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特開2018-202768インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202768(P2018-202768A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20181130BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20181130BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20181130BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B41J2/165
   B41J2/18
   B41J2/14 603
   B41J2/175 503
   B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-111995(P2017-111995)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】倉持 裕介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA25
2C056EC15
2C056EC32
2C056FA04
2C056HA05
2C056HA24
2C056KB16
2C057AF21
2C057AF72
2C057AG07
2C057AG47
2C057AG68
2C057AM31
2C057AP59
2C057AP60
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】非印字時のメンテナンス動作により、ノズル内に滞留しているインクを無駄に消費することなく新しいインクに置換し、次に吐出を行うときの液滴速度の低下を十分に抑える。
【解決手段】インク注入圧及びインク排出圧の何れか一方又は両方を制御し、ノズル22内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該インクをノズル22の吐出側出口の周囲部又はノズル22よりも内方(圧力室23内)に移動させ、その後にメニスカスを復帰させ、ノズル22内に滞留しているインクの少なくとも一部をノズル22よりも内方(圧力室23内)のインクに置換する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが注入される少なくとも1つの圧力室と、
前記圧力室の圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、
前記圧力室に連通し、該圧力室の圧力変動により該圧力室内から外部に吐出されるインクの流路となるノズルと、
前記圧力室に連通し、該ノズルよりも内方のインクを排出させて該圧力室への注入経路に戻す少なくとも1つの循環路と、
を備え、
前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該インクを該ノズルの吐出側出口の周囲部又は前記ノズルよりも内方に移動させ、その後に該メニスカスを復帰させ、該ノズル内に滞留しているインクの少なくとも一部を該ノズルよりも内方のインクに置換するメンテナンス動作を行うことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記圧力室に注入されるインクと該ノズルよりも内方のインクとの圧力差であるインク注入圧、及び、該ノズルよりも内方のインクと該圧力室から前記循環路へ排出されたインクとの圧力差であるインク排出圧の何れか一方又は両方を制御する圧力制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記圧力制御手段は、第1の圧力制御手段及び第2の圧力制御手段からなり、
前記第1の圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを前記ノズルよりも内方に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させ、
前記第2の圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを該ノズルの吐出側出口の周囲部に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを前記ノズルよりも内方に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記圧力制御手段は、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊したときには、該ノズルから巻き込まれ得る大きさの気泡の前記圧力室内における上昇速度よりも、該圧力室内における前記循環路に向かうインクの流速を速くしており、該ノズルから巻き込まれた気泡を該循環路に向けて流すことを特徴とする請求項2、3又は4記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記圧力制御手段は、前記循環路に向けて流した前記気泡を該循環路に排出した後に、前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記圧力制御手段は、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該ノズル内に滞留しているインクを前記ノズルよりも内方に移動させたとき、該ノズルから気泡が巻き込まれたときには、直ちに前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記ノズルの内壁部は、親水処理がなされていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを該ノズルの吐出側出口の周囲部に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
前記圧力制御手段は、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該ノズル内に滞留しているインクを該ノズルの吐出側出口の周囲部に移動させたとき、所望の体積のインクが該ノズルから溢れたときには、直ちに前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項2、3又は9の何れかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
前記所望の体積は、前記ノズルの容積以上であることを特徴とする請求項10記載のインクジェットヘッド。
【請求項12】
前記圧力制御手段は、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊したときには、該ノズルから溢れたインクを該ノズル内に引き戻すことにより、前記メニスカスを復帰させることを特徴とする請求項2、3又は9〜11の何れかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項13】
前記ノズルの吐出側出口の周囲部は、撥水処理がなされていることを特徴とする請求項1〜3又は9〜12の何れかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに移送されるインクが貯蔵されるインクタンクと、
前記インクタンク内のインクを、前記インクジェットヘッドにおいて前記圧力室が連通された共通インク室に移送する移送路と、
前記共通インク室に移送されたインクを回収する回収路とを備え、
前記圧力室から前記循環路へ排出されたインクは、前記回収路において、前記共通インク室から回収されたインクに合流されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関し、詳しくは、非印字時のメンテナンス動作により、ノズル内に滞留しているインクを無駄に消費することなく新しいインクに置換することにより、次に吐出を行うときの液滴速度の低下を十分に抑えることができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なプリンタ(インクジェット記録装置)において用いられるインクジェットヘッドとして、シアーモード(エッジ(エンド)シュータ、サイドシュータ)型、ベンドモード型など各種のインクジェットヘッドが提案されている。
【0003】
これら各種のインクジェットヘッドにおいては、インクを吐出しない非印字の時間が長くなると、インクを吐出するためのノズル内においてインク内粒子の沈降やインクの粘度上昇が生じ、次に吐出を行うときの液滴速度が低下してしまい、良好な印字を行うことができなくなる。このようなインク内粒子の沈降やインクの粘度上昇による問題を回避するために、非印字の時間が所定時間に達したときには、印字領域外にノズル内のインクを吐出して捨ててしまい、ノズル内のインクを置換するメンテナンス動作が提案されている。このようなメンテナンス動作により、インク内粒子の沈降やインクの粘度上昇による問題は回避されるが、インクを無駄に消費することになる。
【0004】
インクの無駄な消費を防止しつつ、インク内粒子の沈降やインクの粘度上昇による問題を回避するために、圧力室(インクチャネル)に注入されたインクをノズルの近傍から排出させ圧力室への注入経路に戻すノズル循環機構を備えたインクジェットヘッドが提案されている(特許文献1)。ノズル循環機構を設ける目的は、圧力室内の気泡の除去、インク内粒子の沈降防止、初期導入時のインク廃棄量の低減、デキャップの防止などである。
【0005】
さらに、インクジェットヘッドにおいては、いわゆるメニスカス揺らしを行うものが提案されている。メニスカス揺らしは、揺らし波形に基づいて圧力室の容積を一定の範囲で連続的に往復変動させ、インクを吐出せずに、ノズル内のインクが形成するメニスカス(屈曲した界面)を揺らすものである。
【0006】
インクを吐出しないとき(非印字時)に、ノズル循環及びメニスカス揺らしを行っておくことにより、ノズル内のインクが撹拌されるので、次に吐出(印字)を行うときに、沈降によるノズル詰まりやノズル内のインク増粘による吐出不良を抑制することができ、液滴速度の低下を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−143168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述のような、ノズル循環機構を備え、また、メニスカス揺らしを行うようにしたインクジェットヘッドにおいては、ノズル内のインクを吐出して捨ててしまうことに比較すれば、ノズル内部のインクの新しいインクへの置換が不十分であり、特にインクを吐出しない時間が長時間に亘る場合には、次に吐出を行うときの液滴速度の低下を十分に抑えることができない。
【0009】
そこで、本発明は、非印字時のメンテナンス動作により、ノズル内に滞留しているインクを無駄に消費することなく新しいインクに置換することにより、次に吐出を行うときの液滴速度の低下を十分に抑えることができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
【0010】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
1.
インクが注入される少なくとも1つの圧力室と、
前記圧力室の圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、
前記圧力室に連通し、該圧力室の圧力変動により該圧力室内から外部に吐出されるインクの流路となるノズルと、
前記圧力室に連通し、該ノズルよりも内方のインクを排出させて該圧力室への注入経路に戻す少なくとも1つの循環路と、
を備え、
前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該インクを該ノズルの吐出側出口の周囲部又は前記ノズルよりも内方に移動させ、その後に該メニスカスを復帰させ、該ノズル内に滞留しているインクの少なくとも一部を該ノズルよりも内方のインクに置換するメンテナンス動作を行うことを特徴とするインクジェットヘッド。
2.
