特開2018-202717(P2018-202717A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000003
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000004
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000005
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000006
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000007
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000008
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000009
  • 特開2018202717-成形装置及び成形構造体の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202717(P2018-202717A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】成形装置及び成形構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 69/02 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   B29C69/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-109970(P2017-109970)
(22)【出願日】2017年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 喬史
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA04
4F213WA05
4F213WA43
4F213WC01
4F213WC06
(57)【要約】
【課題】成形体の基材に対する接合強度を向上するとともに、成形構造体の意匠自由度を確保する。
【解決手段】板状の基材31と、対向面42Aを有するやぐら状の台座部42と、凹角部45を逆R面47AとするR部47とを有する成形体と、を備えるトリムボード30を成形するための成形装置50は、互いに開閉可能とされた上型52及び下型53と、対向面42Aに沿ってスライド可能とされたスライド型60と、を備え、スライド型60は、接続面61Aと第1成形面61Bと第2成形面61Cとを有するブロック状の本体部61と、第2成形面61Cから突出するとともに第3成形面62Aを有するアンダーカット成形部62と、を有し、本体部61は、第1成形面61Bと第2成形面61Cとの間の角部61Eに、第3成形面62Aを延長するようにして凹設された、R部47を成形するための凹部63を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材と、前記基材の一方の板面に成形された成形体であって、前記一方の板面と対向する対向面を有して前記一方の板面に立設されたやぐら状のアンダーカット部と、前記一方の板面と前記アンダーカット部の端面との間の凹角部を逆R面とするR部とを有する成形体と、を備える成形構造体を成形するための成形装置であって、
互いに開閉可能とされ、前記基材を成形するための一対の成形型と、
前記対向面に沿ってスライド可能とされ、前記一対の成形型のうち前記一方の板面側に配された一方の成形型とともに、前記成形体を成形するためのスライド型と、を備え、
前記スライド型は、
スライド機構に接続された接続面と、前記一方の成形型とともに前記基材の前記一方の板面を成形する第1成形面と、前記第1成形面と交差する面であって前記アンダーカット部の前記端面を成形する第2成形面とを有するブロック状の本体部と、
前記第2成形面から突出するとともに、前記アンダーカット部の内面を成形する第3成形面を有するアンダーカット成形部と、を有し、
前記本体部は、前記第1成形面と前記第2成形面との間の角部に、前記第3成形面を延長するようにして凹設された、前記R部を成形するための凹部を有していることを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記スライド型のスライド方向に沿って奥方に向かうにつれて幅寸法が小さくなるテーパ溝をなすことを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
