特開2018-202504(P2018-202504A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-202504医療用支持アームシステム、医療用支持アームの制御方法、および医療用支持アームの制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202504(P2018-202504A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】医療用支持アームシステム、医療用支持アームの制御方法、および医療用支持アームの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20181130BHJP
   A61B 90/25 20160101ALI20181130BHJP
   A61B 90/50 20160101ALI20181130BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
   A61B90/25
   A61B90/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-107681(P2017-107681)
(22)【出願日】2017年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】松田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文泰
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 容平
(72)【発明者】
【氏名】長阪 憲一郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707AS38
3C707BS12
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS30
3C707KS35
3C707KS40
3C707KX10
3C707LW05
3C707XK28
(57)【要約】
【課題】推定した外力に基づくトルク制御を実現とし、より多様な状況に対応する。
【解決手段】アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体であり、医療用ユニットを支持するよう構成された支持アームと、前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部、および前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて前記関節部の駆動を制御する関節制御部、を備える、制御装置と、を備える、医療用支持アームシステムが提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体であり、医療用ユニットを支持するよう構成された支持アームと、
前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部、および前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて前記関節部の駆動を制御する関節制御部、を備える、制御装置と、
を備える、
医療用支持アームシステム。
【請求項2】
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る運動推定トルクを算出し、前記運動推定トルクに基づいて、前記外トルクを推定する、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項3】
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る摩擦トルクを推定し、前記摩擦トルクに基づいて、前記運動推定トルクを算出する、
請求項2に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項4】
前記外力推定部は、減速機の静止摩擦と動摩擦とに基づくモデル同定結果を用いて前記摩擦トルクを推定する、
請求項3に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項5】
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る内部消費トルクを推定し、前記内部消費トルクに基づいて、前記運動推定トルクを算出する、
請求項2に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項6】
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る電流指令トルクに基づいて、前記外トルクを推定する、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項7】
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る位相差指令トルクに基づいて、前記外トルクを推定する、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項8】
前記関節制御部は、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる電磁モータを制御する、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項9】
前記関節制御部は、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる超音波モータを制御する、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項10】
前記支持アームは、トルクセンサを有しない第一の関節部と前記トルクセンサを有する第二の関節部とを備え、
前記関節制御部は、前記外力推定部により推定された外トルクに基づく前記第一の関節部の駆動制御と、前記トルクセンサにより検出された外トルクに基づく前記第二の関節部の駆動制御とを共に行う、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる電磁モータを備える第一のアクチュエータと、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる超音波モータを備える第二のアクチュエータとを含み、
前記関節制御部は、前記第一のアクチュエータと前記第二のアクチュエータとを共に制御する、
請求項1に記載の医療用支持アームシステム。
【請求項12】
プロセッサが、アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体である支持アームの前記関節部の駆動を制御することと、
前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定することと、
を含み、
前記制御することは、推定された外トルクに基づいて、前記関節部の駆動を制御すること、をさらに含む、
医療用支持アームの制御方法。
【請求項13】
アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体である支持アームの前記関節部の駆動を制御する関節制御部と、
前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部と、
を備え、
前記関節制御部は、前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて、前記関節部の駆動を制御する、
医療用支持アームの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用支持アームシステム、医療用支持アームの制御方法、および医療用支持アームの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野においては、各種の施術(手術,検査など)を行う際に、アーム部先端に医療用ユニット(カメラ、鉗子など)が設けられた医療機器を使用する場合がある。例えば、下記の特許文献1には、アクチュエータユニット内に組み込まれたトルクセンサが検知した力情報に基づいて制御されるトルク制御型医療用アームが開示されている。
【0003】
一方、上記のようなトルクセンサを用いずに力制御を行う手法も提案されている。例えば、下記の特許文献2には、推定した反作用力に基づく触覚の解析方法が開示されている。また、下記の特許文献3には、推定した把持力に基づいて力制御を行う制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/046081号
【特許文献2】特開2009−47503号公報
【特許文献3】特開2010−76012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載されるような医療用アームに係る理想応答制御においては、状況に応じてトルク推定値を用いることで、装置のトータルコストを改善できる場合が想定される。しかし、上記の特許文献2および特許文献3に開示される技術は、トルク推定に係る技術ではなく、特許文献1に記載されるような医療用アームの理想応答制御に適用することが困難である。
【0006】
そこで、本開示では、推定した外力に基づくトルク制御を実現とし、より多様な状況に対応することが可能な、新規かつ改良された医療用支持アームシステム、医療用支持アームの制御方法、および医療用支持アームの制御装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体であり、医療用ユニットを支持するよう構成された支持アームと、前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部、および前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて前記関節部の駆動を制御する関節制御部、を備える、制御装置と、を備える、医療用支持アームシステムが提供される。
【0008】
また、本開示によれば、プロセッサが、アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体である支持アームの前記関節部の駆動を制御することと、前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定することと、を含み、前記制御することは、推定された外トルクに基づいて、前記関節部の駆動を制御すること、をさらに含む、医療用支持アームの制御方法が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体である支持アームの前記関節部の駆動を制御する関節制御部と、前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部と、を備え、前記関節制御部は、前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて、前記関節部の駆動を制御する、医療用支持アームの制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、推定した外力に基づくトルク制御を実現とし、より多様な状況に対応することが可能となる。
【0011】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る支持アーム装置が医療用に用いられる場合の一適用例について説明するための説明図である。
図2】本開示の一実施形態に係る支持アーム装置の外観を示す概略図である。
図3】トルクセンサを有するアクチュエータを、回転軸を通る断面で切断した様子を模式的に示す断面図である。
図4】トルクセンサにより検知された外トルクに基づく理想関節制御について説明するための説明図である。
図5】本開示の一実施形態に係る外力推定に基づく理想関節制御について説明するための説明図である。
図6】同実施形態に係る電磁モータを備えるアクチュエータの概略的な構成を模式的に示す図である。
図7】同実施形態に係る電磁モータを備えるアクチュエータが適用される場合の外力推定について説明するための図である。
図8】同実施形態に係る減速機に係る静止摩擦および動摩擦の測定試験を用いたモデル同定について説明するための図である。
図9】同実施形態に係る超音波モータを備えるアクチュエータの構成例を示す断面図である。
図10】同実施形態に係る超音波モータを備えるアクチュエータの概略的な構成を模式的に示す図である。
図11】同実施形態に係る超音波モータを備えるアクチュエータが適用される場合の外力推定について説明するための図である。
図12】同実施形態に係る位相差に応じた超音波モータの出力トルクの計測結果を示す図である。
図13】同実施形態に係る支持アームシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図14】本開示の一実施形態に係る支持アーム装置及び制御装置のハードウェア構成の一構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.医療用支持アーム装置についての検討
2.本開示の一実施形態
2−1.支持アーム装置の外観
2−2.一般化逆動力学について
2−3.理想関節制御について
2−4.支持アームシステムの構成
3.ハードウェア構成
4.まとめ
【0015】
<1.医療用支持アーム装置についての検討>
まず、本開示をより明確なものとするために、本発明者らが本開示に想到するに至った背景について説明する。
【0016】
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る医療用支持アーム装置(以下、単に、支持アーム装置、または支持アーム、とも称する)が医療用に用いられる場合の一適用例について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る支持アーム装置が医療用に用いられる場合の一適用例について説明するための説明図である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る支持アーム装置を用いた施術の様子を模式的に表している。具体的には、図1を参照すると、施術者(ユーザ)520である医師が、例えばメス、鑷子、鉗子等の手術用の器具521を使用して、施術台530上の施術対象(患者)540に対して手術を行っている様子が図示されている。なお、以下の説明においては、施術とは、手術や検査等、ユーザ520である医師が施術対象540である患者に対して行う各種の医療的な処置の総称であるとする。また、図1に示す例では、施術の一例として手術の様子を図示しているが、支持アーム装置510が用いられる施術は手術に限定されず、他の各種の施術、例えば内視鏡を用いた検査等であってもよい。
