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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202556(P2018-202556A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】MEMSデバイス
(51)【国際特許分類】
   B81B 7/02 20060101AFI20181130BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20181130BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20181130BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20181130BHJP
   G01C 19/5783 20120101ALI20181130BHJP
【FI】
   B81B7/02
   B81B3/00
   H01L29/84 Z
   G01P15/08 102E
   G01P15/08 101A
   G01P15/125 Z
   G01C19/5783
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-111277(P2017-111277)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田窪 千咲紀
(72)【発明者】
【氏名】礒部 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 憲之
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】関口 知紀
【テーマコード(参考)】
2F105
3C081
4M112
【Fターム(参考)】
2F105BB04
2F105BB17
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD05
3C081AA13
3C081BA07
3C081BA30
3C081BA44
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA05
3C081CA13
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA29
3C081DA30
3C081EA02
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA21
4M112CA24
4M112CA31
4M112CA33
4M112CA35
4M112DA02
4M112DA05
4M112DA06
4M112DA15
4M112DA18
4M112EA03
4M112EA04
4M112EA06
4M112EA07
4M112EA11
4M112FA01
4M112FA08
4M112FA20
4M112GA01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、MEMSデバイスの作製工程を増やすことなく、通常用いられるMEMSデバイス作製工程及びプロセス材料を利用して、キャビティ内圧力を所望の値に設定することが容易なMEMSデバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決するために、代表的な本発明のMEMSデバイスは、キャビティを有するMEMSデバイスにおいて、キャビティの近傍に水素を含む絶縁膜と、絶縁膜を覆う水素バリア膜とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有するMEMSデバイスにおいて、
前記キャビティの近傍に水素を含む絶縁膜と、
前記絶縁膜を覆う水素バリア膜と、を有することを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項2】
前記絶縁膜は、第一のシリコン基板を介して、前記キャビティの上部に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記絶縁膜は、前記絶縁膜の膜厚方向と垂直な平面において、前記MEMSデバイスの外周よりも内側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記絶縁膜は、TEOSまたはシランを原料とした酸化シリコン膜であることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記水素バリア膜は、窒化シリコン膜であることを特徴とする、請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
