特開2018-202957(P2018-202957A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-202957走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202957(P2018-202957A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/11 20120101AFI20181130BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20181130BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20181130BHJP
   B60K 31/02 20060101ALI20181130BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20181130BHJP
   F16H 59/44 20060101ALI20181130BHJP
   F16H 61/21 20060101ALI20181130BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20181130BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B60W10/00 106
   F02D29/00 C
   B60K31/02 D
   B60W30/14
   F16H59/44
   F16H61/21
   F16H63/50
   F16H59/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-109116(P2017-109116)
(22)【出願日】2017年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高柳 恒
(72)【発明者】
【氏名】井川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 享大
(72)【発明者】
【氏名】村田 直史
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭介
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 伊智郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴規
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 翼
(72)【発明者】
【氏名】小島 昇
【テーマコード(参考)】
3D241
3D244
3G093
3J552
【Fターム(参考)】
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3J552VC01W
(57)【要約】
【課題】車速を一定にする制御において降坂路走行時や減速操作時に目標車速に対して実車速が超過しないように複雑な計算を行うこと無くATをシフトダウンさせる制御を行う走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】定速走行制御と変速制御とを実施する走行制御装置1であって、目標車速演算部10と、目標駆動力演算部20及び30と、目標出力演算部51と、定速走行ギヤ出力部と、変速ギヤ出力部と、調停部とを備え、変速ギヤ出力部は、シフトダウン閾値と目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定するシフトダウン判定部を有し、目標出力がシフトダウン閾値を下回りシフトダウンが必要であると判定された場合、変速目標ギヤ段を現在のギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標車速にて車両を走行させる定速走行制御と、走行状態に応じた適切な変速を行う変速制御とを実施する走行制御装置であって、
前記目標車速を算出する目標車速演算部と、
前記目標車速にて走行するための目標駆動力を算出する目標駆動力演算部と、
前記目標車速及び前記目標駆動力に基づき目標出力を算出する目標出力演算部と、
前記目標出力に基づき前記目標車速にて車両を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する定速走行ギヤ出力部と、
前記定速走行ギヤ出力部と並列に設置され、前記目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する変速ギヤ出力部と、
前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段との調停を行い自動変速機へ目標ギヤ段を出力する調停部とを備え、
前記変速ギヤ出力部は、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数に基づき前記自動変速機の現在のギヤ段を1段シフトダウンさせた場合のエンジンブレーキ出力であるシフトダウン閾値と前記目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定するシフトダウン判定部を有し、
前記目標出力が前記シフトダウン閾値を下回りシフトダウンが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う走行制御装置。
【請求項2】
前記目標出力演算部は、算出した前記目標出力に対し該目標出力を小さくするように所定の係数を乗じる請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記変速ギヤ出力部は、燃料により発生するエンジン出力と、前記自動変速機の現在の前記ギヤ段における前記エンジンブレーキ出力と現在の前記ギヤ段から1段シフトアップした場合の前記エンジンブレーキ出力との偏差であるシフトアップ閾値とに基づきシフトアップが必要か否かを判定するシフトアップ判定部を有し、
