【解決手段】基板10と、基板の一方又は両面上に積層された有機樹脂層22を備える化粧板2で、有機樹脂層上に光触媒担持用粒子13が埋設され、その一部が露出して配置となり、光触媒担持用粒子の露出面及び有機樹脂層上に可視光応答型光触媒14が担持された化粧板で、化粧板の表面は、波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上である化粧板2。好ましくは光触媒担持粒子13はその高さ(A+B)の35〜65%(A)が有機樹脂層22から露出しており、担持している可視光応答型光触の等電点より高い等電点を有する粒子であり、セラミック粒子からなり、より好ましくはアルミナ、又はアルミン酸ストロンチウムからなる粒であって、0.1〜55μmの平均粒子径を有する粒子である、化粧板2。
前記光触媒担持用粒子は、光触媒担持用粒子の露出面上に担持されている可視光応答型光触媒の等電点よりも高い等電点となる粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧板。
前記可視光応答型光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンである請求項1〜9のいずれか1項に記載の化粧板。
前記有機樹脂層は、白色顔料、白色染料及び蛍光増白剤からなる群から選択される少なくとも1種以上を含むパターン紙と有機樹脂からなる複合体である請求項1〜11のいずれか1項に記載の化粧板。
前記白色顔料は、鉛白、酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、タルク、シリカ及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項12に記載の化粧板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4は、従来の化粧板を模式的に示す概略断面図である。この化粧板3では、光触媒などの可視光応答型光触媒14が表層樹脂層12に固定されている。
【0009】
図4の化粧板には、ウィルス不活度が99.9%以上(大腸菌に対して不活化されていないウィルス濃度が1000分の1以下)相当となる高い抗菌性、抗ウィルス性を要求される場合もあり、このような場合、その機能性を充分に発現できないという課題があった。
【0010】
また、特許文献1には、光触媒を塗膜に含む機能性建材が開示されている。また、特許文献2には、抗菌金属を担持させたポリエステル化粧板が開示されている。しかしながら、これらの建材、化粧板を抗ウイルス用途に使用した場合、ウイルス不活機能が十分ではなかった。
特許文献3に記載された化粧板では、表面近傍に固定化されている光触媒コーティング剤が可視化されることによって化粧板の意匠性が損なわれることがあった。そのため、表面近傍に可視光応答型光触媒を固定化させた化粧板においては、意匠性と機能性の両立が困難であるという問題があった。
また、特許文献4に記載された技術では、シリコーン樹脂やフッ素樹脂が濁りにより失透しているため、パターン層の意匠性を低下させる上、濁りによる散乱のため、可視光の反射率が低く、可視光応答型光触媒の機能を充分に引き出すことができないという問題があった。
さらに、特許文献5に記載された技術は、もともと反射板であり、可視光応答型光触媒を担持してしまうと、白色塗装層で反射した光を可視光応答型光触媒が吸収してしまい、反射板として機能しない上、仮にこの技術を化粧板に適用したとしても、光源の光量が少ない場合、十分な抗ウィルス性を発揮しないという問題があった。特許文献6には、耐酸化性樹脂層上に配置される可視光応答型光触媒とからなり、前記可視光反射層は、波長が430〜500nmの光の反射率が60%以上であることを特徴とする抗ウィルス性の化粧板が記載されている。しかしながら、抗ウイルス性能が十分ではないという問題が見られた。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、良好な意匠性を保ちつつ、光源の光の量が少なくても、抗菌・抗ウイルス性等の可視光応答型光触媒の機能を充分に発揮することができる化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の化粧板は、
基板と、
上記基板の一方又は両面上に積層された有機樹脂層を備える化粧板であって、
上記有機樹脂層上に、光触媒担持用粒子が埋設され、その一部が露出して配置されてなり、
上記光触媒担持用粒子の露出面および有機樹脂層上に可視光応答型光触媒が担持された化粧板であって、
上記化粧板の表面は、波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明の化粧板の表面は、波長430〜500nmの光の反射率が50%以上である。そのため、可視光のうち、可視光応答型光触媒が活性を示しやすい波長成分が反射されやすく、化粧板の上面のみならず、有機樹脂層(可視光反射層)および光触媒担持用粒子により反射された可視光により下側や横側から可視光応答型光触媒を活性化させることができる。従って、可視光応答型光触媒の活性をより高めることができ、光源の光の量が少なくても、優れた抗菌・抗ウィルス性を発揮することができる。
また、単に可視光反射層を設けた場合よりも、より高い抗ウィルス性を発揮できるのである。
なお、可視光は、主に有機樹脂層(可視光反射層)において反射されるが、光触媒担持用粒子や光触媒それ自体によっても若干反射されるため、これらが同時に存在している化粧板の表面を測定する。
【0014】
光の反射率の測定は、少なくとも波長400〜600nmの範囲で反射率を測定し、
図1に示すような測定波長と反射率の関係性を示すグラフを描き、波長430〜500nmの範囲で反射率が50%以上あれば、反射率に関する要件を満たすと解釈する。
反射率の測定が5nmまたは10nm毎になされる場合は、隣接する測定点同士を繋げて測定波長と反射率のグラフとする。
反射率は、分光測色計を用いて測定することができる。
反射率は、化粧板の表面の反射率を測定する。化粧板の表面の反射は、有機樹脂層(可視光反射層)、光触媒担持用粒子、可視光応答型光触媒を含めた総合的な反射光を測定して、反射率を求める。
【0015】
また、有機樹脂層上に、光触媒担持用粒子が埋設され、その一部が露出して配置されてなると、有機樹脂層と光触媒担持用粒子が強固に密着する。そして、この露出した光触媒担持用粒子の露出した表面に可視光応答型光触媒が担持されると、可視光応答型光触媒が脱落しにくく、清掃などで表面摩耗が生じた場合でも、可視光応答型光触媒が化粧板表面に保持され、安定して抗ウイルス機能を発現させることができる。
また、可視光応答型光触媒は、光触媒担持用粒子の露出表面のみならず有機樹脂層上にも担持されており、有機樹脂層(可視光反射層)および光触媒担持用粒子で反射された可視光がさらに有機樹脂層上の可視光応答型光触媒自体でも反射して可視光が乱反射を起こしやすく、可視光応答型光触媒を充分に励起できるのである。
【0016】
可視光応答型光触媒が光触媒担持用粒子の表面に担持されていれば、その可視光応答型光触媒は有機樹脂層と直接接触しないので、そのような可視光応答型光触媒は有機樹脂層の劣化を生じさせることがない。
光触媒担持用粒子の表面に担持されている可視光応答型光触媒が存在することによって、全ての可視光応答型光触媒が有機樹脂層(
図4の表層樹脂層12)に直接接触している
図4に示すような化粧板に比べて、有機樹脂層の劣化を防止する効果が発揮される。