前記圧力室に注入されるインクと該ノズルよりも内方のインクとの圧力差であるインク注入圧、及び、該ノズルよりも内方のインクと該圧力室から前記循環路へ排出されたインクとの圧力差であるインク排出圧の何れか一方又は両方を制御する圧力制御手段を備えることを特徴とする前記1記載のインクジェットヘッド。
3.
前記圧力制御手段は、第1の圧力制御手段及び第2の圧力制御手段からなり、
前記第1の圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを前記ノズルよりも内方に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させ、
前記第2の圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを該ノズルの吐出側出口の周囲部に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記2記載のインクジェットヘッド。
4.
前記圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを前記ノズルよりも内方に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記2記載のインクジェットヘッド。
5.
前記圧力制御手段は、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊したときには、該ノズルから巻き込まれ得る大きさの気泡の前記圧力室内における上昇速度よりも、該圧力室内における前記循環路に向かうインクの流速を速くしており、該ノズルから巻き込まれた気泡を該循環路に向けて流すことを特徴とする前記2、3又は4記載のインクジェットヘッド。
6.
前記圧力制御手段は、前記循環路に向けて流した前記気泡を該循環路に排出した後に、前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記5記載のインクジェットヘッド。
7.
前記圧力制御手段は、前記インク排出圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該ノズル内に滞留しているインクを前記ノズルよりも内方に移動させたとき、該ノズルから気泡が巻き込まれたときには、直ちに前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記2〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
8.
前記ノズルの内壁部は、親水処理がなされていることを特徴とする前記1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッド。
9.
前記圧力制御手段は、メンテナンス動作として、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクを該ノズルの吐出側出口の周囲部に移動させ、その後に前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記2記載のインクジェットヘッド。
10.
前記圧力制御手段は、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊し、該ノズル内に滞留しているインクを該ノズルの吐出側出口の周囲部に移動させたとき、所望の体積のインクが該ノズルから溢れたときには、直ちに前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記2、3又は9の何れかに記載のインクジェットヘッド。
11.
前記所望の体積は、前記ノズルの容積以上であることを特徴とする前記10記載のインクジェットヘッド。
12.
前記圧力制御手段は、前記インク注入圧を制御して、前記ノズル内に滞留しているインクが形成するメニスカスを破壊したときには、該ノズルから溢れたインクを該ノズル内に引き戻すことにより、前記メニスカスを復帰させることを特徴とする前記2、3又は9〜11の何れかに記載のインクジェットヘッド。
13.
前記ノズルの吐出側出口の周囲部は、撥水処理がなされていることを特徴とする前記1〜3又は9〜12の何れかに記載のインクジェットヘッド。
14.
前記1〜13の何れかに記載のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに移送されるインクが貯蔵されるインクタンクと、
前記インクタンク内のインクを、前記インクジェットヘッドにおいて前記圧力室が連通された共通インク室に移送する移送路と、
前記共通インク室に移送されたインクを回収する回収路とを備え、
前記圧力室から前記循環路へ排出されたインクは、前記回収路において、前記共通インク室から回収されたインクに合流されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非印字時のメンテナンス動作により、ノズル内に滞留しているインクを無駄に消費することなく新しいインクに置換することにより、次に吐出を行うときの液滴速度の低下を十分に抑えることができるインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す要部概略構成図
図2】本発明に係るインクジェット記録装置におけるインクの流路を示す流路図
図3】本発明に係るインクジェットヘッドのヘッドチップの斜視図
図4図3に示すインクジェットヘッドのヘッドチップの拡大断面図
図5図3に示すインクジェットヘッドのノズルプレートの平面図
図6図3に示すインクジェットヘッドのメンテナンス動作を概念的に示す断面図
図7図3に示すインクジェットヘッドのメンテナンス動作の他の例を概念的に示す断面図
図8図6に示すメンテナンス動作の例を示すフローチャート
図9】本発明に係るインクジェットヘッドの他の例を示す縦断面図
図10図9に示すインクジェットヘッドの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
〔インクジェット記録装置〕
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置100の一例を示す要部概略構成図であり、インクジェットヘッド1を一部断面で示している。
【0017】
インクジェット記録装置100は、搬送手段108によって一定方向(副走査方向)に搬送される記録媒体109上に、インクジェットヘッド1からインクを吐出してドットを形成して画像を記録する。いわゆるワンパス方式のインクジェット記録装置においては、インクジェットヘッド1は固定配置され、記録媒体109が搬送される過程で、ノズル22から記録媒体109に向けてインクを吐出し画像を記録する。また、いわゆるスキャン方式のインクジェット記録装置においては、インクジェットヘッド1は、キャリッジ機構107に搭載され、該キャリッジ機構107により主走査方向に往復移動される過程で、ノズル22から記録媒体109に向けてインクを吐出し画像を記録する。搬送手段108及びキャリッジ機構107は、制御部104によって駆動制御される。
【0018】
図1では、1つのインクジェットヘッド1のみを示しているが、一般にインクジェット記録装置100には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の各色インク用の複数のインクジェットヘッド1が搭載される。本実施形態に示すインクジェット記録装置100においては、インクを貯蔵するインクタンク101とインクジェットヘッド1の共通インク室41とが、移送路となるインク移送管102及び回収路となるインク返送管103によって連通されている。
【0019】
このインクジェットヘッド1は、インクタンク101と共通インク室41とが高低差を有するように配置される。インクジェットヘッド1は、インクタンク101が共通インク室41よりも高い位置となるように配置される。この高低差により、インクタンク101内のインクは、共通インク室41内のインクよりも位置エネルギーが高いので、インク移送管102を介して共通インク室41側に流れる。
