特開2018-203197(P2018-203197A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203197(P2018-203197A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】車両用前照灯システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20181130BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20181130BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20181130BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20181130BHJP
   F21V 29/83 20150101ALI20181130BHJP
   F21V 29/61 20150101ALI20181130BHJP
   F21S 41/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21S 43/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21S 45/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20181130BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20181130BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20181130BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20181130BHJP
【FI】
   B60Q1/04 E
   F21V9/10 400
   F21V29/67 200
   F21V29/503 100
   F21V29/83
   F21V29/61
   F21V29/67 100
   F21S8/10 532
   F21S8/12 282
   F21S8/10 531
   F21W101:10
   F21Y101:00 100
   F21Y101:00 300
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-114070(P2017-114070)
(22)【出願日】2017年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴
【テーマコード(参考)】
3K243
3K339
【Fターム(参考)】
3K243AA08
3K243AC06
3K243BE02
3K243BE07
3K243CC04
3K243CC05
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA11
3K339BA12
3K339BA18
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA03
3K339DA05
3K339DA06
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA05
3K339JA21
3K339KA06
3K339KA21
3K339KA27
3K339LA06
3K339LA33
3K339MA01
3K339MA06
3K339MC41
3K339MC90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因するパッシング光の輝度低下を防ぐ技術を提供する。
【解決手段】自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、光源1、光源1からの光を用いて像を形成する液晶素子4a,4b、液晶素子4a,4bの配置される空間の温度を検出する温度センサ15、光源1及び液晶素子4a,4bの各々と熱的に接続する気体流路9、気体流路9の内部に配置されたファン14及び温度センサ15により検出される空間の温度に応じてファン14の動作を制御する制御部6を含む。制御部6は、温度センサ15により検出される空間の温度が第1の基準値よりも低い場合には、気体流路9の光源1と熱的に接続する第1領域16から気体流路9の液晶素子4a,4bと熱的に接続する第2領域17へ向けて気体流路9内の気体が移動するようにファン14を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、
光源と、
前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、
前記液晶素子の配置される空間の温度を検出する温度センサと、
前記光源及び前記液晶素子の各々と熱的に接続する気体流路と、
前記気体流路の内部に配置されたファンと、
