【解決手段】ステアリング装置は、電動モータ41の駆動により回転するウォームギヤ部50と、ウォームギヤ部50に接続し、ウォームギヤ部50の動作に伴って回転するウォームホイール部60と、ウォームホイール部60の同軸上に設けられ、ウォームホイール部60の動作に伴って回転するピニオン軸22と、ピニオン軸22の回転に応じて被操舵部を移動させるラック軸21と、を備える。そして、ウォームホイール部60は、樹脂材料によって形成されるとともに、外周に歯部611が設けられて回転する本体部63と、本体部63の温度変化による変形を抑制する抑制部67とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔ステアリング装置の全体構成〕
図1は、ステアリング装置1の全体図である。
図2は、
図1に示すステアリング装置1のII−II線の断面図である。
【0010】
図1に示すように、ステアリング装置1は、乗り物の進行方向を任意に変えるための舵取り装置である。また、本実施形態のステアリング装置1は、モータなどの補助力を受けてドライバの操舵力を補助する電動パワーステアリング装置である。さらに、本実施形態のステアリング装置1は、
図2に示すピニオン軸22(後述)に対して補助力を与える所謂ピニオンアシストタイプの装置である。
【0011】
なお、本実施形態の説明において、
図2に示すピニオン軸22(後述)の軸方向は、「軸方向」と称する。また、
図2に示すピニオン軸22の下側は、「一方側」と称し、ピニオン軸22の上側は、「他方側」と称する。さらに、
図2に示すピニオン軸22の左右方向は、「半径方向」と称し、中心軸側は、「半径方向内側」と称し、中心軸に対して離れる側は、「半径方向外側」と称する。
【0012】
図1に示すように、ステアリング装置1は、ドライバが操作するホイール状のステアリングホイール(不図示)からの操舵力が伝達される入力部10を備える。また、ステアリング装置1は、例えばタイヤ(被操舵部の一例)に連結してタイヤの向きを変更するラック軸21(移動部の一例)と、入力部10からトルクを受けてラック軸21を軸方向に移動させるピニオン軸22(回転軸の一例、
図2参照)とを備える。
また、ステアリング装置1は、各種部材を収容するハウジング30と、ピニオン軸22に操舵補助力を与えるアシスト部40とを備えている。
【0013】
入力部10は、ドライバが操作するハンドルからの操舵力が伝達される入力軸11と、入力軸11の内側に取り付けられるトーションバー(不図示)とを有している。
【0014】
ラック軸21は、長尺状の円柱形状の部材である。そして、
図2に示すように、ラック軸21は、軸方向に並べられた複数の歯によって構成されるラック21Rを有する。また、ラック軸21は、ラック21Rがピニオン軸22の後述するピニオン22Pに噛み合って取り付けられる。そして、ラック軸21は、ピニオン軸22の回転を受けて軸方向に移動する。
【0015】
図2に示すように、ピニオン軸22は、ピニオン22Pが形成された部材である。そして、上述のとおり、ピニオン軸22は、ピニオン22Pがラック軸21のラック21Rに接続する。そして、ピニオン軸22とラック軸21とは、ピニオン軸22の回転力をラック軸21の軸方向の移動に変換する。
ピニオン軸22は、トーションバー(不図示)を介して入力軸11(
図1参照)から操舵力を受けて回転する。また、本実施形態では、ピニオン軸22には、アシスト部40が接続する。従って、ピニオン軸22は、入力軸11からの操舵力に加えてアシスト部40からの補助力も受けて回転可能になっている。
【0016】
図1に示すように、ハウジング30は、主にラック軸21を収納するラックハウジング31Rと、主にピニオン軸22(
図2参照)を収納するピニオンハウジング31Pとを有する。
ラックハウジング31Rは、軸方向に長く伸びる略円筒状の部材であって、ラック軸21の軸方向に沿うように構成される。そして、ラックハウジング31Rは、不図示のブッシュを介してラック軸21を保持し、ラック軸21を軸方向に移動可能に収納する。
【0017】
ピニオンハウジング31Pは、略円筒状の概形を有している。そして、ピニオンハウジング31Pは、ラックハウジング31Rの軸方向に対して円筒軸方向が交差する方向に設けられる。
