特開2018-204057(P2018-204057A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204057(P2018-204057A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】炭素コート方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/26 20060101AFI20181130BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20181130BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20181130BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20181130BHJP
   C01B 33/02 20060101ALN20181130BHJP
【FI】
   C23C16/26
   C23C16/455
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   C01B33/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-108042(P2017-108042)
(22)【出願日】2017年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】井山 彩人
【テーマコード(参考)】
4G072
4K030
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072GG03
4G072GG05
4G072JJ02
4G072QQ09
4G072RR01
4G072RR11
4G072UU30
4K030AA09
4K030AA16
4K030BA27
4K030CA01
4K030CA18
4K030EA06
4K030FA10
4K030GA07
4K030KA03
4K030LA11
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA08
5H050FA18
5H050GA24
5H050HA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基材粒子の炭素コート量を均一化し得る炭素コート方法を提供する。
【解決手段】反応管20に収容した基材粒子Pを、炭素源ガスG1の存在下で炭素源ガスG1の炭化温度以上に加熱する、基材粒子Pの炭素コート方法であって、反応管20の長手方向の一端側から他端側に向けて炭素源ガスG1を流通させる第1態様と、反応管20の前記他端側から前記一端側に向けて炭素源ガスG1を流通させる第2態様と、を各々一回以上行う、炭素コート方法。前記第1態様を行う時間tと前記第2態様を行う時間tとの関係を0.5t≦t≦1.5tとする炭素コート法。基材粒Pがリチウム二次電池用の負極活物質質を含む負極材料粒子である、炭素コート法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管に収容した基材粒子を、炭素源ガスの存在下で前記炭素源ガスの炭化温度以上に加熱する、前記基材粒子の炭素コート方法であって、
前記反応管の長手方向の一端側から他端側に向けて前記炭素源ガスを流通させる第1態様と、
前記反応管の前記他端側から前記一端側に向けて前記炭素源ガスを流通させる第2態様と、を各々一回以上行う、炭素コート方法。
【請求項2】
前記第1態様を行う時間tと、前記第2態様を行う時間tとの関係を、
0.5t≦t≦1.5tとする、請求項1に記載の炭素コート方法。
【請求項3】
前記反応管の直径φと前記反応管の加熱長さLとの関係は、2φ≦Lである、請求項1又は請求項2に記載の炭素コート方法。
【請求項4】
前記基材粒子は、リチウムイオン二次電池用の負極活物質を含む負極材料粒子である、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の炭素コート方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子を炭素コートする基材粒子の炭素コート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の基材粒子に、炭素コートを行う技術が知られている。
