(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203495(P2018-203495A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
B66B29/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-112548(P2017-112548)
(22)【出願日】2017年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃裕
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321GA23
(57)【要約】
【課題】乗客が巻き込まれ防止部材に接触した際の乗客に対する衝撃を緩和しつつ、スカート等が巻き込まれるのを防止することができる、乗客コンベアを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、無端状に連結され循環移動する複数の踏段1と、踏段1の両側に配置されるスカートガードパネル2と、長方形状であって、その長手方向が踏段1の移動方向に沿うようにスカートガードパネル2に設けられた基台7と、踏段1に乗った乗客が最初に接近する基台7の端部に、軟質性のゴム又は樹脂からなり、基台7から踏段1側に突出する複数の突起8からなる突起群16とを有することを特徴とする乗客コンベアである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され循環移動する複数の踏段と、
前記踏段の両側に配置されるスカートガードパネルと、
長方形状であって、その長手方向が前記踏段の移動方向に沿うように前記スカートガードパネルに設けられた基台と、
前記踏段に乗った乗客が最初に接近する前記基台の端部に、軟質性のゴム又は樹脂からなり、前記基台から前記踏段側に突出する複数の突起からなる突起群と
を有することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記突起が、乗客コンベアの移動方向に並んで設けられた襞状であることを特徴とする、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記突起が、棒状であることを特徴とする、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記突起は、前記基台の先端に近いほど短くなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記基台の端部の形状が、先端ほど幅が狭く丸みを帯びていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記突起群が、前記基台の両端部に設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記基台の両端部にのみ前記突起群が設けられ、前記突起群の間には、刷毛体が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記基台の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、前記突起が全て設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記突起群が、黄色であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項10】
前記突起群が、スカートガードパネルと同系色であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアにおいて、踏段とスカートガードパネルとの隙間に、シート状物が侵入したり、スカートの裾などが挟まれたりすることがあった。これを防止するために巻き込まれ防止部材として、スカートガードパネルに、その長さ方向に沿って基台を延設したり、基台にブラシ材を取り付けたりして、踏段とスカートガードパネルとの隙間へ物が侵入しないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−217417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗客が、巻き込まれ防止部材に接触した場合、巻き込まれ防止部材の端部の形状等によっては、乗客が衝撃を感じることもあった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、乗客が巻き込まれ防止部材に接触した際の乗客に対する衝撃を緩和しつつ、スカート等が巻き込まれるのを防止することができる、乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、無端状に連結され循環移動する複数の踏段と、前記踏段の両側に配置されるスカートガードパネルと、長方形状であって、その長手方向が前記踏段の移動方向に沿うように前記スカートガードパネルに設けられた基台と、前記踏段に乗った乗客が最初に接近する前記基台の端部に、軟質性のゴム又は樹脂からなり、前記基台から前記踏段側に突出する複数の突起からなる突起群とを有する、乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの下階部の一部概略側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である巻き込まれ防止部材が取り付けられた状態を示すスカートガードパネルの縦概略断面の拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態である巻き込まれ防止部材が取り付けられた状態を示すスカートガードパネルの横概略断面の拡大図である。