【0018】
施術台530の脇には本実施形態に係る支持アーム装置510が設けられる。支持アーム装置510は、基台であるベース部511と、ベース部511から延伸するアーム部512を備える。アーム部512は、複数の関節部513a、513b、513cと、関節部513a、513bによって連結される複数のリンク514a、514bと、アーム部512の先端に設けられる撮像ユニット515を有する。図1に示す例では、簡単のため、アーム部512は3つの関節部513a〜513c及び2つのリンク514a、514bを有しているが、実際には、アーム部512及び撮像ユニット515の位置及び姿勢の自由度を考慮して、所望の自由度を実現するように関節部513a〜513c及びリンク514a、514bの数や形状、関節部513a〜513cの駆動軸の方向等が適宜設定されてよい。
【0019】
関節部513a〜513cは、リンク514a、514bを互いに回動可能に連結する機能を有し、関節部513a〜513cの回転が駆動されることにより、アーム部512の駆動が制御される。ここで、以下の説明においては、支持アーム装置510の各構成部材の位置とは、駆動制御のために規定している空間における位置(座標)を意味し、各構成部材の姿勢とは、駆動制御のために規定している空間における任意の軸に対する向き(角度)を意味する。また、以下の説明では、アーム部512の駆動(又は駆動制御)とは、関節部513a〜513cの駆動(又は駆動制御)、及び、関節部513a〜513cの駆動(又は駆動制御)を行うことによりアーム部512の各構成部材の位置及び姿勢が変化される(変化が制御される)ことをいう。
【0020】
アーム部512の先端には先端ユニットとして各種の医療用器具が接続される。図1に示す例では、先端ユニットの一例としてアーム部512の先端に撮像ユニット515が設けられている。撮像ユニット515は、撮影対象の画像(撮影画像)を取得するユニットであり、例えば動画や静止画を撮影できるカメラ等である。図1に示すように、アーム部512の先端に設けられた撮像ユニット515が施術対象540の施術部位の様子を撮影するように、支持アーム装置510によってアーム部512及び撮像ユニット515の姿勢や位置が制御される。なお、アーム部512の先端に設けられる先端ユニットは撮像ユニット515に限定されず、各種の医療用器具であってよい。当該医療用器具としては、例えば、内視鏡や顕微鏡、上述した撮像ユニット515等の撮像機能を有するユニットや、各種の施術器具、検査装置等、施術に際して用いられる各種のユニットが挙げられる。このように、本実施形態に係る支持アーム装置510は、医療用器具を備えた医療用支持アーム装置であると言える。また、アーム部512の先端に、2つの撮像ユニット(カメラユニット)を有するステレオカメラが設けられ、撮像対象を3次元画像(3D画像)として表示するように撮影が行われてもよい。なお、先端ユニットとして、施術部位を撮影するための撮像ユニット515や当該ステレオカメラ等のカメラユニットが設けられる支持アーム装置510のことをVM(Video Microscope)支持アーム装置とも呼称する。
【0021】
また、ユーザ520と対向する位置には、モニタやディスプレイ等の表示装置550が設置される。撮像ユニット515によって撮影された施術部位の撮影画像は、表示装置550の表示画面に表示される。ユーザ520は、表示装置550の表示画面に表示される施術部位の撮影画像を見ながら各種の処置を行う。
【0022】
このように、本実施形態においては、医療分野において、支持アーム装置510によって施術部位の撮影を行いながら手術を行うことが提案される。ここで、手術を含む各種の施術においては、より施術を効率的に行うことにより、ユーザ520及び患者540の疲労や負担を軽減することが求められる。このような要求を満たすために、支持アーム装置510には、例えば以下のような性能が求められると考えられる。
【0023】
まず、1点目として、支持アーム装置510には、手術における作業空間を確保することが求められる。ユーザ520が施術対象540に対して各種の処置を行っている最中に、アーム部512や撮像ユニット515が施術者の視界を妨げたり、処置を行う手の動きを妨げたりすると、手術の効率の低下につながる。また、図1では図示していないが、実際の手術現場では、ユーザ520に器具を渡したり、患者540の各種のバイタルサインを確認したりといった、様々なサポート作業を行う複数の他の医師や看護師等がユーザ520及び患者540の周囲にいることが一般的であり、また、当該サポート作業を行うための他の装置等が存在するため、手術環境は煩雑である。従って、支持アーム装置510は、より小型であることが望ましい。
【0024】
次いで、2点目として、支持アーム装置510には、撮像ユニット515を移動させる際の高い操作性が求められる。例えば、手術を行う部位や手術の内容によっては、ユーザ520には、施術部位に対して処置を行っている最中に、同じ施術部位を様々な位置、角度から観察したいという要求がある。施術部位を観察する角度を変えるには、撮像ユニット515の施術部位に対する角度を変更する必要があるが、その際、撮像ユニット515の撮影方向は施術部位に固定されたまま(すなわち、同一の部位を撮影したまま)、撮影する角度だけが変化することがより望ましい。従って、例えば、撮像ユニット515の撮影方向が施術部位に固定された状態で、撮像ユニット515が施術部位を頂点とした円錐の面内を移動する、当該円錐の軸を旋回軸とした旋回動作(ピボット動作)のような、より自由度の高い操作性が支持アーム装置510に求められていた。なお、撮像ユニット515の撮影方向が所定の施術部位に固定されることから、ピボット動作はポイントロック動作とも呼ばれる。
【0025】
また、撮像ユニット515の位置及び角度を変化させるためには、例えばユーザ520が手動でアーム部512を動かすことによって、撮像ユニット515を所望の位置及び角度に動かす方法が考えられる。従って、撮像ユニット515の移動や上述したピボット動作等が、例えば片手でも容易に行える操作性があることが望ましい。
【0026】
また、手術時には、例えばユーザ520が両手で処置を行いながら、撮像ユニット515によって撮影される撮影画像の撮影中心を、処置を行っている部位から別の部位(例えば次の処置を行う部位)に移動させたいという要求も考えられる。従って、撮像ユニット515の位置及び姿勢を変化させる際に、上述したような手動によってアーム部512の駆動を制御する方法だけではなく、例えばペダル等の入力部からの操作入力によってアーム部512の駆動を制御する方法のような、多様なアーム部512の駆動方法が求められる。
【0027】
このように、2点目の性能として、支持アーム装置510には、例えば上述したピボット動作や手動による容易な移動を実現する、よりユーザ520の直感や要望に合った高い操作性が求められる。
【0028】
最後に、3点目として、支持アーム装置510には、アーム部512の駆動制御における安定性が求められる。アーム部512の駆動制御に対する安定性とは、アーム部512を駆動した際の先端ユニットの位置及び姿勢の安定性のことであってよい。また、アーム部512の駆動制御に対する安定性には、アーム部512を駆動した際の先端ユニットのスムーズな移動や振動の抑制(制振)も含まれる。例えば、図1に示す例のように先端ユニットが撮像ユニット515である場合に、もしも撮像ユニット515の位置や姿勢が安定しないと、表示装置550の表示画面に表示される撮影画像が安定せず、ユーザに不快感を与えかねない。特に、支持アーム装置510が手術に用いられる際には、先端ユニットとして2つの撮像ユニット(カメラユニット)を有するステレオカメラが設けられ、当該ステレオカメラによる撮影画像に基づいて生成される3次元画像(3D画像)が表示装置550に表示される使用方法が想定され得る。このように3D画像が表示される場合に、当該ステレオカメラの位置や姿勢が不安定であると、ユーザのいわゆる3D酔いを誘発する可能性がある。また、手術を行う部位や手術の内容によっては、撮像ユニット515によって撮影される観察範囲はφ15mm程度にまで拡大されることがある。このように撮像ユニット515が狭い範囲を拡大して撮影している場合には、撮像ユニット515の僅かな振動が撮像画像の大きな揺れやブレとなって表れる。従って、アーム部512及び撮像ユニット515の駆動制御には、許容範囲1mm程度の高い位置決め精度が要求される。このように、アーム部512の駆動制御においては、高精度の応答性と高い位置決め精度が求められる。
【0029】
本発明者らは、上記の3つの性能の観点から、一般的な既存のバランス型アームや位置制御による支持アーム装置について検討を行った。
【0030】
まず、1点目の手術の作業空間の確保に関しては、一般的なバランス型アームでは、通常、アーム部を移動させた際の力の均衡を取るためのカウンターバランス用ウェイト(カウンターウェイト又はバランサーとも呼称する。)がベース部の内部等に設けられるため、バランス型アームの装置の大きさを小型化することが難しく、当該性能を満たしているとは言い難い。
【0031】
また、2点目の高い操作性に関しては、一般的なバランス型アームでは、アーム部の駆動の一部のみ、例えば撮像ユニットを平面上(2次元上)で移動させるための2軸の駆動のみが電動駆動となっており、アーム部及び撮像ユニットの移動には手動による位置決めが必要となるため、高い操作性が実現できるとは言い難い。また、一般的な位置制御による支持アーム装置において、アーム部の駆動の制御、すなわち撮像ユニットの位置及び姿勢の制御に用いられる位置制御は、外力に柔軟に応じることが困難であるため、俗に「硬い制御」と呼ばれることがあり、要求されているようなユーザの直感に合った操作性を実現するには適していない。
【0032】
また、3点目のアーム部の駆動制御における安定性に関しては、一般的に、アーム部の関節部には、摩擦や慣性等のモデル化することが困難な因子が存在する。一般的なバランス型アームや位置制御による支持アーム装置においては、関節部の駆動制御においてこれらの因子が外乱となって表れてしまうことにより、理論上適切な制御値(例えば関節部のモータに印加する電流値)を与えた場合であっても所望の駆動(例えば関節部のモータにおける所望の角度の回転)が実現しないことがあり、要求されているようなアーム部の駆動制御における高い安定性を実現することは困難である。
【0033】
以上説明したように、本発明者らは、医療用に用いられる支持アーム装置について検討した結果、支持アーム装置に関して、上述したような3点の性能に対する要求が存在するとの知見を得た。しかしながら、一般的な既存のバランス型アームや位置制御による支持アーム装置では、これらの性能を満たすことは困難であると考えられる。本発明者らは、上述した3点の性能を満たす構成について検討した結果、本開示に係る支持アーム装置、支持アームの制御装置、支持アームシステム、支持アームの制御方法及びプログラムに想到した。以下では、本発明者らが想到した構成における好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0034】
<2.本開示の一実施形態>
以下では、本開示の一実施形態に係る支持アームシステムについて説明する。本実施形態に係る支持アームシステムにおいては、支持アーム装置に設けられる複数の関節部の駆動を、一般化逆動力学を用いた全身協調制御により制御する。更に、外乱の影響を補正することにより指令値に対する理想的な応答を実現する理想関節制御を当該関節部の駆動制御に適用する。
【0035】
以下の本実施形態の説明では、まず、[2−1.支持アーム装置の外観]で、本実施形態に係る支持アーム装置の外観を示すとともに、支持アーム装置の概略構成について説明する。次いで、[2−2.一般化逆動力学について]及び[2−3.理想関節制御について]で、本実施形態に係る支持アーム装置の制御に用いられる一般化逆動力学と理想関節制御の概要について説明する。次いで、[2−4.支持アームシステムの構成]で、本実施形態に係る支持アーム装置を制御するためのシステムの構成について機能ブロック図を用いて説明する。
【0036】
なお、以下の説明では、本開示の一実施形態として、支持アーム装置のアーム部の先端ユニットが撮像ユニットであり、図1に示すように手術時に当該撮像ユニットによって施術部位を撮影する場合について説明するが、本実施形態はかかる例に限定されない。本実施形態に係る支持アームシステムは、他の先端ユニットを有する支持アーム装置が他の用途に用いられる場合であっても適用可能である。
【0037】
[2−1.支持アーム装置の外観]
まず、図2を参照して、本開示の一実施形態に係る支持アーム装置の概略構成について説明する。図2は、本開示の一実施形態に係る支持アーム装置の外観を示す概略図である。
【0038】
図2を参照すると、本実施形態に係る支持アーム装置400は、ベース部410及びアーム部420を備える。ベース部410は支持アーム装置400の基台であり、ベース部410からアーム部420が延伸される。また、図2には図示しないが、ベース部410内には、支持アーム装置400を統合的に制御する制御部が設けられてもよく、アーム部420の駆動が当該制御部によって制御されてもよい。当該制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の各種の信号処理回路によって構成される。
【0039】
アーム部420は、複数の関節部421a〜421fと、関節部421a〜421fによって互いに連結される複数のリンク422a〜422cと、アーム部420の先端に設けられる撮像ユニット423を有する。
【0040】
リンク422a〜422cは棒状の部材であり、リンク422aの一端が関節部421aを介してベース部410と連結され、リンク422aの他端が関節部421bを介してリンク422bの一端と連結され、更に、リンク422bの他端が関節部421c、421dを介してリンク422cの一端と連結される。更に、撮像ユニット423が、アーム部420の先端、すなわち、リンク422cの他端に、関節部421e、421fを介して連結される。このように、ベース部410を支点として、複数のリンク422a〜422cの端同士が、関節部421a〜421fによって互いに連結されることにより、ベース部410から延伸されるアーム形状が構成される。