【0020】
インク移送管102の途中には、インクジェット記録装置100の制御部104によって駆動制御される移送ポンプ105aが設けられている。この移送ポンプ105aが駆動することにより、インクタンク101内のインクが、インク移送管102を介してインクジェットヘッド1に移送される。
【0021】
さらに、インク移送管102の途中には、移送側サブタンク111aが設けられている。移送側サブタンク111aは、インクジェットヘッド1に移送されるインクが一旦貯留されるバッファ空間として構成されている。この移送側サブタンク111aを介して、圧力制御手段を構成する移送圧力制御ポンプ110aにより、インク移送管102内のインクの圧力を制御することができる。移送圧力制御ポンプ110aは、インクジェットヘッド1内の制御部104aによって制御される。
【0022】
また、インク返送管103の途中には、制御部104によって駆動制御される返送ポンプ105bが設けられている。この返送ポンプ105bが駆動することにより、インクジェットヘッド1内のインクが、インク返送管103を介してインクタンク101に返送される。
【0023】
さらに、インク返送管103の途中には、返送側サブタンク111bが設けられている。返送側サブタンク111bは、インクジェットヘッド1から返送されてきたインクが一旦貯留されるバッファ空間として構成されている。この返送側サブタンク111bを介して、圧力制御手段を構成する返送圧力制御ポンプ110bにより、インク返送管103内のインクの圧力を制御することができる。返送圧力制御ポンプ110bは、インクジェットヘッド1内の制御部104aによって制御される。
【0024】
なお、圧力制御手段は、移送圧力制御ポンプ110a及び返送圧力制御ポンプ110bから構成されるものに限定されず、これらの何れかによって構成されるものであってもよい。この場合には、返送圧力制御ポンプ110bが第1の圧力制御手段となり、移送圧力制御ポンプ110aが第2の圧力制御手段となる。
【0025】
インクタンク101は、格別限定されないが、タンクの底面に到達しない仕切り板101aによって、インク移送室101bとインク返送室101cとに仕切ることが好ましい。この場合、インク移送室101b内にインク移送管102の一端部を配置し、また、インク返送室101c内にインク返送管103の一端部を配置する。仕切り板101aは、インク返送室101cに返送されてきたインクに含まれる気泡が再度インク移送管102に流入しないように、インクを十分に脱気するために設けられる。気泡自体は浮力が高いので、気泡が仕切り板101aの下側を通過してインク移送室101bに流入することが抑制される。このような態様は、インクを循環使用する場合に好ましい態様である。
【0026】
〔インクジェットヘッド〕
次に、図1に示した本発明に係るインクジェットヘッド1の構成について説明する。
【0027】
本発明は、例えばシアーモード(エッジ(エンド)シュータ、サイドシュータ)型、ベンドモード型、いわゆるMEMS型など各種のインクジェットヘッドに適用することができる。すなわち、本発明に係るインクジェットヘッドは、これら各種のインクジェットヘッドとして構成することができ、以下に述べる実施形態における方式のインクジェットヘッドに限定されない。
【0028】
本実施形態に示すインクジェットヘッド1は、シアーモードヘッド(エンドシュータ型)として構成したものである。この実施形態において、インクジェットヘッド1は、インク吐出面1Sを鉛直下方に向けて設置されている。ただし、本発明のインクジェットヘッド1の使用状態は、インク吐出面1Sを鉛直下方に向ける状態に限定されず、傾けた状態で使用してもよい。本明細書において、「上」及び「下」は、「鉛直上方」及び「鉛直下方」を意味し、図1に示す使用状態の側面図における上側及び下側に対応する。
【0029】
インクジェットヘッド1は、図1に示すように、共通インク室41を構成するインクマニホールド4と、このインクマニホールド4に接着された配線基板3と、配線基板3の下面部に接着されたヘッドチップ2と、ヘッドチップ2の下面部に接着されたノズルプレート21とを有して構成されている。
【0030】
インクマニホールド4は、合成樹脂材料等によって、下面部に開口部4aを有する横長の箱型に形成されている。このインクマニホールド4は、開口部4aを、下面部に接着された配線基板3によって塞がれている。インクマニホールド4の内部空間は、インクタンク101から移送されたインクが貯留される共通インク室41となる。配線基板3は、例えばガラス基板である。この配線基板3には、図示しない電源回路にFPC基板を介して接続される図示しない配線パターンが形成されている。
【0031】
図2は、このインクジェットヘッド1におけるインクの流路を示す流路図である。なお、図2は、インクの循環路を示す流路図であるため、実際の高低差を表現していない。また、図2では、ノズルプレート21は図示を省略している。
【0032】
共通インク室41には、図1及び図2に示すように、この共通インク室41内にインクを供給する流路となるインク供給管5aが連設されている。このインク供給管5aは、配線基板3から遠い側(上側)において、共通インク室41に連通されている。このインク供給管5aの上端側には、接続部7aが設けられている。この接続部7aは、インクジェット記録装置100側の接続部106aに着脱可能に接続される。インクジェット記録装置100側の接続部106aは、インク移送管102に連通している。これにより、インクジェットヘッド1は、インクタンク101からのインクの移送及び共通インク室41へのインクの供給が可能となる。
【0033】
また、共通インク室41には、この共通インク室41内からインクを回収する流路となるインク回収管5bが連設されている。このインク回収管5bは、配線基板3から遠い側(上側)において、共通インク室41に連通されている。このインク回収管5bの上端側には、接続部7bが設けられている。この接続部7bは、インクジェット記録装置100側の接続部106bに着脱可能に接続される。インクジェット記録装置100側の接続部106bは、インク返送管103に連通している。これにより、インクジェットヘッド1は、共通インク室41からのインクの回収及びインクタンク101へのインクの返送が可能となる。
【0034】
このインクジェットヘッド1において、インク供給管5aから、インク回収管5bの途中の後述するバッファ空間部6に至る流路が、主流路F1となる。
【0035】
インク供給管5aとインク回収管5bとは、共通インク室41の長手方向の両端部に離して配置することが好ましい。本実施形態におけるインク供給管5aは、インクマニホールド4の上面側における図1中の左側の端部に配置され、また、インク回収管5bは、インクマニホールド4の上面側における図1中の右側の端部に配置されている。これにより、インク供給管5aから共通インク室41に供給されたインクを、インク回収管5bに向けて、共通インク室41内の全体に亘って流すことができる。従って、共通インク室41内にインクが滞留する部位が形成されにくく、インク中の気泡をより効率良く排除することができる。
【0036】
図3は、本発明に係るインクジェットヘッド1のヘッドチップ2の斜視図である。
図4は、図3に示すインクジェットヘッド1のヘッドチップ2の拡大断面図である。
【0037】
ヘッドチップ2には、図3及び図4に示すように、複数のインクチャネル(圧力室)23及び複数のダミーチャネル(擬似圧力室)25が形成されている。各インクチャネル23及び各ダミーチャネル25は、ヘッドチップ2の上面部から下面部に亘って穿設された透孔である。各インクチャネル23は、上方端が配線基板3に開設された注入孔31aを介して共通インク室41に連通している。各インクチャネル23には、インクタンク101内のインクの位置エネルギー及び移送ポンプ105aに起因し移送圧力制御ポンプ110aにより制御された圧力により、注入孔31aからインクが流入されて充填される。各インクチャネル23の下方端は、ノズル22を介して外方(下方)に連通している。このインクジェットヘッド1においては、ノズル22よりも内方は、インクチャネル23内となる。インクチャネル23とノズル22との間に連通路が存在する場合には、ノズル22よりも内方は、連通路内となる。各ダミーチャネル25は、上方端を配線基板3により閉蓋され、下方端をノズルプレート21により閉蓋されて、密閉された空気室となっている。各インクチャネル23及び各ダミーチャネル25は、一方向(図3及び図4中矢印X方向)に配列されてチャネル列を構成している。
