【課題】シート着座状態及びシート格納状態のいずれの状態においても車体フロアと後脚との取り付け部分(可動部)への異物の混入を抑制し、さらに、衝撃に対する外れ防止にも有効なカバー部材を有する車両用シートを提供する。
【解決手段】シートバック18の背面下部を被覆するカバー部材40を有する。カバー部材40は、右後脚14Rを覆う右後部カバー44Rと、右後部カバー44Rのシート着座状態における下部に設けられ、右後脚14Rから右可動部30Rにかけて覆う右可動被覆部50Rと、該右可動被覆部50Rに設けられ、右後脚14Rの下端に掛け止められる掛け止め部54とを有する。
車体のフロアにそれぞれ可動部を介して回転可能に設置される後脚を有し、前記後脚を起こしたシート着座状態と、前記後脚を倒したシート格納状態とに変化させることが可能なシート本体と、
前記シート本体の背面下部を被覆するカバー部材とを有し、
前記カバー部材は、
前記後脚を覆う後部カバーと、
前記後部カバーの前記シート着座状態における下部に設けられ、前記後脚から前記可動部にかけて覆う可動被覆部と、
前記可動被覆部に設けられ、前記後脚の下端に掛け止められる掛け止め部とを有することを特徴とする車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のダイブダウンシートのリアレッグを覆う蓋部において、着座状態や格納状態にさせた際に、車体フロアとリアレッグの取付部位に異物が入る虞があり、シート着座状態及びシート格納状態のいずれの状態においても車体フロアとリアレッグとの取り付け部分への異物の混入を抑制する後部カバーの開発が望まれていた。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、シート着座状態及びシート格納状態のいずれの状態においても車体フロアと後脚との取り付け部分(可動部)への異物の混入を抑制し、さらに、衝撃に対する外れ防止にも有効なカバー部材を有する車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 本発明に係る車両用シートは、車体のフロアにそれぞれ可動部を介して回転可能に設置される後脚を有し、前記後脚を起こしたシート着座状態と、前記後脚を倒したシート格納状態とに変化させることが可能なシート本体と、前記シート本体の背面下部を被覆するカバー部材とを有し、前記カバー部材は、前記後脚を覆う後部カバーと、前記後部カバーの前記シート着座状態における下部に設けられ、前記後脚から前記可動部にかけて覆う可動被覆部と、前記可動被覆部に設けられ、前記後脚の下端に掛け止められる掛け止め部とを有することを特徴とする(第1の特徴)。
【0009】
後部カバーと可動被覆部によって、後脚から可動部にかけて覆われることから、シート着座状態及びシート格納状態のいずれの状態においても車体フロアと後脚との取り付け部分(可動部)への異物の混入を抑制することができる。さらに、可動被覆部が後脚の下端に掛け止められることにより、シート着座状態では高さ方向における衝撃に対して、シート格納状態ではシート前後方向における衝撃に対する外れ防止に効果がある。
【0010】
[2] 本発明において、前記後脚は複数備えられ、前記カバー部材は、前記後脚のうち、一方の後脚の背面を被覆する第1後部カバーと、前記後脚のうち、他方の後脚の背面を被覆する第2後部カバーと、前記第1後部カバーと前記第2後部カバーとを一体に連結する連結部とを有し、前記可動被覆部は、前記第1後部カバー及び前記第2後部カバーのうち、少なくともいずれか一方の下部に設けられていてもよい(第2の特徴)。
【0011】
これにより、前記カバー部材は、第1後部カバーと第2後部カバーとを一体に連結する連結部を有することから、シート本体への取り付け点数を減らすことができ、しかも、1回の取り付け作業で、シート本体にカバー部材を取り付けることができるため、取り付け作業の効率を向上させることができる。しかも、連結部によって、第1後部カバーと第2後部カバーの位置関係が一定となるため、カバー部材のシート本体への取り付け安定性も向上する。
【0012】
