特開2018-203130(P2018-203130A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203130(P2018-203130A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】車両用前照灯システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20181130BHJP
   F21S 41/00 20180101ALI20181130BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20181130BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20181130BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20181130BHJP
【FI】
   B60Q1/14 E
   F21S8/12 282
   F21W101:10
   F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-112413(P2017-112413)
(22)【出願日】2017年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴
【テーマコード(参考)】
3K243
3K339
【Fターム(参考)】
3K243AA08
3K243AC06
3K243BE07
3K243CB16
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA07
3K339CA01
3K339DA01
3K339EA08
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA05
3K339KA06
3K339LA07
3K339LA33
3K339LA34
3K339LA35
3K339MA01
3K339MC36
3K339MC48
3K339MC65
3K339MC71
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因するパッシング光の輝度低下を防ぐこと。
【解決手段】自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、光源と、電圧無印加時に透過率が相対的に低いノーマリークローズ型であり、光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、液晶素子を駆動する駆動回路と、光源が消灯状態であるか否かを判定し、当該光源が消灯状態である場合に液晶素子を透過状態に駆動させるように駆動回路を制御する制御部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、
光源と、
電圧無印加時に透過率又は反射率が相対的に低いノーマリークローズ型であり、前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、
前記液晶素子を駆動する駆動回路と、
前記光源が消灯状態であるか否かを判定し、当該光源が消灯状態である場合に前記液晶素子を透過状態又は反射状態に駆動させるように前記駆動回路を制御する制御部と、
を含む、車両用前照灯システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記自車両が稼働中であるか否かを更に判定し、当該自車両が稼働中かつ前記光源が消灯状態である場合に前記液晶素子を透過状態又は反射状態に駆動させるように前記駆動回路を制御する、
請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記自車両の走行スイッチの状態に基づいて前記自車両が稼働中であるか否かを判定する、
請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記自車両の車速に基づいて前記自車両が稼働中であるか否かを判定する、
請求項2に記載の車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方車両等の位置に対応した選択的な光照射を行うための車両用前照灯の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方に存在する対向車両や先行車両(以下、これらを「前方車両」という。)の位置に応じて自車両の前照灯ユニットからの光の照射範囲と非照射範囲を設定して選択的な光照射を行う車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムに関する先行例は、例えば特開平7−108873号公報に開示されている。この種の車両用前照灯システムでは、自車両の前方の所定位置(例えばフロントウィンドウ中央上部)にカメラを設置し、そのカメラによって撮像された前方車両の車体、もしくは尾灯や前照灯の位置を画像処理によって検出する。そして、検出された前方車両の部分に自車両の前照灯ユニットによる光が照射されないようにした配光制御が行われる。また、光の照射範囲と非照射範囲を制御するために液晶素子を用いることも知られている(例えば、特開2016−115412号公報参照)。
