特開2018-203901(P2018-203901A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2018203901-コークスの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-203901(P2018-203901A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/04 20060101AFI20181130BHJP
   C10B 57/06 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   C10B57/04
   C10B57/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-111701(P2017-111701)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】堺 康爾
(72)【発明者】
【氏名】奥山 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】シャーマ アトゥル
(72)【発明者】
【氏名】崎元 尚土
(72)【発明者】
【氏名】鷹觜 利公
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012MA01
4H012PA01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、比較的安価に比較的強度が大きいコークスを製造できる方法の提供である。
【解決手段】本発明の成形コークスの製造方法は、低品位炭及び一般炭由来の粘結材を用いるコークスの製造方法であって、上記低品位炭、上記一般炭由来の粘結材、及び一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭を混合する工程と、上記混合工程後の混合物を乾留する工程とを備える。上記混合工程において、(a)上記副生炭の含有率と上記粘結材の揮発成分の分率との差、(b)上記低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計、又は(c)上記粘結材の含有率と上記(b)の合計との比を基準に上記低品位炭、粘結材及び副生炭の配合比を調整するとよい。上記(a)の差としては、0質量%以上35質量%以下が好ましく、上記(b)の合計としては、36質量%以上50質量%以下が好ましく、上記(c)の比としては、0.95以上2以下が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低品位炭及び一般炭由来の粘結材を用いるコークスの製造方法であって、
上記低品位炭、上記一般炭由来の粘結材、及び一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭を混合する工程と、
上記混合工程後の混合物を乾留する工程と
を備えるコークスの製造方法。
【請求項2】
上記混合工程において、
(a)上記副生炭の含有率と上記粘結材の揮発成分の分率との差、
(b)上記低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計、又は
(c)上記粘結材の含有率と上記(b)の合計との比
を基準に上記低品位炭、粘結材及び副生炭の配合比を調整する請求項1に記載のコークスの製造方法。
【請求項3】
上記(a)の差が0質量%以上35質量%以下、上記(b)の合計が36質量%以上50質量%以下、上記(c)の比が0.95以上2以下である請求項2に記載のコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉での製鉄で使用されるコークスには、鉄鉱石(酸化鉄)の還元材としての機能、及び熱源(燃料)としての機能に加えて、コークス自体と鉄鉱石との荷重に耐えて炉内の通気性を確保するための充填材としての機能がある。この通気性を効果的に確保するため、高炉では鉄鉱石とコークスとが交互に層をなすように配置される。鉄鉱石の還元反応時には、このコークスは高炉内部で応力を受けながら、徐々にガス化して消耗していく。コークスに十分な強度がない場合、この反応時にコークスの著しい破壊(粉化)が生じ、上記層構造が崩れてしまうため、高炉内の通気性が悪化してしまう。従って、高炉用のコークスには高い強度が求められる。
【0003】
一般に、コークスは、原料石炭を1000℃以上の高温で蒸し焼きにする「乾留」を行うことにより製造される。強度の高いコークスを得る場合、原料石炭としては、瀝青炭の中でも粘結性の高いいわゆる強粘結炭が使用されるが、このような強粘結炭は比較的高価である。コークスの製造コストの低減を目的として、瀝青炭の中でも粘結性の低い非微粘結炭、さらには亜瀝青炭、褐炭等の低品位炭を用いることが望まれる。しかしながら、粘結性成分の含有量が少ない低品位炭では石炭粒子同士を結着させることができず、それだけではコークスを製造することができない。このため、強粘結炭に低品位炭を配合することで、コークスの製造コストを低減しているが、低品位炭の配合によりコークスの強度が低下するため、低品位炭を配合できる量は限られる。
【0004】