[3] 本発明において、前記カバー部材は、前記シート本体のメンバーフレームに締結部材で取り付けられ、前記シート本体は、後方側の表皮の下部に孔が形成されており、前記カバー部材は、前記表皮の前記孔を介して前記締結部材によって前記メンバーフレームに取り付けられていてもよい(第3の特徴)。
【0013】
カバー部材をメンバーフレームに締結部材によって取り付けられるため、カバー部材の取り付け安定性が向上する。また、締結部材によってカバー部材とメンバーフレームとの間で表皮の固定がなされるため、表皮の取り付け安定性が向上する。
【0014】
[4] 本発明において、前記カバー部材は、前記表皮と対向する面に、複数の係合爪を有し、前記表皮は、前記係合爪が(巻き込んで)係合される複数の係合穴を有してもよい(第4の特徴)。
【0015】
これにより、上記締結部材による固定だけでなく、複数の係合爪によってカバー部材と表皮とが係合されるため、表皮の取り付け安定性の向上と外れ防止を図ることができる。
【0016】
[5] 本発明において、前記カバー部材は、ボルトが挿通する複数のボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔を挿通した前記ボルトを締結するボルト締結部位とを有し、前記複数のボルト挿通孔は、前記複数の係合爪と同じ高さ位置であって、且つ、前記複数の係合爪間に設けられていてもよい(第5の特徴)。
【0017】
これにより、係合爪を掛け止めてから、係合爪と係合爪との間をボルトで締結できるため、取り付け作業性が向上する。
【0018】
[6] 本発明において、前記係合爪は、前記カバー部材から前方へ延出し、さらに下方へ突出する鉤状の凸部を有し、前記ボルト締結部位は、前記複数の係合爪が配列する線上に形成されていてもよい(第6の特徴)。
【0019】
これにより、係合爪は、カバー部材から前方へ延出し、さらに下方へ突出する鉤状の凸部を有する。そのため、係合爪がリブとして機能し、剛性が向上する。その結果、複数のボルト締結部位と複数の凸部とを線上に配列しても剛性を確保することができ、高さ方向におけるコンパクト化も実現することができる。
【0020】
[7] 本発明において、前記第1後脚の外方側面を覆う第1側部カバーと、前記第2後脚の外方側面を覆う第2側部カバーとを有し、前記第1後部カバーの外方側部に、前記第1側部カバーの係合爪が係合する係合部が設けられ、前記第2後部カバーの外方側部に、前記第2側部カバーの係合爪が係合する係合部が設けられていてもよい(第7の特徴)。
【0021】
すなわち、第1後部カバーの外方側部に、第1側部カバーの係合爪が係合する係合部が設けられ、第2後部カバーの外方側部に、第2側部カバーの係合爪が係合する係合部が設けられている。すなわち、カバー部材に、一方の後脚の第1側部カバー及び他方の後脚の第2側部カバーを係合するための部位が対称的に備えられているため、シート幅方向の衝撃に対する強度を確保することができ、カバー部材の外れ防止に寄与する。これは、取り付け安定性の向上につながる。
【0022】
[8] 本発明において、前記第1後部カバー及び前記第2後部カバーの各内方部分に、前記シート本体の前後方向、前方側へ窪んだ段差部が設けられていてもよい(第8の特徴)。
【0023】
これにより、車両内に搬送された車椅子の前輪を段差部によって案内することができ、車椅子の前輪が直接第1後部カバー及び第2後部カバーに乗り入れることを防止することができる。
【0024】
[9] 本発明において、前記一方の後脚及び前記他方の後脚の少なくとも一方の内方に突出し、前記一方の後脚及び前記他方の後脚の少なくとも一方の長さ方向に延在する係止部を一体に有するブラケットを有し、前記第1後部カバー及び前記第2後部カバーの少なくとも一方の前面側に、前記係止部に係合する溝状の係合部を有してもよい(第9の特徴)。
【0025】
これにより、第1後部カバー及び第2後部カバーの少なくとも一方の係合部に、ブラケットの係止部を係合させることで、カバー部材の取り付け安定性が向上する。
【0026】