前記燃料により発生するエンジン出力が前記シフトアップ閾値を上回りシフトアップが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトアップした値に設定するシフトアップ制御を行う請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記燃料により発生するエンジン出力に対し該燃料により発生するエンジン出力を大きくするように所定の係数を乗じる請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記シフトアップ判定部は、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトアップさせた後の前記エンジン回転数が前記エンジン回転数の下限値を下回る場合、シフトアップが必要でないと判定する請求項3または請求項4に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記シフトダウン判定部は、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンさせた後の前記エンジン回転数が前記エンジン回転数の上限値を上回る場合、シフトダウンが必要でないと判定する請求項1から請求項5のいずれかに記載の走行制御装置。
【請求項7】
前記変速ギヤ出力部は、入力値を所定時間遅らせて出力するタイマを備え、前記タイマは、前記シフトダウン判定部及び前記シフトアップ判定部の出力を入力値とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の走行制御装置。
【請求項8】
前記調停部は、前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段とを比較し、いずれか小さい方を前記目標ギヤ段として出力する請求項1から請求項7のいずれかに記載の走行制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の走行制御装置を備えた車両。
【請求項10】
目標車速にて車両を走行させる定速走行制御と、走行状態に応じた適切な変速を行う変速制御とを実施する走行制御方法であって、
前記目標車速を算出する工程と、
前記目標車速にて走行するための目標駆動力を算出する工程と、
前記目標車速及び前記目標駆動力に基づき目標出力を算出する工程と、
前記目標出力に基づき前記目標車速にて車両を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する定速走行目標ギヤ出力工程と、
前記定速走行目標ギヤ出力工程と並列に実施され、前記目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する変速ギヤ出力工程と、
前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段との調停を行い自動変速機へ目標ギヤ段を出力する工程とを備え、
前記変速ギヤ出力工程は、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数に基づき前記自動変速機の現在のギヤ段を1段シフトダウンさせた場合のエンジンブレーキ出力であるシフトダウン閾値と前記目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定する工程を有し、
前記目標出力が前記シフトダウン閾値を上回りシフトダウンが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う走行制御方法。
【請求項11】
目標車速にて車両を走行させる定速走行制御と、走行状態に応じた適切な変速を行う変速制御とを実施する走行制御プログラムであって、
前記目標車速を算出するステップと、
前記目標車速にて走行するための目標駆動力を算出するステップと、
前記目標車速及び前記目標駆動力に基づき目標出力を算出するステップと、
前記目標出力に基づき前記目標車速にて車両を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する定速走行目標ギヤ出力ステップと、
前記定速走行目標ギヤ出力ステップと並列に実施され、前記目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する変速ギヤ出力ステップと、
前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段との調停を行い自動変速機へ目標ギヤ段を出力するステップとを備え、
前記変速ギヤ出力ステップは、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数に基づき前記自動変速機の現在のギヤ段を1段シフトダウンさせた場合のエンジンブレーキ出力であるシフトダウン閾値と前記目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定するステップを有し、
前記目標出力が前記シフトダウン閾値を上回りシフトダウンが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う走行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が降坂路を走行する場合、車速が増加するため、車両操作者(ドライバー)がブレーキ操作としてブレーキを踏むなどの操作が必要である。また、減速操作を行う場合にも、AT(Automatic Transmission:自動変速機)が最大ギヤ段となり減速力が不足して減速に時間がかかる。これは、ATのシフトダウンをできないため、ATが最大ギヤ段、すなわち最小の変速比となり、エンジンブレーキが効かないためである。
このような場合において、一般的に「クルーズコントロール」と呼ばれるような車速を一定に制御する装置では、目標車速に対して実車速が超過するため、降坂路運転時や減速操作時にATをシフトダウンさせる制御が提案されている。
例えば、道路の勾配推定を行い、降坂路である又は減速操作であると判定すると、フィードフォワード制御によりシフトダウンさせる。
