特開2018-203196(P2018-203196A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-203196車両用前照灯システム及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203196(P2018-203196A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】車両用前照灯システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   B60Q1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-114069(P2017-114069)
(22)【出願日】2017年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339AA38
3K339BA01
3K339BA11
3K339BA12
3K339BA25
3K339CA01
3K339CA28
3K339CA30
3K339DA01
3K339DA03
3K339DA05
3K339DA06
3K339EA04
3K339EA10
3K339GB01
3K339GB26
3K339HA01
3K339HA06
3K339KA06
3K339KA18
3K339KA22
3K339KA38
3K339LA06
3K339LA07
3K339LA33
3K339MA01
3K339MA06
3K339MC41
3K339MC70
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液晶素子を用いる車両用灯具システムにおいて周辺温度に起因する液晶素子の応答速度の低下による不具合を回避可能な技術を提供する。
【解決手段】液晶素子3を用いて自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、液晶素子3の配置される空間の温度が予め定めた基準値以下である場合に、液晶素子3の全ての光変調領域を光透過状態にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶素子を用いて自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、
前記液晶素子の配置される空間の温度が予め定めた基準値以下である場合に、前記液晶素子の全ての光変調領域を光透過状態にする、
車両用灯具システム。
【請求項2】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、
光源と、
複数の光変調領域を有しており前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、
前記液晶素子を駆動する駆動回路と、
前記液晶素子の配置される空間の温度を検出する温度センサと、
前記選択的な光照射を行うために前記駆動回路を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記温度が予め定めた基準値以下である場合には、前記液晶素子の前記複数の光変調領域の全てが光透過状態となるように前記駆動回路を制御する、
車両用前照灯システム。
【請求項3】
前記液晶素子の一部分を遮蔽可能な可動遮蔽板を有する遮蔽部を更に含み、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記温度が予め定めた基準値以下である場合に、前記遮蔽部を制御して前記液晶素子の一部分を前記可動遮蔽板によって遮蔽させる、
請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記自車両に備わった操作スイッチの操作状態に応じて、前記遮蔽部により前記液晶素子の一部分を遮蔽させるか否かを選択する、
請求項3に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記自車両の前方の鉛直方向において相対的に下側の領域へ光を照射するためのロービーム用ユニットを更に含み、
前記光源と前記液晶素子によって形成される前記像は前記自車両の前方の鉛直方向において相対的に上側の領域へ照射される、
請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記自車両に備わった操作スイッチの操作状態に応じて、前記ロービーム用ユニットを点灯状態にし、又は前記ロービーム用ユニットと前記光源を点灯状態にする、
請求項5に記載の車両用灯具システム。
【請求項7】
液晶素子を用いて自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムにおける制御方法であって、
前記液晶素子の配置される空間の温度が予め定めた基準値以下である場合に、前記液晶素子の全ての光変調領域を光透過状態にする、
車両用灯具システムの制御方法。
【請求項8】
前記車両用灯具システムは、前記液晶素子の一部分を遮蔽可能な可動遮蔽板を有する遮蔽部を含んでおり、
前記温度が予め定めた基準値以下である場合に、前記遮蔽部の前記可動遮蔽板によって前記液晶素子の一部分を遮蔽する、
請求項7に記載の車両用灯具システムの制御方法。
【請求項9】
