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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203084(P2018-203084A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20181130BHJP
   B60W 40/072 20120101ALI20181130BHJP
【FI】
   B60W30/14
   B60W40/072
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-111406(P2017-111406)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BB30
3D241CD01
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01A
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB09A
3D241DB09Z
3D241DC02Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC39Z
3D241DC45Z
3D241DC50Z
3D241DC53Z
3D241DD12Z
(57)【要約】
【課題】自車両の周辺環境を十分に認識できない場合であっても、道路の路面状況を反映した適切な車速でのカーブ走行を可能とする。
【解決手段】走行制御装置100は、減速補正判断部101でカーブ進入前の車速の減速補正が必要か否かを判断し、減速補正の必要が有ると判断した場合、車線検知評価部102で白線検知評価値を算出してカーブ進入の減速制御における制御ゲインの変更を判断する。そして、走行制御装置100は、制御ゲイン設定部103で白線検知評価値に応じてカーブ走行に係る各種制御ゲインを変更し、減速制御部104で制御ゲインを用いてカーブへの進入時の車速を適正な車速に制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に存在するカーブの情報を取得し、前記カーブの情報に基づいて前記カーブへの進入時に自車両の車速の減速補正が必要か否かを判断する減速補正判断部と、
前記減速補正が必要と判断された場合、前記カーブへの進入前の道路の路面状況を前記カーブの手前の車線の検知状態によって評価する車線検知評価部と、
前記車線の検知状態の評価値に基づいて、前記減速補正の制御ゲインを設定する制御ゲイン設定部と、
前記制御ゲインに基づいて、前記カーブへの進入時に自車両の車速を減速制御する減速制御部と
を備えることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記車線検知評価部は、前記路面状況を、前記カーブの手前の設定距離と、前記設定距離において検知される前記車線の距離との比を評価値として評価することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記制御ゲイン設定部は、前記車線の検知状態の評価値が閾値以上のとき、前記カーブの情報に基づく減速補正の制御ゲインを通常時の制御ゲインとして設定し、前記車線の検知状態の評価値が前記閾値に達しないとき、前記通常時の制御ゲインをより小さくする方向に変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記制御ゲイン設定部は、前記制御ゲインとして、前記カーブへの進入時の目標車速を補正する車速補正ゲインと、前記減速制御におけるレートリミッタを補正するレートリミッタ補正ゲインと、現在の自車両の位置から前記減速制御を開始するまでの距離を補正する制御開始距離補正ゲインとを設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の前方に存在するカーブへの進入時に車速を制御する車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、自動運転を含む運転支援の技術として、自車両が目標コースに沿って自動的に走行するように制御する技術が開発されている。この目標コースに沿った自動走行では、前方に存在するカーブを走行する場合、カーブ進入時の車速を減速させる等して安全にカーブを通過できるように制御する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ナビゲーション装置によって取得したカーブの曲率情報に基づいて算出した車両の目標速度を、画像認識装置で測定した車線幅に応じて補正することで、カーブの実状況を反映した速度制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5124415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の技術では、積雪、濃霧、豪雨等により自車両の周辺環境を十分に