特開2018-202756(P2018-202756A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202756(P2018-202756A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20181130BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20181130BHJP
   F17C 1/06 20060101ALN20181130BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20181130BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20181130BHJP
【FI】
   B29C70/32
   F16J12/00 A
   F17C1/06
   B29K105:08
   B29L22:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-111371(P2017-111371)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 大五郎
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
4F205
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BC08
3E172BD03
3E172DA36
3J046AA01
3J046AA14
3J046BA03
3J046BD09
3J046CA04
3J046DA05
3J046EA02
4F205AA36
4F205AA39
4F205AD05
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205AP04
4F205AR04
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
4F205HB12
4F205HC02
4F205HC16
4F205HC17
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HL14
4F205HT22
(57)【要約】
【課題】シートにおける繊維束の張力低下を抑制できる。
【解決手段】タンクの製造方法であって、繊維束が配列されて構成されたシートを前記繊維束の長尺方向に張力をかけた状態で搬送する搬送工程と、搬送されているシートにおいて張力が低下している張力低下部位を検出する検出工程と、検出工程において張力低下部位が検出された場合に、有機溶媒を吹き付けて張力低下部位における張力の低下を回復させる張力回復工程と、搬送されたシートをライナに巻回する巻回工程と、を備える、タンクの製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの製造方法であって、
繊維束が配列されて構成されたシートを前記繊維束の長尺方向に張力をかけた状態で搬送する搬送工程と、
搬送されている前記シートにおいて張力が低下している張力低下部位を検出する検出工程と、
前記検出工程において前記張力低下部位が検出された場合に、有機溶媒を吹き付けて前記張力低下部位における張力の低下を回復させる張力回復工程と、
搬送された前記シートをライナに巻回する巻回工程と、
を備える、タンクの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクの製造方法であって、
前記張力回復工程における前記有機溶媒の吹き付けは、搬送されている前記シートから離れて前記シートの幅方向に沿って配置されるとともに前記シートの面に向けて前記有機溶媒を吹き付けることができる複数の吹き付け部によって行われる、タンクの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のタンクの製造方法であって、
前記張力回復工程における前記有機溶媒の吹き付けは、前記複数の吹き付け部のうち、前記シートの幅方向において前記張力低下部位の位置と対応する位置に配置された吹き付け部によって行われる、タンクの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のタンクの製造方法であって、
前記検出工程は、撮像装置により撮像された画像に写った前記シートにおける前記繊維束の配向角度に基づいて前記張力低下部位を検出する、タンクの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のタンクの製造方法であって、
前記検出工程は、非接触の状態で張力を測定できる非接触張力計による測定結果に基づいて前記張力低下部位を検出する、タンクの製造方法。