[10] 本発明において、前記第1後部カバー及び前記第2後部カバーの少なくとも一方の前面側に、前記ブラケットのうち、前記係止部以外の部分が当接する凸部が設けられていてもよい(第10の特徴)。
【0027】
これにより、第1後部カバー及び第2後部カバーの少なくとも一方へのブラケットの係止部の係合に加えて、ブラケットのうち、係止部以外の部分が第1後部カバー及び第2後部カバーの少なくとも一方の凸部に当接することとなる。その結果、後方からの衝撃等に対する耐衝撃性を向上させることができる。
【0028】
[11] 本発明において、前記第1後部カバー及び前記第2後部カバーの少なくとも一方は、該後部カバーの内方から前方に延出し、且つ、前記ブラケットの前記係止部の一部を覆うフランジ部を有してもよい(第11の特徴)。
【0029】
これにより、フランジ部によってブラケットの露出が回避されることから、乗員の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る車両用シートの第1の特徴によれば、後部カバーと可動被覆部によって、後脚から可動部にかけて覆われることから、シート着座状態及びシート格納状態のいずれの状態においても車体フロアと後脚との取り付け部分(可動部)への異物の混入を抑制することができる。さらに、可動被覆部が後脚の下端に掛け止められることにより、シート着座状態では高さ方向における衝撃に対して、シート格納状態ではシート前後方向における衝撃に対する外れ防止に効果がある。
【0031】
本発明に係る車両用シートの第2の特徴によれば、前記カバー部材は、第1後部カバーと第2後部カバーとを一体に連結する連結部を有することから、シート本体への取り付け点数を減らすことができ、しかも、1回の取り付け作業で、シート本体にカバー部材を取り付けることができるため、取り付け作業の効率を向上させることができる。しかも、連結部によって、第1後部カバーと第2後部カバーの位置関係が一定となるため、カバー部材のシート本体への取り付け安定性も向上する。
【0032】
本発明に係る車両用シートの第3の特徴によれば、カバー部材をメンバーフレームに締結部材によって取り付けられるため、カバー部材の取り付け安定性が向上する。また、締結部材によってカバー部材とメンバーフレームとの間で表皮の固定がなされるため、表皮の取り付け安定性が向上する。
【0033】
本発明に係る車両用シートの第4の特徴によれば、上記締結部材による固定だけでなく、複数の係合爪によってカバー部材と表皮とが係合されるため、表皮の取り付け安定性の向上と外れ防止を図ることができる。
【0034】
本発明に係る車両用シートの第5の特徴によれば、係合爪を掛け止めてから、係合爪と係合爪との間をボルトで締結できるため、取り付け作業性が向上する。
【0035】
本発明に係る車両用シートの第6の特徴によれば、係合爪は、カバー部材から前方へ延出し、さらに下方へ突出する鉤状の凸部を有する。そのため、係合爪がリブとして機能し、剛性が向上する。その結果、複数のボルト締結部位と複数の凸部とを線上に配列しても剛性を確保することができ、高さ方向におけるコンパクト化も実現することができる。
【0036】
本発明に係る車両用シートの第7の特徴によれば、第1後部カバーの外方側部に、第1側部カバーの係合爪が係合する係合部が設けられ、第2後部カバーの外方側部に、第2側部カバーの係合爪が係合する係合部が設けられている。すなわち、カバー部材に、一方の後脚の第1側部カバー及び他方の後脚の第2側部カバーを係合するための部位が対称的に備えられているため、シート幅方向の衝撃に対する強度を確保することができ、カバー部材の外れ防止に寄与する。これは、取り付け安定性の向上につながる。
【0037】
本発明に係る車両用シートの第8の特徴によれば、車両内に搬送された車椅子の前輪を段差部によって案内することができ、車椅子の前輪が直接第1後部カバー及び第2後部カバーに乗り入れることを防止することができる。
【0038】
本発明に係る車両用シートの第9の特徴によれば、これにより、第1後部カバー及び第2後部カバーの少なくとも一方の係合部に、ブラケットの係止部を係合させることで、カバー部材の取り付け安定性が向上する。