図2に示すように、ピニオンハウジング31Pは、他方側軸受部35および一方側軸受部36を介してピニオン軸22を回転可能に保持する。
【0018】
アシスト部40は、電動モータ41(動力部の一例、
図1参照)と、電動モータ41の駆動を受けて回転するウォームギヤ部50と、ウォームギヤ部50の動作に伴って回転するウォームホイール部60とを備える。
なお、アシスト部40の各構成部については、後に詳しく説明する。
【0019】
以上のように構成されたステアリング装置1では、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクが入力軸11とピニオン軸22との相対回転角度として現れる。そこで、ステアリング装置1では、トルク検出装置(不図示)が入力軸11とピニオン軸22との相対回転角度に基づいて操舵トルクを把握する。そして、トルク検出装置の出力値に基づいて、電子制御ユニット(不図示)は、操舵トルクを把握する。さらに、電子制御ユニットは、把握した操舵トルクに基づいて電動モータ41の駆動を制御する。
【0020】
そして、電動モータ41の補助トルクは、ウォームギヤ部50およびウォームホイール部60を介してピニオン軸22に伝達される。これにより、電動モータ41の補助トルクが、ステアリングホイールに加えるドライバの操舵力をアシストする。つまり、ピニオン軸22は、ステアリングホイールの回転によって発生する操舵トルクと電動モータ41から付与される補助トルクとで回転する。さらに、ラック軸21は、ピニオン軸22の回転を受けて軸方向に移動する。その結果として、ドライバの操舵によって、舵が切られる。
【0021】
〔アシスト部40の機能・構成〕
図3は、本実施形態のアシスト部40の断面図である。
図4は、本実施形態の抑制部67の全体斜視図である。
【0022】
図3に示すように、電動モータ41は、電子制御ユニット(不図示)による制御に基づいて、出力軸41Aを回転させる。そして、電動モータ41は、ウォームギヤ51を回転させる。また、電動モータ41の回転方向は、時計回りおよび反時計回りの両方である。なお、本実施形態の電動モータ41には、例えば3相ブラシレスモータを用いることができる。
【0023】
ウォームギヤ部50は、ウォームギヤ51と、ウォームギヤ51を回転可能に支持する第1軸受部52と、第2軸受部53とを有している。
ウォームギヤ51は、電動モータ41の出力軸41Aに沿って延びるねじ状の歯車である。ウォームギヤ51は、出力軸41Aに連結される。そして、ウォームギヤ51は、電動モータ41の動作に伴って回転する。
第1軸受部52は、ウォームギヤ51の軸方向における電動モータ41側に設けられる。そして、第1軸受部52は、ウォームギヤ51を回転可能に支持する。また、第1軸受部52は、ピニオンハウジング31Pに対して位置が固定されている。
第2軸受部53は、ウォームギヤ51の軸方向における第1軸受部52とは逆側に設けられる。そして、第2軸受部53は、ウォームギヤ51を回転可能に支持する。また、第2軸受部53は、ピニオンハウジング31Pに対して位置が固定されている。すなわち、本実施形態において、第2軸受部53は、第1軸受部52とともに、ウォームギヤ51を軸方向および半径方向に移動しないように固定する。
【0024】
図2に示すように、ウォームホイール部60は、複数の歯が周方向に並べて設けられる歯形部61と、半径方向外側に少なくとも歯形部61が設けられて回転する本体部63とを有する。さらに、ウォームホイール部60は、ピニオン軸22が挿入されるカラー部65(環状部材の一例)と、本体部63の温度変化による変形を抑制する抑制部67(抑制部、金属部材の一例)とを有する。
【0025】
(歯形部61)
図3に示すように、歯形部61は、周方向において複数の歯が並べられる歯部611と、歯部611の半径方向内側に設けられる環状部612とを有している。歯部611は、ウォームギヤ51の歯と噛み合うことができれば、形状などは特に限定されない。また、環状部612は、歯部611を支持することが出来れば良く、半径方向における厚みなどに関しても特に限定されない。