また、可視光応答型光触媒は酸化力が低く、有機樹脂層上に担持されていても有機樹脂層を短期間で劣化させることはない。特に無機ゾルの乾燥体を介して可視光応答型光触媒を有機樹脂層上に担持した場合は、劣化、変色等の問題を生じにくい。
【0017】
本発明の化粧板において、光触媒担持用粒子はその高さの35〜65%が上記有機樹脂層から露出していることが望ましい。
有機樹脂層から光触媒担持用粒子が露出する高さをこの範囲にすることにより、有機樹脂層と光触媒担持用粒子との密着性が確保され、光触媒担持用粒子に担持される可視光応答型光触媒の特性が発揮される。
有機樹脂層から光触媒担持用粒子が露出する高さが35%未満であると、光触媒担持用粒子に担持される可視光応答型光触媒の担持量が少ないので、可視光応答型光触媒の特性が充分に発揮されにくい。また、有機樹脂層から光触媒担持用粒子が露出する高さが65%を超えると、有機樹脂層と光触媒担持用粒子の密着性が低下し、光触媒担持用粒子が脱落してしまって、可視光応答型光触媒の特性が発揮されにくくなる。
【0018】
本発明の化粧板では、上記有機樹脂層が、可視光反射層であることが望ましい。
有機樹脂層として可視光反射層を用いて可視光反射層に光触媒担持用粒子を配置させると、可視光反射層により反射した波長成分が速やかに可視光応答型光触媒に当たり、可視光応答型光触媒の活性をより高めることができるため、優れた抗菌・抗ウィルス性を発揮することができる。
【0019】
また、本発明の化粧板では、上記有機樹脂層は、有機樹脂とパターン紙からなる複合体であることが望ましい。
有機樹脂層としては、パターン紙に有機樹脂を含浸させたもの、パターン紙上に透光性のオーバーレイ紙を積層し、有機樹脂を含浸させて硬化させたものを使用できる。
オーバーレイ紙を使用した有機樹脂層の場合は、パターン紙で反射されオーバーレイ紙を透過した可視光が触媒を活性化させる。
有機樹脂層として、パターン紙に有機樹脂を含浸、硬化させた複合体を採用する場合は、可視光反射層として機能する。可視光反射層上に樹脂を含浸したオーバーレイ紙を積層してもよい。
【0020】
本発明の化粧板において、上記光触媒担持用粒子は、光触媒担持用粒子の露出面上に担持されている可視光応答型光触媒の等電点よりも高い等電点となる粒子であることが望ましい。ここで等電点とは、溶液の水素イオン濃度を変化させたとき、溶質となる粒子の正と負の電荷が全体としてゼロになり、電場をかけても移動しないような状態で、粒子全体の電荷平均が0となるときの水素イオン指数であり、その値をpHとして表す。この等電点は物質により規定される値であり、その一例として、可視光応答型光触媒の等電点はpH5〜6であるものが多く、それに対して、光触媒担持用粒子は、可視光応答型光触媒の等電点よりも高い等電点となるものを用いることができる。特に、光触媒担持用粒子の等電点がpH7以上であることがより望ましい。なお、等電点の測定方法としては、電気泳動法(JIS R1638)により行うことができる。
【0021】
本発明の化粧板において、上記光触媒担持用粒子はセラミック粒子であることが望ましい。
セラミック粒子としては、具体的には、セリウム、ジルコニウム、ストロンチウム、アルミニウム、珪素、鉄、コバルト、銅、クロム、ニッケル、錫、カドミウム、マグネシウム、マンガン、タングステン、バナジウム、イットリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子、アルミナ成分を含有する粒子、シリカ成分を含有する粒子、珪藻土からなる粒子等を用いることができる。また、等電点に関し、アルミナ(Al
2O
3)の等電点は、pH7.4〜9.2、ベーマイト(AlOOH)の等電点は、pH7.7〜9.4、カドミウム水酸化物(Cd(OH)
2)の等電点は、pH10.5以上、酸化カドミウム(CdO)の等電点は、pH7.7、鉄水和物(Fe(OH)
2)の等電点は、pH12、酸化鉄(Fe
3O
4)の等電点は、pH12、酸化銅(CuO)の等電点は、pH9.5、銅水和物(Cu(OH)
2)の等電点は、pH7.7である。これらの成分を複合化し、セラミック粒子としての等電点が、可視光応答型光触媒の等電点よりも高いことが望ましい。上記したセラミック粒子を構成する化合物のなかでは、特にアルミナ成分を含有するセラミック粒子を用いることが望ましい。可視光を反射するからである。
【0022】
セラミック粒子は、菌やウィルスを引き寄せやすいという作用を有する。そもそも、菌やウィルスは、タンパク質や脂肪を含んでいるため、アニオン物質であり、アニオン物質は、その対極であるカチオン物質に引き寄せられるという性質を有する。つまり、化粧板の表層に存在する菌やウィルスは、セラミック粒子に引き寄せられ、セラミック粒子に担持された可視光応答型光触媒により、菌やウィルスを減少させることができ、また、菌やウィルスが増殖しないので、抗菌や抗ウィルスの効果を得やすくなる。セラミック粒子でない粒子の場合、化粧板の表層に存在する菌やウィルスが可視光応答型光触媒に接触する頻度が低いので、菌やウィルスが残存または増殖し、抗菌や抗ウィルスの効果を得にくいのである。
【0023】
また、セラミック粒子は、可視光応答型光触媒を一定間隔で担持しやすいという性質を有する。セラミック粒子でない粒子に可視光応答型光触媒を担持させると、可視光応答型光触媒の間隔が狭くなりやすい。そのため、菌やウィルスと可視光応答型光触媒との接触頻度が低下し、想定される菌やウィルスの減少作用が発揮されなくなる。その結果、菌やウィルスを減少させるのに時間を要し、抗菌、抗ウィルスの効果が発現しにくくなる。これに対して、本発明で用いるセラミック粒子は、一定間隔に担持されるので、菌やウィルスが可視光応答型光触媒との接触頻度の低下がなく、所望の時間で菌やウィルスを減少させ、抗菌、抗ウィルスの効果が発現しやすくなる。このように、セラミック粒子は、可視光応答型光触媒の担持を一定間隔にさせ、菌やウィルスを引き寄せるという効果があり、抗菌や抗ウィルス効果を向上させることができる。可視光応答型光触媒に、菌やウィルスが接触すると、可視光応答型光触媒は、菌やウィルスを全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、菌やウィルスを減少させることができる。
上記した効果は、セラミック粒子に可視光応答型光触媒を担持させることにより得られる。
【0024】
セラミック粒子としては酸化物セラミック粒子を使用することが望ましい。酸化物セラミック粒子はその色が白色又は乳白色である。そのため、酸化物セラミック粒子により、可視光を乱反射させて、可視光応答型光触媒を横方向から活性化させる作用をより強めることができる。
【0025】
セラミック粒子として、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。アルミナは、セラミック粒子の中で最も利用しやすい上に、上記で説明した菌やウィルスを減少させる作用を効率的に利用することができる。また、アルミン酸ストロンチウムは、蓄光作用があるので、光がない環境下でも菌やウィルスを減少させる作用を長時間持続させることができる。
【0026】
本発明の化粧板において、光触媒担持用粒子の平均粒子径は、0.1μm〜55μmであることが望ましい。
【0027】
本発明の化粧板において、上記可視光応答型光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンであることが望ましい。特に、可視光応答型光触媒の等電点は、pH5〜6であることが望ましい。
【0028】
本発明の化粧板において、光触媒担持用粒子の表層に無機ゾルの乾燥体を有していることが望ましい。可視光応答型光触媒の固定化を補強することができるからである。