前記温度センサにより検出される前記空間の温度に応じて前記ファンの動作を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が第1の基準値よりも低い場合には、前記気体流路の前記光源と熱的に接続する第1領域から前記気体流路の前記液晶素子と熱的に接続する第2領域へ向けて前記気体流路内の気体が移動するように前記ファンを制御する、
車両用前照灯システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が第2の基準値以上である場合には、前記気体流路の前記液晶素子と熱的に接続する前記第2領域から前記気体流路の前記光源と熱的に接続する前記第1領域へ向けて前記気体流路内の気体が移動するように前記ファンを制御する、
請求項1に記載の車両用前照灯システム。
【請求項3】
前記ファンが前記気体流路の前記光源と熱的に接続する前記第1領域と当該気体流路の前記他端との間に配置されている、
請求項1又は2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記気体流路の一端側及び/又は他端側に配置された開閉可能なダンパーを更に備えており、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が第1の基準値よりも低い場合には前記ダンパーを閉状態に制御する、
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、
光源と、
前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、
前記液晶素子の配置される空間の温度を検出する温度センサと、
前記光源及び前記液晶素子の各々と熱的に接続する気体流路と、
前記気体流路の一端側及び/又は他端側に配置された開閉可能なダンパーと、
前記温度センサにより検出される前記空間の温度に応じて前記ダンパーの動作を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が第1の基準値よりも低い場合には前記ダンパーを閉状態に制御する、
車両用前照灯システム。
【請求項6】
前記気体流路の内部に配置されたファンを更に備えており、
前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が第2の基準値以上である場合には、前記気体流路の前記液晶素子と熱的に接続する前記第2領域から前記気体流路の前記光源と熱的に接続する前記第1領域へ向けて前記気体流路内の気体が移動するように前記ファンを制御する、
請求項5に記載の車両用前照灯システム。
【請求項7】
前記光源が放熱用のヒートシンクを有しており、当該ヒートシンクの少なくとも一部が前記気体流路内に配置されることによって前記光源と前記気体流路との間が熱的に接続される、
請求項1〜6の何れか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項8】
前記液晶素子と近接して配置される伝熱部材を更に備え、当該伝熱部材の少なくとも一部が前記気体流路内に配置されることによって前記液晶素子と前記気体流路との間が熱的に接続される、
請求項1〜7の何れか1項に記載の車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方車両等の位置に対応した選択的な光照射を行うための車両用前照灯の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の前方に存在する対向車両や先行車両(以下、これらを「前方車両」という。)の位置に応じて自車両の前照灯ユニットからの光の照射範囲と非照射範囲を設定して選択的な光照射を行う車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムに関する先行例は、例えば特開平7−108873号公報に開示されている。この種の車両用前照灯システムでは、自車両の前方の所定位置(例えばフロントウィンドウ中央上部)にカメラを設置し、そのカメラによって撮像された前方車両の車体、もしくは尾灯や前照灯の位置を画像処理によって検出する。そして、検出された前方車両の部分に自車両の前照灯ユニットによる光が照射されないようにした配光制御が行われる。また、光の照射範囲と非照射範囲を含む像を形成するために液晶素子を用いることも知られている(例えば、特開平06−191346号公報参照)。
【0003】
ところで、一般に液晶素子の応答速度はそれほど高速ではなく、周辺温度が低くなると応答速度の低下が顕著になる。このため、例えば周辺温度がマイナスの温度となるような場合においては、液晶素子の各画素が透過状態に遷移するまでに要する時間が長くなる。このため、上記のような車両用前照灯システムにおいては、例えば選択的な光照射を行うために光源を点灯させながら液晶素子で像を形成する際における液晶素子の応答に比較的長い時間を要することから、その間の光照射範囲における照射光の輝度が低くなるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−108873号公報
