【解決手段】昇降可能な荷台および駆動輪を備えた車体と、駆動輪を駆動する走行モータと、充放電可能な蓄電装置と、荷台を昇降する昇降モータとしてのポンプモータを有する荷台昇降装置と、走行モータおよびポンプモータを制御する制御装置と、を備えた無人搬送車において、制御装置は、荷台に搭載される荷の重量と予め設定された荷搭載状態での減速時における目標減速度に基づいて、荷搭載状態での減速時に走行モータに生じる回生電力を算出し、荷の重量に基づき荷を搭載した荷台の上昇に必要な荷台上昇電力を算出し、蓄電装置に蓄電されない余剰回生電力と荷台上昇電力に基づき荷台の上昇量を算出し、余剰回生電力によりポンプモータを制御して荷台を上昇させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された産業車両の制御装置では、走行用モータの回生制動時において蓄電装置が満充電状態であり、且つ、荷役装置による荷役作業が行われていない場合においては、回生電力を抵抗流路で発生する摩擦熱として消費させている。よって、回生電力を有効活用されず、エネルギーロスが発生する場合が存在する問題がある。一方、無人搬送車において荷がコンテナのような重量物であると、重量に応じた回生電力を蓄電させるための大きな蓄電装置が必要となり、無人搬送車がさらに大型化する。
【0007】
本発明は、荷搭載状態において生じる制動時の回生電力が蓄電装置に蓄電できない場合であっても、回生電力を有効に活用することが可能な無人搬送車の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、昇降可能な荷台および駆動輪を備えた車体と、前記駆動輪を駆動する走行モータと、充放電可能な蓄電装置と、前記荷台を昇降するための昇降モータを有する荷台昇降装置と、前記走行モータおよび前記昇降モータを制御する制御装置と、を備えた無人搬送車において、前記制御装置は、前記荷台に搭載される荷の重量と減速する状況に基づいて、荷搭載状態での減速時に前記走行モータに生じる回生電力を算出し、荷の重量に基づき荷を搭載した前記荷台の上昇に必要な荷台上昇電力を算出し、前記回生電力と前記荷台上昇電力に基づき前記荷台の上昇量を算出し、前記回生電力により前記昇降モータを制御して前記荷台を上昇させることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、制動時の走行モータの回生電力を荷台昇降装置を用いて荷台を上昇させることに使用し、電気エネルギーを位置エネルギーに変換して蓄積することが可能である。よって、荷搭載状態において生じる制動時の回生電力が蓄電装置に蓄電できない場合であっても、回生電力を有効に活用することが可能である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の無人搬送車において、前記制御装置は、荷搭載状態にて加速する時に、前記荷台の上昇量から下降により前記昇降モータに生じる回生電力を算出し、前記昇降モータに生じる回生電力を前記蓄電装置へ蓄電可能か判断し、蓄電可能と判断したときには前記昇降モータに生じる回生電力を前記蓄電装置へ蓄電させ、蓄電可能ではないと判断したときには前記昇降モータに生じる回生電力を前記走行モータへ供給することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、荷台の上昇により位置エネルギーとして蓄積された電力を、荷台の下降により昇降モータの回生電力として電気エネルギーに変換し、荷台の下降により生じた回生電力を蓄電装置へ蓄電したり、走行モータへ供給することが可能である。よって、荷台の下降により生じた回生電力を有効に活用することが可能である。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の無人搬送車において、前記荷台昇降装置は、前記昇降モータにより駆動される油圧ポンプと、前記荷台の昇降を行う油圧シリンダと、前記油圧ポンプおよび前記油圧シリンダに連結され、作動油を通す油圧配管と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、昇降モータを駆動することにより油圧ポンプを回転させ加圧された作動油を油圧配管を介して油圧シリンダに供給することが可能であり、荷台の昇降を行うことが可能である。