて2個以上、設けてもよい。
【0031】
また、第1環状リング溝g1は、これを下側筒部11dの外周面11doに設ける代わりに、第1の隙間C1を挟んでその反対面(即ち支持孔Bhの内周面Bhs)に設けてもよい。また第2環状リング溝g2は、これを支持腕部12の下面12fに設ける代わりに、第2の隙間C2を挟んでその反対面(即ち下型支持台Bのガイド部材支持面Bt)に設けてもよい。
【0032】
かくして、本実施形態のガイド部材Gは、これのガイド面Gfで下型D1を軸方向摺動可能に嵌合、支持しながら、下型支持台Bに第1,第2のOリングR1,R2を介してフローティング支持される。そして、そのフローティング支持により、ガイド部材Gは、第1,第2のOリングR1,R2を弾性変形させつつ第1,第2の隙間C1,C2の範囲で径方向にも軸方向にも移動可能であり、特にその径方向の移動に追従して下型D1を下型支持台Bに対し水平移動させることができ、その水平移動により上型D2に対し下型D1をセンタリング可能である。
【0033】
ところで第1の隙間C1は、上型D2に対し下型D1をセンタリングする際に許容される、下型D1の下型支持台Bに対する最大水平移動量に相当するものであって、例えば本実施形態では0.1mmに設定される。また第2の隙間C2は、上型D2の先部D2a外周をガイド部材Gのガイド孔Gfに嵌入させるときに許容される、ガイド部材Gの下型支持台Bに対する最大下方移動量に相当するものであって、例えば本実施形態では0.05mmに設定される。尚、各図面においては、理解し易くするために、上記隙間C1,C2や面取りGfa,rを多少、誇張して描いている。
【0034】
一方、下型D1の外周面D1oと、その外周面D1oに上下摺動可能に嵌合、支持されるガイド孔11iとの相互間の径方向間隙は、その相互間がガタなくスムーズに相対摺動するのを許容する摺動クリアランス(例えば、本実施形態では0.01mm)に設定される。また、上型D2の先部D2a外周と、その先部D2a外周を摺動可能に嵌入させるガイド部材Gのガイド面Gf(即ちガイド孔11i)との相互間の径方向間隙もまた、その相互間がガタなくスムーズに相対摺動するのを許容する摺動クリアランス(例えば、本実施形態では0.01mm)に設定される。
【0035】
そして、これらの各摺動クリアランスは、ガイド部材Gにセンタリング機能を発揮させるための上記した第1,第2の隙間C1,C2よりも十分に小さい(即ち微小な)間隙量である。しかも、本実施形態では、下型D1と上型D2とが型締めされた状態(
図4参照)での鍛造用成形面21,22相互の、型合わせ面に沿う方向(即ち水平方向)の寸法公差以下、即ち、型締め時における鍛造用成形面21,22相互の芯ずれ許容量以下に、各摺動クリアランスが設定されている。
【0036】
従って、ガイド部材Gに対し下型D1及び上型D2が各摺動クリアランス分だけ極く僅かに水平移動したとしても、その摺動クリアランスに因る、下型D1及び上型D2の鍛造用成形面21,22相互の芯ずれ量は、微小であって実用上問題とはならず、即ち、鍛造過程で高い成形精度を確保可能である。
【0037】
次に前記第1実施形態の作用を説明する。
【0038】
鍛造装置Aの型開き状態(鍛造成形前)においては、例えば、
図1に示すように上型D2が、下型D1の真上で且つ下型D1より十分離間した初期位置に置かれるように、昇降駆動手段7V及び水平駆動手段7Hが作動制御されて上型D2の昇降位置および上型支持体Uの水平位置が設定される。但し、このようにして上型D2の初期位置を規定しても、種々の要因(例えば、上型支持体U及び/又は下型支持台Bの熱変形等)により、上型D2の中心軸線L2と下型D1の中心軸線L1との間に、成形精度上許容できない芯ずれε(
図1参照)が生じる場合がある。
【0039】
そこで、このような芯ずれεにも対応可能な本実施形態の鍛造成形工程の一例を、次に説明する。
【0040】
先ず、
図1の型開き状態より、下型D1の鍛造用成形面21内に、常温状態又は予め加熱された状態のビレット即ち金属素材30をセットし、その後、上型D2が下型D1に接近するように上型D2を上型支持体Uに対し昇降駆動手段7Vで下降させる。その下降により、上型D2に対する下型D1のセンタリング(より具体的には上型D2の先部D2a外周の、ガイド部材Gへの嵌入)が開始される。
【0041】
