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特開2018-203042冠水路走行制御装置及び冠水路走行制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203042(P2018-203042A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】冠水路走行制御装置及び冠水路走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/18 20120101AFI20181130BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B60W30/18
   B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-110525(P2017-110525)
(22)【出願日】2017年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】井上 諭
(72)【発明者】
【氏名】篤 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】新沼 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】湯澤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】青木 光夫
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BA60
3D241BB24
3D241BC01
3D241CA03
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC14
3D241CC15
3D241CD03
3D241CD12
3D241CD15
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA03Z
3D241DA04Z
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3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02B
3D241DB02Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DC42Z
3D241DC46B
3D241DC46Z
(57)【要約】
【課題】冠水した道路でも車両を安全に進入させる。
【解決手段】冠水路走行制御装置1は、冠水した道路を走行するために車両10を制御するものであり、冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速とが対応付けられた水深−進入車速データ163を予め記憶した記憶部16と、ECU15とを備える。ECU15は、車両10が冠水部に進入する前に車両前方の冠水部の水深を推定し、推定された冠水部の水深が所定値以上であった場合に、当該水深と、水深−進入車速データ163とに基づいて、車速の上限を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠水した道路を走行するために車両を制御する冠水路走行制御装置であって、
所定値以上の冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速とが対応付けられた水深−進入車速データを予め記憶した記憶手段と、
車両が冠水部に進入する前に、当該冠水部の水深を推定する水深推定手段と、
車速の上限を設定する車速制限手段と、
を備え、
前記車速制限手段は、前記水深推定手段が推定した冠水部の水深が前記所定値以上であった場合に、当該水深と、前記水深−進入車速データとに基づいて、車速の上限を設定することを特徴とする冠水路走行制御装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、冠水部の水深と、当該水深の冠水部を走行可能な車速とが対応付けられた水深−走行車速データを予め記憶しており、
前記車速制限手段は、前記水深推定手段が推定した冠水部の水深と、前記水深−走行車速データとに基づいて、当該冠水部内を走行する車速の上限を設定することを特徴とする請求項1に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項3】
前記車速制限手段は、車両が冠水部に進入した後に、参照する車速データを、前記水深−進入車速データから前記水深−走行車速データに切り替えて、前記冠水部内を走行する車速の上限を設定することを特徴とする請求項2に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項4】