また一方で、特許文献1には、ドライバ要求駆動力と定速走行要求駆動力とを調停してATシフト制御を行い、定速走行要求駆動力が車両の最大エンジンブレーキ力に基づく駆動力を下回るとシフトダウンすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路の勾配推定を行う方法では、勾配推定において複雑な計算を行う必要があった。
また上記特許文献1に開示された発明では、駆動力にて判定を行っているため、シフトアップの閾値の設定が車速により異なり処理が煩雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車速を一定にする制御において降坂路走行時や減速操作時に目標車速に対して実車速が超過しないように複雑な計算を行うこと無くATをシフトダウンさせる制御を行う走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムは以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係る走行制御装置は、目標車速にて車両を走行させる定速走行制御と、走行状態に応じた適切な変速を行う変速制御とを実施する走行制御装置であって、前記目標車速を算出する目標車速演算部と、前記目標車速にて走行するための目標駆動力を算出する目標駆動力演算部と、前記目標車速及び前記目標駆動力に基づき目標出力を算出する目標出力演算部と、前記目標出力に基づき前記目標車速にて車両を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する定速走行ギヤ出力部と、前記定速走行ギヤ出力部と並列に設置され、前記目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する変速ギヤ出力部と、前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段との調停を行い自動変速機へ目標ギヤ段を出力する調停部とを備え、前記変速ギヤ出力部は、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数に基づき前記自動変速機の現在のギヤ段を1段シフトダウンさせた場合のエンジンブレーキ出力であるシフトダウン閾値と前記目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定するシフトダウン判定部を有し、前記目標出力が前記シフトダウン閾値を下回りシフトダウンが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う。
【0007】
本態様によれば、目標出力を用いることで複雑な計算を行うことなくシフトダウン制御を行うことができる。これにより、定速走行制御における降坂路走行時や減速操作時においてエンジンブレーキ力を高めて車速超過を抑制することができる。また、シフトダウン制御後のエンジンブレーキ出力をシフトダウン閾値として設定し判定を行うため、過剰なシフトダウンを防止することができる。
【0008】
上記第一態様では、前記目標出力演算部は、算出した前記目標出力に対し該目標出力を小さくするように所定の係数を乗じるとしてもよい。
【0009】
本態様によれば、シフトダウン制御の判定に用いる目標出力に対し、感度を小さくするように係数(ゲイン)を乗じるため、過剰なシフトダウンを抑制するとともに、乗員の快適性の悪化およびシフトハンチング(ギヤ段が変動し不安定になること)を防止することができる。
【0010】
本発明の第二態様に係る走行制御装置は、前記変速ギヤ出力部は、燃料により発生するエンジン出力と、前記自動変速機の現在の前記ギヤ段における前記エンジンブレーキ出力と現在の前記ギヤ段から1段シフトアップした場合の前記エンジンブレーキ出力との偏差であるシフトアップ閾値とに基づきシフトアップが必要か否かを判定するシフトアップ判定部を有し、前記燃料により発生するエンジン出力が前記シフトアップ閾値を上回りシフトアップが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトアップした値に設定するシフトアップ制御を行う。
【0011】
本態様によれば、ギヤ段によらず一意に決定される目標出力を用いることで複雑な計算を行うこと無くシフトアップ制御を行うことができる。これにより、車速を維持しながらシフトハンチングを防止することができる。
また、降坂路の走行中において路面勾配が緩やかになった場合に、一度に数段のシフトアップを発生させることがないため、乗員の快適性の悪化を防止することができる。
また、降坂路から加速操作した場合に、一度に数段のシフトアップを発生させることを抑制することができる。
【0012】
上記第一態様では、前記燃料により発生するエンジン出力に対し該燃料により発生するエンジン出力を大きくするように所定の係数を乗じるとしてもよい。
【0013】
本態様によれば、シフトアップ制御の判定に用いる燃料により発生するエンジン出力に対し、係数(ゲイン)を乗じるため、過剰なシフトアップを抑制するとともに、乗員の快適性の悪化を防止することができる。
【0014】
上記第二態様では、前記シフトアップ判定部は、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトアップさせた後の前記エンジン回転数が前記エンジン回転数の下限値を下回る場合、シフトアップが必要でないと判定するとしてもよい。
【0015】
本態様によれば、シフトアップさせた後のエンジン回転数がエンジン回転数の下限値を下回る場合はシフトアップさせないため、エンジン回転数が低いことによるエンストを防止することができる。
【0016】
上記第一または二態様では、前記シフトダウン判定部は、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンさせた後の前記エンジン回転数が前記エンジン回転数の上限値を上回る場合、シフトダウンが必要でないと判定するとしてもよい。
【0017】
本態様によれば、シフトダウンさせた後のエンジン回転数がエンジン回転数の上限値を上回る場合はシフトダウンさせないため、エンジン回転数が高いことによる乗員の快適性の悪化を防止することができる。
【0018】
上記第一または二態様では、前記変速ギヤ出力部は、入力値を所定時間遅らせて出力するタイマを備え、前記タイマは、前記シフトダウン判定部及び前記シフトアップ判定部の出力を入力値とするとしてもよい。