【特許文献2】特開平6−191346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因する照射光の輝度低下を防ぐ技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様の車両用灯具システムは、自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、(a)光源と、(b)前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、(c)前記液晶素子の配置される空間の温度を検出する温度センサと、(d)前記光源及び前記液晶素子の各々と熱的に接続する気体流路と、(e)前記気体流路の内部に配置されたファンと、(f)前記温度センサにより検出される前記空間の温度に応じて前記ファンの動作を制御する制御部と、を含み、(g)前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が第1の基準値よりも低い場合には、前記気体流路の前記光源と熱的に接続する第1領域から前記気体流路の前記液晶素子と熱的に接続する第2領域へ向けて前記気体流路内の気体が移動するように前記ファンを制御する、車両用前照灯システムである。
[2]本発明に係る他の態様の車両用灯具システムは、自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用灯具システムであって、(a)光源と、(b)前記光源からの光を用いて像を形成する液晶素子と、(c)前記液晶素子の配置される空間の温度を検出する温度センサと、(d)前記光源及び前記液晶素子の各々と熱的に接続する気体流路と、(e)前記気体流路の一端側及び/又は他端側に配置された開閉可能なダンパーと、(f)前記温度センサにより検出される前記空間の温度に応じて前記ダンパーの動作を制御する制御部と、を含み、(g)前記制御部は、前記温度センサにより検出される前記空間の温度が基準値よりも低い場合には前記ダンパーを閉状態に制御する、車両用前照灯システムである。
【0007】
上記いずれかの構成によれば、温度低下時において気体流路内で光源と熱的に接続する領域から液晶素子と熱的に接続する領域へ向かう気体の移動を生じさせることが可能であり、それにより光源で発生する熱を利用して液晶素子を加温することができる。従って、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因する照射光の輝度低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
図2図2は、液晶素子の構成例を示す模式的な断面図である。
図3図3は、第2実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図1に示す車両用灯具システムは、光源1、平行光学系2、偏光ビームスプリッター3、液晶素子4a、4b、駆動回路5、制御部6、投射光学系7、気体流路9、伝熱部材10、11、ダンパー12、13、ファン14、温度センサ15を含んで構成されている。各構成要素は、例えば筐体8に収容されている。この車両用灯具システムは、自車両の周囲に存在する前方車両や歩行者等の位置に対応して、前方車両等の位置を含む一定範囲を非照射範囲に設定し、それ以外の範囲を光照射範囲に設定して選択的な光照射を行うものである。
【0010】
光源1は、例えば青色光を放出する発光素子(LED)に黄色蛍光体を組み合わせて構成された白色光LEDを含んで構成されている。なお、光源1としてはLEDのほかに、レーザー、さらには電球や放電灯など車両用ランプユニットに一般的に使用されている光源が使用可能である。
【0011】
ここで、本実施形態の光源1には自身から発生する熱を放出するためのヒートシンクが設けられており、このヒートシンクの少なくとも一部が気体流路9の内部に配置されている。これにより、光源1から発生する熱がヒートシンクを介して気体流路9内の空気に伝達される。
【0012】
平行光学系2は、光源1から放出される光を平行光にするものであり、例えば凸レンズを用いることができる。この場合、凸レンズの焦点付近に光源1を配置することにより平行光を作り出すことができる。なお、平行光学系2としては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である。
【0013】
偏光ビームスプリッター3は、平行光学系2からの出射光をP波とS波に分離するものである。偏光ビームスプリッター3としては、例えばエドモンドオプティクス社製のワイヤーグリッドキューブ型偏光ビームスプリッターなどがある。
【0014】
各液晶素子4a、4bは、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路5によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。本実施形態における各液晶素子4a、4bは、反射型の液晶素子である。各液晶素子4a、4bは、液晶層への印加電圧の大きさに応じて、偏光ビームスプリッター3から出射する一方の偏光をその偏光方向を回転させずに反射し、又はその偏光方向を回転させて反射する。このため、各液晶素子4a、4bには、例えば、下基板の外側にアルミニウム等を材料とした反射板として兼用される伝熱部材10、11が設けられている。