【0029】
本発明の化粧板において、上記有機樹脂層は、白色顔料、白色染料及び蛍光増白剤からなる群から選択される少なくとも1種以上を含むパターン紙と有機樹脂からなる複合体であることが望ましい。
有機樹脂層が、白色顔料、白色染料及び蛍光増白剤からなる群から選択される少なくとも1種以上により白色化されたパターン紙と有機樹脂からなる複合体であると、波長が430〜500nmの光を充分に反射することができ、可視光応答型光触媒を充分に活性化することができる。
【0030】
本発明の化粧板において、上記白色顔料は、鉛白、酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、タルク、シリカ及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。
これらの白色顔料は、波長430〜500nmの光を反射しやすく、紙に抄き込む、もしくは印刷することにより、パターン紙の表面に白色化層を形成することができるからである。
【0031】
本発明の化粧板において、上記蛍光増白剤は、ジアミノスチルベン型増白剤、ウンベリフェロン及びエスクリンからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。
これらの蛍光増白剤は、波長430〜500nmの光を反射することができる。さらに、これらの蛍光増白剤は、紫外線を吸収して430〜500nmの蛍光を示す。そのため、可視光応答型光触媒の活性をさらに高めることができる。
これらの白色顔料、白色染料及び蛍光増白剤は、パターン紙に抄きこまれていてもよく、含浸されていてもよく、グラビア印刷などにより表面に印刷されていてもよい。
【0032】
本発明の化粧板において、上記有機樹脂層は、光沢性粒子を含むパターン紙と有機樹脂からなる複合体であることが望ましい。
【0033】
本発明の化粧板において、上記光沢性粒子は、金属粒子又はマイカ粒子であることが望ましい。
これらの光沢性粒子は、波長430〜500nmの光を反射しやすく、紙に抄きこんだり、印刷することにより、パターン紙表面に光沢層を形成することができるからである。
【0034】
本発明の化粧板では、上記有機樹脂層は、金属層を含むことが望ましい。
有機樹脂層が金属層を含むと、波長が430〜500nmの光を充分に反射することができ、可視光応答型光触媒を充分に活性化することができる。
【0035】
本発明の化粧板では、上記可視光応答型光触媒は、上記光触媒担持用粒子の表面に、露出して担持されてなることが望ましい。
この場合、光触媒が樹脂などで被覆されておらず、光触媒が空気と直接接触するため、空気中の酸素や水分が光触媒に供給されて、有機物を分解するために必要な、OHラジカル、スーパーオキサイドラジカルなどのラジカル、過酸化水素を発生させやすくなり、ウィルスを充分に不活性化することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の化粧板では、可視光応答型光触媒は光触媒担持用粒子の露出面に担持される。そのため、可視光応答型光触媒による有機樹脂層の劣化を防ぐことができ、有機樹脂層の変色や有機樹脂層の劣化等に起因する可視光応答型光触媒の脱落を防止することができる。光触媒担持用粒子はその高さの35%〜65%が有機樹脂層から露出するように配置されているため、光触媒担持用粒子に可視光応答型光触媒を充分な量担持させることができ、また、有機樹脂層と光触媒担持用粒子との密着性を確保して、光触媒担持用粒子の脱落を防止することができる。また、可視光応答型光触媒の有機樹脂層中への埋没がなく、可視光応答型光触媒が化粧板表面上に露出されているので、抗菌性、抗ウィルス性等、可視光応答型光触媒としての本来の機能を発揮することができ、その効果を長期間維持することができる。
さらに、化粧板の表面は波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であるため、可視光のうち、可視光応答型光触媒が活性を示しやすい波長成分が反射されやすく、反射光により下側や横側から再度可視光応答型光触媒を活性化させることができる。従って、可視光応答型光触媒の機能を充分に発揮させ、優れた抗菌・抗ウィルス性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の化粧板について詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る化粧板を模式的に示す概略断面図である。
図2に示す化粧板2は、基板10と、基板10の表面上に積層される可視光反射層22とを備えており、光触媒担持用粒子13が可視光反射層22上に露出して配置されている。そして、可視光応答型光触媒14が光触媒担持用粒子13の露出面および有機樹脂層上に担持された構造を有している。
可視光反射層22は有機樹脂を含む有機樹脂層である。
【0039】
本発明の化粧板に使用する基板は、特に限定されるものではなく、一般的に化粧板に使用されるコア紙やマグネシアセメント等の不燃基材、石膏ボード、金属板等を使用することができる。コア紙は単独でもよく複数枚のコア紙を積層した積層体としてもよい。コア紙の枚数は特に限定されないが、1〜20枚とすることができる。コア紙としては、例えば、水酸化アルミニウム抄造紙を使用することができる。またコア紙として、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたクラフト紙を用いることができる。また、コア紙とマグネシアセメント不燃基材を積層させて基板とすることもできる。
【0040】
マグネシアセメント不燃基材は、単独で使用することにより、又は、コア紙の中心部に積層して配置させることにより基板を構成することができる。マグネシアセメント不燃基材は、酸化マグネシウム(MgO)と塩化マグネシウム(MgCl
2)を混合し、さらに骨材と水を加えて混練し、板状に成形することにより製造されるものである。骨材としては、ロックウール、グラスウール等の無機質繊維、ウッドチップ、パルプ等の有機質繊維を用いることができる。また、マグネシアセメント不燃基材の強度を高めるため、中間層として網目状等に形成されたガラス繊維層を設けることができる。
【0041】
可視光反射層は、波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であり、より望ましくは60%以上、さらに望ましくは70%以上である。
可視光反射層の波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であると、可視光のうち、可視光応答型光触媒が活性を示しやすい波長成分が反射されやすく、反射光により再度可視光応答型光触媒を活性化させることができる。また、可視光反射層における波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であれば、光触媒担持用粒子および光触媒も可視光を反射させるため、化粧板の表面における、波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上となるからである。化粧板の表面における、波長が430〜500nmの光の反射率は、望ましくは60%以上、さらに望ましくは70%以上である。
可視光反射層の、波長が430〜500nmの光の反射率を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、可視光反射層を構成するパターン紙の色彩を調整する方法などが挙げられる。
【0042】