【請求項6】
タンクの製造方法であって、
繊維束が配列されて構成されたシートを前記繊維束の長尺方向に張力をかけた状態で搬送する搬送工程と、
搬送されている前記シートにおいて張力が低下している張力低下部位を検出する検出工程と、
前記検出工程において前記張力低下部位が検出された場合に、有機溶媒を吹き付けて前記張力低下部位における張力の低下を回復させる張力回復工程と、
搬送された前記シートをマンドレルに巻回する巻回工程と、
前記マンドレルに巻回された前記シートを硬化させてシート層を形成するシート層形成工程と、
前記シート層と前記マンドレルとを分離したのち、前記シート層にライナを嵌める嵌め工程と、
を備える、タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス自動車や燃料電池自動車などに用いられる燃料ガスを貯蔵する高圧タンクには、繊維束が配列されて構成されたシートを巻回して形成されたシート層を備えるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−223569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のタンクの製造方法では、巻回前のシートにおいてシートを構成している繊維束の一部に張力が低下している部位がある場合、タンク製造後においてシート層に所望の強度が確保されないといった問題がある。このため、巻回前のシートを構成している繊維束の一部に張力が低下している部位がある場合であっても、巻回後のタンクのシート層における繊維束の張力低下を抑制できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、タンクの製造方法が提供される。このタンクの製造方法は、繊維束が配列されて構成されたシートを前記繊維束の長尺方向に張力をかけた状態で搬送する搬送工程と、搬送されている前記シートにおいて張力が低下している張力低下部位を検出する検出工程と、前記検出工程において前記張力低下部位が検出された場合に、有機溶媒を吹き付けて前記張力低下部位における張力の低下を回復させる張力回復工程と、搬送された前記シートをライナに巻回する巻回工程と、を備える。このような形態とすれば、シートにおいて張力低下部位が検出された場合には張力回復工程により張力低下部位の張力を回復させることができる。このため、張力低下部位が回復されたシートを巻回してシート層を形成できるので、巻回後のタンクのシート層における繊維束の張力低下を抑制できる。
【0007】
(2)上記形態において、前記張力回復工程における前記有機溶媒の吹き付けは、搬送されている前記シートから離れて前記シートの幅方向に沿って配置されるとともに前記シートの面に向けて前記有機溶媒を吹き付けることができる複数の吹き付け部によって行われてもよい。このような形態とすれば、シートの幅方向に沿って複数の吹き付け部が配置されていることから、張力低下部位への有機溶媒の吹き付けが外れることを抑制できる。
【0008】
(3)上記形態において、前記張力回復工程における前記有機溶媒の吹き付けは、前記複数の吹き付け部のうち、前記シートの幅方向において前記張力低下部位の位置と対応する位置に配置された吹き付け部によって行われてもよい。このような形態とすれば、複数の吹き付け部のうちシートの幅方向において張力低下部位の位置と対応する位置に配置された吹き付け部に有機溶媒を吹き付けさせるため、張力低下部位とは異なる位置に有機溶媒が吹き付けられることを抑制できる。
【0009】
(4)上記形態において、前記検出工程は、撮像装置により撮像された画像に写った前記シートにおける前記繊維束の配向角度に基づいて前記張力低下部位を検出してもよい。このような形態とすれば、シートに接触することなく検出工程を行うことができるため、シートに接触して行われる検出工程と比べて、検出工程によってシートに損傷が生じることを防止できる。
【0010】
(5)上記形態において、前記検出工程は、非接触の状態で張力を測定できる非接触張力計による測定結果に基づいて前記張力低下部位を検出してもよい。このような形態とすれば、シートに接触することなく検出工程を行うことができるため、シートに接触して行われる検出工程と比べて、検出工程によってシートに損傷が生じることを防止できる。
【0011】
