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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203470(P2018-203470A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20181130BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20181130BHJP
   B65H 43/04 20060101ALI20181130BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   B65H7/02
   B65H7/12
   B65H43/04
   B65H29/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-111547(P2017-111547)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川岡 良
【テーマコード(参考)】
3F048
3F053
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA11
3F048BA13
3F048BB02
3F048BB05
3F048CA02
3F048DA06
3F048DC17
3F048EA02
3F048EB22
3F053HA03
3F053HA08
3F053HB02
3F053HB24
3F053LA01
3F053LB03
(57)【要約】
【課題】超音波センサーを用いてカール検知を行う。
【解決手段】シート搬送装置は、シートを搬送する搬送部と、超音波センサーと、超音波センサーの出力信号を検知する検知処理を行う制御部と、記憶部と、を備え、記憶部は、カールの大きさが許容範囲内である基準シートが検知位置を通過するときに制御部が検知処理を行うことにより検知した超音波センサーの出力信号を基準信号として記憶し、制御部は、対象シートが検知位置を通過するときに検知処理を行い、当該行った検知処理により検知した超音波センサーの出力信号を対象信号とし、対象信号と基準信号とに基づき、対象シートにカールが発生しているか否かを検知する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの搬送を伴うジョブの実行時にシートを搬送する搬送部と、
シートの搬送経路を挟むように配置された発信部および受信部を含み、前記発信部は超音波を発信するとともに、前記受信部は前記発信部から発信された超音波を受信し、前記受信部が受信した超音波の受信量に応じた信号を出力する超音波センサーと、
前記超音波センサーの出力信号を検知する検知処理を行う制御部と、
記憶部と、を備え、
前記記憶部は、カールの大きさが許容範囲内であるシートである基準シートが前記超音波センサーの検知位置を通過するときに前記制御部が前記検知処理を行うことにより検知した前記超音波センサーの出力信号を基準信号として予め記憶し、
前記制御部は、前記ジョブの実行中、前記検知位置に向けて搬送されているシートである対象シートが前記検知位置を通過するときに前記検知処理を行い、当該行った前記検知処理により検知した前記超音波センサーの出力信号を対象信号とし、前記対象信号と前記基準信号とに基づき、前記対象シートに前記許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを検知するカール検知を行うことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記対象シートのうちシート搬送方向の端部側の所定部分が前記検知位置を通過するときに前記検知処理を行い、当該行った前記検知処理により検知した前記超音波センサーの出力信号を前記対象信号とすることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記対象信号の値と前記基準信号の値との差の絶対値が予め定められたカール判定用閾値よりも大きいとき、前記対象シートに前記許容範囲を超えるカールが発生していると判断し、前記絶対値が大きいほど、前記対象シートのカールの大きさを示すカールレベルが大きいと判断することを特徴とする請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記対象シートに画像を印刷する印刷部を備え、
前記超音波センサーの設置数は1または複数であり、
前記超音波センサーの少なくとも1つは、前記印刷部の印刷位置よりもシート搬送方向上流側の位置に設置され、
前記制御部は、前記対象シートの先端が前記印刷位置に到達する前に前記対象シートの前記カールレベルを判断し、前記カールレベルが予め定められた閾値レベルよりも大きいとき、前記搬送部による前記対象シートの搬送を停止させることを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記対象シートに圧力を加えてカールを矯正するカール矯正部を備え、
前記超音波センサーの設置数は1または複数であり、
前記超音波センサーの少なくとも1つは、前記カール矯正部が前記対象シートに圧力を加える矯正位置よりもシート搬送方向上流側の位置に設置され、
前記制御部は、前記対象シートの先端が前記矯正位置に到達する前に前記対象シートの前記カールレベルを判断し、前記カールレベルが大きいほど、前記対象シートに加わる圧力が大きくなるよう前記カール矯正部を制御することを特徴とする請求項3または4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記対象シートに圧力を加えてカールを矯正するカール矯正部を備え、
前記超音波センサーの設置数は1または複数であり、
前記超音波センサーの少なくとも1つは、前記カール矯正部が前記対象シートに圧力を加える矯正位置よりもシート搬送方向下流側の位置に設置され、
