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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203706(P2018-203706A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】ブロナンセリン含有錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20181130BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20181130BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20181130BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20181130BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   A61K31/496
   A61P25/18
   A61K9/20
   A61K47/04
   A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-123723(P2017-123723)
(22)【出願日】2017年6月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智裕
(72)【発明者】
【氏名】山崎 大樹
(72)【発明者】
【氏名】澤井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】高森 啓介
(72)【発明者】
【氏名】三上 達也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076CC01
4C076DD26G
4C076DD28G
4C076DD29G
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086ZA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】経時的な錠剤の変色が抑制され、安定性の改善された、ブロナンセリン[2−(4−エチルピペラジン−1−イル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン]を含有する錠剤の提供。
【解決手段】ブロナンセリンまたはその薬学的に許容される塩、流動化剤として含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含む錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロナンセリンまたはその薬学的に許容される塩を含有する錠剤であって、流動化剤として含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含む錠剤。
【請求項2】
前記流動化剤として含水二酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムから選ばれる一つ以上を含まない請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
ブロナンセリンまたはその薬学的に許容される塩を含有する錠剤であって、流動化剤を含まない錠剤。
【請求項5】
請求項4に記載の錠剤であって、前記流動化剤が、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムから選ばれる一つ以上である錠剤。
【請求項6】
素錠である請求項1〜5のいずれか1項に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてブロナンセリンを含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロナンセリン(Blonanserin)は、統合失調症に対する治療薬として知られている。ブロナンセリンは、たとえば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−47574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者がブロナンセリンを含有する錠剤(以下、ブロナンセリン含有錠剤という。)について検討を進めていく中で、ブロナンセリン含有錠剤は経時的に変色が発生し、類縁物質が増加するという、安定性に関する課題を有していることが判明した。
【0005】
本発明は、安定性の改善された、ブロナンセリン含有錠剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討したところ、ブロナンセリン含有錠剤の安定性が不十分であることの一因が、該錠剤に用いる流動化剤にあることを見出した。そして、流動化剤を使用する場合には特定の流動化剤を用いること、または、流動化剤を使用しないことによって、ブロナンセリン含有錠剤の安定性を改善できることに想到した。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕ブロナンセリンまたはその薬学的に許容される塩を含有する錠剤であって、流動化剤として含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含む錠剤。
〔2〕前記流動化剤として含水二酸化ケイ素を含む、〔1〕に記載の錠剤。
〔3〕軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムから選ばれる一つ以上を含まない〔1〕または〔2〕に記載の錠剤。
〔4〕ブロナンセリンまたはその薬学的に許容される塩を含有する錠剤であって、流動化剤を含まない錠剤。
〔5〕〔4〕に記載の錠剤であって、前記流動化剤が、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムから選ばれる一つ以上である錠剤。
〔6〕素錠である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定性の改善されたブロナンセリン含有錠剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔ブロナンセリン含有錠剤〕
本発明のブロナンセリン含有錠剤(以下、単に「錠剤」ともいう。)は、ブロナンセリンまたはその薬学的に許容される塩を含む錠剤であって、特定の流動化剤、すなわち含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含有する態様、および流動化剤を含有しない態様を含む。
このように錠剤が特定の流動化剤を含むか、または、流動化剤を含まない場合、経時的な錠剤の変色と類縁物質の増加が抑制され、安定性の改善されたブロナンセリン含有錠剤とすることができる。
【0010】
ブロナンセリンの薬学的に許容される塩としては、たとえば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩等が挙げられる。
ブロナンセリン含有錠剤100質量%中のブロナンセリン又はその薬学的に許容される塩の含有量は、特に制限はないが、ブロナンセリンとして、0.1〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。
【0011】
本発明の錠剤が含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上の流動化剤を含む場合、流動化剤の量は0.01〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.1〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0012】
本発明の錠剤には、上述のとおり、特定の流動化剤を含む態様と、流動化剤を含まない態様とがあるが、経時的な錠剤の変色と類縁物質の増加を抑制して安定性を改善することに加え、錠剤硬度が高く、欠けや割れの抑制された錠剤が得られる点からは、流動化剤として含水二酸化ケイ素を使用する態様が好ましい。
一方、流動化剤として、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムのいずれか一つ以上を含む場合、経時的な錠剤の変色と類縁物質の増加が顕著となり安定性が低下する。よって、これらを使用しないことが好適である。