前記自車両に備わった操作スイッチの操作状態に応じて、前記遮蔽部により前記液晶素子の一部分を遮蔽させるか否かを選択する、
請求項8に記載の車両用灯具システムの制御方法。
【請求項10】
前記車両用灯具システムは、前記自車両の前方の鉛直方向において相対的に下側の領域へ光を照射するためのロービーム用ユニットを更に含んでおり、
前記液晶素子を透過する光による像は前記自車両の前方の鉛直方向において相対的に上側の領域へ照射される、
請求項7に記載の車両用灯具システムの制御方法。
【請求項11】
前記自車両に備わった操作スイッチの操作状態に応じて、前記ロービーム用ユニットを点灯状態とし、又は前記ロービーム用ユニットと前記光源を点灯状態とする、
請求項10に記載の車両用灯具システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方車両等の位置に対応した選択的な光照射を行うための車両用前照灯の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方に存在する対向車両や先行車両(以下、これらを「前方車両」という。)の位置に応じて自車両の前照灯ユニットからの光の照射範囲と非照射範囲を設定して選択的な光照射を行う車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムに関する先行例は、例えば特開平7−108873号公報に開示されている。この種の車両用前照灯システムでは、自車両の前方の所定位置(例えばフロントウィンドウ中央上部)にカメラを設置し、そのカメラによって撮像された前方車両の車体、もしくは尾灯や前照灯の位置を画像処理によって検出する。そして、検出された前方車両の部分に自車両の前照灯ユニットによる光が照射されないようにした配光制御が行われる。また、光の照射範囲と非照射範囲を制御するために液晶素子を用いることも知られている(例えば、特開平6−191346号公報参照)。
【0003】
ところで、一般に液晶素子の応答速度はそれほど高速ではなく、周辺温度が低くなると応答速度の低下が顕著になる。このため、例えば周辺温度がマイナスの温度となるような場合においては、液晶素子の各画素が透過状態に遷移するまでに要する時間が長くなる。このため、上記のような車両用前照灯システムにおいては、例えば選択的な光照射を行うために光源を点灯させながら液晶素子で像を形成する際における液晶素子の応答に比較的長い時間を要することから、本来意図した光照射パターンが得られない期間が長くなってしまい、刻々と変化する自車両の前方の状況に対して配光制御が的確に追随できなくなる不具合を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−108873号公報
【特許文献2】特開平6−191346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおいて周辺温度に起因する液晶素子の応答速度の低下による不具合を回避可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様の車両用灯具システムは、液晶素子を用いて自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、前記液晶素子の配置される空間の温度が予め定めた基準値以下である場合に、前記液晶素子の全ての光変調領域を光透過状態にする、車両用灯具システムである。
[2]本発明に係る一態様の車両用灯具システムの制御方法は、液晶素子を用いて自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムにおける制御方法であって、前記液晶素子の配置される空間の温度が予め定めた基準値以下である場合に、前記液晶素子の全ての光変調領域を光透過状態にする、車両用灯具システムの制御方法である。
【0007】
上記構成によれば、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおいて周辺温度に起因する液晶素子の応答速度の低下により配光制御が的確に追随できなくなる可能性がある場合には、液晶装置の全光変調領域が光透過状態とされるので、自車両の前方への光照射を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
図2図2は、第2実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
図3図3は、第3実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図1に示す車両用灯具システムは、光源1、平行光学系2、液晶素子3、駆動回路4、制御部5、投射光学系6、カメラ8、温度センサ9を含んで構成されている。カメラ8以外の各構成要素は、例えば筐体7に収容されている。この車両用前照灯システムは、自車両の周囲に存在する前方車両や歩行者等の位置に対応して、前方車両等の位置を含む一定範囲を非照射範囲に設定し、それ以外の範囲を光照射範囲に設定して選択的な光照射を行うためのものである。
【0010】
光源1は、例えば青色光を放出する発光素子(LED)に黄色蛍光体を組み合わせて構成された白色光LEDを含んで構成されている。なお、光源1としてはLEDのほかに、レーザー、さらには電球や放電灯など車両用ランプユニットに一般的に使用されている光源が使用可能である。光源1の点消灯状態は制御部5によって制御される。