前記制御部は、前記矯正位置を通過した前記対象シートの前記カールレベルを判断し、前記カールレベルが予め定められた許容レベルよりも大きいとき、次回以降に前記矯正位置に搬送される前記対象シートに加わる圧力が今回の圧力よりも大きくなるよう前記カール矯正部を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記対象信号の値が予め定められた重送判定用閾値よりも小さいとき、複数枚のシートが重なって搬送される重送が発生していると判断し、前記搬送部による前記対象シートの搬送を停止させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記発信部および前記受信部は、前記発信部と前記受信部とを結ぶ軸線方向がシート搬送方向に対して傾斜するよう配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート搬送装置として、画像形成装置が知られている。シート搬送装置としての画像形成装置は、シートを搬送し、搬送中のシートに画像を印刷するジョブを実行する。
【0003】
ここで、従来、搬送中のシートにカールが発生しているか否かのカール検知を行うことが可能な画像形成装置(シート搬送装置)が知られている。このような画像形成装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。特許文献1では、シートの搬送をガイドするガイド板の上面および下面にそれぞれ圧力センサーを配し、当該圧力センサーにシートが接触したか否かに基づきカール検知が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置などのシート搬送装置には、複数枚のシートが重なって搬送される重送が発生しているか否かの重送検知を行うものがある。たとえば、重送検知では、超音波センサーが用いられる。
【0006】
重送検知に超音波センサーを用いる場合には、超音波センサーの発信部および受信部がシートの搬送経路を挟んで対向配置される。このように配置すると、超音波センサーの検知位置に複数枚のシートが重なって搬送された場合には、超音波センサーの検知位置に1枚だけシートが搬送された場合に比べて、超音波センサー(受信部)から出力される電圧値が小さくなる。これにより、容易に、超音波センサーの出力に基づき重送検知を行うことができる。したがって、重送検知には超音波センサーが用いられることが多い。
【0007】
ここで、特許文献1のようなカール検知を行う構成において、超音波センサーを用いた重送検知を行う場合には、カール検知用の圧力センサーと重送検知用の超音波センサーとが必要となる。すなわち、圧力センサーと超音波センサーとをシートの搬送経路上に設置しなければならない。したがって、シート搬送装置の構成が複雑化するという不都合が生じる。また、センサーの使用数が多くなるので、コストアップに繋がる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、超音波センサーを用いてカール検知を行うことが可能なシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のシート搬送装置は、シートの搬送を伴うジョブの実行時にシートを搬送する搬送部と、シートの搬送経路を挟むように配置された発信部および受信部を含み、発信部は超音波を発信するとともに、受信部は発信部から発信された超音波を受信し、受信部が受信した超音波の受信量に応じた信号を出力する超音波センサーと、超音波センサーの出力信号を検知する検知処理を行う制御部と、記憶部と、を備える。記憶部は、カールの大きさが許容範囲内であるシートである基準シートが超音波センサーの検知位置を通過するときに制御部が検知処理を行うことにより検知した超音波センサーの出力信号を基準信号として予め記憶する。制御部は、ジョブの実行中、超音波センサーの検知位置に向けて搬送されているシートである対象シートが超音波センサーの検知位置を通過するときに検知処理を行い、当該行った検知処理により検知した超音波センサーの出力信号を対象信号とし、対象信号と基準信号とに基づき、対象シートに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを検知するカール検知を行う。
【0010】
本発明の構成では、上記のように、制御部は、ジョブの実行中に超音波センサーの検知位置に向けて搬送されている対象シートが超音波センサーの検知位置を通過するときに検知処理を行う。このときの検知処理により制御部が検知した超音波センサーの出力信号は対象信号となる。ここで、記憶部には、基準信号が予め記憶される。基準信号は、基準シート(カールの大きさが許容範囲内であるシート)が超音波センサーの検知位置を通過するときに制御部が検知処理を行うことにより検知した超音波センサーの出力信号である。仮に、対象シートに許容範囲を超えるカールが発生している場合には、対象シートに対する超音波の入射角と基準シートに対する超音波の入射角とに差が生じる。このため、対象信号と基準信号とに差が生じる。これにより、超音波センサーを用いたカール検知(対象シートに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かの検知)が可能となる。
【0011】
また、超音波センサーを用いてカール検知を行うことができるので、重送検知に用いる超音波センサーをカール検知にも用いることができる。すなわち、カール検知と重送検知とを単一の超音波センサーで行うことができる。これにより、シート搬送装置の構成が複雑化するのを抑制することができるとともに、センサーの使用数が多くなるのを抑制することができる(コストアップを抑制することができる)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成では、超音波センサーを用いてカール検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による画像形成装置の全体構成を示す概略図
図2】本発明の一実施形態による画像形成装置のブロック図
図3】本発明の一実施形態による画像形成装置に設置される超音波センサーの構成を示す図
図4】本発明の一実施形態による画像形成装置に設置される超音波センサーの出力の推移を示す図(重送およびカールが発生していない場合の図)
図5】本発明の一実施形態による画像形成装置に設置される超音波センサーの出力の推移を示す図(重送が発生している場合の図)