認識できない場合、そのときの道路の路面状況を反映した適切な車速でのカーブ走行を実現することは困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両の周辺環境を十分に認識できない場合であっても、道路の路面状況を反映した適切な車速でのカーブ走行を可能とすることのできる車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両の走行制御装置は、自車両の前方に存在するカーブの情報を取得し、前記カーブの情報に基づいて前記カーブへの進入時に自車両の車速の減速補正が必要か否かを判断する減速補正判断部と、前記減速補正が必要と判断された場合、前記カーブへの進入前の道路の路面状況を前記カーブの手前の車線の検知状態によって評価する車線検知評価部と、前記車線の検知状態の評価値に基づいて、前記減速補正の制御ゲインを設定する制御ゲイン設定部と、前記制御ゲインに基づいて、前記カーブへの進入時に自車両の車速を減速制御する減速制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両の周辺環境を十分に認識できない場合であっても、道路の路面状況を反映した適切な車速でのカーブ走行を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】走行制御システムの構成図
図2】自車両とカーブとの位置関係を示す説明図
図3】白線検知評価値と制御ゲインと関係を示す説明図
図4】カーブ進入時の車速変化を示す説明図
図5】車速補正ゲインの変化を示す説明図
図6】カーブ減速制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1において、符号1は、自動車等の車両の走行制御システムであり、車両の自律的な自動運転を含む走行制御を実行する。この走行制御システム1は、走行制御装置100を中心として、外部環境認識装置10、測位装置20、地図情報処理装置30、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60、操舵制御装置70、警報・情報提示制御装置80を備えて構成され、各装置が通信バス150を介してネットワーク接続されている。
【0011】
外部環境認識装置10は、車載のカメラユニット11、ミリ波レーダやレーザレーダ等のレーダ装置12等の環境認識用の各種デバイスや、自車両が走行する外界環境の気象条件の1つとして外気温を検出する外気温センサ13等の各種センサを備えている。外部環境認識装置10は、カメラユニット11やレーダ装置12等で検出した自車両周囲の物体の検出情報、外気温センサ13で検出した外気温等の環境情報に加え、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって取得した交通情報、測位装置20で測位した自車両の位置情報、地図情報処理装置30からの地図情報等により、自車両周囲の外部環境を認識する。
【0012】
例えば、カメラユニット11として、同一対象物を異なる視点から撮像する2台のカメラで構成されるステレオカメラを搭載する場合、このステレオカメラで撮像した左右一対の画像をステレオ処理することにより、外部環境を3次元的に認識することができる。ステレオカメラとしてのカメラユニット11は、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期の2台のカラーカメラが所定の基線長で車幅方向左右に配置されて構成されている。
【0013】
ステレオカメラとしてのカメラユニット11で撮像された左右一対の画像は、マッチング処理によって左右画像間の対応位置の画素ずれ量(視差)が求められ、画素ずれ量を輝度データ等に変換した距離画像が生成される。この距離画像上の点は、三角測量の原理から、自車両の車幅方向すなわち左右方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向すなわち距離方向をZ軸とする実空間上の点に座標変換され、自車両が走行する道路の白線(車線)、障害物、自車両の前方を走行する車両等が3次元的に認識される。
【0014】
車線としての道路白線は、画像から白線の候補となる点群を抽出し、その候補点を結ぶ直線や曲線を算出することにより、認識することができる。例えば、画像上に設定された白線検出領域内において、水平方向(車幅方向)に設定した複数の探索ライン上で輝度が所定以上変化するエッジの検出を行って探索ライン毎に1組の白線開始点及び白線終了点を検出し、白線開始点と白線終了点との間の中間の領域を白線候補点として抽出する。
【0015】
そして、単位時間当たりの車両移動量に基づく白線候補点の空間座標位置の時系列データを処理して左右の白線を近似するモデルを算出し、このモデルにより、白線を認識する。白線の近似モデルとしては、ハフ変換によって求めた直線成分を連結した近似モデルや、2次式等の曲線で近似したモデルを用いることができる。
【0016】