【
図4】(a)は、本発明の一実施形態である巻き込まれ防止部材を踏段側から見た上側面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図5】(a)は、本発明の一実施形態である巻き込まれ防止部材の変更例を踏段側から見た上側面図であり、(b)は、その正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータ10を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
図1は、エスカレータ10の下階部を示しており、エスカレータ10は、枠組みである不図示のトラスが建屋の上階と下階に跨がって支持され、トラスの左右両側には、左右一対の欄干が立設されており、欄干の主要素はガラスパネル4により構成されている。
【0010】
欄干の側面下部には、鉛直方向に配置されるスカートガードパネル2と、スカートガードパネル2とガラスパネル4との間に配された内デッキ3が、トラスに設けられた不図示の支持部材に固定されている。また、スカートガードパネル2と内デッキ3とは接続部材15を介して接続されている。
【0011】
図示しないが、トラスの上端部にある上階側の機械室内部には、踏段1を走行させる駆動装置と、駆動装置により回転する左右一対の主駆動スプロケットと、主駆動スプロケットと連結ベルトにより連結されて同期して回転する左右一対の手摺り駆動スプロケットが設けられている。
【0012】
また、トラスの下端部にある下階側の機械室14内には、不図示の左右一対の従動スプロケットが設けられている。上階側の左右一対の主駆動スプロケットと下階側の左右一対の従動スプロケットとの間には、不図示の左右一対の無端の踏段チェーンが掛け渡されている。
【0013】
左右一対の踏段チェーンには、複数の踏段1が等間隔で取り付けられており、上記駆動装置により、踏段1が左右一対のスカートガードパネル2の間を走行する。
【0014】
また、欄干の上部に不図示の手摺りレールが設けられ、無端状の手摺りベルト5が、手摺り駆動スプロケットによって踏段1の移動と同期し、この手摺りレールに沿って循環移動する。
【0015】
エスカレータ10の乗降口であって、トラスの下端部にある下階側の機械室14の天井面には、下階側の乗降板12が水平に設けられ、その先端には、櫛歯状のコム13が設けられている。また、上階側の乗降口にも同様に乗降板12及びコム13が設けられている。
【0016】
無端状に連結された複数の踏段1は、下降している時の往路は、上階側のコム13から露出した後、踏段1の乗客が搭乗する面を水平に保ちながら、踏段1が階段状に移動する傾斜部分を下階側へと移動し、帰路は、下階側のコム13からトラス内に侵入し、トラス内を移動することで上階に到り循環移動する。
【0017】
(2)巻き込まれ防止部材6
図1に示すように、スカート等が巻き込まれるのを防止する、巻き込まれ防止部材6が、踏段1が階段状に移動する傾斜部分から、踏段1が水平移動する水平部分におけるスカートガードパネル2にかけて配されている。またその下階側端部は、コム13の先端付近まで延びている。
【0018】
巻き込まれ防止部材6は、上階側から順に、長方形状であって、その長手方向が踏段1の階段状の移動に沿うように傾斜部分のスカートガードパネル2に設けられた直線部分7aと、緩やかに湾曲するスカートガードパネル2に沿って設けられた湾曲部分7bと、長方形状であって、その長手方向が踏段1の水平方向の移動に沿うように水平に配されたスカートガードパネル2に設けられた直線部分7cからなる基台7を有している。
図2,3に示すように、巻き込まれ防止部材6の基台7は、スカートガードパネル2の裏面側からネジ11によりネジ止めされている。
【0019】
上階から下階へと移動する踏段1に乗った乗客が最初に接近する基台7の上階側端部に、軟質性のゴム又は樹脂からなり、基台7から踏段1側に突出する複数の突起8からなる突起群16が設けられている。また、踏段1の移動方向を逆転させて稼働することも考慮し、基台7の下階側の端部にも同様に複数の突起8からなる突起群16が設けられている。なお、長方形状とは、完全に長方形でなくとも概ね長方形であればよく、例えば、面取りされた長方形、角が円弧状の長方形などであっても良い。
【0020】
突起群16の突起8の形状は、
図4に示すように、襞状であり、乗客コンベアの移動方向に等間隔に並んで設けられている。
【0021】
また、基台7の端部の形状は、上方に向かって先端ほど幅が狭く丸みを帯びたものであり、突起8は、基台7の先端に近いほど短く形成されている。
【0022】
巻き込まれ防止部材6は、基台7の上階側の端部と下階側の端部にのみ、複数の突起8からなる突起群16が設けられており、突起群16の間には、刷毛体9が設けられている。
【0023】
(3)効果
本実施形態によれば、巻き込まれ防止部材6の端部に、乗客が接触した場合であっても、基台7の端部に設けられた突起8が軟質性のゴム又は樹脂からなるため、乗客への衝撃を緩和することができる。
【0024】
突起8が襞状であり移動方向に並んで設けられているため、乗客が接触した際に突起8が倒れ込み、乗客への衝撃をより緩和することができ、また、乗客が離れると突起8は元の形状に復元され、繰り返し使用できる。
