特開2018-202637(P2018-202637A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-202637クリーニング装置、クリーニング方法、印刷装置および印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202637(P2018-202637A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】クリーニング装置、クリーニング方法、印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 35/06 20060101AFI20181130BHJP
   B41F 3/20 20060101ALI20181130BHJP
   B41F 3/82 20060101ALI20181130BHJP
   B41F 17/14 20060101ALI20181130BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B41F35/06
   B41F3/20 C
   B41F3/20 D
   B41F3/82
   B41F17/14 E
   B41M1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-107472(P2017-107472)
(22)【出願日】2017年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上野 美佳
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】塩田 崇二
(72)【発明者】
【氏名】柴岡 真実
【テーマコード(参考)】
2C250
2H113
【Fターム(参考)】
2C250EA47
2C250EA49
2C250FA09
2C250FB02
2C250FB06
2C250FB19
2H113AA01
2H113AA04
2H113BA03
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB22
2H113BC12
2H113CA17
2H113EA12
2H113FA48
(57)【要約】
【課題】表面にインクを一時的に担持する担持体に残留するインクの液体成分を、液痕を残すことなく良好に、かつ短時間で除去することのできる技術を提供する。
【解決手段】表面にインクを一時的に担持する担持体432のクリーニング装置において、インクの液体成分を溶解する溶剤Sを担持体の表面に供給する溶剤供給部461と、溶剤Sが供給された担持体432の表面から溶剤Sを除去して、担持体432の表面を乾燥させる溶剤除去部462と、溶剤Sが除去された担持体432の表面に当接して、担持体432の表面に残留する液痕Mを除去する液痕除去部464とを備えるクリーニング装置である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にインクを一時的に担持する担持体のクリーニング装置において、
前記インクの液体成分を溶解する溶剤を前記担持体の表面に供給する溶剤供給部と、
前記溶剤が供給された前記担持体の表面から前記溶剤を除去して、前記担持体の表面を乾燥させる溶剤除去部と、
前記溶剤が除去された前記担持体の表面に当接して、前記担持体の表面に残留する液痕を除去する液痕除去部と
を備えるクリーニング装置。
【請求項2】
前記溶剤は、前記液体成分よりも揮発性の高い液体である請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記溶剤除去部は、前記担持体の表面に付着する前記溶剤を微小な液滴に細粒化する細粒化部を有する請求項1または2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記細粒化部は、多孔質の表面が前記担持体の表面に当接するローラ部材である多孔質ローラを有する請求項3に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記多孔質ローラが吸着した前記溶剤を前記多孔質ローラから排出する排出機構を有する請求項4に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記溶剤除去部は、前記溶剤が供給された前記担持体の表面に気流を吹き付ける気流生成部を有する請求項1ないし5のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記液痕除去部は、前記担持体の表面に当接しながら回転するローラ部材である液痕除去ローラを有する請求項1ないし6のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記液痕除去ローラの表面がシリコン樹脂またはポリエステル樹脂製である請求項7に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
表面にインクを一時的に担持可能な担持体と、
請求項1ないし8のいずれかに記載のクリーニング装置と、
前記クリーニング装置を制御して前記担持体に対するクリーニング動作を実行させる制御部と
を備える印刷装置。
【請求項10】
前記担持体はローラ状のブランケット胴に巻き付けられたブランケットであり、
前記ブランケット胴に巻き掛けられた前記ブランケットの表面に沿って、前記溶剤供給部、前記溶剤除去部および前記液痕除去部がこの順番に配置され、
前記制御部は、前記ブランケットの表面が前記溶剤供給部、前記溶剤除去部および前記液痕除去部の配設位置をこの順番で通過する方向に前記ブランケット胴を回転させながら、前記クリーニング動作を実行させる請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記ブランケット胴の回転軸周りに、鉛直上向きに向かう方向を0度とし前記ブランケット胴の回転方向を正方向として方位角を定義するとき、
前記ブランケットの表面のうち、前記溶剤供給部により前記溶剤が供給される位置、および前記溶剤除去部により前記溶剤が除去される位置が、前記方位角において0度以上90度以下の象限に配置される請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
表面にインクを一時的に担持する担持体のクリーニング方法において、
前記インクの液体成分を溶解する溶剤を前記担持体の表面に供給する工程と、
前記溶剤が供給された前記担持体の表面から前記溶剤を除去して、前記担持体の表面を乾燥させる工程と、
前記溶剤が除去された前記担持体の表面に液痕除去部を当接させて、前記担持体の表面に残留する液痕を除去する工程と
を備えるクリーニング方法。
【請求項13】
担持体の表面にインクを担持させる工程と、
前記担持体に担持されたインクを被転写物に転写する工程と、
前記インクを前記被転写物に転写した後の前記担持体の表面を、請求項12に記載のクリーニング方法によりクリーニングする工程と
を備える印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置において表面にインクを一時的に担持する担持体をクリーニングする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電子デバイスの製造を目的として、導電性インクなどの印刷材料で形成されたパターンを被転写物(例えばガラス基板、樹脂フィルム等、デバイスの基材となる物体)に転写して印刷する印刷技術が知られている。この技術の1つとして、インクにより形成されたパターンを例えばブランケットと称される担持体の表面に一時的に担持させ、担持体から被転写物へインクを転写することにより、被転写物の表面にインクによるパターンを形成するものがある。
【0003】