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無人搬送車において、前記荷台昇降装置は、前記荷の重量を検知する荷重センサを備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、荷重センサにより検出された荷の重量を制御装置に入力することにより、回生電力及び荷台の上昇量を的確に把握することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、荷搭載状態において生じる制動時の回生電力が蓄電装置に蓄電できない場合であっても、回生電力を有効に活用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。無人搬送車は、例えば、港湾施設としてのコンテナターミナルにおいてコンテナ運搬専用の大型の無人搬送車に適用するものである。コンテナターミナルにおいては、無人搬送車は予め定められた走行経路を走行し、コンテナの積み降ろしを行う。
【0019】
図1に示すように、無人搬送車10の車体11は、複数の駆動輪12と、荷としての2個のコンテナCを搭載可能な荷台13と、を備えている。
無人搬送車10は、駆動輪12を駆動する走行モータ14と、充放電可能な蓄電装置15と、荷台13を昇降する荷台昇降装置16(
図2に表示)と、無人搬送車10の各部を制御する制御装置18と、を備えている。
図1に示すように、駆動輪12は、駆動輪12毎に設けた走行モータ14の駆動により駆動される。走行モータ14は無人搬送車10の走行に用いられるものであり、減速機19(
図2に表示)を介して駆動輪12に接続されている。走行モータ14は、電動発電機であり、駆動輪12を駆動する電動機としての機能と、無人搬送車10の制動時に回生電力を発生する発電機としての機能を併せ持っている。走行モータ14は、三相交流同期モータにより構成されている。
【0020】
図2に示すように、走行モータ14は、走行用インバータ20を介して蓄電装置15に接続されている。蓄電装置15は、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池および鉛蓄電池等の充放電可能な二次電池である。蓄電装置15は二次電池のほかキャパシタでもよい。蓄電装置15は、一定の蓄電容量を有し、図示しない外部電源により充電可能となっている。また、蓄電装置15は、走行モータ14に対して放電可能であるほか、満充電状態とならない範囲では走行モータ14に発生する制動時の回生電力や、後述する荷台昇降装置16のポンプモータ17に発生する回生電力を蓄電可能である。
【0021】
走行用インバータ20は、直流電力が入力された場合には交流電力に変換して出力し、交流電力が入力された場合には直流電力に変換して出力する。走行モータ14へ電力を供給する場合、走行用インバータ20は、蓄電装置15に蓄電された直流電力を交流電力に変換して走行モータ14に交流電力を供給する。一方、走行モータ14にて生じた回生電力を蓄電装置15へ蓄電する場合、走行用インバータ20は、走行モータ14にて生じた交流の回生電力を直流に変換して蓄電装置15に蓄電する。
【0022】
荷台昇降装置16は、昇降モータとしてのポンプモータ17と、ポンプモータ17により駆動される油圧ポンプ22と、油圧ポンプ22の作動油をコントロールするコントロールバルブ31と、油圧ポンプ22から作動油の供給を受けて作動する油圧シリンダ23と、作動油が貯留されるオイルタンク24と、を有している。油圧ポンプ22、油圧シリンダ23およびオイルタンク24は油圧配管21により接続されている。荷台昇降装置16は、本来、コンテナCの積み込み時の衝撃を緩和するための装置であるが、本実施形態では、コンテナCを搭載した状態(荷搭載状態)の走行中の無人搬送車10が減速する際に荷台13を上昇させ、加速する際に荷台13を下降させる。因みに、コンテナCの荷台13への積み込み時の衝撃は、コンテナCが荷台13に積み込まれたタイミングで荷台13を下降することにより緩和される。
【0023】
ポンプモータ17は、電動発電機であり、油圧ポンプ22を駆動して荷台13を上昇させる電動機としての機能と、荷台13の下降時に回生電力を発生する発電機としての機能を併せ持っている。ポンプモータ17は、三相交流同期モータにより構成されている。ポンプモータ17は、荷台昇降用インバータ30を介して蓄電装置15に接続されている。
【0024】
荷台昇降用インバータ30は、直流電力が入力された場合には交流電力に変換して出力し、交流電力が入力された場合には直流電力に変換して出力する。ポンプモータ17へ電力を供給する場合、荷台昇降用インバータ30は、蓄電装置15に蓄電された直流電力を交流電力に変換してポンプモータ17に交流電力を供給する。一方、ポンプモータ17にて生じた回生電力を蓄電装置15へ蓄電する場合、荷台昇降用インバータ30は、ポンプモータ17にて生じた交流の回生電力を直流に変換して蓄電装置15に蓄電する。