なお、可視光反射層の光の反射率及び化粧板の反射率については、可視光反射層又は化粧板に向けて光を照射し、反射光を測定することによって測定することができ、具体的には、分光測色計[スガ試験機(株)製SC−P]を用いて測定することができる。
測定方法を分光測色方法の方法a(Sa)、有効波長幅は5nm、三刺激値の計算に用いる波長間隔は5nm(W5)、等色関数の種類はX
10Y
10Z
10表色系(CIE1964表色系)、測定用イルミナントは標準イルミナントD65、照射及び受光の幾何条件は幾何条件c(de:8°)とする。測定孔はφ30mmとする。
パターン紙の色彩が、無模様で単一色である場合には、無作為に選択した1点で測定を行う。一方、パターン紙の色彩にパターンが存在する場合には、それぞれのパターン(色)領域毎に無作為に選択した1点で反射率を測定する。例えば、白色と黒色のチェッカーフラッグ模様の場合、白色領域で1点、黒色領域で1点、それぞれ反射率を測定する。そして、白色領域における波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であれば、その領域では本発明の効果が発現するため、黒色領域における波長が430〜500nmの光の反射率が50%未満であっても、本発明を利用しているものと解釈する。
なお、波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上であるとは、上記測定条件において測定された反射スペクトルにおいて、430〜500nmの波長域における反射率が全て50%以上であることを意味する。
すなわち、430〜500nmの波長域のいずれかの領域に、反射率が50%未満となる領域があった場合は、上記領域を除く全ての領域における反射率が50%以上であったとしても、430〜500nmにおける光の反射率が50%以上であるとはいわない。
反射率が60%以上の場合、70%以上の場合も同様である。
【0043】
複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃基材からなる基板表面上に可視光反射層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。例えば、色彩を調整したパターン紙にメラミン樹脂等を含浸させたもの(以下、メラミン樹脂含浸紙ともいう)を基板の片面又は両面に積層し、熱圧成形する方法を用いることができる。上記方法を用いると、上記パターン紙に含浸させたメラミン樹脂等がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対する上記パターン紙の接着力が発現する。
上記色彩を調整したパターン紙としては、白色顔料、白色染料及び蛍光増白剤からなる群から選択される少なくとも1種以上の物質(白色化剤ともいう)をグラビア印刷、インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷等で印刷したパターン紙、上記白色化剤を抄き込んだパターン紙、もしくは、上記白色化剤を含浸させることで色彩を白色に調整したパターン紙等が挙げられる。
このとき、印刷によりパターン紙の色彩を調整した場合は、印刷面(色彩を調整した面)が外側(基板とは反対側)となるよう配置することにより、基板上に可視光反射層が形成されることとなる。
本発明においては、白色化剤をパターン紙の全面に均一に含ませることが望ましい。すなわち、白色化剤をパターン紙の表面全体に無模様で単一の色彩となるように均一に印刷するか、パターン紙全体に均一に抄き込むか、パターン紙に均一に含浸させることが望ましい。このようにして形成されたパターン紙は、可視光を均一に反射するため、可視光応答型光触媒を充分に活性化できるからである。
【0044】
本発明の化粧板を構成する有機樹脂層としての可視光反射層に用いることができる有機樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂を用いることが望ましい。
【0045】
メラミン樹脂は、透光性などの光学的、視覚的特性を損なうことなく、寸法安定性や靭性を改善した樹脂である。メラミン樹脂としては、メラミン及びその誘導体をモノマーとする樹脂であれば公知のものを採用することができる。また、メラミン樹脂は、単一のモノマーからなる樹脂であってもよく、複数のモノマーからなる共重合体であってもよい。メラミンの誘導体としては、例えば、イミノ基やメチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基などの官能基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体に低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることができる。モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール基を有する誘導体(以下、「メチロール化メラミン」という。)を架橋剤としてメラミンと共重合させてなるメラミン樹脂を用いることができる。
【0046】
メラミン樹脂含浸紙は、色彩を調整したパターン紙にメラミン樹脂を所定の含浸率で含浸させた後、加熱、乾燥させることにより作製される。メラミン樹脂をパターン紙に含浸させるには、溶媒として、例えば、ホルムアルデヒド水溶液を使用したメラミン樹脂含有溶液中にパターン紙を浸漬することにより行うことができる。また、メラミン樹脂含浸紙に曲げ加工性を付与するために、メラミン樹脂と共に可塑剤を含む溶液を含浸させることができる。可塑剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、パラトルエンスルフォン酸アミド、尿素等を使用することができる。パターン紙としては、例えばチタン紙が用いられる。パターン紙の坪量は、パターン紙の厚みや重さを考慮して80〜150g/m
2とすることができる。加熱、乾燥の温度は、パターン紙にメラミン樹脂を強固に固着させるために100〜150℃に設定することができる。
色彩を白色に調整する場合は、JIS Z 8715(1999)に規定される白色度測定で、白色度指数W
10が50以上であることが望ましく、60以上であることがより望ましい。
【0047】
本発明の化粧板を構成する有機樹脂層としての可視光反射層は、光沢性粒子を含むパターン紙と有機樹脂からなる複合体であることが望ましい。
すなわち、上記色彩を調整したパターン紙として、光沢性粒子を含むパターン紙を用いることが望ましい。
光沢性粒子としては、金属粒子又はマイカ粒子が望ましい。
光沢性粒子を含むパターン紙としては、具体的には、光沢性粒子を含むインクをパターン紙の表面に印刷したもの、光沢性粒子をパターン紙に抄き込んだもの、パターン紙の表面に光沢性粒子を吹き付けたもの等が挙げられる。
パターン紙の色彩を光沢性粒子によって調整することで、可視光反射層の反射率を調整することができる。
本発明においては、光沢性粒子をパターン紙の全面に均一に含ませることが望ましい。すなわち、光沢性粒子をパターン紙の表面全体に無模様で単一の色彩となるように均一に印刷するか、光沢性粒子をパターン紙の表面全体に鋤き込むか、光沢性粒子をパターン紙に均一に含浸させることが望ましい。可視光が均一に反射し、可視光応答型光触媒を充分に活性化できるからである。
なお、パターン紙の表面に光沢性粒子を含むインクで印刷する場合、印刷方法は特に限定されず、グラビア印刷、インクジェット印刷、シルクスクリーン印刷等を使用することができる。なお、印刷は、パターン紙の表側となる面の全面に均一に行うことが望ましい。