車両が冠水部内で浸水した浸水高さを検出する浸水高さ検出手段をさらに備え、
前記車速制限手段は、前記浸水高さ検出手段が検出した浸水高さが所定の高さを超えた場合に、参照する車速データを、前記水深−進入車速データから前記水深−走行車速データに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項5】
前記所定の高さは、前記冠水部のうちの最深部の水深に基づいて設定されることを特徴とする請求項4に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項6】
前記車両は、車体への衝撃を緩和する緩衝装置を前端部に備え、
前記所定の高さは、前記緩衝装置の取付位置に基づいて予め設定されていることを特徴とする請求項4に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項7】
前記水深−走行車速データは、浸水によって異常が生じる前記車両の最弱部位に基づいて予め設定され、当該最弱部位は車速に応じた箇所であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項8】
前記車両に搭載され、車両前方の三次元画像を取得する撮像手段をさらに備え、
前記記憶手段は、三次元地図情報を予め記憶しており、
前記水深推定手段は、前記撮像手段が取得した冠水部の三次元画像と、前記記憶手段に記憶された当該冠水部に対応する位置の三次元地図情報との比較により、当該冠水部の水深を推定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項9】
他の車両との車車間通信が可能な通信手段をさらに備え、
前記通信手段は、前記水深推定手段が車両前方の冠水部の水深を推定できなかった場合に、他の車両が推定した前記冠水部の水深を車車間通信により当該他の車両から取得し、
前記車速制限手段は、前記通信手段が取得した前記冠水部の水深を用いて前記車速の上限を設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の冠水路走行制御装置。
【請求項10】
冠水した道路を走行するために車両を制御する冠水路走行制御方法であって、
所定値以上の冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速とが対応付けられた水深−進入車速データを予め記憶した記憶手段を備える冠水路走行制御装置が、
車両が冠水部に進入する前に、当該冠水部の水深を推定する水深推定工程と、
前記水深推定工程で推定された冠水部の水深が前記所定値以上であった場合に、当該水深と、前記水深−進入車速データとに基づいて、車速の上限を設定する車速制限工程と、
を実行することを特徴とする冠水路走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冠水した道路でも車両を安全に走行させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
集中豪雨等により冠水した道路を車両が走行した場合、冠水深さが車両の許容量を上回っていると、電気系統がショートしたり、排気管やトランスミッション内に水が侵入したりして、最悪の場合には走行不能に陥るおそれがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1,2では、一定以上の水深の冠水部を検知したときに、この冠水部を迂回するルートをナビゲートしたり、冠水部を走行せざるを得ない場合には排気圧力を高めて排気管からの水の侵入を防ぐ制御をしたりする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−341795号公報
【特許文献2】特開2016−94084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が冠水部に進入する際には、その進入時の水深や車速によっては車体が大きな衝撃を受けて破損する可能性がある。上記特許文献1,2に記載の技術は、あくまで冠水部を回避するか、あるいは冠水部内を走行する際の浸水を防ぐものであり、このような冠水部への進入時における車両の破損を防止できるものではない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、冠水した道路でも車両を安全に進入させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、冠水した道路を走行するために車両を制御する冠水路走行制御装置であって、
所定値以上の冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速とが対応付けられた水深−進入車速データを予め記憶した記憶手段と、
車両が冠水部に進入する前に、当該冠水部の水深を推定する水深推定手段と、