【0025】
油圧ポンプ22は、ポンプモータ17により駆動されるギヤポンプである。荷台13を上昇させるとき、油圧ポンプ22は、ポンプモータ17の駆動により作動油をコントロールバルブ31を介して油圧シリンダ23へ圧送する。荷台13が下降するときは、油圧ポンプ22は油圧シリンダ23からコントロールバルブ31を介して戻る作動油によりポンプモータ17を回転させ回生する。油圧シリンダ23は、シリンダ内を摺動可能なピストン25と、ピストン25に連結されたロッド26とを備えている。ロッド26におけるピストン25と反対側の端部には荷台13が連結されている。油圧シリンダ23は、ピストン25により上室27と下室28に分離され、上室27と下室28はそれぞれ油圧配管21を介して油圧ポンプ22に接続されている。油圧シリンダ23は、荷台13の4隅等に複数設けられている。
【0026】
オイルタンク24は作動油を貯留するタンクである。オイルタンク24の作動油は、油圧ポンプ22により汲み上げられる。油圧シリンダ23から油圧ポンプ22に戻る作動油はオイルタンク24に貯留される。
【0027】
荷台昇降装置16には、荷重センサ29が設けられている。荷重センサ29は作動油の油圧を測定することにより、荷台13に搭載されたコンテナCの重量を検知可能となっている。
【0028】
制御装置18は、無人搬送車10の各部を制御する車載コントローラである。制御装置18は、CPUやメモリ等を有している。制御装置18は、走行モータ14、走行用インバータ20、ポンプモータ17、荷台昇降用インバータ30と接続されている。制御装置18は、走行モータ14、走行用インバータ20、ポンプモータ17、荷台昇降用インバータ30の作動を制御する。また、制御装置18は、荷重センサ29及び蓄電装置15と接続されている。制御装置18は、荷重センサ29から検出信号の伝達を受けて荷台13に搭載されたコンテナCの重量を取得する。また、制御装置18は蓄電装置15から検出信号を受けて蓄電装置15の充電率を取得する。
【0029】
次に、制御装置18による制御フローについて
図3及び
図4に示すフローチャートに基づき説明する。制御装置18は、
図3に示すように、無人搬送車10が減速する際に荷台13を上昇させて、減速時に走行モータ14に生じる回生電力のうち蓄電装置15に蓄電できない余剰の電力(余剰回生電力)を位置エネルギーに変換する一連の制御を行う。また、制御装置18は、
図4に示すように、荷台13を下降させ、コンテナCの位置エネルギーをポンプモータ17の回生電力として電気エネルギーに変換し、この回生電力を蓄電装置15へ蓄電したり、走行モータ14へ供給する一連の制御を行う。
【0030】
本実施形態では、無人搬送車10の走行経路が予め設定されており、無人搬送車10が一定の車速で走行する区間、減速が必要な区間、加速が必要な区間が定まっている。無人搬送車10が一定の車速で走行する定速区間は、例えば、直進走行の区間である。減速が必要な減速区間は、例えば、カーブや交差点の手前の区間であり、加速が必要な加速区間はカーブや交差点を越えた区間である。
【0031】
まず、制御装置18が無人搬送車10の減速の際にコンテナCとともに荷台13を上昇させる制御について説明する。
図3に示すように、制御フローがスタートし、ステップ101(以降S101のように記載する)において、荷重センサ29によって荷台13上のコンテナCの重量が検知される。検知された重量は、制御装置18に検出信号として入力される。なお、制御装置18には、減速時の目標減速度が記憶されている。目標減速度は、予め設定された減速度であり、走行経路において予め把握されている減速区間において無人搬送車10の適切な減速を図ることができる減速度である。減速区間の条件に応じた目標減速度が減速区間毎に設定されている。
【0032】
次にS102において、制御装置18では、検知されたコンテナCの重量と目標減速度に基づき減速区間において走行モータ14に発生する回生電力を予め算出する。なお、走行モータ14の制動時の回生電力は、コンテナCの重量と無人搬送車10の重量とを加算した総重量と減速度に基づいて算出することができる。そして、総重量が大きくなるほど回生電力は大きくなり、また、減速度が大きくなるほど回生電力は大きくなる。
【0033】
次にS103において、制御装置18は、S102において求められた回生電力と、蓄電装置15の充電率とに基づき余剰回生電力を算出する。充電率とは、蓄電装置15の充電状態を示すものであり、例えば、充電率が高いほど蓄電装置15の充電可能な電力(充電可能電力とする)は小さくなり、充電率が低いほど蓄電装置15の充電可能電力は大きくなる。また、余剰回生電力は、回生電力のうち蓄電装置15に蓄電できない余剰の電力を指す。なお、余剰回生電力は回生電力より充電可能電力を減算することにより求められる(余剰回生電力=回生電力−充電可能電力)。