前記キャビティの下部にシリコン基板と、
前記シリコン基板の下面を覆う第二の水素バリア膜と、を有することを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項7】
前記キャビティ内に水素分子が含まれており、
前記水素分子の前記キャビティ内の体積比は、50パーセントを超えていることを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項8】
前記キャビティの上部に第一のシリコン基板を有し、
前記水素バリア膜は、前記第一のシリコン基板も覆っていることを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項9】
前記絶縁膜は、前記絶縁膜の膜厚方向と垂直な平面において、前記キャビティの外周よりも内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項10】
前記キャビティの内部に可動部に接続された可動電極と、
前記キャビティの内部に固定電極と、
前記キャビティの上部に第一のシリコン基板と、
前記キャビティの下部に第二のシリコン基板と、を有し、
前記可動電極と前記固定電極との間の容量変化量を検出することで、前記MEMSデバイスに印加する加速度を計測することを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項11】
前記MEMSデバイスは、加速度センサまたは角速度センサであることを特徴とする請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項12】
前記絶縁膜と前記キャビティとの間に、単結晶シリコンよりも結晶性が低い材料からなる分離層が形成されており、
前記分離層は、前記第一のシリコン基板を貫通して形成されていることを特徴とする請求項8に記載のMEMSデバイス。
【請求項13】
前記分離層は、酸化シリコンからなる絶縁膜のみからなる材料、または、前記酸化シリコンからなる絶縁膜とポリシリコンの埋め込み材料から構成されていることを特徴とする請求項12に記載のMEMSデバイス。
【請求項14】
複数のキャビティを有する複合型のMEMSデバイスにおいて、
第一のキャビティの上部に、水素を含む第一の絶縁膜と、
第二のキャビティの上部に、水素を含む第二の絶縁膜と、
前記第一の絶縁膜および前記第二の絶縁膜を覆う水素バリア膜と、を有し、
前記第一の絶縁膜と前記第二の絶縁膜は、それぞれ体積が異なっていることを特徴とする複合型のMEMSデバイス。
【請求項15】
前記第一のキャビティの内圧は、前記第二のキャビティの内圧よりも大きく、
前記第一の絶縁膜の体積は、キャビティ体積比に換算した場合に、前記第二の絶縁膜の体積よりも大きいことを特徴とする請求項14に記載のMEMSデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、特に、キャビティ内の圧力を調整する必要があるMEMSデバイスの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMSデバイスは、微小可動部の保護のため、気密封止されたキャビティが形成され、そのキャビティ内に微小可動部が配置されていることが多い。埃や水分の浸入を防止するだけでなく、RF−MEMSスイッチ等では、接点の劣化防止のためにキャビティ内に不活性ガスを充満させる必要があり、加速度センサや角速度センサ等の慣性センサでは、性能を保証するためにキャビティ内を大気圧より低い圧力に調整する必要がある。
【0003】
例えば、資源探査分野では減衰の大きい地中を伝搬して戻ってくる微弱な弾性振動を検知するため、高感度な加速度センサが必要である。MEMS加速度センサは、微小領域のキャビティ内の振動体の容量変化を検知するため、キャビティ内の空気等の流体によるダンピング影響を受ける。高感度な加速度センサではこの影響を低減させるため、キャビティ内を真空の状態で封止する必要がある。一方、圧力が低すぎると振動体の不要な揺れが止まりにくく、センサ安定化に時間がかかりすぎてしまう。そのため、それぞれのセンサによって最適なキャビティ内圧力が設定される。
【0004】