例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられるケイ素含有負極活物質は、理論容量が大きい反面、導電性に劣る。このためリチウムイオン二次電池用の負極材料として、当該ケイ素含有負極活物質に炭素コートを行ったものを用いる場合がある。
【0003】
ケイ素含有負極活物質に炭素コートを行う方法として、化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法を採用することが提案されている。具体的には、基材粒子としてのケイ素含有負極活物質を反応管に収容し、炭素源ガスの存在下で当該基材粒子を炭素源ガスの炭化温度以上に加熱すれば、基材粒子に触れた炭素源ガスを炭化させることができ、基材粒子の表面を炭素コートできる。
【0004】
しかし、単に上記の炭素コート方法を行うだけでは、反応管内に存在する多数の基材粒子の炭素コート量を均一化することは困難であった。例えば特許文献1には、その理由として、炭素源ガスとともに反応管に供給するキャリアガスが、反応管内に乱流を生じさせることが挙げられている。当該特許文献1には、キャリアガスの乱流によって、反応管内に温度ムラや炭素源ガスの逆流が生じ、その結果、CVDの制御が困難となり、ひいては炭素コートの膜質にばらつきが生じる旨が説明されている。そして、当該特許文献1には、邪魔板等により反応管へのキャリアガスの吹出方向を調整することで、キャリアガスの乱流を抑制する技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−138315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者は、基材粒子の炭素コート方法の更なる向上を志向して鋭意研究を重ねた。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、基材粒子の炭素コート量を均一化し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特許文献1に紹介されている炭素コート方法によっても基材粒子の炭素コート量を均一化し得ない理由を、以下のように推測した。
【0008】
特許文献1に紹介されている炭素コート方法によると、反応管内の乱流を抑制することで、反応管のガス流路に直交する平面、つまり、反応管のガス流路断面方向における炭素源ガスのムラを低減することはできる。しかし、当該特許文献1の炭素コート方法によっても、反応管のガス流路方向における炭素源ガスのムラを低減することは困難である。既述したように、炭素源ガスは反応管内で加熱され炭化して基材粒子の表面にコートされるため、反応管のガス流路下流側における炭素源ガス濃度は、必然的に、反応管のガス流路上流側における炭素源ガス濃度よりも少なくなるためである。
本発明者は、この推測を基に更なる研究を重ね、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の炭素コート方法は、
反応管に収容した基材粒子を、炭素源ガスの存在下で前記炭素源ガスの炭化温度以上に加熱する、前記基材粒子の炭素コート方法であって、
前記反応管の長手方向の一端側から他端側に向けて前記炭素源ガスを流通させる第1態様と、
前記反応管の前記他端側から前記一端側に向けて前記炭素源ガスを流通させる第2態様と、を各々一回以上行う、炭素コート方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭素コート方法によると、基材粒子の炭素コート量を均一化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の炭素コート方法に用いたコート装置を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の炭素コート方法に用いたコート装置によって、第1態様を実施している様子を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の炭素コート方法に用いたコート装置によって、第2態様を実施している様子を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0013】
本発明の炭素コート方法は、
反応管に収容した基材粒子を、炭素源ガスの存在下で前記炭素源ガスの炭化温度以上に加熱する、前記基材粒子の炭素コート方法であって、
前記反応管の長手方向の一端側から他端側に向けて前記炭素源ガスを流通させる第1態様と、
前記反応管の前記他端側から前記一端側に向けて前記炭素源ガスを流通させる第2態様と、を各々一回以上行う、炭素コート方法である。
【0014】