板状の基材と、前記基材の一方の板面に成形された成形体であって、前記一方の板面と対向する対向面を有して前記一方の板面に立設されたやぐら状のアンダーカット部と、前記一方の板面と前記アンダーカット部の端面との間の凹角部を逆R面とするR部とを有する成形体と、を備える成形構造体の製造方法であって、
一対の成形型を閉じて、熱可塑性樹脂を含むプレボードから前記基材を成形する基材成形工程と、
前記一対の成形型のうち前記一方の板面側に配された一方の成形型と、前記対向面に沿ってスライド可能なスライド型との間に形成された成形空間に溶融樹脂を射出して、前記成形体を成形する成形体成形工程と、を備え、
前記スライド型は、
スライド機構に接続された接続面と、前記一方の成形型とともに前記基材の前記一方の板面を成形する第1成形面と、前記第1成形面と交差するとともに、前記アンダーカット部の前記端面を成形する第2成形面とを有するブロック状の本体部と、
前記第2成形面から突出するとともに、前記アンダーカット部の内面を成形する第3成形面を有するアンダーカット成形部と、を有し、
前記本体部は、前記第1成形面と前記第2成形面との間の角部に、前記第3成形面を延長するようにして凹設された凹部を有しており、
前記成形体成形工程において、前記スライド型の前記凹部により前記R部を成形することを特徴とする成形構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置及び成形構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンダーカット部を有する樹脂成形品及びその成形方法として、下記特許文献1のものが知られている。特許文献1には、ドアトリムの成形に使用する成形金型として、可動側金型並びに固定側金型と、アンダーカット部であるウエストフランジを成形するために、固定側金型に配設されるスライド動作可能なコアを備えるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−103273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基材の一方の板面に成形体が成形された成形構造体において、成形体がやぐら状のアンダーカット部を有する場合には、スライド型を用いて成形体を成形することが考えられる。このようなスライド型及び成形構造体には、その寸法及び形状に成形上の制約がある。具体的には、スライド型は、そのスライド方向における寸法については、アンダーカット部を成形するための部分の寸法と、スライド動作に係るスライド機構に接続される接続面を確保するための寸法と、スライド機構により斜め方向に突き上げられる際の傾斜角度に応じた傾斜面を形成する部分の寸法の合算以上とする必要がある。また、成形構造体には、そのようなスライド型を配するための空間と、スライド型をスライド移動させるための空間を確保する必要がある。
【0005】
このような成形構造体において、基材とアンダーカット部との間の凹角部を逆R面として、成形体の基材に対する接合強度を向上する技術が求められている。しかしながら、そのような逆R面を、アンダーカット部と同様に、スライド型におけるアンダーカット部を成形するための部分で成形しようとすると、スライド型は、そのスライド方向における寸法が、逆R面を有するR部の寸法だけ大きくならざるを得ない。そして、スライド型が大型化すると、スライド型に係る空間的な制約により、成形構造体の意匠が制限されるという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、成形体の基材に対する接合強度を向上するとともに、成形構造体の意匠自由度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の成形装置は、板状の基材と、前記基材の一方の板面に成形された成形体であって、前記一方の板面と対向する対向面を有して前記一方の板面に立設されたやぐら状のアンダーカット部と、前記一方の板面と前記アンダーカット部の端面との間の凹角部を逆R面とするR部とを有する成形体と、を備える成形構造体を成形するための成形装置であって、互いに開閉可能とされ、前記基材を成形するための一対の成形型と、前記対向面に沿ってスライド可能とされ、前記一対の成形型のうち前記一方の板面側に配された一方の成形型とともに、前記成形体を成形するためのスライド型と、を備え、前記スライド型は、スライド機構に接続された接続面と、前記一方の成形型とともに前記基材の前記一方の板面を成形する第1成形面と、前記第1成形面と交差する面であって前記アンダーカット部の前記端面を成形する第2成形面とを有するブロック状の本体部と、前記第2成形面から突出するとともに、前記アンダーカット部の内面を成形する第3成形面を有するアンダーカット成形部と、を有し、前記本体部は、前記第1成形面と前記第2成形面との間の角部に、前記第3成形面を延長するようにして凹設された、前記R部を成形するための凹部を有している。
