特開2018-203202(P2018-203202A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203202(P2018-203202A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】コイルの通電制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20181130BHJP
   B62D 5/07 20060101ALI20181130BHJP
   B62D 5/22 20060101ALI20181130BHJP
   B62D 5/10 20060101ALI20181130BHJP
   B62D 5/083 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/07
   B62D5/22
   B62D5/10
   B62D5/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-114309(P2017-114309)
(22)【出願日】2017年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】早川 正博
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC27
3D232CC45
3D232DA03
3D232DA09
3D232DA23
3D232DC11
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD10
3D232DD17
3D232EA01
3D232EB11
3D232EC03
3D232EC04
3D232EC09
3D232GG01
3D333EB07
3D333FD00
3D333HA05
3D333JB01
3D333JB14
(57)【要約】
【課題】長寿命化を図ることのできるコイルの通電制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置8は、ソレノイドコイル41への通電経路となる電源線62に設けられたスイッチング素子64と、スイッチング素子64をオンオフさせるPWM制御信号Sを生成するマイコン71とを備える。マイコン71は、車両の走行状況に応じて、車速V及び操舵角θsに基づくデューティ比のPWM制御信号Sを生成するアシスト制御、又は油圧アクチュエータに供給する作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比のPWM制御信号Sを生成するスタンバイ制御を実行する。そして、マイコン71は、アシスト制御及びスタンバイ制御の実行時において、車速Vが中高速閾値よりも大きい場合には、生成するPWM制御信号SのPWM周波数を低周波数に設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置のコイルへの通電を制御するコイルの通電制御装置であって、
前記コイルへの通電経路に設けられたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子をオンオフさせる制御信号を生成する制御部とを備え、
前記制御部は、車速が中高速域で走行していることを示す中高速閾値よりも大きい場合には、前記車速が前記中高速閾値以下の場合よりも、生成する前記制御信号の周波数を低く設定するコイルの通電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコイルの通電制御装置において、
前記車載装置は、ポンプから油圧パワーステアリング装置の油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する流量制御弁であり、
前記コイルは、前記流量制御弁の開度を調整するソレノイドコイルであるコイルの通電制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のコイルの通電制御装置において、
前記制御部は、前記制御信号としてPWM制御信号を生成し、
車両が停止状態でありかつステアリングホイールが保舵状態である停止保舵条件、及び車両が走行状態でありかつ直進状態である直進走行条件のいずれも満たさない場合には、前記車速及び前記ステアリングホイールの操舵角に基づくデューティ比の前記PWM制御信号を生成するアシスト制御を実行するものであり、
前記アシスト制御の実行時において、前記車速が前記中高速閾値よりも大きい場合には、前記車速が前記中高速閾値以下の場合よりも、生成する前記PWM制御信号のPWM周波数を低く設定するコイルの通電制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のコイルの通電制御装置において、
前記制御部は、前記制御信号としてPWM制御信号を生成し、
車両が停止状態でありかつステアリングホイールが保舵状態である停止保舵条件、及び車両が走行状態でありかつ直進状態である直進走行条件のいずれか一方を満たす場合には、前記油圧アクチュエータに供給する作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比の前記PWM制御信号を生成するスタンバイ制御を実行するものであり、
