【実施例】
【0036】
以下、本発明について、実施例に基づき詳細に説明する。
【0037】
実施例1
相対粘度1.62のポリエチレンテレフタレート樹脂を、ポリマー温度を290℃で、中空部外径8.50mm、内径7.25mmの中空モノフィラメント用の紡糸口金を用いて溶融紡糸した。紡糸した繊維を50℃の水浴中で冷却した後、速度11m/分で捲き取ることなく、90℃の温浴中で延伸し、さらに巻き取ることなく180℃の乾熱雰囲気中で、総延伸倍率が2.5倍となるように延伸し、油剤を付与して捲き取り、外径2.30mm、内径1.40mmのポリエステル中空モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントは十分な機械的物性を有していた。
【0038】
この中空モノフィラメントを10mの長さに切り取り、一端を外径8mm、内径6mmのPTFE製チューブの管内に通し、中空モノフィラメントの中空部が閉塞しないようにエポキシ系接着剤を用いて中空モノフィラメントの一端をPTFE製チューブの管内に固定した(
図3概略模式図を参照)。配管の途中にトラップ管を設けた油回転式の真空ポンプにPTFE製チューブを取り付けた。
【0039】
粘度1672mPa・s(東機産業製 TVB−10型粘度計を用いて測定)のグリセリン中に中空モノフィラメントのもう一端を浸漬させた。中空モノフィラメントのもう一端をグリセリン中に浸漬させた状態で真空ポンプを稼働させ、中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧した。
【0040】
中空モノフィラメントおよびPTFE製チューブの管内を減圧することで、グリセリンが吸い上げられて、中空モノフィラメントの中空部にグリセリンが充填され、中空モノフィラメントの全長にグリセリンが充填された状態で真空ポンプを停止し、ヒートカッターを用いて中空モノフィラメントの両端を溶融切断し、中空モノフィラメントの中空部にグリセリンを封入してなる機能性合成繊維を得た。
【0041】
実施例2
機能性液体として、実施例1で用いたグリセリン80質量%と水20質量%とを混合し、粘度88.9mPa・s(東機産業製 TVB−10型粘度計を用いて測定)のグリセリン水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空モノフィラメントの中空部にグリセリン水溶液を封入し、機能性合成繊維を得た。
【0042】
実施例3
機能性液体として、実施例1で用いたグリセリン60質量%と水40質量%とを混合し、粘度15.6mPa・s(東機産業製 TVB−10型粘度計を用いて測定)のグリセリン水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空モノフィラメントの中空部にグリセリン水溶液を封入し、機能性合成繊維を得た。
【0043】
実施例4
機能性液体として、実施例1で用いたグリセリン40質量%と水60質量%とを混合し、粘度8.4mPa・s(東機産業製 TVB−10型粘度計を用いて測定)のグリセリン水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空モノフィラメントの中空部にグリセリン水溶液を封入し、機能性合成繊維を得た。
【0044】
比較例1
実施例1で溶融紡糸により得られたポリエステル中空モノフィラメントの中空部に、シリンジを用いて、実施例4で用いた機能性液体(グリセリン40質量%と水60質量%とのグリセリン水溶液)を注入したが、中空モノフィラメントの20cmの長さまでグリセリン水溶液が充填された時に、中空部の内圧により中空モノフィラメントが破損し、破損部分からグリセリン水溶液が漏れ出し、機能性液体が充填されてなる機能性合成繊維を得ることができなかった。
【0045】
実施例5
実施例1において、機能性液体として、ポリエチレングリコールを用いて機能性合成繊維を得た。すなわち、実施例1で得られたポリエステル中空モノフィラメントを10mの長さに切り取り、一端を外径8mm、内径6mmのPTFE製チューブの管内に通し、中空モノフィラメントの中空部が閉塞しないようにエポキシ系接着剤を用いて中空モノフィラメントの一端をPTFE製チューブの管内に固定した。配管の途中にトラップ管を設けた真空ポンプ(IWAKI製バキュームポンプ V PUMP−140)にPTFE製チューブを取り付けた。
【0046】
15℃の環境下の中、粘度180mPa・sのポリエチレングリコール(第一工業制約製 PEG400 TVB−10型粘度計を用いて測定)中に中空モノフィラメントのもう一端を浸漬させた。中空モノフィラメントのもう一端をポリエチレングリコール中に浸漬させた状態で真空ポンプを稼働させ、中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧した。
【0047】
中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧することで、ポリエチレングリコールが吸い上げられて中空モノフィラメントの中空部に充填され、中空モノフィラメントの全長にポリエチレングリコールが充填された状態で真空ポンプを停止した。中空モノフィラメントの全長にポリエチレングリコールが充填された状態で、ヒートカッターを用いて中空モノフィラメントを溶融切断し、中空モノフィラメントの中空部にポリエチレングリコールを充填してなる実施例5の機能性合成繊維を得た。
