特開2018-202899(P2018-202899A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2018202899-車両用駆動力配分装置 図000003
  • 特開2018202899-車両用駆動力配分装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202899(P2018-202899A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】車両用駆動力配分装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20181130BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20181130BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20181130BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20181130BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20181130BHJP
   B60K 17/356 20060101ALI20181130BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20181130BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B60W10/02 900
   B60K6/52ZHV
   B60W20/40
   B60K6/44
   B60W10/08 900
   B60K17/356 B
   B60L11/14
   B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-106988(P2017-106988)
(22)【出願日】2017年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡之
【テーマコード(参考)】
3D043
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D043AA07
3D043AB01
3D043AB17
3D043EA02
3D043EA05
3D043EA45
3D043EF27
3D202BB11
3D202BB37
3D202CC51
3D202DD24
3D202EE23
3D202FF02
3D202FF14
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA02
5H125CB05
5H125EE09
(57)【要約】
【課題】過熱等によって駆動モータの出力トルクが制限される場合に、駆動力配分用の左右のクラッチの無駄に大きな係合トルクによる係合でエネルギー効率が悪化することを抑制する。
【解決手段】過熱によりモータジェネレータ(駆動モータ)の出力トルクが制限される場合に(S2)、その制限に応じて左右のクラッチの係合トルクの合計トルクが制限されるため(S5)、モータジェネレータの出力トルクの伝達に必要な係合トルクを確保しつつ、必要以上の無駄な係合トルクでクラッチを係合させることが防止され、その係合トルクを発生させるための油圧や電力等が節減されて燃費等のエネルギー効率が向上する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪の何れか一方の左右の主駆動輪を回転駆動する主駆動力源と、前後輪の他方の左右の副駆動輪を回転駆動する副駆動力源と、を有する前後輪駆動車両に適用され、
前記副駆動力源として用いられる駆動モータと、
前記駆動モータと左側の副駆動輪との間の動力伝達経路に介装された摩擦係合式の左クラッチと、
前記駆動モータと右側の副駆動輪との間の動力伝達経路に介装された摩擦係合式の右クラッチと、
前記左クラッチおよび前記右クラッチの係合トルク、並びに前記駆動モータの出力トルクを制御する駆動力配分制御部と、
を備える車両用駆動力配分装置において、
前記駆動力配分制御部は、前記駆動モータの出力トルクが制限される際に、前記左クラッチおよび前記右クラッチの係合トルクの合計トルクを、前記駆動モータの出力トルクの制限に応じて制限するクラッチ係合制限部を有する