図6】本発明の一実施形態による画像形成装置に設置される超音波センサーの検知位置に先端部がカールしたシートが搬送された場合の図
図7】本発明の一実施形態による画像形成装置に設置される超音波センサーの検知位置に後端部がカールしたシートが搬送された場合の図
図8】本発明の一実施形態による画像形成装置に設置される超音波センサーの出力の推移を示す図(カールが発生している場合の図)
図9】本発明の一実施形態による画像形成装置の制御部により行われるカール検知(重送検知)の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態によるシート搬送装置について、インクジェット方式の画像形成装置を例にとって説明する。
【0015】
<画像形成装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、シートSを搬送するための搬送路10を備える。図1では、シートSの搬送経路を破線で示し、シートSの搬送方向を矢印で示す。以下、シートSの搬送方向を「搬送方向」と略称する場合がある。
【0016】
搬送路10は、給紙位置P1から印刷位置P2を経由し排出位置P3に至る。なお、給紙位置P1には、印刷前のシートSを収容するシートカセットSCが設置される。排出位置P3には、印刷後のシートSを貯留する排出トレイETが設置される。
【0017】
また、画像形成装置100は、搬送部20および印刷部30を備える。搬送部20は、シートの搬送を伴うジョブである印刷ジョブの実行時に、印刷ジョブに用いるシートSを搬送路10に沿って搬送する。印刷部30は、印刷ジョブの実行時に、搬送路10に沿って搬送されているシートSに画像を印刷する。
【0018】
搬送部20は、複数の搬送ローラー対21を備える。複数の搬送ローラー対21は、それぞれ、シートSをニップするための搬送ニップを形成し、回転することにより、搬送ニップにあるシートSを搬送方向に搬送する。搬送部20により搬送されるシートSは、シートカセットSCから搬送路10に供給され、印刷後、排出トレイETに排出される。
【0019】
また、搬送部20は、ベルトユニット22を備える。ベルトユニット22は、印刷位置P2に設置され、印刷位置P2においてシートSを搬送する。印刷部30による画像の印刷は、ベルトユニット22により搬送されているシートSに対して行われる。
【0020】
ベルトユニット22は、搬送ベルト221、駆動ローラー222および従動ローラー223を備える。搬送ベルト221は、駆動ローラー222および従動ローラー223により張架される。搬送ベルト221は、駆動ローラー222が回転することによって駆動(周回)する。
【0021】
印刷ジョブの実行時にはベルトユニット22にシートSが供給され、搬送ベルト221の外周面上にシートSが載置される。このとき、搬送ベルト221は駆動している。これにより、搬送ベルト221上に載置されたシートSが搬送方向に搬送される。
【0022】
印刷部30は、ベルトユニット22の上方において搬送ベルト221の外周面と間隔を隔てて対向配置される。そして、印刷部30は、搬送ベルト221上のシートS(印刷位置P2を通過しているシートS)に画像を印刷する。
【0023】
印刷部30は、それぞれが異なる色のインクを収容するラインヘッド3C、3M、3Yおよび3Kを備える。ラインヘッド3C、3M、3Yおよび3Kは、この順番で搬送方向の上流側から下流側に向かって配置される。ラインヘッド3Cはシアンのインクを収容する。ラインヘッド3Mはマゼンタのインクを収容する。ラインヘッド3Yはイエローのインクを収容する。ラインヘッド3Kはブラックのインクを収容する。
【0024】
ラインヘッド3C、3M、3Yおよび3Kは、それぞれ、インクを吐出するためのノズル31(図2参照)を複数個ずつ有する。図示しないが、各ノズル31にはそれぞれ圧電素子が設けられており、ノズル31の圧電素子に駆動電圧を印加することにより、駆動電圧を印加した圧電素子に対応するノズル31が駆動する(ノズル31からインクが吐出される)。
【0025】
また、画像形成装置100は、カール矯正部40を備える。カール矯正部40は、印刷ジョブの実行時に、搬送路10に沿って搬送されているシートSのカールを矯正する。カール矯正部40は、印刷位置P2よりも搬送方向下流側の位置に設置される。なお、カール矯正部40は、たとえば、「デカーラー」などと称される。
【0026】
カール矯正部40は、矯正ローラー41、矯正ベルト42、駆動ローラー43および従動ローラー44を備える。矯正ローラー41は、矯正ベルト42との間でシートSをニップするための矯正ニップを形成する。以下、矯正ニップが形成される位置を矯正位置CPと称する。矯正ベルト42は、駆動ローラー43および従動ローラー44により張架される。矯正ベルト42は、駆動ローラー43が回転することによって駆動(周回)する。
【0027】
カール矯正部40は、印刷部30からシートSの供給を受ける。カール矯正部40に供給されたシートSは矯正位置CPにおいてニップされ、これにより、シートSに圧力が加えられる。このとき、シートSがカールしていれば、シートSのカールが矯正される。なお、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力(シートSに加わる圧力)は複数段階に変更可能である。特に限定されないが、矯正ローラー41を矯正ベルト42に対して接近する方向および離間する方向に移動可能にすることにより、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力を変更することができるようになる。
【0028】
また、画像形成装置100は、図2に示すように、画像形成装置100の各部を制御する制御部50を備える。制御部50は、CPU51を含む。CPU51は、制御用のプログラムおよびデータに基づき動作し、画像形成装置100の各部の制御に必要な処理を行う。
【0029】
制御部50は、複数の搬送ローラー対21を回転させるための搬送モーターM1に接続される。そして、制御部50は、搬送モーターM1の駆動を制御し、複数の搬送ローラー対21を適切に回転させる。なお、搬送モーターM1の設置数は特に限定されず、搬送ローラー対21の設置数に応じて変更可能である。