【0011】
平行光学系2は、光源1から放出される光を平行光にするものであり、例えば凸レンズを用いることができる。この場合、凸レンズの焦点付近に光源1を配置することにより平行光を作り出すことができる。なお、平行光学系2としては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である。
【0012】
液晶素子3は、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路4によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。この液晶素子3に光源1からの光が透過することで、上記した光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像が形成される。本実施形態の液晶素子3は、垂直配向型の液晶層を備えるとともに直交ニコル配置された一対の偏光板を備えており、液晶層への電圧が無印加(あるいは閾値以下の電圧)である場合に光透過率が極めて低い状態(遮光状態)となり、液晶層へ電圧が印加された場合に光透過率が相対的に高い状態(透過状態)となるものである。すなわち、本実施形態の液晶素子3は、いわゆるノーマリークローズ型(ノーマリーブラック型)の液晶素子である。
【0013】
この液晶素子3は、例えば基板面を平面視した場合における上下方向に延在して左右方向に配列される6個の第1電極と、左右方向に延在して上下方向に配列される48個の第2電極を備えている。各第1電極と各第2電極とが平面視において重なる領域の各々である画素領域が288個あり、これらの画素領域はマトリクス状に配列されている。そして、各第1電極と各第2電極は、駆動回路4と接続されており、例えば1/6デューティで単純マトリクス駆動される。
【0014】
駆動回路4は、制御部5から供給される制御信号に基づいて液晶素子3に駆動電圧を供給することにより、液晶素子3の各画素領域における液晶層の配向状態を個別に制御するものである。
【0015】
制御部5は、自車両の前方を撮影するカメラ8によって得られる画像に基づいて画像処理を行うことによって前方車両等の位置を検出し、検出された前方車両等の位置に応じた光照射範囲と非照射範囲を設定し、これら光照射領域と非照射領域に対応した像を形成するための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。
【0016】
また、制御部5は、温度センサ9によって検出される温度が予め定めた基準値以下である場合に、液晶素子3の複数の画素領域のうち所定数(一例として全画素領域)を透過状態とするための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。この制御部5は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現される。
【0017】
投射光学系6は、液晶素子3を透過する光によって形成される像(光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像)をヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投射するものであり、適宜設計されたレンズが用いられる。なお、投射光学系6としては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である。
【0018】
カメラ8は、自車両の前方を撮影してその画像(情報)を出力するものであり、自車両内の所定位置(例えば、フロントガラス内側上部)に配置されている。なお、他の用途(例えば、自動ブレーキシステム等)のためのカメラが自車両に備わっている場合にはそのカメラを共用してもよい。また、そのような共用をしない場合には、カメラ8を筐体7内に設けてもよい。
【0019】
温度センサ9は、筐体7の内部の温度を検出するためのものであり、例えば一方の液晶素子3の近傍に配置されている。温度センサ9による検出信号(温度を示す信号)は制御部5に入力される。なお、温度センサ9の設置される位置は筐体7の内部であれば足りるが、特に液晶素子3の周辺とすることで液晶素子3自体の温度をより正確に捉えることができるため好ましい。
【0020】
本実施形態の車両用灯具システムは上記の構成を有しており、次に、筐体7内の温度、特に液晶素子3の周辺温度が基準値よりも低下した際における制御部5による液晶素子3の動作制御の内容について詳細に説明する。
【0021】
制御部5は、温度センサ9によって検出される温度を取得し、この温度が所定の基準値(例えば−10℃)以下になった場合に、液晶素子3の複数の画素領域のうち所定数(一例として全画素領域)を透過状態とするための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。ここでの基準値は、例えば、液晶素子3の低温時の応答速度や、選択的な光照射を行う場合の照射パターン切り換え速度の許容値などに基づいて決めることができる。一例として、一般的な液晶素子では−10℃程度になると応答速度が0.5秒間よりも遅くなる場合があるので、上記のように基準値として「−10℃」とすることが好ましい。
【0022】