既述した特許文献1に紹介されているような従来の炭素コート方法によると、反応管の長手方向に対して一方向のみに炭素源ガスを流通させていた。この態様は、ごく一般的なロータリーキルン型のCVD装置の仕様に基づいて炭素コートを行うのであれば、当然である。しかし、本発明者は、このように炭素源ガスを一方向のみに流通させることこそが、基材粒子の炭素コート量にムラが生じる要因であることを見出した。そして、従来の一般的なCVD装置の仕様とは異なる方法、つまり、反応管の長手方向の一端側から他端側に向けて炭素源ガスを流通させる第1態様と、反応管の他端側から一端側に向けて炭素源ガスを流通させる第2態様と、を各々一回以上行うことで、反応管の長手方向の全体にわたって、反応管内の基材粒子への炭素コート量を均一化し得ることに到達した。
【0015】
以下、本発明の炭素コート方法の詳細を説明する。
【0016】
本発明の炭素コート方法における反応管は、材質や大きさ、形状には特に限定はなく、また、反応管は回転しても良いし、回転しなくても良い。例えば、ホットウォール型、コールドウォール型、横型、縦型などの型式の、流動層反応炉、回転炉、トンネル炉、バッチ式焼成炉、ロータリーキルンなどの公知のCVD装置における反応炉を、本発明の炭素コート方法における反応管として用いても良い。反応管の加熱方式は特に問わず、例えば、反応管としてロータリーキルンの反応炉を反応管とする場合には、外熱式のロータリーキルンを選択しても良いし、内熱式のロータリーキルンを選択しても良い。但し、反応管を流通する炭素源ガスが燃焼してしまうことを防止するために、反応管内は非酸化性雰囲気であることが好ましく、そうすると、例えばガス燃焼式の内熱式ロータリーキルンに比べると外熱式ロータリーキルンを選択するのがより好ましい。
【0017】
基材粒子の炭素コート量を、反応管内全体においてより均一化するためには、炭素コートを行う間、反応管を回転させるのが好ましい。
反応管を回転させつつ炭素コートを行うことで、基材粒子を流動状態にしつつ炭素コートを行うことができる。このようにすることで、様々な位置にある基材粒子について、その外表面全体を炭素源ガスに満遍なく接触させることができ、反応管内の様々な位置において基材粒子の炭素コート量をより均一にできる。
【0018】
さらに、反応管の内部に邪魔板等を設けることで、基材粒子を撹拌しながら炭素源ガスと接触させても良い。この場合、一部の基材粒子は、邪魔板に留まり、反応管の回転に伴って所定高さから落下する。こうすることで反応管内の基材粒子が撹拌され、反応管内において基材粒子が部分的に密度高く存在する場合等、一部の基材粒子がそのままでは炭素源ガスに接触し難い状況にあっても、当該炭素源ガスに接触し難い基材粒子を、炭素源ガスに接触し易い位置に移動させることが可能である。こうすることで、基材粒子の炭素コート量を反応管内全体において更に均一化できる。
【0019】
ところで、従来の炭素コート方法のように、反応管内に炭素源ガスを一方向からのみ流通させる場合には、炭素源ガスの流路方向、つまり、反応管の長手方向の両端側において基材粒子の炭素コート量に差が生じる。以下、必要に応じて、「反応管の長手方向の両端側において生じる、基材粒子の炭素コート量の差」を、単に、「コート量差」と略する。
【0020】
反応管の直径が一定だとすると、反応管の加熱長さが長ければ長い程、当該コート量差は大きくなる。本発明の炭素コート方法によると、反応管の長手方向の一端側から他端側に向けて炭素源ガスを流通させる第1態様と、反応管の他端側から一端側に向けて炭素源ガスを流通させる第2態様と、を各々一回以上行うことで、反応管の加熱長さが長くても、上記のコート量差を低減できる。このような本発明の炭素コート方法による効果は、反応管の直径が一定だとすると、反応管の加熱長さが長ければ長い程、顕著になる。
このことを考慮すると、反応管の直径φと反応管の加熱長さLとの関係は、L≧2φであるのが好ましく、L≧3φであるのがより好ましく、L≧4φであるのが更に好ましく、L≧5φであるのが特に好ましい。なお、反応管の加熱長さとは、反応管のうちコート時において炭素源ガスの炭化温度以上に加熱される部分の長さを意味する。
【0021】
また、反応管内に炭素源ガスを一方向からのみ流通させる場合の上記のコート量差は、反応管内の基材粒子の密度が高ければ高い程、大きくなる。そして、本発明の炭素コート方法によると反応管内の基材粒子の密度が高くても当該コート量差を低減でき、その効果は、反応管内の基材粒子の密度が高い方が顕著になる。