【0030】
また、制御部50は、ベルトユニット22の駆動ローラー222を回転させるためのベルトモーターM2に接続される。そして、制御部50は、ベルトモーターM2の駆動を制御し、搬送ベルト221を適切に周回させる。
【0031】
また、制御部50は、印刷部30のドライバー32に接続され、印刷部30の印刷動作を制御する。ドライバー32は、ノズル31からのインクの吐出を制御する回路であり、ラインヘッド3C、3M、3Yおよび3Kにそれぞれ1つずつ設けられる。そして、制御部50は、ラインヘッド3C、3M、3Yおよび3Kの各ドライバー31に動作指示を与える。
【0032】
また、制御部50は、カール矯正部40の駆動ローラー43を回転させるための矯正モーターM3に接続される。そして、制御部50は、矯正モーターM3の駆動を制御し、矯正ベルト42を適切に周回させる。さらに、制御部50は、カール矯正部40の矯正ローラー41を移動させるための圧力調整機構411に接続される。たとえば、圧力調整機構411は、モーターやカムなどを含む。制御部50は、圧力調整機構411の駆動を制御し、矯正ローラー41を矯正ベルト42に対して接近する方向および離間する方向に移動させる。すなわち、制御部50は、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力(シートSに加わる圧力)を調整する。
【0033】
また、画像形成装置100は、記憶部60を備える。記憶部60は、ROMなどの不揮発性メモリーおよびRAMなどの揮発性メモリーを含む。制御部50は、記憶部60に接続され、記憶部60からの情報の読み出しを行うとともに、記憶部60への情報の書き込みを行う。たとえば、記憶部60には、後述する基準信号が記憶される。
【0034】
また、画像形成装置100は、操作パネル70を備える。操作パネル70は、タッチパネルディスプレイを含む。そして、操作パネル70は、タッチパネルディスプレイに設定画面を表示し、印刷ジョブに関する各種設定をユーザーから受け付ける。制御部50は、操作パネル70に接続され、操作パネル70に対して行われた設定(操作)を検知する。たとえば、操作パネル70は、印刷ジョブに用いるシートSの種類を受け付ける。
【0035】
ここで、画像形成装置100は、発信部80aおよび受信部80bを含む超音波センサー80を備える。発信部80aは、超音波を発信し、受信部80bは、発信部80aが発信した超音波を受信する。そして、超音波センサー80は、発信部80aが発信し受信部80bが受信した超音波の受信レベル(受信量)に応じた受信レベル信号を出力する。なお、超音波センサー80は、受信部80bに接続された信号処理回路(増幅回路やサンプルホールド回路などからなる回路)を含み、当該信号処理回路により、受信部80bの出力電圧が処理され、受信レベル信号が生成される。
【0036】
超音波センサー80は、図3に示すように、シートSの搬送経路上の位置DPを検知位置とする。また、発信部80aおよび受信部80bは、発信部80aと受信部80bとを結ぶ軸線方向が搬送方向に対して傾斜するよう配置される。具体的に、発信部80aは、発信面が搬送方向上流側の斜め下方向に向けられる。受信部81bは、発信部80aの設置位置よりも搬送方向上流側に設置され、受信面が搬送方向下流側の斜め上方向に向けられる。図3では、発信部80aと受信部80bと結ぶ軸線に符号Lを付し、一点鎖線で示す。以下の説明で参照する図6および図7についても同様である。
【0037】
図2に戻り、超音波センサー80は、制御部50に接続され、制御部50により駆動が制御される。制御部50は、超音波センサー80を駆動させ、超音波センサー80から出力される受信レベル信号を検知する超音波検知処理を行う。そして、制御部50は、超音波検知処理を行うことにより、複数枚のシートSが重なって搬送される重送が発生しているか否かを検知する。また、制御部50は、超音波検知処理を行うことにより、シートSに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを検知するとともに、シートSのカールの大きさを検知する。詳細については後述する。
【0038】
超音波センサー80は、画像形成装置100に複数設けられる。たとえば、超音波センサー80の設置数は3つである。1つ目の超音波センサー80は、給紙位置P1と印刷位置P2との間の位置DP1を検知位置とする(図1参照)。2つ目の超音波センサー80は、印刷位置P2と矯正位置CPとの間の位置DP2を検知位置とする(図1参照)。3つ目の超音波センサー80は、矯正位置CPと排出位置P3との間の位置DP3を検知位置とする(図1参照)。なお、超音波センサー80の設置数は特に限定されず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0039】
また、画像形成装置100は、搬送センサー90を備える。搬送センサー90は、発光部および受光部を有する透過型の光センサーであり、シートSの搬送経路上の位置FP(図3参照)を検知位置とする。搬送センサー90は、検知位置FPにおけるシートSの有無に応じて出力値を変化させる。搬送センサー90は、制御部50に接続される。制御部50は、搬送センサー90の出力値に基づき、検知位置FPにおけるシートSの先端到達や後端通過を検知する。
【0040】
なお、搬送センサー90は複数設けられる。図3に示すように、少なくとも、超音波センサー80の設置位置よりも搬送方向上流側の位置に搬送センサー90が設けられる。言い換えると、超音波センサー80の検知位置DPよりも搬送方向上流側には、搬送センサー90の検知位置FPが存在する。
【0041】
<重送検知>
図3に示すように、シートSが検知位置DPに搬送されると、超音波センサー80の発信部80aと受信部80bとの間がシートSによって遮蔽される。このとき、超音波センサー80の検知位置DPに複数枚のシートSが重なって搬送された場合には、超音波センサー80の検知位置DPに搬送されたシートSが1枚だけの場合に比べて、発信部80aから発信された超音波の減衰が大きくなるので、受信部80bが受信する超音波の受信レベル(受信量)が小さくなる。したがって、超音波センサー80から出力される受信レベル信号が小さくなる。