【0048】
パターン紙の色彩を調整するためのインクとしては、水、乾燥防止剤(グリセリン、グリコール等)、浸透剤(アルコール、グリコールエーテル等)から選ばれる少なくとも1種以上の溶媒に、アクリル系ブロック共重合体の樹脂と白色顔料又は光沢性粒子を混合したものであることが望ましい。
【0049】
白色顔料は、鉛白、酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、タルク、シリカ及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1種以上で構成されていることが望ましい。
蛍光増白剤は、ジアミノスチルベン型増白剤、ウンベリフェロン及びエスクリンからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが望ましい。
光沢性粒子としては、金属粒子又はマイカ粒子を用いることができる。
金属粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム及びステンレスからなる群から選択される少なくとも1種以上で構成されていることが望ましい。
白色顔料及び光沢性粒子の平均粒子径は特に限定されないが、0.1〜10μmであることが望ましい。
【0050】
本発明の化粧板を構成する有機樹脂層としての可視光反射層に用いるパターン紙としては、酸化チタンを含有するチタン紙であることが望ましく、酸化チタンを5〜20重量%含むチタン紙であることがより望ましい。
パターン紙が酸化チタンを含有すると、インクがパターン紙の表面に添着しやすい。
【0051】
本発明の化粧板を構成する有機樹脂層は、金属層を含むことが望ましい。
有機樹脂層が金属層を含むと、波長が430〜500nmの光を充分に反射することができ、可視光応答型光触媒を充分に活性化することができる。
有機樹脂層が金属層を含む場合、金属箔の上に有機樹脂層が形成された層であってもよく、金属層を備えたパターン紙と有機樹脂との複合体であってもよい。
有機樹脂層が金属層を含む場合の化粧板の構成としては、基板上に金属層が設けられ、該金属層上に有機樹脂層が設けられたものが挙げられる。
また、金属層を備えたパターン紙としては、パターン紙の表面に金属膜を蒸着させたものや、金属箔にパターン紙を裏打ちしたもの等が挙げられる。
金属層を構成する金属としては、金属粒子を構成する金属と同様のものを好適に用いることができる。
【0052】
また、本発明の化粧板を構成する有機樹脂層は、シリコーン樹脂もしくはシランカップリング剤を含有していてもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基といった官能基を持ったものが望ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、ジアリルジメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
図2に示すように、可視光(
図2中、化粧板に入射する可視光を実線矢印で示す)は可視光反射層22にて反射され、可視光応答型光触媒14の下面側(基板10側)からも励起される(
図2中、可視光反射層22で反射した可視光を破線矢印で示す)。
【0054】
本発明の化粧板を構成する光触媒担持用粒子としては、セラミック粒子、金属粒子、樹脂粒子等が挙げられる。可視光応答型光触媒の等電点より高い等電点を有し、可視光応答型光触媒を担持することができる粒子であることが望ましい。
また、光触媒担持用粒子としては、セラミック粒子が望ましく、アルミナ成分を含有するセラミック粒子であることがより望ましい。セラミック粒子としては、具体的には、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることがさらに望ましい。
また、セラミック粒子として酸化物セラミック粒子を使用することが望ましい。酸化物セラミック粒子は一般にその色が白色又は乳白色であり、白色又は乳白色の酸化物セラミック粒子は、可視光を乱反射させて可視光応答型光触媒を横方向から活性化させる作用を強めることができる。とくに、可視光反射層から反射された可視光を乱反射させて可視光応答型光触媒を横方向から活性化させることができる。なお、酸化物粒子には、炭素等の酸化物セラミックを着色させる元素を実質的に含まないことが望ましい。
【0055】
本発明の化粧板において、光触媒担持用粒子の平均粒子径は0.1〜55μmであることが望ましく、0.5〜5μmであることがより望ましい。光触媒担持用粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、光触媒担持用粒子が有機樹脂層に埋まり易くなり、可視光応答型光触媒が光触媒担持用粒子に担持されにくくなる傾向にあり、光触媒担持用粒子の平均粒子径が55μmを超えると、光触媒担持用粒子が脱落したり、有機樹脂層に凹凸が形成されたりするため、化粧板の外観及び意匠性に不具合が生じる傾向にある。光触媒担持用粒子の平均粒子径が0.5〜5μmであると、可視光応答型光触媒としての機能性が発揮されて、化粧板の外観及び意匠性においても問題とならない。
【0056】
本発明の化粧板においては、光触媒担持用粒子の高さの35〜65%が有機樹脂層から露出している。光触媒担持用粒子の高さの45〜55%が有機樹脂層から露出していることが望ましい。光触媒担持用粒子の露出する高さは、化粧板の断面写真を撮影し、光触媒担持用粒子の位置(露出する高さ)と、化粧板の表面と、光触媒担持用粒子の全体の高さとを比べることにより求めることができる。化粧板の断面写真は、化粧板を厚さ方向に割った後、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影することができる。化粧板の断面は破断面であるので、光触媒担持用粒子は破壊されにくく、光触媒担持用粒子の全体の高さ及び位置を容易に確認することができる。
具体的には、断面写真における光触媒担持用粒子の全体の高さを100%とした場合の、有機樹脂層の表面よりも上にある光触媒担持用粒子の高さの比率として求めることができる。
任意の10個の光触媒担持用粒子の全体の高さ及び露出する高さの比率を確認し、得られた比率の平均値を算出することによって求める。
図2において、両矢印Aは有機樹脂層(可視光反射層)の表面よりも上にある光触媒担持用粒子の高さを示しており、両矢印Bは有機樹脂層(可視光反射層)の表面よりも下にある光触媒担持用粒子の高さを示している。光触媒担持用粒子の全体の高さは両矢印A+両矢印Bで示される高さであり、有機樹脂層(可視光反射層)の表面よりも上にある光触媒担持用粒子の高さは両矢印Aで示される高さである。
【0057】
本発明の化粧板において、可視光応答型光触媒は、抗菌性、抗ウィルス性、抗アレルゲン性、消臭性等の機能を有する機能材であることが望ましい。例えば、抗菌性、抗ウィルス性の可視光応答型光触媒としては、可視光応答型光触媒が挙げられる。この可視光応答型光触媒の具体例としては、例えば、酸化チタンに白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族、鉄、銅などを担持させたものなどが挙げられる。
本発明の化粧板において、可視光応答型光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンであることが望ましく、銅担持チタニア触媒であることがより望ましい。銅担持チタニア触媒としては、例えば、特開2006−232729号公報に記載されたCuO/TiO