そして、歯形部61は、ウォームギヤ51に接続する。また、本実施形態の歯形部61は、樹脂材料によって形成されている。なお、歯形部61の材料には、例えばポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂などを用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、歯形部61を樹脂材料によって形成することで、軽量化を図るとともに、ウォームギヤ51との接触に伴う音の発生を抑制している。
【0027】
(本体部63)
本体部63は、半径方向内側にてカラー部65に対向し、半径方向外側にて抑制部67に対向する。なお、本実施形態の本体部63は、例えば回転止めを有するなどカラー部65が回転した際にカラー部65と一体的に回転可能な構成となっている。
【0028】
そして、本実施形態の本体部63は、樹脂材料によって形成されている。例えば、本体部63の材料には、例えばポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂などを用いることができる。
なお、本実施形態の本体部63では、歯形部61と同一の樹脂材料を用いている。
【0029】
本体部63は、半径方向内側に設けられてカラー部65が挿入される内側環状部631と、半径方向外側に設けられて抑制部67に対向する外側環状部632とを有している。さらに、本体部63は、内側環状部631および外側環状部632に接続する円盤部633と、同様に内側環状部631および外側環状部632に接続するスポーク部634とを有する。
なお、これら内側環状部631、外側環状部632、円盤部633およびスポーク部634は、一体成形されている。
【0030】
内側環状部631の内径は、カラー部65の外径と略同じに形成される。従って、内側環状部631には、カラー部65が圧入される。これによって、本体部63とカラー部65とは互いに固定される。さらに、内側環状部631の軸方向における幅は、外側環状部632の軸方向における幅よりも大きくなっている(
図2参照)。本実施形態では、内側環状部631の軸方向における幅は、カラー部65の軸方向における幅と略同じになっている。
【0031】
外側環状部632の外径は、抑制部67の内径と略同じに形成されている。これによって、本体部63と抑制部67とは互いに固定される。なお、外側環状部632の軸方向における幅は、歯形部61の軸方向における幅と略同じになっている。
【0032】
円盤部633は、半径方向内側にて内側環状部631に接続し、半径方向外側にて外側環状部632に接続している。
スポーク部634は、放射状に延びる板状部634tを複数備えて構成されている。板状部634tは、半径方向内側にて内側環状部631に接続し、半径方向外側にて外側環状部632に接続している。そして、板状部634tは、半径方向内側の軸方向における幅が、半径方向外側の軸方向における幅よりも大きくなっている。
また、スポーク部634は、軸方向において円盤部633の一方側および他方側にそれぞれ設けられる。
【0033】
なお、例えば、内側環状部631と外側環状部632との間を接続するにあたって、スポーク部634に代えて中実構造を採用する場合、本体部63が重量化する。これに対して、本実施形態では、スポーク部634を設けることによって、一定の強度を維持しながら、軽量化を図っている。
【0034】
(カラー部65)
カラー部65は、略円筒状の部材である。また、カラー部65は、金属材料によって形成される。そして、カラー部65は、ピニオン軸22が圧入されることで、ピニオン軸22に対して相互に固定される。
なお、カラー部65は、上述のとおり金属材料によって形成されることで、樹脂材料により形成される本体部63よりも線膨張係数が低い。そのため、カラー部65は、本体部63の半径方向内側にて本体部63の熱膨張変形(温度変化による変形)を抑制する。
【0035】
(抑制部67)
図4に示すように、抑制部67は、略円筒状の部材である。そして、
図3に示すように、抑制部67は、本体部63の半径方向外側であって、歯部611の半径方向内側に設けられる。すなわち、抑制部67は、半径方向において、本体部63と歯部611との間に配置されている。