【0042】
超音波センサー80の検知位置DPに搬送されたシートSが1枚だけの場合、超音波センサー80から出力される受信レベル信号は、図4に示すように推移する(この場合の受信レベル信号に符号Saを付す)。一方で、超音波センサー80の検知位置DPに複数枚のシートSが重なって搬送された場合、超音波センサー80から出力される受信レベル信号は、図5に示すように推移する(この場合の受信レベル信号に符号Sbを付す)。図4および図5において、時点T1は検知位置DPにおけるシートSの先端到達時点であり、時点T2は検知位置DPにおけるシートSの後端通過時点である。
【0043】
このように、検知位置DPに複数枚のシートSが重なって搬送された場合の超音波センサー80の受信レベル信号の値は、検知位置DPに搬送されたシートSが1枚だけの場合の超音波センサー80の受信レベル信号の値よりも小さくなる。これにより、超音波センサー80から出力される受信レベル信号に基づき、シートSの重送が発生しているか否かを判断することができる。
【0044】
制御部50に重送検知を行わせるため、重送判定用閾値が予め定められ、記憶部60に記憶される。重送判定用閾値は、検知位置DPに搬送されたシートSが1枚だけの場合の超音波センサー80の受信レベル信号の値よりも小さい値に設定される。
【0045】
制御部50は、印刷ジョブの実行中、超音波センサー80の受信レベル信号を検知する超音波検知処理の実行タイミングを計るため、搬送センサー90の出力値に基づき、超音波センサー80の検知位置DPに向けて現在搬送されているシートSである対象シートSの先端が検知位置FPに到達したか否かを判断する。
【0046】
そして、制御部50は、対象シートSの先端が搬送センサー90の検知位置FPに到達してから所定時間が経過したタイミングで超音波検知処理を行う。たとえば、対象シートSの搬送方向の中央部よりも搬送方向下流側の部分(搬送方向の先端側の部分)が超音波センサー80の検知位置DPに到達するタイミングで制御部50による超音波検知処理が行われるよう所定時間が設定される。
【0047】
制御部50は、このときに行った超音波検知処理により検知した超音波センサー80の受信レベル信号を対象信号とし、対象信号の値が重送判定用閾値よりも小さいか否かを判断する。その結果、対象信号の値が重送判定用閾値よりも小さいと判断すれば、制御部50は、シートSの重送が発生していると判断する。
【0048】
たとえば、制御部50は、シートSの重送が発生すると、搬送部20によるシートSの搬送を停止させる。すなわち、制御部50は、印刷ジョブを中断する。そして、制御部50は、シートSの重送が発生したことを報知するためのメッセージを操作パネル70に表示させる。
【0049】
<カール検知>
図6および図7に示すように、印刷ジョブの実行時に、搬送方向の先端部や後端部がカールしたシートSが搬送される場合がある。たとえば、印刷位置P2に向けて搬送されるシートSの先端部がカールしている場合(図6参照)には、シートSの先端部がラインヘッド3Cの手前で引っかかるなどして、ジャムの発生原因となる。したがって、シートSがカールしている場合には、所定のカール対策処理(カール対策処理については後述する)を行わなければならない。カール対策処理を行うべきか否かを判断するには、シートSにカールが発生しているか否かの検知や、シートSのカールの大きさの検知などが必要となる。
【0050】
シートSがカールしていない場合、図3に示すように、シートSの表面と軸線L(超音波センサー80の発信部80aと受信部80bとを結ぶ線)との間の角度はθ1となる。この場合、超音波センサー80から出力される受信レベル信号は、図4に示すように推移する。
【0051】
ここで、図6および図7に示すように、シートSの搬送方向の先端部および後端部が下向きにカールしている場合には、シートSの先端部の表面と軸線Lとの間の角度がθ2となり、角度θ1(図4参照)よりも大きくなる。また、シートSの後端部の表面と軸線Lとの間の角度がθ3となり、角度θ1(図4参照)よりも小さくなる。
【0052】
図6に示すように、シートSの先端部が下向きにカールしている場合には、シートSの先端部の表面に対する超音波の入射角(角度θ2)が大きくなり、シートSの先端部がカールしていない場合(図3参照)に比べて、シートSに入射した超音波の減衰が大きくなる。また、図7に示すように、シートSの後端部が下向きにカールしている場合には、シートSの後端部の表面に対する超音波の入射角(角度θ3)が小さくなり、シートSの後端部がカールしていない場合(図3参照)に比べて、シートSに入射した超音波の減衰が小さくなる。
【0053】
このため、シートSの搬送方向の先端部および後端部が下向きにカールしている場合、超音波センサー80から出力される受信レベル信号は、図8に示すように推移する(この場合の受信レベル信号に符号Scを付す)。図8において、時点T1は検知位置DPにおけるシートSの先端到達時点であり、時点T2は検知位置DPにおけるシートSの後端通過時点である。
【0054】
シートSの先端部に着目すると(図8の「先端期間」参照)、超音波センサー80の受信レベル信号の値は、シートSの先端部がカールしている場合の方がカールしていない場合に比べて小さくなる。また、シートSの後端部に着目すると(図8の「後端期間」参照)、超音波センサー80の受信レベル信号の値は、シートSの後端部がカールしている場合の方がカールしていない場合に比べて大きくなる。
【0055】
なお、図示しないが、シートSの先端部が上向きにカールしている場合には、シートSの先端部がカールしていない場合に比べて、超音波センサー80がシートSの先端部に超音波を照射したときに超音波センサー80から出力される受信レベル信号の値が大きくなる。また、シートSの後端部が上向きにカールしている場合には、シートSの後端部がカールしていない場合に比べて、超音波センサー80がシートSの後端部に超音波を照射したときに超音波センサー80から出力される受信レベル信号の値が小さくなる。
【0056】
このように、超音波センサー80から出力される受信レベル信号は、シートSの端部がカールしている場合とカールしていない場合とで違いが生じる。これにより、超音波センサー80の受信レベル信号に基づき、シートSに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを検知することができる(カール検知を行うことができる)。