【0041】
撮像ユニット423は撮影対象の画像を取得するユニットであり、例えば動画、静止画を撮影するカメラ等である。アーム部420の駆動が制御されることにより、撮像ユニット423の位置及び姿勢が制御される。本実施形態においては、撮像ユニット423は、例えば施術部位である患者の体の一部領域を撮影する。ただし、アーム部420の先端に設けられる先端ユニットは撮像ユニット423に限定されず、アーム部420の先端には先端ユニットとして各種の医療用器具が接続されてよい。このように、本実施形態に係る支持アーム装置400は、医療用器具を備えた医療用支持アーム装置であると言える。
【0042】
ここで、以下では、図2に示すように座標軸を定義して支持アーム装置400の説明を行う。また、座標軸に合わせて、上下方向、前後方向、左右方向を定義する。すなわち、床面に設置されているベース部410に対する上下方向をz軸方向及び上下方向と定義する。また、z軸と互いに直交する方向であって、ベース部410からアーム部420が延伸されている方向(すなわち、ベース部410に対して撮像ユニット423が位置している方向)をy軸方向及び前後方向と定義する。更に、y軸及びz軸と互いに直交する方向をx軸方向及び左右方向と定義する。
【0043】
関節部421a〜421fはリンク422a〜422cを互いに回動可能に連結する。関節部421a〜421fはアクチュエータを有し、当該アクチュエータの駆動により所定の回転軸に対して回転駆動される回転機構を有する。各関節部421a〜421fにおける回転駆動をそれぞれ制御することにより、例えばアーム部420を伸ばしたり、縮めたり(折り畳んだり)といった、アーム部420の駆動を制御することができる。ここで、関節部421a〜421fは、下記[2−2.一般化逆動力学について]で後述する全身協調制御及び下記[2−3.理想関節制御について]で後述する理想関節制御によってその駆動が制御される。また、上述したように、本実施形態に係る関節部421a〜421fは回転機構を有するため、以下の説明において、関節部421a〜421fの駆動制御とは、具体的には、関節部421a〜421fの回転角度及び/又は発生トルク(関節部421a〜421fに発生させるトルク)が制御されることを意味する。
【0044】
本実施形態に係る支持アーム装置400は、6つの関節部421a〜421fを有し、アーム部420の駆動に関して6自由度が実現されている。具体的には、図2に示すように、関節部421a、421d、421fは、接続されている各リンク422a〜422cの長軸方向及び接続されている撮像ユニット423の撮影方向を回転軸方向とするように設けられており、関節部421b、421c、421eは、接続されている各リンク422a〜422c及び撮像ユニット423の連結角度をy−z平面(y軸とz軸とで規定される平面)内において変更する方向であるx軸方向を回転軸方向とするように設けられている。このように、本実施形態においては、関節部421a、421d、421fは、いわゆるヨーイングを行う機能を有し、関節部421b、421c、421eは、いわゆるピッチングを行う機能を有する。
【0045】
このようなアーム部420の構成を有することにより、本実施形態に係る支持アーム装置400ではアーム部420の駆動に対して6自由度が実現されるため、アーム部420の可動範囲内において撮像ユニット423を自由に移動させることができる。図2では、撮像ユニット423の移動可能範囲の一例として半球を図示している。半球の中心点が撮像ユニット423によって撮影される施術部位の撮影中心であるとすれば、撮像ユニット423の撮影中心を半球の中心点に固定した状態で、撮像ユニット423を半球の球面上で移動させることにより、施術部位を様々な角度から撮影することができる。
【0046】
以上、図2を参照して、本実施形態に係る支持アーム装置400の概略構成について説明した。次に、本実施形態に係る支持アーム装置400におけるアーム部420の駆動、すなわち、関節部421a〜421fの駆動を制御するための全身協調制御及び理想関節制御について説明する。
【0047】
[2−2.一般化逆動力学について]
次に、本実施形態における支持アーム装置400の全身協調制御に用いられる一般化逆動力学の概要について説明する。
【0048】
一般化逆動力学は、複数のリンクが複数の関節部によって連結されて構成される多リンク構造体(例えば本実施形態においては図2に示すアーム部420)において、各種の操作空間(Operation Space)における様々な次元に関する運動目的を、各種の拘束条件を考慮しながら、複数の当該関節部に生じさせるトルクに変換する、多リンク構造体の全身協調制御における基本演算である。
【0049】
操作空間は、装置の力制御における重要な概念である。操作空間は、多リンク構造体に作用する力と多リンク構造体の加速度との関係を記述するための空間である。多リンク構造体の駆動制御を位置制御ではなく力制御によって行う際に、多リンク構造体と環境との接し方を拘束条件として用いる場合に操作空間という概念が必要となる。操作空間は、例えば、多リンク構造体が属する空間である、関節空間、デカルト空間、運動量空間等である。
【0050】
運動目的は、多リンク構造体の駆動制御における目標値を表すものであり、例えば、駆動制御によって達成したい多リンク構造体の位置、速度、加速度、力、インピーダンス等の目標値である。
【0051】
拘束条件は、多リンク構造体の形状や構造、多リンク構造体の周囲の環境及びユーザによる設定等によって定められる、多リンク構造体の位置、速度、加速度、力等に関する拘束条件である。例えば、拘束条件には、発生力、優先度、非駆動関節の有無、垂直反力、摩擦錘、支持多角形等についての情報が含まれる。
【0052】
一般化動力学においては、数値計算上の安定性と実時間処理可能な演算効率とを両立するため、その演算アルゴリズムは、第1段階である仮想力決定プロセス(仮想力算出処理)と、第2段階である実在力変換プロセス(実在力算出処理)によって構成される。第1段階である仮想力算出処理では、各運動目的の達成に必要な、操作空間に作用する仮想的な力である仮想力を、運動目的の優先度と仮想力の最大値を考慮しながら決定する。第2段階である実在力算出処理では、非駆動関節、垂直反力、摩擦錘、支持多角形等に関する拘束を考慮しながら、上記で得られた仮想力を関節力、外力等の実際の多リンク構造体の構成で実現可能な実在力に変換する。以下、仮想力算出処理及び実在力算出処理について詳しく説明する。なお、以下の仮想力算出処理、実在力算出処理及び後述する理想関節制御の説明においては、理解を簡単にするために、具体例として、図2に示した本実施形態に係る支持アーム装置400のアーム部420の構成を例に挙げて説明を行う場合がある。
【0053】
(2−2−1.仮想力算出処理)
多リンク構造体の各関節部におけるある物理量によって構成されるベクトルを一般化変数qと呼ぶ(関節値q又は関節空間qとも呼称する。)。操作空間xは、一般化変数qの時間微分値とヤコビアンJとを用いて、以下の数式(1)で定義される。
【0054】
【数1】
【0055】
本実施形態では、例えば、qはアーム部420の関節部421a〜421fにおける回転角度である。操作空間xに関する運動方程式は、下記数式(2)で記述される。
【0056】
【数2】
【0057】
ここで、fは操作空間xに作用する力を表す。また、Λ−1は操作空間慣性逆行列、cは操作空間バイアス加速度と呼ばれるものであり、それぞれ下記数式(3)、(4)で表される。
【0058】
【数3】
【0059】
なお、Hは関節空間慣性行列、τは関節値qに対応する関節力(例えば関節部421a〜421fおける発生トルク)、bは重力、コリオリ力、遠心力を表す項である。
【0060】
一般化逆動力学においては、操作空間xに関する位置、速度の運動目的は、操作空間xの加速度として表現できることが知られている。このとき、上記数式(1)から、運動目的として与えられた目標値である操作空間加速度を実現するために、操作空間xに作用するべき仮想力fは、下記数式(5)のような一種の線形相補性問題(LCP:Linear Complementary Problem)を解くことによって得られる。
【0061】
【数4】
【0062】
ここで、LとUはそれぞれ、fの第i成分の負の下限値(−∞を含む)、fの第i成分の正の上限値(+∞を含む)とする。上記LCPは、例えばIterative法、Pivot法、ロバスト加速度制御を応用する方法等を用いて解くことができる。
【0063】
なお、操作空間慣性逆行列Λ−1、バイアス加速度cは、定義式である上記数式(3)、(4)の通り算出すると計算コストが大きい。従って、多リンク構造体の一般化力(関節力τ)から一般化加速度(関節加速度)を得る準動力学計算(FWD)を応用することにより、操作空間慣性逆行列Λ−1の算出処理をより高速に算出する方法が提案されている。具体的には、操作空間慣性逆行列Λ−1、バイアス加速度cは、順動力学演算FWDを用いることにより、関節空間q、関節力τ、重力g等の多リンク構造体(例えば、アーム部420及び関節部421a〜421f)に作用する力に関する情報から得ることができる。このように、操作空間に関する順動力学演算FWDを応用することにより、関節部の数Nに対してO(N)の計算量で操作空間慣性逆行列Λ−1を算出することができる。
【0064】
ここで、運動目的の設定例として、絶対値F以下の仮想力fviで操作空間加速度の目標値(xの2階微分に上付きバーを付して表す)を達成するための条件は、下記数式(6)で表現できる。
【0065】
【数5】
【0066】
また、上述したように、操作空間xの位置、速度に関する運動目的は、操作空間加速度の目標値として表すことができ、具体的には下記数式(7)で表現される(操作空間xの位置、速度の目標値を、x、xの1階微分に上付きバーを付して表す)。
【0067】
【数6】
【0068】
その他、分解操作空間の考え方を用いることにより、他の操作空間の線形和で表される操作空間(運動量、デカルト相対座標、連動関節等)に関する運動目的を設定することもできる。なお、競合する運動目的間には優先度を与える必要がある。優先度毎かつ低優先度から順に上記LCPを解き、前段のLCPで得られた仮想力を次段のLCPの既知外力として作用させることができる。
【0069】
(2−2−2.実在力算出処理)
一般化逆動力学の第2段階である実在力算出処理では、上記(2−2−1.仮想力決定プロセス)で得られた仮想力fを、実在の関節力と外力で置換する処理を行う。仮想力による一般化力τ=Jを関節部に生じる発生トルクτと外力fとで実現するための条件は、下記数式(8)で表現される。
【0070】
【数7】
【0071】
ここで、添え字aは駆動関節部の集合(駆動関節集合)を表し、添え字uは非駆動関節部の集合(非駆動関節集合)を表す。すなわち、上記数式(8)の上段は非駆動関節部による空間(非駆動関節空間)の力の釣り合いを表しており、下段は駆動関節部による空間(駆動関節空間)の力の釣合いを表している。Jvu、Jvaは、それぞれ、仮想力fが作用する操作空間に関するヤコビアンの非駆動関節成分、駆動関節成分である。Jeu、Jeaは、外力fが作用する操作空間に関するヤコビアンの非駆動関節成分、駆動関節成分である。Δfは仮想力fのうち、実在力で実現不能な成分を表す。
【0072】
上記数式(8)の上段は不定であり、例えば下記数式(9)に示すような2次計画問題(QP:Quadratic Programing Problem)を解くことで、f及びΔfを得ることができる。
【0073】
【数8】
【0074】
ここで、εは上記数式(8)の上段の両辺の差であり、数式(8)の等式誤差を表す。ξはfとΔfとの連結ベクトルであり、変数ベクトルを表す。Q及びQは、最小化の際の重みを表す正定値対称行列である。また、上記数式(9)の不等式拘束は、垂直反力、摩擦錐、外力の最大値、支持多角形等、外力に関する拘束条件を表現するのに用いられる。例えば、矩形の支持多角形に関する不等式拘束は、下記数式(10)のように表現される。
【0075】
【数9】
【0076】
ここで、zは接触面の法線方向を表し、x及びyはzに垂直な直交2接線方向を表す。(F,F,F)及び(M,M,M)は、接触点に作用する外力及び外力モーメントである。μ及びμは、それぞれ並進、回転に関する摩擦係数である。(d,d)は支持多角形のサイズを表している。
【0077】
上記数式(9)、(10)から、最小ノルム又は最小誤差の解f、Δfが求められる。上記数式(9)から得られたf、Δfを上記数式(8)の下段に代入することにより、運動目的を実現するために必要な関節力τを得ることができる。
【0078】
基底が固定され、非駆動関節が無い系の場合は、関節力のみで全ての仮想力を置換可能であり、上記数式(8)において、f=0、Δf=0とすることができる。この場合、上記数式(8)の下段から、関節力τについて以下の数式(11)を得ることができる。
【0079】
【数10】
【0080】
以上、本実施形態に係る一般化逆動力学を用いた全身協調制御について説明した。上記のように、仮想力算出処理及び実在力算出処理を順に行うことにより、所望の運動目的を達成するための関節力τを得ることができる。すなわち、逆に言えば、算出された関節力τを関節部421a〜421fの運動における理論モデルに反映することにより、関節部421a〜421fが、所望の運動目的を達成するように駆動される。
【0081】
なお、ここまで説明した一般化逆動力学を用いた全身協調制御について、特に、仮想力fの導出過程や、上記LCPを解き仮想力fを求める方法、QP問題の解法等の詳細については、例えば、本願出願人による先行特許出願である特開2009−95959号公報や特開2010−188471号公報を参照することができる。
【0082】
[2−3.理想関節制御について]
次に、本実施形態に係る理想関節制御について説明する。各関節部421a〜421fの運動は、下記数式(12)の二次遅れ系の運動方程式によってモデル化される。
【0083】
【数11】
【0084】
ここで、Iは関節部における慣性モーメント(イナーシャ)、τは関節部421a〜421fの発生トルク、τは外部から各関節部421a〜421fに作用する外トルク、νは各関節部421a〜421fにおける粘性抵抗係数である。上記数式(12)は、関節部421a〜421fにおけるアクチュエータの運動を表す理論モデルとも言える。
【0085】
上記[2−2.一般化逆動力学について]で説明したように、一般化逆動力学を用いた演算により、運動目的及び拘束条件を用いて、当該運動目的を実現するために各関節部421a〜421fに作用させるべき実在力であるτを算出することができる。従って、理想的には、算出された各τを上記数式(12)に適用することにより、上記数式(12)に示す理論モデルに従った応答が実現する、すなわち、所望の運動目的が達成されるはずである。