このような印刷技術においては、ブランケットとしては例えばシリコンゴム等の弾性樹脂製のシート体が用いられるが、印刷プロセスを繰り返し実行する間に、ブランケットがインクの液体成分を吸収して膨潤し、このことに起因する印刷不良が生じることが知られている。この問題を解消するために、ブランケットに残留するインクの液体成分を除去するための技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に記載の技術は、ブランケットの表面にベルト状の溶剤吸収手段を当接させることにより、ブランケットに残留する液体成分を除去してブランケットの膨潤を防止するものである。また例えば特許文献2に記載の技術は、ブランケットの表面に温風を吹き付けることにより、ブランケットに残留する液体成分を揮発させブランケットを乾燥させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−251539号公報
【特許文献2】特開2015−131391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、担持体に残留付着するインクの液体成分を揮発させることで担持体を乾燥させる。このため、乾燥に要する時間はインクの組成に依存し、インクの種類によっては乾燥するのに長い時間を要する場合もあり得る。このことは印刷の生産性を低下させる原因となる。この問題を解決するために、インクの液体成分より揮発性の高い溶剤で該液体成分を溶解させ除去することが考えられる。この場合、最終的に担持体に残留する溶剤を揮発させることで担持体が乾燥するため、より短時間で担持体を乾燥させることが可能となる。
【0007】
しかしながら、本願発明者の知見によれば、このように揮発性の高い溶剤が揮発する際に担持体に生じさせる液痕(例えば溶剤中に溶け込んだインクの残留成分や空気中の水分によるウォーターマーク)が、以後の印刷における品質不良の原因となることがわかっている。このような液痕の問題についてはこれまで考慮されておらず、揮発性の高い溶剤を用いることで担持体を短時間で乾燥させ、しかも液痕を残すことなく担持体を良好にクリーニングすることのできる技術は確立されていなかった。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、表面にインクを一時的に担持する担持体に残留するインクの液体成分を、液痕を残すことなく良好に、かつ短時間で除去することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の態様は、表面にインクを一時的に担持する担持体のクリーニング装置であって、上記目的を達成するため、前記インクの液体成分を溶解する溶剤を前記担持体の表面に供給する溶剤供給部と、前記溶剤が供給された前記担持体の表面から前記溶剤を除去して、前記担持体の表面を乾燥させる溶剤除去部と、前記溶剤が除去された前記担持体の表面に当接して、前記担持体の表面に残留する液痕を除去する液痕除去部とを備えている。
【0010】
また、この発明の他の一の態様は、表面にインクを一時的に担持する担持体のクリーニング方法であって、上記目的を達成するため、前記インクの液体成分を溶解する溶剤を前記担持体の表面に供給する工程と、前記溶剤が供給された前記担持体の表面から前記溶剤を除去して、前記担持体の表面を乾燥させる工程と、前記溶剤が除去された前記担持体の表面に液痕除去部を当接させて、前記担持体の表面に残留する液痕を除去する工程とを備えている。
【0011】
このように構成された発明では、インクの液体成分を溶解する溶剤が担持体の表面に供給されることで、担持体の膨潤の原因となる液体成分が溶剤に溶け出す。液体成分を含んだ溶剤が除去されることにより、担持体に残留する液体成分の量が大きく減少する。そして、溶剤が揮発することにより担持体が乾燥するが、このとき急速に溶剤の揮発が進むことで担持体表面に液痕が残留する場合がある。そこで本発明では、溶剤が除去された担持体の表面に液痕除去部材を当接させて液痕の除去を行う。
【0012】
これにより、インクの液体成分は溶剤とともに除去され、担持体の膨潤を効果的に抑制することができる。また、処理後の担持体は乾燥し、しかも液痕のない状態となっている。そのため、このように処理された担持体が印刷プロセスに使用されるとき、良好な品質で印刷を行うことが可能になる。
【0013】
また、この発明の他の一の態様は、表面にインクを一時的に担持可能な担持体と、上記構成を有するクリーニング装置と、前記クリーニング装置を制御して前記担持体に対するクリーニング動作を実行させる制御部とを備える印刷装置である。
【0014】
また、この発明のさらに他の一の態様は、担持体の表面にインクを担持させる工程と、前記担持体に担持されたインクを被転写物に転写する工程と、前記インクを前記被転写物に転写した後の前記担持体の表面を、上記構成を有するクリーニング方法によりクリーニングする工程とを備える印刷方法である。
【0015】
このように構成された発明では、担持体の膨潤が効果的に抑制され、また担持体に残留する液痕が除去されているので、高品質な印刷を優れた生産性で実行することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、担持体に付着し膨潤の原因となるインクの液体成分が、担持体に供給される溶剤に溶け出し溶剤とともに除去されるので、担持体の膨潤を効果的に抑制することができる。また、乾燥後の担持体に残る液痕が除去されているので、担持体を使用した印刷を良好な品質で実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかる印刷装置の一実施形態の構成を示す斜視図である。
図2】この印刷装置の主要部およびその概略動作を模式的に示す図である。
図3図1の印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】クリーニング部の構成および動作を示す図である。
図5】クリーニング部によるクリーニング動作を示すフローチャートである。
図6】印刷動作における処理の流れを示すフローチャートである。
図7】この処理における各部の動きを模式的に示す第1の図である。
図8】この処理における各部の動きを模式的に示す第2の図である。
図9】本発明に係る担持体の変形例を示す図である。
図10】本発明に係るクリーニング装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明にかかる印刷装置の一実施形態の構成を示す斜視図である。また、図2はこの印刷装置の主要部およびその概略動作を模式的に示す図である。この印刷装置1は、例えば半導体基板、ガラス基板等の平板状のワークの表面に凹版印刷の原理によりパターンを形成する装置である。より具体的には、印刷装置1は、平板状の基材の表面にパターンに対応する凹部が形成された凹版にパターン形成材料を含むインクを充填し、転写ローラを介して該インクをワークに転写することにより、パターン形成材料によるパターンをワーク表面に形成する。
【0019】
印刷装置1は、主たる構成として、基台2と、版ステージユニット10と、版アライメントユニット20と、インク充填ユニット30,50と、ローラユニット40と、ワークアライメントユニット60と、ワークステージユニット70と、版ステージユニット10およびワークステージユニット70を移動させる搬送ユニット80と、制御ユニット90とを備えている。
【0020】
この印刷装置1では、制御ユニット90が予めインストールされたプログラムに従って印刷装置1の各部を制御することで、平板状の凹版Pに設けられる凹部に印刷材料の一種であるインクを充填する充填工程と、ローラユニット40に凹版Pのインクを受理させる受理工程と、受理されたインクを平板状のワークWに転写する転写工程とを行う。これによって、凹版Pの凹部により規定されるパターンがインクによりワークWに印刷される。
【0021】
凹版Pは平板状の基材にパターン形状に応じた凹部が設けられたものであり、凹部に充填されたインクがワークWに転写されてパターンを形成する。この意味において、凹版Pの表面のうち凹部がインクを担持すべき「画線部」として機能する一方、凹部を取り囲む平坦な部位がインクを担持しない「非画線部」として機能する。以下では、凹版Pの両主面のうち、画線部としての凹部が形成されている側の主面を「版面」と称し符号Paで表すこととする。版面Paのうち中央部分に、形成すべきパターン形状に応じて凹部が配置され、これを取り囲む版面Paの周縁部分には、凹部が配置されない余白領域が設けられている。