(6)本発明の他の形態によれば、タンクの製造方法が提供される。このタンクの製造方法は、繊維束が配列されて構成されたシートを前記繊維束の長尺方向に張力をかけた状態で搬送する搬送工程と、搬送されている前記シートにおいて張力が低下している張力低下部位を検出する検出工程と、前記検出工程において前記張力低下部位が検出された場合に、有機溶媒を吹き付けて前記張力低下部位における張力の低下を回復させる張力回復工程と、搬送された前記シートをマンドレルに巻回する巻回工程と、前記マンドレルに巻回された前記シートを硬化させてシート層を形成するシート層形成工程と、前記シート層と前記マンドレルとを分離したのち、前記シート層にライナを嵌める嵌め工程と、を備える。このような形態とすれば、シートにおいて張力低下部位が検出された場合には張力回復工程により張力低下部位の張力を回復させることができる。このため、張力低下部位が回復されたシートを巻回してシート層を形成できるので、巻回後のタンクのシート層における繊維束の張力低下を抑制できる。
【0012】
本発明の形態は、タンクの製造方法に限るものではなく、例えば、タンクそのもの、タンクの製造装置などの種々の形態に適用することも可能である。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】タンクの概略構成を示す断面図である。
図2】タンクの製造方法を示す工程図である。
図3】シート巻回装置を示す説明図である。
図4】シート巻回装置をZ軸方向+側から見た説明図である。
図5】シート層形成工程の詳細を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.実施形態:
A1.タンクの構成
図1は、本発明の実施形態における製造方法によって製造されるタンク10の概略構成を示す断面図である。図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応する。本実施形態におけるタンク10には、例えば、70MPa程度の高圧の水素ガスが貯蔵される。タンク10は、ライナ20と補強層30とを備えている。
【0015】
ライナ20は、樹脂製の中空ライナである。ライナ20は、例えば、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂によって形成されている。ライナ20の軸線は、タンク10の軸線AXと共通する。ライナ20は、ストレート部21とドーム部22,23と口金13,14とを備えている。
【0016】
ストレート部21は、円筒形状を有している。ドーム部22,23は、ストレート部21の両端に設けられており、ライナ20の外側に向けて凸となる曲面状に形成されている。ドーム部22,23の頂点には、それぞれ、アルミニウムやステンレス鋼等の金属によって形成された口金13,14が設けられている。一方の口金13は、貫通孔15を有しており、タンク10内からのガスの取り出しまたはタンク10内へのガスの補充に用いられる。他方の口金14は、ライナ20の補強ないし補強層形成時におけるライナの回転のために用いられる。口金14は省略することも可能である。
【0017】
補強層30は、ライナ20の周囲を覆う層であり、ライナ20を補強するための層である。補強層30は、シート層32とヘリカル層34とを備えている。シート層32のことを内層、ヘリカル層34のことを外層と呼ぶこともできる。
【0018】
シート層32は、ライナ20のストレート部21の外表面に、繊維束が配列されて構成されたシートを複数回巻回させて積層することによって構成されている。本実施形態におけるシートは、一方向に配列された繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させることによって構成されたシートである。具体的には、本実施形態におけるシートは、炭素繊維から成る繊維束にエポキシ樹脂を含浸させることによって構成されたものである。シートを構成する繊維束の繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維であってもよい。繊維束に含浸される樹脂は、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよい。本実施形態では、シート中の繊維束は、シートの巻回方向、すなわち、ストレート部21の周方向を一方向とし、その方向に沿って伸びた繊維束が配列されている。言い換えれば、繊維束は、シートの幅方向に直交する方向に沿って伸びた状態で配列されている。このようなシート層における繊維束の配列は、繊維束をフープ巻きして得られる配列に類似する。したがって、「シート層」のことを、「フープ層」と呼ぶこともできる。タンク10のような高圧のガスが貯蔵されるタンクの場合、一般的な繊維強化樹脂材の厚みと比べて補強層の厚みが厚いために、シート層を構成するシートの巻き数が多くなる傾向にある。よって、巻回されるシートのうちゆがんだシート上にシートが巻かれる可能性が高くなるために、ゆるみが発生しやすいというおそれがある。
【0019】
ヘリカル層34は、シート層32およびドーム部22,23に繊維束をヘリカル巻きすることによって構成されている。ヘリカル巻きに用いられる繊維束は、炭素繊維から成る繊維束にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させることによって構成されている。