測位装置20は、GPS衛星等の複数の航法衛星からの信号に基づく測位を主として、自車両の車両位置を検出する。また、衛星からの信号(電波)の捕捉状態化や電波の反射によるマルチパスの影響等で測位精度が悪化した場合には、ジャイロセンサ22や車速センサ23等の車載センサを用いた自律航法による測位を併用して自車両の車両位置を検出する。
【0017】
複数の航法衛星による測位では、航法衛星から送信される軌道及び時刻等に関する情報を含む信号を受信機21を介して受信し、受信した信号に基づいて自車両の自己位置を、経度、緯度、高度、及び時間情報を含む絶対位置として測位する。また、自律航法による測位では、ジャイロセンサ22によって検出した自車両の進行方位と車速センサ23から出力される車速パルス等から算出した自車両の移動距離とに基づいて、相対的な位置変化分としての自車位置を測位する。
【0018】
尚、測位装置20は、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって交通情報を取得する通信ユニットを一体的に備えるようにしても良い。
【0019】
地図情報処理装置30は、地図データベースDBを備え、測位装置20で測位した自車両の位置データから地図データベースDBの地図データ上での位置を特定して出力する。地図データベースDBには、例えば、主として車両走行の経路案内や車両の現在位置を表示する際に参照されるナビゲーション用の地図データと、この地図データよりも詳細な、自動運転を含む運転支援制御を行う際に参照される走行制御用の地図データとが保持されている。
【0020】
ナビゲーション用の地図データは、現在のノードに対して前のノードと次のノードとがそれぞれリンクを介して結びつけられており、各リンクには、道路に設置された信号機、道路標識、建築物等に関する情報が保存されている。一方、走行制御用の高精細の地図データは、ノードと次のノードとの間に、複数のデータ点を有している。このデータ点には、自車両が走行する道路の車線毎の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用データが、データの信頼度やデータ更新の日付け等の属性データと共に保持されている。
【0021】
地図情報処理装置30は、自車両位置の測位結果と地図データとの照合を行い、その照合結果に基づく走行経路案内や交通情報を図示しない表示装置を介してドライバに提示する。また、地図情報処理装置30は、自車両が走行する道路の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、道路白線種別、レーン数等の走行制御用の地図情報を通信バス150を介して送信する。尚、走行制御用の地図情報は、主として走行制御装置100に送信されるが、必要に応じて他の制御装置にも送信される。
【0022】
更に、地図情報処理装置30は、地図データベースDBの保守管理を行い、地図データベースDBのノード、リンク、データ点を検定して常に最新の状態に維持すると共に、データベース上にデータが存在しない領域についても新規データを作成・追加し、より詳細なデータベースを構築する。地図データベースDBのデータ更新及び新規データの追加は、測位装置20によって測位された位置データと、地図データベースDBに記憶されているデータとの照合によって行われる。
【0023】
エンジン制御装置40は、エンジン運転状態を検出する各種センサ類からの信号及び通信バス150を介して送信される各種制御情報に基づいて、エンジン(図示せず)の運転状態を制御する。エンジン制御装置40は、例えば、吸入空気量、スロットル開度、エンジン水温、吸気温度、空燃比、クランク角、アクセル開度、その他の車両情報に基づき、燃料噴射制御、点火時期制御、電子制御スロットル弁の開度制御等を主要とするエンジン制御を実行する。
【0024】
変速機制御装置50は、変速位置や車速等を検出するセンサ類からの信号や通信バス150を介して送信される各種制御情報に基づいて、自動変速機(図示せず)に供給する油圧を制御し、予め設定された変速特性に従って自動変速機を制御する。
【0025】
ブレーキ制御装置60は、例えば、ブレーキスイッチ、4輪の車輪速、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づき、4輪のブレーキ装置(図示せず)をドライバのブレーキ操作とは独立して制御する。また、ブレーキ制御装置60は、各輪のブレーキ力に基づいて各輪のブレーキ液圧を算出して、アンチロック・ブレーキ・システムや横すべり防止制御等を行う。
【0026】
操舵制御装置70は、例えば、車速、ドライバの操舵トルク、ハンドル角、ヨーレート、その他の車両情報に基づいて、操舵系に設けた電動パワーステアリングモータ(図示せず)による操舵トルクを制御する。この操舵トルクの制御は、実操舵角を目標操舵角に一致させるための目標操舵トルクを実現する電動パワーステアリングモータの電流制御として実行され、ドライバのハンドル操作によるオーバーライドがない場合、例えばPID制御によって電動パワーステアリングモータの駆動電流が制御される。
【0027】