【0003】
ところで、上記のような車両用前照灯システムにおいて、例えば選択的な光照射を行っていない場合、具体的には、日中で車両用前照灯をすべて消灯にしている場合あるいは前方車両の存在等に対応してロービームのみを照射している場合などにおいて、いわゆるパッシング光を用いたい場面がある。このとき、例えば液晶素子として電圧無印加時に遮光するノーマリークローズ型の液晶素子を用いていたとすると、その液晶素子を光透過状態に制御するとともに、光源を瞬間的に点灯させてその出射光を透過させるようにすることでパッシング光を生成することになる。
【0004】
しかし、一般に液晶素子の応答速度はそれほど高速ではなく、周辺温度が低くなると応答速度の低下が顕著になる。このため、例えば周辺温度がマイナスの温度となるような場合においては、液晶素子の各画素が透過状態に遷移するまでに要する時間が長くなる。このため、パッシング光を発生させるために光源が点灯している比較的短い時間内において、液晶素子の透過率が十分に高くならない可能性があり、それによってパッシング光の輝度が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−108873号公報
【特許文献2】特開2016−115412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る具体的態様は、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因するパッシング光の輝度低下を防ぐ技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の車両用灯具システムは、自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、(a)光源と、(b)電圧無印加時に透過率又は反射率が相対的に低いノーマリークローズ型であり、前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、(c)前記液晶素子を駆動する駆動回路と、(d)前記光源が消灯状態であるか否かを判定し、当該光源が消灯状態である場合に前記液晶素子を透過状態又は反射状態に駆動させるように前記駆動回路を制御する制御部と、を含む車両用前照灯システムである。
【0008】
上記構成によれば、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因するパッシング光の輝度低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
図2図2は、液晶素子の構成例を示す模式的な断面図である。
図3図3(A)は、車両用灯具システムの動作を説明するためのタイムチャートである。図3(B)は、比較例のタイムチャートである。
図4図4は、第2実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
図5図5は、車両用灯具システムの動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図1に示す車両用灯具システムは、光源1、平行光学系2、液晶素子3、駆動回路4、制御部5、投射光学系6を含んで構成されている。各構成要素は、例えば筐体7に収容されている。この車両用前照灯システムは、自車両の周囲に存在する前方車両や歩行者等の位置に対応して、前方車両等の位置を含む一定範囲を非照射範囲に設定し、それ以外の範囲を光照射範囲に設定して選択的な光照射を行うためのものである。
【0011】
光源1は、例えば青色光を放出する発光素子(LED)に黄色蛍光体を組み合わせて構成された白色光LEDを含んで構成されている。なお、光源1としてはLEDのほかに、レーザー、さらには電球や放電灯など車両用ランプユニットに一般的に使用されている光源が使用可能である。
【0012】
平行光学系2は、光源1から放出される光を平行光にするものであり、例えば凸レンズを用いることができる。この場合、凸レンズの焦点付近に光源1を配置することにより平行光を作り出すことができる。なお、平行光学系2としては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である。
【0013】
液晶素子3は、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路4によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。この液晶素子3に光源1からの光が透過することで、上記した光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像が形成される。本実施形態の液晶素子3は、液晶層への電圧が無印加(あるいは閾値以下の電圧)である場合に光透過率が極めて低い状態(遮光状態)となり、液晶層へ電圧が印加された場合に光透過率が相対的に高い状態(透過状態)となる、いわゆるノーマリークローズ型(ノーマリーブラック型)の液晶素子である。
【0014】
駆動回路4は、制御部5から供給される制御信号に基づいて液晶素子3に駆動電圧を供給することにより、液晶素子3の各画素領域における液晶層の配向状態を個別に制御するものである。
【0015】