【0022】
この明細書の各図では、装置各部の配置関係を明確にするために、図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。具体的には、XY平面を水平面とし、水平方向のうち印刷装置1の長手方向を「Y方向」とする。搬送ステージ83、84の搬送方向Yのうち版ステージユニット10に向かう方向を「Y1」と称し、ワークステージユニット70に向かう方向を「Y2」と称する。また、水平方向Yと直交する水平方向を「X方向」と称する。また、水平方向Xのうち装置正面に向かう方向を「X1」と称するとともに装置背面に向かう方向を「X2」と称する。さらに、鉛直方向を「Z方向」と称する。
【0023】
基台2は図1に示すように水平方向Yに延設されている。基台2の上面には、一対の直動ガイド81,81、これらの直動ガイド81の間に配設されたリニアモータなどの直動駆動部82および図示しないリニアスケールがY方向に延設されている。また、直動ガイド81および直動駆動部82には、2つの搬送ステージ83,84が設けられており、直動駆動部82の駆動を受けてY方向に直線移動する。これら2つの搬送ステージのうち一方側の搬送ステージ83上に版ステージユニット10が搭載され、他方側の搬送ステージ84上にワークステージユニット70が搭載されている。これによって、版ステージユニット10およびワークステージユニット70が互いに独立して水平方向Yに往復移動可能となっている。
【0024】
版ステージユニット10は、搬送ステージ83の上面に配置される支持台11と、支持台11の上面に取り付けられ、その上面で凹版Pを保持する版ステージ12とを有している。制御ユニット90からの動作指令に応じて直動駆動部82が搬送ステージ83をY方向に移動させることで、版ステージ12に保持される凹版PをY方向に搬送することが可能となっている。
【0025】
一方、ワークステージユニット70は、搬送ステージ84の上面に配置される位置調整機構71と、位置調整機構71の上面に取り付けられ、その上面でワークWを保持するワークステージ72と、2つの基準マスク(較正部材)731、732で構成される較正部73とを有している。位置調整機構71は、ワークステージ72を搬送ステージ84に対してX方向およびR1方向(鉛直軸回りの回転方向)に駆動する機能を有している。制御ユニット90からの動作指令に応じて直動駆動部82が搬送ステージ84をY方向に移動させ、また制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構71がワークステージ72をX方向に移動およびR1方向に回転させることで、ワークステージ72に保持されるワークWをX方向、Y方向およびR1方向に位置決めすることが可能となっている。
【0026】
基台2の上面のY方向における略中央部には、ローラユニット40が配置されている。このローラユニット40では、当該中央部のX方向の両端部に昇降テーブル42が昇降機構41を介して鉛直方向Zに昇降可能に設けられている。この実施形態では、一対の昇降テーブル42は、版ステージユニット10およびワークステージユニット70の移動する空間(以下「ステージ移動空間」という)よりもX方向外側に設けられている。これによって、版ステージユニット10およびワークステージユニット70との干渉が回避されている。
【0027】
このように互いに離間して配置された一対の昇降テーブル42を橋渡しするように転写ローラ43が配置されている。この転写ローラ43は、図2に示すように、X方向に延びる回転軸回りに回転自在な円筒形状のブランケット胴431の外周面にブランケット432を装着したものである。ブランケット胴431は、例えば金属製の高剛性の筒型部材である。また、ブランケット432は弾性を有する樹脂材料により形成されたシート体であり、例えばシリコンゴム製とすることができる。
【0028】
制御ユニット90からの動作指令に応じてローラユニット40の回転駆動モータ(図3中の符号44)が駆動されると、転写ローラ43が回転軸回りの回転方向R2に回転する。また、昇降機構41の昇降モータ(図3中の符号45)に対し、制御ユニット90から昇降指令が与えられると、それに応じて昇降モータ45が作動して転写ローラ43が昇降テーブル42とともに一体的に昇降する。これによって、鉛直方向Zにおける転写ローラ43の位置が高精度に調整される。
【0029】
図2に矢印A1で示すように、版ステージ12に保持される凹版Pは、転写ローラ43の直下位置を含むY方向の搬送経路に沿って搬送される。一方、ワークステージ72に保持されるワークWは、矢印A2で示すように、転写ローラ43の直下位置を含むY方向の搬送経路に沿って搬送される。転写ローラ43は、その下端が転写ローラ43の下方を通過する版PまたはワークWの上面の高さ(破線で示す)とほぼ同じ高さとなる図2に点線で示す下方位置と、下端が版PまたはワークWの上面よりも上方に退避した実線で示す上方位置との間で昇降移動可能である。
【0030】
転写ローラ43は、凹版Pに形成されたインクパターンを受理してブランケット432の表面に一時的に担持し、該インクパターンをワークWに転写する機能を有する。このような印刷プロセスにおいては、例えばシリコンゴム等の樹脂製であるブランケット432がインクの液体成分を吸収し膨潤することにより、印刷不良の原因となることが知られている。このため、印刷プロセスを長時間にわたり継続して実行する際には、定期的に印刷を中断してブランケット432に残留する液体成分を除去するための期間を設ける必要がある。これによる生産性の低下を小さく抑えるために、ブランケット432から液体成分をできるだけ短い時間で確実に除去することが求められる。
【0031】
この目的のために、転写ローラ43の周囲にはクリーニング部46が配置される。クリーニング部46は、印刷プロセスにおいてブランケット432に残留付着するインクの液体成分を除去し、ブランケット432を乾燥させるための処理ユニットである。クリーニング部46は、インクの液体成分を溶解する性質を有する溶剤をブランケット432に向けて吐出する溶剤供給ノズル461と、ブランケット432の表面に当接して溶剤を除去する溶剤除去ローラ462と、ブランケット432に向けて高速の気流を吹き付けることで溶剤を吹き飛ばしあるいは揮発させるエアナイフ463と、溶剤除去後のブランケット432の表面に残る液痕を除去するための液痕除去ローラ464とを備えている。
【0032】
クリーニング部46はクリーニング制御部47により制御される。クリーニング制御部47は、溶剤除去ローラ462および液痕除去ローラ464のそれぞれを、図2に点線で示すようにブランケット432の表面に当接する当接位置と、実線で示すようにブランケット432の表面から離間した離間位置との間で移動させる。これにより、溶剤除去ローラ462および液痕除去ローラ464はそれぞれブランケット432に対し離当接自在となっている。
【0033】
図1に戻って、上記ローラユニット40のY1方向側およびY2方向側にそれぞれ隣接して、インク充填ユニット30,50が配置されている。インク充填ユニット30,50はいずれも凹版Pの凹部にインクを充填する機能を有するものであり、その構造は概ね同じである。すなわち、インク充填ユニット30,50の主要部は、凹版Pに向けてインクを吐出するディスペンサーと、凹版Pに供給されたインクを版面全体に塗り広げるためのドクターブレードとを含む。
【0034】
具体的には、図2に示すように、インク充填ユニット30は、ローラユニット40のY1方向側で版ステージ12上の凹版Pに向けてインクを吐出するディスペンサー31と、ディスペンサー31のY2方向側に隣接して設けられ、インクが供給された凹版Pの版面Paに当接してインクを版面Pa全体に塗り広げるドクターブレード32とを有する。インク充填ユニット30はさらに、ディスペンサー31およびドクターブレード32を移動可能に支持するとともに、制御ユニット90からの制御指令に応じてディスペンサー31およびドクターブレード32を所定位置に位置決めする支持機構(図3中の符号33)と、ディスペンサー31にインクを供給するインク供給部(図3中の符号36)とを備えている。