警報・情報提示制御装置80は、車両の各種装置に異常が生じた場合やドライバに注意を喚起するための警報、及びドライバに提示する各種情報の出力を制御する装置である。例えば、モニタ、ディスプレイ、アラームランプ等の視覚的な出力と、スピーカ・ブザー等の聴覚的な出力との少なくとも一方を用いて、警告・情報提示を行う。警報・情報提示制御装置80は、自動運転を含む運転支援制御を実行中、その制御状態をドライバに提示し、また、ドライバの操作によって自動運転含む運転支援制御が休止された場合には、そのときの運転状態をドライバに報知する。
【0028】
次に、走行制御システム1の中心となる走行制御装置100について説明する。走行制御装置100は、ドライバが図示しないスイッチやパネル等を操作して自動運転や運転支援の走行モードにセットしたとき、例えば、ドライバ入力に従って地図データベースDBから自車両が追従走行する目標コースを設定する。そして、走行制御装置100は、外部環境認識装置10による外部環境の認識情報、測位装置20及び地図情報処理装置30からの情報や交通情報等に基づいて、自車両が目標コースに沿って走行するよう、エンジン制御装置40、変速機制御装置50、ブレーキ制御装置60、及び操舵制御装置70を介した走行制御を実行する。
【0029】
この目標コースへの走行制御においては、走行制御装置100は、測位装置20や地図情報処理装置30からの情報に基づいて、自車両前方にカーブが存在すると判断した場合、自車両がカーブを安全に通過できるようにカーブ進入の速度を減速させる。その際、カーブに進入する前の実際の道路の路面状況を調べ、同じ曲率のカーブであっても、路面状況の検知状態に応じてカーブ減速制御におけるカーブ進入時の車速や減速のタイミングを変更する。後述するように、このカーブ減速制御における制御ゲインの変更は、通常よりも路面状況が悪化していることを想定して、通常のカーブ走行に対して、車速をより低下させ、また、より緩やかに車速を低下させるような変更となる。
【0030】
このため、走行制御装置100は、カーブ減速制御に係る機能部として、減速補正判断部101、車線検知評価部102、制御ゲイン設定部103、減速制御部104を備えている。概略的には、走行制御装置100は、これらの機能部により、前方のカーブを通過する際に自車両を減速させる必要が有ると判断した場合、自車両の走行車線の検知状態を評価し、その評価値に応じて、カーブ走行に係る各種制御ゲインを変更することで、適正な車速でのカーブ走行を可能とする。
【0031】
詳細には、減速補正判断部101は、測位装置20や地図情報処理装置30から自車両が進入するカーブの曲率半径、車線幅等の情報を取得し、現在の目標車速でのカーブの走行速度とカーブの曲率半径とに基づいて、カーブ走行時の横加速度を算出する。そして、この現在の目標車速での横加速度と、予め設定された許容横加速度とを比較し、カーブ進入前の車速の減速補正が必要か否かを判断する。
【0032】
許容横加速度は、カーブの曲率半径、車線幅、道路勾配等を考慮して、ドライバに不安感や違和感を与えることのない適正な車速でのカーブ走行を可能とするように予め設定されている。減速補正判断部101は、現在の目標車速での横加速度が許容横加速度よりも大きい場合、カーブ進入前の車速の減速補正が必要と判断し、車線検知評価部102及び制御ゲイン設定部103に通知する。一方、現在の車速での横加速度が許容横加速度以下の場合には、カーブ進入前の車速の減速補正は不要と判断して、カーブ減速制御に係る他の機能部を待機状態とする。
【0033】
車線検知評価部102は、減速補正判断部101でカーブ進入前の車速の減速補正が必要と判断された場合、カーブ進入前の道路の路面状況を、カーブ手前の車線の検知状態によって評価する。そして、車線検知評価部102は、車線の検知状態の評価値に基づいて、カーブ進入時の車速や減速のタイミングを通常時よりも減速側に変更する補正を実行するか否かを判断する。
【0034】
具体的には、車線検知評価部102は、外部環境認識装置10による車線としての白線の検知状態を評価し、白線検知評価値Value_Lineを算出する。例えば、図2に示すように、半径RのカーブCVの開始位置に対して自車両CRが距離LR3(カーブ開始距離LR3)の位置にいる場合、自車両CRからカーブ減速制御を開始する位置までの距離LR2(制御開始距離LR2)よりも短い所定の距離を、評価値を算出するための評価値算出距離LR1として、この評価値算出距離LR1内で白線検知評価値Value_Lineを算出する。
【0035】
白線検知評価値Value_Lineは、以下の(1)式に示すように、評価値算出距離LR1と、同じ距離内で認識できた白線の長さLLineとの比として算出される。車線検知評価部102は、白線検知評価値Value_Lineを予め設定した閾値PLineと比較し、以下の(2)式の条件が成立する場合、制御ゲイン設定部103に、カーブ進入の減速制御における制御ゲインの変更を指示する。
Value_Line=LLine/LR1 …(1)
Value_Line<PLine …(2)
【0036】