車速の上限を設定する車速制限手段と、
を備え、
前記車速制限手段は、前記水深推定手段が推定した冠水部の水深が前記所定値以上であった場合に、当該水深と、前記水深−進入車速データとに基づいて、車速の上限を設定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冠水路走行制御装置において、
前記記憶手段は、冠水部の水深と、当該水深の冠水部を走行可能な車速とが対応付けられた水深−走行車速データを予め記憶しており、
前記車速制限手段は、前記水深推定手段が推定した冠水部の水深と、前記水深−走行車速データとに基づいて、当該冠水部内を走行する車速の上限を設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の冠水路走行制御装置において、
前記車速制限手段は、車両が冠水部に進入した後に、参照する車速データを、前記水深−進入車速データから前記水深−走行車速データに切り替えて、前記冠水部内を走行する車速の上限を設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の冠水路走行制御装置において、
車両が冠水部内で浸水した浸水高さを検出する浸水高さ検出手段をさらに備え、
前記車速制限手段は、前記浸水高さ検出手段が検出した浸水高さが所定の高さを超えた場合に、参照する車速データを、前記水深−進入車速データから前記水深−走行車速データに切り替えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の冠水路走行制御装置において、
前記所定の高さは、前記冠水部のうちの最深部の水深に基づいて設定されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の冠水路走行制御装置において、
前記車両は、車体への衝撃を緩和する緩衝装置を前端部に備え、
前記所定の高さは、前記緩衝装置の取付位置に基づいて予め設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6のいずれか一項に記載の冠水路走行制御装置において、
前記水深−走行車速データは、浸水によって異常が生じる前記車両の最弱部位に基づいて予め設定され、当該最弱部位は車速に応じた箇所であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の冠水路走行制御装置において、
前記車両に搭載され、車両前方の三次元画像を取得する撮像手段をさらに備え、
前記記憶手段は、三次元地図情報を予め記憶しており、
前記水深推定手段は、前記撮像手段が取得した冠水部の三次元画像と、前記記憶手段に記憶された当該冠水部に対応する位置の三次元地図情報との比較により、当該冠水部の水深を推定することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の冠水路走行制御装置において、
他の車両との車車間通信が可能な通信手段をさらに備え、
前記通信手段は、前記水深推定手段が車両前方の冠水部の水深を推定できなかった場合に、他の車両が推定した前記冠水部の水深を車車間通信により当該他の車両から取得し、
前記車速制限手段は、前記通信手段が取得した前記冠水部の水深を用いて前記車速の上限を設定することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の冠水路走行制御装置と同様の特徴を具備する冠水路走行制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速とが対応付けられた水深−進入車速データが予め記憶されており、車両が冠水部に進入する前に推定された冠水部の水深が所定値以上であった場合に、当該水深と、水深−進入車速データとに基づいて、当該冠水部へ進入する車速の上限が設定される。
これにより、冠水部に進入する車両の速度を、当該冠水部の水深に応じた、車両を破損させることなく安全に進入可能なものに制限することができる。
したがって、冠水した道路でも車両を安全に進入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における冠水路走行制御装置を備える車両の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施形態における(a)水深−走行車速データの一例であり、(b)水深−進入車速データの一例である。
図3】実施形態における冠水路走行制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態における冠水路の水深を推定するときの車両の動きを説明するための図である。
図5】実施形態における冠水路への進入時及び走行時の車両の動きを説明するための図である。
図6】実施形態における水深−進入車速データの変形例である。