【0086】
しかし、実際には、様々な外乱の影響により、関節部421a〜421fの運動と上記数式(12)に示すような理論モデルとの間には誤差(モデル化誤差)が生じる場合がある。モデル化誤差は、多リンク構造体の重量、重心、慣性テンソル等のマスプロパティに起因するものと、関節部421a〜421f内部における摩擦や慣性等に起因するものとに大別することができる。このうち、前者のマスプロパティに起因するモデル化誤差は、CAD(Computer Aided Design)データの高精度化や同定手法の適用によって、理論モデル構築時に比較的容易に低減することが可能である。
【0087】
一方、後者の関節部421a〜421f内部の摩擦や慣性等に起因するモデル化誤差は、例えば関節部421a〜421fの減速機426における摩擦等、モデル化が困難な現象に起因しており、理論モデル構築時に無視できないモデル化誤差が残留し得る。また、上記数式(12)におけるイナーシャIや粘性抵抗係数νの値と、実際の関節部421a〜421fにおけるこれらの値との間に誤差が生じている可能性がある。これらのモデル化が困難な誤差は、関節部421a〜421fの駆動制御において外乱となり得る。従って、このような外乱の影響により、実際には、関節部421a〜421fの運動は、上記数式(12)に示す理論モデル通りには応答しない場合がある。よって、一般化逆動力学によって算出された関節力である実在力τを適用しても、制御目標である運動目的が達成されない場合が生じる。
【0088】
このため、本実施形態では、各関節部421a〜421fにアクティブな制御系を付加することで、上記数式(12)に示す理論モデルに従った理想応答を行うよう、関節部421a〜421fの応答を補正することを考える。この際、例えば、特許文献1に記載されるように、トルクセンサを用いることで、摩擦補償型のトルク制御を行うに留まらず、要求される発生トルクτ、外トルクτに対して、イナーシャI及び粘性抵抗係数νに至るまで理論値に従った理想応答を行うことも想定される。なお、以下の説明においては、発生トルクτのことを、全身協調制御における関節部421a〜421fへの指令値という意味で、指令トルクまたは制御値とも呼称する。
【0089】
ここで、図3を参照して、特許文献1に記載されるようなトルクセンサを有するアクチュエータの構成について説明する。図3は、トルクセンサを有するアクチュエータを、回転軸を通る断面で切断した様子を模式的に示す断面図である。図3に示すトルクセンサを有するアクチュエータ630は、本実施形態に係る関節部421a〜421fの一部に適用することも可能である。
【0090】
なお、上述したように、本実施形態においては、関節部421a〜421fは、理想関節制御によってその駆動が制御される。従って、図3に示すアクチュエータ630は、理想関節制御に対応した駆動を行えるように構成されている。具体的には、アクチュエータ630は、当該関節部421a〜421fにおける回転角度及び回転駆動に伴うトルクを調整できるように構成されている。また、アクチュエータ630は、回転運動に対する粘性抵抗係数を任意に調整できるように構成されており、例えば外部から加えられる力に対して回転しやすい(すなわち、アーム部420を手動で移動しやすい)状態や回転し難い(すなわち、アーム部420を手動で移動し難い)状態を実現することができる。
【0091】
図3を参照すると、アクチュエータ630は、モータ624、モータドライバ625、減速機626、エンコーダ627、トルクセンサ628及び駆動軸629を有する。図3に示すように、エンコーダ627、モータ624、減速機626及びトルクセンサ628は、駆動軸629に対して直列にこの順で連結される。
【0092】
モータ624は、アクチュエータ630における原動機であり、駆動軸629をその軸周りに回転させる。例えば、モータ624は、ブラシレスDCモータ等の電動モータである。本実施形態においては、モータ624は電流を供給されることによってその回転駆動が制御される。
【0093】
モータドライバ625は、モータ624に電流を供給することによりモータ624を回転駆動させるドライバ回路(ドライバIC(Integrated Circuit))であり、モータ624に供給する電流量を調整することにより、モータ624の回転数を制御することができる。また、モータドライバ625は、モータ624に供給する電流量を調整することにより、上述したようなアクチュエータ630の回転運動に対する粘性抵抗係数を調整することができる。
【0094】
減速機626は、駆動軸629に接続され、モータ624によって生じた駆動軸629の回転速度を所定の減速比で減速することにより、所定の値を有する回転駆動力(すなわち、トルク)を発生させる。減速機626には、バックラッシレス型の高性能減速機が用いられる。例えば、減速機626は、ハーモニックドライブ(登録商標)であってもよい。減速機626によって生成されたトルクは、減速機626の出力軸に接続されたトルクセンサ628を介して、後段の出力部材(図示せず。例えばリンク422a〜422cや撮像ユニット423等の連結部材)に伝達される。
【0095】
エンコーダ627は、駆動軸629に接続され、駆動軸629の回転数を検出する。エンコーダ627によって検出された駆動軸629の回転数と、減速機626の減速比との関係に基づいて、関節部421a〜421fの回転角度、回転角速度及び回転角加速度等の情報を得ることができる。
【0096】
トルクセンサ628は、減速機626の出力軸に接続され、減速機626によって生成されたトルク、すなわち、アクチュエータ630によって出力されるトルクを検出する。
【0097】
このように、アクチュエータ630においては、モータ624に供給する電流量を調整することにより、モータ624の回転数を調整することがでる。ここで、減速機626における減速比は、支持アーム装置400の用途に応じて適宜設定可能であってよい。従って、減速機626の減速比に応じて、モータ624の回転数を適宜調整することにより、指令トルクを制御することができる。また、アクチュエータ630においては、エンコーダ627によって検出された駆動軸629の回転数に基づいて、関節部421a〜421fの回転角度、回転角速度及び回転角加速度等の情報を得ることができ、トルクセンサ628によって、関節部421a〜421fにおける指令トルクを検出することができる。
【0098】
また、トルクセンサ628は、アクチュエータ630の指令トルクだけでなく、外部から加えられる外トルクを検出することができる。従って、トルクセンサ628によって検出された外トルクに基づいて、モータドライバ625がモータ624に供給する電流量を調整することにより、上述したような回転運動に対する粘性抵抗係数を調整することができ、例えば外部から加えられる力に対して回転しやすい状態や回転し難い状態を実現することができる。
【0099】
なお、本実施形態では、支持アーム装置400の関節部421a〜421fが上記数式(12)に示すような理想的な応答を行うように関節部の駆動を制御することを、理想関節制御と呼称する。ここで、以下の説明では、当該理想関節制御によって駆動が制御されるアクチュエータのことを、理想的な応答が行われることから仮想アクチュエータ(VA:Virtualized Actuator)とも呼称する。以下、図4を参照して、トルクセンサ628により検知された外トルクに基づく理想関節制御について説明する。
【0100】
図4は、トルクセンサにより検知された外トルクに基づく理想関節制御について説明するための説明図である。なお、図4では、理想関節制御に係る各種の演算を行う概念上の演算器をブロックで模式的に図示している。なお、図4におけるPのノミナルモデルは、P=1/(J)、とする。
【0101】
ブロック601は、上記数式(12)に示す関節部421a〜421fの理想的な関節モデル(Ideal Joint Model)に従った演算を行う演算器を表している。ブロック601は、指令トルクτ、外トルクτ、および回転角速度(回転角度qの1階微分)を入力として、上記数式(12)の左辺に示す回転角加速度目標値(回転角目標値qrefの2階微分)を算出力することができる。
【0102】
図4に示すように、上記[2−2.一般化逆動力学について]で説明した方法によって算出された指令トルクτと、トルクセンサ628によって測定された外トルクτが、ブロック601に入力される。また、微分演算を行うブロック602に、エンコーダ627によって測定された回転角度qが入力されることにより、回転角速度(回転角度qの1階微分)が算出される。上記指令トルクτ及び外トルクτに加えて、上記のように算出された回転角速度がブロック601に入力されることにより、ブロック601によって回転角加速度目標値が算出される。
【0103】
また、ブロック601は、アクチュエータ630の回転角加速度に基づいてアクチュエータ630に生じるトルクを算出する。具体的には、ブロック601は、回転角加速度目標値にアクチュエータ630における公称イナーシャ(ノミナルイナーシャ)Jを乗じることにより、トルク目標値τrefを得ることができる。理想の応答においては、アクチュエータ630に当該トルク目標値τrefを生じさせることにより、所望の運動目的が達成されるはずであるが、上述したように、実際の応答には外乱等の影響が生じる場合がある。従って、本実施形態においては、外乱オブザーバ603によって外乱推定値τを算出し、外乱推定値τを用いて当該トルク目標値τrefを補正する。
【0104】
外乱オブザーバ603の構成について説明する。図4に示すように、外乱オブザーバ603は、指令トルクτと、エンコーダ627によって測定された回転角度qから算出される回転角速度に基づいて、外乱推定値τを算出する。ここで、指令トルクτは、外乱の影響が補正された後の、最終的にアクチュエータ630に生じさせるトルク値である。例えば、外乱推定値τが算出されていない場合には、指令トルクτはトルク目標値τrefとなる。
【0105】
外乱オブザーバ603は、ブロック604とブロック605とから構成される。ブロック604は、アクチュエータ630の回転角速度に基づいてアクチュエータ630に生じるトルクを算出する演算器を表す。具体的には、エンコーダ627によって測定された回転角度qから、ブロック602によって算出された回転角速度がブロック604に入力される。ブロック604は、伝達関数Jsによって表される演算を行うことにより、すなわち、当該回転角速度を微分することにより回転角加速度を求め、更に算出された回転角加速度にノミナルイナーシャJを乗じることにより、実際にアクチュエータ630に作用しているトルクの推定値(トルク推定値)を算出することができる。
【0106】
外乱オブザーバ603内では、当該トルク推定値と指令トルクτとの差分が取られることにより、外乱によるトルクの値である外乱推定値τが推定される。具体的には、外乱推定値τは、前周の制御における指令トルクτと、今回の制御におけるトルク推定値との差分であってよい。ブロック604によって算出されるトルク推定値は実際の測定値に基づくものであり、ブロック601によって算出された指令トルクτはブロック631に示す関節部421a〜421fの理想的な理論モデルに基づくものであるため、両者の差分を取ることによって、上記理論モデルでは考慮されていない外乱の影響を推定することができるのである。
【0107】
また、外乱オブザーバ603には、系の発散を防ぐために、ブロック605に示すローパスフィルター(LPF:Low Pass Filter)が設けられる。ブロック605は、伝達関数g/(s+g)で表される演算を行うことにより、入力された値に対して低周波成分のみを出力し、系を安定化させる。ブロック604によって算出されたトルク推定値とトルク指令値τとの差分値は、ブロック605に入力され、その低周波成分が外乱推定値τとして算出される。
【0108】
このように、トルク目標値τrefに外乱オブザーバ603によって算出された外乱推定値τを加算するフィードフォワード制御が行われることにより、最終的にアクチュエータ630に生じさせるトルク値である指令トルクτが算出される。そして、指令トルクτに基づいてアクチュエータ630が駆動される。具体的には、指令トルクτが対応する電流値(電流指令値)に変換され、当該電流指令値がモータ624に印加されることにより、アクチュエータ630が駆動される。
【0109】
以上、図4を参照してトルクセンサにより検知された外トルクに基づく理想関節制御について説明した。説明した構成を取ることにより、関節部421a〜421fの駆動制御においては、摩擦等の外乱成分があった場合であっても、アクチュエータ630の応答を目標値に追従させることが可能となる。また、関節部421a〜421fの駆動制御について、理論モデルが仮定するイナーシャI及び粘性抵抗係数νに従った理想応答を行うことが可能となる。
【0110】
しかし、トルクセンサを用いる構成では、アクチュエータなどに作用する外力を高精度に検出することができる一方、製造、組み立て、管理などにコストを要するのが一般的である。また、トルクセンサには、動作制約や環境制約が掛かる場合もある。例えば、6軸力覚センサなどのトルクセンサは、配置される部品に作用する外力のみを検出可能であるため、他の部品に作用する外力を検出することができない。また、高温下などの環境では、トルクセンサを配置できない場合もある。このため、外力に基づくトルク制御型の装置においては、トルクセンサを利用しない場合であっても、高精度な力制御を実現することが可能な技術が求められていた。
【0111】
上記のような背景から、本発明者らは、推定した外力に基づくトルク制御を実現する本実施形態の制御装置20を発想するに至った。より具体的には、本実施形態に係る制御装置20は、アクチュエータの駆動特性に基づいて支持アーム装置400の関節部421a〜421fに作用する外力を推定する外力推定部260を備え、外力推定部260が推定した外トルクに基づいて、関節部421a〜421fの駆動を制御することを特徴の一つとする。
【0112】
本実施形態に係る制御装置20によれば、トルクセンサを用いないでも関節部421a〜421fに作用する外トルクを精度高く検出することができ、上述したような動作制約や環境制約を解消したより柔軟な力制御を実現することができる。また、本実施形態に係る制御装置20によれば、物理構成としてトルクセンサを備える必要がないため、トルクセンサの製造や保守に係るコストを効果的に削減することができ、また支持アーム装置400の導入および運用に掛かるトータルコストを低減することが可能となる。
【0113】