なお、抑制部67は、例えば歯部611以外であれば、歯形部61における何れの箇所に設けられていても良い。また、抑制部67は、歯形部61ではなく本体部63に設けられていても良い。この場合に、抑制部67は、本体部63において、より外側に設けられることで、本体部63の温度変化による変形をより抑制し易くなる。
【0036】
そして、抑制部67には、本体部63よりも線膨張係数が低い材料を用いている。従って、抑制部67は、本体部63と比較して、温度変化によって変形し難くなっている。そのため、抑制部67は、例えば温度が上昇し本体部63が熱膨張して半径方向外側に大きくなるように変形しようとする場合に、その変形を抑制する。
また、本実施形態の抑制部67は、金属材料によって形成している。なお、抑制部67の材料には、例えば金属材料として、鉄鋼材料(炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼)や非鉄材料(アルミニウム、マグネシウム、チタンやそれらの合金、それらの焼結)などを用いることができる。
【0037】
図2に示すように、抑制部67の軸方向における幅B1は、本体部63の軸方向における幅B2以上に設定している。なお、本実施形態では、抑制部67の幅B1は、本体部63の幅B2と同じになっている。これによって、本実施形態では、抑制部67は、本体部63と歯形部61との間にて、本体部63と歯形部61とが直接接触しないように両者を隔てている。
【0038】
なお、抑制部67は、上述の構成に限定されない。抑制部67は、歯形部61の内側、または、本体部63の内側に設けられていても良い。すなわち、抑制部67は、本体部63または歯形部61に対して外側に露出していなくても良い。
【0039】
さらに、
図4に示すように、抑制部67は、半径方向内側にて、本体部63との間における相対的な回転を防止する内側回転止部671を有する。また、抑制部67は、半径方向外側にて、歯形部61との間における相対的な回転を防止する外側回転止部672を有する。
【0040】
内側回転止部671は、抑制部67の半径方向内側に形成される複数の溝671tを有している。各々の溝671tが、軸方向に沿って延びて形成される。そして、複数の溝671tは、周方向において複数設けられる。さらに、複数の溝671tには、本体部63の半径方向外側における一部が入り込むようになっている。これによって、抑制部67と本体部63とが掛かり合い、抑制部67と本体部63との周方向(回転方向)における滑りが防止される。
【0041】
また、溝671tの深さは、本体部63が例えば低温となって収縮した場合でも引っ掛かりが維持されるように設定されている。そして、本体部63が最も収縮した場合であっても、本体部63と抑制部67との回転方向における回転力の伝達が維持されるようになっている。
【0042】
外側回転止部672は、抑制部67の半径方向外側に形成される複数の溝672tを有している。各々の溝672tが、軸方向に沿って延びて形成される。そして、複数の溝672tは、周方向において複数設けられる。さらに、複数の溝672tには、歯形部61の半径方向内側における一部が入り込むようになっている。これによって、抑制部67と歯形部61とが掛かり合い、抑制部67と歯形部61との周方向(回転方向)における滑りが防止される。
【0043】
ここで、本実施形態のウォームホイール部60の製造方法について説明する。
ウォームホイール部60の製造に際しては、まず、本実施形態の歯形部61および本体部63の形状に対応する金型を準備する。そして、金型において、歯形部61を形成する形状部と本体部63を形成する形状部との間に、抑制部67を設置する。さらに、歯形部61および本体部63を形成するための樹脂材を金型内に充填する。本実施形態では、歯形部61と本体部63とを同一の樹脂材料によって形成している。そこで、硬化前の同一の樹脂材料を金型における歯形部61を形成する形状部と本体部63を形成する形状部に流し込む。これによって、本体部63、抑制部67および歯形部61が形成される。
【0044】
〔アシスト部40の作用〕
続いて、上記のとおり構成されるアシスト部40の作用について具体的に説明する。