図7】実施形態における冠水路走行制御装置の動作の流れを示すフローチャートの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
<冠水路走行制御装置の構成>
図1は、本実施形態における冠水路走行制御装置1を備える車両10の概略構成を示すブロック図であり、図2(a),(b)は、後述の水深−走行車速データ162及び水深−進入車速データ163の一例を示す図である。
図1に示すように、冠水路走行制御装置1は、車両10に搭載されており、当該車両10が冠水した道路を走行する際に、その車速を制限することにより、当該車両10を安全に走行させるものである。
具体的に、冠水路走行制御装置1は、車載カメラ11と、車速センサ12と、位置センサ13と、通信部14と、ECU(Electronic Control Unit)15とを備えて構成されている。
【0021】
このうち、車載カメラ11は、車両前方の三次元画像を取得可能なステレオカメラである。この車載カメラ11は、ECU15からの制御指令に基づいて、車両前方の三次元画像を取得し、取得した画像情報をECU15に出力する。
【0022】
車速センサ12は、車両10の速度を検出するためのものであり、例えば車軸の回転数などを検出し、その検出値を車速信号としてECU15に出力する。
位置センサ13は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機などの、車両10の位置情報を取得するものであり、車両10の位置情報を取得してECU15に出力する。
通信部14は、無線通信により通信ネットワークに接続可能であるほか、他の車両との間で車車間(V2V)通信を行い、互いに各種信号を送受信可能となっている。
【0023】
ECU15は、冠水路走行制御装置1を含む車両10各部の動作を制御する。具体的に、ECU15は、車載カメラ11や車速センサ12等からの情報に基づいて、車両10の加速機構(内燃エンジン車であれば、スロットルバルブ及び/又は燃料噴射装置)17や制動機構(ブレーキ)18の動作を制御したりする。
また、ECU15は、車両10の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに作業領域としても機能する記憶部16を備えている。本実施形態においては、記憶部16は、三次元地図データ161と、水深−走行車速データ162と、水深−進入車速データ163とを予め記憶している。
【0024】
三次元地図データ161は、海や河川などの地形情報や、道路や鉄道,建造物などの土地の利用状態に関する情報を含む三次元(立体)の地理情報を有するものである。ただし、この三次元地図データ161は、少なくとも、車両10が走行する道路に関する三次元の路面形状情報を含んでいればよい。
【0025】
水深−走行車速データ162は、例えば図2(a)に示すように、冠水部の水深と、当該水深の冠水部を走行可能な車速(以下、「走行可能車速」という。)とが対応付けられたマトリクス表をデータ化したものである。図2(a)の例では、例えば冠水部の水深が50〜100mmの範囲内の場合、時速30km以下の車速であればこの冠水部の走行が可能とされ、冠水部の水深が200mmを超える場合には、この冠水部の走行は不可とされる。
ここで、冠水部の走行可能車速とは、冠水・浸水に対する車両10の最弱部位が、異常を生じさせずに走行可能な速度である。この最弱部位に生じる冠水・浸水時の異常としては、例えば、電気系統のショート、タイミングベルト被水によるベルトスリップ、マフラーやトランスミッション,リヤデフへの水侵入、水圧による部品の変形・破損などが挙げられる。これらの異常は、冠水部を走行する際にタイヤによって掻き揚げられる水を受けた場合にも発生し得る。そのため、上記の最弱部位は車速に応じて異なり、走行可能車速は冠水部の水深に応じたものとなっている。
【0026】
水深−進入車速データ163は、例えば図2(b)に示すように、冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速(以下、「進入可能車速」という。)とが対応付けられたマトリクス表をデータ化したものである。図2(b)の例では、冠水部の水深が150〜200mmの範囲内の場合、この冠水部への進入車速が時速10km以下であれば安全に進入可能とされ、冠水部の水深が150mm以下の場合には、上述した水深−走行車速データ162における走行可能車速の範囲内であれば、進入車速は特に制限されない。
ここで、冠水部の進入可能車速とは、車両10が所定値以上の水深の冠水部に進入する際に、水圧による各部の破損や変形を抑制可能な速度であり、上述した水深−走行車速データ162における走行可能車速よりも低車速である。また、所定値とは、冠水部への進入時に車両10に破損や変形を生じうる最低の水深である。この所定値は、車両10のうち最も破損しやすい箇所の取付位置(例えば、車両10前端部に取り付けられて車体への衝撃を緩和するバンパーの下端)に基づいて設定されていてもよい。