【0008】
本願発明者は、鋭意検討した結果、例えば、射出成形により基材と成形体を一体的に成形する場合には、アンダーカット部の基端部にヒケ対策として肉盗みを施す必要があるが、基材の一方の板面に成形体が射出成形された成形構造体においては、アンダーカット部の端面をある程度の幅寸法としてもヒケの問題が生じにくいことを確認した。そして、そのような端面にR部を形成する場合には、分割型によらずとも、R部をスライド型のスライド方向に離型可能であるこという新たな知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、R部を本体部に形成された凹部で成形することができ、例えば、R部をアンダーカット部と同様に、アンダーカット成形部の第3成形面と一方の成形型との間で成形する構成のように、アンダーカット成形部の突出寸法を大きくする必要がない。このため、スライド型を大型化することなくR部を成形することができ、成形構造体の意匠自由度を確保することができる。そして、成形体がR部を備えることにより、成形体の基材に対する接合強度が高い成形構造体を成形することができる。
【0010】
上記構成において、前記凹部は、前記スライド型のスライド方向に沿って奥方に向かうにつれて幅寸法が小さくなるテーパ溝をなしていてもよい。このような構成によれば、スライド型をスライドするのに伴って、R部を凹部から離型し易く、好ましい。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の成形構造体の製造方法は、板状の基材と、前記基材の一方の板面に成形された成形体であって、前記一方の板面と対向する対向面を有して前記一方の板面に立設されたやぐら状のアンダーカット部と、前記一方の板面と前記アンダーカット部の端面との間の凹角部を逆R面とするR部とを有する成形体と、を備える成形構造体の製造方法であって、一対の成形型を閉じて、熱可塑性樹脂を含むプレボードから前記基材を成形する基材成形工程と、前記一対の成形型のうち前記一方の板面側に配された一方の成形型と、前記対向面に沿ってスライド可能なスライド型との間に形成された成形空間に溶融樹脂を射出して、前記成形体を成形する成形体成形工程と、を備え、前記スライド型は、スライド機構に接続された接続面と、前記一方の成形型とともに前記基材の前記一方の板面を成形する第1成形面と、前記第1成形面と交差するとともに、前記アンダーカット部の前記端面を成形する第2成形面とを有するブロック状の本体部と、前記第2成形面から突出するとともに、前記アンダーカット部の内面を成形する第3成形面を有するアンダーカット成形部と、を有し、前記本体部は、前記第1成形面と前記第2成形面との間の角部に、前記第3成形面を延長するようにして凹設された凹部を有しており、前記成形体成形工程において、前記スライド型の前記凹部により前記R部を成形する。
【0012】
本発明によれば、成形体成形工程において、R部を本体部に形成された凹部で成形することができ、例えば、R部をアンダーカット部と同様に、アンダーカット成形部の第3成形面と一方の成形型との間で成形する方法のように、アンダーカット成形部の突出寸法を大きくする必要がない。このため、成形体成形工程において、スライド型に係る空間的な制約を大きくすることなくR部を成形することができ、成形構造体の意匠自由度を確保することができる。そして、成形体がR部を備えることにより、成形体の基材に対する接合強度が高い成形構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形体の基材に対する接合強度を向上するとともに、成形構造体の意匠自由度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアトリムを示す正面図
図2】ドアトリムが取り付けられた車両用ドアの断面図(図1のII−II線で切断した図に対応)
図3】成形装置を示す模式図
図4】スライド型の成形位置におけるトリムボードとスライド型を示す斜視図
図5】スライド型の開型位置におけるトリムボードとスライド型を示す斜視図
図6】スライド型の成形位置(A)及び開型位置(B)におけるスライド型と台座部及びR部を示す断面図(図4の基材の一方の板面に沿って切断した図に対応)
図7】スライド型の成形位置(A)及び開型位置(B)におけるトリムボードとスライド型を示す断面図(図6のVII−VII線で切断した図に対応)