キャビティ内の圧力を所望の値に調整する技術として、特許文献1が開示されている。特許文献1に記載されたセンサでは、MEMSデバイスの層を構成するウエハを接合した後にキャビティに通気孔を形成し、所望の真空雰囲気中で塞ぐことによってキャビティ内の圧力を所望の値にするものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0290494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、MEMSデバイスの層を構成するウエハを接合した後に通気孔を用いてキャビティ内圧を調整し、その後に通気孔を塞ぐ工程が加わるため、デバイスの作製工程が増加し、製造コストが増加する可能性がある。また、通気孔は異種材料の密着で気密封止するため、長期間経過後にはリークする可能性があり、長期安定性に課題があった。
【0007】
本願発明者らは、MEMSデバイスの作製工程を増やすことなく、キャビティ内の圧力調整を試行している中で、実験により、TEOS膜等の水素を含む絶縁膜から水素がキャビティ内に流入することを新たに発見した。
【0008】
そこで、本発明は、MEMSデバイスの作製工程を増やすことなく、通常用いられるMEMSデバイス作製工程及びプロセス材料を利用して、キャビティ内圧力を所望の値に設定することが容易なMEMSデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段のうち代表的なものを例示すれば、キャビティを有するMEMSデバイスにおいて、キャビティの近傍に水素を含む絶縁膜と、絶縁膜を覆う水素バリア膜と、を有することを特徴とするMEMSデバイスが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、MEMSデバイスにおいて、キャビティの近傍に形成された水素を含む絶縁膜により、キャビティ内の圧力を調節することが可能になり、長期安定性が高く、製造コストを低減可能なMEMSデバイスの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における加速度センサの断面図
図2】実施例1における加速度センサのMEMS層の平面図
図3】実施例1における加速度センサの上面図
図4】加速度センサの時間経過におけるキャビティ内の圧力計測結果を示した図
図5】キャビティ内ガス分析結果を示した図
図6】実施例1の加速度センサの製造方法の説明図(MEMS層及びベース層)
図7】実施例1の加速度センサの製造方法の説明図(キャップ層作製)
図8】実施例1の加速度センサの製造方法の説明図(接合工程)
図9】実施例1の加速度センサの製造方法の説明図(膜形成工程)
図10】実施例2における加速度センサの断面図
図11】実施例2における加速度センサのMEMS層の平面図
図12】実施例2における加速度センサの上面図
図13】実施例3における複合型慣性センサの断面図
図14】実施例3における複合型慣性センサのMEMS層の平面図
図15】実施例3における複合型慣性センサの上面図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
以下では、MEMSデバイスの一例として、加速度センサをもとに説明を行うが、角速度センサや赤外線センサ等、キャビティを有するMEMSデバイスであれば、圧力調整が可能なため、加速度センサに限定されるわけではない。
【0014】
実施例1では、キャップ層の外面に水素を含む絶縁膜とそれを覆う水素バリア膜を形成し、絶縁膜から発生する水素がキャビティ内へ拡散することにより、キャビティ内の圧力を所望の値まで調整可能なMEMSデバイスについて記載する。
【0015】
図1から図3は、本実施例1における加速度センサの構造を示す図である。図1は本センサの断面図、図2は本センサのMEMS層の平面図、図3は本センサの上面図である。
【0016】
図1は、図2のA−A’部分の断面図である。加速度センサはシリコンウエハから作製したキャップ層101、MEMS層102、ベース層103から構成されている。便宜上、MEMS層102の上の層をキャップ層101、下の層をベース層103と呼ぶ。
【0017】
MEMS層102には、加速度や傾きにより可動する可動部10が形成されており、可動部の周囲にはキャビティ11が形成される。また、固定電極15及びフレーム16も形成されている。各層はそれぞれシリコン同士直接または絶縁層12を介して接合されており、キャビティ11は、MEMS層102のフレーム16とキャップ層101及びベース層103によって気密封止されている。一般に、接合は高真空中で行うため、接合直後のキャビティ11内は高真空になる。
【0018】