即ち、上型D2を徐々に下降させて下型D1に接近させたときに、上型D2の先部D2a外周が面取りGfa,rにより摺接、案内されてガイド面Gfに嵌入すると、ガイド部材Gは、部材本体部11の下側筒部11dの外周面11doと下型支持台Bの支持孔Bhとの間の径方向の第1の隙間C1の範囲内で下型支持台Bに対し水平移動する。それと同時に、このガイド部材Gの水平移動に追従して、下型D1が下型支持台Bに対し同方向に水平移動(より具体的には支持孔Bhの底面部Bhb上を摺動)する。かくして、センタリング前の上型D2及び下型D1相互に前述の如く芯ずれεが生じていた場合でも、本実施形態ではガイド部材Gを介して上型D2に対し下型D1が精度よくセンタリングされるため、センタリング後は、上型D2及び下型D1相互の芯ずれεがゼロ、乃至は成形精度上問題とならない程度の微小量に抑えられる。
【0042】
そして、そのセンタリング状態で上型D2が更に下降すると、遂には上型D2及び下型D1の相対向面が互いに密着した型締め状態となる。従って、この型締め状態では、上型D2及び下型D1の相対向する鍛造用成形面21,22が、相互の芯ずれεをゼロ乃至は上記微小量に抑制された状態で、単一のキャビティを形成する。
【0043】
しかる後に、下部パンチP1及び上部パンチP2をキャビティ側に各々駆動して、その両パンチP1,P2で金属素材30をキャビティ内方に強く押し込むようにする。これにより、キャビティ内の金属素材30が極めて高い加圧力で加圧されて、キャビティ形状に対応した製品31が鍛造成形される。
【0044】
鍛造成形の終了後は、上型D2を下型D1に対し上昇させて型開きを行い、キャビティ内より製品31を取り出す。この場合、必要に応じて、下部パンチP1及び上部パンチP2の少なくとも一方を製品取出し用のノックアウトピンとして兼用可能である。
【0045】
上記したように本実施形態の鍛造装置Aは、上型D2の先部D2a外周が摺動可能に嵌入し得るガイド面Gfを内周に有して下型D1及び下型支持台B間に介設されるガイド部材Gが、下型D1の外周面D1oに摺動可能に嵌合、支持されている。そして、下型D1に対し上型D2を接近させたときに、上型D2の先部D2a外周がガイド部材Gのガイド面Gfに係合、嵌入することで、部材本体部11の下側筒部11dの外周面11doと下型支持台Bの支持孔Bhとの径方向間隙(第1の隙間C1)の範囲内でガイド部材Gが下型支持台Bに対し水平移動すると共に、ガイド部材Gに追従して下型D1も同方向に水平移動する。これにより、上型D2に対する下型D1のセンタリングが行われる。そして、そのセンタリングの際に、上型D2に対し相対摺動するガイド部材Gは、下型D1に対しても、ガイド部材Gとガイド部材支持面Btとの対向面間の上下方向の隙間(即ち第2の隙間C2)の範囲内で下方へ摺動可能である。
【0046】
このようにセンタリングの際に、上型D2及び下型D1相互が、その両者と各々摺動可能なガイド部材Gを介して間接的に係合するため、このガイド部材Gを介して下型D1を上型D2に対しセンタリング方向にスムーズに水平移動させることができる。即ち、特許文献1,2等に示される従来装置のようにセンタリング時に上型D2及び下型D1相互を仮に直接係合させる場合は、その係合部に働くこじり力がフローティング機能付きの第1金型(本実施形態で言えば下型D1)に直接伝達されてスムーズなフローティング動作を損なう虞れがあるが、本実施形態の鍛造装置Aでは、上型D2及び下型D1に対し各々摺動可能であって上型D2及び下型D1相互を連係させるガイド部材Gが、センタリングの際にフローティング機能付きの下型D1に対し多少とも下方(即ち第2の隙間C2を詰める方向)へ摺動することで、下型D1に作用するこじり力を効果的に低減することができる。
【0047】
これにより、下型D1がガイド部材Gに追従してセンタリング方向にスムーズに移動(即ちフローティング動作)できることから、センタリングを精度よく実行可能となる。その上、本実施形態のガイド部材Gは、上型D2及び下型D1とは別部品であり且つ両金型D1,D2と比べ比較的小型の部品であるため、摩耗時には比較的低コストで容易に交換可能である。
【0048】
また本実施形態では、ガイド部材Gと支持孔Bhの内周面Bhsとの間に設けられる径方向の第1の隙間C1に第1のOリングR1が配設されている。従って、センタリング前には、この第1のOリングR1の弾性力を利用してガイド部材Gを、支持孔Bhの内方空間の中央側(即ち、支持孔Bhの中心軸線から見て何れの方向にも偏りのない適正な待機位置)に弾発保持することができる。
【0049】
これにより、センタリング時には、第2金型(上型D2)の先部D2a外周のガイド部材Gへの嵌入により、ガイド部材G、従って第1金型(下型D1)を何れの方向にもスムーズに移動させることができるため、センタリングを的確に行うことができる。また、鍛造装置Aを、例えば横型の鍛造装置に転用した場合でも、センタリング前にはガイド部材Gを重力方向に偏ることなく支持孔Bhの内方空間の中央側に弾発保持できて、センタリングが的確に行われる。
【0050】