【0039】
本発明に係る車両用シートの第10の特徴によれば、第1後部カバー及び第2後部カバーの少なくとも一方へのブラケットの係止部の係合に加えて、ブラケットのうち、係止部以外の部分が第1後部カバー及び第2後部カバーの少なくとも一方の凸部に当接することとなる。その結果、後方からの衝撃等に対する耐衝撃性を向上させることができる。
【0040】
本発明に係る車両用シートの第11の特徴によれば、フランジ部によってブラケットの露出が回避されることから、乗員の安全性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る車両用シートの実施の形態例を
図1〜
図11Bを参照しながら説明する。
【0043】
本実施の形態に係る車両用シート10は、
図1に示すように、前脚12と、後脚14(リンク)と、シートクッション16と、シートバック18と、アーム20と、ヘッドレスト21とを備えている。
【0044】
車両用シート10は、
図2A及び
図2Bに示すように、シートクッション16が車両22のフロア24の上方に配置される「シート着座状態」と(
図2A参照)、後脚14が前方に回動され、シートクッション16がフロア24の上方に配置されると共に、シートクッション16の上にシートバック18が重ねられ、シートバック18の背面が上面となる「シート格納状態」(
図2B参照)との間で移動可能となっている。
【0045】
前脚12は、立設状態においてシートクッション16を下方から支持すると共に、第1軸部26a及び第2軸部26bをそれぞれ回転中心として前方に回動可能となっている。
【0046】
後脚14は、第3軸部26cを介してシートバック18に回転可能に取り付けられ、可動部30を介してフロア24に回転可能に取り付けられている。すなわち、
図3Aに示すように、左後脚14Lは、左可動部30Lを介してフロア24に回転可能に設置され、右後脚14Rは、右可動部30Rを介してフロア24(
図2A及び
図2B参照)に回転可能に設置されている。
【0047】
また、
図2Aに示すように、シートクッション16の前方の底面には、前脚12の上端が第2軸部26bを介して取り付けられ、シートクッション16の後端は、L字状のアーム20を介してシートバック18に回転自在に取り付けられている。
【0048】
シートバック18は、立設状態における下端が後脚14の上端に固定され、第3軸部26cを中心に前方に回動可能となっている。
【0049】
アーム20はシートクッション16に固定されていると共に、その上端が第3軸部26cを介してシートバック18の下端に取り付けられている。そして、シートバック18が第3軸部26cを中心に前方に回動可能となっている。
【0050】
図2Bに示す上述した「シート格納状態」の際には、前脚12が第1軸部26aを中心に前方に回動すると共に、後脚14が可動部30を中心に前方に回動する。すなわち、前脚12とシートクッション16は、上述の回動に伴って折りたたみ可能な構成となっている。
【0051】
また、シートクッション16の後端は、アーム20を介してシートバック18に連結されているため、後脚14の回動に伴って前下方に移動する。シートバック18は、第3軸部26cを中心に前方に回動する。
【0052】
すなわち、車両用シート10を上述した「シート格納状態」にする際には、シートクッション16がフロア24の凹部24aに向かって略平行に移動する。そして、車両用シート10がフロア24の凹部24aに格納された状態では、シートバック18の前面とシートクッション16の上面とが相対する位置になると共に、シートバック18の背面が略水平となる。
【0053】
そして、図示しない車椅子を車室内に引き込む際には、例えば車両用シート10の前側に設置された前部シート装置32の下部にある電動ウインチ34からベルト36を引き出して、ベルト36の先に取り付けられている図示しない鉤を車椅子の脚に引っ掛けた上で、電動ウインチ34を駆動する。
【0054】
ここで、車両用シート10の構成、特に、シートバック18の構成について
図3A〜
図11Bも参照しながら説明する。