例えばステアリング装置1の外気温の上昇、動作に伴う温度の上昇などによって、本体部63が熱膨張に伴って変形する可能性がある。この場合であっても、本体部63が熱膨張して半径方向外側に拡がろうとしても、抑制部67が本体部63の変形を押さえ込むように抑制する。
ここで、仮に抑制部67を有していない場合に、本体部63が熱膨張によって半径方向外側に変形した場合に、歯形部61を半径方向外側に押出し、その結果、歯形部61とウォームギヤ51との噛み合いが過剰になることが想定される(
図3参照)。
これに対して、本実施形態では、抑制部67が本体部63の変形そのものを抑制する。その結果、本実施形態では、ウォームギヤ51とウォームホイール部60の歯形部61とが安定して接続される。
また、本実施形態では、本体部63を例えば金属材料よりも軽量である樹脂材料としている。そのため、本実施形態のステアリング装置1では、装置の軽量化が図られる。
【0045】
なお、歯形部61の歯部611がウォームギヤ51に押し込まれることを抑制するという点では、抑制部67は、歯形部61に設けられていても良い。また、歯形部61の構造によっては、例えば歯形部61の環状部612が実質的に設けられていない場合もある。そして、これらの場合において、抑制部67は、歯部611(歯底)よりも半径方向内側に設けられていれば良い。また、この内容は、後述する変形例においても同様である。
【0046】
また、本実施形態の本体部63は、繊維強化プラスチックによって形成しても良い。例えば、本体部63は、ガラス繊維(GF)、アラミド繊維(AF)、炭素繊維(CF)、ウィスカー、ポリエチレン繊維(PEF)などの強化繊維を含有させた合成樹脂によって構成された複合材料を用いる。
このように本体部63を繊維強化プラスチックによって構成することで、本体部63自体の強度が高まる。さらに、本体部63を繊維強化プラスチックによって構成することで、本体部63の線膨張係数を、強化プラスチックによって構成しない場合と比較して高めても良い。
【0047】
ただし、本実施形態において、本体部63には、強化繊維を含有させる構成とする一方で、歯部611には強化繊維を含有させない構成としている。歯部611は、ウォームギヤ51に直接的に接触するため、摩耗によって強化繊維が剥離し、剥離片等が他の箇所に到達する可能性がある。そこで、本実施形態では、ウォームギヤ51に接触しない本体部63には、強化繊維を含有させ強度を高め、ウォームギヤ51に接触する歯部611に対しては、強化繊維を含有させないようにしている。
【0048】
なお、本実施形態では、抑制部67は、周方向において断続していないものであるが、この態様に限定されない。抑制部67は、一定の剛性を有し本体部63の熱膨張に伴う変形が抑制されるのであれば、断続部を有していても良い。例えば、抑制部67は、全体的な形状がC字状に形成されていても構わない。
【0049】
続いて、変形例について説明する。なお、変形例の説明において、上述した実施形態と同様な部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
<変形例1>
図5は、変形例1のウォームホイール部60の説明図である。
図5に示すように、変形例1のウォームホイール部60は、歯形部61および本体部63が一体成形されている。すなわち、歯形部61と本体部63とは半径方向において分断されていない。さらに、ウォームホイール部60は、第2抑制部68を有している。
【0051】
第2抑制部68は、リング部材68rを複数(この例では2本)有して構成されている。リング部材68rは、本体部63の半径方向外側であって歯形部61の歯部611よりも半径方向内側に設けられている。なお、変形例1においては、リング部材68rは、外側環状部632に設けられている。また、2本のリング部材68rは、軸方向において並べられている。
さらに、第2抑制部68には、歯形部61および本体部63よりも線膨張係数が低い材料を用いている。具体的には、第2抑制部68は、鉄などの金属材料によって形成している。
【0052】
以上のように構成される変形例1において、第2抑制部68が本体部63の変形そのものを抑制する。その結果、変形例1においても、ウォームギヤ51とウォームホイール部60の歯形部61(