このことを考慮すると、反応管の加熱容積Cと基材粒子の体積Vとの関係は、1.0C>V≧0.05Cであるのが好ましく、0.8C≧V≧0.1Cであるのがより好ましく、0.7C≧V≧0.3Cであるのが更に好ましい。なお、ここでいう反応管の加熱容積とは、反応管のうちコート時において炭素源ガスの炭化温度以上に加熱される部分の容積を意味する。また、基材粒子の体積とは、基材粒子の嵩高さ、つまり、基材粒子の見掛け上の体積を指す。基材粒子の体積は、メスシリンダ等の測定容器によって測定し得る。より正確を期すためには、基材粒子の体積の測定時には、JIS Z 2512:2012 金属粉−タップ密度測定方法に規定されるタッピングを行うのが好ましい。
【0022】
何れの場合にも、反応管は、長手方向の一端側に、当該長手方向の他端側に向けて炭素源ガスを導入するための導入口を有する。また、反応管の長手方向の他端側に、当該長手方向の一端側に向けて炭素ガスを導入するための導入口を有する。以下、必要に応じて、長手方向の一端を単に一端と略し、長手方向の他端を単に他端と略す。また、反応管の一端側の導入口を第1導入口と称し、反応管の他端側の導入口を第2導入口と称する。第1導入口及び第2導入口は、必要に応じて、更にキャリアガスの導入口たり得る。
更に、反応管は、一端側及び他端側に各々炭素源ガスを排出するための排出口を有する。以下、必要に応じて、一端側の排出口を第1排出口と称し、他端側の排出口を第2排出口と称する。第1排出口及び第2排出口は、必要に応じて、更にキャリアガスの排出口たり得る。更に、必要に応じて、第1排出口を第1導入口と兼用し、第2排出口を第2導入口と兼用しても良い。
【0023】
上記したように、本発明の炭素コート方法は、第1態様及び第2態様を各々一回以上行う。第1態様においては、第1導入口を経て反応管に炭素源ガスを導入し、反応管内の排ガスを第2排出口を経て排出する。また、第2態様においては、第2導入口を経て反応管に炭素源ガスを導入し、反応管内の排ガスを第1排出口を経て排出する。第1態様と第2態様との切り替えは、適宜行えば良く、そのタイミングは特に問わないが、上記のコート量差を低減し反応管内の様々な位置において基材粒子の炭素コート量をより均一にするためには、第1態様と第2態様とを同程度の時間行うのが好ましい。具体的には、第1態様を行う時間をtとし、第2態様を行う時間をtとすると、tとtとの関係は、0.5t≦t≦1.5tであるのが好ましく、0.7t≦t≦1.3tであるのがより好ましく、0.9t≦t≦1.1tであるのが更に好ましく、t=tであるのが特に好ましい。なお、ここでいうt、tは、第1態様を一回行う時間、第2態様を一回行う時間を意味する。
【0024】
第1態様及び第2態様は一回ずつ行っても良いが、各々複数回行うのが好ましい。この場合、tの積算値Tと、tの積算値Tとの関係もまた、0.5T≦T≦1.5Tであるのが好ましく、0.7T≦T≦1.3Tであるのがより好ましく、0.9T≦T≦1.1Tであるのが更に好ましく、T=Tであるのが特に好ましい。
【0025】
更に、上記のコート量差をより低減するためには、第1態様及び第2態様は、各々、ある程度長い時間行うのが好ましい。具体的には、t及びtはそれぞれ独立に2分以上であるのが好ましく、5分以上であるのがより好ましく、10分以上であるのが更に好ましい。なお、第1態様及び第2態様を複数回ずつ行う場合、各第1態様は同じ時間行っても良いし、それぞれ異なる時間行っても良い。第2態様についても同様である。
【0026】
反応管に流通させる炭素源としては、非酸化性雰囲気下での加熱によって熱分解して炭化し得るものが用いられ、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの不飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、安息香酸、サリチル酸、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、ベンゾフラン、ピリジン、アントラセン、フェナントレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、脂肪酸類などから選択される一種又は混合物が挙げられる。
【0027】
これらの炭素源は、ガス状で反応管を流通すれば良く、炭化温度に加熱された状態で反応管に導入されても良いし、反応管内で炭化温度に加熱されても良い。
また、炭素源は、常温でガス状となるものであっても良いし、炭化温度近傍でガス状となるものであっても良いが、100℃以下でガス状となるものが好ましく、50℃以下でガス状となるものがより好ましく、常温でガス状となるものが更に好ましい。炭素源をガス化する工程が容易であったり、当該工程が不要となったりするためである。