閾値PLineは、雪道や悪天候時の走行のように、白線の検知状態が低下して白線を部分的にしか認識できない路面状況を判別するための閾値であり、Value_Line<PLineの場合、路面摩擦係数の低い悪条件下の走行であり、カーブ減速制御における制御ゲインを通常の乾燥路での走行に対して変更する必要があると破断する。一方、Value_Line≧PLineの場合には、白線を良好に検知できており、通常の乾燥路での走行であるとして、車線検知評価部102は、制御ゲイン設定部103にカーブ減速制御の制御ゲインを通常の値にするように指示する。
【0037】
尚、車線検知評価部102において、(2)式の条件が成立する場合、外気温センサ13で検出した外気温等の周囲環境と、車両のヒータ作動状態、ワイパの作動状態、昼間の時間帯でのヘッドライトの点灯の有無等の車両状態とを考慮して、カーブ減速制御の変更を再確認するようにしても良い。
【0038】
例えば、(2)式の条件が成立し、且つ、外気温が低く、ヒータが作動している場合には、雪道走行であると判断することができ、また、ワイパが作動していたり、昼間でもヘッドライトが点灯している状態では、吹雪、豪雨、濃霧等の視界が良好でない環境下での走行と判断することができる。このような自車両周囲の環境と車両状態とを考慮した再確認を経てカーブ減速制御の変更を実施することで、一時的な誤認識等の影響を回避して制御信頼性を向上することができる。
【0039】
制御ゲイン設定部103は、白線検知評価値Value_Lineに応じて、カーブ減速制御の制御ゲインを変更する。本実施の形態においては、制御ゲイン設定部103は、カーブ減速制御の制御ゲインとして、カーブ進入時の目標車速VR_TGTを補正するための車速補正ゲインGV、制御出力の変化速度を規制するレートリミッタPRateLimitを補正するためのレートリミッタ補正ゲインGLimit、制御開始距離LR2(図2参照)を補正するための制御開始距離補正ゲインGLを設定する。
【0040】
Value_Line≧PLineの場合、車速補正ゲインGV、レートリミッタ補正ゲインGLimit、制御開始距離補正ゲインGLは、GV=1.0、GLimit=1.0、GL=1.0に設定されており、通常の乾燥路を想定して設定された最適な目標車速VR_TGT、レートリミッタPRateLimit、制御開始距離LR2が補正されることなく用いられる。
【0041】
一方、Value_line<Plineの場合には、図3に示すように、車速補正ゲインGV、レートリミッタ補正ゲインGLimit、制御開始距離補正ゲインGLは、通常時の値から変更され、白線検知評価値Value_Lineの値が小さくなるほど、各ゲインの値が小さくなるように設定される。
【0042】
減速制御部104は、制御ゲイン設定部103で設定された車速補正ゲインGV、レートリミッタ補正ゲインGLimit、制御開始距離補正ゲインGLを用いて、カーブ進入時の車速と制御開始のタイミングを制御する。具体的には、以下の(3)〜(5)式で示すように、カーブに対する通常時の目標車速VR_TGT、通常時の制御開始距離LR2、通常時のレートリミッタPRateLimitを、車速補正ゲインGV、レートリミッタ補正ゲインGLimit、制御開始距離補正ゲインGLで補正し、補正後の目標車速V'R_TGT、補正後の制御開始距離L'R2、補正後のレートリミッタP'RateLimitを算出する。
V'R_TGT=GV×VR_TGT …(3)
L'R2=GL×LR2 …(4)
P'RateLimit=GLimit×PRateLimit …(5)
【0043】
例えば、走行中に前方のカーブを検知して減速が必要と判断され、評価値算出距離LR1での評価結果がValue_Line≧PLineである場合には、乾燥路を想定した通常のカーブ走行でGV=1.0、GLimit=1.0、GL=1.0であるため、図4に示すように、カーブ減速が必要と判断された地点を基準として、予め定められた通常時の制御開始距離LR2に達したときに減速を開始する。そして、制御開始距離LR2からカーブ開始距離LR3に達するまでの間に、車速Vが目標車速VR_TGTまで減速され、カーブ進入時の車速が制御される。
【0044】
これに対して、走行中に前方のカーブを検知して減速が必要と判断され、評価値算出距離LR1での評価結果がValue_Line<PLineである場合には、図5に示すように、車速補正ゲインGVが通常時の値よりも小さい値に変更される。例えば、通常の乾燥路でのカーブ進入時の車速補正ゲインGVをGV=1.0として、Value_Line<PLineの条件が成立する場合には、車速補正ゲインGVがGV=0.8に変更される。
【0045】
また、図4に示すように、制御開始距離LR2が通常時よりも短い制御開始距離L'R2に変更され、通常時よりも早期に減速が開始される。そして、制御開始距離L'R2からカーブ開始距離LR3に達するまでに、車速Vが通常時のカーブ進入の目標車速VR_TGTよりも低い目標車速V'R_TGTとなるように減速され、カーブ進入時の車速が制御される。このとき、レートリミッタも、制御開始距離L'R2で通常時のレートリミッタPRateLimitより小さいレートリミッタP'RateLimitに変更され、目標車速V'R_TGTに向かってより緩やかに減速される。