また、低品位炭を用いてコークスを得るコークス製造方法として、低品位炭と石炭の溶剤抽出物(無灰炭)やバインダーとを混合したものを乾留する方法が提案されている(特開2014−218583号公報参照)。この方法では、一般炭由来の粘結材を用い、低品位炭を原料としてコークスを製造する。しかしながら、この従来のコークスの製造方法では、コークス化反応時に過剰に気泡が生成し、得られるコークスに粗大な気孔が形成され、十分に強度が高められない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−218583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、比較的強度が大きいコークスを比較的安価に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、コークス化反応時に過剰に気泡が生成する現象について鋭意検討した結果、一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭をコークス原料に混合することで、コークス化反応時に粘結材が副生炭の気孔中に入り込み、過剰な発泡や膨張を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、低品位炭及び一般炭由来の粘結材を用いるコークスの製造方法であって、上記低品位炭、上記一般炭由来の粘結材、及び一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭を混合する工程と、上記混合工程後の混合物を乾留する工程とを備える。
【0009】
当該コークスの製造方法では、一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭をコークス原料に混合することで、コークス化反応時に粘結材が副生炭の気孔中に入り込み、過剰な発泡や膨張が抑制できる。このため、当該コークスの製造方法を用いることで、比較的強度の高いコークスを製造することができる。また、当該コークスの製造方法では、低品位炭を用いるので、コークスの製造コストが比較的低い。
【0010】
上記混合工程において、(a)上記副生炭の含有率と上記粘結材の揮発成分の分率との差、(b)上記低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計、又は(c)上記粘結材の含有率と上記(b)の合計との比を基準に上記低品位炭、粘結材及び副生炭の配合比を調整するとよい。上記(a)の差を基準に上記配合比を調整することで、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張をより容易に抑制できるので、得られるコークスの強度が高められる。上記(b)の合計を基準に上記配合比を調整することで、コークス構造の主骨格形成が促進されるので、得られるコークスの強度が高められる。上記(c)の比を基準に上記配合比を調整することで、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が高められるので、得られるコークスの強度が高められる。
【0011】
上記(a)の差としては、0質量%以上35質量%以下が好ましく、上記(b)の合計としては、36質量%以上50質量%以下が好ましく、上記(c)の比としては、0.95以上2以下が好ましい。上記(a)の差を上記範囲内とすることで、コークス構造の主骨格に付与される粘結性を低下させることなく、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張をさらに容易に抑制できる。上記(b)の合計を上記範囲内とすることで、コークス構造の主骨格に付与される粘結性を低下させることなく、コークス構造の主骨格形成をさらに促進できる。上記(c)の比を上記範囲内とすることで、コークスの製造コストを抑制しつつ、コークス構造の主骨格に付与される粘結性をさらに高められる。
【0012】
なお、「低品位炭」とは、JIS−M1002(1978)の分類における亜瀝青炭、褐炭(亜炭を含む)、及び半無煙炭を指す。また、「一般炭」とは、JIS−M1002(1978)の分類における瀝青炭、及び亜瀝青炭を指す。また、「揮発成分の分率」及び「固定炭素分率」は、それぞれJIS−M−8812(2006)で規定される工業分析方法により分析される値をいう。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、当該コークスの製造方法を用いることで、比較的強度が大きいコークスを比較的安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例におけるコークスの強度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るコークスの製造方法の実施形態について詳説する。
【0016】
当該コークスの製造方法は、混合工程と乾留工程とを備える。当該コークスの製造方法は、低品位炭及び一般炭由来の粘結材を用いる。また、当該コークスの製造方法は、さらに上記一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭を用いる。
【0017】
<原料石炭>
以下、低品位炭、粘結材、及び副生炭について説明する。
【0018】
(低品位炭)