水素を含む絶縁膜13は、シリコン基板111を介して、キャビティ11の近傍に形成されており、MEMSデバイスの外周よりも内側のエリアに配置されている。水素バリア膜14は、水素を含む絶縁膜13を備えるキャップ層上面全体を覆うように形成されている。また、シリコン基板121からなるベース層103の下面にも全面を覆う水素バリア膜14が形成されている。なお、図面では、絶縁膜13をキャビティの上部に配置する例を示しているが、絶縁膜の位置は、キャビティの近傍にあればよく、キャビティの下部でも構わない。水素透過率により絶縁膜の位置の変動は可能である。
【0019】
水素を含む絶縁膜13の中には水素分子または水素原子が含まれている。キャップ層101の上部にある絶縁膜13内に存在する水素分子または水素原子は、シリコン中の拡散係数が大きいため、シリコン基板111を拡散してキャビティ11内に侵入することができる。一方、絶縁膜13は、水素が拡散しにくい水素バリア膜14で覆われているため、水素分子または水素原子は大気中に放出されない。
【0020】
このとき、キャビティ11の内容積が既知であれば、キャビティ11内に侵入する水素量、すなわち水素を含む絶縁膜13の体積を調節することによって、キャビティ11内の圧力を接合直後の高真空より低い所望の圧力に調節することができる。
【0021】
図2は、MEMS層102の平面図を表す。可動部10と固定電極15が形成されており、可動部10はy軸方向に変位するバネ22で支えられている。可動部10は、可動電極を備えており、y軸方向に変位したときに固定電極15との間の容量変化量が検出できる構造であるため、本加速度センサはy軸加速度センサであることを表している。なお、ここで示した加速度センサのMEMS層102の構造は一例であり、本発明は、図に示した構造に限らないのは言うまでもない。
【0022】
図3は本加速度センサのキャップ層の上面図である。外周より内側に水素を含む絶縁膜13が形成されている。また、それを覆うように全面に水素バリア膜14が形成されているが図3では省略している。電極取り出し部分の水素バリア膜14は除去し、アルミ材料等のメタル材23が形成されている。
【0023】
本実施例1は、このキャップ層の上面に形成した水素を含む絶縁膜から発生させた水素を、キャップ層のシリコンを通してキャビティ内部へ拡散させることによって、キャビティ内部の圧力を上昇させることを特徴としている。
【0024】
水素は、シリコン内の拡散係数が大きいガスの一つであることが一般に知られている(たとえば、Helmut Mehre ”Diffusion in Solid” Springer(2009.2.15)P.414等)。一般に、シリコン内の拡散距離x、時間tにおける不純物濃度N(x,t)は、以下の拡散方程式から得られる。Noはx=0、t=0のときの濃度を表し、Dは拡散係数を示す。
【0025】
【数1】
【0026】
式(1)と上記文献に記載の拡散係数Dを用いると、400℃ではシリコン中100μmを60秒間に拡散する水素の濃度は2.3E14 cm−3であることがわかる。一方、1E14cm−3の水素が体積30mmのキャビティに入ると、気体の状態方程式より、室温ではキャビティ内の圧力は14Paになる。これらより、キャビティの外側に水素が多くあれば、その水素はシリコンを通してキャビティ内に拡散するため、キャビティ内の圧力が上昇することがわかる。その逆に、キャビティ内の体積および気体の状態方程式を用いると、所望の圧力に必要な水素の体積がわかり、必要な水素の体積から、水素を含む絶縁膜の適切な体積を計算することが可能である。
【0027】
また、水素を含む絶縁膜13の外側を水素バリア膜14で覆えば、水素バリア膜14で覆った方向には水素が拡散しないため、外部へ放出される水素は限りなく少なくなる。
【0028】
次に、絶縁膜13および水素バリア膜14の膜質について説明する。絶縁膜13は、膜内に水素分子または水素原子を含んでいればよい。また、水素バリア膜14は、水素の拡散を防止する膜であればよく、例えば、従来から水素拡散防止膜として半導体デバイスに使用されてきた窒化シリコン膜を利用することが考えられる。
【0029】
半導体やMEMSデバイスの作製工程において、酸化シリコン膜の形成の原料にシラン(SiH)やTEOS(TetraEthOxySilane:(Si(OC))を用いることがある。これらは、水素原子含有ガスであるため、作成した酸化シリコン膜にも水素が多く含まれている。水素を含む絶縁膜13として、例えば、原料にTEOSを用いてCDV成膜した酸化シリコン膜(本実施例ではTEOS膜と記載)を利用することが考えられる。
【0030】
本願発明者らは、TEOS膜から水素を発生させてキャビティ内に拡散する現象の検証を行なった。その結果を図4および図5にて説明する。
【0031】
図4(a)は、キャップ層101上面にTEOS膜及び窒化シリコン膜がない加速度センサの時間経過におけるキャビティ11内の圧力を計測した図である。また、図4(b)は、キャップ層101上面にTEOS膜及びそれを覆うように窒化シリコン膜を形成した加速度センサの時間経過におけるキャビティ11内の圧力を計測したものである。