【0035】
また、インク充填ユニット50は、ローラユニット40のY2方向側で版ステージ12上の凹版Pに向けてインクを吐出するディスペンサー51と、ディスペンサー51のY2方向側に隣接して設けられ、インクが供給された凹版Pの版面Paに当接してインクを版面Pa全体に塗り広げるドクターブレード52とを有する。インク充填ユニット50はさらに、ディスペンサー51およびドクターブレード52を移動可能に支持するとともに、制御ユニット90からの制御指令に応じてディスペンサー51およびドクターブレード52を所定位置に位置決めする支持機構(図3中の符号53)と、ディスペンサー51にインクを供給するインク供給部(図3中の符号56)とを備えている。
【0036】
図2では記載を省略しているが、ドクターブレード32,52はそれぞれ支持機構(図3中の符号33,53)により昇降可能に支持されており、ブレード下端が凹版Pの版面Paに当接する下方位置(図2に点線で示す)と、ブレード下端が上方に退避して版面Paから離間する上方位置(図2に実線で示す)との間で移動可能である。
【0037】
インク充填ユニット30は、転写ローラ43を介してワークWに転写されるべきインクを凹版Pに充填する「本充填」を実行するためのユニットである。一方、もう1つのインク充填ユニット50は、版面におけるインクの乾燥固着を防止する目的で版面にインクを塗布する「仮充填」を実行するものである。
【0038】
図1に示すように、インク充填ユニット30のY1方向側には、版アライメントユニット20が配置されている。この版アライメントユニット20においては、4本の柱部材21が基台2に設けられ、それらの頂部同士を連結するように梁部材22が設けられている。そして、梁部材22に対して2つのアライメントカメラ、すなわち第1版アライメントカメラ24および第2版アライメントカメラ25がそれぞれ位置調整機構26、27を介して取り付けられている。
【0039】
位置調整機構26は第1版アライメントカメラ24を梁部材22に対してX方向およびZ方向に駆動する機能を有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構26が第1版アライメントカメラ24をX方向およびZ方向に移動させることで、版ステージ12に保持されている凹版Pの一部を高精度に撮像可能となっている。
【0040】
また、もう一方の位置調整機構27は第2版アライメントカメラ25を第1版アライメントカメラ24のX2方向側で梁部材22に対してX方向およびZ方向に駆動する機能を有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構27が第2版アライメントカメラ25をX方向およびZ方向に移動させることで、第1版アライメントカメラ24で撮像した領域と異なる凹版Pの表面領域を高精度に撮像可能となっている。なお、このようにして撮像される2つの画像は制御ユニット90に転送されてメモリ(図3中の符号92)に保存される。
【0041】
また、インク供給充填ユニット50のY2方向側には、ワークアライメントユニット60が配置されている。このワークアライメントユニット60では、支持部61、62がワークステージユニット70のステージ移動空間からX2方向側に離れて基台2の上面でそれぞれY方向に移動自在に配置されている。一方の支持部61の梁部材63に対してアライメントカメラ(第1ワークアライメントカメラ)64がX方向およびZ方向に移動自在に取り付けられている。また、他方の支持部62の梁部材66に対してアライメントカメラ(第2ワークアライメントカメラ)67がX方向およびZ方向に移動自在に取り付けられている。
【0042】
本実施形態では、第1ワークアライメントカメラ64をX方向、Y方向およびZ方向に移動させるために、位置調整機構65が設けられている。この位置調整機構65は、第1ワークアライメントカメラ64を支持する支持部61を基台2に対してY方向に駆動することで第1ワークアライメントカメラ64をY方向に位置決めする駆動部と、支持部61の梁部材63に対して第1ワークアライメントカメラ64をX方向およびZ方向に駆動して位置決めする駆動部とを有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構65がアライメントカメラ64をX方向、Y方向およびZ方向に移動させることで、ワークステージ72に保持されているワークWの一部を高精度に撮像可能となっている。
【0043】
また、第2ワークアライメントカメラ67をX方向、Y方向およびZ方向に移動させるために、位置調整機構68が設けられている。この位置調整機構68は、第2ワークアライメントカメラ67を支持する支持部62を基台2に対してY方向に駆動することで第2ワークアライメントカメラ67をY方向に位置決めする駆動部と、支持部62の梁部材66に対して第2ワークアライメントカメラ67をX方向およびZ方向に駆動して位置決めする駆動部とを有している。このため、制御ユニット90からの動作指令に応じて位置調整機構68がアライメントカメラ67をX方向、Y方向およびZ方向に移動させることで、先に説明した第1ワークアライメントカメラ64と同様にして、第1ワークアライメントカメラ64により撮像された部位と異なるワークWの部位を高精度に撮像可能となっている。なお、このようにして撮像される2つの画像についても制御ユニット90に転送されてメモリ(図3中の符号92)に保存される。
【0044】
このように、本実施形態では、版ステージ12に載置された凹版Pを第1および第2版アライメントカメラ24,25が撮像する。より具体的には、これらのカメラ24,25は凹版Pの端面あるいは凹版Pに予め設けられたアライメントマークを撮像する。こうして撮像された画像から、CPU91(図3中の符号91)は、版ステージ12における凹版Pの位置を特定する。また、ワークステージ72に載置されたワークWを第1および第2ワークアライメントカメラ64,67が撮像する。より具体的には、これらのカメラ64,67はワークWの端面あるいはワークWに予め設けられたアライメントマークを撮像する。これにより、ワークステージ72におけるワークWの位置が特定される。
【0045】
そして、CPU91は、凹版PとワークWとの位置関係が予め定められた関係からどれだけずれているかを算出し、それに応じて位置調整機構71がワークステージ72をX方向およびR1方向に移動させることで、凹版PとワークWとの位置ずれが補正される。これにより、後述する印刷動作において凹版Pから転写ローラ43を介してワークWにインクが転写される際のワークW上での転写位置を適正なものとすることができる。
【0046】
図3図1の印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。この印刷装置1の制御ユニット90には、予め定められた処理プログラムを実行して各部の動作を制御するCPU91と、CPU91により実行される処理プログラムや処理中に生成されるデータ等を記憶保存するためのメモリ92と、処理の進行状況や異常の発生などを必要に応じてユーザーに報知するとともにユーザーからの入力を受け付けるための操作表示部93とが設けられている。そして、処理プログラムにしたがってCPU91が装置各部を制御することで印刷動作を行う。また、CPU91は、必要に応じてクリーニング制御部47に指令を与えクリーニング部46を作動させることで、ブランケット432のクリーニング動作を行う。
【0047】
図4はクリーニング部の構成および動作を示す図である。クリーニング部46によるブランケット432のクリーニング動作は、所定の方向に回転する転写ローラ43の回転方向に沿って順に配置された、溶剤供給ノズル461、溶剤除去ローラ462、エアナイフ463および液痕除去ローラ464により実行される。ここでは、転写ローラ43は図4において矢印D1方向、つまり時計方向に回転するものとする。方向D1は、図1に示す双方向の回転方向R2を限定した1つの方向に相当する。