制御部5は、自車両の前方を撮影するカメラ(図示略)によって得られる画像に基づいて画像処理を行うことによって前方車両等の位置を検出し、検出された前方車両等の位置に応じた光照射範囲と非照射範囲を設定し、これら光照射領域と非照射領域に対応した像を形成するための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。また、制御部5は、自車両の稼働中において光源1が消灯状態である期間に、液晶素子3の複数の画素領域のうち所定数(一例として全画素領域)を透過状態とするための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。この制御部5は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現される。
【0016】
投射光学系6は、液晶素子3を透過する光によって形成される像(光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像)をヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投射するものであり、適宜設計されたレンズが用いられる。なお、投射光学系6としては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である。
【0017】
図2は、液晶素子の構成例を示す模式的な断面図である。図2に示す構成例の液晶素子3は、対向配置された上基板11および下基板12、上基板11に設けられた複数の第1電極13、下基板12に設けられた複数の第2電極14、上基板11に設けられた第1配向膜15、下基板12に設けられた第2配向膜16、上基板11と下基板12の間に配置された液晶層17、一対の偏光板18、19を含んで構成されている。
【0018】
上基板11および下基板12は、それぞれ、平面視において矩形状の基板であり、互いに対向して配置されている。各基板としては、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板を用いることができる。上基板11と下基板12の間には、例えば多数のスペーサーが均一に分散配置されており、それらスペーサーによって基板間隙が所望の大きさ(例えば数μm程度)に保たれている。
【0019】
各第1電極13は、例えば、上基板11の一面側に設けられ、紙面と直交する方向に延在し、紙面の左右方向に配列された複数の導電膜からなる。各第2電極14は、例えば、下基板12の一面側に設けられ、紙面の左右方向に延在し、紙面と直交する方向に配列された複数の導電膜からなる。各第1電極13と各第2電極14との重なる領域のそれぞれが上記した画素領域(光変調領域)を構成する。各電極は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。なお、図示を省略しているが各電極の上面にさらに絶縁膜が設けられていてもよい。
【0020】
第1配向膜15は、上基板11の一面側に第1電極13を覆うようにして設けられている。第2配向膜16は、下基板12の一面側に各第2電極14を覆うようにして設けられている。各配向膜としては、液晶層17の配向状態を垂直配向に規制する垂直配向膜が用いられている。各配向膜にはラビング処理等の一軸配向処理が施されており、一方向への配向規制力を有している。各配向膜への配向処理の方向は、例えば互い違い(アンチパラレル)となるように設定される。
【0021】
液晶層17は、上基板11と下基板12の間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負でありカイラル材を含まず、流動性を有するネマティック液晶材料を用いて液晶層17が構成される。本実施形態の液晶層17は、電圧無印加時における液晶分子の配向方向が一方向に傾斜した状態となり、各基板面に対して概ね、88°以上90°未満の範囲内のプレティルト角を有する略垂直配向となるように設定されている。
【0022】
一対の偏光板18、19は、例えば互いの吸収軸を略直交させており、上基板11と下基板12を挟んで対向配置されている。本実施形態では、液晶層17に電圧無印加としているときに光が遮光される(透過率が極めて低くなる)動作モードであるノーマリークローズモードを想定する。
【0023】
この液晶素子3は、例えば基板面を平面視した場合における上下方向に延在して左右方向に配列される6個の第1電極13と、左右方向に延在して上下方向に配列される48個の第2電極14を備えている。各第1電極13と各第2電極14とが平面視において重なる領域の各々である画素領域が288個あり、これらの画素領域はマトリクス状に配列されている。そして、駆動回路4は、各第1電極13と各第2電極14と接続されており、例えば1/6デューティの単純マトリクス駆動(マルチプレックス駆動)を行う。
【0024】
図3(A)は、車両用灯具システムの動作を説明するためのタイムチャートである。また、図3(B)は、比較例のタイムチャートである。以下、これらのタイムチャートを参照しながら、本実施形態の車両用灯具システムにおいて光源1が消灯状態である期間にいわゆるパッシング光を照射する際の動作について詳細に説明する。なお、パッシング光とは、上向きビーム光(ハイビーム光)を瞬間的に点灯させた光をいう。
【0025】