【0032】
キャビティ11内の圧力は、キャビティ11内部に形成した可動部10の振動特性で確認した。どちらも開始時の圧力は20Paで、125℃と室温での経時変化を評価した。
【0033】
水素を含む絶縁膜13および水素バリア膜14がない図4(a)では、5500時間経過後でも初期の圧力とほぼ変化が見られなかったのに対し、水素を含む絶縁膜13および水素バリア膜14のある図4(b)では、125℃では800時間程で70Paまで圧力が上昇し、その後の圧力は安定する現象が見られ、室温でも徐々に上昇していく現象が見られた。
【0034】
次に、キャビティ11内のガス分析を行なった。検出したガス種の体積比を図5に示す。図5(a)は、水素を含む絶縁膜13(TEOS膜)及び水素バリア膜14(窒化シリコン膜)がなく、キャビティ内圧が5PaのMEMSデバイス、図5(b)は、デバイス表面のキャップ層101に水素を含む絶縁膜13(TEOS膜)およびその外側に水素バリア膜14(窒化シリコン膜)を形成し、室温での経時変化でキャビティ内圧が33Paに増加したMEMSデバイスをそれぞれ2個ずつ評価した結果である。図5(a)は、窒素比率が多いのに対し、図5(b)は、水素の比率が多かった。図5(b)のように、2つのデバイスともに、水素の体積比が50パーセントを超えている。これらより、キャビティ内の圧力増加の要因が水素の増加によるものであることがわかった。さらに、別途TEOS膜の昇温脱離ガス分析(TDS)も行なったところ、温度上昇に伴い水素が多く発生する結果が得られている。
【0035】
これらの結果より、キャビティの上部に水素を多く含む絶縁膜とそれを覆うように水素バリア膜を形成することで、キャビティ内の圧力を増加できることがわかった。
【0036】
絶縁膜は通常、配線等による凹凸を無くすために用いられる。特許文献1でも、MEMSデバイスの保護を目的として絶縁膜とパッシベーション膜を一面に設置した技術が開示されている。平坦性を高くするという目的上および絶縁膜の製造プロセス上、絶縁膜はMEMSデバイスの全面に設置されている。しかしながら、全面に設置することで、絶縁膜の体積が大きくなってしまい、水素を含む絶縁膜の場合には、水素の流入により、キャビティ内の圧力が変わり、所望の圧力を得ることが難しいことを発見した。
【0037】
このように、TEOS膜をデバイス上面の全面に形成した場合、キャビティ圧力の増加量が多すぎることが考えられる。これを解決するには、パターニングして水素を多く含む絶縁膜の量を減らせば発生する水素量も減少し、キャビティ内の圧力増加も抑えられる。
【0038】
半導体デバイスでは作製工程の最後に、デバイス表面にTEOS膜や窒化シリコン膜等の保護膜を形成することが多い。ところが、これらの膜はデバイスを保護することが目的であり、かつ、半導体デバイス作成プロセス上保護膜のパターニングは不要で余計なフローが追加されるため、デバイスの全面に形成するのが通常である。一方、MEMSデバイスではTEOS膜を全面に形成するとTEOS膜から発生する水素量が多く、キャビティ内圧が大きくなりすぎる。
【0039】
本願発明者らによる検証では、体積3.43E−2mmのTEOS膜(面積が7mm×7mm、膜厚0.7μm)を形成したときに内容積18.15mmのキャビティ内圧が50Pa増加した。例えば、キャビティ内圧を5Pa程度に制御するためには、今回のTEOS膜では体積を10分の1程度にしなければならない。TEOS膜をデバイス全面に形成し、かつ、TEOS膜の体積を10分の1にする場合は、TEOS膜の厚さを数十nmにする必要があるが、このように薄い膜を再現性良く、膜厚ばらつき無しで形成することは難しい。このため、絶縁膜は全面に形成するのではなく、パターンを形成してTEOS膜の量を減らしたほうが良い。TEOS膜等の水素を含む絶縁膜の必要な体積は、キャビティ内の圧力増加を計算することにより調整することが可能である。絶縁膜をMEMSデバイスの外周よりも内側に配置することで、水素を含む絶縁膜の量を適切に調節することが可能になり、キャビティ内の圧力を所望の値に調節することが容易になる。
【0040】
また、TEOS膜等の水素を含む絶縁膜13の外側には水素バリア膜14を形成する必要がある。バリア膜がないとキャビティ内に侵入した水素は時間経過に伴いキャビティの外へ拡散し、キャビティ内圧が変化してしまう。一方、バリア膜を形成しにくいデバイスの側面等は、式(1)よりシリコン厚、すなわち拡散距離xを長くするのが好ましい。拡散距離xを長くするために、フレーム16のx方向の長さをデバイスのサイズの範囲内でなるべく長くすることが考えられる。こうすることで、デバイスの保障期間内ではキャビティ内の水素がほとんど抜けないようにすることが可能である。