上記低品位炭としては、亜瀝青炭、褐炭(亜炭を含む)、及び半無煙炭を用いることができるが、中でも製造コストの観点から亜瀝青炭を用いるとよい。上記亜瀝青炭としては、例えば西バンコ炭、ビヌンガン炭、サラマンガウ炭等が挙げられる。上記亜瀝青炭は、1炭種としてもよいが、2炭種以上を混合して用いてもよい。また、上記亜瀝青炭に褐炭等を混合して用いてもよい。上記褐炭としては例えばムリア炭、アダロ炭、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等が挙げられる。
【0019】
当該コークス製造方法において使用される低品位炭は、微細に粉砕された粒状とすることが好ましい。低品位炭を粒状とする場合、低品位炭の20%粒子径D20の下限としては、低品位炭を粉砕するための装置や、低品位炭のハンドリング装置にもよるが、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。低品位炭の20%粒子径D20が上記下限に満たない場合、不必要に大きな粉砕動力が必要になるおそれや、発塵等により低品位炭のハンドリングが難しくなるおそれがある。一方、低品位炭の90%粒子径D90の上限としては、3mmが好ましく、1mmがより好ましい。低品位炭の90%粒子径D90が上記上限を超える場合、混合工程における混合性が不十分となるおそれや、粒子の隙間が大きくなることで得られるコークスの強度が不十分となるおそれがある。なお、「20%粒子径D20」及び「90%粒子径D90」とは、全粒子をJIS−Z8801−1(2006)に規定される金属製網篩で目の大きな篩から順に篩分けした際に、篩下の累積質量が全粒子の質量の20%になったときの篩の目の大きさ及び90%になったときの篩の目の大きさを意味する。
【0020】
なお、低品位炭は、風乾等により乾燥炭としてもよいが、水分を含んだ状態のものを用いてもよい。
【0021】
(粘結材)
当該コークス製造方法において使用される粘結材は、一般炭である瀝青炭や亜瀝青炭から得られる無灰炭である。このように、比較的安価な一般炭を原料とする無灰炭を粘結材として使用することによって、コークスを比較的安価に製造することが可能となる。
【0022】
無灰炭は、石炭をこの石炭と親和性の高い溶剤に混合し、灰分等の溶剤に不溶な成分を分離した抽出液を得て、この抽出液から溶剤を除去する溶剤抽出処理により得ることができる。溶剤抽出処理の具体的な方法としては、例えば特許第4045229号公報に開示された方法を用いることができる。
【0023】
無灰炭を得るために使用される溶剤としては、無灰炭から蒸発分離し得るような沸点を有するものであればよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の単環芳香族化合物や、ナフタレン、1メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等の2環芳香族化合物などを挙げることができる。
【0024】
このような溶剤抽出処理で得られる無灰炭は、実質的に灰分を含まず、溶剤に可溶で軟化溶融性を示す有機物を多く含有する。また、無灰炭は、縮合芳香環が2又は3環の比較的低分子量の成分から縮合芳香環が5又は6環程度の高分子量の成分まで広い分子量分布を有する。そのため、無灰炭は、加熱下で高い流動性を示し、その原料とした石炭の品質に関わらず一般的に150℃以上300℃以下で溶融する。加えて、無灰炭は、300℃以上500℃以下程度の乾留初期過程で多量の揮発分を生成しながら膨張する。また、無灰炭は、石炭と溶剤との混合物(スラリー)の脱水を経て得られるため、水分が0.2質量%以上3質量%以下程度であり、発熱量を十分に有する。
【0025】
粘結材は、微細に粉砕された粒状とすることが好ましい。粘結材を粒状とする場合、粘結材の20%粒子径D20の下限としては、粘結材を粉砕するための装置や、粘結材のハンドリング装置にもよるが、0.005mmが好ましく、0.01mmがより好ましい。粘結材の20%粒子径D20が上記下限未満であると、不必要に大きな粉砕動力が必要になるおそれや、発塵等によりハンドリングが難しくなるおそれがある。一方、粘結材の90%粒子径D90の上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。粘結材の90%粒子径D90が上記上限を超えると、低品位炭との均一な混合が困難となりコークスの強度向上効果が不十分となるおそれや、コークス化反応時に粘結材が副生炭の気孔中に入り込み難くなり、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果が不十分となるおそれがある。
【0026】
(副生炭)
当該コークス製造方法において使用される副生炭は、上記粘結材の製造過程で、抽出液を得る際に分離された灰分等の溶剤に不溶な成分(固形分濃縮液)から得られる。具体的には、上記固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離させて副生炭を得ることができる。
【0027】
このように粘結材の製造過程で副生する副生炭は、軟化溶融性は示さないが、含酸素官能基が脱離されている。そのため、副生炭をコークスの原料石炭に混合しても、他の石炭の軟化溶融性を阻害しない。
【0028】