制御部5は、自車両が稼働状態になったか否かを判定する。ここでいう稼働状態とは、運転者の運転装置に応じて走行可能となった状態をいう。稼働状態になったか否かは、例えば走行スイッチ30がオンになったか否かを検出することによって判定できる。なお、ここでいう走行スイッチ30とは、例えば押しボタンによるもの、イグニッションキーによるものなど、車両を走行可能な状態とする操作を行うための手段をいう。
【0026】
自車両が稼働状態であると判定した場合に、制御部5は、光源1が点灯状態であるか否かを判定する。この判定は、例えば車両に備わったランプ点灯レバー31の状態を検出することによって判定できる。ここでいうランプ点灯レバー31とは、例えば車両のハンドル周辺に設置され、前照灯の点消灯やパッシング光の発生などの操作を行うための手段をいう。
【0027】
自車両が稼働状態であって、光源1が点灯状態ではない場合(消灯状態である場合)、制御部5は、液晶素子3の複数の画素領域のうち所定数(一例として全画素領域)を透過状態とするための制御信号を生成し、駆動回路4へ供給する。それにより、ある時刻t1に液晶素子3の所定数の画素領域が遮光状態から透過状態に制御され、光源1からの光を透過し得るように透過率が高い状態となる。
【0028】
自車両が稼働状態、かつ光源1が消灯状態である間はこの状態が維持される。そして、ある時刻t2において、運転者によってパッシング光を発生させるようにランプ点灯レバー31が操作されると、それに応じて光源1からの出射光の輝度が瞬間的に上昇する。この際、液晶素子3はすでに所定数の画素領域が光透過状態となっているので、光源1からの出射光が液晶素子3を透過して投射光学系6によって自車両の前方へ投影されることで、高い輝度の出力光が瞬間的に得られる。すなわち、液晶素子3の応答速度に起因する遅延時間を生じることなく良好なパッシング光が形成される。なお、一般に液晶素子3は、電圧駆動素子であることから、電流がほとんど流れず、液晶素子3を光透過状態とするために継続的に駆動電圧を与えていたとしてもその電力消費量は非常に少ないので、その点は実用上問題とならないといえる。
【0029】
このような実施形態に対して、比較例のタイムチャート(図3(B)参照)に示すように、ある時刻t3においてパッシング光を発生させるようにランプ点灯レバー31が操作されることに応じて液晶素子3の各画素領域を光透過状態に制御した場合には、液晶素子3の応答速度に起因する遅延時間が生じ、液晶素子3の透過率が上昇する前に光源1からの光の出射が終わってしまう。このため、自車両の前方へ投影されるパッシング光は、その輝度が非常に低いものとなる。このような液晶素子3の応答速度に起因する遅延時間は、車両用灯具システムの周辺温度が低いほど顕著になり、例えばマイナス数十℃といった極寒の環境では数秒間を要する場合もある。
【0030】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図4に示す車両用灯具システムは、光源1a、平行光学系2、2つの液晶素子3a、駆動回路4、制御部5、投射光学系6、偏光ビームスプリッター8、蛍光体9を含んで構成されている。各構成要素は、例えば筐体7に収容されている。
【0031】
第2実施形態の車両用灯具システムは、上記した特開2016−115412号公報において図10として記載されているものと同様の構成を有しており、自車両の周囲に存在する前方車両や歩行者等の位置に対応して、前方車両等の位置を含む一定範囲を非照射範囲に設定し、それ以外の範囲を光照射範囲に設定して選択的な光照射を行うものである。なお、以下では第1実施形態と共通する構成要素については同一符号を用いることとして、それらの詳細な説明を省略する。
【0032】
光源1aは、例えば単波長の光を放出するものであり、例えば青色光を放出する発光素子(LED)を含んで構成されている。
【0033】
偏光ビームスプリッター8は、平行光学系2からの出射光をP波とS波に分離するものである。偏光ビームスプリッター8としては、例えば光源1aの波長帯域に対応した誘電多層膜を用いた物を使用することができる。このような偏光ビームスプリッター8としては、例えばシグマ光機社製の偏光ビームスプリッターなどがある。
【0034】
各液晶素子3aは、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路4によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。本実施形態でも、各液晶素子3aは、いわゆるノーマリークローズ型(ノーマリーブラック型)の液晶素子である。また、本実施形態における各液晶素子3aは、反射型の液晶素子である。各液晶素子3aは、液晶層への印加電圧の大きさに応じて、偏光ビームスプリッター8から出射する一方の偏光をその偏光方向を回転させずに反射し、又はその偏光方向を回転させて反射する。このため、液晶素子3aには、例えば、下基板12(図2参照)の外側または内側にはアルミニウムを材料とした反射膜が設けられている。反射膜以外の構造については、概ね上記した図2に示したものと同様である。
【0035】
一方の液晶素子3aは、偏光ビームスプリッター8で分離されたS波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター8の下側面に配置されている。他方の液晶素子3aは、偏光ビームスプリッター8で分離されたP波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター8の右側面に配置されている。