【0048】
転写ローラ43の上方に配置された溶剤供給ノズル461に対し、クリーニング制御部47により制御される溶剤供給部471から溶剤Sが供給される。溶剤供給ノズル461は、ブランケット432の表面に向けて溶剤Sを流下、滴下または噴射する。これにより、ブランケット432の表面は溶剤Sによる液膜Fに部分的に覆われた状態となる。溶剤Sは使用温度および常圧下において液状であり、インクの液体成分を溶解する性質を有する。使用温度においてインクの液体成分より揮発性の高いものであることがより好ましい。例えば使用インクが主たる液体成分としてBCA(ブチルジグリコールアセテート)を含むものである場合、溶剤Sとして例えばIPA(イソプロピルアルコール)を用いることができる。
【0049】
ブランケット432の表面が溶剤Sの液膜Fに覆われることで、ブランケット432の表面や内部に存在するインクの液体成分が溶剤Sに溶け出す。また、ブランケット432内部に浸透したインクの液体成分は溶剤Sにより置換される。こうしてインクの液体成分を溶解した溶剤Sの液膜Fは、転写ローラ43の回転により溶剤除去ローラ462との当接位置に搬送される。
【0050】
溶剤除去ローラ462は、例えば金属製で中空の筒状部材462aの表面を多孔質材料による多孔質層462bで覆ったものであり、所定の当接圧でブランケット432表面に当接する。多孔質材料としては例えば発泡ウレタン樹脂等のスポンジ状の素材を用いることができる。なお、ブランケット432が弾性を有している場合、多孔質層462bには必ずしも弾性を必要とされない。
【0051】
溶剤Sによる液膜Fが形成されたブランケット432の表面に溶剤除去ローラ462の多孔質層462bが当接しながら矢印D2方向に回転する。この回転は転写ローラ43の回転に対してウィズ回転である。これにより、ブランケット432表面の溶剤Sが多孔質層462bに吸収され、ブランケット432表面に付着する溶剤Sが除去される。また、溶剤除去ローラ462が溶剤Sを全て吸収することができなくても、多孔質層462bとの当接位置を通過することにより、ブランケット432表面の連続した液膜Fは互いに孤立した多数の微小な液滴Dに変換される。すなわち、溶剤除去ローラ462により、ブランケット432表面を覆っていた液膜Fが微小な液滴Dに細粒化される。
【0052】
溶剤除去ローラ462による吸収能力を飽和させないために、筒状部材462aの筒面には多数の貫通孔が設けられており、筒状部材462aの内部空間はクリーニング制御部47により制御される排気機構472に接続されている。排気機構472が筒状部材462aの内部空間を排気することにより、多孔質層462bに吸収された溶剤Sが筒状部材462aの貫通孔および内部空間を介して排出される。これにより、多孔質層462bによる新たな溶剤Sの吸収が可能になる。
【0053】
なお、筒状部材462aの内部空間を排気するのに代えて、例えば多孔質層462bを温めることで吸収した溶剤を蒸発させる構成や、多孔質層462bより多量の溶剤Sを吸収することのできる吸収体を多孔質層462bに当接させる構成としてもよい。また、多孔質層462bが弾性を有するものである場合には、多孔質層462bを押圧することで吸収された溶剤Sを放出させる構成としてもよい。また、ブランケット432表面に多孔質層を当接させる構成に代えて、例えばブランケット432表面の溶剤Sを真空吸引により除去する構成としてもよい。
【0054】
溶剤除去ローラ462との当接位置を通過したブランケット432表面に対し、エアナイフ463から高速の気流AFが吹き付けられる。具体的には、クリーニング制御部47により制御される気体送出部473から加圧された気体、例えば圧縮空気がエアナイフ463に供給されることにより、エアナイフ463から高速の気流AFが噴射される。これにより、ブランケット432表面に付着する液滴Dが吹き飛ばされ、あるいはその蒸発が強力に促進される。溶剤Sに溶け出したインクの液体成分も溶剤Sとともにブランケット432表面から除去される。溶剤Sがインクの液体成分よりも揮発性の高いものであれば、ブランケット432に浸透したインクの液体成分を直接揮発させる場合よりも短時間でブランケット432を乾燥させることが可能である。
【0055】
このようにして溶剤Sを急速に揮発させると、ブランケット432の表面に液痕Mが残ることがある。この液痕Mは、溶剤Sに溶け込んだ水分によるウォーターマークやインクの残留成分などによるものである。このような液痕Mは、後の印刷プロセスにおいてブランケット432表面へのインクの付着を妨げ、印刷不良の原因となる。そこで、エアナイフ463からの気流が吹き付けられた後のブランケット432の表面に、液痕除去ローラ464が押し当てられている。
【0056】
液痕除去ローラ464は、例えば金属製で円筒または円柱形状の芯金部材464aの表面を例えばシリコンゴムあるいはポリエステル樹脂製の表面層464bで覆ったものであり、所定の当接圧でブランケット432の表面に当接して矢印D3方向に回転する。この回転は転写ローラ43の回転に対してウィズ回転である。これにより、ブランケット432表面の液痕Mは液痕除去ローラ464に転写されて移行し、ブランケット432表面から除去される。
【0057】
したがって、クリーニング部46を通過したブランケット432の表面は、インクの液体成分や液痕が除去されて乾燥した状態となっている。そのため、ブランケット432の膨潤や液痕の付着に起因する印刷不良が効果的に抑制される。
【0058】
なお、溶剤除去ローラ462とエアナイフ463とは、ブランケット432に付着したインクの液体成分を溶解させるために供給された溶剤Sを除去するという目的において共通している。このため、溶剤除去ローラ462およびエアナイフ463のいずれか一方のみで溶剤Sを除去する構成とすることも可能である。
【0059】
本願発明者の実験によれば、シリコンゴム製の液痕除去ローラ464では、小サイズの液痕Mに対して高い除去能力を示すが、液痕Mのサイズが大きくなると十分に除去しきれない場合がある。そして、溶剤除去ローラ462を設けずエアナイフ463のみで溶剤Sを除去するようにした場合、ブランケット432表面に残る液痕Mのサイズが比較的大きくなる傾向がある。このため、溶剤除去ローラ462を設けない構成では、比較的サイズの大きな液痕がブランケット432表面に残ってしまうことがあり得る。
【0060】
一方、エアナイフ463を設けず溶剤除去ローラ462のみで溶剤Sを除去するようにした場合、ブランケット432表面の溶剤Sを完全に除去することが難しく、微小な液滴Dがブランケット432表面に残ってしまうことがある。溶剤Sが十分に高い揮発性を有するものであれば、液痕除去ローラ464との当接位置に搬送される前に揮発してしまうので実用上は問題ないと言える。また、溶剤除去ローラ462により溶剤Sが細粒化されることで、ブランケット432の表面に残る液痕Mは小さなものとなり、これについては液痕除去ローラ464により効果的に除去することが可能である。
【0061】
上記実施形態のように、溶剤除去ローラ462とエアナイフ463とをブランケット432の移動方向に沿ってこの順番に配置すると、溶剤除去ローラ462により溶剤Sが細粒化され、これをエアナイフ463によって除去するので、液痕を残さずブランケット432を乾燥させるという効果は最大となる。
【0062】
この場合、溶剤除去ローラ462が果たす作用としては、溶剤Sを吸収し除去することよりも、溶剤Sを細粒化させることの方が大きい。この意味では、溶剤除去ローラ462が溶剤Sをほとんど吸収せず単に細粒化させるだけのものであったとしても十分な効果が得られる。すなわち、溶剤除去ローラ462は専らブランケット432表面の溶剤Sを細粒化させる機能を果たし、ブランケット432表面からの溶剤Sの除去は主にエアナイフ463からの気流AFによってなされるようにしてもよい。
【0063】