具体的には、炭素源としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、エチレン、プロピレン、アセチレンから選択される一種又は混合物であることが好ましい。
【0028】
これらの炭素源のガス、つまり炭素源ガスは、単体で反応管に供給しても良いが、キャリアガスとともに反応管に供給するのが好ましい。キャリアガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴンなどの一般的な不活性ガスを用いれば良い。
炭素源ガスとキャリアガスとの量比は、体積比で、1:100〜2:1の範囲であることが好ましく、1:10〜1:1の範囲であることがより好ましい。
炭素源ガスとキャリアガスとの混合ガス中の炭素源ガスの体積比が大きければ、比較的厚い炭素コート層を効率良く形成できる反面、流路上流側における基材粒子の炭素コート量と流路下流側における基材粒子の炭素コート量との差が大きくなり易い。炭素源ガスとキャリアガスとの量比を適切な範囲とすることで、基材粒子の炭素コート量を反応管内全体において更に均一化できる。
【0029】
なお、炭素源として用い得る有機物としては、固体状、液体状、ガス状のものがあるところ、本発明の炭素コート方法においては、特に、ガス状の炭素源を用いることで、個々の基材粒子を均一かつ薄く炭素コートできる利点がある。換言すると、炭素源ガスを用いる場合、炭素コートにより個々の基材粒子の表面に形成されるコート層は、固体や液体の炭素源を用いる場合に比べて、薄くかつ均一である。なお、例えば基材粒子が多孔質である場合や外部に連通する空洞を有する場合等には、炭素源ガスを用いることで、基材粒子の外表面を炭素コートできるだけでなく基材粒子の内部表面も炭素コートできる利点がある。
【0030】
本発明の炭素コート方法においては、反応管に収容した基材粒子を、炭素源ガスの存在下で前記炭素源ガスの炭化温度以上に加熱する。このときの加熱温度は、炭素源ガスの種類によって異なるが、炭素源ガスが炭化する温度より50℃以上高い温度とすることが望ましい。しかし、加熱温度が過度に高すぎると、系内に遊離炭素(煤)が発生する場合があるので、遊離炭素(煤)が発生しない条件を選択することが好ましい。形成される炭素層の厚さは、処理時間によって制御することができる。
【0031】
本発明の炭素コート方法において、炭素コートされる基材粒子の材料や大きさは特に問わない。したがって、本発明の炭素コート方法によると、種々の用途に供するための種々の基材粒子を炭素コートし得る。基材粒子の一例として、リチウムイオン二次電池用の負極活物質を挙げることができる。
基材粒子の平均粒子径として、0.01μm〜5000μm、0.05μm〜1000μm、0.1μm〜100μmの範囲を例示できる。なお、本明細書でいう平均粒子径とは、一般的なレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で測定した場合のD50を意味する。
なお、本発明の炭素コート方法は、特に、ケイ素含有負極活物質を炭素コートする方法として有用である。
【0032】
ケイ素含有負極活物質としては、ケイ素単体、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料が挙げられる。更には、ケイ素系材料として、国際公開第2014/080608号に開示されるシリコン材料を用いることも好ましい。国際公開第2014/080608号には、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料が開示されている。そして当該国際公開第2014/080608号には、CaSiと酸とを反応させてCaを除去したポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成し、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させたシリコン材料を製造したこと、及び、当該シリコン材料を活物質として具備するリチウムイオン二次電池が記載されている。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施例に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【0035】
(実施例1)