【0048】
実施例5と、実施例1で得られた中空モノフィラメント(中空部に機能性液体を充填していない繊維)を比較例として、温度吸着性を評価し、その結果を表1に示した。表1から分かるように、本発明の機能性繊維は、比較例と比べて温度吸着が早かった。
【0049】
<温度吸着試験>
温度15℃の環境のもと、60℃までオーブンで熱した荷重20gの分銅を試料の上に置き、分銅の温度変化を温度センサーの温度が上がりきった120秒後から60秒ごと、温度変化の少なくなる360秒後まで測定し、試料が温度吸着する速度の変化をみた。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例6
実施例1において、機能性液体として、水にゲル化剤を溶かした水溶液(消火剤)を用いて、以下の方法により、防炎性を有する機能性合成繊維を得た。
【0052】
まず、充填する混合溶液(消化剤)は、10gの寒天を1リットルの水に浸し、その後徐々に昇温させて溶解させた寒天を溶解させた水溶液を得、この寒天水溶液を消化剤とした。なお、寒天水溶液は、流動性を維持するために約90℃の温度にて保温した。
次いで、実施例1で得られたポリエステル中空モノフィラメントを10mの長さに切り取り、一端を外径8mm、内径6mmのPTFE製チューブの管内に通し、中空モノフィラメントの中空部が閉塞しないようにエポキシ系接着剤を用いて中空モノフィラメントの一端をPTFE製チューブの管内に固定した。配管の途中にトラップ管を設けた真空ポンプ(IWAKI製バキュームポンプ V PUMP−140)にPTFE製チューブを取り付けた。
【0053】
中空モノフィラメントを熱水浴(温度85℃)の中に通した後、中空モノフィラメントのもう一端を浸漬させた。中空モノフィラメントのもう一端を前記した保温状態の寒天水溶液中に浸漬させ、その状態で真空ポンプを稼働させ、中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧した。
中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧することで、寒天水溶液が吸い上げられて中空モノフィラメントの中空部に充填され、中空モノフィラメントの全長に水溶液が充填された状態で真空ポンプを停止した。その後、中空モノフィラメントを冷却し、充填された水溶液をゲル状に固化させ、中空モノフィラメントの中空部に消化剤が充填してなる実施例6の機能性合成繊維を得た。
【0054】
実施例7
実施例6で用いた寒天水溶液からなる消化剤を準備し、その消化剤に合成界面活性剤1.5gを添加した溶液を消化剤として用いたこと以外は、実施例6と同様にして、実施例7の機能性合成繊維を得た。
【0055】
実施例8
実施例6で用いた寒天水溶液からなる消化剤を準備し、その消化剤に合成界面活性剤3.0gを添加した溶液を消化剤として用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例8の機能性合成繊維を得た。
【0056】
実施例9
ポリアミド6樹脂を、ポリマー温度を265℃で孔の外径8.50mm、内径7.25mmの中空モノフィラメント用の紡糸口金から溶融紡糸した。紡糸した繊維を25℃の水浴中で冷却した後、捲き取ることなく、速度30m/minで80℃の温浴中で延伸し、更に巻き取ることなく175℃の乾熱雰囲気中で、総延伸倍率が4.8倍となるように延伸し、油剤を付与して捲き取り、外径2.30mm、内径1.40mmのポリアミド系の中空モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントは十分な機械的物性を有していた。
【0057】
この中空モノフィラメントを10mの長さに切り取り、一端を外径8mm、内径6mmのPTFE製チューブの管内に通し、中空モノフィラメントの中空部が閉塞しないようにエポキシ系接着剤を用いて中空モノフィラメントの一端をPTFE製チューブの管内に固定した(
図3概略模式図を参照)。配管の途中にトラップ管を設けた真空ポンプ(IWAKI製バキュームポンプ V PUMP−140)にPTFE製チューブを取り付けた。
15℃の環境下の中、粘度180mPa・sのポリエチレングリコール(第一工業制約製 PEG400 TVB−10型粘度計を用いて測定)中に中空モノフィラメントのもう一端を浸漬させた。中空モノフィラメントのもう一端をポリエチレングリコール中に浸漬させた状態で真空ポンプを稼働させ、中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧した。
【0058】
中空モノフィラメント、及び、PTFE製チューブの管内を減圧することで、ポリエチレングリコールが吸い上げられて中空モノフィラメントの中空部に充填され、中空モノフィラメントの全長にポリエチレングリコールが充填された状態で真空ポンプを停止した。中空モノフィラメントの全長にポリエチレングリコールが充填された状態で、ヒートカッターを用いて中空モノフィラメントを溶融切断し、中空モノフィラメントの中空部にポリエチレングリコールを封入し、実施例9の機能性合成繊維を得た。