【0055】
図3A及び
図3Bに示すように、シートバック18の背面下部には逆U字状のカバー部材40が例えばボルト等の締結部材によって、シートバック18のメンバーフレーム42(
図7A及び
図7B参照)に固定される。このカバー部材40は、左後脚14L(
図3A参照)の背面を被覆する左後部カバー44Lと、右後脚14Rの背面を被覆する右後部カバー44Rと、左後部カバー44Lと右後部カバー44Rとを一体に連結する連結部46とを有する。
【0056】
図3Aに示すように、上述した可動部30は、左後脚14Lの下端部に設けられた左可動部30Lと、右後脚14Rの下端部に設けられた右可動部30Rとを有する。なお、連結部46の下部は、電動ウインチ34から引き出されたベルト36(
図2B参照)がスムーズに摺動するように、面取り加工(R加工)が施されている。
【0057】
左後部カバー44L及び右後部カバー44Rの各内方部分には、車両用シート10の前後方向、前方側に窪んだ左段差部48L及び右段差部48Rが設けられている。これら左段差部48L及び右段差部48Rは、それぞれ例えば平坦面あるいは左後部カバー44Lや右後部カバー44Rの曲面よりも曲率が小さい曲面に形成されている。
【0058】
そして、上述したカバー部材40は、
図3Bに示すように、左後部カバー44Lの下部に設けられ、左後脚14Lから左可動部30L(
図3A参照)にかけて覆う左可動被覆部50Lと、右後部カバー44Rの下部に設けられ、右後脚14Rから右可動部30Rにかけて覆う右可動被覆部50Rとを有する。
【0059】
右可動被覆部50Rは、
図4A及び
図4Bに示すように、右後部カバー44Rの厚みよりも薄い板状に形成され、右後脚14Rに沿って下方に延び、先端部が前方に湾曲した形状(湾曲部分52)を有する。特に、湾曲部分52には前方に突出する掛け止め部54が一体に形成されている。この掛け止め部54は、右後脚14R(
図3A参照)の下端に掛け止められる。つまり、右後部カバー44Rは、掛け止め部54が右後脚14Rに掛け止められることで右後脚14Rに固定される。このとき、右可動被覆部50Rが右後脚14Rと右可動部30Rとの連結部分を覆う形態となる。
【0060】
カバー部材40は、
図3Bに示すように、連結部46の左側及び右側にそれぞれボルトが挿通する複数のボルト挿通孔56と、これらボルト挿通孔56を挿通したボルトを例えばナットによって締結する凹状のボルト締結部位58とを有する。このボルト締結部位58には、ボルトの頭部が位置してもよいし、ナットが位置してもよい。ボルト締め作業が容易な方を選択すればよい。
【0061】
また、カバー部材40は、
図5A及び
図5Bに示すように、前方の面、すなわち、シートバック18の表皮と対向する面に、複数の係合爪60を有する。上述したボルト挿通孔56は、複数の係合爪60が配列する線上に形成されている。係合爪60は、
図6に示すように、カバー部材40から前方へ延出し、さらに下方へ突出する鉤状の凸部60aを有する。
【0062】
メンバーフレーム42は、
図7A及び
図7Bに示すように、2つの分割フレーム(前方フレーム42A及び後方フレーム42B)によって構成されている。前方フレーム42Aと後方フレーム42Bは、共に略コの字状に形成された開断面構造であり、メンバーフレーム42は、前方フレーム42Aと後方フレーム42Bとの間に空間が設けられた閉断面構造である。
【0063】
そして、前方フレーム42Aと後方フレーム42Bとの間に、
図8に示すシートバック18の表皮62の一部(下部に位置する表皮62の一部)が挟み込まれるようになっている(
図10A〜
図10C参照)。前方フレーム42A及び後方フレーム42Bには、ボルトが挿通するボルト挿通孔64A及び64B(
図7A及び
図9参照)を有する。特に、
図9に示すように、カバー部材40と対向する後方フレーム42Bには、カバー部材40の複数の係合爪60(
図6参照)が挿通する爪貫通孔66が形成されている。
【0064】
シートバック18は、
図8に示すように、後方側の表皮62の下部にボルトが挿通するボルト挿通孔68が形成されている。また、表皮62には、カバー部材40の複数の係合爪60(