前記スタンバイ制御の実行時において、前記車速が前記中高速閾値よりも大きい場合には、前記車速が前記中高速閾値以下の場合よりも、生成する前記PWM制御信号のPWM周波数を低く設定するコイルの通電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの通電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを用いて操舵機構にアシスト力を付与する油圧パワーステアリング装置が知られている。こうした油圧パワーステアリング装置には、エンジン等によって駆動されるポンプと油圧アクチュエータとの間の油路に流量制御弁を有するものがあり、車速や操舵角等に応じて該油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を制御することで、燃費の向上等を図っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
流量制御弁には、特許文献1に記載されるように、多くの場合、ソレノイド可変流量バルブが用いられている。そして、通電制御装置は、通電経路に設けられたスイッチング素子をPWM制御によりオンオフさせることによりソレノイドコイルに駆動電力を供給し、ソレノイド可変流量バルブの開度、すなわち油圧アクチュエータに供給する作動油の流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−214693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通電制御装置は、ソレノイドコイルへの通電により発熱するため、その作動時において装置内部の温度が上昇する。そして、装置内部の各回路素子の温度が上昇することで、該各回路素子の劣化が進み易くなり、装置の寿命低下につながる。一方、近年、制御装置の長寿命化の要請が強まっており、より一層の長寿命化を図ることのできる技術の創出が求められていた。
【0006】
なお、こうした要請は、流量制御弁に用いられるソレノイドコイルの通電制御装置に限らず、他の車載装置に用いられるコイルへの通電を制御する装置においても同様に存在する。
【0007】
本発明の目的は、長寿命化を図ることのできるコイルの通電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するコイルの通電制御装置は、車両に搭載される車載装置のコイルへの通電を制御するコイルのものであって、前記コイルへの通電経路に設けられたスイッチング素子と、前記スイッチング素子をオンオフさせる制御信号を生成する制御部とを備え、前記制御部は、車速が中高速域で走行していることを示す中高速閾値よりも大きい場合には、前記車速が前記中高速閾値以下の場合よりも、生成する前記制御信号の周波数を低く設定する。
【0009】
ここで、通電制御装置が発熱する要因として、スイッチング素子のオンオフによるスイッチング損失によるものが大きい。このスイッチング損失は、スイッチング素子のスイッチング周波数が高いほど大きくなり、発熱量も増大する。一方、スイッチング周波数が高いほど、コイルで発生する磁界が大きくなるため、車載装置の応答性向上を図ることができ、単純にスイッチング周波数を低くすることは好ましくない。
【0010】
この点、本発明者は、スイッチング素子の特性を活かしてスイッチング損失を低減できる状況として、車速が中高速域となり、安定して走行している状態では、運転者等により車両の挙動を大きく変化させるような操作は行われ難く、車載装置に高い応答性は要求されないことに着目した。したがって、上記構成のように、車速が中高速閾値よりも大きい場合に生成する制御信号の周波数を低く設定し、スイッチング周波数を低くすることで、車載装置の必要な応答性を確保しつつ、スイッチング素子の発熱を抑制することができる。その結果、制御装置内部の温度上昇が抑制されることで、各構成部品の長寿命化を図ることができる。
【0011】
上記コイルの通電制御装置において、前記車載装置はポンプから油圧パワーステアリング装置の油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する流量制御弁であり、前記コイルは前記流量制御弁の開度を調整するソレノイドコイルであることが好ましい。
【0012】
中高速域で走行している場合には、運転者が急操舵をすることがないため、油圧パワーステアリング装置の油圧アクチュエータが付与するアシスト力について、高い応答性は要求されない。したがって、上記構成のように、流量制御弁を制御対象とし、車速が中高速閾値よりも大きい場合にソレノイドコイルへの通電を制御するスイッチング素子のスイッチング周波数を低くすることで、油圧アクチュエータの必要な応答性を確保しつつ、スイッチング素子の発熱を抑制することができる。
【0013】
上記コイルの通電制御装置において、前記制御部は、前記制御信号としてPWM制御信号を生成し、車両が停止状態でありかつステアリングホイールが保舵状態である停止保舵条件、及び車両が走行状態でありかつ直進状態である直進走行条件のいずれも満たさない場合には、前記車速及び前記ステアリングホイールの操舵角に基づくデューティ比の前記PWM制御信号を生成するアシスト制御を実行するものであり、前記アシスト制御の実行時において、前記車速が前記中高速閾値よりも大きい場合には、前記車速が前記中高速閾値以下の場合よりも、生成する前記PWM制御信号のPWM周波数を低く設定することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、車両が旋回走行している状態では、車速及び操舵角に基づくデューティ比を有するPWM制御信号によりソレノイドコイルに駆動電力が供給されることで流量制御弁の開度が調整され、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量が制御される。これにより、車速及び操舵角に応じた適切なアシスト力を発生させるのに必要な流量の作動油を油圧アクチュエータに好適に供給できる。さらに、アシスト制御の実行時において、車速が中高速閾値よりも大きい場合にスイッチング周波数を低くするため、油圧アクチュエータの必要な応答性を好適に確保しつつ、スイッチング素子の発熱を抑制できる。