【0041】
次に、本発明を適用した加速度センサの製造方法の一例を図6から図9を用いて説明する。シリコンから成るMEMS層102とベース層103が絶縁層12で電気的に分離されているSOI基板104を用い、MEMS層102の表面にフォトレジストを塗布し、センサの可動部構造をフォトグラフィ技術によって転写し、レジストマスク17を形成する(図6(a))。次に、シリコン単結晶の深堀エッチング技術によって可動部構造を形成した後、フォトレジストを除去する(図6(b))。次に、可動部下部の酸化シリコンをエッチングで除去し、可動部10を形成し、固定電極15に対して可動による容量変化が検出できるようにする((図6(c))。
【0042】
一方で、別のシリコン基板を用いてキャップ層を形成する。シリコン基板の表面にフォトレジストを塗布し、キャビティ構造をフォトグラフィ技術によって転写し、レジストマスク37を形成する(図7(a))。その後、エッチングによりキャビティ構造を形成後、フォトレジストを除去する(図7(b))。次に、MEMS層102からの電極取り出し用の貫通電極を形成するため、同様にレジストマスク37を形成し、貫通電極用の孔18をエッチングする(図7(c))。レジストマスク37除去後、熱酸化により孔側面を含むシリコンウエハ表面に酸化シリコンの絶縁層19を形成する(図7(d))。次に、導電性の材料、たとえばポリシリコン24を孔18に埋め込み、孔18以外に堆積したものは取り除き(図7(e))、ウエハの上面、すなわち、接合する面25を平坦化する(図7(f))。
【0043】
さらに、図6及び図7で作製したそれぞれのウエハを接合して気密封止することによって、可動部10の周囲にキャビティ11が形成される(図8(a))。キャビティ11はキャップ層101、ベース層103、及び、MEMS層102のフレーム16で封止されている。その後、キャップ層101の上面を研磨して貫通電極26を露出する(図8(b)。)
最後に、キャビティ11内の圧力調整のために、水素を含む絶縁膜13であるTEOS膜パターンと水素バリア膜14である窒化シリコン膜を形成する。キャップ層101上面にTEOS膜等の水素を含む絶縁膜13を形成し、水素発生量に応じたサイズのレジストマスク47を形成する(図9(a))。エッチングで水素を含む絶縁膜13をパターニングし(図9(b))、その上に、絶縁膜13を覆うように全面に窒化シリコン膜等の水素バリア膜14を形成する。次に、電極取り出し口の水素バリア膜14を除去して電極取り出し用のアルミパッド29を形成する。また、ベース層103の外側にも水素が抜けないように窒化シリコン膜等の水素バリア膜14を形成する(図9(c))。最後に加熱を行い、TEOS膜内の水素をキャビティ内に侵入させ、キャビティ内を所望の圧力にする。水素がシリコン内を拡散する距離を短くするために、シリコン基板111は薄い方が好ましい。例えば、キャビティ上部のシリコン基板111の厚みを100μm程度にする。シリコン基板111を薄くすることで、キャビティ内の圧力が所望の値になるまでの時間を短縮でき、さらに、絶縁膜13中の水素をキャビティ11内に侵入されるための加熱温度を低くすることができる。
【0044】
なお、本実施例1ではSOI基板の上側のシリコン部をMEMS層102,下側のシリコン部をベース層103としたが、SOI基板ではなく、MEMS層基板とベース層基板を接合してもよい。
【0045】
また、酸化シリコン膜の原料や成膜条件によって膜内に存在する水素量は異なる。この場合は成膜する酸化シリコン膜内の水素濃度によって、パターンサイズを調節すればよい。
【0046】
以上のように、本実施例に係るMEMSデバイスは、キャビティ11を有するMEMSデバイスにおいて、キャビティ11の近傍に水素を含む絶縁膜13と、絶縁膜13を覆う水素バリア膜14を有することを特徴としている。
【0047】
係る構成により、最終工程で形成する絶縁膜13の体積の最適化でキャビティ11内の圧力を所望の適切な値にすることができる。キャビティ近傍に設置する絶縁膜13の調整によりキャビティ11内の圧力調整が可能なため、長期安定性が高く、製造コストを低減可能なMEMSデバイスの提供が可能になる。
【0048】
また、本実施例に係るMEMSデバイスは、キャビティ11の下部にシリコン基板121と、シリコン基121板の下面を覆う第二の水素バリア膜14を有することを特徴としている。
【0049】
係る構成により、キャビティ11内に充満する水素がキャビティ11の下部に設置されるシリコン基板121側から大気中に拡散することを防ぐことができるため、長期間キャビティ11内の圧力を所望の圧力に維持することが容易になる。
【実施例2】
【0050】