【0034】
次にS104において、制御装置18は、S103において求められた余剰回生電力によりコンテナCを載置した荷台13を上昇可能な荷台上昇量を算出する。なお、荷台上昇量とは、荷台13が通常位置よりどれだけ上昇するかの上昇距離を示す。
【0035】
次にS105において、制御装置18は、走行モータ14を制動するよう制御し、予め定められた減速度(目標減速度)での減速走行が開始される。
次にS106において、制動時に走行モータ14に生じる回生電力の一部は、蓄電装置15に蓄電される。すなわち、制御装置18は、回生電力のうち充電可能電力に相当する電力を蓄電装置15に蓄電する。
【0036】
次にS107において、制御装置18は、余剰回生電力を荷台昇降用インバータ30を介してポンプモータ17に供給する。制御装置18は、ポンプモータ17に供給される余剰回生電力でポンプモータ17を駆動し、荷台13を所定の上昇量(S104において求められた荷台上昇量)まで上昇させる。なお、走行モータ14の制動による減速走行と、荷台13の上昇とは同時に行われる。
次にS108において、制御装置18は、走行モータ14の制動による減速走行を終了させる。以上で、一連の制御フローがエンドとなる。
そして、無人搬送車10は、荷台13を上昇させた状態で走行を行う。
【0037】
次に、制御装置18が荷台13を下降させる際の制御について説明する。
図4に示すように、制御フローがスタートし、S201において、荷重センサ29でコンテナCの重量が検知される。検知された重量は、制御装置18に検出信号として入力される。
【0038】
次にS202において、制御装置18では、検知されたコンテナCの重量と目標加速度に基づき加速区間において走行モータ14で消費される消費電力を予め算出する。なお、走行モータ14の加速時の消費電力は、コンテナCの重量と無人搬送車10の重量とを加算した総重量と加速度に基づき算出される。すなわち、総重量が大きくなるほど消費電力は大きくなり、また、加速度が大きくなるほど消費電力は大きくなる。
【0039】
次にS203において、制御装置18は、蓄電装置15の充電率に基づく充電可能電力を算出する。例えば、充電率が高いほど蓄電装置15が受け入れられる充電可能電力は小さくなり、充電率が低いほど充電可能電力は大きくなる。
【0040】
次にS204において、制御装置18は、荷台下降によるポンプモータ17による回生電力を算出する。なお、荷台13の下降時のポンプモータ17による回生電力は、コンテナCの重量と荷台13の上昇量に比例している。すなわち、重量が大きくなるほど回生電力は大きくなり、また、上昇量が大きくなるほど回生電力は大きくなる。
【0041】
次にS205において、制御装置18は、荷台13を下降させるよう制御し、ポンプモータ17の駆動による電力回生が開始される。
次にS206において、ポンプモータ17に生じる回生電力を蓄電装置15へ蓄電可能かの判断が行われる。すなわち、S203において算出された充電可能電力とS204において算出されたポンプモータ17による回生電力の大きさの比較が行われる。
【0042】
次にS206において、ポンプモータ17による回生電力が充電可能電力より大きく(充電可能電力<ポンプモータ17による回生電力)、回生電力の全部を蓄電装置15へ蓄電可能ではないと判断された場合には、S207に進む。S207において、ポンプモータ17による回生電力の一部は、蓄電装置15に蓄電される。
【0043】
次にS208において、制御装置18は、走行モータ14による目標加速度での加速走行時に、ポンプモータ17による回生電力のうち蓄電装置15に蓄電されない残余の回生電力を走行モータ14に供給する。
次にS209において、制御装置18は、残余の回生電力を用いた走行モータ14による目標加速度での加速走行を開始する。なお、残余の回生電力を走行モータ14に供給することにより、S202において算出された加速区間における走行モータ14の加速時の消費電力の少なくとも一部をまかなうことが可能である。なお、荷台13の下降と、走行モータ14の加速走行とは同時に行われる。
【0044】
一方、S206において、ポンプモータ17による回生電力が充電可能電力より小さく(充電可能電力≧ポンプモータ17による回生電力)、回生電力の全部を蓄電装置15へ蓄電可能と判断された場合には、S210に進む。S210において、ポンプモータ17による回生電力は、蓄電装置15に蓄電される。以上で、一連の制御フローがエンドとなる。