【0015】
一方の液晶素子4aは、偏光ビームスプリッター3で分離されたS波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター3の下側面に配置されている。他方の液晶素子4bは、偏光ビームスプリッター3で分離されたP波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター3の右側面に配置されている。
【0016】
2つの液晶素子4a、4bとして垂直配向型の液晶素子を使用する場合には、液晶層への電圧無印加時のリターデーションがゼロであることから、入射した偏光を全く変化させることなく(偏光方向を回転させることなく)反射して出射させられるため、照明光の暗状態を最も暗くできる利点がある。また、液晶層への電圧印加時には、入射した偏光を90度回転させて反射して出射させられるため、照明光の明状態を作り出すことができる。この2つの状態は、駆動回路5から受ける駆動電圧に基づいて切り替えることができる。垂直配向型である各液晶素子4a、4bのそれぞれのリターデーションを4分の1波長に合わせることにより偏光を90度回転させることができる。
【0017】
駆動回路5は、制御部6から供給される制御信号に基づいて各液晶素子4a、4bに駆動電圧を供給することにより、各液晶素子4a、4bの各画素領域における液晶層の配向状態を個別に制御するものである。
【0018】
制御部6は、自車両の前方を撮影するカメラ(図示略)によって得られる画像に基づいて画像処理を行うことによって前方車両等の位置を検出し、検出された前方車両等の位置に応じた光照射範囲と非照射範囲を設定し、これら光照射領域と非照射領域に対応した像を形成するための制御信号を生成して駆動回路5へ供給する。この制御部6は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現される。
【0019】
投射光学系7は、偏光ビームスプリッター3から出射する光によって形成される像(光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像)をヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投射する。
【0020】
気体流路9は、例えば断熱性の高いダクトからなり、車両用灯具システムの筐体8内に設けられている。この気体流路9は、一端の開口部が筐体8のある側面に配置され、他端の開口部が筐体8の別の側面に配置されており、それぞれの開口部を介して外界と接している。また、気体流路9は、光源1、各液晶素子4a、4bの近傍を通るようにして配置されている。
【0021】
伝熱部材10は、液晶素子4aへ熱を与え、あるいは液晶素子4aから熱を吸収するための部材であり、当該液晶素子4aの背面に設けられている。同様に、伝熱部材11は、液晶素子4bへ熱を与え、あるいは液晶素子4bから熱を吸収するための部材であり、当該液晶素子4bの背面に設けられている。このような伝熱部材10、11を用いて熱の伝達および吸収を行うようにすることで、空気を直接的に各液晶素子4へ当てる場合に比べて異物(塵など)が各液晶素子4a、4bに付着することを防止できる。
【0022】
上記の伝熱部材10、11は、熱伝導性の高い素材(例えば、金属)からなる板状体であり、かつ各々の一端部が気体流路9の内部に配置されている。本実施形態では、各伝熱部材10、11は、各液晶素子4a、4bの反射板としての機能も兼ねている。このため、各伝熱部材10、11は、少なくとも各液晶素子4a、4bと対向する面が高い反射率を有する。
【0023】
ダンパー12、13は、気体流路9と外界との間での空気の流量を調整するためのものであり、それぞれ気体流路9の内部に設けられている。各ダンパー12、13の動作状態(開閉状態)は制御部6によって制御される。詳細には、ダンパー12は、気体流路9の一端の開口部と光源1のヒートシンクとの間に配置されている。ダンパー13は、気体流路9の他端の開口部と各伝熱部材10、11との間に配置されている。
【0024】
ファン14は、気体流路9内の空気に流れを生じさせるためのものであり、気体流路9の内部においてダンパー12と光源1のヒートシンクとの間に配置されている。このファン14の動作状態は制御部6によって制御される。
【0025】
温度センサ15は、筐体8の内部の温度を検出するためのものであり、例えば一方の液晶素子4の近傍に配置されている。温度センサ15による検出信号(温度を示す信号)は制御部6に入力される。なお、温度センサ15の設置される位置は筐体8の内部であれば足りるが、特に液晶素子4a、4bの周辺とすることで液晶素子4a、4b自体の温度をより正確に捉えることができるため好ましい。
【0026】
図2は、液晶素子の構成例を示す模式的な断面図である。図2に示す構成例の液晶素子4aは、対向配置された上基板21および下基板22、上基板21に設けられた複数の第1電極23、下基板22に設けられた複数の第2電極24、上基板21に設けられた第1配向膜25、下基板22に設けられた第2配向膜26、上基板21と下基板22の間に配置された液晶層27を含んで構成されている。なお、液晶素子4bも同じ構成を備えている。