ことを特徴とする車両用駆動力配分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前後輪駆動車両に係り、特に、副駆動力源と左右の副駆動輪との間にそれぞれ摩擦係合式のクラッチが介装された車両用駆動力配分装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前後輪の何れか一方の左右の主駆動輪を回転駆動する主駆動力源と、前後輪の他方の左右の副駆動輪を回転駆動する副駆動力源と、を有する前後輪駆動車両が知られている。そして、このような前後輪駆動車両に関し、(a) 前記副駆動力源として用いられる駆動モータと、(b) 前記駆動モータと左側の副駆動輪との間の動力伝達経路に介装された摩擦係合式の左クラッチと、(c) 前記駆動モータと右側の副駆動輪との間の動力伝達経路に介装された摩擦係合式の右クラッチと、(d) 前記左クラッチおよび前記右クラッチの係合トルク、並びに前記駆動モータの出力トルクを制御する駆動力配分制御部と、を備える車両用駆動力配分装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−63265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両用駆動力配分装置においては、駆動モータや左右のクラッチがそれぞれ異なる条件で過熱する可能性があるとともに、過熱した場合には、それぞれ個別にフェールセーフ機能が定められていた。すなわち、大出力継続使用等による駆動モータの過熱時には、その駆動モータを保護するために駆動モータの出力トルクや使用継続時間等が制限されるが、左右のクラッチについては特に制限されない。このため、駆動モータの実際の出力トルクに比べて無駄に大きな係合トルクでそれ等のクラッチを係合させる可能性があり、その係合トルクを発生させるために油圧や電力等が無駄に消費されて、燃費等のエネルギー効率が悪化する恐れがあった。バッテリーの出力(放電)制限によって駆動モータの出力トルクが制限される場合も同様である。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、過熱等によって駆動モータの出力トルクが制限される場合に、駆動力配分用の左右のクラッチの無駄に大きな係合トルクによる係合でエネルギー効率が悪化することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、前後輪の何れか一方の左右の主駆動輪を回転駆動する主駆動力源と、前後輪の他方の左右の副駆動輪を回転駆動する副駆動力源と、を有する前後輪駆動車両に適用され、(a) 前記副駆動力源として用いられる駆動モータと、(b) 前記駆動モータと左側の副駆動輪との間の動力伝達経路に介装された摩擦係合式の左クラッチと、(c) 前記駆動モータと右側の副駆動輪との間の動力伝達経路に介装された摩擦係合式の右クラッチと、(d) 前記左クラッチおよび前記右クラッチの係合トルク、並びに前記駆動モータの出力トルクを制御する駆動力配分制御部と、を備える車両用駆動力配分装置において、(e) 前記駆動力配分制御部は、前記駆動モータの出力トルクが制限される際に、前記左クラッチおよび前記右クラッチの係合トルクの合計トルクを、前記駆動モータの出力トルクの制限に応じて制限するクラッチ係合制限部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このような車両用駆動力配分装置においては、駆動モータの出力トルクが制限される際に、その制限に応じて左右のクラッチの係合トルクの合計トルクが制限されるため、駆動モータの出力トルクの伝達に必要な係合トルク(必要伝達トルク)を確保しつつ、必要以上の無駄な係合トルクでクラッチを係合させることが防止され、その係合トルクを発生させるための油圧や電力等が節減されて燃費等のエネルギー効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用された車両用駆動力配分装置を備える前後輪駆動車両の駆動系統の骨子図で、制御系統の要部を併せて示した図である。
図2図1の電子制御装置が機能的に備えている駆動力配分制御部によって実行される駆動力配分制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前後輪駆動車両は、前輪が主駆動輪で後輪が副駆動輪であっても良いし、後輪が主駆動輪で前輪が副駆動輪であっても良い。主駆動輪は、例えば要求駆動力に応じて常時回転駆動されて駆動力を発生する一方、副駆動輪は、例えば発進時や主駆動輪のスリップ時等に走行性能を確保したり、旋回時や直進走行時等に走行姿勢を安定させたりするために、左右個別に補助的に回転駆動されて駆動力を発生する。主駆動輪を回転駆動する主駆動力源は、エンジン等の内燃機関であっても良いし電動モータでも良く、或いはその両方を備えたハイブリッド式の駆動力源を用いることもできる。また、内燃機関に遊星歯車装置等の分割機構を介して接続されたジェネレータの回生制御で内燃機関の出力を主駆動輪に伝達するものでも良いなど、種々の態様が可能である。副駆動力源として用いられる駆動モータは、単なる電動モータでも良いし、電動モータおよび発電機として択一的に機能させることができるモータジェネレータを用いることもできる。