実施例1の炭素コート方法は、基材粒子として負極材料粒子、具体的には粒子状のケイ素含有負極活物質を用い、炭素源ガスとしてプロパンを用いた例である。図1は、実施例1の炭素コート方法に用いたコート装置を模式的に表す説明図である。図2は、実施例1の炭素コート方法に用いたコート装置によって、第1態様を実施している様子を模式的に表す説明図である。図3は、実施例1の炭素コート方法に用いたコート装置によって、第2態様を実施している様子を模式的に表す説明図である。以下、実施例において上、下、前、後とは図1に示す上、下、前、後を指す。
【0036】
(コート装置)
実施例1の炭素コート方法においては、コート装置1として、外熱式のロータリーキルンを用いた。図1に示すように、コート装置1は、反応管2、加熱部3、第1ロール41、第2ロール42、駆動部5、炭素源ガス容器G1、キャリアガス容器G2、ガス導入経路部7、及び、ガス排出経路部8を有する。
【0037】
反応管2は、本体部20、第1ロータリージョイント21、第2ロータリージョイント22、第1ホイール23、第2ホイール24及びスプロケット25を有する。
【0038】
本体部20は石英製であり、円筒状をなす。本体部20の内部は反応管2の内部に相当し、本体部20の内径は反応管2の直径に相当する。本体部20の長手方向とは本体部20の軸方向を意味する。更に、本体部20の長手方向の長さのうち後述する加熱部3により加熱される部分の長さは、反応管2の加熱長さに相当する。当該反応管2の加熱長さは、本体部20の長手方向の長さのうち加熱部3で覆われている部分の長さ、と言い換えることもできる。
本体部20は、長手方向(すなわち軸方向)を前後に向け、略水平に配置されている。反応管2の直径φと、反応管2の加熱長さLとの関係は、5φ=Lであり、2φ≦Lを満足する。
【0039】
本体部20の長手方向の一端部には第1ロータリージョイント21が取り付けられ、本体部20の軸方向の他端部には第2ロータリージョイント22が取り付けられている。
【0040】
第1ロータリージョイント21は、本体部20の内部に連絡する第1ジョイント経路部27と、当該第1ジョイント経路部27に取り付けられている第1バルブV1と、を有する。第1ロータリージョイント21は、本体部20の前端部において、本体部20の回転を許容し、かつ、本体部20の内部と第1ジョイント経路部27との連絡を保ちつつ、本体部20の内部を本体部20の外部から気密にシールする。
第1バルブV1は三方電磁弁であり、第1ジョイント経路部27、並びに、後述する第1ガス導入経路部71及び第1ガス排出経路部81に接続されている。第1バルブV1は、第1ガス導入経路部71と第1ガス排出経路部81との一方を第1ジョイント経路部27に接続し、他方を第1ジョイント経路部27から遮断する。第1バルブV1のうち第1ガス導入経路部71に接続されている部分は、既述した第1導入口に相当する。また、第1バルブV1のうち第1ガス排出経路部81に接続されている部分は、既述した第1排出口に相当する。
【0041】
第2ロータリージョイント22は、本体部20の内部に連絡する第2ジョイント経路部28と、当該第2ジョイント経路部28に取り付けられている第2バルブV2と、を有する。第2ロータリージョイント22は、本体部20の後端部において、本体部20の回転を許容し、かつ、本体部20の内部と第2ジョイント経路部28との連絡を保ちつつ、本体部20の内部を本体部20の外部から気密にシールする。
第2バルブV2も三方電磁弁であり、第2ジョイント経路部28、並びに、後述する第2ガス導入経路部72及び第2ガス排出経路部82に接続されている。第2バルブV2は、第2ガス導入経路部72と第2ガス排出経路部82との一方を第2ジョイント経路部28に接続し、他方を第2ジョイント経路部28から遮断する。第2バルブV2のうち第2ガス導入経路部72に接続されている部分は、既述した第2導入口に相当する。また、第2バルブV2のうち第2ガス排出経路部82に接続されている部分は、既述した第2排出口に相当する。
【0042】
第1ホイール23及び第2ホイール24は、各々、本体部20と同軸的に設けられ本体部20の外周面から突出する環状をなす。第1ホイール23は本体部20の前端側に位置し、第2ホイール24は本体部の後端側に位置する。したがって、第1ホイール23及び第2ホイール24は本体部20の長手方向に離間している。
スプロケット25は、第1ホイール23及び第2ホイール24と同様に、本体部20と同軸的に設けられ本体部20の外周面から突出する環状をなす。スプロケット25は、第2ホイール24よりも更に本体部20の後端側に位置する。
【0043】
加熱部3は、電気炉であり、第1ホイール23と第2ホイール24との間で、本体部20の外側を覆う。本体部20、並びに、本体部20の内部の基材粒子及び炭素源ガスは、加熱部3によって加熱される。
【0044】