本発明の錠剤の好ましい具体的な態様としては、含水二酸化ケイ素を含み、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウムのいずれをも含まない態様が挙げられる。
【0013】
本発明の錠剤は、流動化剤以外の1種以上の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、たとえば賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、着色剤、界面活性剤等が挙げられ、医薬品分野において使用可能な添加剤であれば、いずれも使用できる。
【0014】
賦形剤としては、たとえば、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、D‐マンニトール、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
賦形剤の含有量は、錠剤100質量%中、60〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましく、80〜85質量%がさらに好ましい。
【0015】
崩壊剤としては、たとえば、セルロース系崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等。)、クロスポビドン、デンプン系崩壊剤(トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等。)等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
崩壊剤の含有量は、錠剤100質量%中、0.1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましく、7〜12質量%がさらに好ましい。
【0016】
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
滑沢剤の含有量は、錠剤100質量%中、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3.5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
【0017】
結合剤としては、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
結合剤の含有量は、錠剤100質量%中、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
【0018】
着色剤としては、たとえば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0019】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
その他の添加剤としては、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられる。
【0020】
本発明の錠剤としては、普通錠や、唾液または少量の水で崩壊する口腔内速崩壊錠等が挙げられる。普通錠としては、素錠のみからなるものでも、フィルムコーティング錠(腸溶性コーティング錠、徐放性コーティング錠などを含む)でもよい。本発明の錠剤としては素錠が好ましい。
上述の添加剤は、錠剤が、素錠と該素錠を被覆するコーティングとからなるフィルムコーティング錠である場合に、素錠に含まれていてもコーティングに含まれていても両方に含まれていてもよい。
【0021】
[錠剤の製造方法]
本発明の錠剤の製造方法は、ブロナンセリン又はその薬学的に許容される塩を含む錠剤を製造できる方法であれば特に制限はないが、通常、ブロナンセリン又はその薬学的に許容される塩と、他の添加剤とを含む混合物を打錠する打錠工程を含む。打錠工程には、錠剤成形に一般に使用される打錠機を使用できる。混合物が、ブロナンセリン又はその薬学的に許容される塩と、流動化剤として含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含有するか、流動化剤を含有しないことにより、経時的な錠剤の変色と類縁物質の増加が抑制され、安定性の改善されたブロナンセリン含有錠剤が得られる。
【0022】
打錠工程の前には、ブロナンセリン又はその薬学的に許容される塩と、他の添加剤とを含む混合物をあらかじめ造粒する、造粒工程を有することが好ましい。打錠工程では、造粒工程で得られた造粒物のみを打錠しても、造粒物に対してさらに成分を後添加して打錠してもよい。後添加する成分としては、たとえば流動化剤である含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルク等の添加剤が挙げられる。
本発明の錠剤がフィルムコーティング錠である場合には、打錠工程で得られた素錠にコーティングを施す被覆工程をさらに有していてよい。造粒工程および被覆工程は、それぞれ公知の方法により行える。
【実施例】
【0023】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
下記の表1の処方に従い、一錠あたり60mgの錠剤を製造した。
まず、表1の造粒物の欄に記載の各成分を混合して造粒用粉末を得て、造粒用粉末に水を加えて造粒、乾燥、整粒を行い、整粒物を得た。得られた整粒物に対して、表1の後末の欄に記載の各成分を加えて混合して、打錠用の混合物とし、この混合物をロータリー打錠機(VELA5、菊水製作所製)で打錠成形し、錠剤を得た。
【0024】
<色差>
熱苛酷条件(60℃環境下で2週間、または60℃環境下で4週間)での保存前後の錠剤について、白色校正板を基準として色彩色差計(CR−300、ミノルタ社製)でLabの値を測定した。測定されたLabの値を用いて熱苛酷条件での保存前と保存後の錠剤
【0025】
<純度>
製造時(Initial)、光苛酷条件(積算照度60万lx・h、積算照度120万lx・h)での保存後、熱苛酷条件(60℃環境下で2週間、60℃環境下で4週間)での保存後において、得られた錠剤の総類縁物質量を測定することで純度の評価を実施した。結果を表4に示す。
なお、総類縁物質量は、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法にて測定、定量した複数種の総類縁物質量の総和であり、記載した総類縁物質量の数値は、ブロナンセリンのピーク面積に対する各類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0026】
<硬度>
ロータリー打錠機にて7.5kNの打錠圧で打錠した錠剤について、錠剤硬度(kgf)を、錠剤硬度計(PC−30、岡田精工社製)を用いて測定した。なお、表5に示した硬度は、10個の錠剤の平均値である。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
流動化剤として含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含むか、流動化剤を含まない実施例1〜4の錠剤は、表2に示すとおり、60℃2週
程度の変色しか示さなかった。また、表4に示すとおり、全ての条件での保存後においてInitialからの総類縁物質の増加量が小さかった。
これに対して、含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルク以外の流動化剤(軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム)を含む比較例1〜3の錠剤は、表2に示すとおり、60℃2週間および60℃4週間の各条件での
られた。また、表4に示すとおり、実施例1〜4の錠剤に比べ全ての条件での保存後においてInitialからの総類縁物質の増加量も大きかった。
さらに、表5に示すように、実施例のなかでも、流動化剤として含水二酸化ケイ素を含む実施例1の錠剤は、錠剤硬度が十分に高かった。
以上の結果から、流動化剤として含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、タルクから選ばれる一つ以上を含むか、流動化剤を含まない実施例1〜4の錠剤は安定性に優れ、なかでも流動化剤として含水二酸化ケイ素を使用することにより、硬度の高い錠剤が得られることが明らかとなった。