【0025】
基台7の端部の形状が、上方に向かって先端ほど幅が狭く丸みを帯びたものであり、突起8は、基台7の先端に近いほど短く形成されていることにより、スカート等が突起群16に引っかかるのを防止することができる。
【0026】
また、突起群16の間に刷毛体9が設けられていることにより、踏段1とスカートガードパネル2との隙間にスカート等が巻き込まれないように、スカート等を踏段1側に排出することができる。
【0027】
従って、傾斜部分を移動していた踏段1が下階に到着し水平移動に変換される位置から、踏段1がコム13から機械室14内に侵入する位置にかけて、踏段1とスカートガードパネル2との隙間にスカート等が巻き込まれることが従来はあったが、本実施形態によれば、巻き込まれ防止部材6が、傾斜部分から水平部分におけるコム13の先端付近まで配されていることにより、スカート等が巻き込まれるのを防止することができる。
【0028】
(4)変更例
上記実施形態では、巻き込まれ防止部材6が下階部に設けられたものについて説明したが、上階部に設けられていても良く、下階から上階にかけて、連続的又は断続的に設けられていても良い。
【0029】
上記実施形態では、突起8が設けられた基台7と、刷毛体9が設けられた基台7とが一体成形されたものについて説明したが、別部材として成形されているものであっても良い。
【0030】
上記実施形態では、基台7の両端部に複数の突起8からなる突起群16が設けられ、突起群16の間には刷毛体9が設けられているものについて説明したが、基台7の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、全て突起8が設けられているものであっても良い。
【0031】
基台7及び突起8の色は、特に限定されないが、乗客への注意喚起の観点からは、黄色であっても良く、意匠性の観点からは、スカートガードパネル2と同系色であっても良い。
【0032】
上記実施形態では、突起8の形状が、乗客コンベアの移動方向に並んで設けられた襞状であるものについて説明したが、これに代えて、
図5に示すような、棒状であるものであっても良く、その場合、突起8は先端ほど細いものであっても良い。
【0033】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用しても良い。
【0034】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10・・・エスカレータ、1・・・踏段、2・・・スカートガードパネル、3・・・内デッキ、4・・・ガラスパネル、5・・・手摺りベルト、6・・・巻き込まれ防止部材、7・・・基台、8・・・突起、9・・・刷毛体、11・・・ネジ、12・・・乗降板、13・・・コム、14・・・機械室、15・・・接続部材、16・・・突起群
【手続補正書】
【提出日】2018年5月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され循環移動する複数の踏段と、
前記踏段の両側に配置されるスカートガードパネルと、
長方形状であって、その長手方向が前記踏段の移動方向に沿うように前記スカートガードパネルに設けられた基台と、
前記踏段に乗った乗客が最初に接近する前記基台の端部に、軟質性のゴム又は樹脂からなり、前記基台から前記踏段側に突出する複数の突起からなる突起群と
を有し、
前記突起が乗客コンベアの移動方向に並んで設けられた襞状であり、前記突起の角部が丸みを帯びていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記突起は、前記基台の先端に近いほど短くなることを特徴とする、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記基台の端部の形状が、先端ほど幅が狭く丸みを帯びていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記突起群が、前記基台の両端部に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記基台の両端部にのみ前記突起群が設けられ、前記突起群の間には、刷毛体が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記基台の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、前記突起が全て設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記突起群が、黄色であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記突起群が、スカートガードパネルと同系色であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の実施形態は、無端状に連結され循環移動する複数の踏段と、前記踏段の両側に配置されるスカートガードパネルと、長方形状であって、その長手方向が前記踏段の移動方向に沿うように前記スカートガードパネルに設けられた基台と、前記踏段に乗った乗客が最初に接近する前記基台の端部に、軟質性のゴム又は樹脂からなり、前記基台から前記踏段側に突出する複数の突起からなる突起群とを有
し、前記突起が乗客コンベアの移動方向に並んで設けられた襞状であり、前記突起の角部が丸みを帯びている、乗客コンベアである。