第1ロール41は、第1ホイール23の下側に位置し、回転可能である。第1ホイール23の軸方向と第1ロール41の軸方向とは平行であり、第1ロール41の周壁は第1ホイール23の周壁に当接している。
第2ロール42は、第2ホイール24の下側に位置し、回転可能である。第2ホイール24の軸方向と第2ロール42の軸方向とは平行であり、第2ロール42の周壁は第2ホイール24の周壁に当接している。
第1ロール41及び第2ロール42は、本体部20の回転を許容しつつ本体部20を支持する。
【0045】
駆動部5はギアベルト50と、ギアベルト50に接続された駆動源PSとを有する所謂プーリ機構である。ギアベルト50はスプロケット25に噛合している。
なお駆動部5は、これに限定されず、例えばモータと当該モータの回転軸に一体化されたギアとで構成しても良い。
【0046】
炭素源ガス容器G1は、ガスボンベであり、プロパンガスを収容している。炭素源ガス容器G1の吹出口は二つに分岐している。炭素源ガス容器G1における一方の吹出口を第1炭素供給口co1といい、他方の吹出口を第2炭素供給口co2という。
キャリアガス容器G2は、ガスボンベであり、非酸化性ガスであるアルゴンガスを収容している。キャリアガス容器G2の吹出口もまた二つに分岐している。キャリアガス容器G2における一方の吹出口を第1キャリア供給口io1といい、他方の吹出口を第2キャリア供給口io2という。
【0047】
第1ガス導入経路部71は、第1炭素供給口co1、第1キャリア供給口io1及び第1バルブV1を連絡する。
第2ガス導入経路部72は、第2炭素供給口co2、第2キャリア供給口io2及び第2バルブV2を連絡する。
第1ガス排出経路部81は第1バルブV1に接続され、第2ガス排出経路部82は第2バルブV2に接続されている。第1ガス排出経路部81及び第2ガス排出経路部82は、図略のフィルタを介して外界に連絡する。
【0048】
以下、実施例1の炭素コート方法を説明する。
【0049】
(基材粒子の製造)
濃度36質量%のHCl水溶液を、氷浴中で冷却しつつ、0℃とした。アルゴンガス気流にて、HCl水溶液100mLに対して5.2gとなる量のCaSiを加えて撹拌した。反応液からの発泡が完了したのを確認した後に、得られた反応液を濾過し、残渣を蒸留水で洗浄した。その後、残渣を更にアセトンで洗浄し、真空乾燥して層状シリコン化合物を得た。
【0050】
上記層状シリコン化合物を、Oの量が1体積%以下のアルゴンガス雰囲気下にて、900℃で1時間保持する熱処理を行い、シリコン材料を得た。このシリコン材料に対してCuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。得られたXRDチャートから、Si微粒子由来と考えられるハローが観測された。また、Siに関して、XRDチャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いてシェラーの式から算出したSi結晶子サイズは約7nmであった。
【0051】
なお、上記熱処理においては、層状シリコン化合物のSi−H結合が切断されて水素が離脱し、Si−Si結合の切断と再結合が生じる。Si−Si結合の再結合は同じ層内で生じるとともに隣接する層どうしでも生じ得る。以上の工程でシリコン材料が得られる。このシリコン材料を粉砕して粉状にしたものを、基材粒子として、以下の工程に用いた。なお、得られたシリコン材料を走査型電子顕微鏡で観察すると、シリコン材料は複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有しているのがわかる。なお、当該シリコン材料の詳細は国際公開第2014/080608号に開示されている。
【0052】
(炭素コート)
実施例1の炭素コート方法においては、基材粒子をコート装置1の本体部20に収容し、本体部20を回転させ、かつ、加熱部3を860℃に加熱しつつ、20分間の第1態様と20分間の第2態様とを交互に合計2時間行った。以下、具体的に説明する。
【0053】
〔第1態様〕
第1態様において加熱部3、駆動部5、第1バルブV1及び第2バルブV2の制御は以下のように行った。実施例1の炭素コート方法においてはこれらの制御を手動で行ったが、コート装置にこれらの制御を行う制御部を設けても良い。
加熱部3は860℃に加熱され、加熱部3に覆われた本体部20もまた略同じ温度に加熱された。なお、加熱部3及び本体部20は、第1態様を開始する前に予熱され、上記の温度に到達した。
駆動部5の駆動源PSは回転駆動され、駆動源PSに接続されたギアベルト50を介してスプロケット25が回転した。そして、スプロケット25に一体化されている本体部20もまた回転した。このときの回転速度は1rpmであった。