次に、クリーニング部46の各部の設置位置の一例について説明する。クリーニング部46はブランケット432の表面を部分的に覆うように溶剤Sを塗布することで、ブランケット432に浸透したインクの液体成分を溶かし出す。このため、供給された溶剤Sあるいはインクの残余成分を含んだ溶剤Sがブランケット432の表面に沿って流れ落ち、印刷装置内に飛散するおそれがある。クリーニング部46の各部は、このような溶剤Sの落下を防止するような配置とされる。具体的には次の通りである。
【0064】
図4に示すように、転写ローラ43の回転中心Cから鉛直上向き方向(Z方向)に向かう方向を0度とし、転写ローラ43の回転方向D1に沿った方向を正方向とする方位角θを仮定する。クリーニング部46では、ブランケット432表面のうち、少なくとも溶剤供給ノズル461からの溶剤Sが着液する位置P1および溶剤除去ローラ462が当接する位置P2が、方位角0度以上90度以下となる象限(以下、「第1象限」という)に位置するように、各部の配置が定められる。すなわち、溶剤供給ノズル461からの溶剤Sが着液する位置P1の方位角θ1および溶剤除去ローラ462が当接する位置P2の方位角θ2が以下の関係、
0≦θ1<θ2≦90[deg] … (式1)
となるように、溶剤供給ノズル461および溶剤除去ローラ462の配置が定められている。位置P1から図において左方向への溶剤Sの落下をより確実に防止するために、
0<θ1 … (式2)
となるようにしてもよい。
【0065】
こうすることにより、溶剤供給ノズル461から供給された溶剤Sがブランケット432の表面に沿って流れ落ちたとしても、溶剤除去ローラ462によって受け止められるので、溶剤Sがさらに流下し装置内に落下することは防止される。
【0066】
溶剤除去ローラ462によってブランケット432表面で細粒化された溶剤Sの微小な液滴Dはブランケット432から流れ落ちることはほとんどなく、また落下したとしてもすぐに蒸発し影響は少ないと考えられる。ただし、このような液滴Dの落下も防止するために、ブランケット432の表面のうちエアナイフ463からの気流AFが吹き付けられる位置P3の方位角θ3が以下の関係、
θ2<θ3≦90[deg] … (式3)
を満たすように、エアナイフ463の配設位置が定められてもよい。
【0067】
エアナイフ463により液滴Dが除去された後のブランケット432の表面には液痕Mが残るのみである。液痕Mはブランケット432表面から離脱して落下することはないので、ブランケット432表面のうち液痕除去ローラ464が当接する位置P4は必ずしも第1象限にある必要はない。ただし、できるだけ第1象限に近い位置に配置することで、ブランケット432表面から離脱した液滴Dを液痕除去ローラ464により受け止めて装置内への飛散を防止する効果も得られる。なお、上記は転写ローラ43からの溶剤の垂れ落ち防止を可能とする配置の一例であり、ブランケット432から液体成分を除去するという目的においては上記配置に限定されるものではない。
【0068】
図5はクリーニング部によるクリーニング動作を示すフローチャートである。このクリーニング動作は、制御ユニット90のCPU91が、予め準備された制御プログラムを適宜のタイミングで実行し、ローラユニット40の各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0069】
クリーニング動作では、転写ローラ43が所定の回転速度で回転方向D1に回転された状態から(ステップS101)、溶剤除去ローラ462および液痕除去ローラ464がそれぞれブランケット432表面に当接し(ステップS102)、それぞれ回転方向D2,D3に従動回転する。次いで、排気機構472による溶剤除去ローラ462の内部空間の排気(ステップS103)、溶剤供給ノズル461からブランケット432への溶剤Sの供給(ステップS104)、およびエアナイフ463からの気流AFの出力が(ステップS105)、それぞれ開始される。
【0070】
これにより、ブランケット432のクリーニングが実行される。すなわち、上記したように、ブランケット432に供給された溶剤Sがブランケット432に浸透したインクの液体成分を溶解させ、表面が多孔質の溶剤除去ローラ462により溶剤Sが除去され、あるいは少なくとも細粒化される。細粒化された溶剤Sの液滴はエアナイフ463からの気流AFにより吹き飛ばされまたは揮発され、ブランケット432が乾燥した状態となる。ブランケット432に残留する液痕Mについては、ブランケット432に当接する液痕除去ローラ464に転写させることによりブランケット432表面から除去する。こうしてブランケット432がクリーニングされる。
【0071】
所定時間が経過するまで(ステップS106においてNO)、ブランケット432のクリーニングが継続される。所定時間が経過した後(ステップS106においてYES)、溶剤Sの供給およびエアナイフの作動が順次停止される(ステップS107、S108)。また、溶剤除去ローラ462および液痕除去ローラ464がそれぞれブランケット432表面から離間し(ステップS109)、転写ローラ43の回転が停止されることで(ステップS110)、クリーニング動作が完了する。なお、後工程のために、転写ローラ43の回転が継続された状態でクリーニング動作を終了させてもよい。
【0072】
次に、この印刷装置1による印刷動作について説明する。印刷動作では、版ステージ12にセットされた凹版Pに対しインク充填ユニット30からインクが供給されて版面Paの凹部に充填される(充填工程)。そして、版ステージ12が回転する転写ローラ43の下方を移動して凹版Pと転写ローラ43とを当接させることにより、版面Paのインクが転写ローラ43に受理される(受理工程)。転写後の版面Paに対してはインク充填ユニット50からインクが仮充填され、これにより、転写後に版面Paに残留付着するインクが乾燥し版面Paに固着することが防止される。
【0073】
版ステージ12は転写ローラ43の下方からY1方向に退避し、代わってワークWが載置されたワークステージ72が転写ローラ43の下方へ移動してくる。ワークWの上面(被転写面)が転写ローラ43の表面に当接することで、転写ローラ43に担持されるインクがワークWに転写される(転写工程)。その結果、ワークWの被転写面には、凹版Pの版面Paに形成されたパターン形状に対応するパターンがインクにより形成されることになる。このようにして、ワークWへの印刷が実現される。
【0074】
図6は印刷動作における処理の流れを示すフローチャートである。また、図7および図8はこの処理における各部の動きを模式的に示す図である。図7および図8においては、図を見やすくするために、動作説明に必要のない一部の構成については記載を省略する場合がある。この処理は、CPU91が予め用意された制御プログラムを実行し、装置各部を制御して所定の動作を実行させることにより実現される。
【0075】
凹版Pおよび未処理のワークWが印刷装置1に搬入され版ステージ12およびワークステージ72にそれぞれセットされると(ステップS201、S202)、それらの位置情報を取得しそれに基づき互いの相対位置を調整するためのアライメント処理が行われる(ステップS203)。そして、各部が所定の初期位置に位置決めされて装置は印刷開始状態に移行する(ステップS204)。
【0076】
こうして印刷動作のための準備が整うと、インク充填ユニット30が版面Paへのインク充填を行う(ステップS205;充填工程)。図7(a)は各部が初期位置に位置決めされた状態からディスペンサー31が所定量のインクを吐出して凹版Pの版面Paにインク溜まりDiを形成した状態を示している。この状態から、図7(b)に示すように、ドクターブレード32が版面Paに当接しつつ版ステージ12がY2方向に水平移動することにより、インクが版面Paに摺り付けられて、版面Paの凹部にインクが充填される。
【0077】
版面Paへのインク充填を行いつつ、版ステージ12が印刷開始位置まで移動する(ステップS206)。印刷開始位置は、凹版Pの版面Paの有効領域の進行方向における前方端部、つまりY2方向側の端部が転写ローラ43の直下位置となるような版ステージ12の位置として定義することができる。
【0078】