図6参照)が巻き込まれるようにして係合される複数の爪係合孔70が形成されている。
【0065】
そして、カバー部材40は、以下のようにして、メンバーフレーム42に固定される。すなわち、例えば
図10Aに示すように、カバー部材40の係合爪60を後方フレーム42Bの爪貫通孔66を通して、表皮62の爪係合孔70に係合する。
【0066】
次いで、
図10Bに示すように、ボルト72を、カバー部材40のボルト挿通孔56、メンバーフレーム42の後方フレーム42Bのボルト挿通孔64B、表皮62のボルト挿通孔68及びメンバーフレーム42の前方フレーム42Aのボルト挿通孔64Aの順番で挿通し、前方フレーム42Aの前面において、ナット74にねじ込むことにより固定する。
【0067】
あるいは、
図10Cに示すように、ボルト72を、メンバーフレーム42の前方フレーム42Aのボルト挿通孔64A、表皮62のボルト挿通孔68、後方フレーム42Bのボルト挿通孔64B及びカバー部材40のボルト挿通孔56の順番で挿通し、カバー部材40のボルト締結部位58において、ナット74にねじ込むことにより固定する。
【0068】
この場合、
図5A及び
図5Bに示すように、カバー部材40の複数のボルト挿通孔56が、複数の係合爪60と同じ高さ位置であって、且つ、複数の係合爪60間に設けられており、ボルト締結部位58が、複数の係合爪60が配列する線上に形成されている。そのため、係合爪60を表皮62の爪係合孔70に係合した段階で、カバー部材40のボルト挿通孔56と表皮62のボルト挿通孔68が位置決めされ、係合爪60と係合爪60との間をボルトで締結することができるため、容易にボルト72の挿通作業を行うことができ、取り付け作業性が向上する。
【0069】
また、この車両用シート10は、
図7A及び
図9に示すように、左後脚14Lの外方側面を覆う左側カバー76Lと、右後脚14Rの外方側面を覆う右側カバー76Rとを有する。
図5Bに示すように、左後部カバー44Lの外方側部には、左側カバー72Lの左係合爪78L(
図11A参照)が係合する左係合部80L(係合穴、係合孔等)が設けられ、右後部カバー44Rの外方側部に、右側カバー76Rの右係合爪78R(
図11B参照)が係合する右係合部80R(係合穴、係合孔等)が設けられている。つまり、左後部カバー44Lの外方側部に左側カバー76Lの左係合爪78Lを係合することで、左後脚14Lの外方側面を左側カバー76Lが覆い、右後部カバー44Rの外方側部に右側カバー76Rの右係合爪78Rを係合することで、右後脚14Rの外方側面を右側カバー76Rが覆う形態となる。
【0070】
また、この車両用シート10は、
図7A及び
図9に示すように、左後脚14Lの内方に突出する左ブラケット82Lと、右後脚14Rの内方に突出する右ブラケット82Rとを有する。左ブラケット82L及び右ブラケット82Rは、それぞれ金属製のバーによって略コ字状に形成されている。左ブラケット82Lは、左後脚14Lの長さ方向に直線状に延在する左係止部84Lを一体に有し、右ブラケット82Rは、右後脚14Rの長さ方向に直線状に延在する右係止部84Rを有する。
【0071】
一方、
図5A及び
図5Bに示すように、カバー部材40の左後部カバー44Lの前面側には、左ブラケット82Lの左係止部84Lに係合する左溝部86L(左係合部)が形成され、右後部カバー44Rの前面側にも、右ブラケット82Rの右係止部84Rに係合する右溝部86R(右係合部)が形成されている。
【0072】
また、左後部カバー44Lの前面側には、左ブラケット82Lのうち、左係止部84L以外の部分(カバー部材40の幅方向に延びる部分)が当接する左凸部88Lが設けられている。同様に、右後部カバー44Rの前面側には、右ブラケット82Rのうち、右係止部84R以外の部分(カバー部材40の幅方向に延びる部分)が当接する右凸部88Rが設けられている。
【0073】
さらに、
図5Bに示すように、左後部カバー44Lは、左段差部48Lの内方から前方に延出し、左ブラケット82L(