【0057】
超音波センサー80の受信レベル信号に基づくカール検知を実現するため、カール検知に使用する基準信号の取得作業が予め行われる。基準信号の取得作業では、カールの大きさが許容範囲内であるシートSが基準シートSとして作業者によって準備され、画像形成装置100にセットされる。そして、基準シートSのセット後、作業者は画像形成装置100に対して基準信号を取得するための取得ジョブの実行を指示する。なお、画像形成装置100のメーカーによって取得作業が行われてもよいし、画像形成装置100のユーザーによって取得作業が行われてもよい。
【0058】
制御部50は、取得ジョブの実行指示を受けると、搬送部20に基準シートSの搬送を開始させる。そして、制御部50は、取得ジョブの実行中、超音波センサー80の検知位置DPに基準シートSの先端が到達してから超音波センサー80の検知位置DPを基準シートSの後端が通過するまでの間に超音波検知処理を1回または複数回行い、この期間に行った超音波検知処理により検知した超音波センサー80の受信レベル信号を基準信号として記憶部60に記憶させる。超音波検知処理が複数回行われた場合には、たとえば、複数回分の超音波検知処理によって検知された各基準信号の値が平均される。なお、制御部50は、超音波センサー80の検知位置DPよりも搬送方向上流側にある搬送センサー90の検知位置FPに基準シートSの先端が到達してからの経過時間に基づき、基準信号を取得するための超音波検知処理の実行タイミングを計る。
【0059】
そして、制御部50は、印刷ジョブの実行中、超音波センサー80の検知位置DPに向けて搬送されているシートSである対象シートSが検知位置DPを通過するときに超音波検知処理を行い、当該行った超音波検知処理で検知した超音波センサー80の受信レベル信号を対象信号として取得する。対象信号を取得すると、制御部50は、対象信号と基準信号とに基づき、対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを判断するとともに、対象シートSのカールの大きさを示すレベル(以下、カールレベルと称する)を判断する。
【0060】
ここで、図8を参照し、先端期間と後端期間との間の中間期間に着目する。超音波センサー80の中間期間の受信レベル信号の値は、シートSがカールしている場合とカールしていない場合とで違いが略生じない。したがって、制御部50によるカール検知では、先端期間の受信レベル信号の値が用いられる。あるいは、先端期間の受信レベル信号の値および後端期間の受信レベル信号の値の両方を用いて制御部50によるカール検知が行われる。なお、後端期間の受信レベル信号の値だけを用いて制御部50のカール検知が行われてもよい。以下の説明では、先端期間の受信レベル信号の値および後端期間の受信レベル信号の値の両方をカール検知に用いるものとする。
【0061】
ところで、印刷ジョブで用いられるシートSの種類(紙厚など)は様々である。このため、複数種のシートSのそれぞれの基準信号が取得される。そして、記憶部60は、シートSの種類ごとに基準信号を記憶する。
【0062】
以下、図9に示すフローチャートを参照し、制御部50により行われるカール検知(重送検知も含む)の流れを説明する。図9に示すフローチャートは、印刷ジョブの実行指示を受け付けたことを制御部50が検知したときにスタートする。
【0063】
たとえば、印刷ジョブの実行に際し、操作パネル70は、印刷ジョブで用いるシートSの種類をユーザーから受け付ける。そして、制御部50は、操作パネル70が受け付けたシートSの種類を認識し、当該認識したシートSの種類に対応する基準信号を用いてカール検知を行う。
【0064】
ステップS1において、制御部50は、搬送部20にシートSの搬送を開始させる。これにより、超音波センサー80の検知位置DPに向けてシートSが搬送され、当該シートSが制御部50によるカール検知(重送検知)の検知対象となる。すなわち、当該シートSが対象シートSである。
【0065】
ステップS2において、制御部50は、対象シートSの搬送方向の端部側の所定部分が超音波センサー80の検知位置DPに到達すると、対象シートSの所定部分を対象にした超音波検知処理を行う。そして、制御部50は、このときに行った超音波検知処理で検知した超音波センサー80の受信レベル信号を対象信号として取得する。なお、画像形成装置100に複数の超音波センサー80が設置された構成では、複数の超音波センサー80のうち、対応する検知位置DPに対象シートSの所定部分が到達した超音波センサー80の受信レベル信号の検知だけが行われ、他の超音波センサー80の受信レベル信号の検知は行われない。
【0066】
たとえば、対象シートSの搬送方向の先端から搬送方向下流側に向けて数mm〜数十mmまでの範囲の一部が所定部分(以下、先端側所定部分と称する)とされる。また、対象シートSの搬送方向の後端から搬送方向上流側に向けて数mm〜数十mmまでの範囲の一部が所定部分(以下、後端側所定部分と称する)とされる。すなわち、対象シートSのうちカールし易い先端部や後端部を対象にした超音波検知処理が制御部50によって行われる(図8に示す先端期間や後端期間の期間中に制御部50による超音波検知処理が行われる)。なお、制御部50は、超音波センサー80の検知位置DPよりも搬送方向上流側にある搬送センサー90の検知位置FPに基準シートSの先端が到達してからの経過時間に基づき、対象信号を取得するための超音波検知処理の実行タイミングを計る。
【0067】
ステップS3において、制御部50は、重送検知を行う。すなわち、制御部50は、対象信号の値と重送判定用閾値とに基づき、シートSの重送が発生しているか否かを判断する。たとえば、制御部50による重送検知は、印刷位置P2よりも搬送方向上流側にある検知位置DP(DP1)にシートSが到達したときにだけ行われてもよい。
【0068】
ステップS3において、シートSの重送が発生していると制御部50が判断した場合には、ステップS4に移行する。ステップS4に移行すると、制御部50は、搬送部20によるシートSの搬送を停止させる(印刷ジョブを中断する)。
【0069】