【0015】
上記コイルの通電制御装置において、前記制御部は、前記制御信号としてPWM制御信号を生成し、車両が停止状態でありかつステアリングホイールが保舵状態である停止保舵条件、及び車両が走行状態でありかつ直進状態である直進走行条件のいずれか一方を満たす場合には、前記油圧アクチュエータに供給する作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比の前記PWM制御信号を生成するスタンバイ制御を実行するものであり、前記スタンバイ制御の実行時において、前記車速が前記中高速閾値よりも大きい場合には、前記車速が前記中高速閾値以下の場合よりも、生成する前記PWM制御信号のPWM周波数を低く設定することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、車両が停止し、かつ保舵している状態、又は車両が直進している状態で、油圧アクチュエータに供給する作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比のPWM制御信号によりソレノイドコイルに駆動電力が供給されることで流量制御弁の開度が絞られるため、ポンプの負荷を低減できる。さらに、スタンバイ制御の実行時において、車速が中高速閾値よりも大きい場合にスイッチング周波数を低くするため、ポンプの負荷を低減しつつ、スイッチング素子の発熱を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】油圧パワーステアリング装置の概略構成図。
図2】制御装置のブロック図。
図3】マイコンによるPWM制御信号生成の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、コイルの通電制御装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、油圧パワーステアリング装置1は、運転者によるステアリングホイール2の操作に基づいて転舵輪3を転舵させる操舵機構4と、操舵機構4にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する油圧アクチュエータ5とを備えている。また、油圧パワーステアリング装置1は、油圧アクチュエータ5に供給する作動油の供給源となるポンプ6と、ポンプ6から油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量を調整する流量制御弁7と、流量制御弁7の作動を制御するコイルの通電制御装置としての制御装置8とを備えている。なお、本実施形態のポンプ6には、エンジン(内燃機関)9のクランク軸の回転によって駆動される機関駆動式のポンプが採用されている。
【0020】
操舵機構4は、ステアリングホイール2が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて軸方向に往復動するラック軸12とを備えている。ステアリングシャフト11の先端部分には、ラック軸12と噛合するピニオン軸13が一体回転可能に設けられている。
【0021】
ラック軸12とピニオン軸13とは、所定の交差角をもって配置されており、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸13に形成されたピニオン歯13aとが噛合されることでラックアンドピニオン機構14が構成されている。また、ラック軸12の両端には、タイロッド15が連結されており、タイロッド15の先端は、転舵輪3が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、油圧パワーステアリング装置1では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構14によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド15を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪3の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0022】
油圧アクチュエータ5は、油圧に基づくアシスト力をラック軸12に付与する油圧シリンダ21と、油圧シリンダ21への作動油の給排を制御する切替弁22とを備えている。油圧シリンダ21は、ラック軸12が往復動可能に挿通される円筒状のシリンダチューブ23と、シリンダチューブ23内を第1油圧室24と第2油圧室25とに区画するピストン26とを備えている。ピストン26は、ラック軸12に一体で軸方向移動可能に固定されている。
【0023】