図8】他の実施形態に係るクリップ座を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図1から図7によって説明する。本実施形態では、乗物用内装材であるドアトリム20を構成するトリムボード30(成形構造体の一例)の成形装置及びトリムボード30の製造方法を例示する。
【0016】
ドアトリム20は、図2に示すように、ドアパネル11の車室内側に取り付けられ、車両用ドア10の車室内側面を構成する。ドアパネル11は、それぞれパネル状をなすドアアウタパネル11Aとドアインナパネル11Bとを備えている。これらのパネル11A,11Bは、金属製とされ、鉄やアルミニウムなどの金属板材をプレス加工することで形成されている。ドアインナパネル11Bには、車両上端部にインナーウェザストリップ13が取り付けられている。このインナーウェザストリップ13には、後述する係止部41に係止される被係止部13Aが車室内に向けて開口するようにして設けられている。
【0017】
ドアトリム20には、図1に示すように、その上部に、ウエストラインに沿って延びるライン上の加飾部21が設けられている。加飾部21は、車室内側に向けて開口するように形成された溝部21Aに、パネル22Bをはめ込むことで構成されている(図2参照)。溝部21Aは、トリムボード30が車室外側に膨出するようにして形成されており、トリムボード30の一方の板面31Aに成形体40を成形するうえで、スライド型60の移動を妨げる構造物となり得るものである。また、ドアトリム20には、加飾部21の車両下方に、ドアインサイドハンドルを取り付けるための取付孔23や、アームレスト24、ドアポケット25等が設けられている。また、ドアトリム20には、トリムボード30の車室内側面を被覆するようにして表皮材27が貼着されている(図2参照)。
【0018】
ドアトリム20は、図2に示すように、トリムボード30を主体として構成されている。トリムボード30は、板状の基材31と、基材31の一方の板面31Aに成形された成形体40とを備えている。基材31は、木材等を解織して得た木質繊維、ケナフ等の靭皮植物繊維、或いは、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維等から選ばれる繊維と、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を含んで構成されている。
【0019】
成形体40は、図2に示すように、熱可塑性樹脂からなり、基材31に対して固着されている。成形体40は、被係止部13Aに対して係止される係止部41(機能部)と、係止部41の台座となる台座部42(アンダーカット部)と、基材31の一方の板面31Aと台座部42の端面42Bとの間の凹角部45を逆R面47AとするR部47とを有する。なお、凹角部45は、台座部42の端面42Bを基材31側に延長した仮想的な面と、基材31の一方の板面31Aとの間に形成されるものであり、その仮想的な面より車両下方に位置する部分がR部47とされる。
【0020】
台座部42は、図6及び図7に示すように、基材31の一方の板面31Aと対向する対向面42Aを有して一方の板面31Aに立設されたやぐら状をなす。詳細には、台座部42は、平面視U字状をなし、一方の板面31Aから立ち上がる立壁部43と、立壁部43の内周面から立ち上がり、基材31と対向配置された対向面部44とを有する。台座部42は、平面視にて方形状をなし、立壁部43が車両下方に向けて開口する姿勢で配置されている。この立壁部43は、車両下方に向かうにつれてわずかに開く形をなしている。台座部42の内面は、後述する車両下方に向けてスライドするスライド型60により成形される。なお、やぐら状の台座部42は、三方が閉塞された構造に限られないが、その強度と成形性を考慮すると、三方が閉塞された構造とすることが好ましい。
【0021】
係止部41は、図2に示すように、被係止部13Aに対して係止されることで、インナーウェザストリップ13を介して、ドアトリム20をドアインナパネル11Bに対して取り付ける機能を有する機能部とされる。係止部41は、立壁部43の車両上側に位置する部分から、車室外側に向けて延設されている。係止部41には、その延設先端部に爪部41Aが設けられている。爪部41Aは、車両下方に向けて突出する形をなし、対向面42Aと同じ方向に沿って延びるアンダーカット面を有している。このような外力が作用する機能部においては、これを支持する台座部42の基端部に応力が掛かり易く、後述するR部47のような構成が特に有効であると言える。
【0022】