ステップS3において、シートSの重送が発生していないと制御部50が判断した場合には、ステップS5に移行する。ステップS5に移行すると、制御部50は、カール検知を行う。そして、ステップS6において、制御部50は、カール検知の結果に基づき、カール対策処理を行うべき条件(処理実行条件)が満たされているか否かを判断する。
【0070】
ステップS6において、処理実行条件が満たされていないと制御部50が判断した場合には、ステップS7に移行する。ステップS7に移行した場合、制御部50は、カール対策処理を行わず、搬送部20による対象シートSの搬送を続行させる。
【0071】
ステップS6において、処理実行条件が満たされていると制御部50が判断した場合には、ステップS8に移行する。ステップS8に移行した場合、制御部50は、カール対策処理を行う。
【0072】
ここで、カール検知およびカール対策処理について説明する。
【0073】
カール検知を行うとき、制御部50は、対象シートSの先端側所定部分を対象に行った超音波検知処理で検知した対象信号(以下、先端側対象信号と称する)の値を認識する。たとえば、対象シートSの先端側所定部分に対する超音波検知処理を複数回行い、先端側所定部分に対して行った複数回分の超音波検知処理によって検知した各先端側対象信号の値を平均してもよい。
【0074】
また、制御部50は、対象シートSの後端側所定部分を対象に行った超音波検知処理で検知した対象信号(以下、後端側対象信号と称する)の値を認識する。なお、対象シートSの先端側所定部分と同様、対象シートSの後端側所定部分に対しても超音波検知処理を複数回行い、後端側所定部分に対して行った複数回分の超音波検知処理によって検知した各後端側対象信号の値を平均してもよい。
【0075】
対象シートSの先端部が下向きにカールしている場合、先端側対象信号の値は基準信号の値よりも小さくなる。また、対象シートSの先端部が上向きにカールしている場合、先端側対象信号の値は基準信号の値よりも大きくなる。したがって、対象シートSの先端部がカールしている場合には、対象シートSの先端部がカールしていない場合に比べて、先端側対象信号の値と基準信号の値との差の絶対値が大きくなる。
【0076】
同様に、対象シートSの後端部が下向きにカールしている場合、後端側対象信号の値は基準信号の値よりも大きくなる。また、対象シートSの後端部が上向きにカールしている場合、後端側対象信号の値は基準信号の値よりも小さくなる。したがって、対象シートSの後端部がカールしている場合には、対象シートSの後端部がカールしていない場合に比べて、後端側対象信号の値と基準信号の値との差の絶対値が大きくなる。
【0077】
そこで、制御部50は、先端側対象信号および後端側対象信号の各値と基準信号の値と差の絶対値を求め、当該絶対値が予め定められたカール判定用閾値よりも大きいか否かを判断する。その結果、先端側対象信号の値と基準信号の値と差の絶対値がカール判定用閾値よりも大きい場合、制御部50は、対象シートSの先端部に許容範囲を超えるカールが発生していると判断する。また、後端側対象信号の値と基準信号の値と差の絶対値がカール判定用閾値よりも大きい場合、制御部50は、対象シートSの後端部に許容範囲を超えるカールが発生していると判断する。
【0078】
また、制御部50は、前記絶対値を予め定められた複数段階のカールレベル(カールの大きさを示すレベル)のいずれかに分類する。なお、前記絶対値が大きいほどカールレベルが大きくなるようカールレベルの分類方法が予め定義され、記憶部60に記憶される。前記絶対値は対象シートSのカールが大きいほど大きくなる。このため、対象シートSのカールが大きいほどカールレベルが大きくなる。たとえば、前記絶対値がカール判定用閾値以下のとき、制御部50は、対象シートSのカールレベルをレベル1に設定する。
【0079】
カールレベルの設定後、制御部50は、対象シートSのカールレベルに基づき、カール対策処理を行うべきか否かを判断する。すなわち、制御部50は、処理実行条件を満たすか否かを判断する。
【0080】
たとえば、給紙位置P1と印刷位置P2との間にある超音波センサー80の検知位置DP1での超音波検知処理の結果、対象シートSの先端部のカールレベルが予め定められた閾値レベル(たとえば、レベル1)よりも大きいとき、制御部50は、処理実行条件を満たすと判断する。この場合、制御部50は、カール対策処理として、搬送部20による対象シートSの搬送を停止させる処理(印刷ジョブを中断する処理)を行う。すなわち、対象シートSが印刷位置P2に搬送される前の段階で、対象シートSの先端部が大きくカールしている場合には、対象シートSの搬送が停止される。
【0081】
これにより、シートSの先端がラインヘッド3Cの手前で引っかかる(ジャムが発生する)のを抑制することができる。このようなジャムが発生した場合には、シートSが破れたり折れ曲がったりする恐れがあるので、ジャムを未然に防ぐのが好ましい。
【0082】
また、印刷位置P2と矯正位置CPとの間にある超音波センサー80の検知位置DP2での超音波検知処理の結果、対象シートSの先端部および後端部の少なくとも一方のカールレベルがカール矯正を強化すべきレベルとして予め定められた矯正強化レベル(レベル1よりも大きいレベル)よりも大きいとき、制御部50は、処理実行条件を満たすと判断する。この場合、制御部50は、カール対策処理として、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力(対象シートSに加わる圧力)が現在の設定よりも大きくなるよう調整する処理を行う。なお、制御部50は、対象シートSのカールレベルが矯正強化レベルよりも大きい場合、対象シートSのカールレベルが大きいほど、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力が大きくなるよう調整する。
【0083】
これにより、印刷部30によるシートSへの画像の印刷後、シートSにインクが付着したことによってシートSが大きくカールしたとしても、シートSのカールを良好に矯正することができる。すなわち、シートSがカールしたまま排出されるのを抑制することができる。
【0084】
