【解決手段】乗物用シートは、フレーム体13と、保持面12を形成する表皮部材11と、表皮部材11の裏面側に配置された板状部材14Aと、板状部材14Aと一体化され、板状部材14Aと協働して保持面12を規定する形状記憶部材14Bと、形状記憶部材14Bを加熱する加熱部材とを有する。形状記憶部材14Bは、所定温度以上に昇温している状態では表皮部材11を通して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持し、所定温度未満の状態では表皮部材11を通して受けた外力に応じて弾性的に変形する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を利用し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0022】
[実施の形態1]
(乗物用シート101)
図1は、実施の形態1における乗物用シート101を示す斜視図である。乗物用シート101はたとえば、自動車用シートとして利用可能である。乗物用シート101は、シートバック10、ヘッドレスト20およびシートクッション30を有する。
【0023】
シートバック10の左右両側の下端部はそれぞれ、シートクッション30の左右両側の後端部にリクライナーを介して連結される。シートクッション30は、車両等のフロア上にスライド機構等を介して設置される。ヘッドレスト20は、シートバック10の上部に装着される。シートバック10、ヘッドレスト20およびシートクッション30はそれぞれ、これらの最外表面を構成する表皮部材11,21,31を備えている。
【0024】
乗物用シート101は、乗員を保持するための保持面を有する。本実施の形態の乗物用シート101は、保持面12,22,32を有する。保持面12は、表皮部材11のうちの前方側に位置する外表面によって形成されており、乗員の胴部を保持する。保持面22は、表皮部材21のうちの前方側に位置する外表面によって形成されており、乗員の頭部を保持する。保持面32は、表皮部材31のうちの上方側に位置する外表面によって形成されており、乗員の脚部を保持する。
【0025】
図2は、シートバック10の内部構造を分解して示す斜視図である。乗物用シート101(
図1)は、フレーム体としてのバックフレーム13と、複数の板状部材14Aと、複数の形状記憶部材14Bと、加熱部材14H(
図3)とを有している。本実施の形態では、形状記憶部材14Bが「第1形状記憶部材」に相当し、加熱部材14Hが「第1加熱部材」に相当している。
図2は形状記憶部材14Bの断面構造を示すものではないが、説明上の便宜のため、
図2中の形状記憶部材14Bにはハッチング線を付している。後述する
図2中の形状記憶部材17および付勢部材18や、
図3中の形状記憶部材14Bにおいても同様である。
【0026】
バックフレーム13、複数の板状部材14A、複数の形状記憶部材14B、および加熱部材14H(
図3)は、シートバック10(
図1)の内部に配置されており、表皮部材11(
図1)はこれら各種の構成要素を覆うように設けられる。バックフレーム13は、アッパーフレーム13Cと、一対のサイドフレーム13A,13Bとを備える。アッパーフレーム13Cは、シートバック10の上側部の骨格を成しており、サイドフレーム13A,13Bは、シートバック10の左右両側部の骨格を成している。
【0027】
図3は、複数の板状部材14Aおよび複数の形状記憶部材14B等を示す正面図である。
図4は、
図2中のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
図2〜
図4に示すように、複数の板状部材14Aおよび複数の形状記憶部材14Bの各々は、上下方向(高さ方向)に沿って延在する略直方体状の形状を有しており、幅方向に沿って交互に配置されている。複数の板状部材14Aの各々は、たとえば樹脂から構成される。複数の形状記憶部材14Bの各々は、たとえば形状記憶樹脂(形状記憶ポリマー)から構成される。形状記憶部材14Bは加熱されることで硬度が下がり、温度が低くなる(常温に近づく)と硬度が上がる。詳細は後述するが、複数の板状部材14Aはバックフレーム13に間接的に支持される。
【0028】
複数の板状部材14Aと複数の形状記憶部材14Bとは、相互に一体化されている。複数の形状記憶部材14Bは、複数の板状部材14Aと協働して、保持面12(
図1,
図4)の位置および/または形状を規定する(詳細は後述する)。本実施の形態では、複数の板状部材14Aと複数の形状記憶部材14Bとが一体化されることで、全体として板状の形状を呈する1枚のパネル部材14が構成されている。
【0029】
パネル部材14は、1つの板状部材14Aと1つの形状記憶部材14Bとから全体として板状の形状を呈するように構成されてもよい。パネル部材14は、表皮部材11(
図1)の裏面側に配置される。パネル部材14と表皮部材11との間には、図示しないパッド(緩衝材)が必要に応じて配置される。
【0030】
図4に示すように、サイドフレーム13Aには、ブラケット15Aを介してトーションスプリング16Aが設けられている。パネル部材14の一方の側端部は、トーションスプリング16Aに取り付けられている。同様に、サイドフレーム13Bには、ブラケット15Bを介してトーションスプリング16Bが設けられている。パネル部材14の他方の側端部は、トーションスプリング16Bに接続されている。