この制御信号に基づいて駆動回路4により駆動電圧が与えられると、液晶素子3は、所定数の画素領域が透過状態となる。このとき、制御部5の制御により光源1が点灯していれば、光源1からの光が液晶素子3を透過し、自車両の前方へ照射される。液晶素子3の全画素領域を透過状態に制御した場合には、選択的な光照射を行うことなく、最も広い配光領域を照射する光として光源1からの光が照射される。
【0023】
なお、必ずしも全画素領域である必要はなく、例えば、ロービームに相当する配光領域、すなわち鉛直方向に対して相対的に下側の配光領域に対応した画素領域を透過状態に制御してもよい。この場合、ロービームに相当する配光領域のみに光が照射される。
【0024】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図2に示す車両用灯具システムは、上記した第1実施形態の車両用灯具システムと基本的に同様の構成を備えているが、液晶素子の内部構造が異なり、かつ晶素子の一部を適宜遮蔽するための遮蔽部が追加されている。両者に共通する構成要素については同一符号を用いてそれらの詳細な説明は省略し、主に相違する点について説明する。
【0025】
液晶素子3aは、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路4によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。第1実施形態との違いは、本実施形態の液晶素子3aが各画素領域にTFT(薄膜トランジスタ)を対応付けたTN型の液晶素子という点である。本実施形態の液晶素子3aは、直交ニコル配置された一対の偏光板を備えており、液晶層への電圧が無印加(あるいは閾値以下の電圧)である場合に光透過率が相対的に高い状態(透過状態)となり、液晶層へ電圧が印加された場合に光透過率が極めて低い状態(遮光状態)となるものである。すなわち、本実施形態の液晶素子3aは、いわゆるノーマリーオープン型(ノーマリーホワイト型)の液晶素子である。また、本実施形態の液晶素子3aは、平面視における上下方向に100分割、左右方向に500分割されてマトリクス状に配列された50000個の画素領域を有している。これらの画素領域は、駆動回路4と接続されており、アクティブマトリクス駆動される。
【0026】
遮蔽部10は、液晶素子3aの光出射側、すなわち投射光学系6と対向する面の一部分を必要に応じて遮蔽するためのものであり、遮光板(可動遮蔽板)とこの遮光板の位置を制御するためのアクチュエータ(例えばモータ)を含んで構成されている。本実施形態の遮蔽部10は、制御部5から与えられる信号に基づいて、遮蔽板を回転させることによって遮蔽板の位置を変化させる。通常は、遮蔽部10の遮蔽板は、液晶素子3aを遮蔽しない位置となるように制御される。
【0027】
本実施形態の車両用灯具システムは上記の構成を有しており、次に、筐体7内の温度、特に液晶素子3aの周辺温度が基準値よりも低下した際における制御部5による液晶素子3aおよび遮蔽部10の動作制御の内容について詳細に説明する。
【0028】
制御部5は、温度センサ9によって検出される温度を取得し、この温度が所定の基準値(例えば−10℃)以下になった場合に、液晶素子3aの全画素領域を透過状態とするための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。この制御信号に基づいて駆動回路4により駆動電圧(本例ではオフ電圧)が与えられると、液晶素子3aは、全画素領域が透過状態となる。このとき、制御部5の制御により光源1が点灯していれば、光源1からの光が液晶素子3aを透過し、自車両の前方へ照射される。
【0029】
制御部5は、例えば前方車両の位置に基づいてハイビームかロービームの何れかの照射パターンを決定するが、温度センサ9によって検出される温度が基準値以下の場合には、液晶素子3aの各画素領域を個別に制御することなく全画素領域が透過状態となるように駆動回路4へ制御信号を供給する。なお、制御部5は、自車両の操作スイッチの操作状態に応じてハイビームがロービームの何れかの照射パターンを決定してもよい。
【0030】
このとき、決定した照射パターンがロービームであれば、制御部5は、遮蔽部10を制御して、遮蔽板が液晶素子3aの一部分と重なるようにする。これにより、ハイビームに対応する画素領域を透過した光は遮蔽板によって遮蔽され、自車両の前方には照射されないので、前方車両等へ眩惑を与えることを回避できる。また、決定した照射パターンがハイビームであれば、制御部5は、遮蔽部10を制御して、遮蔽板が液晶素子3aと重ならないようにする。これにより、ハイビームに対応する画素領域を透過した光も遮蔽板によって遮蔽されることなく、自車両の前方に照射される。
【0031】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図3に示す車両用灯具システムは、上記した第1実施形態の車両用灯具システムと基本的に同様の構成を備えているが、液晶素子の内部構造が異なり、かつロービームを形成するための光学系が別に設けられている。両者に共通する構成要素については同一符号を用いてそれらの詳細な説明は省略し、主に相違する点について説明する。
【0032】