【0038】
なお、チャネル列の数(列数)は、図3及び図4においては2列としているが、これに限定されず、3列又はそれ以上としてもよい。チャネル列の数(列数)を増やすことにより、インクチャネル23間のピッチを狭めることなく、記録媒体上に形成するドット間のピッチを狭めることができる。
【0039】
各インクチャネル23の両壁部(インクチャネル23とダミーチャネル25との間の隔壁)は、図4に示すように、圧力発生手段となる一対の圧電素子(駆動壁)24,24により構成されている。圧電素子24,24は、図示しない電源回路からFPC基板及び配線基板3の配線パターンを介して電圧を印加されることによって、せん断変形する。インクチャネル23の両壁部をなす圧電素子24、24がせん断変形することにより、インクチャネル23の圧力変動(膨張による減圧又は収縮による増圧)が生じる。インクチャネル23の圧力変動(減圧又は増圧)により、ノズル22よりも内方、すなわち、インクチャネル23内のインクに圧力が付与され、このインクがノズル22を介して吐出される。
【0040】
圧電素子24,24は、一つのインクチャネル23あたり2枚(一対)が設けられており、各インクチャネル23それぞれの両壁部をなしている。一のインクチャネル23の壁部を構成する圧電素子24と、隣接するインクチャネル23の壁部を構成する圧電素子24との間には空隙があり、この空隙がダミーチャネル25である。したがって、各インクチャネル23は、独立して駆動(減圧又は増圧)することができる。
【0041】
ダミーチャネル25は、少なくともインクチャネル23を挟んで両隣に位置し、隣接するインクチャネル23の容積変動に伴って容積変動を生ずる。この実施形態においては、インクチャネル23とダミーチャネル25とが1つずつ交互に配列されることにより、ダミーチャネル25が各インクチャネル23を挟んで両隣に位置する状態になっている。
【0042】
なお、このインクジェットヘッド1は、ダミーチャネル25を設けずに、隣接するインクチャネル23,23が1枚の駆動壁24を共用するように構成してもよい。この場合には、各インクチャネル23が独立して駆動(膨張又は収縮)することはできないので、いわゆる3サイクル駆動を行う。
【0043】
ヘッドチップ2に形成されるインクチャネル23は、その数は特に問わない。本実施形態に示すヘッドチップ2は、複数のインクチャネル23が、ヘッドチップ2の長手方向である図3及び図4中X方向に沿う複数列に配列されている。また、インクチャネル23内のインクに吐出圧力を付与する圧力発生手段の具体的な構成は問わず、公知の種々の構成を採用することができる。
【0044】
そして、ヘッドチップ2には、導入路425を形成してもよい。この導入路425は、各インクチャネル23及び各ダミーチャネル25が構成するチャネル列の一端側の該チャネル列の外側に位置して設けられる。この導入路425は、ヘッドチップ2の上面部から下面部に亘って穿設された透孔であり、横断面開口面積が、1つのインクチャネル23の横断面開口面積よりも大きくなっている。この導入路425は、上方端が配線基板3に開設された導入孔31cを介して共通インク室41に連通しており、インクタンク101内のインクの位置エネルギー及び移送ポンプ105aに起因し移送圧力制御ポンプ110aにより制御された圧力により、導入孔31cからインクが流入される。
【0045】
図5は、図3に示すインクジェットヘッド1のノズルプレート21の平面図である。
【0046】
ヘッドチップ2の下面部に接着された平板状のノズルプレート21には、図3図5に示すように、各インクチャネル23に対応された複数のノズル22が穿設されている。ノズル22は、インクチャネル23を外部(下方)に連通させる透孔である。各インクチャネル23内のインクは、圧電素子24の作用によって吐出圧力を付与され、ノズル22を通って外部(下方)の記録媒体に向けて吐出される。すなわち、ノズル22は、各インクチャネル23内から外部(下方)に吐出されるインクの流路となる。ノズルプレート21の下面部がインク吐出面1Sとなる。
【0047】
ノズルプレート21は、シリコン材料、ポリイミド樹脂材料又はその他の有機物材料、ステンレス、ニッケル又はその他の金属材料により形成することが好ましい。価格の点(安価であること)では、ステンレス、ポリイミド樹脂材料が優れており、加工の容易性では、ステンレス、ポリイミド樹脂材料が優れており、加工精度では、シリコン材料が優れており、化学的安定性では、ポリイミド樹脂材料が優れている。シリコン材料は硬質材料であるが、インクチャネル23の付近を薄く作成すれば、圧電素子24、24の駆動による隣接するインクチャネル23へのクロストークを防止することができる。
【0048】
このインクジェットヘッド1は、インクチャネル23に注入されたインクをノズル22の近傍から排出させてインクチャネル23への注入経路に戻すノズル循環機構を備えている。各インクチャネル23には、図3図4及び図5に示すように、それぞれ2本の個別インク循環路26a、26aが連通されている。個別インク循環路26a、26aは、インクチャネル23の横断面長手方向の両端部においてインクチャネル23に連通している。インクチャネル23の両端部近傍は、気泡が残留することが多い箇所であるため、個別インク循環路26a、26aをインクチャネル23の横断面長手方向の両端部に設けることは好ましい。なお、個別インク循環路26a、26aは、インクチャネル23の何れの箇所においてインクチャネル23に連通するようにしてもよい。また、1個のインクチャネル23に対する個別インク循環路26aの本数は、増減してもよい。
【0049】
本実施形態において、個別インク循環路26a、26aは、ノズルプレート21の上面部にノズル22近傍に始端部を有して形成された流路形成溝28が、ヘッドチップ2の下面部によって閉蓋されることにより構成されている。
【0050】
このように、個別インク循環路26a、26aを、ノズルプレート21の上面部に形成した流路形成溝28及びヘッドチップ2の下面部により構成し、インクチャネル23の下側に設けることにより、インクチャネル23の深さ方向の全体に渡る流路を形成することができ、インクチャネル23の端部近傍に残留する気泡を良好に除去することができる。また、この場合、ノズルプレート21のみの加工によって個別インク循環路26a、26aを形成できるので、作製が容易である。
【0051】
導入路425を設けた場合には、この導入路425には、図5に示すように、2本の導入溝425a、425aが連通される。導入溝425a、425aは、導入路425の両側部において導入路425に連通している。なお、導入溝425a、425aは、導入路425の何れの箇所において導入路425に連通するようにしてもよい。また、1個の導入路425に対する導入溝425a、425aの本数は、増減してもよい。
【0052】
本実施形態において、導入溝425a、425aは、ノズルプレート21の上面部に導入路425近傍に始端部を有して形成され、ヘッドチップ2の下面部により閉蓋されて流路を構成している。
【0053】
このように、導入溝425a、425aをノズルプレート21の上面部に形成し、ヘッドチップ2の下面部とにより流路を構成することにより、ノズルプレート21のみの加工によって流路を形成できるので、作製が容易である。
【0054】