【0031】
パネル部材14の両方の側端部が、トーションスプリング16A,16Bおよびブラケット15A,15Bを介して、サイドフレーム13A,13B(フレーム体)によって支持されている。当該構成により、複数の板状部材14Aは、バックフレーム13に間接的に支持されることとなる。
【0032】
パネル部材14の両方の側端部は、サイドフレーム13A,13Bに対して回動可能(揺動可能)に支持され、パネル部材14の中央部は、パネル部材14の両方の側端部を起点として前後方向(
図4中に示す矢印AR1,AR2の方向)に変位することができる。このような変位動作が実現可能であれば、トーションスプリング16A,16B等を介さずに、パネル部材14(あるいは複数の板状部材14A)がフレーム体としてのバックフレーム13に直接的に接触するように配置され、パネル部材14がバックフレーム13によって直接的に支持されるように構成されても構わない。
【0033】
図3に示すように、形状記憶部材14Bは、加熱部材14Hと一体化されている。本実施の形態では、加熱部材14Hが「第1加熱部材」に相当している。加熱部材14Hは、ヒーターおよび電源などから構成されている。たとえば乗員がスイッチを操作することで加熱部材14Hは給電されて発熱し、形状記憶部材14Bを加熱する。形状記憶部材14Bの作用(動作)および効果については後述する。
【0034】
(形状記憶部材17および付勢部材18)
複数の板状部材14A(本実施の形態においてはパネル部材14)の裏面側には、複数の形状記憶部材17および複数の付勢部材18が設けられている。本実施の形態では、形状記憶部材17が「第2形状記憶部材」に相当している。複数の形状記憶部材17および複数の付勢部材18の各々は、サイドフレーム13A,13Bの間を略水平方向に沿って橋渡しするように設けられており、相互間に間隔を空けつつ上方から下方に向かって交互に並んで配置されている。
【0035】
図5は、複数のうちの1つの形状記憶部材17を示す正面図である。形状記憶部材17は、紐状あるいは糸状に延びる形状を有している。形状記憶部材17は、たとえば形状記憶樹脂(形状記憶ポリマー)から構成される。形状記憶部材17は加熱されることで硬度が下がり、温度が低くなる(常温に近づく)と硬度が上がる。形状記憶部材17の一端部は、ワイヤー19A(
図4)を介してサイドフレーム13Aに接続されており、形状記憶部材17の他端部は、ワイヤー19B(
図4)を介してサイドフレーム13Bに接続されている。
【0036】
形状記憶部材17は、加熱部材17H(
図5)と一体化されている。本実施の形態では、加熱部材17Hが「第2加熱部材」に相当している。加熱部材17Hは、電熱線および電源などから構成されている。たとえば乗員がスイッチを操作することで加熱部材17Hは給電されて発熱し、形状記憶部材17を加熱する。形状記憶部材17の作用等については後述する。
【0037】
図6は、複数のうちの1つの付勢部材18を示す正面図である。付勢部材18は、ポリエチレンやナイロンを原料にした繊維状の部材がコイル状(螺旋状)に捻じられることで構成されている。付勢部材18は、人工筋肉のような挙動を発揮することができる(詳細は後述する)。付勢部材18の一端部は、形状記憶部材17の一端部の場合と同様に、図示しないワイヤーを介してサイドフレーム13Aに接続されている。付勢部材18の他端部も、形状記憶部材17の他端部の場合と同様に、図示しないワイヤーを介してサイドフレーム13Bに接続されている。
【0038】
付勢部材18は、加熱部材18H(
図6)と一体化されている。加熱部材18Hは、電熱線および電源などから構成されている。たとえば乗員がスイッチを操作することで加熱部材18Hは給電されて発熱し、付勢部材18を加熱する。付勢部材18の作用等については後述する。
【0039】
図7は、
図2中のVII−VII線に沿った矢視断面図である。パネル部材14の裏面側には、略L字状に垂れ下がる複数の係止部14Cが設けられている。複数の係止部14Cは、複数の形状記憶部材17および複数の付勢部材18に対して、一対一の対応関係を有するように設けられている。これらの形状記憶部材17および付勢部材18に複数の係止部14Cを係止させることで、複数の板状部材14A(本実施の形態においてはパネル部材14)は、複数の形状記憶部材17および複数の付勢部材18と一体化される。
【0040】
図2および
図4を参照して、たとえば、パネル部材14の中央部が矢印AR1(
図4)の方向に変位した際には、複数の形状記憶部材17および複数の付勢部材18の各々の中央部は、パネル部材14の中央部によって押圧され、パネル部材14の中央部と一体的に矢印AR1の方向に向かって変位することとなる。この動作とは逆に、複数の付勢部材18の各々の中央部が矢印AR2(
図4)の方向に変位した際には、パネル部材14の中央部が複数の付勢部材18の各々の中央部によって押圧される。これに伴い、複数の形状記憶部材17の各々の中央部は、パネル部材14の中央部によって矢印AR2の方向に引っ張られる。結果として、複数の付勢部材18の各々の中央部と、パネル部材14の中央部と、複数の形状記憶部材17の各々の中央部とは、一体的に矢印AR2(