以下、本実施形態に係る制御装置20による理想関節制御について説明する。図5は、本実施形態に係る外力推定に基づく理想関節制御について説明するための説明図である。図5では、外力推定に基づく理想関節制御に係る各種の演算を行う概念上の演算器をブロックで模式的に図示している。なお、図5におけるPのノミナルモデルは、P=1/(J)、とする。また、以下の説明においては、図4に示すトルクセンサを前提としたブロック図との差異について中心に述べ、共通する構成に関する詳細な説明は省略する。
【0114】
ブロック701は、関節部421a〜421fの理想的な関節モデル(Ideal Joint Model)に従った演算を行う演算器を表している。ブロック701は、図4に示すブロック601とは異なり、トルクセンサが検知した外トルクτの代わりにブロック707が推定した推定外トルクτ^を入力とした演算を行うことを特徴とする。
【0115】
この際、ブロック707は、アクチュエータに適用されるモータの特性に基づいて推定外トルクτ^を推定する。図5におけるブロック702は、アクチュエータに適用されるモータの特性に依存した演算を行う演算器を示している。このように、本実施形態に係る理想関節制御においては、適用されるモータの特性に基づく演算を行うことで、多様なモータに対応すると共に、推定外トルクτ^を精度高く推定することが可能である。
【0116】
以下、本実施形態に係る制御装置20によるモータの種別に応じた理想関節制御の詳細について述べる。ここで、上記のモータの一例としては、電磁モータや超音波モータなどが挙げられる。まず、電磁モータを備えるアクチュエータに係る理想関節制御について説明する。
【0117】
図6は、電磁モータ810を備えるアクチュエータ800の概略的な構成802を模式的に示す図である。図6に示すように、本実施形態のアクチュエータ800は、電磁モータ810、減速機820、エンコーダ850、ブレーキ880を主要な構成要素として構成されている。
【0118】
また、図7は、電磁モータ810を備えるアクチュエータ800が適用される場合の外力推定について説明するための図である。図7では、電磁モータ810に応じた各種の演算を行う概念上の演算器をブロックで模式的に図示している。
【0119】
関節部421a〜421fの駆動に電磁モータ810が用いられる場合、本実施形態に係る制御装置20は、電流値irefを用いた電流指令トルクτi_refと、エンコーダ値qを用いた運動推定トルクτmtとに基づいて推定外トルクτ^を推定することができる。すなわち、本実施形態に係る制御装置20は、上述した数式(12)に代えて下記の数式(13)を用いることで、理想関節制御を実現する。
【0120】
【数12】
【0121】
図7におけるブロック711は、モータの種別に応じたトルク値を算出する演算器である。関節部421a〜421fの駆動に電磁モータ810が用いられる場合、ブロック711は、入力される電流値irefに基づいて、電流指令トルクτi_refを出力する。ここで、図7に示すQは、Q=1/K、であってよい。ブロック711は、下記の数式(14)により、電流指令トルクτi_refを算出することが可能である。ただし、Kは、トルク定数を示す。
【0122】
【数13】
【0123】
また、本実施形態に係る制御装置20は、電磁モータ810の特性に基づいて、下記の数式(15)により、運動推定トルクτmtを算出する。
【0124】
【数14】
【0125】
上記の数式(15)におけるM、c、およびgは、それぞれ電磁モータ810の設計情報に基づく慣性項、速度項、および重力項を示す。図7に示すブロック712は、モータの設計情報に基づいて、上記の慣性項、速度項、および重力項を出力する演算ブロックである。
【0126】
また、上記の数式(15)におけるhおよびkは、それぞれ摩擦トルクおよび内部消費トルクを示す。図7に示すブロック713は、摩擦トルクを算出する演算器であり、またブロック714は、歪みトルクやねじれトルクなどの内部消費トルクを算出する演算器である。この際、ブロック713および714は、設計情報から算出できない摩擦トルクや内部消費トルクの算出に関し、モデル同定結果を用いることを特徴の一つとする。
【0127】
図8は、減速機820に係る静止摩擦および動摩擦の測定試験を用いたモデル同定について説明するための図である。図8には、測定された減速機820の静止摩擦トルクおよび動摩擦トルクが点線で示され、実測値に基づいてモデル化された摩擦トルクが実線で示されている。この際、摩擦トルクのモデル化には、例えば、下記の数式(16)が用いられてもよい。
【0128】
【数15】
【0129】
なお、上記の数式(16)におけるFcは静止摩擦係数を、Dは粘性摩擦係数を、sgnは回転角速度に応じた符号関数をそれぞれ示す。また、上記の数式(16)はあくまで一例であり、本実施形態に係る摩擦トルクのモデル式は、より高次であってもよいし、連続関数であってもよい。
【0130】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置20は、電磁モータ810の特性に応じた各種の値を算出することで、精度の高い外トルクの推定を可能とし、トルクセンサを用いない理想関節制御を実現することができる。なお、図7におけるブロック715は、ローパスフィルターを示す。
【0131】
続いて、超音波モータを備えるアクチュエータに係る理想関節制御について説明する。まず、超音波モータを備えるアクチュエータ900の構成例について述べる。図9は、本実施形態に係るアクチュエータ900の構成例を示す断面図である。アクチュエータ900は、超音波モータ910、固定枠920、回転枠930、ベアリング940、エンコーダ950、出力枠960を備えて構成されている。超音波モータ910、固定枠920、回転枠930、ベアリング940、エンコーダ950、出力枠960は、いずれも中空のリング状に構成されている。
【0132】
固定枠920は、関節部421a〜421fにおいて、相対的に回転する2つの部材の一方に固定される。超音波モータ910は、ステータ912とロータ914とを有して構成される。ステータ912には、超音波振動を発生させる圧電素子(ピエゾ素子)が装着されている(不図示)。ロータ914は、ステータ912の振動面に対して押圧され、ステータ912の超音波振動により回転する。回転枠930は、ロータ914に対して固定され、ロータ914とともに回転する。ベアリング940は、固定枠920と回転枠930との間に設けられ、ベアリング940を介して固定枠920に対して回転枠930が回転するように構成されている。
【0133】
出力枠960は、回転枠930に対して固定され、回転枠930とともに回転する。出力枠960の回転枠930とは反対側の端部162は、関節部421a〜421fにおいて、相対的に回転する2つの部材の他方に固定される。また、出力枠960には、径方向の肉厚が周辺よりも薄い薄肉部964が設けられている。
【0134】
エンコーダ950は、検出部952とロータ954を有して構成され、ロータ954の回転を検出部952が検出することで、ロータ954の回転角を検出する。
【0135】
図10は、超音波モータ910を備えるアクチュエータ900の概略的な構成902を模式的に示す図である。図10に示すように、本実施形態のアクチュエータ900は、超音波モータ910およびエンコーダ950を主要な構成要素として構成されている。一般に超音波モータは、単体での出力が大きく、回転数が低いという特性を有し、ダイレクトドライブまたは低い減速率で用いられる。このため、図9および図10に示すように、アクチュエータ900が、非線形なトルク伝達特性を持つ減速機を備えない場合、小さい外トルクでも推定が容易となる。
【0136】
また、図11は、超音波モータ910を備えるアクチュエータ900が適用される場合の外力推定について説明するための図である。図11では、超音波モータ910に応じた各種の演算を行う概念上の演算器をブロックで模式的に図示している。なお、以下の説明においては、電磁モータ810に係る外力推定との差異について中心に述べ、共通する構成や機能については、詳細な説明を省略する。
【0137】
上述したように、ブロック711は、モータの種別に応じたトルク値を算出する演算器である。進行波型の超音波モータでは、2つのピエゾ素子に対し、位相差に基づく制御が行われる。より具体的には、周波数を固定とし、位相差が−90°〜90°となるように制御される。超音波モータに係る位相制御においては、モータトルクが0の際に位相が0となるが、ステータ912が共振振動を行うため、回転力自体は発生しないものの、ステータ912およびロータ914間の摩擦が小さい状態となる。このため、超音波モータは、バックドライバビリティがより小さくなるという特性を持つ。
【0138】
このため、関節部421a〜421fの駆動に超音波モータ910が用いられる場合、ブロック711は、図7を用いて説明した電流指令トルクτi_refに代えて、位相差指令トルクτp_refを算出する。
【0139】
図12は、位相差に応じた超音波モータ910の出力トルクの計測結果を示す図である。超音波モータ910の出力トルクは、図12に示すように、位相差(Pref)に対して略線形となる。このため、位相差指令トルクτp_refは、下記の数式(17)によりモデル化することが可能である。
【0140】
【数16】
【0141】
ここで、上記の数式(17)におけるKはトルク定数であり、Prefは、位相差である。すなわち、関節部421a〜421fの駆動に超音波モータ910が用いられる場合、ブロック711は、入力される位相差Prefに上記の数式(17)を適用することで、位相差指令トルクτp_refを算出することができる。なお、図11におけるQは、Q=1/K、である。
【0142】
また、制御装置20は、電磁モータ810が用いられる場合と同様に、超音波モータ910の特性に基づいて運動推定トルクτmtを算出し、最終的な推定外トルクを推定することができる。制御装置20が有する上記の機能によれば、バックドライバビリティの影響が少ない超音波モータ910を用いる際、外トルクが小さい場合であっても推定外トルクを推定することができ、トルクセンサを用いずとも初動の軽いトルク制御を実現することが可能となる。また、制御装置20によれば、減速器に係る非線形なトルク伝達特性に影響を受けずに、より容易なトルク推定を実現することが可能となる。
【0143】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置20は、モータの種別に応じた演算を行うことで、精度の高い外トルクの推定を可能とし、トルクセンサを用いない理想関節制御を実現することができる。
【0144】
なお、上記の説明においては、関節部421a〜421fの駆動に用いられる例として、電磁モータおよび超音波モータを挙げて説明したが、本実施形態に係るモータの種別は係る例に限定されない。本実施形態に係る制御装置20は、上述したような種別に応じた演算を行うことで、多様なモータに対応することが可能である。モータの一例としては、上述した電磁モータおよび超音波モータのほか、静電気力モータ、油圧モータ、空気圧モータなどが想定される。
【0145】
また、本実施形態に係る制御装置20は、上述したように、計測値に基づくモデル同定結果を用いて演算を行うことを特徴の一つとする。この際、制御装置20は、種々の手法によりモデルの精度を向上させることが可能である。
【0146】
制御装置20は、例えば、複数の支持アーム装置400からネットワークを通じて、計測値を収集することで、効率的にデータを蓄積し、精度の高いモデル同定を行うことも可能である。
【0147】
また、制御装置20は、例えば、機械学習によりモデルの精度を向上させてもよい。この際、制御装置20は、関節部421a〜421fに係る角度、角速度、トルク値、電流値、位相差などの情報や、支持アーム装置400に備えられる各種のセンサが収集したセンサ値を用いた学習を行ってもよい。上記のセンサ値には、例えば、加速度センサ値や外界センサ値(3次元測定データ、治具など)が想定される。
【0148】
また、制御装置20は、例えば、トルクセンサが実際に測定した外トルクを教師として学習を行うことも可能である。制御装置20は、SVM(Support Vector Machine)、ニューラルネットワーク、回帰モデルなどの機械学習手法または統計的手法を用いた種々の学習を実施することができる。
【0149】
以上、本実施形態に係る理想関節制御について詳細に説明した。上述したように、本実施形態に係る制御装置20によれば、推定した外力に基づくトルク制御を実現し、より多様な状況に対応することが可能となる。
【0150】
より具体的には、本実施形態に係る制御装置20によれば、トルクセンサの製造や保守にコストを効果的に削減し、支持アーム装置400の導入に係るトータルコストを低減することが可能となる。また、本実施形態に係る制御装置20によれば、環境制約や動作制約によりトルクセンサの配置が困難な場合であっても、精度の高い理想関節制御を実現することができる。
【0151】
また、本実施形態に係る制御装置20による外力推定によれば、トルクセンサの配置を必要としないため、トルクセンサの不具合などにより生じ得る部品交換などのコスト増加を排除できると同時に、アクチュエータをおよび支持アーム装置400をより小型化することが可能となる。
【0152】
なお、本実施形態に係る制御装置20は、トルクセンサを備えるアクチュエータと、トルクセンサを備えないアクチュエータとを同時に制御してもよい。例えば、図2に示す支持アーム装置400の場合、撮像ユニット423に近い関節部421fなどには、トルクセンサを備えるアクチュエータを適用することで、より確実性の高い理想関節制御を実現すると同時に、ベース部410に近い関節部421aには、トルクセンサを備えないアクチュエータを適用し、トータルコストを削減することが可能である。
【0153】
さらには、本実施形態に係る制御装置20は、電磁モータ810を備えるアクチュエータ800と超音波モータ910を備えるアクチュエータ900とを同時に制御することも可能である。このように、本開示に係る技術思想によれば、環境やその他の要件に応じて適切なアクチュエータをそれぞれ採用することが可能となり、より柔軟な装置構成および施術を実現することができる。
【0154】
[2−4.支持アームシステムの構成]
次に、上記[2−2.一般化逆動力学について]及び上記[2−3.理想関節制御について]で説明した全身協調制御や理想関節制御が支持アーム装置の駆動制御に適用された、本実施形態に係る支持アームシステムの構成について説明する。
【0155】
