【解決手段】実施形態に係るエネルギー管理システムは、圧延プラントにおける生産計画にもとづいて、製品を識別するデータに関連付けられたデータを保持するエネルギー管理装置と、前記プラントに設けられた駆動装置に、前記生産計画にもとづく運転に関する制御信号をそれぞれ出力し、前記駆動装置の消費電力に関するデータを入力する制御装置と、を備える。前記駆動装置は、前記圧延プラントの複数の工程に1つ以上設けられ、前記エネルギー管理装置は、前記消費電力に関するデータを時系列に収集し、製品を識別するデータごとに関連付けて保持し、前記複数の工程のそれぞれについてエネルギーを計算して、結果を出力する。
圧延プラントにおける生産計画にもとづいて製造される製品を識別する識別データおよび前記識別データに関連付けられたデータを含むデータベースを保持するエネルギー管理装置と、
前記圧延プラントに設けられた駆動装置に、前記生産計画にもとづいて運転に関する制御信号をそれぞれ出力する制御装置と、
を備え、
前記駆動装置は、前記圧延プラントの複数の工程に1つ以上設けられ、
前記エネルギー管理装置は、前記制御信号にもとづく前記駆動装置ごとの消費電力に関するデータを前記制御装置から時系列に収集し、前記識別データごとに関連付けて保持し、前記識別データのそれぞれの前記消費電力にもとづいて前記複数の工程のそれぞれについてのエネルギーを計算して、結果を出力するエネルギー管理システム。
エネルギー管理装置によって、圧延プラントにおける生産計画にもとづいて製造される製品を識別する識別データおよび前記識別データに関連付けられたデータを含むデータベースを保持し、
制御装置によって、圧延プラントに設けられた駆動装置に、前記生産計画にもとづいて運転に関する制御信号をそれぞれ出力し、
前記駆動装置は、前記圧延プラントの複数の工程に1つ以上設けられ、
前記エネルギー管理装置は、前記制御信号にもとづいて前記駆動装置ごとの消費電力に関するデータを前記制御装置から時系列に収集し、製品を識別するデータごとに関連付けて保持し、前記製品を識別する各データに関して、前記複数の工程のそれぞれについてエネルギーを計算して、結果を出力するエネルギー管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、鉄鋼の圧延ラインの一例を示す模式図である。
図1に示すように、圧延ライン10は、加熱炉12と、粗圧延機14と、仕上圧延機16と、巻取機18と、スケール除去装置20と、を含んでいる。この例では、圧延ライン10は、熱間圧延を行う。
【0013】
加熱炉12は、上流工程で製造された被圧延材(スラブ)2aを熱間圧延に必要な温度に加熱する。加熱炉12は、たとえば、被圧延材2aを1200℃前後の温度に加熱する。
【0014】
粗圧延機14は、被圧延材2aを所定の板厚および板幅に圧延することにより、被圧延材2aから中間材(粗バー)2bを形成する。粗圧延機14には、たとえば、可逆式の圧延機が用いられる。この例では、被圧延材2a(中間材2b)の搬送方向に並ぶ2台の粗圧延機14が圧延ライン10に設けられている。粗圧延機14の台数は、2台に限ることなく、1台でもよいし、3台以上でもよい。
【0015】
仕上圧延機16は、中間材2bをさらに圧延することにより、中間材2bから熱延鋼板2cを形成する。仕上圧延機16には、たとえば、複数の仕上スタンドF1〜F7を搬送方向に並べたタンデム式圧延機が用いられる。この例では、7台の仕上スタンドF1〜F7が設けられている。仕上スタンドの数は、7台に限ることなく、任意の台数でよい。
【0016】
巻取機18は、仕上圧延機16によって形成された熱延鋼板2cをコイル状に巻き取る。巻取機18は、圧延コイルを形成する。
【0017】
スケール除去装置20は、ノズル部22,24と、ポンプ30と、配管32と、を含む。ノズル部22,24およびポンプ30は、配管32によって流体的に接続されている。配管32には、水等の流体が流通しており、この流体は、ポンプ30によって駆動され、ノズル部22,24の各ノズル22aから噴出される。流体は、搬送されるスラブ2a、中間材2b等の鋼板の表面に噴出され、その表面に形成されるスケールを除去する。
【0018】
圧延ラインには、図示しないが、上述のほかに圧延材を搬送方向に搬送するフィードローラやテーブルローラ等がパスラインに沿って設けられている。
【0019】
圧延機のミルや、テーブルローラ等の駆動は、それぞれの駆動装置を介して行われる。駆動装置は、電動機やアクチュエータを速度制御、位置制御等を行いながら駆動する。
【0020】