【0019】
本態様によれば、タイマにより変速目標ギヤ段の出力を遅らせるため、頻繁なシフトの変化、及び乗員の快適性の悪化を防ぐことができる。また、降坂路における定速走行時において、一度に数段のシフトアップが発生する飛びシフトを防ぐことができる。
【0020】
上記第一または二態様では、前記調停部は、前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段とを比較し、いずれか小さい方を前記目標ギヤ段として出力するとしてもよい。
【0021】
本態様によれば、調停部により適切な目標ギヤ段を選択し出力することができ、必要な場合のみ変速目標ギヤ段を選択することができる。
【0022】
本発明の第三態様に係る車両は、前述のいずれかに記載の走行制御装置を備える。
【0023】
本発明の第四態様に係る走行制御方法は、目標車速にて車両を走行させる定速走行制御と、走行状態に応じた適切な変速を行う変速制御とを実施する走行制御方法であって、前記目標車速を算出する工程と、前記目標車速にて走行するための目標駆動力を算出する工程と、前記目標車速及び前記目標駆動力に基づき目標出力を算出する工程と、前記目標出力に基づき前記目標車速にて車両を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する定速走行目標ギヤ出力工程と、前記定速走行目標ギヤ出力工程と並列に実施され、前記目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する変速ギヤ出力工程と、前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段との調停を行い自動変速機へ目標ギヤ段を出力する工程とを備え、前記変速ギヤ出力工程は、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数に基づき前記自動変速機の現在のギヤ段を1段シフトダウンさせた場合のエンジンブレーキ出力であるシフトダウン閾値と前記目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定する工程を有し、前記目標出力が前記シフトダウン閾値を上回りシフトダウンが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う。
【0024】
本発明の第五態様に係る走行制御プログラムは、目標車速にて車両を走行させる定速走行制御と、走行状態に応じた適切な変速を行う変速制御とを実施する走行制御プログラムであって、前記目標車速を算出するステップと、前記目標車速にて走行するための目標駆動力を算出するステップと、前記目標車速及び前記目標駆動力に基づき目標出力を算出するステップと、前記目標出力に基づき前記目標車速にて車両を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する定速走行目標ギヤ出力ステップと、前記定速走行目標ギヤ出力ステップと並列に実施され、前記目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する変速ギヤ出力ステップと、前記定速走行目標ギヤ段と前記変速目標ギヤ段との調停を行い自動変速機へ目標ギヤ段を出力するステップとを備え、前記変速ギヤ出力ステップは、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数に基づき前記自動変速機の現在のギヤ段を1段シフトダウンさせた場合のエンジンブレーキ出力であるシフトダウン閾値と前記目標出力とに基づきシフトダウンが必要か否かを判定するステップを有し、前記目標出力が前記シフトダウン閾値を上回りシフトダウンが必要であると判定された場合、前記変速目標ギヤ段を現在の前記ギヤ段から1段シフトダウンした値に設定するシフトダウン制御を行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シフトダウン閾値と目標出力とに基づきシフトダウンの判定を行うので、複雑な計算を行うことなくシフトダウン制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る定速走行制御を示したブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るシフト制御を示したブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るエンジンの出力及びエンジンブレーキ出力とエンジン回転数との関係を示したグラフである。
図4】本発明の第1実施形態に係るシフトダウン制御を示したフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係るシフトアップ時のエンジンブレーキ出力の推移を示したグラフである。
図6】本発明の第2実施形態に係る降坂路における減速操作後の車速とギヤ段を示したタイムチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係るシフトアップ制御を示したフローチャートである。
図8】本発明の第3実施形態に係るタイマを用いたシフト制御を示したブロック図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るタイマを用いた場合の路面勾配、出力及びギヤ段を示したタイムチャートである。
図10】本発明の第4実施形態に係る調停部の制御を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至4を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムの概略構成が示されている。
図1に示されるように、走行制御装置1は、目標車速演算部10と、目標駆動力演算部(FF)20と、目標駆動力演算部(FB)30と、目標エンジントルク演算部40と、ギヤ出力部50とを主な構成として備え、車両90に搭載されている。
車両90は、トランスミッション(自動変速機)91及びエンジン92を主な構成として備えている。
【0029】
車両90は、定速走行制御が行われることにより、目標車速にて定速走行が行われる。