【0010】
駆動力配分制御部は、摩擦係合式の左右のクラッチの係合トルク制御および駆動モータの出力トルク制御により、前後輪の駆動力配分を制御できると同時に、左右の副駆動輪の駆動力配分を制御することができる。左右のクラッチは、それぞれ係合トルクや駆動モータの出力トルクに応じて完全係合状態(固定状態)、解放状態、或いはスリップ状態とされる。
【0011】
クラッチ係合制限部は、例えば駆動モータが過熱状態であると判断されてその出力トルクが制限される場合に、左右のクラッチの合計トルクを制限するが、バッテリーの出力(放電)制限時に駆動モータの出力トルクが制限された場合など、他の要因で駆動モータの出力トルクが制限された場合に、左右のクラッチの合計トルクを制限するものでも良い。クラッチ係合制限部は、駆動モータの出力トルクの制限に応じて左右のクラッチの合計トルクを制限するもので、例えば、駆動モータの出力トルクの制限値(上限)に、駆動モータとクラッチとの間のギヤ比を掛け算して求められる必要伝達トルク以下になるように、左右のクラッチの合計トルクを制限するように構成されるが、出力制限された駆動モータの実際の出力トルクに対応する必要伝達トルクと一致するように左右のクラッチの合計トルクを制限しても良い。
【0012】
クラッチ係合制限部は、駆動モータの出力トルクが制限される場合に、常に左右のクラッチの合計トルクを制限しても良いが、他の実行条件を満足する場合だけ合計トルク制限を実行するようにしても良いし、所定の実行禁止条件(例えばクラッチの過熱時など)を満たす場合はその合計トルク制限の実行が禁止されても良いなど、種々の態様が可能である。例えば、駆動モータの出力トルク制限時であっても、車両発進時または直進走行時には、前記出力トルクの制限に影響されることなく、すなわち前記合計トルクの制限を受けることなく、左クラッチおよび右クラッチを互いに等しい所定の係合トルクで係合制御する差動制限部を設けることも可能である。駆動モータの出力トルク制限時(例えば出力トルクが0)であっても、左右のクラッチを互いに等しい係合トルクで係合させることにより、左右の副駆動輪の差動を制限して等速で回転させることにより、発進性能や直進走行時の走行安定性を確保することができる。但し、車両発進時や直進走行時を含めて、クラッチ係合制限部により左右のクラッチの合計トルクを制限しても良い。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された前後輪駆動車両10の駆動系統の骨子図で、制御系統の要部を併せて示した図である。この前後輪駆動車両10は、主駆動輪である左右の前輪12L、12Rを回転駆動する主駆動力源14と、副駆動輪である左右の後輪16L、16Rを回転駆動するモータジェネレータMGとを備えている。主駆動力源14は、例えば内燃機関であるエンジンおよび電動モータを有するハイブリッド式の駆動力源であり、図示しない差動歯車装置等を介して左右の前輪12L、12Rに駆動力が伝達される。モータジェネレータMGは、電動モータおよび発電機として択一的に機能させることができるもので、副駆動力源として機能する駆動モータに相当する。
【0014】
モータジェネレータMGは、小歯車20および大歯車22から成る減速機構を介してドライブシャフト24に連結され、そのドライブシャフト24から左右のクラッチ26、28を介して左右の後輪16L、16Rに駆動力が伝達される。左右のクラッチ26、28は、何れも摩擦係合式のクラッチで、例えば油圧によって係合させられる単板式或いは多板式のクラッチや、電磁式クラッチをパイロットクラッチとしてカムを介して多板式のメインクラッチを係合させる電磁カップリングなどであり、油圧制御ソレノイド弁や電磁ソレノイドの励磁電流等を制御することで係合トルクを連続的に制御することができる。
【0015】
このような前後輪駆動車両10は、電子制御装置30を備えている。電子制御装置30は、車両全体の駆動力を制御したり、前後輪の駆動力配分を制御したり、左右の後輪16L、16Rの駆動力配分を制御したりするコントローラとして機能するもので、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータを備えて構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って各種の信号処理を実行する。電子制御装置30には、例えばアクセル操作量センサ40や車輪速センサ42、舵角センサ44、ヨーセンサ46、前後Gセンサ48等からアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量θacc、左右の前輪12L、12Rおよび後輪16L、16Rの各車輪回転速度ωi、ステアリングホイールの操舵角Φ、車両のヨー角速度Y、車両の前後方向G(加速度)など、制御に必要な各種の情報が供給されるようになっている。車輪回転速度ωiから車速Vを算出することができる。電子制御装置30にはまた、MG温度センサ50、左クラッチ温度センサ52、右クラッチ温度センサ54から、モータジェネレータMGのモータ温度Tm、左クラッチ温度Tcl、右クラッチ温度Tcrを表す信号が供給されるようになっている。左クラッチ温度Tcl、右クラッチ温度Tcrは、左右のクラッチ26、28の摩擦材乃至はその近傍部分の温度である。