図4)の方向に向かって変位することとなる。
【0041】
(作用および効果)
図4を主として参照して、乗員200は、乗物用シート101に着座する。乗員200が自身の体格に合うように保持面12の位置および/または形状を調節する際には、たとえば車両内に設けられた所定のスイッチを操作する。乗員200が乗物用シート101に着座したことをセンサー等が検知して、以下の各種動作を自動的に開始するように構成してもよい。
【0042】
(形状記憶部材14Bの作用)
スイッチ操作等に応じて加熱部材14H(
図3)が作動したとする。この場合、加熱部材14Hは給電されることで発熱し、形状記憶部材14Bが昇温する。形状記憶部材14Bは、常温よりも高い所定温度以上(第1所定温度以上)に昇温している状態では、表皮部材11を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0043】
すなわち、板状部材14Aと一体化された形状記憶部材14B(パネル部材14)は、乗員200の胴部によって表皮部材11を介して矢印AR1(
図4)に示す方向に押圧される。形状記憶部材14Bは、表皮部材11と形状記憶部材17および付勢部材18とによって挟み込まれ、板状部材14Aとともに、乗員200の胴部の形状に対応するように(乗員200の胴部の形状に倣うように)変形する。複数の板状部材14Aおよび複数の形状記憶部材14Bの変形後の形状によって、矢印AR1の方向に変位した保持面12の形状が規定される。
【0044】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材14Hによる加熱が停止される。形状記憶部材14Bの温度は、やがて所定温度未満(第1所定温度未満)となるように低下する。形状記憶部材14Bが所定温度未満となった状態では、形状記憶部材14Bは表皮部材11を介して乗員200から受けた外力に応じて弾性的に変形し、上記の変形後の形状(第1所定温度以上に昇温している際に規定された形状)を維持する。この変形後の形状は、乗員200の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シート101は、快適な乗り心地を乗員200に提供することが可能となる。
【0045】
(形状記憶部材17の作用)
スイッチ操作等に応じて加熱部材17H(
図4,
図5)が作動したとする。この場合、加熱部材17Hは給電されることで発熱し、形状記憶部材17が昇温する。形状記憶部材17は、常温よりも高い所定温度以上(第2所定温度以上)に昇温している状態では、表皮部材11およびパネル部材14を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0046】
すなわち、板状部材14Aと一体化された形状記憶部材17は、乗員200の胴部によって表皮部材11およびパネル部材14を介してたとえば矢印AR1(
図4)に示す方向に押圧される。形状記憶部材17は、その両端がサイドフレーム13A,13Bによって支持された状態で、板状部材14Aとともに、乗員200の胴部の形状に対応するように(乗員200の胴部の形状に倣うように)変形する。複数の形状記憶部材17の変形後の形状および位置によって、パネル部材14の前後方向(矢印AR1,AR2の方向)における位置が規定され、ひいては保持面12の前後方向における位置が規定されることとなる。
【0047】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材17Hによる加熱が停止される。形状記憶部材17の温度は、やがて所定温度未満(第2所定温度未満)となるように低下する。形状記憶部材17が所定温度未満となった状態では、形状記憶部材17は表皮部材11およびパネル部材14を介して乗員200から受けた外力に応じて弾性的に変形し、上記の変形後の形状(第2所定温度以上に昇温している際に規定された形状および位置)を維持する。この変形後の形状および位置は、乗員200の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シート101は、快適な乗り心地を乗員200に提供することが可能となる。
【0048】
パネル部材14を構成している複数の形状記憶部材14Bと、サイドフレーム13A,13Bによって支持されている複数の形状記憶部材17とは、相互に独立して動作するように構成されてもよいし、相互に協働して保持面12の位置および/または形状を同時に規定するように構成されてもよい。複数の形状記憶部材14Bを変形させて保持面12を調節するという動作と、複数の形状記憶部材17を変形させて保持面12を調節するという動作とは、複数種類のスイッチ操作に応じてこれらが動作するように制御してもよいし、1つのスイッチの操作手法等に応じてこれらが動作するように制御してもよいし、あるいは時間差を設けてこれら2つの動作が連続的に行なわれるように制御してもよい。
【0049】
(付勢部材18の作用)
パネル部材14が矢印AR1の方向に変位している状態で、換言すると、付勢部材18がパネル部材14によって矢印AR1の方向に押圧された結果として付勢部材18の中央部が矢印AR1の方向に向かって凸状に湾曲するように変形している状態で、スイッチ操作等に応じて加熱部材18H(