図7A参照)の左係止部84Lの一部を覆う左フランジ部90Lを有する。同様に、右後部カバー44Rは、右段差部48Rの内方から前方に延出し、右ブラケット82R(
図7A参照)の右係止部84Rの一部を覆う右フランジ部90Rを有する。これにより、左後脚14Lと右後脚14Rとの間の空間を左フランジ部90L及び右フランジ部90Rで覆うことができる。
【0074】
このように、本実施の形態においては、シートバック18の背面下部を被覆するカバー部材40を有する。カバー部材40は、右後脚14Rを覆う右後部カバー44Rと、右後部カバー44Rの下部に設けられ、右後脚14Rから右可動部30Rにかけて覆う右可動被覆部50Rと、該右可動被覆部50Rに設けられ、右後脚14Rの下端に掛け止められる掛け止め部54とを有する。
【0075】
右後部カバー44Rと右可動被覆部50Rによって、右後脚14Rから右可動部30Rにかけて覆われることから、シート着座状態及びシート格納状態のいずれの状態においても車体22のフロア24と右後脚14Rとの取り付け部分(右可動部30R)への異物の混入を抑制することができる。さらに、右可動被覆部50Rが右後脚14Rの下端に掛け止められることにより、シート着座状態では高さ方向における衝撃に対して、シート格納状態ではシート前後方向における衝撃に対する外れ防止に効果がある。
【0076】
本実施の形態において、カバー部材40は、左後脚14Lの背面を被覆する左後部カバー44Lと、右後脚14Rの背面を被覆する右後部カバー44Rと、左後部カバー44Lと右後部カバー44Rとを一体に連結する連結部46とを有する。
【0077】
これにより、シートバック18への取り付け点数を減らすことができ、しかも、1回の取り付け作業で、シートバック18にカバー部材40を取り付けることができるため、取り付け作業の効率を向上させることができる。しかも、連結部46によって、左後部カバー44Lと右後部カバー44Rの位置関係が一定となるため、カバー部材40のシートバック18への取り付け安定性も向上する。
【0078】
本実施の形態において、カバー部材40は、シートバック18のメンバーフレーム42に締結部材(ボルト72等)で取り付けられ、シートバック18は、後方側の表皮62の下部にボルト挿通孔68が形成されており、カバー部材40は、表皮62のボルト挿通孔68を介して締結部材によってメンバーフレーム42に取り付けられている。
【0079】
カバー部材40がメンバーフレーム42に締結部材によって取り付けられるため、カバー部材40の取り付け安定性が向上する。また、締結部材によってカバー部材40とメンバーフレーム42との間で表皮62の固定がなされるため、表皮62の取り付け安定性が向上する。
【0080】
本実施の形態において、カバー部材40は、表皮62と対向する面に、複数の係合爪60を有し、表皮62は、係合爪60が係合される複数の爪係合孔70を有する。
【0081】
これにより、ボルト72による固定だけでなく、複数の係合爪60によってカバー部材40と表皮62とが係合されるため、表皮62の取り付け安定性の向上と外れ防止を図ることができる。
【0082】
本実施の形態において、カバー部材40は、ボルト72が挿通する複数のボルト挿通孔56と、該ボルト挿通孔56を挿通したボルト72を締結するボルト締結部位58とを有し、複数のボルト挿通孔56は、複数の係合爪60と同じ高さ位置であって、且つ、複数の係合爪60間に設けられている。
【0083】
これにより、係合爪60を掛け止めてから、係合爪60と係合爪60との間をボルト72で締結できるため、取り付け作業性が向上する。
【0084】
本実施の形態において、係合爪60は、カバー部材40から前方へ延出し、さらに下方へ突出する鉤状の凸部60aを有し、ボルト挿通孔56(及びボルト締結部位58)は、複数の係合爪60が配列する線上に形成されている。
【0085】
これにより、係合爪60がリブとして機能し、剛性が向上する。その結果、複数のボルト締結部位58と複数の係合爪60とを線上に配列しても剛性を確保することができ、高さ方向におけるコンパクト化も実現することができる。
【0086】