R部47は、図2に示すように、台座部42の基端部において、台座部42の端面42Bと、基材31の一方の板面31Aとを接続するようにして形成されている。本実施形態では、R部47は立壁部43の両端にそれぞれ設けられている(図6参照)。R部47は、平面視にて、立壁部43を5〜10mm程度車両下方に向けて延長したような形状をなし、車両下方に向かうにつれて先細るようにして形成されている。また、R部47は、側面視にて、凹角部45と対向する斜辺が逆R状に凹んだほぼ直角三角形状をなしている。このようなR部47は、台座部42において応力が集中し易い凹角部45を肉盛りして、逆R面47Aにより一か所に応力を集中させないような構成となっている。
【0023】
続いて、トリムボード30を成形するための成形装置50について、図3を参照しつつ説明する。なお、図3においては、説明の便宜のために、各部の寸法、位置等を適宜変更して模式的に描いている。
【0024】
成形装置50は、射出ユニット51と、互いに開閉可能な一対の成形型である上型52(一方の成形型)及び下型53と、スライド型60とを備えて構成されている。なお、成形体40の成形と同時に表皮材27を成形装置50によって成形貼着してもよい。
【0025】
射出ユニット51はスクリュウタイプのユニットであって、本実施形態では上型52の上方に配置されている。上型52の内部には、溶融樹脂51Aを通過させるホットランナーHが配索されている。ホットランナーHは、各成形体40を成形するための成形体成形空間S2に連通しており、このホットランナーHを通じて射出ユニット51から各成形体成形空間S2内に溶融樹脂51Aが供給される。
【0026】
上型52は、成形装置50に固定されている。上型52は、下方に突出した形状をなし、その成形面52Aにスライド型60を収容可能なスライド型収容部52Cが凹設されている。また、上型52の成形面52Aには、溝部21Aの車室外側面を成形する加飾部用凹部52Bが凹設されている。一方、下型53は、シャフトを介して駆動装置55に固定されており、開型位置と成形位置との間で上下方向に移動可能とされている。下型53は、型閉じに伴って上型52を受け入れ可能なように下方に凹んだ形状をなし、成形位置では上型52から基材31の板厚だけ離間して対向配置される。また、下型53の成形面53Aには、溝部21Aの車室内側面を成形する加飾部用凸部53Bが凸設されている。
【0027】
成形位置において、上型52と下型53との間には基材31を成形するための基材成形空間が形成される。基材成形空間における溝部21Aを成形する部分では、加飾部用凹部52Bと加飾部用凸部53Bが嵌り合うようにして、溝部21Aを成形するための空間が形成される。
【0028】
スライド型60は、対向面42Aに沿ってスライド可能とされ、上型52とともに成形体40を成形するように構成されている。具体的には、スライド型60は、シャフト54Aを介して駆動装置54に固定されており、上型52に対して斜め方向に移動することで、図4に示す成形位置と図5に示す開型位置との間で移動可能とされている。これらシャフト54A及び駆動装置54は共にスライド機構を構成する。スライド型60が成形位置にあるときには、スライド型60の第1成形面61Bと上型52の成形面52Aとが面一をなしている。そして、成形位置において、スライド型60がスライド型収容部52Cの内部に収容された状態では、上型52とスライド型60との間に成形体成形空間S2が形成される。
【0029】
スライド型60は、図5に示すように、ブロック状の本体部61と、本体部61から突出するアンダーカット成形部62を有している。本体部61は、シャフト54Aに接続された接続面61Aと、上型52とともに基材31の一方の板面31Aを成形する第1成形面61Bと、第1成形面61Bと交差するとともに、台座部42の端面42Bを成形する第2成形面61Cとを有する。また、本体部61は、第2成形面61Cの反対側に、スライド型60が上型52に対して移動する方向に沿って傾斜する傾斜面61Dを更に有する。アンダーカット成形部62は、第2成形面61Cから突出するとともに、台座部42の内面を成形する第3成形面62Aを有する。この第3成形面62Aには、所定の抜き勾配が設定されている。そして、本体部61は、第1成形面61Bと第2成形面61Cとの間の角部61Eに、第3成形面62Aを延長するようにして凹設された凹部63を有している。
【0030】
凹部63は、図6及び図7に示すように、第1成形面61Bと第2成形面61Cとの間の角部61Eを切り欠くような溝状をなしている。凹部63は、その底面(奥面)が逆R面47Aを成形するためのR面63Aとされている。凹部63は、スライド型60のスライド方向に沿って奥方に向かうにつれて幅寸法が小さくなるテーパ溝をなす。言い換えれば、凹部63には、所定の抜き勾配が設定されている。このような凹部63は、スライド型60に切削加工や放電加工を施すことで、アンダーカット成形部62における対向面部44を形成するための溝等と同様に形成される。