切替弁22は、ステアリング操作に連動して油圧シリンダ21の第1及び第2油圧室24,25への作動油の給排を制御する周知のロータリバルブとして構成されている。具体的には、切替弁22には、供給ポート31、排出ポート32、第1及び第2給排ポート33,34が設けられている。供給ポート31は供給油路35を介して流量制御弁7に接続され、排出ポート32は排出油路36を介して作動油を貯留するタンク37に接続されている。第1給排ポート33は、第1給排油路38を介して第1油圧室24に接続され、第2給排ポート34は、第2給排油路39を介して第2油圧室25に接続されている。なお、ポンプ6は、吸入油路40を介してタンク37に接続されている。
【0024】
流量制御弁7には、周知のソレノイド可変流量バルブが採用されている。流量制御弁7は、供給油路35の途中に設けられている。図2に示すように、流量制御弁7は、ソレノイドコイル41と、ソレノイドコイル41への通電により発生する吸引力によりソレノイドコイル41から出没するプランジャ42とを備えている。そして、流量制御弁7は、プランジャ42のソレノイドコイル41からの突出量に応じてその開度を変更し、切替弁22(油圧アクチュエータ5)に供給する作動油の流量を制御する。
【0025】
なお、本実施形態の流量制御弁7は、ソレノイドコイル41で発生する吸引力が大きくなるほど、その開度が大きくなるように構成されている。また、図1に示すように、流量制御弁7には、吸入油路40に接続されるショートループ油路43が接続されており、ポンプ6から吐出される作動油のうち油圧アクチュエータ5に供給されない分は、ショートループ油路43を介して吸入油路40に戻される。
【0026】
このように構成された油圧パワーステアリング装置1では、ポンプ6から流量制御弁7を介して送出される作動油は、供給油路35を介して切替弁22に供給される。そして、切替弁22に供給された作動油は、運転者のステアリング操作に応じて、第1及び第2給排油路38,39のいずれか一方を介して第1及び第2油圧室24,25のいずれか一方に供給される。このとき、第1及び第2油圧室24,25の他方から作動油が排出され、この作動油は第1及び第2給排油路38,39の他方、切替弁22及び排出油路36を介してタンク37に排出される。その結果、第1油圧室24と第2油圧室25との間に油圧差が発生し、この油圧差に基づいてピストン26とともにラック軸12が軸方向移動することで、操舵機構4にアシスト力が付与され、ステアリング操作がアシストされる。
【0027】
次に、油圧パワーステアリング装置1の電気的構成について説明する。
制御装置8には、油圧パワーステアリング装置1が搭載される車両の車速Vを検出する車速センサ51、及びステアリングホイール2の操舵角θsを検出するステアリングセンサ52が接続されている。そして、制御装置8は、これら各センサから入力される各状態量を示す信号に基づいて、ソレノイドコイル41に駆動電力を供給することにより、流量制御弁7の作動、すなわち油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量を制御する。
【0028】
図2に示すように、制御装置8は、車載電源(バッテリ)Bからイグニッションスイッチ61を介して延びる通電経路としての電源線62に設けられたフィルタ回路63と、電源線62におけるフィルタ回路63よりも下流側に設けられたスイッチング素子64とを備えている。電源線62におけるスイッチング素子64の下流側には、ソレノイドコイル41の一端が接続されるとともに、ソレノイドコイル41の他端は、グランドに設置されている。なお、本実施形態の制御装置8は、ソレノイドコイル41と並列に接続されるダイオード65を備えている。
【0029】
フィルタ回路63は、電源線62の途中に直列に接続されるフィルタコイル66と、フィルタコイル66の両端にそれぞれ並列に接続されるコンデンサ67とを備えており、車載電源Bから供給される直流電流を平滑化する。なお、本実施形態のコンデンサ67には、アルミ電解コンデンサが採用されている。
【0030】
スイッチング素子64には、例えばMOSFET(電界効果型トランジスタ)等、ゲート電圧の印加によりオンオフ状態が切り替わる半導体スイッチング素子が用いられている。スイッチング素子64のソース端子はフィルタ回路63に接続され、ドレイン端子はソレノイドコイル41の一端に接続されている。
【0031】
また、制御装置8は、スイッチング素子64のオンオフ状態を制御するための制御信号としてのPWM制御信号Sを生成して出力する制御部としてのマイコン71と、マイコン71の出力するPWM制御信号Sを昇圧するドライバ回路72とを備えている。マイコン71の出力するPWM制御信号Sは電圧信号となっており、ドライバ回路72を介して昇圧されてスイッチング素子64のゲート端子に印加される。
【0032】
マイコン71には、上記車速V及び操舵角θsが入力される。また、マイコン71には、ソレノイドコイル41とグランドとの間に設けられた電流センサ73により検出されるソレノイドコイル41の実電流値Iが入力される。マイコン71は、車速V及び操舵角θsに基づいて油圧アクチュエータ5に供給すべき作動油の流量、すなわち流量制御弁7の開度の目標値(目標開度)に対応する電流指令値を演算し、該電流指令値に実電流値Iが追従するように電流フィードバック制御を実行することにより、PWM制御信号Sを生成する。そして、マイコン71は、PWM制御信号Sに基づいてスイッチング素子64をオンオフさせることにより、ソレノイドコイル41への電力供給を通じて流量制御弁7の開度を調整し、油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量を制御する。
【0033】