更に本実施形態では、ガイド部材Gと、ガイド部材Gに対し上下方向で係合し得るように下型支持台Bに設けたガイド部材支持面Btとの対向面間に上下方向の第2の隙間C2が設けられ、その第2の隙間C2に第2のOリングR2が配設されている。従って、上型D2が下型D1に接近してガイド部材Gに接触する際に、ガイド部材Gが第2のOリングR2を弾性変形させつつ第2の隙間C2の範囲内で下型D1に対し下方へ摺動することが許容される。しかもその接触の際の衝撃が、第2のOリングR2の弾性力で効果的に吸収緩和されるため、その衝撃に因る各部(例えばガイド部材Gの各部分や、上型D2の先端部の面取りr、下型支持台Bのガイド部材支持面Bt等)の破損、損傷を未然に効果的に防止可能である。
【0051】
尚、第2のOリングR2は、上記衝撃が無くなると自己の弾性により迅速に復元して、ガイド部材Gとガイド部材支持面Btとの間に第2の隙間C2を再び形成する。
【0052】
また
図5には、第2実施形態に係る鍛造装置に用いるガイド部材Gの一例が示される。第1実施形態では、ガイド部材Gを構成する部材本体部11および支持腕部12,12が同幅で一体に形成されるものを示したが、第2実施形態のガイド部材Gは、全体が円筒状をなす部材本体部11′に対し比較的小幅の支持腕部12′,12′が別々に形成されて後付けされる点で第1実施形態と相違する。尚、部材本体部11′及び支持腕部12′,12′相互の結合手段としては、溶接、ねじ止め、接着、カシメ等の結合手段が適宜採用可能である。
【0053】
また、第2実施形態の変形例として、部材本体部11′及び支持腕部12′,12′を一体に形成するようにしてもよい。
【0054】
第2実施形態の鍛造装置のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、それ以上の構造説明は省略する。そして、第2実施形態及びその変形例においても、第1実施形態の前記した作用効果と同等の作用効果を発揮可能である。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態では、下型D1及び上型D2の相互接近に連動して上型D2に対し下型D1をセンタリングするために、下型D1にフローティング機能を持たせる(即ち下型D1を下型支持台Bに対し水平移動可能とする)ものを示したが、本発明は、前記実施形態に限定されない。例えば、下型D1に対し上型D2をセンタリングするために、上型D2にフローティング機能を持たせる(即ち上型D2を上型支持体Uに対し水平移動可能とする)ようにしてもよく、この場合は、上型D2が第1金型に、また下型D1が第2金型に、また上型支持体Uが支持体になる。
【0057】
また前記実施形態では、下型D1及び上型D2に、金属素材加圧用の下部パンチP1及び上部パンチP2をそれぞれ昇降駆動可能に付設して両パンチP1,P2でキャビティ内の金属素材30を加圧するものを示したが、本発明は、前記実施形態に限定されない。例えば、下型D1及び上型D2のうちの何れか一方にだけ金属素材加圧用パンチを設けてもよく、或いは、下型D1及び上型D2の何れにも金属素材加圧用パンチを設けないでキャビティ内の金属素材30を下型D1及び上型D2で直接加圧するようにしてもよい。
【0058】
また前記実施形態では、第1金型(下型D1)及び第2金型(上型D2)を上下方向に配列し且つその配列方向に相互に接近・離間し得るようにした縦型の鍛造装置に本発明を適用したものを示したが、本発明は、斯かる縦型の鍛造装置に限定されない。例えば、第1金型及び第2金型を水平方向に配列し且つその配列方向に相互に接近・離間し得るようにした横型の鍛造装置(即ちフォーマー)に適用してもよい。
【0059】
また前記実施形態では、第1,第2の隙間C1,C2、並びにガイド部材Gと上型D2間、及びガイド部材Gと下型D1間の各摺動クリアランスに関して、設定値の一例を数値で示したが、本発明は、これらの数値に限定されるものではない。即ち、第1,第2の隙間C1,C2及び各摺動クリアランスは、本発明の所期の作用効果を達成可能な範囲で適宜に設定変更可能である。
【0060】
また前記実施形態では、ガイド部材Gを下型支持台Bに第1,第2のOリングR1,R2を介してフローティング支持するものを示したが、第1,第2のOリング(弾性体)R1,R2を省略することも可能である。この場合、例えば、図示しない適当な治具を用いることでガイド部材G及び下型D1の支持孔Bhに対する初期位置を規定することができ、その初期位置は、例えばガイド部材G及び下型D1相互の嵌合面間に作用する摩擦力や、下型D1及び支持孔Bh(底面部Bhb)相互の当接面間に作用する摩擦力により保持可能である。なお、摩擦力が不足する場合は、上記嵌合面間や当接面間にグリスを塗布するなど、摩擦力を増加させる手段を講じてもよい。