実施例2では、キャビティ上部のキャップ層に分離層を形成し、その分離層上に水素を含む絶縁膜を形成することによって、分離層を通してキャビティ内への水素侵入をはやくできるMEMSデバイスについて記載する。
【0051】
図10から図12は、本実施例2におけるMEMSデバイスである加速度センサの構造を示す図である。図10は本センサの断面図、図11はMEMS層の平面図、図12は本センサの上面図である。
【0052】
図10は、図11のA−A’の断面である。加速度や傾きにより可動する可動部90とそれを支える固定部91とフレーム93を形成するMEMS層1102と、可動部90を気密封止するキャップ層1101及びベース層1103からなる。各層は絶縁層94を介して直接接合されている。便宜上、MEMS層1102の上の層をキャップ層1101、下の層をベース層1103と呼ぶ。MEMS層1102に形成した可動部90は、固定部91を軸としてシーソーのようにz方向に動く構造になっている。図10では、固定部90の左側が密になっているため、−z方向の重力がかかると左側が−z方向に傾く。また、キャップ層1101には可動部90の真上に、可動部90と対を成して容量が検出できる電極95及び電極96が形成されている。このため、本実施例2の加速度センサは、加速度や傾きにより可動部90がz軸方向に可動し、キャップ層1101に形成した電極95および電極96との容量変化量が検出できるz軸加速度センサを表している。
【0053】
キャップ層1101の電極は、電極となる部分95及び96を分離層33によってキャップ層1101の他の外部エリア97と分離することによって形成している。電極はキャップ層を貫通しているため貫通電極とも言われる。
【0054】
分離層33は、単結晶シリコンに比べて結晶性が劣る構造であれば良い。例えば、酸化シリコン等の絶縁膜のみから成る構造、または、絶縁膜とその間にポリシリコン等の埋込み材料を埋め込んだ構造である。絶縁膜や埋込み材料は、キャップ層1101の単結晶シリコンに比べて結晶性が劣るため、水素は分離層33を通って、キャビティ11内へ侵入しやすい。この性質を利用して、水素を含む絶縁膜13を分離層33の上に形成することにより、キャビティ11内への水素侵入速度を早くでき,圧力調節の時間の短縮や加熱温度の低温化が可能になる。水素バリア膜は、絶縁膜13を覆うようにキャップ層1101の上面に形成され、さらに、ベース層1103の下面にも形成される。
【0055】
図11は、MEMS層1102の平面図である。可動部90とそれを支える固定部91が形成されており、可動部90はバネ99で固定部91に接続している。また、これらはフレーム93で囲われているため、キャップ層1101とベース層1103との接合により、キャビティ11は気密封止される。
【0056】
図12は、本センサのキャップ層1101の上面図である。電極95及び96を外部エリア97と分離する分離層33の上部に水素を含む絶縁膜13を形成している。絶縁膜13およびキャップ層1101を覆うようにデバイス全面に水素バリア膜14が形成されているが、図では省略している。取り出し電極となるアルミパッドも省略している。
【0057】
以上のように、本実施例に係るMEMSデバイスは、実施例1に記載のMEMSデバイスに加えて、水素を含む絶縁膜13とキャビティ11との間に、単結晶シリコンよりも結晶性が低い材料からなる分離層33が形成されており、分離層33は、キャップ層1101を貫通して形成されていることを特徴とする。また、分離層33は、酸化シリコンからなる絶縁膜のみからなる材料、または、前記酸化シリコンからなる絶縁膜とポリシリコンの埋め込み材料から構成されていることを特徴とする。
【0058】
係る構成により、シリコンだけでなく、分離層33から水素を侵入させることにより、キャビティ11内の圧力調整が早くできるようになり、キャップ層1101のシリコンの厚みが厚い場合でも短時間で圧力調整ができる。また、分離層33の埋込材料の結晶性を変えることで水素の侵入速度を変えることも可能である。
【実施例3】
【0059】
実施例3では、同一基板に異なるMEMSデバイスを複数作製した場合に、それぞれのキャビティ上部のキャップ層の上面に異なるサイズの水素を含む絶縁膜を形成することによって、異なるキャビティ圧力に調節できるMEMSデバイスについて記載する。水素発生量は水素を含む絶縁膜のパターンサイズで個別に調整できるため、同一基板上に作製した多種のセンサ毎に最適なパターンを形成することにより、各センサのキャビティ内の調圧ができることが特徴である。
【0060】