図6)が作動したとする。加熱部材18Hは給電されることで発熱し、付勢部材18が昇温する。
【0050】
付勢部材18は、所定温度未満の状態(加熱部材18Hによって加熱される前の状態)、たとえば常温の状態では第1の長さを有しており、第1の長さを有している状態で所定温度以上に加熱された場合には、第1の長さよりも短い第2の長さに収縮する。付勢部材18の両端はサイドフレーム13A,13Bによって支持されており、収縮することで付勢部材18の中央部は矢印AR2の方向に移動する。パネル部材14は付勢部材18によって矢印AR2の方向に付勢される。すなわち、付勢部材18はパネル部材14(複数の板状部材14Aおよび複数の形状記憶部材14B)を保持面12の側に変位させるための付勢力を発生させる。
【0051】
形状記憶部材17は、パネル部材14を介して付勢部材18と一体化されている。付勢部材18の収縮および付勢部材18の中央部の矢印AR2の方向への移動によって、形状記憶部材17はパネル部材14を介して引っ張られ、形状記憶部材17の中央部も矢印AR2の方向に移動するように付勢される。形状記憶部材17が加熱部材17Hによって所定温度以上(第2所定温度以上)に昇温している状態では、形状記憶部材17は弾性的に変形することはほとんどない。形状記憶部材17は、パネル部材14から受けた外力(引張力)に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0052】
付勢部材18からの付勢力を受けたパネル部材14は、保持面12の側、すなわち矢印AR2の方向に変位する。形状記憶部材14Bが加熱部材14Hによって所定温度以上(第1所定温度以上)に昇温している状態では、形状記憶部材14Bは、乗員200の胴部(表皮部材11)と形状記憶部材17および付勢部材18とによって挟み込まれて、板状部材14Aとともに、乗員200の胴部の形状に対応するように(乗員200の胴部の形状に倣うように)変形する。複数の板状部材14Aおよび複数の形状記憶部材14Bの変形後の形状によって、矢印AR2の方向に変位した保持面12の形状が規定されることとなる。
【0053】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材14H,17H,18Hによる加熱が停止される。付勢部材18の温度は、やがて所定温度未満(たとえば常温)となるように低下する。付勢部材18が所定温度未満となった状態では、付勢部材18にはもはや収縮力は発生せず、パネル部材14(複数の板状部材14Aおよび複数の形状記憶部材14B)を保持面12の側に変位させるための付勢力もほとんど発生しなくなる。パネル部材14(形状記憶部材14B)や形状記憶部材17も、変形後の形状を維持する。変形後の形状および位置は、乗員200の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シート101は、快適な乗り心地を乗員200に提供することが可能となる。
【0054】
(まとめ)
冒頭で述べたとおり、電動モータ等のアクチュエータを用いて乗物用シートの座面等を調節するという構成を採用した場合には、シートの内部に配置される各種の機構部品の構成や配置が複雑になりやすく、これらを動作させるための制御プログラムも複雑になりやすい。上述の実施の形態1においては、加熱された形状記憶部材を、乗員から受ける外力を利用して変形させることで、乗員の体格に合うように保持面を容易に変形させることができ、アクチュエータ(電動モータ)を用いる場合に比べて簡素な構成にてシートの保持面を調節することが可能である。
【0055】
上述の実施の形態1では、形状記憶部材として、形状記憶部材14Bおよび形状記憶部材17の2種類を採用しているが、これらはいずれか一方のみが採用されても構わないし、さらに別の形状記憶部材が用いられてもよい。たとえば形状記憶部材14Bが乗物用シート101の構成として採用されず(すなわち、板状部材14Aは形状記憶部材14Bと一体化されず)、パネル部材14は板状部材14Aのみから構成されていてもよい。この場合、形状記憶部材17が「板状部材14Aと一体化された第1形状記憶部材」に相当し、加熱部材17Hが「第1加熱部材」に相当し、形状記憶部材17は、第1所定温度以上に昇温している状態では表皮部材11を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持し、第1所定温度未満の状態では表皮部材を介して受けた外力に応じて弾性的に変形することとなる。当該構成であっても、形状記憶部材17が加熱部材17Hによって加熱されることで、乗員200の体格に適合するようにパネル部材14を介して保持面12の形状を規定することが可能となる。
【0056】
あるいは、形状記憶部材17が乗物用シート101に採用されていなくてもよい。この場合、複数の板状部材14Aと複数の形状記憶部材14Bとが一体化されることで、全体として板状の形状を呈する1枚のパネル部材14が構成される。バックフレーム13によって支持されたパネル部材14であっても、形状記憶部材14Bが加熱部材14Hによって加熱されることで、乗員200の体格に適合するように保持面12の形状を規定することが可能となる。