【0046】
次に、以上の走行制御装置100で実行されるカーブ減速制御のプログラム処理について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0047】
このカーブ減速制御処理では、最初のステップS1において、自車両前方にカーブが検知されたとき、例えば、カーブの曲率半径、車線幅、道路勾配等に基づいて現在の車速での横加速度を算出し、カーブ進入前の減速が必要か否かを判断する。現在の車速での横加速度が許容横加速度以下の場合には、カーブ進入前の減速は不要と判断して、本処理を抜け、現在の車速での横加速度が許容横加速度を超える場合、カーブ進入前の減速が必要と判断し、カーブ減速制御を実施すべくステップS2へ進む。
【0048】
ステップS2では、自車両が走行する車線としての白線の認識距離を評価し、カーブ減速制御における制御ゲインの変更が有るか否かを調べる。すなわち、先に説明したように、評価値算出距離LR1における白線の認識距離の比として算出される白線検知評価値Value_Lineを閾値PLineと比較して、カーブ減速制御における制御ゲインの変更が有るか否かを判断する。
【0049】
ステップS2において、Value_Line≧PLineであり、制御ゲインの変更は無いと判断される場合、ステップS2からステップS5にジャンプし、通常のカーブ走行を想定した減速制御を実施する。この通常のカーブ減速制御では、自車両が制御開始距離LR2からカーブ開始距離LR3に達するまでに、カーブ走行の目標車速VR_TGTまで減速され、また、車速変化がレートリミッタPRateLimitを超えて急激に変化しないように制限される。
【0050】
一方、ステップS2において、Value_Line<PLineであり、制御ゲインの変更有りと判断された場合には、ステップS2からステップS3へ進み、制御ゲインの変更に対する再確認を行う。このステップS3の処理は、外気温等の周囲環境と、車両のヒータ作動状態、ワイパの作動状態、昼間の時間帯でのヘッドライトの点灯の有無等の車両状態とにより、制御ゲインの変更がOKか否かを最終的に確認する処理である。
【0051】
そして、ステップS3で最終的に制御ゲインの変更有りと確認された場合、ステップS3からステップS4へ進む。周囲環境や車両状態から制御ゲインの変更を要するか否かの確認がとれなかった場合には、ステップS3からステップS5へジャンプして、通常のカーブ走行を想定した減速制御を実施する。
【0052】
最終的に制御ゲインの変更を要すると確認されてステップS3からステップS4へ進んだ場合、ステップS4では、白線検知評価値Value_Lineに応じて、車速補正ゲインGV、レートリミッタ補正ゲインGLimit、制御開始距離補正ゲインGLを通常のカーブ進入時よりも小さくし、ステップS5で、自車両の車速を通常のカーブ進入時よりも早期に減速し、且つ、通常のカーブ進入時の目標車速VR_TGTよりも低い目標車速V'R_TGTまで減速させる。このときのレートリミッタは、通常時のレートリミッタPRateLimitより小さいレートリミッタP'RateLimitに変更される。
【0053】
このように本実施の形態においては、カーブ手前の白線の検知状態に応じてカーブ進入時の減速制御における制御ゲインを変更するようにしているので、積雪、濃霧、豪雨等によって変化する実際の路面状態に対応して、より適切な車速でカーブを走行することが可能となる。
【0054】
また、自車両が走行する道路の路面状況を白線の検知状態で評価するため、実際の路面状況を白線の視認状態として捉えるドライバの感覚に合致させることが可能となり、ドライバによって快適な車速でのカーブ走行とすることが可能となる。更には、自車両周囲の環境や車両状態も考慮してカーブ進入時の減速制御における制御ゲインを変更することにより、一時的な誤認識等の影響を回避して制御信頼性を向上することができる。
【0055】
また、カーブ進入時の減速制御における制御ゲインを変更するとき、レートリミッタも通常時より低いリミッタ値に変更されるので、カーブ走行中にドライバがアクセルを踏み込む等して自動走行が解除された後にドライバがアクセルを開放しても、目標車速が急激に低下することなく、急激な減速による車輪のスリップを防止することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 走行制御システム
10 外部環境認識装置
20 測位装置
30 地図情報処理装置
40 エンジン制御装置
50 変速機制御装置
60 ブレーキ制御装置
70 操舵制御装置
80 警報・情報提示制御装置
100 走行制御装置
101 減速補正判断部
102 車線検知評価部
103 制御ゲイン設定部
104 減速制御部
GL 制御開始距離補正ゲイン
GLimit レートリミッタ補正ゲイン
GV 車速補正ゲイン
LR1 評価値算出距離
LR2 制御開始距離
LR3 カーブ開始距離
PLine 閾値
PRateLimit レートリミッタ
VR_TGT 目標車速
Value_Line 白線検知評価値
図1
図2
図3
図4
図5
図6