図13を参照して、本開示の一実施形態に係る支持アームシステムの一構成例について説明する。図13は、本開示の一実施形態に係る支持アームシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。なお、図13に示す支持アームシステムでは、支持アーム装置のアーム部の駆動の制御に関わる構成について主に図示している。
【0156】
図13を参照すると、本開示の一実施形態に係る支持アームシステム1は、支持アーム装置10、制御装置20及び表示装置30を備える。本実施形態においては、制御装置20によって、上記[2−2.一般化逆動力学について]で説明した全身協調制御及び上記[2−3.理想関節制御について]で説明した理想関節制御における各種の演算が行われ、その演算結果に基づいて支持アーム装置10のアーム部の駆動が制御される。また、支持アーム装置10のアーム部には後述する撮像部140が設けられており、撮像部140によって撮影された画像が表示装置30の表示画面に表示される。以下、支持アーム装置10、制御装置20及び表示装置30の構成について詳細に説明する。
【0157】
支持アーム装置10は、アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体であるアーム部を有し、当該アーム部を可動範囲内で駆動させることにより、当該アーム部の先端に設けられる先端ユニットの位置及び姿勢の制御を行う。支持アーム装置10は、図2に示す支持アーム装置400に対応している。
【0158】
図13を参照すると、支持アーム装置10は、アーム制御部110及びアーム部120を有する。また、アーム部120は、関節部130及び撮像部140を有する。
【0159】
アーム制御部110は、支持アーム装置10を統合的に制御するとともに、アーム部120の駆動を制御する。アーム制御部110は、図2を参照して説明した制御部(図2には図示せず。)に対応している。具体的には、アーム制御部110は駆動制御部111を有し、駆動制御部111からの制御によって関節部130の駆動が制御されることにより、アーム部120の駆動が制御される。より具体的には、駆動制御部111は、関節部130のアクチュエータにおけるモータに対して供給される電流量を制御することにより、当該モータの回転数を制御し、関節部130における回転角度及び発生トルクを制御する。ただし、上述したように、駆動制御部111によるアーム部120の駆動制御は、制御装置20における演算結果に基づいて行われる。従って、駆動制御部111によって制御される、関節部130のアクチュエータにおけるモータに対して供給される電流量は、制御装置20における演算結果に基づいて決定される電流量である。
【0160】
アーム部120は、複数の関節部と複数のリンクから構成される多リンク構造体であり、アーム制御部110からの制御によりその駆動が制御される。アーム部120は、図2に示すアーム部420に対応している。アーム部120は、関節部130及び撮像部140を有する。なお、アーム部120が有する複数の関節部の機能及び構成は互いに同様であるため、図13では、それら複数の関節部を代表して1つの関節部130の構成を図示している。
【0161】
関節部130は、アーム部120においてリンク間を互いに回動可能に連結するとともに、アーム制御部110からの制御によりその回転駆動が制御されることによりアーム部120を駆動する。関節部130は、図2に示す関節部421a〜421fに対応している。また、関節部130は、アクチュエータを有し、当該アクチュエータの構成は、例えば図6図10などに示す構成と同様である。
【0162】
関節部130は、関節駆動部131及び関節状態検出部132を有する。
【0163】
関節駆動部131は、関節部130のアクチュエータにおける駆動機構であり、関節駆動部131が駆動することにより関節部130が回転駆動する。関節駆動部131は、駆動制御部111によってその駆動が制御される。
【0164】
関節状態検出部132は、関節部130の状態を検出する。ここで、関節部130の状態とは、関節部130の運動の状態を意味していてよい。例えば、関節部130の状態には、関節部130の回転角度、回転角速度、回転角加速度等の情報が含まれる。関節状態検出部132は、検出した関節部130の状態を制御装置20に送信する。
【0165】
撮像部140は、アーム部120の先端に設けられる先端ユニットの一例であり、撮影対象の画像を取得する。撮像部140は、図2に示す撮像ユニット423に対応している。具体的には、撮像部140は、撮影対象を動画や静止画の形式で撮影することのできるカメラ等である。より具体的には、撮像部140は、2次元上に配列された複数の受光素子を有し、当該受光素子における光電変換により、撮影対象の画像を表す画像信号を取得することができる。撮像部140は、取得した画像信号を表示装置30に送信する。
【0166】
なお、図2に示す支持アーム装置400において撮像ユニット423がアーム部420の先端に設けられていたように、支持アーム装置10においても、実際には撮像部140がアーム部120の先端に設けられている。図13では、撮像部140が複数の関節部130及び複数のリンクを介して最終段のリンクの先端に設けられる様子を、関節部130と撮像部140との間にリンクを模式的に図示することにより表現している。
【0167】
なお、本実施形態においては、アーム部120の先端には先端ユニットとして各種の医療用器具が接続され得る。当該医療用器具としては、例えば、メスや鉗子等の各種の施術器具や、超音波検査装置の探触子等の各種の検査装置の一ユニット等、施術に際して用いられる各種のユニットが挙げられる。また、本実施形態では、図13に示す撮像部140や、内視鏡、顕微鏡等の撮像機能を有するユニットも医療用器具に含まれてよい。このように、本実施形態に係る支持アーム装置10は、医療用器具を備えた医療用支持アーム装置であると言える。同様に、本実施形態に係る支持アームシステム1は、医療用支持アームの制御システムであると言える。なお、図13に示す支持アーム装置10は、撮像機能を有するユニットを先端ユニットとして備えるVM支持アーム装置であるとも言える。また、アーム部120の先端に、2つの撮像ユニット(カメラユニット)を有するステレオカメラが設けられ、撮像対象を3D画像として表示するように撮影が行われてもよい。
【0168】
以上、支持アーム装置10の機能及び構成について説明した。次に、制御装置20の機能及び構成について説明する。図13を参照すると、制御装置20は、入力部210、記憶部220及び制御部230を有する。
【0169】
制御部230は、制御装置20を統合的に制御するとともに、支持アーム装置10におけるアーム部120の駆動を制御するための各種の演算を行う。具体的には、制御部230は、支持アーム装置10のアーム部120の駆動を制御するために、全身協調制御及び理想関節制御における各種の演算を行う。以下、制御部230の機能及び構成について詳しく説明するが、全身協調制御及び理想関節制御については、上記[2−2.一般化逆動力学について]及び上記[2−3.理想関節制御について]で既に説明しているため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0170】
制御部230は、全身協調制御部240及び理想関節制御部250、および外力推定部260を有する。
【0171】
全身協調制御部240は、一般化逆動力学を用いた全身協調制御に関する各種の演算を行う。本実施形態では、全身協調制御部240は、関節状態検出部132によって検出された関節部130の状態に基づいてアーム部120の状態(アーム状態)を取得する。また、全身協調制御部240は、当該アーム状態と、アーム部120の運動目的及び拘束条件と、に基づいて、操作空間におけるアーム部120の全身協調制御のための制御値を、一般化逆動力学を用いて算出する。なお、操作空間とは、例えばアーム部120に作用する力とアーム部120に発生する加速度との関係を記述するための空間である。
【0172】
全身協調制御部240は、アーム状態取得部241、演算条件設定部242、仮想力算出部243及び実在力算出部244を有する。
【0173】
アーム状態取得部241は、関節状態検出部132によって検出された関節部130の状態に基づいて、アーム部120の状態(アーム状態)を取得する。ここで、アーム状態とは、アーム部120の運動の状態を意味していてよい。例えば、アーム状態には、アーム部120の位置、速度、加速度等の情報が含まれる。上述したように、関節状態検出部132は、関節部130の状態として、各関節部130における回転角度、回転角速度、回転角加速度等の情報を取得している。また、後述するが、記憶部220は、制御装置20によって処理される各種の情報を記憶するものであり、本実施形態においては、記憶部220には、アーム部120に関する各種の情報(アーム情報)、例えばアーム部120を構成する関節部130及びリンクの数や、リンクと関節部130との接続状況、リンクの長さ等の情報が格納されていてよい。アーム状態取得部241は、記憶部220から当該アーム情報を取得することができる。従って、アーム状態取得部241は、関節部130の状態とアーム情報とに基づいて、複数の関節部130、複数のリンク及び撮像部140の空間上の位置(座標)(すなわち、アーム部120の形状や撮像部140の位置及び姿勢)や、各関節部130、リンク及び撮像部140に作用している力等の情報をアーム状態として取得することができる。アーム状態取得部241は、取得したアーム情報を演算条件設定部242に送信する。
【0174】
演算条件設定部242は、一般化逆動力学を用いた全身協調制御に関する演算における演算条件を設定する。ここで、演算条件とは、運動目的及び拘束条件であってよい。運動目的は、アーム部120の運動に関する各種の情報であってよい。具体的には、運動目的は、撮像部140の位置及び姿勢(座標)、速度、加速度並びに力等の目標値であったり、アーム部120の複数の関節部130及び複数のリンクの位置(座標)、速度、加速度及び力等の目標値であったりしてもよい。また、拘束条件は、アーム部120の運動を制限(拘束)する各種の情報であってよい。具体的には、拘束条件は、アーム部の各構成部材が移動不可能な領域の座標や、移動不可能な速度、加速度の値、発生不可能な力の値等であってよい。また、拘束条件における各種の物理量の制限範囲は、アーム部120の構造的に実現することが不可能であることから設定されてもよいし、ユーザによって適宜設定されてもよい。また、演算条件設定部242は、アーム部120の構造についての物理モデル(例えば、アーム部120を構成するリンクの数や長さ、リンクの関節部130を介した接続状況、関節部130の可動範囲等がモデル化されたもの)を有し、当該物理モデルに、所望の運動条件及び拘束条件が反映された制御モデルを生成することにより、運動条件及び拘束条件を設定してもよい。
【0175】
本実施形態においては、運動目的及び拘束条件を適切に設定することにより、アーム部120に所望の動作を行わせることが可能となる。例えば、運動目的として、撮像部140の位置の目標値を設定することにより撮像部140をその目標の位置に移動させることはもちろんのこと、アーム部120が空間上の所定の領域内に侵入しないようにする等、拘束条件によって移動の制約を設けてアーム部120を駆動させることも可能である。
【0176】
運動目的の具体例として、例えば、運動目的は、撮像部140の撮影方向が施術部位に固定された状態で、撮像部140が施術部位を頂点とした円錐の面内を移動する、当該円錐の軸を旋回軸とした旋回動作である、ピボット動作であってもよい。また、当該ピボット動作においては、撮像部140と円錐の頂点に当たる点との距離が一定に保たれた状態で旋回動作が行われてもよい。このようなピボット動作を行うことにより、観察部位を等距離からかつ異なる角度から観察できるようになるため、手術を行うユーザの利便性を向上させることができる。
【0177】
また、他の具体例として、運動目的は、各関節部130における発生トルクを制御する内容であってもよい。具体的には、運動目的は、アーム部120に作用する重力を打ち消すように関節部130の状態を制御するとともに、更に外部から与えられた力の方向へのアーム部120の移動をサポートするように関節部130の状態を制御するパワーアシスト動作であってもよい。より具体的には、パワーアシスト動作においては、アーム部120の各関節部130における重力による外トルクを打ち消す発生トルクを各関節部130に生じさせるように各関節部130の駆動が制御されることにより、アーム部120の位置及び姿勢が所定の状態で保持される。この状態で更に外部から(例えばユーザから)外トルクが加えられた場合に、与えられた外トルクと同じ方向の発生トルクを各関節部130に生じさせるように各関節部130の駆動が制御される。このようなパワーアシスト動作を行うことにより、ユーザが手動でアーム部120を動かす場合に、ユーザはより小さい力でアーム部120を移動させることができるため、あたかも無重力下でアーム部120を動かしているような感覚をユーザに対して与えることができる。また、上述したピボット動作と当該パワーアシスト動作とを組み合わせることも可能である。
【0178】
ここで、本実施形態において、運動目的とは、全身協調制御において実現されるアーム部120の動作(運動)を意味していてもよいし、当該動作における瞬時的な運動目的(すなわち、運動目的における目標値)を意味していてもよい。例えば上記のピボット動作であれば、撮像部140がピボット動作を行うこと自体が運動目的であるが、ピボット動作を行っている最中においては、当該ピボット動作における円錐面内での撮像部140の位置や速度等の値が、瞬時的な運動目的(当該運動目的における目標値)として設定されている。また例えば上記のパワーアシスト動作であれば、外部から加えられた力の方向へのアーム部120の移動をサポートするパワーアシスト動作を行うこと自体が運動目的であるが、パワーアシスト動作を行っている最中においては、各関節部130に加えられる外トルクと同じ方向への発生トルクの値が、瞬時的な運動目的(当該運動目的における目標値)として設定されている。本実施形態における運動目的は、瞬時的な運動目的(例えばある時間におけるアーム部120の各構成部材の位置や速度、力等の目標値)と、瞬時的な運動目的が連続的に達成された結果、経時的に実現されるアーム部120の各構成部材の動作の、双方を含む概念である。全身協調制御部240における全身協調制御のための演算における各ステップでは瞬時的な運動目的がその都度設定され、当該演算が繰り返し行われることにより、最終的に所望の運動目的が達成される。
【0179】