2(重量%比)=1.0〜3.5の範囲で銅を含有するアナターゼ型酸化チタン、特開2012−210557号公報に記載された亜酸化銅(酸化銅(I):Cu
2O)と酸化チタンとが複合化した光触媒組成物、特開2013−166705号公報に記載された一価銅化合物及び二価銅化合物を含む混合物を表面に担持した酸化チタン、並びに、国際公開第2013/094573号に記載された結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する銅及びチタン含有組成物などが挙げられる。
【0058】
また、本発明の化粧板において、光触媒担持用粒子の表層に無機ゾルの乾燥体が付着していることが望ましい。光触媒担持用粒子の表層に無機ゾルを付着させた後、可視光応答型光触媒を担持し、乾燥させることにより、可視光応答型光触媒を無機ゾルの乾燥体で固定化し、可視光応答型光触媒をより強固に固定化することができるからである。無機ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル、チタニアゾル等を用いることができるが、シリカゾルを用いることが望ましい。
本発明においては、可視光応答型光触媒は、有機樹脂層(可視光反射層)上にも担持されている。光触媒担持用粒子間の有機樹脂層上に可視光応答型光触媒が担持されているため、清掃時のふき取り等の摩耗が生じた場合でも、光触媒担持用粒子が摩耗に対して防御するため、光触媒担持用粒子間の有機樹脂層上に担持された可視光応答型光触媒は摩耗の力で脱落しない。また、有機樹脂層(可視光反射層)および光触媒担持用粒子で反射された可視光がさらに有機樹脂層上の可視光応答型光触媒自体でも反射して可視光が乱反射を起こしやすく、可視光応答型光触媒を充分に励起できるとの効果を奏するのである。
可視光応答型光触媒は、無機ゾルの乾燥体を介して有機樹脂層上に担持されていてもよく、その一部が有機樹脂層に埋没して、その他の部分が有機樹脂層から露出するように担持されていてもよい。無機ゾルの乾燥体を介して担持されている場合は、可視光応答型光触媒が有機樹脂層に与える影響が少ないため有利である。
【0059】
次に、本発明の化粧板の製造方法について説明する。
最初に、コア紙、マグネシアセメント不燃基材、石膏ボード及び金属板からなる群から選択される少なくとも1種以上からなる基板表面上に有機樹脂層を形成する。上記基板やその製造方法、上記有機樹脂層については、本発明の化粧板の説明において説明したので、ここでは省略する。
有機樹脂層としては、可視光反射層を設けることが好ましい。以下には、有機樹脂層として可視光反射層を設ける場合について説明する。
【0060】
本発明の化粧板においても説明したが、基板表面上に可視光反射層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。具体的な可視光反射層の形成方法としては、例えば、コア紙の積層体からなる基板の片面又は両面に白色化もしくは光沢化して色彩を調整したパターン紙にメラミン樹脂等を含浸させたメラミン樹脂含浸紙を積層する第1積層工程と、メラミン樹脂含浸紙上にオーバーレイ紙等に有機樹脂を含浸させた樹脂シートを積層する第2積層工程と、これらのメラミン樹脂含浸紙及び樹脂シートが積層された基板を熱圧成形する熱圧成形工程を含む方法が挙げられる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現して、基板上に可視光反射層が形成される。このとき、パターン紙の色彩パターンが印刷された面を外側(基板とは反対側)となるように配置することにより、パターン紙に印刷された色彩パターンに対応する可視光の反射率(及び反射スペクトル)を有する可視光反射層が得られる。
【0061】
メラミン樹脂含浸紙は、波長が430〜500nmの光の反射率が50%以上となるような色彩パターンを有していればよく、パターン紙にそのような色彩パターンを印刷してもよく、パターン紙及び樹脂に加えて、金属層等を加えてメラミン樹脂含浸紙を構成してもよい。金属層、パターン紙及び有機樹脂からなるメラミン樹脂含浸紙としては、例えば、金属層となる金属箔にパターン紙を裏打ちした金属箔−パターン紙複合体にメラミン樹脂を含浸させたものであってもよい。
【0062】
熱圧成形する際の加熱条件としては、化粧板の温度を125〜150℃とすることができ、加圧条件としては、1.96〜9.80MPa(20〜100kg/cm
2)とすることができる。温度が125℃未満の場合又は圧力が1.96MPa未満の場合には、基板に対するメラミン樹脂含浸紙の密着性が不足し、剥離が発生しやすくなる。一方、温度が150℃を超える場合又は圧力が9.80MPaを超える場合には、亀裂が発生するおそれがある。
【0063】
有機樹脂層(可視光反射層)に、光触媒担持用粒子を固定する方法としては、例えば、光触媒担持用粒子を含むスプレー液を有機樹脂層表面に吹き付け、乾燥後、熱圧着する方法をとることができる。上記方法により、有機樹脂層上に光触媒担持用粒子を露出して固定させることができる。
あるいは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面をJIS B 0601 Ra=0.05〜10μmに粗化し、その表面にアルミナ粒子などの光触媒担持用粒子を担持させた後、光触媒担持用粒子の担持面がメラミン樹脂などの有機樹脂の含浸紙に接触するように積層、加熱加圧した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離する。加熱加圧により光触媒担持用粒子はメラミン樹脂などの有機樹脂中にその一部が露出するように埋設される。
【0064】
上記工程の後、光触媒担持用粒子が配置された基板を、可視光応答型光触媒を含む溶液中に浸漬することにより、可視光応答型光触媒を光触媒担持用粒子の露出面および有機樹脂層上に担持させることができる。可視光応答型光触媒を含む溶液を、光触媒担持用粒子が配置された基板上に塗布することにより、可視光応答型光触媒を光触媒担持用粒子表面上に担持させてもよい。
有機樹脂層(可視光反射層)に可視光応答型光触媒が付着しても、メチルアルコールやエチルアルコールなどのアルコールで洗浄すると、有機樹脂と光触媒や無機バインダとの密着性が低いので簡単に除去できる。
また、有機樹脂層(可視光反射層)に付着した可視光応答型光触媒の一部を有機樹脂層上から除去してもよい。
有機樹脂層を構成する有機樹脂の硬化反応の進行度合い及び熱圧着時の条件(圧力、温度、時間)を調整することにより光触媒担持用粒子が有機樹脂層から露出する高さを35〜65%に調整する。硬化反応を抑制し、熱圧着の圧力を高く、温度を高く又は時間を長くすることにより露出する高さを小さくすることができ、硬化反応を進行させ、熱圧着の圧力を低く、温度を低く又は時間を短くすることにより露出する高さを大きくすることができる。光触媒担持用粒子の埋まり方の程度を確認しながら適宜調整することができる。
【0065】
また、本発明の化粧板の製造方法においては、光触媒担持用粒子を有機樹脂層に熱圧着する際、光触媒担持用粒子吹き付け面と熱圧着プレス面との間にポリエチレンテレフタレート(PET)からなる離形クッション材を介在させて行うことができる。これによって、光触媒担持用粒子が有機樹脂層に完全に埋没するのを防止することができ、有機樹脂層の表面上に露出して固定することができる。
【0066】
本発明の化粧板の他の製造方法としては、転写フィルムに光触媒担持用粒子を含むスプレー液を吹き付け、次いで、有機樹脂層を有する基板の有機樹脂層表面に、転写フィルムの光触媒担持用粒子付着面を対向させて、光触媒担持用粒子を熱転写する方法が挙げられる。