【0027】
上基板21および下基板22は、それぞれ、平面視において矩形状の基板であり、互いに対向して配置されている。各基板としては、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板を用いることができる。上基板21と下基板22の間には、例えば多数のスペーサーが均一に分散配置されており、それらスペーサーによって基板間隙が所望の大きさ(例えば数μm程度)に保たれている。
【0028】
各第1電極23は、例えば、上基板21の一面側に設けられ、紙面と直交する方向に延在し、紙面の左右方向に配列された複数の導電膜からなる。各第2電極24は、例えば、下基板22の一面側に設けられ、紙面の左右方向に延在し、紙面と直交する方向に配列された複数の導電膜からなる。各第1電極23と各第2電極24との重なる領域のそれぞれが上記した画素領域(光変調領域)を構成する。各電極は、それぞれ例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。なお、図示を省略しているが各電極の上面にさらに絶縁膜が設けられていてもよい。
【0029】
第1配向膜25は、上基板21の一面側に第1電極23を覆うようにして設けられている。第2配向膜26は、下基板22の一面側に各第2電極24を覆うようにして設けられている。各配向膜としては、液晶層27の配向状態を垂直配向に規制する垂直配向膜が用いられている。各配向膜にはラビング処理等の一軸配向処理が施されており、一方向への配向規制力を有している。各配向膜への配向処理の方向は、例えば互い違い(アンチパラレル)となるように設定される。
【0030】
液晶層27は、上基板21と下基板22の間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが負でありカイラル材を含まず、流動性を有するネマティック液晶材料を用いて液晶層27が構成される。本実施形態の液晶層27は、電圧無印加時における液晶分子の配向方向が一方向に傾斜した状態となり、各基板面に対して概ね、88°以上90°未満の範囲内のプレティルト角を有する略垂直配向となるように設定されている。
【0031】
この液晶素子4aは、例えば基板面を平面視した場合における上下方向に延在して左右方向に配列される6個の第1電極23と、左右方向に延在して上下方向に配列される48個の第2電極24を備えている。各第1電極23と各第2電極24とが平面視において重なる領域の各々である画素領域が288個あり、これらの画素領域はマトリクス状に配列されている。そして、駆動回路5は、各第1電極23と各第2電極24と接続されており、例えば1/6デューティの単純マトリクス駆動(マルチプレックス駆動)を行う。
【0032】
本実施形態の車両用灯具システムは上記構成を備えており、次に、筐体8の内部温度に応じて制御部6が各ダンパー12、13およびファン14を制御する動作について詳細に説明する。
【0033】
制御部6は、温度センサ15により検出される筐体8の内部温度が予め設定した基準値以上(一例として、25℃以上)である場合には、各ダンパー12、13を開状態に制御するとともに、ファン14を回転させる。このとき、制御部6は、気体流路9の内部において、ダンパー13に近い側の開口部から外界の空気が取り込まれ、ダンパー12に近い側の開口部から外界へ空気が放出されるという流れが生じるようにファン14の回転方向を制御する。このような流れを生じさせることで、主にヒートシンクを介して光源1が冷却され、ヒートシンクから熱を伝達された空気がダンパー12に近い側の開口部から外界へ放出される。気体流路9内での空気の流れをみると、光源1のヒートシンクと熱的に接続した第1領域16においてヒートシンクから熱を伝達された空気は、各液晶素子4a、4bと接する伝熱部材10、11の各一端部と熱的に接続した第2領域17へは流れない。気体流路9の内部の空気は、第2領域17から第1領域16へ向かって流れる。
【0034】
このとき、ファン14をダンパー12と光源1の間に設けていることから、他方のダンパー13側の開口部から吸入された空気が液晶素子4a、4bおよび光源1の冷却に用いられた後、ファン14を介してダンパー12側の開口部から外界へ排出されるという空気の流れになるので、ファン14自身から発生し得る熱を光源1等に伝えることがない。
【0035】
他方、制御部6は、温度センサ15により検出される筐体8の内部温度が予め設定した基準値未満(一例として、25℃未満)である場合には、各ダンパー12、13を閉状態に制御するとともに、ファン14を逆回転させる。ここでの「基準値」は、使用する液晶素子4a、4bの低温時の応答速度、選択的な光照射における配光状態の切り換え速度などを考慮して適宜設定されるものである。一例として25℃を挙げたが、これに限られず、例えば一般的に液晶素子の応答速度の低下が顕著になり始める10℃前後の温度に設定してもよい。
【0036】