そして、図3図5に示すように、ヘッドチップ2の下面部には、共通インク循環路421が形成されている。共通インク循環路421は、ヘッドチップ2の下面部に形成された溝とノズルプレート21の上面部に形成された溝422とが突き合わされることにより構成されている。このようにヘッドチップ2の下面部及びノズルプレート21の上面部の双方に形成した溝により共通インク循環路421を構成することにより、共通インク循環路421の横断面開口面積を拡げて流路抵抗を下げることができ、十分なインク流量を確保することができる。ヘッドチップ2の厚さ(高さ)はノズルプレート21の厚さよりも厚いので、共通インク循環路421を構成するヘッドチップ2の下面部の溝は、十分な深さとすることができる。
【0055】
共通インク循環路421は、チャネル列の方向(X方向)に形成された複数本の流路から構成されている。各インクチャネル23に連通した各個別インク循環路26a、26aは、共通インク循環路421に連通することにより合流している。各インクチャネル23内と共通インク循環路421内との間の圧力差により、各インクチャネル23から共通インク循環路421へのインクの流動が生じる。また、導入路425を設けた場合には、導入溝425a、425aは、共通インク循環路421に連通している。導入路425内と共通インク循環路421内との間の圧力差により、導入路425から共通インク循環路421へのインクの流動が生じる。そして、これら流動が合流して共通インク循環路421内のインク流動が生じる。
【0056】
共通インク循環路421は、所望の流路抵抗に設定するために、共通インク循環路421を構成する流路の本数や、その構造を適宜変更することができる。共通インク循環路421を構成する流路の本数は、流路抵抗の設定に応じて、適宜増減することができる。また、ヘッドチップ2の下面部の溝のみで十分なインク流量が確保できる場合には、ノズルプレート21の上面部に溝422を設けずに、ヘッドチップ2の下面部の溝をノズルプレート21の上面部により閉蓋して共通インク循環路421を構成してもよい。ヘッドチップ2の下面部の溝は、十分な深さとすることができるからである。なお、ノズルプレート21の上面部の溝422のみで十分なインク流量が確保できる場合には、ヘッドチップ2の下面部に溝を設けずに、ノズルプレート21の上面部の溝422をヘッドチップ2の下面部により閉蓋して共通インク循環路421を構成してもよい。
【0057】
図2図5に示すように、共通インク循環路421の他端側は、ヘッドチップ2に形成された排出チャネル424の下方端に連通されている。排出チャネル424は、各インクチャネル23及び各ダミーチャネル25が構成するチャネル列の他端側の該チャネル列の外側に位置して設けられている。なお、導入路425を設けた場合には、排出チャネル424の横断面開口面積は、導入路425の横断面開口面積の1.5倍〜2倍程度となされる。排出チャネル424内のインク流量は、導入路425内のインク流量よりも、各インクチャネル23を経たインクが合流している分だけ多くなるので、流路抵抗を増大させないために排出チャネル424の横断面開口面積を大きくするのである。
【0058】
なお、導入路は、複数のインクチャネル23と同一の構造の透孔から構成することもできる。すなわち、ヘッドチップ2の一端側に、印字領域から外れてインクチャネル23と同一の構造の透孔を複数作成し、これらの下にはノズル22を設けず個別インク循環路26aのみを設ければ、これら複数の透孔は、導入路として機能する。この場合には、複数の透孔の横断面積の合計を、前述した導入路425の横断面積に等しくすることが好ましい。この構成では、導入路を、インクチャネル23と同一の工程内容により各インクチャネル23の作成工程に連続した工程で作成することができ、作成が容易である。
【0059】
図1及び図2に示すように、インクマニホールド4内には、排出チャネル424の上方に位置して、インク排出室412が設けられている。インク排出室412は、図1に示すように、インクマニホールド4内において、共通インク室41に隣接して設けられている。インク排出室412は、共通インク室41に対しては、隔壁45によって分離されている。隔壁45は、インクマニホールド4に一体的に形成することができる。
【0060】
このようにして、注入孔31aからインクチャネル23に流入されたインクの一部(ノズル22から吐出されないインク)は、個別インク循環路26a、26aから共通インク循環路421を経て、排出チャネル424に至り、配線基板3に形成された排出孔31bを通って、インク排出室412に至る。
【0061】
また、導入孔31cから導入路425に流入されたインクは、導入溝425a、425a及び共通インク循環路421を経て排出チャネル424に至り、排出孔31bを通ってインク排出室412に至る。
【0062】
このインクジェットヘッド1において、導入路425は、各インクチャネル23よりも、共通インク循環路421内のインク流動における上流側に位置して設けることが好ましい。導入路425を各インクチャネル23よりも共通インク循環路421内のインク流動における上流側に位置させると、共通インク循環路421の一端側(最上流部)におけるインク流量を多くすることができ、共通インク循環路421内及び各インクチャネル23内の気泡の除去やインク内粒子の沈降防止等をより確実に行うことができる。
【0063】
また、このインクジェットヘッド1においては、導入路425から共通インク循環路421への流動により、導入路425を設けない場合に比較して、共通インク循環路421内の流速が速められている。そのため、共通インク循環路421内のインクが十分な流速となされ、ノズル22からのインクの吐出が良好に行えて、かつ、共通インク循環路421内及び各インクチャネル23内の気泡の除去やインク内粒子の沈降防止等を確実に行うことができる。
【0064】
さらに、前述したように、導入路425の横断面開口面積を、1つのインクチャネル23の横断面開口面積よりも大きくした場合には、共通インク室41から導入路425を経て共通インク循環路421に至る流路の流路抵抗は、共通インク室41から1つのインクチャネル23を経て共通インク循環路421に至る流路の流路抵抗よりも小さい。したがって、導入路425から共通インク循環路421に至る流路の流量を、1つのインクチャネル23から共通インク循環路421に至る流路の流量よりも多くすることができる。そのため、共通インク循環路421の一端側(最上流部)におけるインク流量をより確実に多くすることができ、共通インク循環路421内及び各インクチャネル23内の気泡の除去やインク内粒子の沈降防止等をより確実に行うことができる。
【0065】
このインクジェットヘッド1においては、導入路425内及び各インクチャネル23内から共通インク循環路421を経てインク排出室412に至る流路が形成されているので、これらの流路抵抗の総和を考慮して、この条件においてノズル22からのメニスカスブレイクが生じないように、インクタンク101と共通インク室41との高低差、移送ポンプ105a及び返送ポンプ105bが与える圧力等の条件が決定される。また、各個別インク循環路26a、26aの流路抵抗の合計は、ノズル22からのメニスカスブレイクが生じないように、インクタンク101と共通インク室41との高低差、移送ポンプ105a及び返送ポンプ105bが与える圧力等の条件を勘案して規定される。各個別インク循環路26a、26aは、その流路抵抗の合計が既定値から外れない限りにおいて、適宜に開口面積及び長さを設定することができる。
【0066】
この実施形態においては、導入路425へのインクの流入は、各インクチャネル23への注入と同様に、共通インク室41から行われる。この態様は、各インクチャネル23及び導入路425をヘッドチップ2に並列的に形成するだけで実現できるので、作成が容易である。
【0067】
そして、図1及び図2に示すように、インク排出室412には、循環路連結部5dを介して、インク排出室412内からインクを排出する流路をなすインク排出管5cが接続されている。循環路連結部5dは、排出チャネル424の上方側に位置して、各インクチャネル23及び各ダミーチャネル25が構成するチャネル列の他端側の該チャネル列の外側に位置して設けられている。インク排出管5cの上端側は、インク回収管5bに合流している。インク回収管5bとインク排出管5cとは、合流箱61に接続されることによって合流している。
【0068】