この状態から、凹版Pに充填されたインクを転写ローラ43の表面(より詳しくは転写ローラ43に設けられたブランケット432の表面)に移行させる「受理工程」が行われる(ステップS207)。具体的には、図7(c)に示すように転写ローラ43が下降することで、転写ローラ43表面のブランケット432が版面Paに当接する。版面Paに当接した状態で転写ローラ43が矢印方向D1に一定速度で回転し、これと同期して版ステージ12が一定速度でY2方向に移動することにより、版面Paに設けられた凹部(画線部)に充填されていたインクが転写ローラ43表面に移行する。これにより、インクが転写ローラ43に受理される。
【0079】
転写ローラ43の直下位置を通過しインクが転写ローラ43に移行した後の版面Paに対しては、図7(d)に示すように、転写ローラ43のY2方向側に設けられたインク充填ユニット50(ディスペンサー51およびドクターブレード52)により新たなインクの仮充填が行われる。これにより、版面Paにおけるインクの乾燥固着が防止されて、凹版Pを用いた印刷を連続的に繰り返し実行することが可能となる。
【0080】
凹版Pに担持されたインクが全て転写ローラ43に受理されると、転写ローラ43がいったん上昇し(ステップS208)、仮充填の終了後に版ステージ12がY1方向に移動して転写ローラ43の下方位置から退避し、図8(a)に示すように、代わってワークステージ72が印刷開始位置に移動する(ステップS209)。ワークステージ72の「印刷開始位置」は、ワークステージ72に保持されるワークWのY2方向側端部が転写ローラ43の直下位置またはこれよりも少しY1方向側に位置するような位置である。
【0081】
この状態から、転写ローラ43に担持されたインクをワークWの上面Waに移行させてパターンを転写する「転写工程」が実行される(ステップS210)。具体的には、図8(b)および図8(c)に示すように、凹版Pから転写ローラ43へインクを移行させる受理工程の際と同様に、転写ローラ43がワーク上面Waに当接した状態で矢印方向D1に一定速度で回転し、これと同期してワークステージ72が一定速度でY2方向に移動することにより、転写ローラ43表面に担持されたインクがワークWの上面Waに移行する。これにより、インクがワークWに転写される。
【0082】
図8(d)に示すように、転写ローラ43に担持されたインクが全てワークWに転写されると、転写ローラ43が上昇してワークWから離間する(ステップS211)。これ以後、前記したクリーニング部46によるクリーニング動作が可能となるので、このタイミングでクリーニング動作が開始される(ステップS212)。クリーニング動作の内容は図4および図5に示した通りである。
【0083】
インクが転写された後の処理済みワークは装置から搬出され(ステップS213)、さらに印刷を継続する必要がある場合には(ステップS214においてYES)、ステップS202に戻って新たな未処理ワークが受け入れられる。新たなワークに対しても、上記と同様の処理が実行されることでインクが転写される。なお、凹版Pの入れ替えが必要な場合には、ステップS201に戻って処理が繰り返される。
【0084】
クリーニング動作については、遅くとも受理工程(ステップS207)が開始される時点において、転写ローラ43の下端に位置するブランケット432がクリーニングされた状態となっていることが必要である。なお、受理工程の実行中には溶剤除去ローラ462および液痕除去ローラ464がブランケット432から離間した状態であることが好ましく、このために、受理工程の開始時点ではクリーニング動作が完了していることが好ましい。
【0085】
このように、継続的な印刷動作の合間に実行されるクリーニング動作については、処理済みワークの搬出、新たな未処理ワークの搬入、アライメント処理および充填工程等と併行して実行することが可能である。これらの実行中にクリーニング動作が完了すれば、クリーニング動作の実行に伴う印刷動作のスループットの低下は全く生じない。また、これらの実行中にクリーニング動作が完了しないでも、可能な限り他の処理と併行してクリーニング動作を実行することで、スループットの低下を最小限に抑えることができる。
【0086】
引き続き印刷動作を実行する必要がなければ(ステップS214においてNO)、装置各部は印刷終了状態に移行する(ステップS215)。このとき、実行中のクリーニング動作が完了するのを待って印刷終了状態とすることが好ましい。
【0087】
以上のように、この実施形態の印刷装置1では、ブランケット432に浸透したインクの液体成分を除去しブランケット432を乾燥させるために、インクの液体成分を溶解する溶剤Sをブランケット432に供給した上でこれを除去する、いわゆるウェット洗浄を実行するクリーニング部46が設けられている。
【0088】
クリーニング部46では、溶剤供給ノズル461から吐出される溶剤Sがブランケット432に塗布されることにより、ブランケット432の表面および内部に残留するインクの液体成分が溶解される。インクの液体成分を溶解した溶剤Sは、溶剤除去ローラ462によってブランケット432から除去され、あるいは少なくとも細粒化される。
【0089】
ブランケット432に残留する細粒化された溶剤Sの液滴Dは、エアナイフ463から吹き付けられる気流AFによって吹き飛ばされ、あるいは蒸発される。これによりブランケット432が乾燥する。溶剤Sをインクの液体成分より揮発性の高い液体とすれば、インクを直接蒸発させる場合よりも短時間でブランケット432を乾燥させることができる。乾燥後にブランケット432に残る液痕Mは、液痕除去ローラ464がブランケット432表面に当接することにより除去される。
【0090】
このように、この実施形態の印刷装置1では、クリーニング部46がクリーニング動作を実行することにより、ブランケット432はインクの液体成分が除去されて乾燥した状態となるため、インクの液体成分がブランケット432に浸透することで生じるブランケット432の膨潤を効果的に抑制することができる。そのため、膨潤に起因する印刷不良を防止することができる。また、溶剤の揮発後に残る液痕が除去されているため、液痕に起因する印刷不良も防止することが可能である。
【0091】
以上説明したように、上記実施形態では、ブランケット432が本発明の「担持体」として機能している。また、クリーニング部46が本発明の「クリーニング装置」に相当しており、溶剤供給ノズル461が「溶剤供給部」として、また溶剤除去ローラ462およびエアナイフ463が一体として「溶剤除去部」として、また液痕除去ローラ464が「液痕除去部」として、それぞれ機能している。このうち溶剤除去ローラ462は本発明の「細粒化部」および「多孔質ローラ」としての機能を、またエアナイフ463は本発明の「気流生成部」としての機能をそれぞれ兼備している。また、排気機構472が本発明の「排出機構」として機能している。
【0092】
また、上記実施形態の印刷装置1においては、制御ユニット90およびクリーニング制御部47が一体として、本発明の「制御部」として機能している。また、上記した印刷動作においては、ワークWが本発明の「被転写物」に相当している。
【0093】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態における転写ローラ43、溶剤除去ローラ462および液痕除去ローラ464はいずれも円筒状あるいは円柱状の基材の表面に機能層が設けられたローラ状のものであるが、本発明の「担持体」、「溶剤除去部」および「液痕除去部」はこのようなローラ形状のものに限定されず、例えば以下に説明するように、ローラとベルトとの組み合わせによって実現されたものであってもよい。なお、以下の図においては、上記実施形態と同一のまたは類似の構成については記載を省略し、または同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0094】
図9は本発明に係る担持体の変形例を示す図である。この変形例の担持体48においては、無端ベルト状に形成されたブランケット481が複数の(この例では2つの)ローラ部材482,483に掛け渡された構成となっている。このような構成では、下側のローラ部材483が上記実施形態におけるブランケット胴431と同様に機能し、凹版Pからブランケット481へのインクの移行(受理工程)およびブランケット481からワークWへのインクの移行(転写工程)はローラ部材483の下方で実行される。したがって、ブランケット胴を大型化することなく、印刷面の大判化を図ることができる。