図3参照)とが安定して接続される。また、本体部63が樹脂材料によって構成されるため軽量化が図られる。
【0053】
<変形例2>
図6は、変形例2のウォームホイール部60の説明図である。なお、
図6において、本体部63のスポーク部634の図示を省略している。
図6に示すように、変形例2のウォームホイール部60は、第3抑制部69を有している点で、上述した実施形態とは異なる。
第3抑制部69は、上述した抑制部67と同様な形状をしている。ただし、第3抑制部69は、本体部63よりも線膨張係数が低い樹脂材料によって形成されている。
【0054】
以上のように構成される変形例2において、第3抑制部69が本体部63の変形そのものを抑制する。その結果、変形例2においても、ウォームギヤ51(
図3参照)とウォームホイール部60の歯形部61とが安定して接続される。また、本体部63が樹脂材料によって構成されるため軽量化が図られる。
【0055】
なお、変形例2において、歯形部61および本体部63を同一の樹脂材料によって構成する。さらに、第3抑制部69は、歯形部61および本体部63と同一の樹脂材料であって、強化繊維を含有する複合材料によって構成しても良い。この場合、歯形部61、本体部63および第3抑制部69の一体性が高まり、ウォームホイール部60全体を強固にすることができる。
【0056】
<変形例3>
図7は、変形例3のウォームホイール部60の説明図である。
図7(A)に示すように、変形例3のウォームホイール部60は、第4抑制部70を有している点で、上述した実施形態とは異なる。
第4抑制部70は、略円盤状に形成されている。そして、第4抑制部70は、本体部63における半径方向外側であって歯形部61よりも半径方向内側に設けられる。
さらに、第4抑制部70には、歯形部61および本体部63よりも線膨張係数が低い材料を用いている。具体的には、第4抑制部70は、鉄などの金属材料によって形成している。
【0057】
具体的には、
図7(B)に示すように、第4抑制部70は、軸方向を向く環状の面部71と、半径方向外側に突出する外側突出部72と、半径方向内側に突出する内側突出部73とを有する。
【0058】
面部71は、軸方向を向く面、すなわち半径方向に沿った面として形成される。そして、面部71は、本体部63の内部であって、本体部63における半径方向外側に配置される。
外側突出部72は、複数(本実施形態では6つ)設けられる。そして、各々の外側突出部72は、歯形部61の環状部612内に配置される。
内側突出部73は、複数(本実施形態では6つ)設けられる。そして、各々の内側突出部73は、本体部63の内部であって、面部71よりも半径方向内側に配置される。
【0059】
なお、変形例3では、製造の際に、金型における本体部63および歯形部61を形成する形状部に予め第4抑制部70を設置する。そして、歯形部61および本体部63を形成するための樹脂材を金型内に充填する。これによって、
図7(A)に示すように、歯形部61、本体部63および第4抑制部70は、各々の間に隙間が形成されることなく成形される。
【0060】
以上のように構成される変形例3において、第4抑制部70が本体部63の変形そのものを抑制する。すなわち、円盤状(環状)の第4抑制部70が本体部63における半径方向外側にて本体部63を拘束するように作用する。また、面部71と本体部63との半径方向における摩擦力によって、本体部63の半径方向における変形が抑制される。その結果、変形例3においても、ウォームギヤ51とウォームホイール部60の歯形部61とが安定して接続される。また、本体部63が樹脂材料によって構成されるため軽量化が図られる。
なお、変形例3において、面部71の摩擦力は、本体部63が熱膨張により変形しようとするときのみならず、収縮により変形しようとするときにも本体部63の変形を抑制するように作用する。
【0061】
さらに、外側突出部72および内側突出部73は、それぞれ歯形部61および本体部63に入り込む。その結果、外側突出部72および内側突出部73は、歯形部61および本体部63に対して回転止めとして作用する。
【0062】
また、