本実施形態における定速走行制御について、以下に説明する。
目標車速演算部10の目標加速度算出部11によって目標加速度が、目標車速算出部12によって目標車速が算出される。
【0030】
次に、目標駆動力演算部(FF)20の加速抵抗演算部21に目標加速度が入力され、走行抵抗演算部22に目標車速が入力され、算出された抵抗をそれぞれ加算することにより、車両90の抵抗、すなわちこれに対応する目標駆動力(FF)が算出される。目標駆動力演算部(FF)20において算出される目標駆動力(FF)は、フィードフォワード制御によって算出される。
【0031】
一方、目標駆動力演算部(FB)30に目標車速が入力され、この目標車速と車両90から入力される実車速との偏差をPI制御器31に入力し、目標駆動力(FB)が算出される。目標駆動力演算部(FB)30において算出される目標駆動力(FB)は、フィードバック制御によって算出される。
【0032】
次に、目標駆動力(FF)と目標駆動力(FB)とが加算器で加算されて目標駆動力とされ、目標車速とともにギヤ出力部50の目標出力演算部51に入力される。目標駆動力は、目標車速で定速走行を行うための駆動力の目標値である。
目標出力演算部51では、目標駆動力と目標車速を乗算することで、目標出力を算出する。算出された目標出力は、シフト判定部52に入力され、目標出力に応じたギヤ段とするためにシフトアップまたはシフトアップが必要か否かの判定が行われ、車両90のトランスミッション91へ目標ギヤ段が出力される。
【0033】
また、目標エンジントルク演算部40に、目標駆動力、タイヤ半径、及び車両90から実変速比が入力され、目標エンジントルクが算出される。算出された目標エンジントルクは、車両90のエンジン92へ出力される。
【0034】
ここで走行制御装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0035】
ここで、定速走行制御を行う車両90が降坂路走行や減速操作を行う場合において、目標車速に対して実車速が超過するため、ATをシフトダウンさせる必要がある。本実施形態では、ギヤ出力部50にて定速走行のシフトチェンジの判定と並行して降坂路走行や減速操作におけるシフトチェンジの判定を行うとする。
【0036】
図2には、本実施形態に係るシフト制御がブロック図に示されている。
ギヤ出力部50は、定速走行ギヤ出力部55と、変速ギヤ出力部56と、調停部59とを主な構成として備えている。
定速走行ギヤ出力部55は、目標出力演算部551と、シフト判定部552とを備え、目標出力に基づき目標車速にて車両90を走行させるギヤ段を定速走行目標ギヤ段として出力する。
変速ギヤ出力部56は、定速走行ギヤ出力部55と並列に設置され、目標出力演算部561と、シフト判定部562とを備え、目標出力に基づき変速目標ギヤ段を出力する。
調停部59は、定速走行ギヤ出力部55が出力する定速走行目標ギヤ段及び変速ギヤ出力部56が出力する変速目標ギヤ段を調停し、いずれか小さい方を目標ギヤ段として車両90のトランスミッション91に対し出力する。
【0037】
ギヤ出力部50には、目標車速及び目標駆動力が入力され、それぞれ定速走行ギヤ出力部55及び変速ギヤ出力部56に入力される。
定速走行ギヤ出力部55に入力された目標車速及び目標駆動力は、目標出力演算部551に入力され目標出力(定速)が算出される。目標出力(定速)は、シフト判定部552のシフトダウン判定部553及びシフトアップ判定部554に入力され、目標出力(定速)に応じたギヤ段とするためにシフトアップまたはシフトアップが必要か否かの判定が行われ、目標ギヤ段(定速)が出力される。
【0038】
一方、変速ギヤ出力部56に入力された目標車速及び目標駆動力は、目標出力演算部561に入力され目標出力(変速)が算出される。目標出力(変速)は、シフト判定部562のシフトダウン判定部563及びシフトアップ判定部564に入力され、目標出力(変速)に応じたギヤ段とするためにシフトアップまたはシフトアップが必要か否かの判定が行われ、目標ギヤ段(変速)が出力される。
【0039】
ここで、変速ギヤ出力部56におけるシフト判定部562の判定について以下に具体的に述べる。
定速走行において、例えば降坂路を走行する場合、目標車速に対して実車速が超過するため、エンジンブレーキを利用し減速させる。この場合、1段シフトダウンさせることでより大きなエンジンブレーキ出力を得られることから、車両90の目標出力と現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力とを用いた判定を行うものとする。
エンジンブレーキ出力は、エンジンブレーキトルクとエンジン回転数とを乗算することで算出される。ここでエンジンブレーキトルクは、エンジン回転数毎に定義されるマップや定数にて予め設定する、エンジンECUにて演算されるエンジンブレーキトルクを用いる、等が考えられるが、いずれの方法を採ってもよい。また、車両90のエアコンやオルタネーター等の補機の負荷トルクにて補正するとしてもよい。
【0040】
図3には、本実施形態に係るエンジンの出力及びエンジンブレーキ出力とエンジン回転数との関係がグラフに示されている。
図3(a)のグラフにおいて、縦軸は出力、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸矢印方向が正の向きである。一点鎖線は車両90のエンジン92の最大出力、実線はエンジン92の現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力を示す。
また図3(b)のグラフにおいて、縦軸は出力、横軸はエンジン回転数を示し、縦軸矢印方向が負の向き、つまり図3(a)のグラフの出力を正負逆にしたグラフとなっている。実線はエンジン92の現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力を示す。
図3(a)に示されるように、エンジンブレーキ出力は負の出力であり、エンジン回転数が上がるほど負の方向に小さく、つまり絶対値は大きくなっている。降坂路走行や減速操作では負の方向の出力のみを用いることから、便宜上図3(a)のグラフの負の範囲のみを正負逆にして図3(b)に表す。
【0041】