合流箱61は、合成樹脂材料や金属材料から一体的に構成されており、内部にバッファ空間部6が形成されている。合流箱61の外面には、バッファ空間部6に至る第1乃至第3の開口部48a,48b,48cが形成されている。第1の開口部48aからバッファ空間部6を経て第3の開口部48cに至る流路は、インク回収管5bの中途部に介在されている。実装状態としては、インク回収管5bを中途部において上流側及び下流側に分け、上流側を第1の開口部48aに接続させ、下流側を第3の開口部48cに接続させることになる。そして、第2の開口部48bには、インク排出管5cを接続させる。
【0069】
このように、本実施形態に示すインクジェットヘッド1は、インク回収管5b及びインク排出管5cが合流箱61によって合流されているため、インクジェット記録装置100側の配管等との接続部位は、インク供給管5a(接続部7a)及びインク回収管5b(接続部7b)の2箇所のみで済む。従って、インクジェット記録装置100側の配管等との接続部位の数は、一般的なインクジェットヘッドに対して増加せず、接続作業が煩雑化することはない。すなわち、本実施形態のインクジェットヘッド1は、既設装置を設計変更する必要なく、接続部7a、7bの2箇所のみの接続によって交換及び設置が可能である。
【0070】
このインクジェットヘッド1において、導入路425及び個別インク循環路26a、26aから、共通インク循環路421、排出チャネル424、排出孔31b、インク排出室412及びインク排出管5cを経て、バッファ空間部6に至る流路が、循環路423となる。この循環路423は、導入路425及びインクチャネル23に連通し、これら導入路425及びインクチャネル23内のインクを排出させ、バッファ空間部6においてインク回収管5bに合流させる流路である。ただし、循環路423は、ノズル22近傍の個別インク循環路26a、26aからインクを排出し、このインクをインクチャネル23への注入経路に戻すものであれば、途中の経路は何ら限定する必要はない。そして、導入孔31c及び各注入孔31aを経て、循環路423までが、副流路F2となる(図2参照)。
【0071】
なお、循環路423は、チャネル列の一端側の該チャネル列の外側及び該チャネル列の他端側の該チャネル列の外側の両方に設けてもよい。この場合には、排出チャネル424及びインク排出室412をチャネル列の両方に設け、それぞれにインク排出管5cを接続する。これらインク排出管5cは、それぞれインク回収管5bに合流される。この場合には、導入路425を設ける場合には、チャネル列の中央位置に設けることが望ましい。
【0072】
循環路423は各インクチャネル23に対応した個別インク循環路26a、26aの全てを通過する流路として構成されているため、インクチャネル23の高密度化に伴い、循環路423全体の流路抵抗は大きくなっている。従って、インク排出管5cをインク回収管5bに合流させても、インク供給管5aからインク回収管5bを経る主流路F1の流量が多く、各注入孔31aから循環路423に至る副流路F2の流量が少ないために、これらが円滑に合流しないことが考えられる。このインクジェットヘッド1においては、主流路F1と副流路F2との合流(インク排出管5cとインク回収管5bとの合流)を、バッファ空間部6において行い、また、流量調整部材8を使用することにより、これら主流路F1及び副流路F2の流量が異なっても、円滑に合流させることができる。
【0073】
流量調整部材8は、インク回収管5b内に配置される円筒状部材であり、インク回収管5bの流路径を狭める。流量調整部材8は、主流路F1と副流路F2との流路抵抗の差に相当する圧力損失Δpを、主流路F1に付与する。このインクジェットヘッド1においては、流量調整部材8により、主流路F1の流路抵抗と、副流路F2の流路抵抗とを均衡させることにより、インク供給管5a内のインク圧力p0によって、容易に主流路F1及び副流路F2の両方に均等にインクを流すことができる。
【0074】
上述のようなインクジェットヘッド1及びこれを備えたインクジェット記録装置100によれば、インク供給管5aからインクを供給するだけで、共通インク室41内の残留気泡を主流路F1を経てインク回収管5bから排出させるのみならず、ノズル22から引き込まれたインクチャネル23近傍の気泡をも、副流路F2を経てインク排出管5cから迅速に排出させることができる。よって、インクマニホールド4内の全体(共通インク室41内及びインクチャネル23の近傍)の残留気泡除去を効率的に行うことができる。また、沈降し易い粒子や顔料等が含まれているインクを使用する場合でも、画像記録中の個別インク循環路26a、26a及び共通インク循環路421における粒子や顔料等の沈降を効果的に抑制して、インクの濃度偏差を抑制することができる。
【0075】
〔メンテナンス動作〕
このインクジェットヘッド1は、記録媒体へのインクの吐出を行わないときには、ノズル22内のインク内粒子の沈降及びインクの粘度増加を防止するために、メンテナンス動作を行う。メンテナンス動作は、圧力制御手段(移送圧力制御ポンプ110a及び返送圧力制御ポンプ110b)により、インクチャネル23に注入されるインク(共通インク室41内のインク)とインクチャネル23内のインクとの圧力差であるインク注入圧、及び、インクチャネル23内のインクとインクチャネル23から循環路423へ排出されたインクとの圧力差であるインク排出圧の何れか一方又は両方を制御することによって行う。
【0076】
図6は、図3に示すインクジェットヘッド1のメンテナンス動作を概念的に示す断面図である。図6は、返送圧力制御ポンプ110bにより、インク排出圧を制御するメンテナンス動作を示している。
【0077】
このメンテナンス動作は、返送圧力制御ポンプ110bにより、メニスカスブレイク水頭値よりも大きな負圧を発生させ、インク排出圧を強めて、図6(a)に示すように、ノズル22内に滞留しているインクの全てをインクチャネル23内に引き込む。このとき、ノズル22内に滞留していたインクは、メニスカスが破壊されて、インクチャネル23内に移動され、ノズル22内は空になる。このとき、ノズル22からは、外方の空気が気泡としてインクとともにインクチャネル23内に引き込まれることが多い。
【0078】
ノズル22内のインクが形成するメニスカス(屈曲した界面)は、通常は、その外周部がノズル22の出口側の周縁部(エッジ部)に固定されている。したがって、メニスカスの破壊とは、メニスカスの外周部が、ノズル22の出口側の周縁部から外れることをいう。このようにメニスカスが破壊されると、その形状も滑らかな曲面に維持されないことが多く、このとき、外方の空気が気泡として引き込まれる。
【0079】
その後に、インク排出圧を通常の強さに戻すと、図6(b)に示すように、ノズル22内のインクが形成するメニスカスが復帰される。このようにメニスカスが復帰したとき、ノズル22内に滞留していたインクは、十分にインクチャネル23内の新しいインクに置換されている。
【0080】
記録媒体へのインクの吐出が行われない状態(非印刷状態)が続く場合には、メンテナンス動作を所定の一定周期で繰返し行う。メンテナンス動作を所定の一定周期で繰返し行うことにより、ノズル22内のインク内粒子の沈降及びインクの粘度増加が防止される。
【0081】
なお、インク移送管102に移送ポンプ105a及び移送圧力制御ポンプ110aが設けられている場合には、この移送ポンプ105a及び移送圧力制御ポンプ110aにより、インク排出圧を制御してもよい。この場合には、通常は正圧を発生している移送ポンプ105aに負圧を発生させ、インク注入圧を負圧にしてインクチャネル23内のインクを共通インク室41に逆流させることにより、図6(a)に示すように、ノズル22内に滞留しているインクの全てをインクチャネル23内に引き込むことができる。その後、移送ポンプ105aを通常の状態に戻すと、図6(b)に示すように、インクチャネル23からノズル22内にインクが戻り、ノズル22内のインクが形成するメニスカスが復帰される。
【0082】
このインクジェットヘッド1においては、インク排出圧又はインク注入圧の制御のみで、ノズル22内に滞留しているインクを無駄に消費することなく、新しいインクに置換することができる。このインクジェットヘッド1においては、非印刷状態が続いた後、次に吐出を行って印刷を開始する場合でも、初吐出の液滴速度の低下を十分に抑えることができる。