図7(C)に示すように、変形例3において、外側突出部72および内側突出部73に代えて、面部71の外周部にて半径方向内側に向けて窪む外側凹部74と、面部71の内周部にて半径方向外側に向けて窪む内側凹部75とを設けても良い。
外側凹部74および内側凹部75には、それぞれ歯形部61および本体部63の一部が入り込む。その結果、外側突出部72および内側突出部73は、歯形部61および本体部63に対して回転止めとして作用する。
【0063】
さらに、
図7(D)に示すように、変形例3において、面部71に周方向に沿って形成される複数の溝76を設けても良い。なお、溝76は、面部71の軸方向における一方側の面と他方側の面の両方に設けられている。そして、溝76によって、本体部63が熱膨張や熱収縮によって変形しようとする際に、半径方向における抵抗を大きくする。このようにして、第4抑制部70は、本体部63の変形を抑制するようにしても良い。
【0064】
また、変形例3において、面部71に半径方向に沿って形成される複数の第2溝77を設けても良い。なお、第2溝77は、面部71の軸方向における一方側の面と他方側の面の両方に設けられている。そして、第2溝77は、歯形部61および本体部63に対して回転止めとして作用する。
【0065】
なお、変形例3においては、溝76および第2溝77に代えて、表面粗さを例えばカラー部65よりも粗くしたり、複数の凹凸によって構成されるディンプルや、軸方向に沿って切り立つ壁状の構造部を形成したりしても良い。
また、変形例3において、
図7(D)に示す溝76や第2溝77の構成は、
図7(B)や
図7(C)に適用しても良い。
【0066】
<変形例4>
図8は、変形例4のウォームホイール部60の説明図である。なお、
図8において、本体部63のスポーク部634の図示を省略している。
変形例4のウォームホイール部60は、接続部80を有している点で、上述した実施形態とは異なる。
【0067】
接続部80は、半径方向に沿って延びる板状の部材である。また、変形例4において、接続部80は、複数(この例では3枚)設けられる。そして、各々の接続部80は、半径方向内側にてカラー部65に接続する。さらに、各々の接続部80は、半径方向外側にて抑制部67に接続する。すなわち、接続部80は、カラー部65および抑制部67を直接的に接続する。
なお、本体部63は、接続部80を内在するように形成される。
【0068】
以上のように構成される変形例4において、本体部63が変形しようとしても、抑制部67、接続部80およびカラー部65によって、本体部63の変形が抑制される。その結果、変形例4においても、ウォームギヤ51とウォームホイール部60の歯形部61とが安定して接続される。また、本体部63が樹脂材料によって構成されるため軽量化が図られる。
【0069】
なお、例えば変形例4のようにカラー部65を用いる場合を除いて、本実施形態では、カラー部65は必須の構成ではない。
【0070】
さらに、本実施形態のステアリング装置1は、ドライバの操舵力が入力されるピニオン軸22に対して、アシスト部40が操舵補助力の付与を行うものである。しかしながら、本実施形態のアシスト部40は、このタイプに適用されることに限定されない。本実施形態のアシスト部40の構成は、例えばラック軸21に対して複数のピニオン軸が接続し、ドライバの操舵力が直接入力されない他方のピニオン軸に補助力を付与する態様に適用しても良い。
【0071】
同様に、本実施形態のアシスト部40は、ピニオン軸22に操舵補助力を付与する態様に適用することに限定されない。本実施形態のアシスト部40は、例えば、ステアリングホールに接続するステアリングコラムに対して操舵補助力を付与する態様に適用しても良い。
上記の目的を達成する本発明は、動力部の駆動により回転するウォームギヤと、ウォームギヤに接続し、ウォームギヤの動作に伴って回転するウォームホイールと、ウォームホイールの同軸上に設けられ、ウォームホイールの動作に伴って回転する回転軸と、回転軸の回転に応じて被操舵部を移動させる移動部と、を備え、ウォームホイールは、
また、上記の目的を達成する本発明は、樹脂材料によって形成され回転する本体部と、樹脂材料によって形成されるとともに、本体部の外周に設けられてウォームギヤに接続する歯部を有する歯形部と、本体部の外側であって歯部よりも内側に設けられる金属部材と、を有