図2の変速ギヤ出力部56の目標出力演算部561にて算出された目標出力(変速)が、図3(b)においてエンジン回転数ωの場合の出力A(A<0)であるとする。この場合、目標出力(変速)は実線のエンジンブレーキ出力を負の方向に上回っていることから、シフト判定部562は、1段シフトダウンを行う、と判定する。1段シフトダウンを行うと、太線矢印方向にエンジン回転数が上がりエンジン回転数ωにおいて目標出力(変速)とエンジンブレーキ出力が一致し(グラフの点参照)、目標出力(変速)に見合うエンジンブレーキ出力を得ることができる。
よって、現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力をシフトダウンの判定におけるシフトダウン閾値として判定を行う。
【0042】
ここで、シフトダウン閾値として、現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力を用いることも可能であるが、現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力を用いることにより、過剰なシフトダウンや、頻繁なシフトダウンを防ぐ。
【0043】
また、図2の変速ギヤ出力部56の目標出力演算部561にて算出された目標出力(変速)に係数(ゲイン)を乗じるとしてもよい。この場合、ゲインは目標出力(変速)を小さくするように所定の値が設定される。
【0044】
図4には、本実施形態に係るシフトダウン制御がフローチャートに示されている。
ステップS401において、目標出力演算部561は、目標出力(変速)を算出し、ステップS402へ遷移する。
次に、シフトダウン判定部563は、現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力を算出し(S402)、ステップS403へ遷移する。
次に、シフトダウン判定部563は、目標出力(変速)が現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジンブレーキ出力を下回るか否かを判定し(S403)、下回ると判定した場合はステップS404へ遷移する。下回らないと判定した場合は、ステップS405へ遷移する。
ステップS404において、シフトダウン判定部563は、シフトダウンが必要であると判定し、フラグ:1を出力する。
またステップS405において、シフトダウン判定部563は、シフトダウンは必要でないと判定し、フラグ:0を出力する。
【0045】
また、本実施形態では、シフトダウンの判定において、上述のシフトダウン閾値を用いた判定に加え、現在のギヤ段から1段シフトダウンした場合のエンジン回転数が閾値であるエンジン回転数の上限値(例えば3000rpm)以下である場合にシフトダウンを許可するという条件を設けるとしてもよい。
【0046】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、目標出力を用いることで複雑な計算を行うことなくシフトダウン制御を行うことができる。これにより、定速走行制御における降坂路走行時や減速操作時においてエンジンブレーキ力を高めて車速超過を抑制することができる。また、シフトダウン制御後のエンジンブレーキ出力をシフトダウン閾値として設定し判定を行うため、過剰なシフトダウンを防止することができる。
【0047】
また本実施形態によれば、シフトダウン制御の判定に用いる目標出力に対し、感度を小さくするように係数(ゲイン)を乗じるため、過剰なシフトダウンを抑制するとともに、乗員の快適性の悪化およびシフトハンチングを防止することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、シフトダウンさせた後のエンジン回転数がエンジン回転数の上限値を上回る場合はシフトダウンさせないため、エンジン回転数が高いことによる乗員の快適性の悪化を防止することができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について、図5乃至7を用いて説明する。
上記した第1実施形態では、シフトダウンの判定を行うとしたが、本実施形態では、シフトアップの判定を行うものである。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0050】
図5には、本実施形態に係るシフトアップ時のエンジンブレーキ出力の推移がグラフに示されている。
図5(a)及び(b)のグラフにおいて、縦軸は出力を示し、PFUELは燃料により発生するエンジン出力、Pは現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力、Pは現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力を示す。
【0051】
図5(a)には、シフトアップ前の各出力が示されている。
例えば降坂路を走行中で勾配が緩くなる場合に、現在のギヤ段における燃料により発生するエンジン出力が図5(a)のPFUEL及びエンジンブレーキ出力が図5(a)のPであり、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力が図5(a)のPであるとすると、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力と現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力との偏差P−PよりもPFUELは小さい。よって、この場合シフトアップを行うと、エンジンブレーキ出力が足りず、目標車速に対して実車速が超過してしまう。これは、ATだけでは出力を調整できないためであり、結果としてギヤ段が変動し不安定になるシフトハンチングが発生することとなる。
【0052】
そこで本実施形態では、エンジントルク要求により出力の調整を行うこととする。具体的には、現在のギヤ段における燃料により発生するエンジン出力PFUELが、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力と現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力との偏差P−Pを上回る場合、シフトアップが必要であると判定する。