【0054】
図2に示すように、第1バルブV1は、第1ジョイント経路部27と第1ガス導入経路部71とを接続するとともに、第1ジョイント経路部27と第1ガス排出経路部81との接続を遮断するよう切り替えられた。
一方、第2バルブV2は、第2ジョイント経路部28と第2ガス排出経路部82とを接続するとともに、第2ジョイント経路部28と第2ガス導入経路部72との接続を遮断するよう切り替えられた。
【0055】
したがって、本体部20の内部には、第1ジョイント経路部27を通じて、炭素源ガスであるプロパンガスと、キャリアガスであるアルゴンガスとの混合ガスが導入された。混合ガスにおけるプロパンガスとアルゴンガスとの体積比は1:4であった。この混合ガスは、基材粒子pに接触しつつ、本体部20の内部を前側から後側に向けて流通した。混合ガスに含まれる炭素源ガスは炭化温度にまで加熱され、基材粒子pの表面は炭素コートされた。また、本体部20の後端にまで到達した混合ガスは、第2ジョイント経路部28を通じて本体部20の外部に排出され、更に、第2ガス排出経路部82を通じて外界に排出された。この第1態様は、20分間継続された。
【0056】
〔第2態様〕
第1態様の開始から20分後に、第1態様を中止して第2態様を開始した。
第2態様においては、加熱部3、駆動部5、第1バルブV1及び第2バルブV2の制御を以下のように行った。
加熱部3は引き続き860℃に加熱された。
駆動部5の駆動源PSは引き続き回転駆動され、本体部20もまた回転した。このときの回転速度は1rpmであった。
【0057】
図3に示すように、第2バルブV2は、第2ジョイント経路部28と第2ガス導入経路部72とを接続するとともに、第2ジョイント経路部28と第2ガス排出経路部82との接続を遮断するよう切り替えられた。
一方、第1バルブV1は、第1ジョイント経路部27と第1ガス排出経路部81とを接続するとともに、第1ジョイント経路部27と第1ガス導入経路部71との接続を遮断するよう切り替えられた。
【0058】
したがって、本体部20の内部には、第2ジョイント経路部28を通じて上記の混合ガスが導入された。混合ガスは、基材粒子pに接触しつつ、本体部20の内部を後側から前側に向けて流通し、本体部20に収容されている基材粒子pの表面は炭素コートされた。本体部20の前端にまで到達した混合ガスは、第1ジョイント経路部27を通じて本体部20の外部に排出され、更に、第1ガス排出経路部81を通じて外界に排出された。この第2態様もまた20分間行われた。
【0059】
上記の第1態様と第2態様とを交互に合計2時間繰り返すことで、基材粒子pが炭素コートされた実施例1のコート材料を得た。なお、実施例1のコート材料はリチウムイオン二次電池用の負極材料である。
【0060】
(比較例1)
比較例1の炭素コート方法は、実施例1と同じコート装置を用い、第1態様だけを2時間続けたこと以外は、実施例1の炭素コート方法と同じである。比較例1の炭素コート方法により、比較例1のコート材料を得た。
【0061】
(評価例)
実施例1及び比較例1のコート材料につき、以下の試験を行った。
反応管の前端側で炭素コートされたコート材料、及び、反応管の後端側で炭素コートされたコート材料を、それぞれ採取し、LECOジャパン合同会社製の炭素・硫黄分析装置を用いて、各コート材料の炭素量を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
第1態様のみを行った比較例1のコート材料は、反応管の長手方向の一端側と他端側とで、基材粒子の炭素コート量が著しく不均一であった。これに対して、第1態様と第2態様とを行った実施例1のコート材料は、反応管の長手方向の全体で、基材粒子の炭素コート量を均一化できた。この結果から、本発明の優位性が裏付けられた。
【符号の説明】
【0064】
1 :コート装置 2 :反応管
20 :本体部
21 :第1ロータリージョイント 22 :第2ロータリージョイント
23 :第1ホイール 24 :第2ホイール
25 :スプロケット
27 :第1ジョイント経路部 28 :第2ジョイント経路部
3 :加熱部
41 :第1ロール 42 :第2ロール
5 :駆動部 50 :ギアベルト
7 :ガス導入経路部
71 :第1ガス導入経路部 72 :第2ガス導入経路部
8 :ガス排出経路部
81 :第1ガス排出経路部 82 :第2ガス排出経路部
G1 :炭素源ガス容器 G2 :キャリアガス容器
PS :駆動源
V1 :第1バルブ V2 :第2バルブ
co1 :第1炭素供給口 co2 :第2炭素供給口
io1 :第1キャリア供給口 io2 :第2キャリア供給口
p :基材粒子
図1
図2
図3