【0083】
また、メンテナンス動作においては圧電素子24を駆動する必要がないので、メンテナンス動作中にヘッドチップ2の温度が上昇することがなく、温度変化によるインクの粘度変化も生じない。また、メニスカス揺らしのような特別な駆動データを用意する必要がない。
【0084】
メンテナンス動作を実行する周期及びメンテナンス動作の継続時間(強い負圧を維持する時間)は、使用しているインクの物性に応じて設定することが好ましい。
【0085】
メンテナンス動作により引き込まれた気泡は、循環路423に排出することが好ましい。気泡がインクチャネル23内に留まっていると、この気泡が再びノズル22内に浸入する虞があるからである。そのためには、ノズル22から巻き込まれ得る最大の大きさ(ノズル22の直径に相当する大きさ)の気泡のインクチャネル23内における上昇速度よりも、インクチャネル23内における循環路423に向かうインクの流速を速くしておくことが好ましい。循環路423に向かう流速が速いことにより、ノズル22から巻き込まれた気泡は、循環路423に向けて流され、循環路423に排出される。
【0086】
なお、インクチャネル23内における気泡の上昇速度は、気泡の径及びインクの粘度等をパラメータとして、ナビエ・ストークス方程式によって求められる。インクチャネル23内のインクの流速は、インクチャネル23へのインクの注入量と排出量との差をインクチャネル23の横断面積で除することによって求められる。
【0087】
メニスカスの復帰は、ノズル22から引き込まれた気泡が循環路423に排出された後に行うことが好ましい。このようにすれば、ノズル22から引き込まれた気泡がインクチャネル23内に残留することを確実に防止することができる。
【0088】
また、メニスカスの復帰は、ノズル22から気泡が巻き込まれたときに、直ちに行ってもよい。このようにすれば、ノズル22から引き込まれた気泡がインクチャネル23内を上昇する前に、循環路423に向けて流すことができる。
【0089】
ノズル22の内壁部は、親水処理を施しておくことが好ましい。ノズル22の内壁部を親水処理しておくことにより、ノズル22の内壁部にインクが濡れ広がり易くなり、メニスカスの復帰が迅速に行えるようになる。
【0090】
図7は、図3に示すインクジェットヘッド1のメンテナンス動作の他の例を概念的に示す断面図である。図7は、移送圧力制御ポンプ110aにより、インク注入圧を制御するメンテナンス動作を示している。
【0091】
このインクジェットヘッド1におけるメンテナンス動作は、インク移送管102に設けた移送圧力制御ポンプ110aにより、メニスカスブレイク水頭値よりも大きな正圧を発生させ、インク注入圧を強めて、図7(a)に示すように、ノズル22内に滞留しているインクを含む所望の体積のインクをノズル22から溢れさせるようにしてもよい。このとき、ノズル22内に滞留していたインクは、メニスカスが破壊されて、ノズル22の吐出側出口の周囲部に移動される。ノズル22の周囲部に移動されたインクは、表面張力によってインク吐出面1Sに付着し、滴状にまとまってその場所に留まる。
【0092】
その後に、インク注入圧を通常の強さに戻すと、インクチャネル23内及び循環路423内には負圧がかかっているので、図7(b)に示すように、ノズル22の周囲部のインクがノズル22内に引き戻され、ノズル22内のインクが形成するメニスカスが復帰される。このようにメニスカスが復帰したとき、ノズル22内に滞留していたインクは、十分にインクチャネル23内の新しいインクに置換されている。
【0093】
メニスカスを復帰させるときにノズル22内に引き戻せるインク量は、インクの循環流量(インクチャネル23内の圧力)、溢れたインクのインク吐出面1Sに対する接触角、インクの表面張力に依存するので、これらを勘案して適宜に設定することができる。メンテナンス動作を実行する周期及びメンテナンス動作の継続時間(強い正圧を維持する時間)、ノズル22からのインクの溢れ量は、使用しているインクの物性に応じて設定することが好ましい。
【0094】
記録媒体へのインクの吐出が行われない状態(非印刷状態)が続く場合には、メンテナンス動作を所定の一定周期で繰返し行う。メンテナンス動作を所定の一定周期で繰返し行うことにより、ノズル22内のインク内粒子の沈降及びインクの粘度増加が防止される。
【0095】
なお、インク返送管103に設けられている返送ポンプ105b及び返送圧力制御ポンプ110bにより、インク注入圧を制御してもよい。この場合には、通常は負圧を発生している返送ポンプ105bに正圧を発生させ、インク排出圧を正圧にして循環路423内のインクをインクチャネル23に逆流させることにより、図7(a)に示すように、ノズル22内に滞留しているインクを含む所望の体積のインクをノズル22から溢れさせることができる。その後、返送ポンプ105bを通常の状態に戻すと、図7(b)に示すように、ノズル22内のインクが形成するメニスカスが復帰される。
【0096】
このインクジェットヘッド1においても、インク排出圧又はインク注入圧の制御のみで、ノズル22内に滞留しているインクを無駄に消費することなく、新しいインクに置換することができる。このインクジェットヘッド1においては、非印刷状態が続いた後、次に吐出を行って印刷を開始する場合でも、初吐出の液滴速度の低下を十分に抑えることができる。
【0097】
メンテナンス動作においてノズル22から溢れさせるインクの体積は、ノズル22の容積以上とすることが好ましい。ノズル22の容積以上の体積のインクがノズル22から溢れることにより、ノズル22内のインクが全て新しいインクに置換されるので、その後にノズル22の周囲部からインクが戻っても、ノズル22内に新しいインクが残る割合が大きくなるからである。
【0098】
メニスカスの復帰は、所望の体積のインクがノズル22から溢れたときに、直ちに行うことが好ましい。ノズル22の周囲部に長い時間に亘ってインクを付着させておくと、このインクが記録媒体等に移ってしまう確率が大きくなるからである。
【0099】
インク吐出面1Sは、少なくともノズル22の吐出側出口の周囲部に、撥水処理を施しておくことが好ましい。撥水処理により、インク吐出面1Sに過度にインクが濡れ広がることを抑制できるので、その後のノズル22内への回収が容易となるからである。また、撥水処理により、濡れ広がり易いインクの使用が可能となるので、幅広いインクに対応できるようになる。
【0100】
このようなメンテナンス動作は、インク移送管102に設けられた移送ポンプ105a及びインク返送管103に設けられた返送ポンプ105bを同時に用いて行ってもよい。この場合には、返送ポンプ105b及び移送ポンプ105aも圧力制御手段となる。また、返送ポンプ105b及び返送圧力制御ポンプ110bが第1の圧力制御手段となり、移送ポンプ105a及び移送圧力制御ポンプ110aが第2の圧力制御手段となる。
【0101】
メンテナンス動作において、返送ポンプ105b及び返送圧力制御ポンプ110bは、インク排出圧を制御して、ノズル22内に滞留しているインクをインクチャネル23内に移動させ、その後にメニスカスを復帰させることが好ましい。また、移送ポンプ105a及び移送圧力制御ポンプ110aは、インク注入圧を制御して、ノズル22内に滞留しているインクをノズル22の吐出側出口の周囲部に移動させ、その後にメニスカスを復帰させることが好ましい。
【0102】
メンテナンス動作において、インク排出圧又はインク注入圧の制御は、ヘッドチップ2の温度上昇が問題とならない範囲においては、圧力発生手段である圧電素子24,24によって行ってもよい。また、インク排出圧又はインク注入圧の制御は、圧力発生手段(圧電素子24,24)と圧力制御手段(移送圧力制御ポンプ110a及び返送圧力制御ポンプ110b)とを併用して行うことができ、さらに、移送ポンプ105a及び返送ポンプ105bも併用して行うことができる。これらの場合には、圧力制御手段(移送圧力制御ポンプ110a及び返送圧力制御ポンプ110b)の負担を軽減することができる。