よって、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力と現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力との偏差P−Pをシフトアップの判定におけるシフトアップ閾値として判定を行う。
【0053】
図5(b)には、シフトアップ直前の各出力が示されている。
現在のギヤ段における燃料により発生するエンジン出力PFUELは、目標車速と目標駆動力を乗算した値であり、これはすなわち目標出力(>0)である。このPFUELが、偏差P−Pを上回っているため、シフトアップを行う。この時、シフトアップ後のエンジンブレーキ出力によりエンジンブレーキ力が足りており、目標車速を保つことができる。よって、シフトハンチングを防止することができる。
ここで、現在のギヤ段における燃料により発生するエンジン出力PFUELが、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力と現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力との偏差P−Pを上回る場合にシフトアップが必要であると判定しているが、さらに以下の式(1)を満たす場合にシフトアップするとしてもよい。
【0054】
FUEL>(P−P)×α+β (1)
【0055】
(1)式において、例えばα=1.5、β=0とするとよいが、これに限らず制御に応じて適当な値を設定することができる。
【0056】
また、燃料により発生するエンジン出力PFUELに係数(ゲイン)を乗じるとしてもよい。この場合、ゲインは燃料により発生するエンジン出力PFUELを大きくするように所定の値が設定される。
【0057】
また、本実施形態ではエンジントルク要求後にシフトアップを行うため、上記の判定を行わない場合と比較してシフトアップしにくい。
図6には、本実施形態に係る降坂路における減速操作(COAST操作)後の車速とギヤ段がタイムチャートに示されている。図6(a)及び(b)において、上段の縦軸は車速(km/h)、下段の縦軸はギヤ段を示し、横軸は時間(秒)を示す。図6(a)は参考例としての走行制御装置を用いた場合の車速とギヤ段のタイムチャート、図6(b)は本実施形態の走行制御装置1を用いた場合の車速とギヤ段のタイムチャートである。
図6(a)及び(b)のいずれも、時間0から20までの間に減速操作が行われている。
図6(a)に示すように参考例としての走行制御装置を用いた場合は、時間20にて減速操作が終了すると、変速ギヤ出力部56による制御(降坂路制御)を中止してシフトアップが行われている。この時ギヤ段は、3から7、そして8へと2段以上のシフトチェンジが行われる飛びシフトが発生している。その後、時間30から降坂路制御が再開し、シフトダウンが行われている。このように、降坂路から加速操作した場合に一度シフトアップするシフトビジーが発生する。
これに対し、本実施形態を用いる場合、図6(b)に示されるように、時間20にて減速操作が終了しても、シフトチェンジは行われない。これは、上述したようにエンジントルク要求後にシフトアップを行うため、上記の判定を行わない場合と比較してシフトアップしにくいことに因る。
【0058】
図7には、本実施形態に係るシフトアップ制御がフローチャートに示されている。
ステップS701において、シフトアップ判定部564は、現在のギヤ段におけるエンジンブレーキ出力Pを算出し、ステップS702へ遷移する。
次に、シフトアップ判定部564は、現在のギヤ段における燃料により発生するエンジン出力PFUELを算出し(S702)、ステップS703へ遷移する。
次に、シフトアップ判定部564は、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジンブレーキ出力Pを算出し(S703)、ステップS704へ遷移する。
次に、シフトアップ判定部564は、エンジン出力PFUELが偏差P−Pを上回るか否かを判定し(S704)、上回ると判定した場合はステップS705へ遷移する。上回らないと判定した場合は、ステップS706へ遷移する。
ステップS705において、シフトアップ判定部564は、シフトアップが必要であると判定し、フラグ:1を出力する。
またステップS706において、シフトアップ判定部564は、シフトアップは必要でないと判定し、フラグ:0を出力する。
【0059】
また、本実施形態では、シフトアップの判定において、上述のエンジン出力を用いた判定に加え、現在のギヤ段から1段シフトアップした場合のエンジン回転数が、閾値であるエンジン回転数の下限値(例えば1000rpm)以上である場合にシフトアップを許可するという条件を設けるとしてもよい。
【0060】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、ギヤ段によらず一意に決定される目標出力を用いることで複雑な計算を行うこと無くシフトアップ制御を行うことができる。これにより、車速を維持しながらシフトハンチングを防止することができる。
また、降坂路の走行中において路面勾配が緩やかになった場合に、一度に数段のシフトアップを発生させることがないため、乗員の快適性の悪化を防止することができる。
また、降坂路から加速操作した場合に、一度に数段のシフトアップを発生させることを抑制することができる。
【0061】
また本実施形態によれば、シフトアップさせた後のエンジン回転数がエンジン回転数の下限値を下回る場合はシフトアップさせないため、エンジン回転数が低いことによるエンストを防止することができる。
【0062】
また本実施形態によれば、シフトアップ制御の判定に用いる燃料により発生するエンジン出力に対し、係数(ゲイン)を乗じるため、過剰なシフトアップを抑制するとともに、乗員の快適性の悪化を防止することができる。
【0063】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について、図8及び9を用いて説明する。
上記した第1実施形態ではシフトダウンの判定を、第2実施形態ではシフトアップの判定を行うとしたが、本実施形態では、シフトダウン及びシフトアップの判定にタイマを設けるものである。その他の点については第1及び第2実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0064】