【0020】
シート層32の厚みとヘリカル層34の厚みとは、それぞれ、タンク10に求められる耐圧性能や強度に応じて適宜設定される。
【0021】
A2.タンクの製造方法
図2は、タンク10の製造方法を示す工程図である。本実施形態の製造方法では、まず、ライナ20にシートを巻回してシート層32を形成するシート層形成工程が行われる(工程P100)。シート層形成工程の詳細については、後述する。
【0022】
シート層形成工程(工程P100)が行われた後、ライナ20上に繊維束をヘリカル巻きしてヘリカル層34を形成するヘリカル層形成工程が行われる(工程P200)。このヘリカル層形成工程では、繊維束が、タンク10の軸線AXに対して0〜30度の巻回角度でドーム部22,23およびシート層32を含む範囲に巻回される。つまり、このヘリカル層形成工程では、シート層32上と、ライナ20のうちのドーム部22,23上と、に繊維束が巻回される。
【0023】
ヘリカル層形成工程(工程P200)が行われた後、シート層32およびヘリカル層34を一体的に加熱硬化させるための熱硬化処理工程が行われる(工程P300)。以上で説明した一連の工程により、タンク10は完成する。
【0024】
図3は、シート層形成工程(工程P100)において用いられるシート巻回装置200を示す説明図である。また、図3では、シート32Pの表面の一部の領域R1およびR2を拡大して模式的に示している。シート32Pは、ライナ20に巻回されてシート層32を形成するためのシートである。領域R1およびR2については、後述する。シート巻回装置200は、搬送ローラ210と、ライナ回転部220と、カメラ230と、インジェクタ240と、制御部250とを備える。
【0025】
搬送ローラ210は、シート32Pを、Y軸方向に張力をかけた状態でライナ回転部220に向かって搬送する。搬送ローラ210は、Z軸方向に移動可能に構成され、Z軸方向に移動することによってシート32Pの張力を調整できる。本実施形態の製造方法では、シート32Pは、シート32Pを構成する繊維束が伸びた方向であるY軸方向を搬送方向として搬送される。繊維束が伸びた方向とは、言い換えると、繊維束の長尺方向のことである。
【0026】
ライナ回転部220は、ライナ20を支持した状態でライナ20の軸線AXを回転軸として回転させる。ライナ回転部220によるライナ20の回転は、搬送ローラ210の回転と同期して行われる。
【0027】
カメラ230は、搬送ローラ210とライナ回転部220との間において、搬送されているシート32PよりZ軸方向+側に配されている。カメラ230は、搬送されているシート32PのZ軸方向+側を向いた面を撮像する。カメラ230が撮像した画像のデータは、制御部250に送られる。本実施形態では、カメラ230は、CCDカメラである。カメラ230は、CMOSカメラであってもよい。本実施形態では、カメラ230は、課題を解決するための手段における撮像装置の下位概念に相当する。
【0028】
インジェクタ240は、カメラ230よりY軸方向+側、すなわち搬送方向の下流側において、搬送されているシート32PからZ軸方向+側に離れてシート32Pの幅方向であるX軸方向に沿って複数配置されている。インジェクタ240は、シート32PのZ軸方向+側を向いた面に向けて有機溶媒を吹き付けることができる。本実施形態では、インジェクタ240は、アセトンを吹き付ける。本実施形態では、インジェクタ240は、課題を解決するための手段における吹き付け部の下位概念に相当する。
【0029】
図4は、シート層形成工程(工程P100)におけるシート巻回装置200をZ軸方向+側から見た説明図である。図4では、理解を容易にするため、ライナ20と、シート32Pと、ライナ回転部220と、インジェクタ240と、のみを図示している。インジェクタ240は、X軸方向に沿って複数配置されている。本実施形態では、インジェクタ240は、X軸方向に沿って5つ配置されている。
【0030】
図3に戻り、制御部250は、シート巻回装置200の各部の動作を制御する。制御部250は、検出部260を備える。検出部260は、張力をかけられた状態にあるシート32Pのうち張力がかかっていない繊維束を、シート32Pにおいて張力が低下している張力低下部位として検出する。張力低下部位とは、すなわち、シート32Pのうち搬送方向に沿って伸ばされている繊維束と比べてたるんでいる繊維束のことである。
【0031】
図5は、シート巻回装置200がライナ20にシートを巻回してシート層32を形成するシート層形成工程(図2の工程P100)の詳細を示す工程図である。シート層形成工程(工程P100)が開始されると、搬送ローラ210によって張力をかけられた状態でシート32Pを搬送する搬送工程が行われる(工程P110)。搬送ローラ210によって搬送されるシート32Pは、ライナ回転部220によって回転されたライナ20によって巻き取られる。すなわち、搬送工程(工程P110)は、後述する巻回工程(工程P140)に移行するまで継続して行われている。