【0027】
<冠水路走行制御装置の動作>
続いて、車両10が冠水部を走行する際の冠水路走行制御装置1の動作について説明する。
図3は、この冠水路走行制御装置1の動作の流れを示すフローチャートであり、図4は、冠水路の水深を推定するときの車両10の動きを説明するための図であり、図5は、冠水路への進入時及び走行時の車両10の動きを説明するための図である。
【0028】
図3に示すように、まずECU15は、車両10走行時に、例えば気象情報等により車両前方の道路に冠水部Fが存在していることを検知すると(ステップS1)、この冠水部Fの水深dを推定する(ステップS2)。
このステップでは、ECU15は、図4(a)に示すように、車載カメラ11により冠水部Fを含む車両前方の三次元画像を取得し、当該画像を三次元地図データ161と比較することにより、冠水部Fの水深dを推定する。より詳しくは、ECU15は、車載カメラ11により取得した三次元画像における冠水部Fの水面高さと、三次元地図データ161において冠水部Fと対応する位置の路面高さとの差を、冠水部Fの水深dとして求める。三次元地図データ161における冠水部Fの位置は、位置センサ13により取得した車両10の位置情報と車載カメラ11の向きから特定される。
【0029】
なお、図4(b)に示すように、例えば車両10の前方を走行する他の車両10Aに遮られるなどにより、車載カメラ11で冠水部Fの画像を取得できない(つまり水深dを推定できない)場合には、当該他の車両10Aから、冠水部Fの水深dの情報を取得することとしてもよい。具体的には、ECU15が、他の車両10Aが自車の車載カメラ11A等により取得した冠水部Fの水深dの情報を、互いの通信部14,14A間でのV2V通信により取得することとしてもよい。
【0030】
次に、ECU15は、ステップS2で推定した冠水部Fの水深dと、水深−進入車速データ163とに基づいて、冠水部Fへの車両10の進入可否を判定する(ステップS3)。
このステップでは、ECU15は、水深−進入車速データ163に、推定された水深dに対応する進入可能車速が設定されている場合には冠水部Fへの進入が可能と判定し、設定されていない(図2(b)の例で「×」になっている)場合には冠水部Fへの進入は不可と判定する。
そして、冠水部Fへの進入は不可と判定した場合(ステップS3;No)、ECU15は、例えば図示しない表示部やスピーカに警告表示や警告音を出力させるなどして、冠水部Fの回避を運転者に促し、冠水部Fへの車両10の進入を回避させる(ステップS4)。
なお、ステップS3では、水深−進入車速データ163に代えて、水深−走行車速データ162を用いて、冠水部Fへの進入可否を判定することとしてもよい。
【0031】
一方、ステップS3において、冠水部Fへの進入が可能と判定した場合には(ステップS3;Yes)、ECU15は、冠水部Fへの進入時の車速制限が必要か否かを判定する(ステップS5)。
このステップでは、ECU15は、推定された水深dが所定値以上であり、当該水深dに対応する進入可能車速が水深−進入車速データ163に設定されている場合に進入車速の制限が必要と判定し、設定されていない場合には進入車速の制限は不要と判定する。ただし、水深−進入車速データ163を参照せずに、水深dのみに基づいて車速制限の要否を判定することとしてもよい。
【0032】
ステップS5において、冠水部Fへの進入車速の制限が必要と判定した場合(ステップS5;Yes)、ECU15は、水深−進入車速データ163に基づいて冠水部Fへの進入車速の上限を設定する(ステップS6)。
具体的に、ECU15は、水深−進入車速データ163において水深dに対応する進入可能車速の上限を冠水部Fへの進入車速の上限として設定する。
【0033】
一方、ステップS5において、冠水部Fへの進入車速の制限は不要と判定した場合(ステップS5;No)、ECU15は、後述のステップS8へ処理を移行する。
【0034】
次に、ECU15は、上述のステップS6で設定された進入車速の上限を超えないよう必要に応じて車両10を減速させつつ、車両10を冠水部Fに進入させる(ステップS7;図5(a))。
具体的に、ECU15は、車速センサ12により現状の車速を取得し、この車速がステップS6で設定された進入車速の上限を超えていた場合に、加速機構17や制動機構18の動作を制御する。つまり、ECU15は、車両10が冠水部Fに進入するまでに実際の車速が進入車速の上限以下となるように、制動機構18により車両10を減速させたり、運転者がアクセル開度を高める操作をした場合には車両10を加速させないよう加速機構17を制御したりする。
【0035】
そして、車両10が冠水部Fへ進入した後に、ECU15は、参照する車速データを、ここまで利用した水深−進入車速データ163から、水深−走行車速データ162に切り替える(ステップS8)。車両10が冠水部F内に進入したか否かは、ステップS2で取得した冠水部Fの位置と位置センサ13により取得した車両10の位置とを照合して判別することとしてもよいし、車両10の実際の浸水高さを検出可能な浸水センサ(図示省略)を用いて判別することとしてもよい。