ここで、本実施形態のマイコン71は、生成するPWM制御信号Sのデューティ比(電圧のハイレベル(オン)とローレベル(オフ)との比)の決定に際し、油圧アクチュエータ5によって大きなアシスト力を付与する必要性が高いか否かに基づいてアシスト制御及びスタンバイ制御の2つの制御モードのいずれかに切り替える。さらに、マイコン71は、油圧アクチュエータ5に高い応答性が要求されるか否かに基づいて、生成するPWM制御信号SのPWM周波数(単位時間あたりにオンオフが切り替わる回数)、すなわちスイッチング素子64のスイッチング周波数を変更する。
【0034】
詳しくは、マイコン71は、車両が停止状態でありかつステアリングホイール2が保舵状態である停止保舵条件、及び車両が走行状態でありかつ直進状態である直進走行条件のいずれも満たさない場合、すなわち車両が旋回走行している場合には、大きなアシスト力を付与する必要性が高いと判定して、アシスト制御を実行する。一方、マイコン71は、停止保舵条件、及び直進状態である直進走行条件のいずれか一方を満たす場合には、大きなアシスト力を付与する必要性が低いと判定してスタンバイ制御を実行する。
【0035】
具体的には、マイコン71は、車速Vが停止状態閾値Vth_0以下であり、かつ操舵角θsを微分等することにより得られる操舵角速度ωsの絶対値が所定角速度ωth以下である場合に、停止保舵条件を満たすと判定する。なお、停止状態閾値Vth_0は、車両が停止していることを示す車速であり、ノイズ等の影響を考慮してゼロよりもやや大きな値に設定されている。所定角速度は、ステアリングホイール2が保舵されていることを示す角速度であり、ノイズ等の影響を考慮してゼロよりもやや大きな値に設定されている。また、マイコン71は、車速Vが停止状態閾値Vth_0よりも大きく、かつ操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthよりも小さい場合に、直進走行条件を満たすと判定する。なお、所定操舵角θthは、ステアリングホイール2が中立位置近傍にあり、車両が略直進することを示す操舵角であり、ゼロ近傍の小さな値に設定されている。
【0036】
そして、マイコン71は、アシスト制御の実行時においては、入力される車速V及び操舵角θsに基づいて電流指令値を演算し、電流フィードバック演算を行うことで実電流値Iが電流指令値に追従するようなデューティ比を有するPWM制御信号Sを生成する。なお、マイコン71は、車速Vが遅いほど、また操舵角θsの絶対値が大きいほど、油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量を増大すべく、大きな電流指令値に基づくPWM制御信号Sを生成する。一方、マイコン71は、スタンバイ制御の実行時においては、油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量が予め定められた所定流量以下となるように電流指令値を演算し、電流フィードバック演算を行うことで実電流値Iが電流指令値に追従するようなデューティ比を有するPWM制御信号Sを生成する。なお、所定流量は、ポンプ6に加わる負荷を低減すべく、小さな流量に設定されている。
【0037】
さらに、マイコン71は、車速Vが中高速域(例えば40km/h以上の速度領域)で走行していることを示す中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合に、油圧アクチュエータ5に高い応答性が要求されていると判定する。なお、中高速閾値Vth_mhは、車速Vが比較的高く、通常、運転者が車両の進行方向を大きく変更しないような速度であり、中高速域であることを示す範囲で車両の仕様に応じて適宜変更可能であるが、例えば50〜60km/h程度に設定されている。そして、マイコン71は、アシスト制御及びスタンバイ制御の実行時において、車速Vが中高速閾値Vth_mh以下の場合には、生成するPWM制御信号SのPWM周波数を予め設定された基本周波数fbに設定する。一方、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合には、PWM制御信号SのPWM周波数を基本周波数fbよりも低い低周波数flに設定する。なお、本実施形態のマイコン71は、クロック(図示略)から出力されるクロック信号に基づいてPWM制御信号SのPWM周波数を設定する。
【0038】
次に、マイコン71によるPWM制御信号Sを生成する処理手順について説明する。
図3のフローチャートに示すように、マイコン71は、まず車速V及び操舵角θsを取得し、該操舵角θsに基づく操舵角速度ωsを演算する(ステップ101)。続いて、車速Vが停止状態閾値Vth_0以下であるか否かを判定し(ステップ102)、車速Vが停止状態閾値Vth_0以下である場合には(ステップ102:YES)、操舵角速度ωsの絶対値が所定角速度ωth以下であるか否かを判定する(ステップ103)。そして、操舵角速度ωsの絶対値が所定角速度ωth以下である場合には(ステップ103:YES)、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きいか否かを判定する(ステップ104)。
【0039】
一方、マイコン71は、車速Vが停止状態閾値Vth_0よりも大きい場合(ステップ102:NO)、及び操舵角速度ωsの絶対値が所定角速度ωthよりも大きい場合には(ステップ103:NO)、車速Vが停止状態閾値Vth_0よりも大きいか否かを判定する(ステップ105)。続いて、車速Vが停止状態閾値Vth_0よりも大きい場合には(ステップ105:YES)、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthよりも小さいか否かを判定し(ステップ106)、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthよりも小さい場合には(ステップ106:YES)、ステップ104に移行する。