各電動機およびアクチュエータは、それぞれの動作状況に応じて電力を消費している。その消費電力の値は時間に応じて変化し得る。各電動機およびアクチュエータにおいては、これらを駆動する駆動装置によって駆動電力を把握することができる。これらの電力消費に関連するデータは、制御装置によって収集される。
【0021】
圧延ライン10は、複数の工程を含む。各工程(以下、ゾーンともいう。)には、1つ以上の電動機やアクチュエータが含まれている。この例では、圧延ライン10は、Aゾーン〜Fゾーンを含む。たとえば、Aゾーンには、加熱炉12の温度制御装置が含まれる。たとえば、Cゾーンには、2台の粗圧延機14が含まれており、それぞれの粗圧延機14は、複数の電動機によって駆動される。たとえば、Eゾーンには、仕上圧延機16が含まれており、それぞれの仕上圧延機16は、複数の電動機によって駆動される。なお、この各ゾーンの名称は、一例であり、任意に設定される。
【0022】
図2は、本実施形態に係るエネルギー管理システムを例示するブロック図である。
図2に示すように、エネルギー管理システム50は、エネルギー管理装置53と、制御装置58と、を備える。エネルギー管理装置53および制御装置58は、制御ネットワーク60を介して互いに接続されている。
【0023】
上位計算機51は、圧延プラントにおいて、どのような品種を、どの量で、いつまでに生産するか等の計画を保持している。生産計画の詳細は、ユーザによって決定される。上位計算機51は、たとえばデータサーバ等である。上位計算機51は、通信ネットワーク59、ゲートウェイ装置52および制御ネットワーク60を介して、エネルギー管理装置53に接続される。ゲートウェイ装置52は、汎用の通信ネットワーク59を高速の制御ネットワーク60に接続するために用いられている。
【0024】
エネルギー管理装置53は、上位計算機51から生産計画に関するデータを受け取る。エネルギー管理装置53は、圧延材および製品のトラッキングデータを保持している。保持したデータの一部は、制御ネットワーク60を介して制御装置58に送信される。
【0025】
トラッキングデータは、製品に関するデータである。たとえば、トラッキングデータは、圧延材のコイル番号、圧延材の情報(材質、幅、長さおよび厚さ等)、圧延ピッチのデータを含む。これらの情報やデータは、コイル番号に関連付けされて、データベースとしてエネルギー管理装置53によって保持されている。
【0026】
エネルギー管理装置53は、圧延プラントにおけるドライブ装置55、高圧盤56およびMCC盤57等の消費電力に関するデータをリモート入出力装置54を介して収集する。エネルギー管理装置53は、収集したデータにもとづいて、工程ごとの消費電力量を時系列で計算する。時系列で計算される消費電力量のデータは、コイル番号によって関連付けられており、エネルギー管理装置53は、たとえば製品の長さや厚さといった属性のデータとともに工程単位の消費電力量のデータを集計等する。
【0027】
エネルギー管理装置53は、たとえばコンピュータ端末である。それぞれ入出力のための装置を備えており、入力装置によって入力されたデータや情報に応じて、所望のデータや情報を所望の形式で出力装置に出力することができる。出力装置は、たとえばディスプレイ装置であり、所望のデータを所望の形式に加工して表示することができる。
【0028】
制御装置58は、制御ネットワーク60およびリモート入出力装置54を介して、ドライブ装置55、高圧盤56およびMCC盤57等に運転や停止、運転速度等のデータを含む制御信号を送信する。制御装置58は、制御ネットワーク60およびリモート入出力装置54を介して、ドライブ装置55、高圧盤56およびMCC盤57から、動作状態等を表すデータを含む制御信号を受信する。制御装置58は、これら受信した制御信号や、あらかじめコーディングされたプログラムのデータ等にもとづいて、ドライブ装置55等に送信するデータを設定して、圧延プラントの動作を制御する。
【0029】
制御装置58は、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)である。上述したプログラムは、制御装置58内に設けられ、あるいは、制御装置58と相互に接続された記憶装置(図示せず)に格納されている。プログラムは、たとえばラダープログラムである。
【0030】
制御装置58は、この例では、ハードワイヤ61を介してドライブ装置55に接続されている。ドライブ装置55は、たとえば、圧延プラントの交流電動機を駆動するインバータ装置である。ドライブ装置55は、交流電動機を所望の速度で運転するために、所望の周波数の交流電力を出力する。交流電動機は、ドライブ装置55に供給された速度指令値を含む制御信号にしたがう速度で駆動される。ドライブ装置55は、駆動対象となる交流電動機の速度に関するデータおよびトルクに関するデータを有しており、エネルギー管理装置53は、リモート入出力装置54および制御装置58を介してこれらのデータを収集する。