【0057】
上述の実施の形態1では、付勢部材18は、人工筋肉のような挙動を発揮し、加熱されることで収縮して、パネル部材14(板状部材14A)を保持面12の側に変位させるための付勢力を発生させる。付勢部材18が加熱されていない状態(たとえば常温の状態)では上記の付勢力はほとんどあるいは全く発生しない。当該構成によれば、保持面12の調節が完了した後は、付勢部材18による付勢力がほとんど残存しないため、パネル部材14(形状記憶部材14B)や形状記憶部材17に負荷がかかることを軽減でき、耐久性向上やノイズ対策などを企図することも可能となる。
【0058】
付勢部材18は、一般的なコイルバネやゴムベルト等の弾性部材から構成されていてもよい。これらの構成によっても、付勢部材18は、矢印AR1(
図4)の方向に変位したパネル部材14からの押圧力を受けることで弾性的に伸張し、パネル部材14(板状部材14A)を保持面12の側に変位させるための付勢力を発生させる。保持面12の調節が完了した後であっても、付勢部材18が伸張している場合にはこの付勢力は残存することとなる。当該構成の場合、加熱部材18Hが必要でない分、製造費用の低減や、構造の簡素化を図ることが可能となる。このような付勢部材18は、サイドフレーム13A,13Bを橋渡しするように配置されていなくてもよく(換言すると、幅方向に沿って配置されていなくてもよく)、パネル部材14を矢印AR2の方向に付勢可能なように、矢印AR2の方向(ここでは前後方向)に沿って延在するように配置されてもよい。
【0059】
上述の実施の形態1は、保持面12(
図2)の位置や形状を調節するという動作に基づいて説明したが、上述の実施の形態1で開示した思想は、ヘッドレスト20の保持面22(
図2)やシートクッション30の保持面32の位置および/または形状を調節するという動作にも適用可能である。上述の実施の形態1は、保持面12のうちの主として前後方向に変位する部分(いわゆるメイン部分)の調節動作に基づいて説明したが、上述の実施の形態1で開示した思想は、保持面12,22,32のうちの左右方向や斜め方向に変位する部分(いわゆるサイドサポート部分)の調節動作にも適用可能である。
【0060】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2における乗物用シート102の一部を示す断面図であり、シートバック10における断面構造(実施の形態1における
図4に相当)を表している。
図9は、乗物用シート102に備えられる板状部材14Aを示す斜視図である。実施の形態1における乗物用シート101と実施の形態2における乗物用シート102とは、以下の点において相違している。
【0061】
図8および
図9に示すように、本実施の形態においては、板状部材14Aが、板14D,14E,14F,14Gを備えて構成されている。板14D,14E,14F,14Gは、相互間の保持面12側に形成される開き角θ(
図8)が可変となるように、ヒンジ部分14Jを介して相互に連結されている。板14D,14E,14F,14Gと表皮部材11との間にはパッド11P(
図8)が配置されている。
【0062】
板14D,14E,14Fは、いずれも平板状の形状を有し、幅方向における内側から外側に向かってこの順に並んでいる。板14Gは、板14Fのさらに外側に設けられる。板14Gは、湾曲板の形状を有し、ネジ14Tによってサイドフレーム13A(
図8)に固定されている。本実施の形態においてはすなわち、板状部材14Aがフレーム体としてのバックフレーム13(サイドフレーム13A)に直接的に支持されている。
【0063】
板14D(第1板)と板14E(第2板)との間に位置するヒンジ部分14Jに対して、その裏面側には調節機構42が設けられている。同様に、板14E(第1板)と板14F(第2板)との間に位置するヒンジ部分14Jに対して、その裏面側には調節機構42が設けられている。
図8においては調節機構42を模式的に図示している。以下、板14D,14Eの間に設けられる調節機構42に基づき、その構成を
図10および
図11を参照しながら説明する。
【0064】
図10および
図11はそれぞれ、実施の形態2における乗物用シート102に備えられる調節機構42を示す斜視図および平面図である。本実施の形態では、板14Dが、平板部14D1、延出部14D2、受け部14D3を備えて構成され、板14Eが、平板部14E1、延出部14E2、受け部14E3を備えて構成されている。
【0065】
平板部14D1,14E1はそれぞれ、板14D,14Eのうちのパッド11P(
図8)の側に配置される部分であり、ヒンジ部分14Jを介して相互に隣り合っている。延出部14D2は、平板部14D1のうちのヒンジ部分14Jの側に位置する端部に連設されており、当該端部を起点として平板部14D1の裏面側の位置に到達するように湾曲しながら延出している。受け部14D3は、延出部14D2の延出方向における端部に設けられており、平板部14D1から遠ざかるように延びている。
【0066】