【0067】
有機樹脂層にシランカップリング剤を含有させることで、光触媒担持用粒子を埋没させずに固定化させることができ、有機樹脂層に可視光応答型光触媒が付着しにくくする効果がある。具体的には、工程中に過剰となった可視光応答型光触媒が有機樹脂層に付着しても、洗浄工程後に除去しやすいということである。さらに、菌やウィルスなどを含む汚染水が親水性の光触媒担持用粒子や可視光応答型光触媒に引き寄せられやすくなり、機能性が発現しやすくなる。特に、有機樹脂としてメラミン樹脂を用いた場合には、上記の作用、効果を得やすい。
【0068】
さらに、本発明の化粧板の製造方法においては、光触媒担持用粒子の表層に無機ゾルを付着させることが望ましい。可視光応答型光触媒の固定化を補強することができるからである。無機ゾルとしてはシリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル、チタニアゾル等を用いることができ、シリカゾルを用いることが望ましい。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
(可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙作製工程)
厚さ0.2mmのチタン紙(酸化チタン含有量15重量%)の一方の表面に、酸化チタン30重量部、スチレン−アクリロニトリル共重合体10重量部、アミノメチルプロパノール1重量部、水69重量部からなる白色インクを全面にグラビア印刷する。このチタン紙をメラミン樹脂溶液中に、溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、チタン紙にメラミン樹脂を含浸させる。
メラミン樹脂溶液を含浸させたチタン紙は、乾燥機により、温度100℃で30秒間乾燥させた。乾燥後、910mm×1820mmに切断し、可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙を得る。
【0070】
(アルミナ粒子の転写工程)
厚さ0.5mのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の表面をアルミナサンドブラストで粗化処理し、JIS B 0601 でRa=0.39μmとする。別途、平均粒子径0.5μmのγアルミナ粒子とエタノールからなるスプレー液を調製する。スプレー液を常温でスプレーに充填させて、PETフィルムに吹き付けて、温度110℃、乾燥時間2分となるように乾燥させる。
【0071】
(組合せ工程)
厚み0.3mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、チタン紙に印刷された色彩面が上記コア紙とは反対側となるように上記可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙を、また、可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙の上(コア紙とは反対側)にアルミナ粒子を拭きつけたPETフィルムをアルミナ粒子が可視光反射層用メラミン樹脂紙に接触するように積層し、プレス機のプレス面と、アルミナ粒子を吹き付けたPETフィルムとの間にPETからなる離型クッション材を介在させて、温度143℃、プレス圧80kg/cm
2、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着後、PETフィルムを剥離してアルミナ粒子を転写する。
これにより、基板の片面に可視光反射層を形成する。また、可視光反射層(有機樹脂層)上にアルミナ粒子が露出して固定される。
【0072】
(光触媒担持工程)
平均粒子径100nmのCu−TiO
2の光触媒を水に分散したスラリー(固形分濃度25重量%)と、シリカゾル(SiO
2濃度:3重量%)とを、4.5:5.5の重量割合(固形分重量)で含むメタノール混合溶液(光触媒濃度0.05重量%)を調製する。上記工程で得られた基板の可視光反射層(有機樹脂層)の表面に、スプレーを用いて上記メタノール混合溶液を塗布し、25℃で12時間乾燥させ、有機樹脂層上及びアルミナ粒子上に上記光触媒が担持された化粧板の製造を完了する。
【0073】
(実施例2)
可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙作製工程において、実施例1で調製された白色インクをアルミニウムペースト(旭化成製 商品名 FD−512)に変更したほかは、実施例1と同様の手順で実施例2に係る化粧板を製造する。
【0074】
(実施例3)
可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙作製工程において、白色インクでグラビア印刷するかわりに、蛍光増白剤であるジアミノスチルベンジスルホン酸の1×10
−5モル/リットルの水溶液に浸漬して、乾燥機により、温度100℃で30秒間乾燥させることでチタン紙の色彩を調製したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例3に係る化粧板を製造する。
【0075】
(実施例4)
組合せ工程において、可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙上にさらに厚さ200μmのアルミニウム箔を積層して熱圧着するほかは、実施例1と同様の手順で実施例4に係る化粧板を製造する。
【0076】
(比較例1)
可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙作製工程において、チタン紙に白色インクでグラビア印刷するかわりに、チタン紙に印刷する色彩を木目調に変更したほかは、実施例1と同様の手順で比較例1に係る化粧板を製造する。
【0077】
(比較例2)
水性コロイダルシリカ分散液とメタノール性コロイダルシリカ分散液とを混合した後、メチルトリエトキシシランを添加し、室温で約5時間攪拌することにより加水分解を完了させる。得られる生成物にイソプロピルアルコールを添加し、固形分約20%の溶液Aを調製する。アクリル酸エステル(メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートの混合物、混合比=2/1)をイソプロパノールとエチレングリコールモノブチルエーテルとの混合物(混合比=2/5)で希釈し、窒素雰囲気中でAIBN(アゾビスイソブチルニトリル)を添加し、80℃で約6時間重合させ、固形分約30%の樹脂溶液Bを調製する。
溶液Aと樹脂溶液Bとを配合して樹脂溶液Cを調製し、樹脂溶液Cに更に平均粒子径100nmのCu−TiO
2の可視光応答型光触媒粒子を分散させることにより、光触媒層用の樹脂溶液Dを調製する。溶液A〜Cの調製に際しては、それぞれ固形分比率でコロイダルシリカ:15質量%、メチルエトキシシラン:15質量%、アクリル酸エステル:70質量%とする。
実施例1と同様にして得た可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙に、この樹脂溶液Dを塗布し、200℃で1分間乾燥することで光触媒層を形成して、比較例2に係る化粧板を製造する。
【0078】
(比較例3)
(可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙作製工程)