【0031】
制御装置58は、この例では、ハードワイヤ61を介して高圧盤56に接続されている。高圧盤56は、高圧ポンプを駆動する駆動装置である。高圧ポンプは、圧延材の表面に形成されるスケールを除去する水等の流体を噴出する場合等に駆動される。高圧盤56は、駆動対象の高圧ポンプの速度やトルクに関するデータを有しおり、エネルギー管理装置53は、リモート入出力装置54および制御装置58を介してこれらのデータを収集する。
【0032】
制御装置58は、この例では、ハードワイヤ61を介してMCC盤57に接続されている。MCC盤57は、圧延プラントの各モータや小容量のポンプ等のアクチュエータを駆動する。エネルギー管理装置53は、リモート入出力装置54および制御装置58を介して、MCC盤57によって駆動されるアクチュエータの消費電力に関するデータを収集する。
【0033】
圧延プラントでは、その他のアクチュエータや加熱炉等の温度管理装置等も設けられており、これらの消費電力に関するデータも必要に応じて収集される。
【0034】
本実施形態のエネルギー管理システム50の動作について説明する。
図3(a)は、本実施形態のエネルギー管理システムの動作を説明するためのデータの構造を示す模式図である。
図3(b)は、本実施形態のエネルギー管理システム50の動作を説明するための計算のフローチャートである。
本実施形態のエネルギー管理システム50では、時系列で収集されたトラッキングデータのコイル番号ごとに関連付けられた消費電力に関するデータを用いる。具体的には、この例では、
図3(a)に示すように、電動機に関して、速度データ群101およびトルクデータ群102が時系列で収集されている。たとえば、定周期に設定された時間(Date1〜Date n)ごとに速度データおよびトルクデータがエネルギー管理装置53のデータベースに格納される。
【0035】
"SpeedPointData x"で表される「速度データ」は、特定の電動機の回転速度のデータである。特定の電動機とは、たとえば粗圧延工程のうちの1つの圧延ミルを駆動する電動機等である。"TorquePointData x"で表される「トルクデータ」は、特定の電動機が出力するトルクのデータである。その電動機に対して、「速度データ」に「トルクデータ」を乗じて、係数0.9および係数1/3600をさらに乗じている。係数データ103の0.9は、この例では、電動機の力率である。係数データ104の1/3600は、計算結果(電力量、単位[Wh])を電力に変換するための時間に関する定数である。係数データ103,104は、電動機ごとに設定されて、エネルギー管理装置53のデータベースにあらかじめ入力されている。
【0036】
計算結果群105は、速度データ群101およびトルクデータ群102について、時間ごとの計算結果がエネルギー管理装置53のデータベースに格納される。
【0037】
図3(b)に示すように、本実施形態のエネルギー管理システム50は、複数のステップを含む計算フローを有する。ステップS01において、エネルギー管理装置53は、データベースに格納されている計算結果群105のデータ(Result1〜Result n)を、収集された時系列(Date1〜Date n)にわたって加算する。加算されたデータは、Motor1についての消費電力量である。同様にして、他の電動機(Motor2〜Motor n)についても消費電力量が計算される。
【0038】
ここで、本実施形態のエネルギー管理システム50では、圧延ラインの工程がいくつかの工程を含んでいる。すでに説明したように、いくつかの工程は、Aゾーン、Bゾーン、…,Fゾーンである。消費電力に関するデータは、各電動機やアクチュエータ等がいずれの工程("Zone x")に属するかについても関連付けられている。つまり、これらのデータもコイル番号ごとに関連付けられている(
図3(a)のデータ群106)。
【0039】
この例では、各工程には、"Zone1"〜"Zone n"が対応している。たとえば"Zone1"には、粗圧延工程(Cゾーン)が対応しており、
図1の複数の粗圧延機14のミルを駆動する複数の電動機(Motor1〜Motor n)に対応する。
【0040】
ステップS02において、エネルギー管理装置53は、同一ゾーンの電動機のエネルギーのデータを加算する。エネルギー管理装置53では、同じ工程における消費電力に関するデータを加算することによって、その工程におけるエネルギー消費を計算して出力することができる。