液晶素子3bは、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路4によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。本実施形態の液晶素子3bもいわゆるノーマリークローズ型(ノーマリーブラック型)の液晶素子である。第1実施形態の液晶素子3との違いは、画素領域の数である。具体的には、液晶素子3bは、例えば基板面を平面視した場合における上下方向に延在して左右方向に配列される4個の第1電極と、左右方向に延在して上下方向に配列される48個の第2電極を備えている。各第1電極と各第2電極とが平面視において重なる領域の各々である画素領域が192個あり、これらの画素領域はマトリクス状に配列されている。そして、各第1電極と各第2電極は、駆動回路4と接続されており、例えば1/4デューティで単純マトリクス駆動される。また、本実施形態の液晶素子3bは、ハイビームの配光制御に用いられ、ロービームの配光制御には関わらない。
【0033】
ロービーム用ユニット11は、例えばプロジェクション型の灯具であり、自車両の前方の空間にロービームを形成するために用いられる。ロービーム用ユニット11の点消灯状態は制御部5によって制御される。
【0034】
本実施形態の車両用前照灯システムでは、光源1、液晶素子3bなどを含んでハイビーム用ユニットが構成されており、当該ハイビーム用ユニットにより通常のハイビームの照射、あるいは前方車両等の位置に応じた選択的な光照射が行われる。また、ロービーム用ユニット11によってロービームが照射される。これらによるハイビームとロービームが足し合わされて全体の配光パターンが形成される。
【0035】
本実施形態の車両用灯具システムは上記の構成を有しており、次に、筐体7内の温度、特に液晶素子3aの周辺温度が基準値よりも低下した際における制御部5による液晶素子3bの動作制御の内容について詳細に説明する。
【0036】
制御部5は、温度センサ9によって検出される温度を取得し、この温度が所定の基準値(例えば−10℃)以下になった場合に、液晶素子3bの全画素領域を透過状態とするための制御信号を生成して駆動回路4へ供給する。この制御信号に基づいて駆動回路4により駆動電圧(本例ではオン電圧)が与えられると、液晶素子3bは、全画素領域が透過状態となる。このとき、制御部5の制御により光源1が点灯していれば、光源1からの光が液晶素子3bを透過し、自車両の前方へ照射されることでハイビームが形成される。
【0037】
制御部5は、例えば前方車両の位置に基づいてハイビームかロービームの何れかの照射パターンを決定するが、温度センサ9によって検出される温度が基準値以下の場合には、液晶素子3bの各画素領域を個別に制御することなく全画素領域が透過状態となるように駆動回路4へ制御信号を供給する。なお、制御部5は、自車両の操作スイッチの操作状態に応じてハイビームがロービームの何れかの照射パターンを決定してもよい。
【0038】
このとき、決定した照射パターンがハイビームであれば、制御部5は、光源1を点灯状態にし、かつロービーム用ユニット11も点灯状態にする。これにより、ハイビームに対応する画素領域を透過した光が自車両の前方に照射されてハイビームが形成されるとともに、ロービーム用ユニット11から出射した光が自車両の前方に照射されてロービームが形成される。また、決定した照射パターンがロービームであれば、制御部5は、光源1を消灯状態にし、ロービーム用ユニット11だけを点灯状態にさせる。これにより、ハイビームに対応する画素領域を透過した光がなくなるので、自車両の前方にハイビームは形成されず、ロービームのみが形成される。
【0039】
ロービームの照射パターンが選択されている際にも、制御部5は、温度センサ9によって検出される温度が基準値以下であれば、液晶素子3bの全画素領域を透過状態のままに制御する。これにより、その後に照射パターンがハイビームに切り替わった際にも光源1を点灯状態に制御すれば速やかにハイビームを形成することができる。
【0040】
以上のような各実施形態によれば、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおいて周辺温度に起因する液晶素子の応答速度の低下により配光制御が的確に追随できなくなる可能性がある場合には、液晶装置の全光変調領域が光透過状態とされるので、自車両の前方への光照射を確実に行うことができる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態では液晶素子の構成例として垂直配向型あるいはTN型の液晶素子を示していたが液晶素子の構成はこれらにのみ限定されず、例えばSTN型の液晶素子を用いることもできる。
【0042】
また、上記した各実施形態では、温度に応じて液晶素子の全画素領域を透過状態に制御している場合には自車両前方に対する選択的な光照射を行わない状態となるので、その旨を自車両の搭乗者へ通知するようにしてもよい。具体的には、自車両に備わっている画像表示装置を使って画像表示により通知してもよいし、自車両に備わっているスピーカを使って音声出力により通知してもよい。それにより、運転者は、操作スイッチを用いてハイビームとロービームを切り換え可能であるが選択的な光照射は行われない状況であることを把握できる。
【符号の説明】
【0043】
1:光源
2:平行光学系
3、3a、3b:液晶素子
4:駆動回路
5:制御部
6:投射光学系
7:筐体
8:カメラ
9:温度センサ
10:遮蔽部
11:ロービーム用ユニット
図1
図2
図3