【0040】
そして、マイコン71は、車速Vが中高速閾値Vth_mh以下の場合には(ステップ104:NO)、スタンバイ制御の実行により油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比を有し、PWM周波数が基本周波数fbに設定されたPWM制御信号Sを生成する(ステップ107)。これに対し、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合には(ステップ104:YES)、スタンバイ制御の実行により作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比を有し、PWM周波数が低周波数flに設定されたPWM制御信号Sを生成する(ステップ108)。
【0041】
また、マイコン71は、車速Vが停止状態閾値Vth_0以下の場合(ステップ105:NO)、及び操舵角θsの絶対値が所定操舵角θth以上の場合には(ステップ106:NO)、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きいか否かを判定する(ステップ109)。そして、車速Vが中高速閾値Vth_mh以下の場合には(ステップ109:NO)、アシスト制御の実行により車速V及び操舵角θsに基づく流量の作動油が油圧アクチュエータ5に供給されるようなデューティ比を有し、PWM周波数が基本周波数fbに設定されたPWM制御信号Sを生成する(ステップ110)。これに対し、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合には(ステップ109:YES)、アシスト制御の実行により車速V及び操舵角θsに基づく流量の作動油が油圧アクチュエータ5に供給されるようなデューティ比を有し、PWM周波数が低周波数flに設定されたPWM制御信号Sを生成する(ステップ111)。
【0042】
そして、このように生成されたPWM制御信号Sが制御装置8から出力され、スイッチング素子64がPWM制御信号Sに示されるPWM周波数に応じたスイッチング周波数でオンオフすることで、流量制御弁7の開度が調整され、車両の走行状況に応じた量の作動油が油圧アクチュエータ5に供給される。
【0043】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)制御装置8が発熱する要因として、スイッチング素子64のオンオフによるスイッチング損失によるものが大きい。このスイッチング損失は、スイッチング素子64のスイッチング周波数が高いほど大きくなり、発熱量も増大する。一方、スイッチング周波数が高いほど、ソレノイドコイル41で発生する磁界が大きくなるため、流量制御弁7の応答性向上を図ることができ、単純にスイッチング周波数を低くすることは好ましくない。
【0044】
この点、中高速域で走行している場合には、通常、運転者が急操舵をすることがないため、油圧パワーステアリング装置1の油圧アクチュエータ5が付与するアシスト力について、高い応答性は要求されない。したがって、本実施形態のように、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合に、生成するPWM制御信号SのPWM周波数を低く設定し、スイッチング周波数を低くすることで、油圧アクチュエータ5の必要な応答性を好適に確保しつつ、スイッチング素子64の発熱を抑制することができる。その結果、制御装置8内部の温度上昇が抑制されることで、各構成部品の長寿命化を図ることができる。
【0045】
(2)制御装置8は、車両が旋回走行している状態では、車速V及び操舵角θsに基づくデューティ比を有するPWM制御信号Sによりソレノイドコイル41に駆動電力を供給することで流量制御弁7の開度を調整し、油圧アクチュエータ5に供給される作動油の流量を制御する。そのため、油圧アクチュエータ5によるアシスト力が必要な場合に、好適に作動油を供給できる。また、アシスト制御の実行時において、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合には、PWM周波数が低周波数flに設定されたPWM制御信号Sを生成するため、油圧アクチュエータ5の必要な応答性を確保しつつ、スイッチング素子64の発熱を抑制できる。
【0046】
(3)制御装置8は、車両が停止し、かつ保舵している状態、又は車両が直進している状態では、油圧アクチュエータ5に供給する作動油の流量が所定流量以下となるようなデューティ比のPWM制御信号Sによりソレノイドコイル41に駆動電力を供給することで流量制御弁7の開度が絞られるため、ポンプ6の負荷を低減できる。さらに、スタンバイ制御の実行時において、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合には、PWM周波数が低周波数flに設定されたPWM制御信号Sを生成するため、ポンプ6の負荷を低減しつつ、スイッチング素子64の発熱を抑制できる。
【0047】