【0045】
次に、無人搬送車10の動作説明について、
図5(a)、
図5(b)に示すタイムチャートに基づき説明する。
無人搬送車10の走行経路には、直進走行の区間とカーブ区間が設けられている。無人搬送車10は、直進走行の区間では一定の車速で走行(定速走行)し、カーブ区間の手前で減速しつつ走行(減速走行)し、カーブ区間を過ぎると一定速度に戻るまで加速しつつ走行(加速走行)する。
【0046】
図5(a)に示すように、横軸を時間とし、縦軸を無人搬送車10の走行速度とする。時間t0から時間t1までの区間は、無人搬送車10が一定速度Fで走行する直進走行の区間である定速走行区間を示し、時間t1〜t2までの区間は、無人搬送車10が目標減速度αで走行するカーブ区間である減速走行区間を示している。そして、時間t2〜t3までの区間は、無人搬送車10が目標加速度βで走行するカーブ区間を過ぎた加速走行区間を示し、時間t3以降の区間は、無人搬送車10が一定速度Fで走行する直進走行の定速走行区間を示している。なお、無人搬送車10は、カーブ区間の手前で減速を開始し、カーブ区間を過ぎるまで目標減速度αで減速走行する。そして、カーブ区間を過ぎると目標加速度βで加速走行する。
【0047】
図5(b)に示すように、横軸を時間とし、縦軸を荷台13の高さとする。時間t0から時間t1までの定速走行区間では、無人搬送車10の荷台13は、通常位置である高さH1の状態(荷台通常位置)で走行している。時間t1〜t2の減速走行区間では、無人搬送車10の荷台13は、上昇しつつ走行し、時間t2で高さH1より高い高さH2となる。高さH2と高さH1の差分をΔH(H2−H1=ΔH)とすると、ΔHは荷台13の上昇量に相当する。すなわち、
図5(a)に示す時間t1〜t2の減速走行区間における走行モータ14の減速に伴う余剰回生電力によってポンプモータ17が駆動され荷台13が上昇する。時間t1〜t2の減速走行区間では、無人搬送車10は目標減速度αで減速走行すると共に、荷台13は高さH1より高さH2まで上昇する。この上昇量ΔHは、余剰回生電力と荷台13の重量によって定まる。つまり、制動時の過剰な回生電力(余剰回生電力)を荷台昇降装置16を用いて荷台13を上昇させることにより消費し、位置エネルギーに変換して蓄積する。
【0048】
なお、荷台13の上昇時の荷台昇降装置16の作動について説明する。
図2に示すように、ポンプモータ17に供給される余剰回生電力によりポンプモータ17が駆動され、油圧ポンプ22が駆動されて昇圧された作動油を油圧配管21を介して油圧シリンダ23の下室28に供給する。それに伴い、ピストン25が上方に押圧され、コンテナCを載置した荷台13が高さH1より高さH2まで上昇する。このことにより、余剰回生電力をコンテナCを上昇させることにより消費して、電気エネルギーを位置エネルギーに変換して蓄積することが可能となる。
【0049】
時間t2〜t3の加速走行区間では、無人搬送車10の荷台13は、高さH2より下降しつつ走行し、時間t3で高さH1となる。すなわち、
図5(a)に示す時間t2〜t3の加速走行区間における荷台13の下降に伴うポンプモータ17の回生電力によって走行モータ14が駆動されることによる。時間t2〜t3の加速走行区間では、荷台13は高さH2より高さH1まで下降すると共に、無人搬送車10は目標加速度βで加速走行する。つまり、コンテナCおよび荷台13が有する位置エネルギーを、荷台13の下降により回生電力として電気エネルギーに変換し、荷台13の下降より生じた回生電力を用いて走行モータ14を駆動させ目標加速度βで加速走行させる。
時間t3以降の区間では、無人搬送車10の荷台13は、高さH1の通常位置に戻った状態で走行する。
【0050】
なお、荷台13の下降時の荷台昇降装置16の作動について説明する。
図2に示すように、荷台13にコンテナCを載置した状態で荷台13を下降させる際には、荷台13及びコンテナCの重量によって油圧シリンダ23の下室28から作動油が流出する。このとき、流出した作動油により油圧ポンプ22が駆動されて、ポンプモータ17による回生電力が生じる。このことにより、下降時の作動油の運動エネルギーをポンプモータ17にて回生電力として電気エネルギーに変換し、荷台13の下降より生じた回生電力を用いて走行モータ14を駆動することが可能である。
【0051】
本発明の実施形態に係る無人搬送車10によれば以下の効果を奏する。