副生炭は、微細に粉砕された粒状とすることが好ましい。副生炭を粒状とする場合、副生炭の20%粒子径D20の下限としては、副生炭を粉砕するための装置や、副生炭のハンドリング装置にもよるが、0.005mmが好ましく、0.01mmがより好ましい。副生炭の20%粒子径D20が上記下限未満であると、コークス化反応時に粘結材が入り込む気孔も粉砕され、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果が不十分となるおそれや、発塵等によりハンドリングが難しくなるおそれがある。一方、副生炭の90%粒子径D90の上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。副生炭の90%粒子径D90が上記上限を超えると、低品位炭との均一な混合が困難となりコークスの強度向上効果が不十分となるおそれや、単位体積当たりの気孔数が減少しコークス化反応時に粘結材が副生炭の気孔中に入り込み難くなるため、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果が不十分となるおそれがある。
【0029】
<混合工程>
混合工程では、上記低品位炭、粘結材及び副生炭を混合する。混合方法としては、特に限定されないが、例えば公知のミキサーを用いて行うことができる。この混合工程は、低品位炭、粘結材及び副生炭をそれぞれ上述のような粒子径になるよう粉砕する工程を兼ねてもよい。
【0030】
上記混合工程の低品位炭、粘結材及び副生炭の混合物における低品位炭の含有率の下限としては、無水ベースで1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。一方、上記混合物における低品位炭の含有率の上限としては、無水ベースで50質量%が好ましく、35質量%がより好ましい。上記低品位炭の含有率が上記下限未満であると、相対的にコストが高い粘結材や副生炭の含有率が増加するため、コークスの製造コスト低減効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記低品位炭の含有率が上記上限を超えると、粘結材又は副生炭の含有量が不足し、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。
【0031】
上記混合物における粘結材の含有率の下限としては、35質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、42質量%がさらに好ましい。一方、上記粘結材の含有率の上限としては、65質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。上記粘結材の含有率が上記下限未満であると、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が不十分となり、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記粘結材の含有率が上記上限を超えると、コークス構造の主骨格を形成する炭素(低品位炭又は副生炭)が不足し、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。
【0032】
上記混合物における副生炭の含有率の下限としては、15質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、22.5質量%がさらに好ましい。一方、上記副生炭の含有率の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。上記副生炭の含有率が上記下限未満であると、コークス化反応時のコークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記副生炭の含有率が上記上限を超えると、相対的に粘結材の含有量が減少するため、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が不十分となり、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。
【0033】
上記混合物における粘結材と副生炭との合計に対する粘結材の含有量の割合の下限としては、50質量%が好ましく、55質量%がより好ましい。一方、上記粘結材の含有量の割合の上限としては、68質量%が好ましく、65質量%がより好ましい。上記粘結材の含有量の割合が上記下限未満であると、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が不十分となり、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記粘結材の含有量の割合が上記上限を超えると、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果が不十分となるおそれがある。
【0034】
上記混合工程において、(a)上記副生炭の含有率と上記粘結材の揮発成分の分率との差、(b)上記低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計、又は(c)上記粘結材の含有率と上記(b)の合計との比を基準に上記低品位炭、粘結材及び副生炭の配合比を調整するとよい。以下、各基準について説明する。