【0036】
ただし、このデータ切替は、車両10の冠水部Fへの進入直後でなく、車両10が冠水部F内で実際に浸水した浸水高さが所定の高さを超えた場合に行われることとしてもよい。
ここで、「所定の高さ」は、冠水部Fのうちの最深部の水深に基づいて設定されるか、あるいは、車両10において冠水部F内での走行によって最も破損しやすい箇所(又は破損を防ぐべき箇所)の取付位置に基づいて予め設定されている。
このうち、最深部の水深に基づいて「所定の高さ」が設定される場合には、例えば「最深部の水深−20mm」などとして設定される。最深部は、厳密に冠水部F全域のうちの最深部でなくともよく、車両10の進行方向の所定範囲内での最深部であればよい。
一方、車両10の最も破損しやすい箇所の取付位置に基づく場合には、例えば、車両10前端部に取り付けられて車体への衝撃を緩和するバンパー(図示省略)の取付高さに基づいて、「バンパーの上端+10mm」などとして上記「所定の高さ」が設定される。これにより、バンパーが浸水しきった状態で車両10が走行するため、バンパーへの衝撃(すなわち当該パンパーの破損)を抑制することができる。
また、車両10が実際に浸水した浸水高さは、ステップS2で取得した冠水部Fの位置と位置センサ13により取得した車両10の位置との照合により検出することとしてもよいし、車両10の実際の浸水高さを検出可能な浸水センサ(図示省略)を用いて検出することとしてもよい。
なお、上述のステップS3,S5で水深−進入車速データ163を参照しておらず、且つステップS6で進入車速を制限していない場合には、そもそもここまで水深−進入車速データ163を参照していないため、このステップS8での参照データの切替は不要である。この場合、冠水部進入前から水深−走行車速データ162のみを参照することとするか、あるいは後述のステップS9で水深−走行車速データ162を読み出すこととしてもよい。
【0037】
次に、ECU15は、水深−走行車速データ162に基づいて、冠水部F内を走行する車速の上限を設定する(ステップS9)。
具体的に、ECU15は、水深−走行車速データ162において水深dに対応する走行可能車速の上限を冠水部F内での走行車速の上限として設定する。
【0038】
そして、ECU15は、上述のステップS9で設定された走行車速の上限を超えないよう必要に応じて加速機構17を制御しつつ、当該車両10を冠水部F内で走行させる(ステップS10;図5(b))。
このとき、上述のステップS7において走行車速の上限よりも低い進入車速まで減速されていた場合には、ECU15は、設定された走行車速の上限を超えない範囲で運転者の加速操作を許容し、加速機構17を制御して車両10を加速させる。
【0039】
こうして、推定された冠水部Fの水深d,水深−進入車速データ163及び水深−走行車速データ162に基づいて、冠水部Fへの進入可否の判断や、水深dに応じた冠水部Fでの進入車速及び走行車速の制御が行われる。これにより、車両10に冠水部Fを好適に回避させるか、あるいは、車両10を冠水部Fへ安全に進入及び走行させることができる。
なお、車両10を冠水部Fへ進入させた後、車両10が冠水部Fから脱するまで、車両前方の水深dの推定と、この水深dに応じた走行車速の制御とを順次繰り返すこととしてもよい。
【0040】
<効果>
以上のように、本実施形態によれば、冠水部の水深と、当該水深の冠水部に進入可能な車速とが対応付けられた水深−進入車速データ163が予め記憶されており、車両10が冠水部Fに進入する前に推定された冠水部Fの水深dが所定値以上であった場合に、当該水深dと、水深−進入車速データ163とに基づいて、当該冠水部Fへ進入する車速の上限が設定される。
これにより、冠水部Fに進入する車両10の速度を、当該冠水部Fの水深dに応じた、車両10を破損させることなく安全に進入可能なものに制限することができる。
したがって、冠水した道路でも車両10を安全に進入させることができる。
【0041】
また、冠水部の水深と、当該水深の冠水部を走行可能な車速とが対応付けられた水深−走行車速データ162が予め記憶されており、この水深−走行車速データ162と、推定された車両前方の冠水部Fの水深dとに基づいて、当該冠水部F内を走行する車速の上限が設定される。
これにより、冠水部Fを走行する車両10の速度を、当該冠水部Fの水深dに応じた、安全に走行可能なものに制限することができる。
したがって、冠水した道路でも車両10を安全に走行させることができる。
【0042】
また、水深−進入車速データ163から水深−走行車速データ162への参照データの切替を、車両10の実際の浸水高さがバンパーの取付位置に基づく所定の高さを超えてから行うことにより、バンパーを破損させることなく車両10を走行させることができる。