(4)制御装置8は、電解コンデンサからなるコンデンサ67を含むフィルタ回路63を有するため、ソレノイドコイル41に供給する直流電流を平滑化でき、ノイズの影響を低減できる。ここで、電解コンデンサは、アレニウスの法則(10℃2倍則)に従ってその温度が10℃上昇すると寿命が約半分に短くなる特性を有しており、熱に対して比較的弱い素子である。そのため、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合にPWM周波数が低周波数flに設定されたPWM制御信号Sを生成し、スイッチング周波数を低くすることにより、制御装置8内部の温度上昇を抑制する効果は大である。
【0048】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、ポンプ6として機関駆動式のポンプを用いたが、これに限らず、例えばモータ駆動式の電動ポンプを用いてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、フィルタ回路63を構成するコンデンサ67としてアルミ電解コンデンサを用いたが、これに限らず、アルミ以外の金属を用いる電解コンデンサを用いてもよく、またセラミックコンデンサ等の電解コンデンサ以外のコンデンサを用いてもよい。なお、制御装置8がフィルタ回路63を有さない構成としてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、車速Vが停止状態閾値Vth_0以下であり、かつ操舵角速度ωsの絶対値が所定角速度ωth以下である場合に停止保舵条件を満たすと判定したが、これに限らず、車両が停止し、かつ保舵している状態を判定できれば、当該判定に用いるパラメータは適宜変更可能である。同様に車両が直進している状態を判定できれば、直進走行条件を満たすか否かの判定に用いるパラメータは適宜変更可能である。なお、制御装置8が停止保舵条件及び直進走行条件を満たすか否かの判定、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きいか否かの判定を行う順序は図3のフローチャートに示すものに限らず、例えば先に直進走行条件を満たすか否かの判定を行う等、適宜変更可能である。
【0051】
・上記実施形態において、停止保舵条件を満たすか否かの判定、又は直進走行条件を満たすか否かの判定を行わなくてもよい。また、停止保舵条件を満たすか否かの判定及び直進走行条件を満たすか否かの判定の双方を行わず、制御装置8がアシスト制御のみを実行するようにしてもよい。
【0052】
・上記実施形態において、スタンバイ制御の実行時において、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きいか否かに応じてPWM制御信号SのPWM周波数を変更しなくてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、アシスト制御の実行時において、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きいか否かに応じてPWM制御信号SのPWM周波数を変更しなくてもよい。
・上記実施形態では、マイコン71が電流指令値に実電流値Iが追従するように電流フィードバック制御を実行することによりPWM制御信号Sを生成したが、これに限らず、例えばフィードフォワード制御の実行によりPWM制御信号Sを生成してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、制御装置8は、流量制御弁7のソレノイドコイル41を制御対象としたが、これに限らず、例えば四輪駆動車に搭載されて補助駆動輪への駆動力の配分を変更する駆動力伝達装置(クラッチ)に用いられるコイルや、モータのコイル等を制御対象としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、マイコン71はスイッチング素子64のオンオフ状態を制御するための制御信号としてPWM制御信号を用い、車速Vが中高速閾値Vth_mhよりも大きい場合にPWM周波数を低周波数flとした。しかし、これに限らず、スイッチング素子64のオンオフ状態を切り替える制御信号の周波数が変更可能であれば、他の方式の制御信号を用いてもよい。
【0056】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)電解コンデンサからなるコンデンサを含むフィルタ回路を有するコイルの通電制御装置。上記構成によれば、コイルに供給する駆動電力を平滑化でき、ノイズの影響を低減できる。ここで、電解コンデンサは、アレニウスの法則(10℃2倍則)に従ってその温度が10℃上昇すると寿命が約半分に短くなる特性を有しており、熱に対して比較的弱い素子である。そのため、同構成において、車速が中高速閾値よりも大きい場合に低い周波数の制御信号を生成し、スイッチング素子のスイッチング周波数を低くすることにより、装置内部の温度上昇を抑制する効果は大である。
【符号の説明】
【0057】
1…油圧パワーステアリング装置、5…油圧アクチュエータ、6…ポンプ、7…流量制御弁、8…制御装置、21…油圧シリンダ、22…切替弁、41…ソレノイドコイル(コイル)、42…プランジャ、51…車速センサ、52…ステアリングセンサ、62…電源線(通電経路)、63…フィルタ回路、64…スイッチング素子、67…コンデンサ、71…マイコン(制御部)、fb…基本周波数、fl…低周波数、S…PWM制御信号(制御信号)、V…車速、Vth_0…停止状態閾値、Vth_mh…中高速閾値、θs…操舵角、θth…所定操舵角、ωs…操舵角速度、ωth…所定角速度。
図1
図2
図3