【0035】
((a)副生炭の含有率と粘結材の揮発成分の分率との差)
当該コークスの製造方法では、コークス化反応時に粘結材が副生炭の気孔中に入り込み、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張を抑制する。この過剰発泡や膨張は主に粘結材の揮発成分により引き起こされると考えられるので、この揮発成分を吸収できる十分な副生炭を混合することが好ましい。従って、副生炭の含有率と粘結材の揮発成分の分率との差(以下「(a)の差」ともいう)を基準として上記配合比を調整するとよい。上記(a)の差を基準に上記配合比を調整することで、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張をより容易に抑制できるので、得られるコークスの強度が高められる。この(a)の差は、特に粘結材の含有率が高い場合、例えば粘結材の含有率が50質量%以上60質量%以下である場合に有効な基準である。なお、粘結材の揮発成分の分率は、JIS−M−8812(2006)で規定される工業分析方法により算出することができる。
【0036】
上記(a)の差の下限としては、0質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、8質量%がさらに好ましい。一方、上記(a)の差の上限としては、35質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。上記(a)の差が上記下限未満であると、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記(a)の差が上記上限を超えると、相対的に粘結材の含有量が減少するため、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が不十分となり、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。
【0037】
((b)低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計)
本発明者らは、当該コークスの製造方法において、コークス構造の主骨格は、低品位炭の固定炭素に加えて副生炭の炭素により形成されていることを見出している。つまり、低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計(以下「(b)の合計」ともいう)を基準として上記配合比を調整することで、コークス構造の主骨格形成が促進できるので、得られるコークスの強度が高められる。この(b)の合計は、特に粘結材の含有率が副生炭の含有率に比して高い場合、例えば副生炭の含有率に対する粘結材の含有率の比が1.1倍以上である場合に有効な基準である。なお、低品位炭の固定炭素分率は、JIS−M−8812(2006)で規定される工業分析方法により算出することができる。
【0038】
上記(b)の合計の下限としては、36質量%が好ましく、38質量%がより好ましく、43質量%がさらに好ましい。一方、上記(b)の合計の上限としては、50質量%が好ましく、48質量%がより好ましい。上記(b)の合計が上記下限未満であると、コークス構造の主骨格が十分に形成されず、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記(b)の合計が上記上限を超えると、相対的に粘結材の含有量が減少するため、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が不十分となり、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。
【0039】
((c)粘結材の含有率と(b)の合計との比)
当該コークスの製造方法では、粘結材により石炭粒子同士を結着させコークスの強度向上を図っている。結着すべき石炭粒子の量はコークス構造の主骨格の量を表す(b)の合計に比例すると考えられるから、この(b)の合計に対して十分な粘結材を付与することでコークス構造の主骨格に付与される粘結性が高められるので、得られるコークスの強度が高められる。この粘結材の含有率と(b)の合計との比(以下、「(c)の比」ともいう)は、特に粘結材の含有率が低い場合、例えば粘結材の含有率が30質量%以上50質量%以下である場合に有効な基準である。
【0040】
上記(c)の比の下限としては、0.95が好ましく、0.97がより好ましい。一方、上記(c)の比の上限としては、2が好ましく、1.5がより好ましく、1.15がさらに好ましい。上記(c)の比が上記下限未満であると、コークス構造の主骨格に付与される粘結性が不十分となり、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記(c)の比が上記上限を超えると、相対的にコークス構造の主骨格を形成する炭素が不足し、コークスの強度向上効果が不十分となるおそれがある。
【0041】
なお、上記(a)の差、(b)の合計、及び(c)の比は、単独で配合比を調整する基準としてもよいが、上記(a)の差、(b)の合計、及び(c)の比の全てを基準として配合比を調整するとよい。このように上記(a)の差、(b)の合計、及び(c)の比の全てを基準として配合比を調整することで、低品位炭、粘結材、副生炭の含有率等によらず、コークスの強度を高められる。