(1)制御装置18は、蓄電装置15に蓄電されない余剰回生電力に基づく荷台13の上昇量ΔHを算出しポンプモータ17を駆動し荷台13を上昇させる。走行モータ14の制動時の過剰な回生電力(余剰回生電力)を荷台昇降装置16を用いて荷台13を上昇させることにより使用し、電気エネルギーを位置エネルギーに変換して蓄積することが可能である。よって、荷搭載状態において生じる制動時の回生電力が蓄電装置15に蓄電できない場合であっても、回生電力を有効に活用することが可能である。
【0052】
(2)制御装置18は、荷搭載状態にて加速する時に、荷台13の上昇により位置エネルギーとして蓄積された電力を、荷台13の下降により生じる回生電力として電気エネルギーに変換する。そして、荷台13の下降により生じた回生電力を蓄電装置15へ蓄電したり、走行モータ14へ供給して加速走行させることが可能である。よって、荷台13の下降により生じた回生電力を有効に活用することが可能である。
【0053】
(3)荷台昇降装置16により、ポンプモータ17を駆動することにより油圧ポンプ22を回転させ加圧された作動油を油圧配管21を介して油圧シリンダ23に供給することが可能であり、荷台13の昇降を行うことが可能である。
【0054】
(4)無人搬送車10は、コンテナCの重量を検知する荷重センサ29を備えているので、荷重センサ29により検出されたコンテナCの重量を制御装置18に入力することにより、制動時の回生電力及び荷台13の上昇量を的確に把握することが可能である。
【0055】
(5)港湾用のコンテナターミナルにおいて、無人搬送車10は重量の大きなコンテナCを載置して走行する。重量が大きいほど制動時の回生電力も大きくなり、回生電力を蓄電するための巨大な蓄電装置が必要となる。しかし、本実施形態は、回生電力を荷台13を上昇させることにより消費し位置エネルギーに変換して蓄積することが可能なので、重量に影響されないコンパクトな装置を提供可能である。また、無人搬送車10の稼働時間を延ばすことが可能である。
【0056】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ S201にてコンテナ重量を検出したが、S101で検出したコンテナ重量の検出データを用いてもよい。また、コンテナ重量のデータが運行制御コントローラ等の上位のコントローラに登録されている場合には、そのデータを受信してもよい。
○ 上記の実施形態では、荷台昇降装置16で油圧シリンダ23を使用するとして説明したが、油圧シリンダ23に代えて電動シリンダを使用してもよい。電動シリンダとは、電動モータと電動モータにより駆動されるボールねじとを備え、電動モータでボールねじを回転させることにより、直線駆動を可能としたものである。したがって、電動シリンダであっても電気エネルギーの位置エネルギーへの変換は可能である。また、油圧シリンダや電動シリンダによる昇降だけでなく、パンタグラフのリンク機構を用いた荷台昇降装置であってもよい。
○ 上記の実施形態では、減速走行時の回生電力を減速度に基づいて算出したが、あらかじめ定められている減速前の速度と減速後の速度から回生電力を算出してもよい。なお、減速度または減速前後の速度が減速する状況に相当する。
○ 上記の実施形態では、荷としてコンテナCを例示したが、コンテナの重量に相当するような十分な重量を有する荷であれば、コンテナ以外の荷であってもよい。
○ 上記の実施形態において、無人搬送車はエンジンによって発電機駆動して、走行等の電力を供給するハイブリッドタイプであってもよい。
○ 上記の実施形態では、無人搬送車10はカーブ区間では減速走行すると共に、荷台13は上昇量ΔHだけ上昇するとして説明したが、カーブ区間で減速走行する前に、荷台をΔHだけ予め上昇させておいてもよい。この場合には、荷台を上昇させてからカーブ区間で減速走行すればよいので、より安定した走行が可能となる。
○ 上記の実施形態では、荷台を上昇させた後、荷台を下降させて下降時の昇降モータによる回生電力に基づいて走行モータを目標加速度で走行させるとしたが、昇降モータによる回生電力を通常走行時の加速に使用してもよい。
○ 上記の実施形態では、無人搬送車は走行経路のカーブ区間で減速走行するとして説明したが、カーブ区間以外でも、例えば、荷物の積み降ろし場所、交差点付近に適用することや、登り坂と下り坂による加速、減速でも適用可能である。
○ 上記の実施形態では、荷重センサとしてシリンダの油圧を検出するセンサを用いる例を説明したが、荷重センサは荷台に設けたロードセルとしてもよく、ロードセルにより荷の重量を検知してもよい。また、荷の重量が予め設定されている場合は、荷重センサを設ける必要が無い。
○ 上記の実施形態では、走行モータによる回生電力を蓄電装置に蓄電させ残りの余剰回生電力を荷台の昇降に使用するとして説明したが、走行モータの回生電力を全て荷台の昇降に使うようにしてもよい。