本実施の形態において、左後脚14Lの外方側面を覆う左側カバー76Lと、右後脚14Rの外方側面を覆う右側カバー76Rとを有し、左後部カバー44Lの外方側部に、左側カバー76Lの左係合爪78Lが係合する左係合部80Lが設けられ、右後部カバー44Rの外方側部に、右側カバー76Rの右係合爪78Rが係合する右係合部80Rが設けられている。
【0087】
すなわち、カバー部材40に、左後脚14Lの左側カバー76L及び右後脚14Rの右側カバー76Rを係合するための部位が対称的に備えられているため、シート幅方向の衝撃に対する強度を確保することができ、カバー部材40の外れ防止に寄与する。これは、取り付け安定性の向上にもつながる。
【0088】
本実施の形態において、左後部カバー44L及び右後部カバー44Rの各内方部分に、シートバック18の前後方向、前方側へ窪んだ左段差部48L及び右段差部48Rが設けられている。
【0089】
これにより、車両内に搬送された車椅子の前輪を左段差部48L及び右段差部48Rによって案内することができ、車椅子の前輪が直接左後部カバー44L及び右後部カバー44Rに乗り入れることを防止することができる。
【0090】
本実施の形態において、左後脚14Lの内方に突出し、左後脚14Lの長さ方向に延在する左係止部84Lを一体に有する左ブラケット82Lと、右後脚14Rの内方に突出し、右後脚14Rの長さ方向に延在する右係止部84Rを一体に有する右ブラケット82Rとを有し、左後部カバー44Lの前面側に、左係止部84Lに係合する左溝部86Lと、右係止部84Rに係合する右溝部86Rとを有する。
【0091】
これにより、左後部カバー44Lの左溝部86Lに左ブラケット82Lの左係止部84Lを係合させ、右後部カバー44Rの右溝部86Rに、右ブラケット82Rの右係止部84Rを係合させることで、カバー部材40の取り付け安定性が向上する。
【0092】
本実施の形態において、左後部カバー44Lの前面側に、左ブラケット82Lのうち、左係止部84L以外の部分が当接する左凸部88Lが設けられ、右後部カバー44Rの前面側に、右ブラケット82Rのうち、右係止部84R以外の部分が当接する右凸部88Rが設けられている。
【0093】
これにより、左後部カバー44Lへの左ブラケット82Lの左係止部84Lの係合、右後部カバー44Rへの右ブラケット82Rの右係止部84Rの係合に加えて、左ブラケット82Lのうち、左係止部84L以外の部分が左後部カバー44Lの左凸部88Lに当接し、右ブラケット82Rのうち、右係止部84R以外の部分が右後部カバー44Rの右凸部88Rに当接することとなる。その結果、後方からの衝撃等に対する耐衝撃性を向上させることができる。
【0094】
本実施の形態において、左後部カバー44Lは、左段差部48Lの内方から前方に延出し、左ブラケット82Lの左係止部84Lの一部を覆う左フランジ部90Lを有し、右後部カバー44Rは、右段差部48Rの内方から前方に延出し、右ブラケット82Rの右係止部84Rの一部を覆う右フランジ部90Rを有する。
【0095】
これにより、左フランジ部90Lによって左ブラケット92Lの露出が回避され、右フランジ部90Rによって右ブラケット92Rの露出が回避されることから、乗員の安全性が向上する。
【0096】
なお、本発明に係る車両用シートは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0097】
すなわち、上述の例では、左係止部84Lを有する左ブラケット82Lと、右係止部84Rを有する右ブラケット82Rとを設けたが、左係止部84Lを有する左ブラケット82Lのみ、あるいは、右係止部84Rを有する右ブラケット82Rのみを設けてもよい。この場合、左係止部84L又は右係止部84Rに対応させて、左後部カバー44Lの前面側に左溝部86Lを設け、又は左後部カバー44Rの前面側に左溝部86Rを設けてもよい。
【0098】
また、上述の例では、左後部カバー44Lに左フランジ部90Lを設け、右後部カバー44Rに右フランジ部90Rを設けたが、左フランジ部90Lのみ、あるいは、右フランジ部90Rのみを設けてもよい。