同様に、延出部14E2は、平板部14E1のうちのヒンジ部分14Jの側に位置する端部に連設されており、当該端部を起点として平板部14E1の裏面側の位置に到達するように湾曲しながら延出している。受け部14E3は、延出部14E2の延出方向における端部に設けられており、平板部14E1から遠ざかるように延びている。受け部14D3,14E3は、相互に対向するように配置されている。
【0067】
調節機構42は、形状記憶部材14B、加熱部材14Hおよび付勢部材14Sを有している。形状記憶部材14Bは、円柱状に延びる形状を有しており、一端部が受け部14E3に接続され、他端部が受け部14D3に接続されている。当該構成によって、形状記憶部材14Bは板状部材14Aと一体化され、開き角θに応じて伸縮する。形状記憶部材14Bは、板状部材14A(板14D,14E)と協働して、保持面12(
図8)の位置および/または形状を規定する(詳細は後述する)。
【0068】
加熱部材14Hは、形状記憶部材14Bの周囲を取り囲むように配置されている。付勢部材14Sは、コイルスプリングの形状を有しており、一端部が受け部14D3に接続され、他端部が受け部14E3に接続されている。付勢部材14Sは、インサート成形によって、形状記憶部材14Bと一体化されていてもよい。これらの構成により、板状部材14Aは、形状記憶部材14Bおよび付勢部材14Sと一体化されている。付勢部材14Sは、板14D,14Eと一体化されるとともに、開き角θが大きくなるように(換言すると、板14D,14Eが同一平面状に位置する姿勢を形成するように)付勢力を板14D,14Eに付与している。
【0069】
たとえば、板状部材14Aが乗員200(
図8)からの押圧力を受けることで、板14D,14E間のヒンジ部分14Jが矢印AR1の方向に変位したとする。開き角θが小さくなる一方で、受け部14D3,14E3間の距離は、付勢部材14Sの付勢力に抗して長くなる。この動作とは逆に、付勢部材14Sの付勢力によって受け部14D3,14E3間の距離が短くなった際には、開き角θが大きくなるとともに、板14D,14E間のヒンジ部分14Jは矢印AR2の方向に変位することとなる。
【0070】
(作用および効果)
乗員200(
図8)は、乗物用シート102に着座する。乗員200が自身の体格に合うように保持面12の位置および/または形状を調節する際には、たとえば車両内に設けられた所定のスイッチを操作する。乗員200が乗物用シート102に着座したことをセンサー等が検知して、以下の各種動作を自動的に開始するように構成してもよい。
【0071】
(形状記憶部材14Bの作用)
スイッチ操作等に応じて加熱部材14H(
図10,
図11)が作動したとする。この場合、加熱部材14Hは給電されることで発熱し、形状記憶部材14Bが昇温する。形状記憶部材14Bは、常温よりも高い所定温度以上に昇温している状態では、表皮部材11および板状部材14A(板14D,14E)を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0072】
すなわち、乗員200の胴部によって外力を受けた板14D,14E間のヒンジ部分14Jが矢印AR1の方向に変位し、開き角θが小さくなったとする。板14D,14Eと一体化された形状記憶部材14Bは、板14D,14E(受け部14D3,14E3)を介して外力(引張力)を受けて、乗員200の胴部の形状に対応するように伸張する。形状記憶部材14Bの変形後の形状によって、板状部材14A(板14D,14E)の形状および矢印AR1,AR2における位置が規定され、ひいては保持面12の形状および同方向における位置が規定されることとなる。
【0073】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材14Hによる加熱が停止される。形状記憶部材14Bの温度は、やがて所定温度未満となるように低下する。形状記憶部材14Bが所定温度未満となった状態では、形状記憶部材14Bは乗員200から受けた外力に応じて弾性的に変形し、上記の変形後の形状(所定温度以上に昇温している際に規定された形状)を維持する。この変形後の形状は、乗員200の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シート102は、快適な乗り心地を乗員200に提供することが可能となる。
【0074】
(付勢部材14Sの作用)
板14D,14E間のヒンジ部分14Jが矢印AR1の方向に変位している状態で、換言すると、付勢部材14Sが収縮方向の弾性復元力を有するように伸張している状態で、スイッチ操作等に応じて加熱部材14Hが作動したとする。加熱部材14Hは給電されることで発熱し、形状記憶部材14Bが昇温する。形状記憶部材14Bは、常温よりも高い所定温度以上に昇温している状態では、表皮部材11および板状部材14A(板14D,14E)を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0075】
付勢部材14Sの付勢力は、受け部14D3,14E3間の距離を短くするとともに、開き角θが大きくなるように作用する。板14D,14E間のヒンジ部分14Jは矢印AR2の方向に移動するように付勢されるとともに、板状部材14Aは付勢部材14Sによって矢印AR2の方向に付勢されることとなる。すなわち、付勢部材14Sは板状部材14Aを保持面12の側に変位させるための付勢力を発生させている。