また、矯正位置CPと排出位置P3との間にある超音波センサー80の検知位置DP3での超音波検知処理の結果、対象シートSの先端部および後端部の少なくとも一方のカールレベルが予め定められた許容レベル(レベル1)よりも大きいとき、制御部50は、処理実行条件を満たすと判断する。この場合、制御部50は、カール対策処理として、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力が現在の設定よりも大きくなるよう調整する処理を行う。すなわち、カール矯正部40により行われる矯正が不十分である場合には、矯正ローラー41と矯正ベルト42との間の圧力がより大きくなるよう補正される。
【0085】
これにより、次回以降に矯正位置CPに搬送されるシートSに加わる圧力が今回の圧力よりも大きくなる。したがって、カール矯正が不十分なシートSが連続して排出されるのを抑制することができる。
【0086】
本実施形態の画像形成装置100は、上記のように、印刷ジョブの実行時にシートSを搬送する搬送部20と、シートSの搬送経路を挟むように配置された発信部80aおよび受信部80bを含み、発信部80aは超音波を発信するとともに、受信部80bは発信部80aから発信された超音波を受信し、受信部80bが受信した超音波の受信レベルに応じた信号を出力する超音波センサー80と、超音波センサー80から出力される受信レベル信号を検知する超音波検知処理を行う制御部80と、記憶部60と、を備える。記憶部60は、カールの大きさが許容範囲内であるシートSである基準シートSが超音波センサー80の検知位置DPを通過するときに制御部50が検知処理を行うことにより検知した超音波センサー80の受信レベル信号を基準信号として予め記憶する。そして、制御部50は、印刷ジョブの実行中、超音波センサー80の検知位置DPに向けて搬送されているシートSである対象シートSが超音波センサー80の検知位置DPを通過するときに超音波検知処理を行い、当該行った超音波検知処理により検知した超音波センサー80の受信レベル信号を対象信号とし、対象信号と基準信号とに基づき、対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを検知するカール検知を行う。
【0087】
本実施形態の構成では、上記のように、制御部50は、対象シートSが超音波センサー80の検知位置DPを通過するときに超音波検知処理を行う。このときの超音波検知処理により制御部50が検知した超音波センサー80の受信レベル信号は対象信号となる。ここで、記憶部60には、基準信号が予め記憶される。基準信号は、基準シートS(カールの大きさが許容範囲内であるシートS)が超音波センサー80の検知位置DPを通過するときに制御部50が超音波検知処理を行うことにより検知した超音波センサー80の受信レベル信号である。仮に、対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生している場合には、対象シートSに対する超音波の入射角と基準シートSに対する超音波の入射角とに差が生じる。このため、対象信号と基準信号とに差が生じる。これにより、超音波センサー80を用いたカール検知(対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かの検知)が可能となる。
【0088】
また、超音波センサー80を用いてカール検知を行うことができるので、重送検知に用いる超音波センサー80をカール検知にも用いることができる。すなわち、カール検知と重送検知とを単一の超音波センサー80で行うことができる。これにより、画像形成装置100の構成が複雑化するのを抑制することができるとともに、センサーの使用数が多くなるのを抑制することができる(コストアップを抑制することができる)。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、制御部50は、対象シートSのうち搬送方向の端部側の所定部分が超音波センサー80の検知位置DPを通過するときに超音波検知処理を行い、当該行った超音波検知処理により検知した超音波センサー80の受信レベル信号を対象信号とする。ここで、カールはシートSの搬送方向の端部(先端部および後端部)に発生し易い。言い換えると、シートSの搬送方向の端部にカールが発生していても、シートSの搬送方向の中央部は殆どカールしない。したがって、対象シートSのうち搬送方向の端部側の所定部分を超音波検知処理の対象とするのが好ましい。仮に、対象シートSのうち搬送方法の中央部を超音波検知処理の対象とした場合には、対象シートSの先端部や後端部に許容範囲を超えるカールが発生していても、対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生していないと制御部50が判断する恐れがある。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、制御部50は、対象信号の値と基準信号の値との差の絶対値が予め定められたカール判定用閾値よりも大きいとき、対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生していると判断し、前記絶対値が大きいほど、対象シートSのカールの大きさを示すカールレベルが大きいと判断する。これにより、容易に、対象シートSに許容範囲を超えるカールが発生しているか否かを判断することができるとともに、対象シートSのカールレベルを判断することができる。
【0091】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0092】
たとえば、上記実施形態では、インクジェット方式の画像形成装置に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず。レーザー方式の画像形成装置にも適用可能である。また、画像形成装置に原稿搬送装置が設置される場合には、原稿搬送装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0093】
20 搬送部
30 印刷部
40 カール矯正部
50 制御部
60 記憶部
80 超音波センサー
DP 検知位置
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9