各ダンパー12、13とファン14を上記のように制御すると、気体流路9の内部においては、ダンパー12とダンパー13の間で空気が対流することになる。このような流れを生じさせることで、主にヒートシンクを介して光源1が冷却され、第1領域16にてヒートシンクから熱を伝達された空気が各液晶素子4a、4bと接する伝熱部材10、11の各一端部の配置された第2領域17へ流れ、その熱が各伝熱部材10、11に吸収される。熱を吸収した各伝熱部材10、11は、その熱を各々と接する各液晶素子4a、4bへ伝達するので、各液晶素子4a、4bが加温される。すなわち、気体流路9内での空気の流れをみると、光源1のヒートシンクと熱的に接続した第1領域16においてヒートシンクから熱を伝達された空気は、対流によって各液晶素子4a、4bと接する伝熱部材10、11の各一端部と熱的に接続した第2領域17へ流れ、この第2領域17において各伝熱部材10、11に熱が与えられる。
【0037】
このとき、ファン14をダンパー12と光源1の間に設けていることから、このダンパー12側の開口部から吸入された空気が光源1の冷却に用いられ、かつファン14自身から発生する熱も空気に与えられるため、各液晶素子4a、4bの加温をより効果的に実現できる。
【0038】
ここで、ファン14の動作は、連続的でもよいし、間欠的(例えば、毎分1回で各回3秒間程度)であってもよい。いずれの動作も制御部6によって制御される。低温時においては熱伝達が主目的となるから空気の流れは緩やかでもよい。このため、ファン14を間欠的に動作させても各液晶素子4a、4bの加温という効果を得られるとともに電力消費を抑えることができる。
【0039】
なお、各ダンパー12、13として、気体流路9の内部径よりも幾分小さい径の円板を軸回転させて開閉動作を実現する一般的なものを用いている場合には、各ダンパー12、13をそれぞれ閉状態としても気体流路9の内部の空気を外界から完全に遮断することは難しく、外界からも僅かに空気の流入が生じ得る。この場合、厳密にいえば、気体流路9の空気は、各ダンパー12、13の相互間で対流しつつ、全体としてはダンパー12に近い側の開口部から外界の空気が取り込まれ、ダンパー13に近い側の開口部から外界へ空気が放出されるという流れ(25℃以上の場合と逆の流れ)が生じる。
【0040】
(第2実施形態)
【0041】
図3は、第2実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図3に示す車両用灯具システムは、光源1、平行光学系2、液晶素子4c、駆動回路5、制御部6、投射光学系7、気体流路9、伝熱部材10a、ダンパー12、13、ファン14、温度センサ15を含んで構成されている。各構成要素は、例えば筐体8に収容されている。この車両用灯具システムは、自車両の周囲に存在する前方車両や歩行者等の位置に対応して、前方車両等の位置を含む一定範囲を非照射範囲に設定し、それ以外の範囲を光照射範囲に設定して選択的な光照射を行うものである。
【0042】
第1実施形態との主な違いは、液晶素子4cとして透過型の液晶素子を用いており、この液晶素子4cには一対の偏光板が備わっている点と、偏光ビームスプリッター3が用いられていない点である。以下、各実施形態に共通する構成要素については同一符号を用いることでそれらの詳細説明を省略する。
【0043】
液晶素子4cは、例えば、それぞれ個別に制御可能な複数の画素領域(光変調領域)を有しており、駆動回路5によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて各画素領域の透過率が可変に設定される。この液晶素子4cに光源1からの光が透過することで、上記した光照射領域と非照射領域に対応した明暗を有する像が形成される。この液晶素子4cにおける一対の偏光板は、例えば互いの吸収軸を略直交させており、上基板11と下基板12を挟んで対向配置されている。例えば本実施形態では、液晶層27に電圧無印加としているときに光が遮光される(透過率が極めて低くなる)動作モードであるノーマリークローズモードを想定する。
【0044】
伝熱部材10aは、例えば金属細線を網目状に構成してなる部材(金属メッシュ材)が用いられる。本実施形態の伝熱部材10aは、平行光学系2と液晶素子4cとの間に配置されているが、金属メッシュ材を用いているので、平行光学系2から液晶素子4cへ光を通過させることができる。
【0045】
本実施形態の車両用灯具システムは上記構成を備えており、次に、筐体8の内部温度に応じて制御部6が各ダンパー12、13およびファン14を制御する動作について詳細に説明する。
【0046】
制御部6は、温度センサ15により検出される筐体8の内部温度が予め設定した基準値以上(一例として、25℃以上)である場合には、各ダンパー12、13を開状態に制御するとともに、ファン14を回転させる。このときの気体流路9の内部における空気の流れは上記した第1実施形態の場合と同様であり、ダンパー13に近い側の開口部から外界の空気が取り込まれ、ダンパー12に近い側の開口部から外界へ空気が放出される。これにより、主にヒートシンクを介して光源1が冷却される。気体流路9内での空気の流れをみると、光源1のヒートシンクと熱的に接続した第1領域16においてヒートシンクから熱を伝達された空気は、液晶素子4cと接する伝熱部材10aの一端部と熱的に接続した第2領域17へは流れない。気体流路9の内部の空気は、第2領域17から第1領域16へ向かって流れる。
【0047】