厚さ0.2mmのチタン紙(酸化チタン含有量15重量%)の一方の表面に、酸化チタン30重量部、スチレン−アクリロニトリル共重合体10重量部、アミノメチルプロパノール1重量部、水69重量部からなる白色インクを全面にグラビア印刷する。このチタン紙をメラミン樹脂溶液中に、溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、チタン紙にメラミン樹脂を含浸させる。
メラミン樹脂溶液を含浸させたチタン紙は、乾燥機により、温度100℃で30秒間乾燥させた。乾燥後、910mm×1820mmに切断し、可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙を得る。
【0079】
(耐酸化性樹脂シート作製工程)
厚さ0.2mmのオーバーレイ紙(タルク含有量0.5重量%)に、アクリルシリコン樹脂エマルジョン(チタン工業株式会社製 PCU−103)を、固形分重量に換算して77g/m
2となるように含浸させる。アクリルシリコン樹脂エマルジョンを含浸させたオーバーレイ紙は、乾燥機により、温度100℃で30秒間乾燥させる。乾燥後、910mm×1820mmに切断し耐酸化性樹脂シートを得る。
【0080】
(組合せ工程)
厚み0.3mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、チタン紙に印刷された色彩面が上記コア紙とは反対側となるように上記可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙を積層し、プレス機のプレス面と可視光反射層用メラミン樹脂含浸紙との間にPETからなる離型クッション材を介在させて、温度143℃、プレス圧80kg/cm
2、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着する(第1積層工程)。
さらにその上に耐酸化性樹脂シートを積層して、耐酸化性樹脂シートとプレス機との間にPET製離型クッション材を介在させて、温度143℃、プレス圧80kg/cm
2、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着する(第2積層工程)。
これにより、基板の片面に可視光反射層及び耐酸化性樹脂層を形成する。
【0081】
(光触媒担持工程)
平均粒子径100nmのCu−TiO
2の光触媒を水に分散したスラリー(固形分濃度25重量%)と、シリカゾル(SiO
2濃度:3重量%)とを、4.5:5.5の重量割合(固形分重量)で含むメタノール混合溶液(光触媒濃度0.05重量%)を調製する。上記工程で得られた基板の耐酸化性樹脂層の表面に、スプレーを用いて上記メタノール混合溶液を塗布し、25℃で12時間乾燥させることにより、シリカゾルの乾燥体を介して上記光触媒が担持された化粧板の製造を完了する。
【0082】
(化粧板の表面の反射率の評価)
実施例1及び比較例1に係る化粧板の表面(チタン紙にパターンを印刷した側の表面)に対して、分光測色計[スガ試験機(株)製SC−P]を用いて以下の条件で反射率を測定する。
測定方法は分光測色方法の方法a(Sa)、有効波長幅は5nm、三刺激値の計算に用いる波長間隔は5nm(W5)、等色関数の種類はX
10Y
10Z
10表色系(CIE1964表色系)、測定用イルミナントは標準イルミナントD65、照射及び受光の幾何条件は幾何条件c(de:8°)とし、測定孔はφ30mm×5箇所(無作為に選択)とする。測定した反射スペクトル(平均のスペクトル)をそれぞれ
図2に示す。
なお、同条件でJIS K 8715(1999)に規定される白色度指数および色味指数は、実施例1では、それぞれW
10=50、TW
10=1.5であり、比較例1では、W
10=−65、TW
10=−25.2である。
【0083】
(抗ウィルス性評価)
実施例及び比較例で得られた化粧板の抗ウィルス性を評価するために、JIS R1756 可視光応答形光触媒材料の抗ウィルス性試験方法に準じて抗ウィルス性に関する測定を行う。測定結果は、大腸菌に対して不活化されたウィルス濃度で表す。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用する。ウィルス不活度とは、バクテリオファージを用いた抗ウィルス性試験で、ファージウィルスQβ濃度:830万個/ミリリットルを用いて、大腸菌に感染することができるウィルスの濃度を測定することにより、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度を算出した結果である。すなわち、ウィルス不活度は、ファージウィルスQβ濃度に対して、大腸菌に感染することができない濃度の度合いであり、(ファージウィルスQβ濃度−大腸菌に感染することができるウィルスの濃度)/(ファージウィルスQβ濃度)×100で算出することができる。ウィルス不活度の値が高いほど、抗ウィルス性に優れるといえる。
大腸菌に感染することができるウィルス濃度は、次のように測定する。ファージウィルス濃度既知(830万個/ミリリットル)の試験液を化粧板上に滴下して、JIS R1756に準じて光照射してウィルスを失活させた後、化粧板を所定量の水で洗浄、これを1000倍に希釈して、大腸菌培地に移植して培養し、失活していないウィルスの数を計測する。この失活していないウィルスの数、洗浄に使用した水の量および希釈率から大腸菌に感染することができるウィルス濃度を計算する。結果を表1に示す。
表1には、各化粧板の430〜500nmの光の反射率と、500Wと1000Wの白熱電球を光源に用いた場合のウィルス不活度、ウィルス不活性度を記載する。
ウィルス不活性度とは、元のウィルスの量を1とし、ウィルス失活処理後に失活したウィルス量をXとした場合に、常用対数log(1−X)で示される数値(負の値で示される)であり、絶対値が大きい程ウィルスを不活性化する能力が高い。例えば、元のウィルスの99.9%が失活した場合、ウィルス不活性度は、log(1−0.999)=−3.00で表記される。なお、ウィルス失活処理前の全ウィルス量に対するウィルス失活処理後に失活したウィルス量の割合を%で表したもの(上記の場合、99.9%)をウィルス不活度という。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果から、実施例1〜4に係る化粧板は、白色もしくは金属調の色彩であり、光触媒による樹脂劣化による意匠の低下も認識されないため良好な意匠性を保つことができ、光源500Wの低光量条件下でも可視光応答型光触媒の機能を充分に発揮することができることがわかる。
また、比較例1の化粧板は波長430−500nmの光の反射率が低いために、比較例2の化粧板は可視光応答型光触媒が光触媒担持用粒子に担持されていないために、可視光応答型光触媒の機能が充分に発揮されないことがわかる。
比較例2の化粧板は、反射率は高いものの、反射の方向が下側からのみであり、実施例のように光触媒担持用粒子による横方向からの反射がなく、また、アクリル樹脂中に可視光応答型光触媒が埋設、被覆されてしまうため、光触媒に充分に水分や酸素が供給されず、触媒表面にラジカルが発生しないため、光触媒の抗ウィルス機能が不十分であると推定される。
また、比較例3の化粧板も、反射率が高いものの、反射の方向が下側からのみであり、実施例のように光触媒担持用粒子による横方向からの反射光による活性化効果が得られないので、本発明の方が、光触媒の抗ウィルス機能が優れていると推定される。
本発明では可視光応答型光触媒が光触媒担持用粒子の露出面に担持されている。このため、光触媒が空気と直接接触し、光触媒に対して、空気中の水分や酸素が供給されるため、ラジカルが生成し、ウィルスを失活させることができるのである。