【0031】
各駆動装置54,55としては、電動モータによるアクチュエータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁ソレノイドアクチュエータ等を適宜使用可能である。各駆動装置54,55は、図示しないコントローラによって制御され、下型53及びスライド型60を開型位置及び成形位置に移動可能とされている。
【0032】
次に、トリムボード30を製造する製造方法について説明する。トリムボード30の製造方法は、プレボード31Pから基材31を成形する基材成形工程と、成形体40を成形する成形体成形工程とを備えている。プレボード31Pは、基材31より一回り大きい平板状をなし、ケナフ繊維とポリプロピレンが混合されたマット材を加熱して、プレス成形することで形成されている。
【0033】
基材成形工程では、上型52及び下型53を閉じて、ポリプロピレンを含むプレボード31Pから基材31を成形する。具体的には、まず、プレボード31Pをポリプロピレンが溶融軟化する程度に加熱する。そして、スライド型60を成形位置に移動させておき、開型位置にある下型53上に加熱したプレボード31Pをセットする。この状態から、下型53を成形位置へ移動させる。すると、プレボード31Pは、その外周端部がせん断によって切除されると共に、基材成形空間で圧縮されることにより基材31に成形される。
【0034】
成形体成形工程では、成形体成形空間S2に溶融樹脂51Aを射出して、成形体40を成形する。具体的には、上型52と下型53を閉じた状態で、溶融樹脂51Aを射出ユニット51によりホットランナーHを介して成形体成形空間S2内へ射出する。射出された溶融樹脂51Aは、トリムボード30内部の軟化したポリプロピレンと一部混ざり合いながら、成形体成形空間S2内に充填される。充填された溶融樹脂51Aを冷却して固め、基材31の一方の板面31Aに固着した台座部42と係止部41とを一体的に成形する。
【0035】
さらに、成形体成形工程において、図6及び図7に示すように、スライド型60の凹部63によりR部47を成形する。スライド型60の凹部63は、上型52と下型53を閉じた状態では、第1成形面61B側が基材31の一方の板面31Aで閉塞されるとともに、第2成形面61C側が成形体成形空間S2と連通した状態となっている。この状態で、溶融樹脂51Aを成形体成形空間S2に射出すると、凹部63内にも溶融樹脂51Aが充填される。そして、凹部63内の溶融樹脂51Aを冷却して固め、基材31の一方の板面31Aに固着したR部47を、立壁部43と一体的に成形する。
【0036】
その後、下型53を開型位置へ移動させるとともに、スライド型60を開型位置へ移動させる。スライド型60が開型位置へ移動すると、上型52に対して斜め方向に移動して、相対的に成形体40から遠ざかる方向(図4及び図7(A)の右側)に変位する。すると、図5及び図7(B)に示すように、スライド型60のアンダーカット成形部62を囲むようにして成形された台座部42を、アンダーカット成形部62から離型するとともに、本体部61の凹部63内で成形されたR部47を本体部61から引き抜くようにして離型することができる。本実施形態では、第3成形面62A及び凹部63に抜き勾配を設定することで、成形体40をスライド型60からスムーズに離型可能とされている。この際、スライド型60のスライド方向には、基材31に成形された溝部21Aが配されているが、本実施形態では、R部47をアンダーカット成形部62で成形する場合に比べて、スライド型60がスライド方向についてR部47の寸法分(5〜10mm程度)小型化されており、スライド型60と溝部21Aが干渉しない。以上のようにしてトリムボード30が成形装置50から取り外され、トリムボード30の製造が完了する。
【0037】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本願発明者は、鋭意検討した結果、例えば、射出成形により基材と成形体を一体的に成形する場合には、台座の基端部にヒケ対策として肉盗みを施す必要があるが、基材31の一方の板面31Aに成形体40が射出成形されたトリムボード30においては、台座部42の端面42Bをある程度の幅寸法としてもヒケの問題が生じにくいことを確認した。そして、そのような端面42BにR部47を形成する場合には、分割型によらずとも、R部47をスライド型60のスライド方向に離型可能であるこという新たな知見を得て、本実施形態のものを完成するに至った。
【0038】