【0076】
形状記憶部材14Bは、受け部14D3,14E3を介して付勢部材14Sと一体化されている。付勢部材14Sの収縮および受け部14D3,14E3の接近移動によって、形状記憶部材14Bも収縮する。形状記憶部材14Bが加熱部材14Hによって所定温度以上に昇温している状態では、形状記憶部材14Bは弾性的に変形することはほとんどない。形状記憶部材14Bは、受け部14D3,14E3を介して受けた外力(収縮力)に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0077】
付勢部材14Sからの付勢力を受けた板14D,14Eは、保持面12の側、すなわち矢印AR2の方向に変位する。形状記憶部材14Bは、板状部材14Aとともに、乗員200の胴部の形状に対応するように変形する。板状部材14Aの位置および上記開き角θ、ならびに形状記憶部材14Bの変形後の形状によって、矢印AR2の方向に変位した保持面12の形状が規定されることとなる。
【0078】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材14Hによる加熱が停止される。形状記憶部材14Bの温度は、やがて所定温度未満(たとえば常温)となるように低下する。形状記憶部材14Bは、変形後の形状を維持する。変形後の形状および位置は、乗員200の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シート102は、快適な乗り心地を乗員200に提供することが可能となる。
【0079】
上述の実施の形態2においても、加熱された形状記憶部材を、乗員から受ける外力を利用して変形させることで、乗員の体格に合うように保持面を容易に変形させることができ、アクチュエータ(電動モータ)を用いる場合に比べて簡素な構成にてシートの保持面を調節することが可能である。実施の形態2で開示した思想は、ヘッドレストの保持面やシートクッションの保持面の位置および/または形状を調節するという動作にも適用可能である。上述の実施の形態2で開示した思想は、保持面のうちの左右方向や斜め方向に変位する部分(いわゆるサイドサポート部分)の調節動作に適用可能であり、保持面のうちの主として前後方向に変位する部分(いわゆるメイン部分)の調節動作にも適用可能である。
【0080】
[実施の形態3]
図12は、実施の形態3における乗物用シートに備えられる調節機構43の分解した状態を示す斜視図である。
図13は、調節機構43を示す断面図である。実施の形態2における調節機構42と実施の形態3における調節機構43とは、以下の点において相違している。
【0081】
本実施の形態においては、板14Dの端部にヒンジ部分14J2が設けられており、板14Eの端部にヒンジ部分14J1,14J3が設けられている。ヒンジ部分14J1,14J2,14J3の各々は円筒形状を有しており、これらの内周面上には、周方向に沿って並ぶとともに軸方向に沿って延びる複数の凹凸が形成されている。
【0082】
調節機構43は、形状記憶部材14B、加熱部材14Hおよび付勢部材14Sを有している。形状記憶部材14Bは、略円筒状に延びる形状を有しており、その外周面上には上記の複数の凹凸に対応する複数の凹凸が形成されている。形状記憶部材14Bの内周面側には、円筒形状を有する芯材14Kが嵌挿されている。芯材14Kの外周面の周囲を取り囲むように、加熱部材14H(電熱線など)がコイル状に巻回されている。形状記憶部材14Bおよび加熱部材14Hは、板14D,14Eの間のヒンジ部分14J1,14J2,14J3の内側に一体的に挿入される。
【0083】
当該構成によって、板14D,14Eは、相互間の保持面12(
図13)側に形成される開き角θが可変となるように、ヒンジ部分14J1,14J2,14J3を介して相互に連結される。形状記憶部材14Bは板状部材14Aと一体化され、板14D,14E間の保持面12側の開き角θ(
図13)に応じて捩れるように配置される。形状記憶部材14Bは、板状部材14A(板14D,14E)と協働して、保持面12(
図13)の位置および/または形状を規定する(詳細は後述する)。
【0084】
加熱部材14Hは、形状記憶部材14Bの内周面と芯材14Kの外周面との間に配置されている。付勢部材14Sは、板ばね状の形状を有しており、一端部側が板14Dに接続され、他端部側が板14Eに接続されている。これらの構成により、板状部材14Aは、形状記憶部材14Bおよび付勢部材14Sと一体化されている。付勢部材14Sは、板14D,14Eと一体化されるとともに、開き角θが大きくなるように(換言すると、板14D,14Eが同一平面状に位置する姿勢を形成するように)付勢力を板14D,14Eに付与している。
【0085】
たとえば、板状部材14Aが乗員からの押圧力を受けることで、板14D,14E間のヒンジ部分14J1,14J2,14J3が矢印AR1の方向に変位したとする。開き角θは、付勢部材14Sの付勢力に抗して小さくなる。この動作とは逆に、板状部材14Aが乗員からの押圧力を受けなくなった際には、開き角θが大きくなるように付勢され、板14D,14E間のヒンジ部分14J1,14J2,14J3は矢印AR2の方向に変位することとなる。