【0032】
搬送されているシート32Pにおいて張力低下部位を検出する検出工程が行われる(工程P120)。検出工程(工程P120)において、張力低下部位の検出は、検出部260により行われる。検出部260は、カメラ230により撮像された画像に写ったシート32Pにおける繊維束の配向角度に基づいて、張力低下部位を検出する。
【0033】
より具体的には、検出部260は、カメラ230により撮像された画像を処理することによって、各繊維束の位置、各繊維束の配向角度、繊維束の密度を算出してから、以下のように張力低下部位を検出する。すなわち、検出部260は、シート32Pが搬送される搬送方向に沿って伸びた仮想の基準線に対して、繊維束のうち予め設定された角度以上傾いて伸びた部分を有する繊維束が配置されるとともに繊維束の密度が予め設定された範囲から外れている位置を張力低下部位として検出する。本実施形態では、予め設定された角度とは、プラスマイナス3度の範囲である。
【0034】
検出工程において張力低下部位が検出された場合(工程P120:YES)には、有機溶媒を吹き付けて張力低下部位における張力の低下を回復させる張力回復工程が行われる(工程P130)。具体的には、張力回復工程(工程P130)では、以下のような処理が行われる。
【0035】
検出工程において張力低下部位が検出された場合(工程P120:YES)、シート32PのZ軸方向+側を向いた面のうち張力低下部位に向けて、インジェクタ240から有機溶媒が吹き付けられる。本実施形態では、張力低下部位に対する有機溶媒の吹き付けは、X軸方向に沿って複数配置されたインジェクタ240のうち、シート32Pの幅方向であるX軸方向において張力低下部位の位置と対応する位置に配置されたインジェクタ240によって行われる。言い換えれば、シート32Pのうち張力低下部位におけるX軸方向上の位置と、同じX軸方向上の位置に配置されたインジェクタ240によって、有機溶媒の吹き付けが行われる。本実施形態では、インジェクタ240が1箇所の張力低下部位に吹き付ける有機溶媒の量は、0.2gである。尚、0.2gに限らず、張力低下を回復可能な任意の量としてもよい。例えば、シート32Pの厚みに応じた量としてもよいし、シート32Pの材質に応じた量としてもよい。
【0036】
図3において、領域R1および領域R2における複数の実線は、シート32Pを構成する繊維束の配列を示している。領域R1は、シート32Pのうち張力低下部位を有する領域を示している。領域R2は、インジェクタ240により有機溶媒が吹き付けられた後の領域R1を示している。シート32Pのうち領域R1が含まれる領域が撮像された画像より検出部260が張力低下部位Dを検出すると、インジェクタ240から張力低下部位Dに向けて有機溶媒が吹き付けられる。領域R1では、有機溶媒が吹き付けられたことにより張力低下部位Dにおける繊維束Daが、搬送方向であるY軸方向に沿って伸ばされている繊維束Fとファンデルワールス力により凝集する。張力低下部位Dにおける繊維束Daと繊維束Fとが凝集することによって繊維束同士の相互作用により張力低下部位Dにおける張力の低下が回復する(領域R2参照)。有機溶媒が蒸発しても、張力低下部位Dにおける繊維束Daと繊維束Fとが絡み合って凝集した状態は維持されることから、ファンデルワールス力よりも強い力で凝集することとなるため、張力低下部位Dにおける張力が回復する。
【0037】
尚、検出工程において張力低下部位が検出されなかった場合(工程P120:NO)には、張力回復工程(工程P130)は行われない。
【0038】
張力回復工程(工程P130)が行われた後、もしくは、検出工程において張力低下部位が検出されなかった後(工程P120:NO)、搬送されたシート32Pをライナ20に巻回する巻回工程(工程P140)が行われる。張力回復工程(工程P130)が行われなかった場合には、巻回工程(工程P140)において、検出工程(工程P120)を経たシート32Pがライナ20に巻回される。これらの工程を経て、ライナ20に巻回されたシート32Pは、加熱硬化されることによってシート層32を形成する。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、シート32Pにおいて張力低下部位Dが検出された場合には張力回復工程(工程P130)により張力低下部位Dの張力を回復させることができる。このため、張力低下部位Dが回復されたシート32Pを巻回してシート層32を形成できるので、巻回後のタンク10のシート層32における繊維束の張力低下を抑制できる。また、説明したタンク10の製造方法は、特にライナ20のような樹脂製のライナにシートを直接巻き付ける際に効果的である。なぜなら、張力低下部位の発生を抑えるために巻回されるシートにかける張力を高めると、ライナがゆがんでしまうおそれがあるが、上記説明したタンク10の製造方法によれば、ライナ20をゆがませることなく、巻回後のタンク10のシート層32における繊維束の張力低下を抑制できるからである。