本実施形態の成形装置50によれば、R部47を本体部61に形成された凹部63で成形することができ、例えば、R部47を台座部42と同様に、アンダーカット成形部62の第3成形面62Aと上型52との間で成形する構成のように、アンダーカット成形部の突出寸法を5〜10mm程度大きくする必要がない。このため、スライド型60を大型化することなくR部47を成形することができ、トリムボード30の意匠自由度を確保することができる。具体的には、本実施形態では、スライド型60と干渉することなく、台座部42に近接して、加飾部21を設けることが可能となる。そして、成形体40がR部47を備えることにより、成形体40の基材31に対する接合強度が高いトリムボード30を成形することができる。
【0039】
また、本実施形態では、凹部63は、スライド型60のスライド方向に沿って奥方に向かうにつれて幅寸法が小さくなるテーパ溝をなす。このため、スライド型60をスライドするのに伴って、R部47を凹部63から離型し易く、好ましい。
【0040】
また、本実施形態の製造方法によれば、成形体成形工程において、R部47を本体部61に形成された凹部63で成形することができ、例えば、R部47を台座部42と同様に、アンダーカット成形部62の第3成形面62Aと上型52との間で成形する方法のように、アンダーカット成形部の突出寸法を5〜10mm程度大きくする必要がない。このため、成形体成形工程において、スライド型60に係る空間的な制約を大きくすることなくR部47を成形することができ、成形構造体の意匠自由度を確保することができる。具体的には、本実施形態では、スライド型60と干渉することなく、台座部42に近接して、加飾部21を設けることが可能となる。そして、成形体40がR部47を備えることにより、成形体40の基材31に対する接合強度が高いトリムボード30を製造することができる。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、成形体として、係止部と台座部を有するものを例示したがこれに限られない。本発明は、やぐら状のアンダーカット部を有する種々の成形体に、適宜適用可能である。
(2)上記実施形態では、台座部として、係止部の台座となるものを例示したが、これに限られない。例えば、台座部は、クリップ71を保持するクリップ座70(図8参照)、当てボス又は取付ボス等の各種機能部の台座であってもよい。また、台座部は、平面視方形状に限られず、その支持する機能部の形状や基材における配設位置等に応じて適宜変更可能である。例えば、クリップ座70等を支持する場合には、平面視半長円状としてもよい。
(3)上記実施形態では、基材として、繊維と熱可塑性樹脂を含むものを例示したが、これに限られない。基材は、繊維を含まないものであってもよく、或いは、他の材料を更に含んでいてもよい。
(4)上記実施形態では、成形構造体として、トリムボードを例示したが、これに限られない。例えば、成形構造体は、トリムボードを構成する一のボード部材(アッパーボード、ロアボード等)であってもよい。さらに、成形構造体は、乗物用シートのバックボード等であってもよい。
(5)上記実施形態では、成形構造体において、成形体に近接して配された構造物として、加飾部(その溝部)を例示したが、そのような構造物はこれに限られない。構造物は、別の成形体や、トリムボードの外周縁に立設された側壁等であってもよい。
(6)上記実施形態では、スライド型の本体部に2つの凹部が凹設されたものを例示したが、これに限られない。例えば、スライド型のスライド方向において、立壁部の両端面の位置が異なる場合には、相対的にスライド方向に延出する方の端面のR部のみを本体部の凹部で成形し、他方の端面のR部はアンダーカット成形部と一方の成形型との間で成形してもよい。
(7)上記実施形態では、上型が固定型とされるものを例示したが、これに限られない。また、成形装置や成形構造体の製造方法は、成形構造体の形状、材質等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
30…トリムボード(成形構造体)、31…基材、31A…一方の板面、31P…プレボード、40…成形体、42…台座部(アンダーカット部)、42A…対向面、42B…端面、45…凹角部、47…R部、51A…溶融樹脂、52…上型(一方の成形型)、53…下型、54A…シャフト(スライド機構)、60…スライド型、61…本体部、61A…接続面、61B…第1成形面、61C…第2成形面、61D…傾斜面、61E…角部、62…アンダーカット成形部、62A…第3成形面、63…凹部、S2…成形体成形空間(成形空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8