なお、本実施形態においては、運動目的が設定される際に、各関節部130の回転運動における粘性抵抗係数も適宜設定されてよい。上述したように、本実施形態に係る関節部130は、アクチュエータ430の回転運動における粘性抵抗係数を適宜調整できるように構成される。従って、運動目的の設定に際して各関節部130の回転運動における粘性抵抗係数も設定することにより、例えば外部から加えられる力に対して回転しやすい状態や回転し難い状態を実現することができる。例えば上述したパワーアシスト動作であれば、関節部130における粘性抵抗係数が小さく設定されることにより、ユーザがアーム部120を移動させる際に要する力がより小さくてよく、ユーザに与えられる無重力感がより助長される。このように、各関節部130の回転運動における粘性抵抗係数は、運動目的の内容に応じて適宜設定されてよい。
【0180】
ここで、本実施形態においては、後述するように、記憶部220には、全身協調制御に関する演算において用いられる運動目的や拘束条件等の演算条件に関するパラメータが格納されていてもよい。演算条件設定部242は、記憶部220に記憶されている拘束条件を、全身協調制御の演算に用いる拘束条件として設定することができる。
【0181】
また、本実施形態においては、演算条件設定部242は、複数の方法によって運動目的を設定することができる。例えば、演算条件設定部242は、アーム状態取得部241から送信されるアーム状態に基づいて運動目的を設定してもよい。上述したように、アーム状態には、アーム部120の位置の情報やアーム部120に対して作用する力の情報が含まれる。従って、例えばユーザがアーム部120を手動で移動させようとしている場合には、アーム状態取得部241によって、ユーザがアーム部120をどのように移動させようとしているか、に関する情報もアーム状態として取得される。従って、演算条件設定部242は、取得されたアーム状態に基づいて、ユーザがアーム部120を移動させた位置や速度、力等を瞬時的な運動目的として設定することができる。このように運動目的が設定されることにより、アーム部120の駆動は、ユーザによるアーム部120の移動を追随し、サポートするように制御される。
【0182】
また、例えば、演算条件設定部242は、入力部210からユーザによって入力される指示に基づいて運動目的を設定してもよい。後述するが、入力部210は、ユーザが制御装置20に支持アーム装置10の駆動制御に関する情報や命令等を入力するための入力インターフェースであり、本実施形態においては、ユーザによる入力部210からの操作入力に基づいて、運動目的が設定されてもよい。具体的には、入力部210は、例えばレバー、ペダル等のユーザが操作する操作手段を有し、当該レバー、ペダル等の操作に応じて、アーム部120の各構成部材の位置や速度等が、演算条件設定部242によって瞬時的な運動目的として設定されてもよい。
【0183】
更に、例えば、演算条件設定部242は、記憶部220に記憶されている運動目的を、全身協調制御の演算に用いる運動目的として設定してもよい。例えば、空間上の所定の点で撮像部140が静止するという運動目的であれば、当該所定の点の座標を運動目的として予め設定することができる。また、例えば、撮像部140が空間上において所定の軌跡上を移動するという運動目的であれば、当該所定の軌跡を表す各点の座標を運動目的として予め設定することができる。このように、運動目的が予め設定できるものである場合には、当該運動目的が予め記憶部220に記憶されていてもよい。また、例えば上述したピボット動作であれば、運動目的は円錐の面内における位置や速度等を目標値とするものに限られるし、パワーアシスト動作であれば、運動目的は力を目標値とするものに限られる。このように、ピボット動作やパワーアシスト動作のような運動目的が予め設定されている場合には、これらの運動目的における瞬時的な運動目的として設定され得る目標値の範囲や種類等に関する情報が、記憶部220に記憶されていてもよい。演算条件設定部242は、このような運動目的に関する各種の情報も含めて、運動目的として設定することができる。
【0184】
なお、演算条件設定部242が、上記のいずれの方法で運動目的を設定するかは、支持アーム装置10の用途等に応じてユーザによって適宜設定可能であってよい。また、演算条件設定部242は、また、上記の各方法を適宜組み合わせることにより、運動目的及び拘束条件を設定してもよい。なお、記憶部220に格納されている拘束条件の中に運動目的の優先度が設定されていてもよく、複数の互いに異なる運動目的が存在する場合には、演算条件設定部242は、当該拘束条件の優先度に応じて運動目的を設定してもよい。演算条件設定部242は、アーム状態並びに設定した運動目的及び拘束条件を仮想力算出部243に送信する。
【0185】
仮想力算出部243は、一般化逆動力学を用いた全身協調制御に関する演算における仮想力を算出する。仮想力算出部243が行う仮想力の算出処理は、例えば、上記(2−2−1.仮想力算出処理)で説明した一連の処理であってよい。仮想力算出部243は、算出した仮想力fを実在力算出部244に送信する。
【0186】
実在力算出部244は、一般化逆動力学を用いた全身協調制御に関する演算における実在力を算出する。実在力算出部244が行う実在力の算出処理は、例えば、上記(2−2−2.実在力算出処理)で説明した一連の処理であってよい。実在力算出部244は、算出した実在力(発生トルク)τを理想関節制御部250に送信する。なお、上述したとおり、本実施形態においては、実在力算出部244によって算出された発生トルクτのことを、全身協調制御における関節部130への指令値という意味で、指令トルクまたは制御値とも呼称する。
【0187】
理想関節制御部250は、一般化逆動力学を用いた理想関節制御に関する各種の演算を行う。本実施形態では、理想関節制御部250は、実在力算出部244によって算出された発生トルクτに対して外乱の影響を補正することにより、アーム部120の理想的な応答を実現する指令トルクτを算出する。なお、理想関節制御部250によって行われる演算処理は、上記[2−3.理想関節制御について]で説明した一連の処理に対応している。
【0188】
理想関節制御部250は、外乱推定部251及び指令値算出部252を有する。
【0189】
外乱推定部251は、指令トルクτ、外力推定部260が推定する推定外トルクτ^、回転角度検出部133によって検出された回転角度qから算出される回転角速度に基づいて、外乱推定値τを算出する。なお、ここでいう指令トルクτは、最終的に支持アーム装置10に送信されるアーム部120での発生トルクを表す指令値である。このように、外乱推定部251は、図5に示す外乱オブザーバ703に対応する機能を有する。
【0190】
指令値算出部252は、外乱推定部251によって算出された外乱推定値τを用いて、最終的に支持アーム装置10に送信されるアーム部120に生じさせるトルクを表す指令値である指令トルクτを算出する。具体的には、指令値算出部252は、上記数式(12)に示す関節部130の理想モデルから算出されるτrefに外乱推定部251によって算出された外乱推定値τを加算することにより、指令トルクτを算出する。例えば、外乱推定値τが算出されていない場合には、指令トルクτはトルク目標値τrefとなる。
【0191】
以上説明したように、理想関節制御部250においては、外乱推定部251と指令値算出部252との間で繰り返し情報のやり取りが行われることにより、図5を参照して説明した一連の処理が行われる。理想関節制御部250は算出した指令トルクτを支持アーム装置10の駆動制御部111に送信する。駆動制御部111は、送信された指令トルクτに対応する電流量を、関節部130のアクチュエータにおけるモータに対して供給する制御を行うことにより、当該モータの回転数を制御し、関節部130における回転角度及び発生トルクを制御する。
【0192】
外力推定部260は、アクチュエータの駆動特性に基づいて関節部130に作用する外力を推定する機能を有する。この際、外力推定部260は、関節部130の駆動に係る運動推定トルクを算出し、当該運動推定トルクに基づいて、外トルクを推定する。また、上述したとおり、関節部130のアクチュエータが備えるモータが電磁モータである場合、外力推定部260は、関節部130の駆動に係る電流指令トルクに基づいて外トルクを推定してよい。また、関節部130のアクチュエータが備えるモータが超音波モータである場合、外力推定部260は、関節部130の駆動に係る位相差指令トルクに基づいて外トルクを推定してよい。
【0193】
また、外力推定部260は、関節部130の駆動に係る摩擦トルクや内部消費トルクを推定し、当該摩擦トルクや内部消費トルクなどに基づいて、上記の運動推定トルクを算出することができる。例えば、関節部130のアクチュエータが備えるモータが電磁モータである場合、外力推定部260は、減速機の静止摩擦と動摩擦とに基づくモデル同定結果を用いて摩擦トルクを推定してもよい。このように、外力推定部260は、図5に示すブロック707に対応する機能を有する。
【0194】
本実施形態に支持アームシステム1においては、支持アーム装置10におけるアーム部120の駆動制御は、アーム部120を用いた作業が行われている間継続的に行われるため、支持アーム装置10及び制御装置20における以上説明した処理が繰り返し行われる。すなわち、支持アーム装置10の関節状態検出部132によって関節部130の状態が検出され、制御装置20に送信される。制御装置20では、当該関節部130の状態と、運動目的及び拘束条件とに基づいて、アーム部120の駆動を制御するための全身協調制御及び理想関節制御に関する各種の演算が行われ、演算結果としての指令トルクτが支持アーム装置10に送信される。上述したとおり、上記の演算には、外力推定部260によ外トルクの推定演算が含まれる。支持アーム装置10では、当該指令トルクτに基づいてアーム部120の駆動が制御され、駆動中又は駆動後の関節部130の状態が、再び関節状態検出部132によって検出される。
【0195】
制御装置20が有する他の構成についての説明を続ける。
【0196】
入力部210は、ユーザが制御装置20に支持アーム装置10の駆動制御に関する情報や命令等を入力するための入力インターフェースである。本実施形態においては、ユーザによる入力部210からの操作入力に基づいて、支持アーム装置10のアーム部120の駆動が制御され、撮像部140の位置及び姿勢が制御されてもよい。具体的には、上述したように、ユーザによって入力部210から入力されたアームの駆動の指示に関する指示情報が演算条件設定部242に入力されることにより、演算条件設定部242が当該指示情報に基づいて全身協調制御における運動目的を設定してもよい。このように、ユーザが入力した指示情報に基づく運動目的を用いて全身協調制御が行われることにより、ユーザの操作入力に応じたアーム部120の駆動が実現される。
【0197】
具体的には、入力部210は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、レバー及びペダル等のユーザが操作する操作手段を有する。例えば入力部210がペダルを有する場合、ユーザは当該ペダルを足で操作することによりアーム部120の駆動を制御することができる。従って、ユーザが患者の施術部位に対して両手を使って処置を行っている場合であっても、足によるペダルの操作によって撮像部140の位置及び姿勢、すなわち、施術部位の撮影位置や撮影角度を調整することができる。
【0198】
記憶部220は、制御装置20によって処理される各種の情報を記憶する。本実施形態においては、記憶部220は、制御部230によって行われる全身協調制御及び理想関節制御に関する演算において用いられる各種のパラメータを記憶することができる。例えば、記憶部220は、全身協調制御部240による全身協調制御に関する演算において用いられる運動目的及び拘束条件を記憶していてもよい。記憶部220が記憶する運動目的は、上述したように、例えば撮像部140が空間上の所定の点で静止することのような、予め設定され得る運動目的であってよい。また、拘束条件は、アーム部120の幾何的な構成や支持アーム装置10の用途等に応じて、ユーザによって予め設定され、記憶部220に格納されていてもよい。また、記憶部220には、アーム状態取得部241がアーム状態を取得する際に用いるアーム部120に関する各種の情報が記憶されていてもよい。更に、記憶部220には、制御部230による全身協調制御及び理想関節制御に関する演算における演算結果や演算過程で算出される各数値等が記憶されてもよい。このように、記憶部220には、制御部230によって行われる各種の処理に関するあらゆるパラメータが格納されていてよく、制御部230は、記憶部220と相互に情報を送受信しながら各種の処理を行うことができる。
【0199】
以上、制御装置20の機能及び構成について説明した。なお、本実施形態に係る制御装置20は、例えばPC(Personal Computer)やサーバ等の各種の情報処理装置(演算処理装置)によって構成することができる。次に、表示装置30の機能及び構成について説明する。
【0200】
表示装置30は、各種の情報を表示画面上にテキスト、イメージ等様々な形式で表示することにより、当該情報をユーザに対して視覚的に通知する。本実施形態においては、表示装置30は、支持アーム装置10の撮像部140によって撮影された画像を表示画面上に表示する。具体的には、表示装置30は、撮像部140によって取得された画像信号に各種の画像処理を施す画像信号処理部(図示せず。)や処理された画像信号に基づく画像を表示画面上に表示させる制御を行う表示制御部(図示せず。)等の機能及び構成を有する。なお、表示装置30は、上記の機能及び構成以外にも、一般的に表示装置が有する各種の機能及び構成を有してもよい。表示装置30は、図1に示す表示装置550に対応している。
【0201】
以上、図13を参照して、本実施形態に係る支持アーム装置10、制御装置20及び表示装置30の機能及び構成について説明した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0202】
以上説明したように、本実施形態によれば、支持アーム装置10における多リンク構造体であるアーム部120が、少なくとも6自由度以上の自由度を有するとともに、当該アーム部120を構成する複数の関節部130のそれぞれの駆動が駆動制御部111によって制御される。そして、当該アーム部120の先端には医療用器具が設けられる。このように、各関節部130の駆動が制御されることにより、より自由度の高いアーム部120の駆動制御が実現され、よりユーザにとって操作性の高い医療用の支持アーム装置10が実現される。
【0203】
<3.ハードウェア構成>