【0042】
<乾留工程>
乾留工程では、上記混合工程後の混合物を乾留する。上記乾留工程では、例えばシャフト炉、コークス炉等を用いて、上記混合物を以下に説明するような条件で乾留することによってコークスを得る。
【0043】
炉への上記混合物の充填密度の下限としては、無水ベースで700kg/mが好ましく、720kg/mがより好ましい。一方、炉への上記混合物の充填密度の上限としては、特に限定されないが、石炭の比重を考慮すると無水ベースで900kg/mが限界と考えられる。上記混合物の充填密度が上記下限未満であると、得られるコークスの強度が不十分となるおそれがある。
【0044】
乾留温度(最高到達温度)の下限としては、950℃が好ましく、1000℃がより好ましい。一方、乾留温度の上限としては、1200℃が好ましく、1100℃がより好ましい。また、乾留時間(乾留温度保持時間)の下限としては、炉の大きさにもよるが、例えば1門30トンのコークス炉の場合、8時間が好ましく、10時間がより好ましい。一方、乾留時間の上限としては、24時間が好ましく、20時間がより好ましい。
【0045】
当該コークスの製造方法では、副生炭によりコークス化反応時の過剰な発泡や膨張が抑制されるので、乾留工程における混合物の昇温速度を比較的大きくすることができ、コークスの生産性を向上できる。乾留工程における混合物の昇温速度の下限としては、1℃/minが好ましく、2℃/minがより好ましい。一方、上記昇温速度の上限としては、5℃/minが好ましく、4℃/minがより好ましい。上記昇温速度が上記下限未満であると、コークスの製造効率が不十分となるおそれがある。逆に、上記昇温速度が上記上限を超えると、得られるコークスの強度が不十分となるおそれがある。
【0046】
<利点>
当該コークスの製造方法では、一般炭由来の粘結材の製造過程で副生する副生炭をコークス原料に混合することで、コークス化反応時に粘結材が副生炭の気孔中に入り込み、過剰な発泡や膨張が抑制できる。このため、当該コークスの製造方法を用いることで、強度の高いコークスを製造することができる。また、当該コークスの製造方法では、低品位炭を用いるので、コークスの製造コストが比較的低い。
【0047】
[その他の実施形態]
なお、本発明のコークスの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0048】
上記実施形態では、一般炭由来の粘結材の製造過程で得られる固形分濃縮液から製造される副生炭を用いること、つまり同じ一般炭から並行して製造される副生炭を用いることを説明したが、異なる一般炭から製造される副生炭を用いることもできる。つまり、同じ種類の一般炭であっても粘結材とは異なる時期に製造された副生炭や、異なる種類の一般炭から製造された副生炭を用いることもできる。なお、製造効率や過剰な発泡や膨張の抑制効果の観点から、同じ一般炭から並行して製造される副生炭を用いることが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[コークス原料の準備]
以下に詳述するように、低品位炭として亜瀝青炭、粘結材として一般炭(瀝青炭)の溶剤抽出処理により得られた無灰炭、及びこの溶剤抽出処理による無灰炭の製造過程で副生する副生炭を準備した。
【0051】
(低品位炭)
低品位炭として用いた亜瀝青炭は、粉砕し、篩い分けによって粒子径が0.5mm以上1.0mm以下であるもの(平均目開き1.0mmの篩を通過し、平均目開き0.5mmの篩を通過しなかったもの)を使用した。なお、この低品位炭をJIS−M−8812(2006)で規定される工業分析方法により分析した分析値を表1に示す。
【0052】
(粘結材及び副生炭)
粘結材及び副生炭は、瀝青炭を粒子径が1mm以下となるよう粉砕してから80℃で真空乾燥したもの原料とし、1メチルナフタレンを主体とする溶剤によって、温度420℃、圧力2MPaで可溶成分を溶出させ、濾過により抽出液と固形分濃縮液とを分離した。抽出液及び固形分濃縮液をそれぞれ160℃で蒸留し、さらに160℃で真空乾燥して溶剤を分離することによって、それぞれ粘結材及び副生炭を作製した。また、粘結材及び副生炭は、粒子径が0.15mm以下となるよう粉砕して使用した。なお、この粘結材及び副生炭をJIS−M−8812(2006)で規定される工業分析方法により分析した分析値を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
なお、表1の灰分、揮発成分及び固定炭素の含有率は、石炭を乾燥させたときの質量を基準(db.)として示しており、JIS−M8812:2006に準じて測定した値である。また、Odiffとは、酸素の含有率をJIS−M−8813:2006の附属書5に従い、100からC、H、N、Sの含有率を減じて求めた値を意味する。
【0055】
<副生炭の効果>
まず、副生炭の有無の効果を検証するため、上記低品位炭及び上記粘結材を混合した、すなわち副生炭を含まない原料を、低品位炭の割合を変化させて4種類準備した。また、上記低品位炭、上記粘結材及び上記副生炭を混合した、すなわち副生炭を含む原料を、低品位炭の割合を変化させて5種類準備した。なお、副生炭は、質量比で粘結材の0.5〜0.7倍の量を加えた。
【0056】