図13から図15は、本実施例3におけるMEMSデバイスの加速度センサと角速度センサからなる複合型慣性センサの構造を示す図である。図13は、本センサの断面図、図14は本センサのMEMS層の平面図、図15は、本センサの上面図である。それぞれの図面において、左側には加速度センサ201、右側には角速度センサ202が形成されている。角速度センサと加速度センサのキャビティはフレーム16で分離されて、それぞれ異なった圧力により気密封止されている。
【0061】
図13図14のA−A’の断面である。加速度センサ201及び角速度センサ202の可動部10と固定電極15とフレーム16を形成するMEMS層102と、キャビティ1301およびキャビティ1302を気密封止するキャップ層101及びベース層103からなる。本実施例では図の上側の層をキャップ層、下側の層をベース層とするが、逆でもよい。各センサのキャビティの上のキャップ層には水素を含む絶縁膜1311および絶縁膜1312と、それらの絶縁膜を覆うように複合型慣性センサの上面全てに水素バリア膜14が形成されている。本実施例3では、加速度センサ201のキャビティ1301内圧を角速度センサ202のキャビティ1302内圧より低くするため、絶縁膜のパターンサイズを大きく形成している。水素バリア膜14は複合型慣性センサの下面にも形成されている。
【0062】
図14はMEMS層102の平面図である。加速度センサ201は、加速度や傾きにより可動部がy軸方向に変位した時の容量変化量を検出するy軸加速度センサで、角速度センサ202はz軸に対する角速度を検出する角速度センサである。図14に示した構造は一例であり、加速度センサおよび角速度センサともにこの構造に限られないことは言うまでもない。
【0063】
図15は、本実施例3のキャップ層101の上面図である。上面の一部に水素を含む絶縁膜13を形成している。また、それを覆うように水素バリア膜14をキャップ層101の全面に形成してあるが、図では省略している。電極となる部分の水素バリア膜14は除去し、アルミパッド29が形成されている。
【0064】
一般に、加速度センサ201と角速度センサ202の適切なキャビティ内圧力は異なる。同一基板上に作製したキャビティは同時に接合されるため、複数のキャビティ内の圧力は等しくなってしまう。これを異なる圧力で調節するために、本実施例3ではキャビティ上部に形成する水素を含む絶縁膜の量、すなわちパターンサイズを変えている。
【0065】
図13及び図15では、適切なキャビティ内圧が低い加速度センサ201には大きなパターンの水素を含む絶縁膜1311を、適切なキャビティ内圧が高い角速度センサ202には小さなパターンの水素を含む絶縁膜1312を形成している。この結果、水素を含む絶縁膜の量が異なればキャビティ内に侵入する水素量も変わるため、加速度センサ201と角速度センサ202のキャビティ内の圧力を異なる値に調節できる。通常、2つのキャビティの内圧を異なる値にする場合、異なる圧力雰囲気下で2度気密封止する工程が発生するところ、本実施例に係る複合型慣性センサの場合、1度の気密封止で2つのキャビティ内圧を異なる値にすることが可能になり、製造コストの低減を実現することが可能になる。
【0066】
また、本実施例3では、加速度センサと角速度センサの合計2つのセンサからなる複合型慣性センサの例を記載しているが、実施例2に示した貫通電極を利用するとx、y、z軸それぞれの加速度センサとz、y、z軸それぞれの角速度センサを同一基板に形成することも可能である。
【0067】
以上のように、本実施例に係る複合型のMEMSデバイスは、複数のキャビティを有し、
第一のキャビティ1301の上部に、水素を含む第一の絶縁膜1311と、第二のキャビティ1302の上部に、水素を含む第二の絶縁膜1312と、第一の絶縁膜1311および第二の絶縁膜1312を覆う水素バリア膜14と、を有し、第一の絶縁膜1311と第二の絶縁膜1312は、それぞれ体積が異なっていることを特徴とする。
【0068】
係る構成により、キャビティ内に侵入させる水素の量を変えることができ、同一基板でセンサ毎に異なるキャビティ圧力を低コストで実現しうる。
【符号の説明】
【0069】
10 可動部
11 キャビティ
12 絶縁層
13 水素を含む絶縁膜
14 水素バリア膜
15 固定電極
16 フレーム
17、47 レジストマスク
18 孔
19 絶縁層
21 固定部
22 バネ
23 メタル材
24 ポリシリコン
25 接合面
26 貫通電極
29 アルミパッド
33 分離層
95 電極
96 電極
97 外部エリア
101 キャップ層
102 MEMS層
103 ベース層
104 SOI基板
111 シリコン基板
121 シリコン基板
201 加速度センサ
202 角速度センサ
1301 キャビティ
1302 キャビティ
1311、1312 水素を含む絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15