図8には、本実施形態に係るタイマを用いたシフト制御がブロック図に示されている。
図8に示されるように、タイマ58を変速ギヤ出力部56と調停部59との間に設ける。タイマ58は、変速ギヤ出力部56の出力を所定時間遅らせて調停部59に出力する。
【0065】
図9には、本実施形態に係るタイマを用いた場合の路面勾配、出力及びギヤ段がタイムチャートに示されている。
図9(a)及び(b)において、上段の縦軸は路面勾配、中段の縦軸は目標出力、下段の縦軸はギヤ段を示し、横軸は時間を示している。また、中段の出力のタイムチャートにおいて、一点鎖線はシフトダウン閾値、二点鎖線はシフトアップ閾値を示している。図9(a)は参考例としての走行制御装置を用いた場合の路面勾配、出力及びギヤ段のタイムチャート、図9(b)は本実施形態のタイマ58を設けた走行制御装置1を用いた場合の路面勾配、出力及びギヤ段のタイムチャートである。
図9(a)及び(b)のいずれも、降坂路を定速走行している場合に、時間t1において路面勾配が緩やかになった場合を示している。
図9(a)に示すように参考例としての走行制御装置を用いた場合は、ギヤ段:5で走行してる場合に、時間t1において勾配が緩やかになり目標出力が上がる。そして時間t2にて目標出力がシフトアップ閾値を上回るため、シフトアップする。この時、目標出力は目標車速と目標駆動力とを乗じた値であるため、シフトアップしてもすぐには下がらない。瞬時の値でシフトアップ判定することから、ギヤ段は制御周期毎に1段ずつシフトアップし、ギヤ段は8までシフトアップしてしまう。その後、目標出力は下がり続け、時間t3においてシフトダウン閾値を下回るためギヤ段は8から7にシフトダウンされる。ギヤ段がシフトダウンされたことから、シフトダウン閾値も現在のギヤ段である7から1段シフトダウンした6の場合のエンジンブレーキ出力へと値が変更される。
【0066】
これに対して、本実施形態を用いる場合、図9(b)に示されるように、ギヤ段:5で走行している場合に、時間t1において勾配が緩やかになり目標出力が上がる。そして時間t5にて目標出力がシフトアップ閾値を上回るが、タイマ58により時間t6にシフトアップが確定する。そのため、時間t5からt6の間に目標出力が下がり、ギヤ段は5から6にシフトアップする。その後、再度目標出力が上がり、時間t7にて目標出力がシフトアップ閾値を上回り、タイマ58により時間t8にギヤ段:7へのシフトアップが確定する。
【0067】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、タイマ58により変速目標ギヤ段の出力を遅らせるため、頻繁なシフトの変化、及び乗員の快適性の悪化を防ぐことができる。また、降坂路における定速走行時において、一度に数段のシフトアップが発生する飛びシフトを防ぐことができる。
【0068】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について、図10を用いて説明する。
上記した各実施形態では調停部は定速走行目標ギヤ段及び変速目標ギヤ段のいずれか小さい方を目標ギヤ段として出力するとしたが、本実施形態では、さらに条件を設けるものである。その他の点については各実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0069】
図10には、本実施形態に係る調停部の制御がブロック図に示されている。
調停部59に、定速走行ギヤ出力部55から定速走行目標ギヤ段及び変速ギヤ出力部56から変速目標ギヤ段が入力される。調停部59は、選択器591にて定速走行目標ギヤ段及び変速目標ギヤ段のいずれか小さい方を選択する。
【0070】
次に、論理ゲート592にて論理積を求める。論理ゲート592では、次の全ての条件を満たす場合に1をONタイマ595へ出力する。
(1)選択器591にて変速目標ギヤ段が選択される。
(2)目標駆動力が0を下回る(負の値である。)。
(3)車速の超過が所定速度(本実施形態の場合、2km/h)を上回る。
(4)減速操作(COAST操作)中の場合、実加速度が目標加速度の下限値を上回る。
条件(2)にて、降坂路制御を開始する車速の超過量をパラメータである所定速度を設定することにより調整が可能である。また、降坂路制御は、登坂の勾配(登り勾配)での減速操作(COAST操作)では実施しない。しかし、目標加速度を調整するだけでは、低車速の場合は降坂路制御が開始されてしまい、また高車速の場合は燃料がカットされない。そこで、条件(4)にて加速度の判定を設け、登り勾配での減速操作では降坂路制御が開始されないようにする。
上記の条件のいずれか、または全ての条件を満たさない場合は、論理ゲート593を経由して1をOFFタイマ594へ出力する。
【0071】
ONタイマ595は入力された値をON信号として、OFFタイマ594は入力された値をOFF信号としてそれぞれ降坂路制御フラグ選択器596へ出力する。降坂路制御フラグ選択器596は、OFF信号が0から1となった場合は降坂路制御フラグをリセットし定速走行目標ギヤ段を目標ギヤ段として出力し、ON信号が0から1となった場合は降坂路制御フラグを保持し変速目標ギヤ段を目標ギヤ段として出力する。
【0072】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る走行制御装置、車両、走行制御方法、及び走行制御プログラムによれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、調停部59により適切な目標ギヤ段を選択し出力することができ、条件を満たす降坂路などの必要な場合にのみ降坂路制御を行い、変速目標ギヤ段を選択することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 走行制御装置
10 目標車速演算部
20 目標駆動力演算部(FF)
30 目標駆動力演算部(FB)
50 ギヤ出力部
51、551、561 目標出力演算部
52、552、562 シフト判定部
55 定速走行ギヤ出力部
56 変速ギヤ出力部
58 タイマ
59 調停部
90 車両
91 トランスミッション(自動変速機)
553、563 シフトダウン判定部
554、564 シフトアップ判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10