他方、制御部6は、温度センサ15により検出される筐体8の内部温度が予め設定した基準値未満(一例として、25℃未満)である場合には、各ダンパー12、13を閉状態に制御するとともに、ファン14を停止させる。このとき、気体流路9の内部においては、ダンパー12とダンパー13の間で空気が対流することになる。このような流れ(空気の移動)を生じさせることで、主にヒートシンクを介して光源1が冷却され、第1領域16にてヒートシンクから熱を伝達された空気が液晶素子4cと接する伝熱部材10aの一端部の配置された第2領域17へ流れ、その熱が伝熱部材10aに吸収される。熱を吸収した伝熱部材10aは、その熱を自身と接する液晶素子4cへ伝達するので、液晶素子4cが加温される。すなわち、気体流路9内での空気の流れをみると、光源1のヒートシンクと熱的に接続した第1領域16においてヒートシンクから熱を伝達された空気は、対流によって液晶素子4cと接する伝熱部材10aの一端部と熱的に接続した第2領域17へ流れ、この第2領域17において伝熱部材10aに熱が与えられる。
【0048】
この動作原理から、伝熱部材10aの一端部の位置は、同じく気体流路9の内部に露出した光源1のヒートシンクの位置よりも相対的に高い位置であることがより好ましい。加温された空気は比重が相対的に小さくなり気体流路9の内部において上昇するため、この加温された空気を伝熱部材10aの一端部へ導きやすくなるからである。
【0049】
なお、各ダンパー12、13として、気体流路9の内部径よりも幾分小さい径の円板を軸回転させて開閉動作を実現する一般的なものを用いている場合には、各ダンパー12、13をそれぞれ閉状態としても気体流路9の内部の空気を外界から完全に遮断することは難しく、外界からも僅かに空気の流入が生じ得る。しかし、本実施形態ではファン14を停止させているので、気体流路9の空気の大部分は気体流路9の内部で対流しつつ留まることになる。
【0050】
以上のような各実施形態によれば、液晶素子の周辺温度が予め定めた基準よりも低くなった際には、光源から発生する熱を利用して液晶素子が加温されるので、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度に起因する照射光の輝度低下を防ぐことが可能となる。
【0051】
また、各実施形態によれば、液晶素子の周辺温度が相対的に高くなった際には、液晶素子や光源が効率的に冷却されるので、液晶素子を用いる車両用灯具システムにおける周辺温度の上昇に起因する不具合、具体的には液晶素子の液晶層の配向乱れ等による光変調機能の低下、光源の輝度低下などを防ぐことも可能となる。
【0052】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態では液晶素子の構成例として垂直配向型の液晶素子を示していたが液晶素子の構成はこれにのみ限定されず、例えばTN型、STN型の液晶素子を用いることもできる。
【0053】
また、上記した各実施形態では光源の一例として青色LEDに黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDを挙げていたが、光源として青色LEDを使用し、液晶素子によって光変調されて液晶素子を出射した後の光を黄色蛍光体によって白色光に変換してもよい。
【0054】
また、上記した各実施形態では、伝熱部材は、自ら発熱する機能を有していないものとして説明していたが、発熱する機能を有するものであってもよい。それにより、例えば光源の点灯直後など、熱の発生量が少ない期間において補助的に熱を液晶素子へ与えることができる。その場合の伝熱部材の発熱動作については制御部によって制御されることが好ましい。
【0055】
また、上記した各実施形態では、ある1つの温度の基準値(一例として25℃)を境界として各ダンパーとファンの制御態様を可変に設定していたが、基準値を複数設けてもよい。具体的には、例えば、相対的に低い第1の基準値(一例として10℃)と相対的に高い第2の基準値(一例として40℃)を設けておき、第1の基準値未満の場合に光源の熱を利用して液晶素子を加温するように各ダンパーとファンを制御し、第2の基準値以上である場合に光源および液晶素子をそれぞれ冷却するように各ダンパーとファンを制御することができる。この場合において、第1の基準値以上で第2の基準値未満の場合には、例えばファンは停止させ、各ダンパーについては開状態にするように制御するとよい。なお、上記した各実施形態のように1つの基準値を設ける場合は、換言すれば第1の基準値と第2の基準値を同じ値に設定しているといえる。
【0056】
また、上記した第2実施形態においてはファンを停止させる制御態様について説明していたが、ファンを回転(逆回転)させて、気体流路内で空気の移動を生じさせるようにしてもよい。その場合においては第1実施形態と同様にファンを間欠的に動作させてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:光源
2:平行光学系
3:偏光ビームスプリッター
4a、4b、4c:液晶素子
5:駆動回路
6:制御部
7:投射光学系
8:筐体
9:気体流路
10、10a、11:伝熱部材
12、13:ダンパー
14:ファン
15:温度センサ
図1
図2
図3