【0041】
ステップS03において、エネルギー管理装置53は、すべてのゾーンのエネルギーを加算する。エネルギー管理装置53は、各工程の消費電力量のデータをすべて加算することによって、そのコイル番号を有する製品の消費電力量を計算することができる。
【0042】
図4および
図5は、実施形態のエネルギー管理システムの出力画面の一例の模式図である。
図4に示すように、表示データ200は、データ表示領域201と、表示データ設定領域202と、を含む。データ表示領域201には、コイル番号ごとに、各工程における消費電力量の積算データが表示される。この例では、コイル番号ごとに、Aゾーン〜Fゾーンを色分けして表示している。なお、エネルギー管理装置53の出力装置としては、このようなディスプレイによる表示のほか、プリンタ等によりハードコピーを出力することもできる。
【0043】
表示データ設定領域202は、複数のプルダウンメニューやデータ入力欄を含む。これらのプルダウンメニューおよびデータ入力欄は、コイル番号に関連付けられている鋼種、長さおよび厚さをキーとして、データの抽出条件を設定することができる。また、コイル番号には、製造日が関連付けられているので、製造日をキーとしてデータの抽出条件を設定することができる。
【0044】
たとえば、対象日付設定メニュー211によって、製造日の範囲を設定することができる。コイルID入力欄212によって、指定したコイル番号の製品の消費電力量のデータを出力することができる。スチールグレードプルダウンメニュー213によって、所望の鋼種のデータのみを抽出して、製品の消費電力量のデータを出力することができる。
【0045】
たとえば、
図4のような表示出力より、各コイル番号に対して、Cゾーン(粗圧延工程)およびEゾーン(仕上圧延工程)がほとんどの消費エネルギーを占めていることがわかる。中でも、仕上圧延工程において消費されるエネルギーが支配的であり、仕上圧延工程の消費エネルギーを低減させることが、全体工程の消費エネルギー削減に大きく寄与することが判明する。
【0046】
図5に示すように、エネルギー管理装置53では、上述によってディスプレイ上に表示されたデータのより詳細な消費電力量のデータを出力するようにすることもできる。この例では、たとえば
図4のデータ表示領域201上に表示されたコイル番号(コイルID)にはリンクが張られており、このリンクをクリックすることによって
図5のような詳細データを表示する。この出力データでは、各工程の消費電力量の詳細が工程ごとに棒グラフで表示されている。ユーザは、このようなグラフによって可視化されたデータにもとづいて、消費エネルギー削減施策を検討し、計画することができる。なお、表示データは、このような棒グラフに限らず、円グラフにしたり、折れ線グラフにしたり、任意に設定できるようにしてもよい。表示グラフをプルダウンメニュー等によって設定するようにしてもよい。
【0047】
本実施形態のエネルギー管理システムの効果について説明する。
本実施形態のエネルギー管理システム50では、エネルギー管理装置53は、制御ネットワーク60を介して制御装置58に接続されている。エネルギー管理装置53は、鉄鋼製品のトラッキングデータを保持しており、これらトラッキングデータは、コイル番号によって関連付けられている。そして、エネルギー管理装置53は、コイル番号に関連付けられている、電動機等の消費電力に関するデータを時系列で収集する。電動機等に関するデータは、各工程に関連付けられているので、コイル番号に関連付けられた消費電力に関するデータは、各工程ごとの電動機等の時系列データとして保持される。そのため、エネルギー管理装置53は、工程ごとの消費電力に関するデータを集計して出力することができる。
【0048】
トラッキングデータ、たとえば鋼種、鋼板の長さおよび鋼板の厚さは、コイル番号に関連付けられているので、これらトラッキングデータをキーとして、消費電力量のデータを検索して抽出し、各種グラフで出力することができる。そのため、その圧延プラントにおける鋼種、鋼板の長さおよび鋼板の厚さに応じた消費電力量の特徴を可視化することが可能になり、プラントのエネルギー効率の向上の利用に寄与することができる。
【0049】
以上説明した実施形態によれば、1つの圧延ライン中のゾーンごとのエネルギー消費量を製品の識別データごとに集計し、出力するエネルギー管理システムおよびエネルギー管理方法を実現することができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。