【0036】
2つの液晶素子3aとして垂直配向型の液晶素子を使用する場合には、液晶層への電圧無印加時のリターデーションがゼロであることから、入射した偏光を全く変化させることなく(偏光方向を回転させることなく)反射して出射させられるため、照明光の暗状態を最も暗くできる利点がある。また、液晶層への電圧印加時には、入射した偏光を90度回転させて反射して出射させられるため、照明光の明状態を作り出すことができる。この2つの状態は、駆動回路4から受ける駆動電圧に基づいて切り替えることができる。垂直配向型である各液晶素子3aのそれぞれのリターデーションを4分の1波長に合わせることにより偏光を90度回転させることができるがその値は入射光の波長により異なる、つまり波長依存性を持っている。しかし、この実施形態では光源1aとして単波長光を放出する光源を用いているため波長依存性を考慮する必要はない。
【0037】
蛍光体9は、偏光ビームスプリッター8からの出射光が入射するように配置されており、入射した単波長の光によって励起されて生じる、この単波長の光とは異なる波長の光(蛍光)を発する。蛍光体9としては、例えば、YAG蛍光体と散乱物質を混合して焼き固めた蛍光体プレート、あるいは透明基板に蛍光物質を塗布したものを使用することができる。各液晶素子3aから反射されて再び偏光ビームスプリッター8を通過した単波長の光(青色光)の一部成分は蛍光体9を励起して黄色光を発し、残り成分の青色光はそのまま蛍光体9を出射する。このとき、黄色光は蛍光体9からの散乱光になり、青色光は散乱物質により同じく散乱光になり、それらは混色されて白色の散乱光として蛍光体9から出射される。
【0038】
投射光学系6は、蛍光体9を通過した散乱光によって形成される像(光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像)をヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投射する。
【0039】
図5は、車両用灯具システムの動作を説明するためのタイムチャートである。以下、これらのタイムチャートを参照しながら、本実施形態の車両用灯具システムにおいて光源1aが消灯状態である期間にいわゆるパッシング光を照射する際の動作について詳細に説明する。
【0040】
制御部5は、自車両が稼働状態になった否かを判定し、自車両が稼働状態である場合には、光源1aが点灯状態であるか否かを判定する。そして、自車両が稼働状態であって、光源1aが点灯状態ではない場合(消灯状態である場合)、制御部5は、各液晶素子3aにおける複数の画素領域のうち所定数(一例として全画素領域)を反射状態とするための制御信号を生成し、駆動回路4へ供給する。それにより、ある時刻t1に各液晶素子3aの所定数の画素領域が遮光状態から反射状態に制御され、光源1aから偏光ビームスプリッター8を介して入射する光を反射し得るように反射率が高い状態となる。
【0041】
自車両が稼働状態、かつ光源1aが消灯状態である間はこの状態が維持される。そして、ある時刻t2において、運転者によってパッシング光を発生させるようにランプ点灯レバー31が操作されると、それに応じて光源1aからの出射光の輝度が瞬間的に上昇する。この際、各液晶素子3aはすでに所定数の画素領域が光透過状態となっているので、光源1aからの出射光がビームスプリッター8を経由して液晶素子3aで反射され、ビームスプリッター8および蛍光体9を通過して投射光学系6によって自車両の前方へ投影されることで、高い輝度の出力光が瞬間的に得られる。すなわち、第1実施形態と同様に、本実施形態でも液晶素子3aの応答速度に起因する遅延時間を生じることなく良好なパッシング光が形成される。
【0042】
なお、第2実施形態においては、各液晶素子3aのうち、少なくとも一方だけを反射状態に維持してもよい。その場合、パッシング光の輝度は相対的に小さくなるものの消費電力をより低減することができる。
【0043】
以上のような各実施形態によれば、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因するパッシング光の輝度低下を防ぐことができる。また、自車両が走行可能な状態である場合に液晶素子を透過状態または反射状態に制御することにより、液晶素子の駆動に要する消費電力を低減することができる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態では液晶素子の構成例として垂直配向型の液晶素子を示していたが液晶素子の構成はこれにのみ限定されず、電圧無印加時に遮光するノーマリークローズ型のものであればよく、例えばTN型、STN型の液晶素子を用いることもできる。
【0045】
また、上記した各実施形態では走行スイッチに基づいて自車両が稼働中であるかを判定し、稼働中である場合かつ光源が消灯状態である場合に液晶素子を透過状態または反射状態に制御していたが、車速信号等に基づいて自車両が走行状態である場合に、自車両が稼働中であると判定して液晶素子を制御してもよい。それにより、液晶素子の駆動に要する消費電力をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1a:光源
2:平行光学系
3、3a:液晶素子
4:駆動回路
5:制御部
6:投射光学系
7:筐体
8:偏光ビームスプリッター
9:蛍光体
図1
図2
図3
図4
図5