上記9種類の原料それぞれについて、各4.0gの混合物をそれぞれ内径20mm、内部高さ40mmのSUS310S製の焼成管に充填密度800kg/mで充填した。なお、上記焼成管の蓋は、底面が直接混合物層の上面に載置されるように作られており、その重量(200g)が混合物に加わることによってコークス炉内中心部の原料石炭(混合物)に加わる圧力(6.24kPa)を再現するようになっている。
【0057】
上記混合物を充填した焼成管をヤマト科学社のマッフル炉「FO410」の炉内に配置し、20L/minの窒素気流中で、焼成温度(乾留温度)を1000℃、焼成時間を30分として焼成することによりコークスの試作品を得た。なお、焼成温度までの昇温速度は、3℃/minとした。焼成後は、窒素気流中で200℃以下となるまで自然冷却を行った。このようにして副生炭を含まない原料から製造されるコークス4種類と、副生炭を含む原料から製造されるコークス、すなわち本発明の製造方法により製造されるコークス5種類とを得た。
【0058】
得られたコークスの強度は、島津製作所のロードセル「AG−IS−5kN」を用い、JIS−A1113(2006)に準拠した「間接引っ張り強度」として測定した。結果を図1に示す。なお、図1のグラフで低品位炭の割合(質量%)は、原料全体、すなわち低品位炭、粘結炭、及び副生炭の合計質量に対する割合とした。
【0059】
図1から、副生炭を含む原料を用いたコークスは、副生炭を含めない原料を用いたコークスに比べて強度が1.5倍以上向上している。このことから、コークス製造の原料として、副生炭を混合することで、コークスの強度を高められることが分かる。
【0060】
<制御パラメータの検討>
得られるコークスの強度を高めるための配合比基準を導出するため、さらに上記低品位炭、上記粘結材及び上記副生炭の混合比率を表2に示す混合比率(含有率)とした原料を準備した。なお、低品位炭、粘結材及び副生炭を混合した実施例1〜12に示す原料に加えて、低品位炭を混合しない参考例1〜4に示す原料も合わせて準備した。
【0061】
準備した実施例1〜12、参考例1〜4に示す原料を用いて、上述の副生炭の効果で説明したコークスの製造方法と同様にして実施例1〜12、参考例1〜4のコークスを得た。また、得られたコークスは、上述の副生炭の効果で説明した強度測定方法と同様にしてコークスの強度を測定した。結果を表2に示す。なお、コークスの強度は、4.2MPa以上である場合に十分な強度を有すると判断した。
【0062】
[配合比基準の導出]
実施例1〜12及び参考例1〜4の混合物に対して、
(a)副生炭の含有率と粘結材の揮発成分の分率との差
(b)低品位炭の固定炭素分率と副生炭の含有率との合計
(c)粘結材の含有率と(b)の合計との比
を算出した。なお、粘結材の揮発成分は、表2の粘結材の含有率に表1の粘結材の揮発成分量を乗じて算出した。同様に低品位炭の固定炭素分率は、表2の低品位炭の含有率に表1の低品位炭の固定炭素率を乗じて算出した。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2において強度の「2.5未満」とは、正確な強度測定のできるコークスの形成が困難であったことを意味する。
【0065】
(a)の差について、例えば粘結材の揮発成分の分率がほぼ等しい実施例2、7、11を比較すると、(a)の差が負である実施例11においてコークスの強度が下がる。このコークスの強度低下は、粘結材の揮発成分によるコークス化反応時の過剰な発泡や膨張と考えられる。このことから(a)の差を0以上とすることで、コークス化反応時の過剰な発泡や膨張の抑制効果を高められることが分かる。
【0066】
(b)の合計について、例えば粘結材の揮発成分の分率が比較的高い実施例2、3、7、8、12を比較すると、(b)の合計が36質量%未満である実施例8及び12においてコークスの強度が下がる。このことから、(b)の合計、すなわちコークス構造の主骨格を形成する炭素量を36質量%以上とすることで、主にコークス構造の主骨格が十分に形成されると考えられ、コークスの強度が向上することが分かる。
【0067】
(c)の比について、例えばコークスの主骨格を形成する炭素量を表していると考えられる(b)の合計がほぼ等しい実施例2、6、9、10を比較すると、(c)の比が0.95未満である実施例9においてコークスの強度が下がる。(c)の比を0.95以上とすることで、つまり(b)の合計に対して十分な粘結材を付与することでコークス構造の主骨格に付与される粘結性が高められたことが分かる。
【0068】
また、(a)の差が0質量%以上35質量%以下、(b)の合計が36質量%以上50質量%以下、(c)の比が0.95以上2以下である実施例1〜3、5〜7、10は、上記3つの基準のいずれかを満たさない実施例4、8、9よりもコークスの強度が高い。つまり、上記3つの基準を全て満たすことで、コークスの強度をより高められることが分かる。
【0069】
また、実施例1〜3、5〜7、10のコークスを亜瀝青炭を含有させない参考例1〜4と比較すると、同等の粘結材含有量に対して亜瀝青炭を含有させても、同等のコークスの強度が得られる。このことから本発明のコークスの製造方法を用いることで、コークスの強度を維持しつつ、製造コストが低減できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、当該コークスの製造方法を用いることで、比較的強度が大きいコークスを比較的安価に製造できる。
図1