つまり、バンパーが浸水しきるまではより安全な(より低速に制限される)水深−進入車速データ163を参照しておき、バンパーが浸水しきって走行時に受ける衝撃が低くなってから水深−進入車速データ163を参照するように、データ切替を行うことができる。さらに、進入速度から走行速度へ車両10を加速させることで、より早く冠水部Fから抜けることができる。
【0043】
また、車載カメラ11が取得した冠水部Fの三次元画像と、この冠水部Fの三次元地図データ161との比較により、当該冠水部Fの水深dが推定されるので、当該水深dを好適に推定することができる。
【0044】
また、車両10が冠水部Fの水深dを直接推定できなかった場合には、当該他の車両10Aが推定した冠水部Fの水深dをV2V通信により取得し、これを用いて進入車速又は走行車速を制御することができる。
【0045】
<変形例>
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、車載カメラ11(ステレオカメラ)を用いて冠水部Fの実際の水面高さの情報を取得することとしたが、当該車載カメラ11に代えて、例えばレーダーや赤外線カメラなどを用いることとしてもよい。
【0047】
また、三次元地図データ161は予め記憶部16に記憶されていなくともよく、例えば通信部14を通じてインターネット上から取得されることなどとしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、水深−走行車速データ162とは別に、水深−進入車速データ163を予め記憶させておくこととした。しかし、水深−進入車速データ163に設定された進入可能車速は、水深−走行車速データ162に設定された走行可能車速に含まれるその一部である。そのため、冠水部Fへの進入車速制限の要否判定(ステップS5)では、水深−走行車速データ162内の当該一部のみを参照するようにし、水深−進入車速データ163を不要としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、冠水部Fへの進入車速を制限する水深の閾値である「所定値」を、冠水部Fへの進入時に車体(例えばバンパー)に破損や変形を生じうる最低の水深に基づくものとした。しかし、この「所定値」は、車両10が速度を上げるとタイヤの掻き上げによって最弱部に水が侵入しうる最低の水深としてもよい。
このように「所定値」を設定した場合には、例えば図6に示すように、上記実施形態の水深−進入車速データ163に代えて、進入時にバンパーに衝撃が加わらない水深(上記実施形態では150mm未満)での進入可能車速の情報を有する水深−進入車速データ163Aを用いる必要がある。図6の例では、当該水深(150mm未満)での車速上限値を、上記実施形態の水深−走行車速データ162におけるものと同一としている(図2(a)参照)。その結果、上記実施形態と異なりバンパーの破損防止を目的とした車速の制限が不要な場合でも、冠水部Fへの進入時には水深−進入車速マップ163Aを参照して進入車速の上限が設定される。また、この場合には、図7に示すように、冠水部Fへの進入車速の制限が不要と判定されたとき(ステップS5;No)、すなわち冠水部Fの水深dが上記所定値未満であったときには、上記実施形態と異なり、車速を制限する処理を行うことなくそのまま冠水部Fへ進入可能である。
【0050】
また、車両10を所定車速以下で所定水深以上の冠水部Fに走行させる場合に、各車輪の摩擦係数に応じて四輪の駆動力やブレーキを制御する悪路走行モードを作動させるように構成してもよい。
この悪路走行モードでは、各車輪の車輪速や、エンジントルク・回転数、スロットル開度、VDC(Vehicle Dynamics Control)情報(ステアリングの舵角、ヨーレート、横加速度信号)がセンシングされ、これに基づいて、AWDの締結力(前後輪の差回転抑制)、ブレーキによるLSD(Limited slip differential)効果(左右輪の差回転抑制)、転舵補正等が制御される。この悪路走行モードを、冠水部Fの水深dとアクセル開度とに基づいて自動的に作動させることにより、四輪の差回転を抑制して走破性を高めることができ、より安全に冠水部Fを走行させることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、車両10が前方向きに冠水部Fに進入する場合について説明したが、本発明は、車両10が後方向きに冠水部Fに進入する場合にも適用可能である。ただし、この場合には、車両後方の画像を取得する撮像手段を設けるなどして、車両後方の冠水部Fの水深情報を取得可能に構成する必要がある。
【符号の説明】
【0052】
10 車両
1 冠水路走行制御装置
11 車載カメラ
14 通信部
15 ECU
16 記憶部
161 三次元地図データ
162 水深−走行車速データ
163 水深−進入車速データ
F 冠水部
d 水深
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7