【0095】
一方、クリーニング部46の各部(溶剤供給部461、溶剤除去ローラ462、エアナイフ463および液痕除去ローラ464)は、上側のローラ部材482に巻き掛けられたブランケット481の表面に対向するように配置されている。したがって、ブランケット481に対するクリーニング動作は、ローラ部材482に巻き掛けられたブランケット481の表面に対して実行される。なお、配置に問題がなければ、クリーニング部46は下側のローラ部材483に巻き掛けられたブランケット481の周囲に配置されてもよい。
【0096】
図10は本発明に係るクリーニング装置の変形例を示す図である。この変形例のクリーニング部49では、上記実施形態における溶剤除去ローラ462に代えて、ベルト状の溶剤除去部492が設けられる。この溶剤除去部492は、多孔質弾性材料により無端ベルト状に形成された溶剤除去ベルト492cが複数の(この例では2つの)ローラ部材492a,492bに掛け渡された構成となっている。また、上記実施形態における液痕除去ローラ464に代えて、ベルト状の液痕除去部494が設けられる。この液痕除去部494は、例えばシリコンゴムあるいはポリエステル樹脂により無端ベルト状に形成された液痕除去ベルト494cが複数の(この例では2つの)ローラ部材494a,494bに掛け渡された構成となっている。
【0097】
これらの構成によっても、上記実施形態と同様に、溶剤除去部492による溶剤の除去および細粒化、ならびに液痕除去部494による液痕の除去を実現することが可能である。溶剤供給部491およびエアナイフ493は、それぞれ上記実施形態の溶剤供給部461およびエアナイフ463と同じものである。
【0098】
なお、図10の変形例において溶剤除去部492および液痕除去部494の両方がベルトを用いた構成とされる必要はなく、いずれか一方は上記実施形態と同様のローラ形状のものであってもよい。また、図10に示すクリーニング部49は、図9に示すベルト状の担持体を有する構成にも適用することが可能である。また、溶剤除去部および液痕除去部は、その表面がブランケット432の移動に伴って移動するものに限定されず、例えば固定位置でブランケット432の表面を摺擦することで溶剤あるいは液痕を除去するものであってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、ブランケット432に強い気流AFを吹き付けるエアナイフ463により溶剤Sの液滴Dを機械的に除去しているが、これに代えて、またはこれに加えて、例えば温風を吹き付けて、または熱輻射によって溶剤Sの蒸発を促進するような構成が設けられてもよい。
【0100】
また、上記実施形態の溶剤供給部は、ブランケット432に向けて溶剤Sを吐出する溶剤供給ノズル461を有するものであるが、これに代えて、例えば溶剤を含浸させた、あるいは表面に溶剤が塗布されたベルトやローラ等の部材をブランケット432に当接させることでブランケット432に溶剤を供給する構成であってもよい。
【0101】
また、上記実施形態の溶剤除去ローラは多孔質表面で溶剤を吸着するものであるが、例えば適宜の開口サイズを有するメッシュ状の表面を有するローラが用いられてもよい。
【0102】
また、上記した各部材や溶剤の材料は一部の例を示したものにすぎず、各材料は上記したものに限定されない。
【0103】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係るクリーニング装置において、例えば溶剤は、液体成分よりも揮発性の高い液体とすることができる。このような構成によれば、残留するインクの液体成分を直接蒸発させるよりも短時間で担持体を乾燥状態とすることが可能となる。
【0104】
また例えば、溶剤除去部は、担持体の表面に付着する溶剤を微小な液滴に細粒化する細粒化部を有する構成とすることができる。このような構成によれば、蒸発後に担持体に残る液痕を小サイズのもののみとすることができるので、液痕除去部による除去効果を高めることができる。
【0105】
この場合、細粒化部は、多孔質の表面が担持体の表面に当接するローラ部材である多孔質ローラを有する構成とすることができる。このような構成によれば、溶剤が担持体上で大きな塊となっていても、多孔質のローラ表面を担持体に当接させることで、溶剤の少なくとも一部を吸着するとともに、残留する溶剤については小さな液滴に分割された状態とすることができる。
【0106】
さらにこの場合、多孔質ローラが吸着した溶剤を多孔質ローラから排出する排出機構が設けられた構成とすることができる。このような構成によれば、多孔質ローラによる溶剤の吸着能力の低下を抑えて、継続的に溶剤を除去することが可能となる。
【0107】
また例えば、本発明に係るクリーニング装置において、溶剤除去部は、溶剤が供給された担持体の表面に気流を吹き付ける気流生成部を有する構成とすることができる。このような構成によれば、担持体に付着する溶剤を気流により吹き飛ばし、あるいはその蒸発を促進させて、担持体を早期に乾燥させることが可能となる。
【0108】
また例えば、液痕除去部は、担持体の表面に当接しながら回転するローラ部材である液痕除去ローラを有する構成とすることができる。このような構成によれば、担持体表面に残る液痕を液痕除去ローラに移行させることで担持体表面から除去することが可能である。
【0109】
この場合において、液痕除去ローラの表面は例えばシリコン樹脂またはポリエステル製とすることができる。本願発明者の知見では、シリコン樹脂またはポリエステル製のローラ表面を担持体に当接させることで、担持体表面の液痕を効果的に除去することが可能である。
【0110】
また例えば、本発明に係る印刷装置において、担持体はローラ状のブランケット胴に巻き付けられたブランケットであり、ブランケット胴に巻き掛けられたブランケットの表面に沿って、溶剤供給部、溶剤除去部および液痕除去部がこの順番に配置され、制御部は、ブランケットの表面が溶剤供給部、溶剤除去部および液痕除去部の配設位置をこの順番で通過する方向にブランケット胴を回転させながら、クリーニング動作を実行させる構成とすることができる。このような構成によれば、ブランケット胴の回転によりブランケット表面がクリーニング装置の各部の配設位置を処理順に通過することとなるので、例えば無端状のブランケットを効率よくクリーニングすることができる。
【0111】
この場合において、ブランケット胴の回転軸周りに、鉛直上向きに向かう方向を0度としブランケット胴の回転方向を正方向として方位角を定義するとき、ブランケットの表面のうち、溶剤供給部により溶剤が供給される位置、および溶剤除去部により溶剤が除去される位置が、方位角において0度以上90度以下の象限に配置される構成とすることができる。このような構成によれば、ブランケットに供給された溶剤がブランケット表面に沿って流れ落ちたとしても、溶剤除去部がその溶剤を除去することで、溶剤のさらなる落下を防止することができ、印刷装置内への飛散等の問題を未然に回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
この発明は、印刷に用いられてインクを一時的に担持する担持体をクリーニングする技術全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 印刷装置
43 転写ローラ
46 クリーニング部(クリーニング装置)
47 クリーニング制御部(制御部)
90 制御ユニット(制御部)
431 ブランケット胴
432 ブランケット(担持体)
461 溶剤供給ノズル(溶剤供給部)
462 溶剤除去ローラ(溶剤除去部、細粒化部、多孔質ローラ)
463 エアナイフ(溶剤除去部、気流生成部)
464 液痕除去ローラ(液痕除去部)
471 溶剤供給部
472 排気機構(排出機構)
473 気体送出部
P 凹版
Pa 版面
S 溶剤
W ワーク(被転写物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10