【0016】
電子制御装置30は、駆動力制御や駆動力配分制御に関連して主駆動力源制御部32および駆動力配分制御部34を機能的に備えている。主駆動力源制御部32は、基本的にアクセル操作量θaccおよび車速V等から求められる要求駆動力が得られるように主駆動力源14のトルクを制御するもので、駆動力配分制御部34によってモータジェネレータMGが駆動される場合は、その駆動力分を要求駆動力から差し引いた駆動力が得られるように主駆動力源14を制御する。また、モータジェネレータMGが回生制御されて発電する場合は、その回生制御による制動力分を要求駆動力に加えた駆動力が得られるように主駆動力源14を制御する。
【0017】
駆動力配分制御部34は、前後輪の駆動力配分および左右後輪16L、16Rの駆動力配分を制御するもので、所定の駆動力配分となるようにモータジェネレータMGの出力トルク、および左右のクラッチ26、28の係合トルクを制御する。また、モータジェネレータMGや左クラッチ26、右クラッチ28の過熱による損傷を防止するために、それ等の作動を制限するようになっている。すなわち、この駆動力配分制御部34は、モータジェネレータMGの出力を制限するモータ出力制限部や、クラッチ26、28の係合トルクを制限するクラッチ係合制限部等を機能的に備えており、具体的には図2のフローチャートのステップS1〜S8(以下、単にS1〜S8という)に従って信号処理を行なう。S1およびS2はモータ出力制限部に相当し、S5はクラッチ係合制限部に相当し、S6は差動制限部に相当し、S8は通常制御部に相当する。駆動力配分制御部34、モータジェネレータMG、および左右のクラッチ26、28によって駆動力配分システム60が構成されている。この駆動力配分システム60は、車両用駆動力配分装置に相当する。
【0018】
図2のS1では、駆動モータ温度すなわちモータジェネレータMGのモータ温度Tmが予め定められた過熱判定値以上か否かを判断し、過熱判定値以上の場合は過熱状態であると判断してS2以下を実行するが、過熱判定値より低い場合はS8で通常の駆動力配分制御を実行する。モータ温度Tmは、MG温度センサ50によって検出されるが、モータジェネレータMGの出力トルクや使用継続時間等からモータ温度Tmを推定して過熱状態か否かを判断することもできる。S8の通常駆動力配分制御は、前後輪の駆動力配分および左右後輪16L、16Rの駆動力配分を制御する。前後輪の駆動力配分については、例えばアクセル操作量θaccや各車輪回転速度ωi、操舵角Φ、前後方向G、或いは雪道走行モード等の選択走行モード等に基づいて、予め定められた配分割合等から後輪側分担駆動力を算出し、その分担駆動力が得られるようにモータジェネレータMGの出力トルクを制御するとともに、その分担駆動力を左右後輪16L、16Rに伝達できるように一対の左クラッチ26および右クラッチ28の係合トルクを制御する。左右後輪16L、16Rの駆動力配分については、合計の駆動力が上記後輪側分担駆動力になることを条件として、例えば直進走行時には左右後輪16L、16Rに対する駆動力配分が互いに等しい等配分状態となるように、一対の左クラッチ26および右クラッチ28の係合トルクが互いに等しくなるように制御する。具体的には、上記後輪側分担駆動力の1/2の等配分駆動力が得られるように、一対の左クラッチ26および右クラッチ28の係合トルクを制御する。また、旋回走行時等には、合計の駆動力が上記後輪側分担駆動力となることを条件として、左右後輪16L、16Rに対する駆動力配分が相違する不等配分状態となるように、一対の左クラッチ26および右クラッチ28の係合トルクが互いに相違するように制御する。この配分比は、予め定められた一定値であっても良いが、操舵角Φやヨー角速度Y等の走行状態などに基づいて可変設定されても良い。なお、S1とS8との間に、S3のようにクラッチ温度Tcl、Tcrが何れも過熱判定値よりも低いか否かを判断するステップを設け、クラッチ温度Tcl、Tcrが何れも過熱判定値よりも低い場合に、S8の通常の駆動力配分制御を実行するようにしても良い。
【0019】