次に、図14を参照しながら、図13に示す、本実施形態に係る支持アーム装置10及び制御装置20のハードウェア構成について、詳細に説明する。図14は、本開示の一実施形態に係る支持アーム装置10及び制御装置20のハードウェア構成の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0204】
支持アーム装置10及び制御装置20は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、支持アーム装置10及び制御装置20は、更に、ホストバス907と、ブリッジ909と、外部バス911と、インターフェース913と、入力装置915と、出力装置917と、ストレージ装置919と、ドライブ921と、接続ポート923と、通信装置925とを備える。
【0205】
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919又はリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、支持アーム装置10及び制御装置20内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。CPU901は、本実施形態においては、例えば、図13に示すアーム制御部110及び制御部230に対応している。なお、上記の演算パラメータには、例えば、全身協調制御に関する演算において用いられる運動目的や拘束条件等の演算条件に関する種々のパラメータや、上述したアーム情報、また外トルクの推定に用いられるモデル同定結果などが含まれる。
【0206】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。また、外部バス911には、インターフェース913を介して、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919、ドライブ921、接続ポート923及び通信装置925が接続される。
【0207】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、レバー及びペダル等、ユーザが操作する操作手段である。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、支持アーム装置10及び制御装置20の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器929であってもよい。さらに、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。支持アーム装置10及び制御装置20のユーザは、この入力装置915を操作することにより、支持アーム装置10及び制御装置20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。入力装置915は、本実施形態においては、例えば、図13に示す入力部210に対応する。また、本実施形態においては、入力装置915を介したユーザによる操作入力により、アーム部120の駆動における運動目的が設定され、当該運動目的に従って全身協調制御が行われてもよい。
【0208】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプ等の表示装置や、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンタ装置等がある。出力装置917は、例えば、支持アーム装置10及び制御装置20が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、支持アーム装置10及び制御装置20が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。本実施形態においては、アーム部120の駆動制御に関する各種の情報が、あらゆる形式で出力装置917から出力されてよい。例えば、アーム部120の駆動制御における、アーム部120の各構成部材の移動の軌跡が、グラフの形式で出力装置917の表示画面に表示されてもよい。なお、例えば、図13に示す表示装置30は、出力装置917の表示装置としての機能及び構成と、当該表示装置の駆動を制御するための制御部等の構成を備える装置であってもよい。
【0209】
ストレージ装置919は、支持アーム装置10及び制御装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ等を格納する。ストレージ装置919は、本実施形態においては、例えば、図13に示す記憶部220に対応する。また、本実施形態においては、ストレージ装置919は、一般化逆動力学を用いた全身協調制御に関する演算における演算条件(運動目的及び拘束条件)を記憶することができ、支持アーム装置10及び制御装置20はストレージ装置919に記憶されているこれらの演算条件を用いて全身協調制御に関する演算を行ってもよい。
【0210】
ドライブ921は、記録媒体用リーダライタであり、支持アーム装置10及び制御装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体927に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体927は、例えば、DVDメディア、HD−DVDメディア又はBlu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体927は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CF:CompactFlash)、フラッシュメモリ又はSDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体927は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。本実施形態においては、アーム部120の駆動制御に関する各種の情報が、ドライブ921によって、各種のリムーバブル記録媒体927から読み出され、又は各種のリムーバブル記録媒体927に書き込まれてよい。
【0211】
接続ポート923は、機器を支持アーム装置10及び制御装置20に直接接続するためのポートである。接続ポート923の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート923の別の例として、RS−232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(登録商標)(High−Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、支持アーム装置10及び制御装置20は、外部接続機器929から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器929に各種のデータを提供したりする。本実施形態においては、アーム部120の駆動制御に関する各種の情報が、接続ポート923を介して、各種の外部接続機器929から読み出され、又は各種の外部接続機器929に書き込まれてよい。
【0212】
通信装置925は、例えば、通信網(ネットワーク)931に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ又は各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置925に接続される通信網931は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。本実施形態においては、アーム部120の駆動制御に関する各種の情報が、通信装置925によって、通信網931を介して外部の他の機器との間で相互に送受信されてもよい。
【0213】
以上、本開示の実施形態に係る支持アーム装置10及び制御装置20の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。なお、図14では図示しないが、支持アーム装置10は、図13に示すアーム部120に対応する各種の構成を当然備える。
【0214】
なお、上述のような本実施形態に係る支持アーム装置10、制御装置20及び表示装置30の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<4.まとめ>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係る制御装置20は、支持アーム装置10の関節部130に係る外トルクを推定し、推定した推定外トルクに基づく理想関節制御を実現することができる。係る構成によれば、推定した外力に基づくトルク制御を実現とし、より多様な状況に対応することが可能となる。
【0215】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0216】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0217】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体であり、医療用ユニットを支持するよう構成された支持アームと、
前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部、および前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて前記関節部の駆動を制御する関節制御部、を備える、制御装置と、
を備える、
医療用支持アームシステム。
(2)
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る運動推定トルクを算出し、前記運動推定トルクに基づいて、前記外トルクを推定する、
前記(1)に記載の医療用支持アームシステム。
(3)
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る摩擦トルクを推定し、前記摩擦トルクに基づいて、前記運動推定トルクを算出する、
前記(2)に記載の医療用支持アームシステム。
(4)
前記外力推定部は、減速機の静止摩擦と動摩擦とに基づくモデル同定結果を用いて前記摩擦トルクを推定する、
前記(3)に記載の医療用支持アームシステム。
(5)
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る内部消費トルクを推定し、前記内部消費トルクに基づいて、前記運動推定トルクを算出する、
前記(2)〜(4)のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(6)
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る電流指令トルクに基づいて、前記外トルクを推定する、
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(7)
前記外力推定部は、前記関節部の駆動に係る位相差指令トルクに基づいて、前記外トルクを推定する、
前記(1)〜(3)のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(8)
前記関節制御部は、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる電磁モータを制御する、
前記(1)〜(6)のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(9)
前記関節制御部は、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる超音波モータを制御する、
前記(1)〜3、7のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(10)
前記支持アームは、トルクセンサを有しない第一の関節部と前記トルクセンサを有する第二の関節部とを備え、
前記関節制御部は、前記外力推定部により推定された外トルクに基づく前記第一の関節部の駆動制御と、前記トルクセンサにより検出された外トルクに基づく前記第二の関節部の駆動制御とを共に行う、
前記(1)〜(9)のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(11)
前記アクチュエータは、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる電磁モータを備える第一のアクチュエータと、前記関節部の駆動に係る駆動力を発生させる超音波モータを備える第二のアクチュエータとを含み、
前記関節制御部は、前記第一のアクチュエータと前記第二のアクチュエータとを共に制御する、
前記(1)〜(10)のいずれかに記載の医療用支持アームシステム。
(12)
プロセッサが、アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体である支持アームの前記関節部の駆動を制御することと、
前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定することと、
を含み、
前記制御することは、推定された外トルクに基づいて、前記関節部の駆動を制御すること、をさらに含む、
医療用支持アームの制御方法。
(13)
アクチュエータを有する関節部によって複数のリンクが連結された多リンク構造体である支持アームの前記関節部の駆動を制御する関節制御部と、
前記アクチュエータの駆動特性に基づいて前記関節部に作用する外力を推定する外力推定部と、
を備え、
前記関節制御部は、前記外力推定部により推定された外トルクに基づいて、前記関節部の駆動を制御する、
医療用支持アームの制御装置。
【符号の説明】
【0218】
1 支持アームシステム
10 支持アーム装置
20 制御装置
30 表示装置
110 アーム制御部
111 駆動制御部
120 アーム部
130 関節部
131 関節駆動部
132 関節状態検出部
133 回転角度検出部
140 撮像部
210 入力部
220 記憶部
230 制御部
240 全身協調制御部
241 アーム状態取得部
242 演算条件設定部
243 仮想力算出部
244 実在力算出部
250 理想関節制御部
251 外乱推定部
252 指令値算出部
260 外力推定部
図1
図2
図3
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図5
図6
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図14