【0040】
また、実施形態におけるタンク10の製造方法では、有機溶媒の吹き付けは、X軸方向に沿って5つ配置されたインジェクタ240によって行われる。このため、シート32Pの幅方向であるX軸方向に沿ってインジェクタ240が複数配置されていることから、張力低下部位Dへの有機溶媒の吹き付けが外れることを抑制できる。
【0041】
また、実施形態におけるタンク10の製造方法では、張力低下部位Dに対する有機溶媒の吹き付けは、X軸方向に沿って複数配置されたインジェクタ240のうち、シート32Pの幅方向であるX軸方向において張力低下部位Dの位置と対応する位置に配置されたインジェクタ240によって行われる。このため、複数のインジェクタ240のうちシート32Pの幅方向において張力低下部位Dの位置と対応する位置に配置されたインジェクタ240に有機溶媒を吹き付けさせるため、張力低下部位Dとは異なる位置に有機溶媒が吹き付けられることを抑制できる。
【0042】
また、実施形態におけるタンク10の製造方法では、カメラ230により撮像された画像に写ったシート32Pにおける繊維束の配向角度に基づいて、張力低下部位Dを検出する。このため、シート32Pに接触することなく検出工程(工程P120)を行うことができるため、シート32Pに接触して行われる検出工程と比べて、検出工程(工程P120)によってシート32Pに損傷が生じることを防止できる。
【0043】
B.変形例:
B1.変形例1:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、カメラ230により撮像された画像に写ったシート32Pにおける繊維束の配向角度に基づいて張力低下部位が検出されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、シート32Pに非接触の状態でシート32Pにおける張力を測定できる非接触張力計による測定結果に基づいて張力低下部位が検出されてもよい。非接触張力計としては、搬送されているシート32Pに対して搬送方向と直交する方向(シート32Pの面に垂直な方向)から空気を当てることにより空気圧力値の変化によって張力を測定するもの、または、搬送されているシート32Pを振動させることでシート32Pから発生する音の周波数を測定して張力に換算するもの等がある。また、カメラ230により撮像された画像に写ったシート32Pにおける繊維束の配向角度と非接触張力計による測定結果とのうち両方に基づいて張力低下部位を検出した場合、繊維束の配向角度と非接触張力計による測定結果とのうち一方のみに基づいて張力低下部位を検出した場合に比べて、張力低下部位の検出精度を高めることができる。
【0044】
B2.変形例2:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、ライナ20に巻回されたシート32Pを加熱硬化してシート層32を形成していたが、本発明はこれに限られない。例えば、マンドレルにシート32Pを巻回したのち、マンドレルに巻回されたシート32Pを熱硬化させてシート層32を形成してもよい。このような場合、シート層32からマンドレルを分離したのち、シート層32にライナ20を嵌めることによって、ライナ20の外表面にシート層32が配される。このようなタンク10の製造方法は、特にライナ20のような樹脂製のライナにシートを直接巻き付ける際に効果的である。なぜなら、張力低下部位の発生を抑えるために巻回されるシートにかける張力を高めると、ライナがゆがんでしまうおそれがあるが、このようなタンク10の製造方法によれば、ライナ20をゆがませることなく、巻回後のタンク10のシート層32における繊維束の張力低下を抑制できるからである。
【0045】
B3.変形例3:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、インジェクタ240は、X軸方向に沿って5つ配置されていたが、本発明はこれに限られない。インジェクタ240は、搬送方向であるY軸方向から傾いた方向に沿って複数配置されていてもよい。また、インジェクタ240は、Y軸方向から見て互いに重ならない位置に複数配置されていてもよい。
【0046】
B4.変形例4:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、張力低下部位に対する有機溶媒の吹き付けは、X軸方向に沿って複数配置されたインジェクタ240のうち、シート32Pの幅方向であるX軸方向において張力低下部位Dの位置と対応する位置に配置されたインジェクタ240によって行われていたが、本発明はこれに限られない。張力低下部位に対する有機溶媒の吹き付けは、複数配置されたインジェクタ240のすべてから有機溶媒が吹き付けられることによって行われてもよい。また、X軸方向に移動可能に構成された1つのインジェクタ240が、張力低下部位DにおけるX軸方向上の位置と同じX軸方向上の位置に移動して、張力低下部位Dに対して有機溶媒の吹き付けを行ってもよい。