S1でモータ温度Tmが過熱判定値以上と判断された場合に実行するS2では、モータジェネレータMGの負荷率すなわち最大出力トルクに対する出力可能な出力トルクの割合を制限し、モータジェネレータMGの出力トルクを補正する。上記負荷率すなわち出力トルクの制限値(上限)は、予め一定値が定められても良いが、モータ温度Tm等に応じて可変設定されても良い。S3では、クラッチ温度Tcl、Tcrが何れも予め定められた過熱判定値よりも低いか否かを判断し、何れも過熱判定値より低い場合はS4以下を実行するが、何れか一方でも過熱判定値以上の場合は過熱状態と判断してS7を実行する。クラッチ温度Tcl、Tcrは、クラッチ温度センサ52、54によって検出されるが、クラッチ26、28の係合トルクや係合時間等からクラッチ温度Tcl、Tcrを推定して過熱状態か否かを判断することもできる。S7では、クラッチ保護のために、左右のクラッチ26、28を何れも解放または完全係合する。本実施例では、左右のクラッチ26、28を何れも解放するとともに、モータジェネレータMGの出力トルクを0にして、駆動力配分システム60の機能を停止する。
【0020】
クラッチ温度Tcl、Tcrが何れも過熱判定値よりも低い場合に実行するS4では、車両発進時または直進走行時であるか否かを判断し、車両発進時でも直進走行時でもない場合、例えば車速Vが一定値以上で且つ操舵角Φが一定値以上の旋回走行時等にはS5を実行する。S5では、左右のクラッチ26、28の係合トルクの合計トルクを、S2で制限されたモータジェネレータMGの出力トルクの制限値に応じて制限する。すなわち、モータジェネレータMGの出力トルク(制限値)を伝達できる最低の係合トルク値に制限するもので、具体的にはモータジェネレータMGの出力トルクの制限値(上限)に、減速機構として機能する小歯車20と大歯車22とのギヤ比を掛け算して求められる必要伝達トルク以下になるように、左右のクラッチ26、28の合計トルクを制限する。出力制限されたモータジェネレータMGの実際の出力トルクに応じて、必要伝達トルクと一致するように左右のクラッチ26、28の合計トルクを制限しても良い。この合計トルクの制限は、左クラッチ26および右クラッチ28の係合トルクの合計トルクが制限値を越えた場合に、例えばその超過分の係合トルクを2で割ってクラッチ26、28の係合トルクからそれぞれ差し引くようにしても良いし、同じ割合ずつ減らすようにしても良い。また、一方の係合トルクが0の場合は、他方の係合トルクを制限値以下に制限すれば良いなど、種々の態様が可能である。このように左右のクラッチ26、28の合計トルクが制限されることにより、モータジェネレータMGの出力トルクを伝達するのに必要な係合トルク(必要伝達トルク)を確保しつつ、必要以上の無駄な係合トルクでクラッチ26、28を係合させることが防止され、その係合トルクを発生させるための油圧や電力等が節減される。
【0021】
S4の判断がYES(肯定)の場合、すなわち車両発進時または直進走行時である場合には、S6を実行する。S6では、モータジェネレータMGの出力トルクの制限に影響されることなく、左クラッチ26および右クラッチ28を互いに等しい所定の係合トルク(最大トルクなど)で係合制御する。すなわち、モータジェネレータMGの出力制限時であっても、左右のクラッチ26、28を互いに等しい係合トルクで係合させることにより、左右の後輪16L、16Rの差動を制限して等速で回転させることにより、発進性能や直進走行時の走行安定性を確保することができる。
【0022】
このように本実施例の前後輪駆動車両10の駆動力配分システム60によれば、過熱によりモータジェネレータMGの出力トルクが制限される場合に、その制限に応じて左右のクラッチ26、28の係合トルクの合計トルクが制限されるため、モータジェネレータMGの出力トルクの伝達に必要な係合トルクを確保しつつ、必要以上の無駄な係合トルクでクラッチ26、28を係合させることが防止され、その係合トルクを発生させるための油圧や電力等が節減されて燃費等のエネルギー効率が向上する。
【0023】
また、モータジェネレータMGの出力制限時であっても、車両発進時または直進走行時には、モータジェネレータMGの出力トルクの制限に影響されることなく、左右のクラッチ26、28を互いに等しい係合トルクで係合させ、左右の後輪16L、16Rの差動を制限して等速で回転させるため、発進性能や直進走行時の走行安定性を適切に確保することができる。
【0024】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0025】
10:前後輪駆動車両 12L、12R:前輪(主駆動輪) 14:主駆動力源 16L、16R:後輪(副駆動輪) 26:左クラッチ 28:右クラッチ 34:駆動力配分制御部 60:駆動力配分システム(車両用駆動力配分装置) MG:モータジェネレータ(副駆動力源、駆動モータ) S5:クラッチ係合制限部
図1
図2