【0086】
(形状記憶部材14Bの作用)
スイッチ操作等に応じて加熱部材14Hが作動したとする。この場合、加熱部材14Hは給電されることで発熱し、形状記憶部材14Bが昇温する。形状記憶部材14Bは、常温よりも高い所定温度以上に昇温している状態では、表皮部材11および板状部材14A(板14D,14E)を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0087】
すなわち、乗員の胴部によって外力を受けた板14D,14E間のヒンジ部分14J1,14J2,14J3が矢印AR1の方向に変位し、開き角θが小さくなったとする。板14D,14Eと一体化された形状記憶部材14Bは、板14D,14Eを介して外力(捩り方向の力)を受けて、乗員の胴部の形状に対応するように変形する。形状記憶部材14Bの変形後の形状によって、板状部材14A(板14D,14E)の形状および矢印AR1,AR2における位置が規定され、ひいては保持面12の形状および同方向における位置が規定されることとなる。
【0088】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材14Hによる加熱が停止される。形状記憶部材14Bの温度は、やがて所定温度未満となるように低下する。形状記憶部材14Bが所定温度未満となった状態では、形状記憶部材14Bは乗員から受けた外力に応じて弾性的に変形し、上記の変形後の形状(所定温度以上に昇温している際に規定された形状)を維持する。この変形後の形状は、乗員の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シートは、快適な乗り心地を乗員に提供することが可能となる。
【0089】
(付勢部材14Sの作用)
板14D,14E間のヒンジ部分14J1,14J2,14J3が矢印AR1の方向に変位している状態で、換言すると、付勢部材14Sが平面形状に復帰しようとする方向の弾性復元力を有するように変形している状態で、スイッチ操作等に応じて加熱部材14Hが作動したとする。加熱部材14Hは給電されることで発熱し、形状記憶部材14Bが昇温する。形状記憶部材14Bは、常温よりも高い所定温度以上に昇温している状態では、表皮部材11および板状部材14A(板14D,14E)を介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0090】
付勢部材14Sの付勢力は、板14D,14Eが同一平面状に位置するように、すなわち開き角θが大きくなるように作用する。板14D,14E間のヒンジ部分14J1,14J2,14J3は矢印AR2の方向に移動するように付勢されるとともに、板状部材14Aは付勢部材14Sによって矢印AR2の方向に付勢されることとなる。すなわち、付勢部材14Sは板状部材14Aを保持面12の側に変位させるための付勢力を発生させている。
【0091】
形状記憶部材14Bは、板14D,14Eを介して付勢部材14Sと一体化されている。付勢部材14Sの弾性復元力および板14D,14Eの変形によって、形状記憶部材14Bも捩られるように変形する。形状記憶部材14Bが加熱部材14Hによって所定温度以上に昇温している状態では、形状記憶部材14Bは弾性的に変形することはほとんどない。形状記憶部材14Bは、板14D,14Eを介して受けた外力に応じて自在に変形可能であるとともに、当該外力を受けなくなったとしても変形後の形状を維持する。
【0092】
付勢部材14Sからの付勢力を受けた板14D,14Eは、保持面12の側、すなわち矢印AR2の方向に変位する。形状記憶部材14Bは、板状部材14Aとともに、乗員の胴部の形状に対応するように変形する。板状部材14Aの位置および上記開き角θ、ならびに形状記憶部材14Bの変形後の形状によって、矢印AR2の方向に変位した保持面12の形状が規定されることとなる。
【0093】
スイッチがさらに操作されたり、スイッチ操作が停止されたり、あるいは所定の時間が経過したりしたこと等に基づいて、加熱部材14Hによる加熱が停止される。形状記憶部材14Bの温度は、やがて所定温度未満(たとえば常温)となるように低下する。形状記憶部材14Bは、変形後の形状を維持する。変形後の形状および位置は、乗員の体格に適合しているものであり、これにより乗物用シートは、快適な乗り心地を乗員に提供することが可能となる。
【0094】
上述の実施の形態3においても、加熱された形状記憶部材を、乗員から受ける外力を利用して変形させることで、乗員の体格に合うように保持面を容易に変形させることができ、アクチュエータ(電動モータ)を用いる場合に比べて簡素な構成にてシートの保持面を調節することが可能である。実施の形態3で開示した思想は、ヘッドレストの保持面やシートクッションの保持面の位置および/または形状を調節するという動作にも適用可能である。上述の実施の形態3で開示した思想は、保持面のうちの左右方向や斜め方向に変位する部分(いわゆるサイドサポート部分)の調節動作に適用可能であり、保持面のうちの主として前後方向に変位する部分(いわゆるメイン部分)の調節動作にも適用可能である。
【0095】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。