【0047】
B5.変形例5:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、シート32Pが搬送される搬送方向に沿って伸びた仮想の基準線に対する繊維束の傾きに基づいて、張力低下部位が検出されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、シート32Pを画定している辺のうち幅方向において向かい合った辺のいずれか一方に対する繊維束の傾きに基づいて、張力低下部位が検出されてもよい。
【0048】
B6.変形例6:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、シート32Pは、シート32Pを構成する繊維束が搬送方向に沿って伸ばされた状態で搬送されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、シートの長手方向から傾いた方向に沿って伸びた状態で配列されている繊維束から構成されるシートの場合、シート32Pを構成する繊維束が搬送方向から傾いた方向に配列された状態で搬送されてもよい。このような場合であっても、張力低下部位が回復されることによって、実施形態におけるタンク10の製造方法と同様の効果が得られる。
【0049】
B7.変形例7:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、ライナ20に巻回されたシート32Pを加熱硬化されることによってシート層32を形成していたが、本発明はこれに限られない。例えば、樹脂が含浸されていないシート32Pがライナ20に巻回された状態においてライナ20を型の中に配置し、型の中に樹脂を圧力を掛けて流し込むことによってシート層32を形成してもよい。
【0050】
B8.変形例8:
実施形態におけるタンク10の製造方法に用いられたシート32Pは、一方向に配列された繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させることによって構成されたシートであったが、本発明はこれに限られない。例えば、シート32Pは、二方向以上に配列された繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させることによって構成されたシートであってもよい。このようなシートの場合、配列されたそれぞれの繊維束の長尺方向に張力がかけられた状態でシートが搬送されることにより、検出工程において張力低下部位が検出されやすくなる。
【0051】
B9.変形例9:
実施形態におけるタンク10の製造方法では、インジェクタ240が吹き付ける有機溶媒は、アセトンであったが、本発明はこれに限られない。例えば、インジェクタ240が吹き付ける有機溶媒は、メチルアルコールやエチルアルコールなどのアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメチルスルホキシドなどのエーテル系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびビニルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、シリコーンオイル系溶媒、アミン系有機溶媒等から選択されてもよい。インジェクタ240が吹き付ける有機溶媒は、蒸発速度が速いものが好ましく、アセトン、ジエチルエーテルおよびクロロホルムなどが好ましい。インジェクタ240が吹き付ける有機溶媒は、沸点が摂氏100度以下または潜熱が水よりも小さいものが好ましい。インジェクタ240が吹き付けるものとして、有機溶媒を採用しているのは、水を用いた場合において起こり得る、ライナが吸水する、エポキシ樹脂が固まりにくくなる、エポキシ樹脂の加水分解が促進される、等の問題を回避するためである。
【0052】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…タンク
13…口金
14…口金
15…貫通孔
20…ライナ
21…ストレート部
22…ドーム部
23…ドーム部
30…補強層
32…シート層
32P…シート
34…ヘリカル層
200…シート巻回装置
210…搬送ローラ
220…ライナ回転部
230…カメラ
240…インジェクタ
250…制御部
260…検出部
AX…軸線
D…張力低下部位
Da…繊維束
F…繊維束
R1…領域
R2…領域
図1
図2
図3
図4
図5