【0103】
なお、インクジェットヘッド1内におけるインク圧力は、インクの流路にT字分岐を設け、分岐させた先においてマノメータにより測定することができる。
【0104】
図8は、図6に示すメンテナンス動作の例を示すフローチャートである。
【0105】
図6に示したメンテナンス動作は、例えば、図8に示すように、制御部104aが返送圧力制御ポンプ110bに対する所定の制御を実行することによって行われる。図8は、メンテナンス動作のためのサブルーチンを示している。
【0106】
動作を開始し(ステップst1)、インクジェットヘッド1により印字が行われているか否かを判断する(ステップst2)。
【0107】
ステップst2で印字が行われていると判断された場合には、t1を0にリセットする(ステップst3)。
【0108】
t1は、0にリセットされた時点から順算式に進むタイマーであり、最後の印字からの経過時間を示す。
【0109】
ステップst2で印字が行われていないと判断された場合には、最後の印字からの経過時間(t1)が所定時間に達しているか否かを判断する(ステップst4)。
【0110】
ステップst4で経過時間(t1)が所定時間に達していると判断された場合には、負圧増大の終了からの経過時間(t2)が所定時間に達しているか否かを判断する(ステップst5)。
【0111】
t2は、0にリセットされた時点から順算式に進むタイマーであり、負圧増大の終了(メンテナンス動作の終了)からの経過時間を示す。
【0112】
ステップst5で経過時間(t2)が所定時間に達していると判断された場合(つまり、前回のメンテナンス動作から所定時間を経過した場合)には、返送圧力制御ポンプ110bの発する負圧を大きくする(ステップst6)。
【0113】
ステップst4で経過時間(t1)が所定時間に達していないと判断された場合及びステップst5で経過時間(t2)が所定時間に達していると判断された場合には、t3を0にリセットする(ステップst7)。
【0114】
t3は、0にリセットされた時点から順算式に進むタイマーであり、返送圧力制御ポンプ110bの発する負圧を通常より大きくしている(メンテナンス動作継続の)時間を示す。
【0115】
ステップst6で返送圧力制御ポンプ110bの発する負圧を大きくした後、返送圧力制御ポンプ110bの発する負圧の値と、負圧を通常より大きくしている時間(t3)の積が、所定値に達しているか否かを判断する(ステップst8)。
【0116】
ステップst8で、所定値に達していると判断された場合(つまり、メンテナンス動作の持続時間が所定時間になった場合)には、t2を0にリセットする(ステップst9)。
【0117】
ステップst9でt2を0にリセットした後及びステップst3でt1を0にリセットした後は、返送圧力制御ポンプ110bの発する負圧を通常値にする(ステップst10)。
【0118】
つまり、印字が行われているときには、メンテナンス動作は実行されない。また、メンテナンス動作が行われているときであっても、印字が開始されたときには、メンテナンス動作は中止される。
【0119】
ステップst10で返送圧力制御ポンプ110bの発する負圧を通常値にした後、ステップst8で、所定値に達していないと判断された場合(つまり、メンテナンス動作の持続時間が所定時間になっていない場合)及びステップst7でt3を0にリセットした後は、リターンする(ステップst11)。
【0120】
つまり、印字終了から所定時間を経過しなければ、メンテナンス動作は実行されない。また、前回のメンテナンス動作からの所定時間を経過しなければ、次のメンテナンス動作は実行されない。
【0121】
なお、図7に示すメンテナンス動作を実行するには、図8中の「負圧」を「正圧」に代える。また、返送圧力制御ポンプ110bは、移送圧力制御ポンプ110a、又は、返送圧力制御ポンプ110b及び移送圧力制御ポンプ110aの両方に代えてもよい。
【0122】
〔インクジェットヘッドの他の実施形態〕
この実施形態は、本発明のインクジェットヘッドを、シアーモード型ではないインクジェットヘッドとして構成した例である。図9は、本発明に係るインクジェットヘッドの他の例を示す縦断面図である。図10は、図9に示すインクジェットヘッドの横断面図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、これらの説明は上記説明を援用し、ここでは省略する。
【0123】
本発明のインクジェットヘッド11は、図9及び図10に示すように、基板3上に圧電素子24を配置した構成とすることもできる。このインクジェットヘッド11においては、基板3上に圧電素子24が配置されており、この基板3の下面側にインクチャネルとなるインクチャネル23が構成されている。圧電素子24は、インクチャネル23の上面(天井面)の一部をなしており、駆動することにより、インクチャネル23内の圧力を変動させる。インクチャネル23の下面(底面)は、ノズルプレート21によって閉蓋されている。ノズルプレート21には、各インクチャネル23に対応された複数の吐出ノズル22が形成されている。吐出ノズル22は、インクチャネル23に対して連通し、インクチャネル23を外部(下方)に連通させている。ノズルプレート21の下面部がインク吐出面1Sとなる。各インクチャネル23内のインクは、圧電素子24の作用によって吐出圧力を付与され、吐出ノズル22を通って外部の記録媒体に向けて(下方)に吐出される。
【0124】
各インクチャネル23は、注入孔31aを介して共通インク室41に連通している。共通インク室41内のインクは、注入孔31aを介して、各インクチャネル23に流入される。
【0125】
各インクチャネル23内のノズル22の近傍は、個別インク循環路26aを介して、マニホールド4内に穿設された共通インク循環路421に連通し合流している。個別インク循環路26aは、前述の実施形態と同様に、ノズルプレート21の上面部に形成された溝がヘッドチップ2の下面部によって閉蓋されて構成され、ヘッドチップ2及びマニホールド4内に穿設された隧道を経て共通インク循環路421に至る。共通インク循環路421には、共通インク室41から注入孔31a、インクチャネル23及び個別インク循環路26aを経たインクが流入する。
【0126】
共通インク循環路421に至ったインクは、前述したように、図示しないインク排出室に至り、インク排出管を経て、インク回収管に合流する。
【0127】
このインクジェットヘッド11においても、前述した実施形態と同様のメンテナンス動作を実行することができ、このメンテナンス動作により、ノズル22内に滞留しているインクを無駄に消費することなく、新しいインクに置換することができ、非印刷状態が続いた後、次に吐出を行って印刷を開始する場合でも、初吐出の液滴速度の低下を十分に抑えることができる。
【符号の説明】
【0128】
1:インクジェットヘッド(エンドシュータ型)
11:インクジェットヘッド(MEMS型)
2:ヘッドチップ
21:ノズルプレート
22:ノズル
23:インクチャネル
24:圧電素子
25:ダミーチャネル
26a:個別インク循環路
28:流路形成溝
3:配線基板
31a:注入孔
31b:排出孔
31c:導入孔
4:インクマニホールド
41:共通インク室
412:インク排出室
421:共通インク循環路
422:溝
423:循環路
424:排出チャネル
425:導入路
425a:導入溝
45:隔壁
5a:インク供給管
5b:インク回収管
5c:インク排出管
5d:循環路連結部
6:バッファ空間部
61:合流箱
7a:接続部
7b:接続部
8:流量調整部材
F1:主流路
F2:副流路
100:インクジェット記録装置
101:インクタンク
102:インク移送管
103:インク返送管
104:制御部
104a:制御部
105a:移送ポンプ
105b:返送ポンプ
107:キャリッジ機構
108:搬送手段
109:記録媒体
110a:移送圧力制御ポンプ
110b:返送圧力制御ポンプ
111a:移送側サブタンク
111b:返送側サブタンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10