特開2018-204249(P2018-204249A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018204249-トンネル内での清濁分離排水構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204249(P2018-204249A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】トンネル内での清濁分離排水構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   E21D11/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-109121(P2017-109121)
(22)【出願日】2017年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】宮城 充宏
(72)【発明者】
【氏名】林 成浩
(72)【発明者】
【氏名】中原 史晴
(72)【発明者】
【氏名】平塚 裕介
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA07
2D155CA01
2D155CA02
2D155LA03
(57)【要約】
【課題】覆工コンクリートを設けないトンネルにおいて、側壁から生じる湧水を濁水と分離して処理可能な手段を提供すること。
【解決手段】トンネルの内壁Bと該内壁Bに沿って設けた導水シート11との隙間からなる導水路10と、トンネル内の濁水の濁水側排水路30とは別経路で設け、前記導水路10を経由して流れる湧水を集水可能な湧水側排水路20とを設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次覆工コンクリートを設けないトンネル内での清濁分離排水構造であって、
トンネルの内壁と、該内壁に沿うように設けた導水シートとの隙間からなり、前記内壁から生じた湧水を導水する、導水路と、
前記導水路を経由して集めた湧水を清水として排水する、湧水側排水路と、
トンネル内の濁水を集めて排水する、濁水側排水路と、を少なくとも有し、
前記湧水側排水路と濁水側排水路とを別経路で構成してあることを特徴とする、
トンネル内での清濁分離排水構造。
【請求項2】
前記導水シートが、透明色または半透明色を呈することを特徴とする、
請求項1に記載のトンネル内での清濁分離排水構造。
【請求項3】
前記湧水側排水路を、トンネルの内壁を構成する側壁の下端部に設けてあることを特徴とする、
請求項1または2に記載のトンネル内での清濁分離排水構造。
【請求項4】
前記湧水側排水路に勾配を設けて、集めた湧水を自然流下によって排水可能に構成してあることを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のトンネル内での清濁分離排水構造。
【請求項5】
前記導水シートを、コンクリート用の鋲でトンネルの内壁に留めてあることを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のトンネル内での清濁分離排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次覆工コンクリートを設けないトンネル内において、トンネルの内壁から生じた湧水とその他の濁水とを分離して排水するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本設のトンネルは、湧水や漏水の処理およびトンネル内空の確保や美感のため、掘削断面(トンネルの側壁)に覆工コンクリートを被覆するが、斜坑、調査坑、避難坑、連絡坑などは、吹き付けコンクリートと、ロックボルトの打設施工による仕上げとなり、覆工コンクリートを設けない場合が多い。
この場合、地山からの湧水が多い現場では、トンネルの内壁(天端、側壁を含む)からの漏水により路盤がぬかるみ、路盤の維持管理やりょう盤工(基面整形・舗装コンクリートの打設)等の坑内作業(車両・重機の稼働)に悪影響を生じていた。
【0003】
上記問題に対し、従来はトンネル内に釜場を設けて排水ポンプで湧水を汲み上げ、以下の特許文献1に記載の排水システムなどで坑外において濁水として処理していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−221100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術によれば、以下に記載する問題を有する。
(1)トンネル坑内の電力設備能力から、排水ポンプの設置数が限られる。
(2)排水した湧水の全てが濁水として取り扱われるため、濁水処理に使用する薬剤(凝集剤等)の使用や、脱水ケーキ等の産業廃棄物としての処理、濁水処理装置の大型化などに多くの費用を要する。
【0006】
よって、本発明は、トンネルの内壁から生じる湧水の全てを濁水として処理する必要のない手段の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、二次覆工コンクリートを設けないトンネル内での清濁分離排水構造であって、トンネルの内壁と、該内壁に沿うように設けた導水シートとの隙間からなり、前記内壁から生じた湧水を導水する、導水路と、前記導水路を経由して集めた湧水を清水として排水する、湧水側排水路と、トンネル内の濁水を集めて排水する、濁水側排水路と、を少なくとも有し、前記湧水側排水路と濁水側排水路とを別経路で構成してあることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記導水シートが、透明色または半透明色を呈することを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1または第2発明において、前記湧水側排水路を、トンネルの内壁を構成する側壁の下端部に設けてあることを特徴とする
また、本願の第4発明は、前記第1乃至3発明のうち何れかの発明において、前記湧水側排水路に勾配を設けて、集めた湧水を自然流下によって排水可能に構成してあることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第1乃至4発明のうち何れかの発明において、前記導水シートを、コンクリート用の鋲でトンネルの内壁に留めてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)トンネルの内壁から生じた湧水を、導水シートで形成した導水路でもって所定の箇所に集水することで、路盤のぬかるみを防止することができる。
(2)トンネルの内壁から生じた湧水を、濁水側排水路とは別経路の湧水側排水路に清水として集水することで、湧水の全てを濁水として処理する必要がなくなる。よって、濁水処理費用を大幅に低減することができる。
(3)濁水処理に必要な装置を小型化につながり、凝集剤の使用量を減らすこともできる。
(4)透明色または半透明色の導水シートを用いることで、本構造の構築後もトンネルの内壁の目視点検に支障が生じない。
(5)トンネルの側壁の下端部に湧水側排水路を設けることで、トンネル内作業に支障を来すことがない。
(6)湧水側排水路に勾配を設けることで、集めた湧水を自然流下によって排水することができる。よって、坑内の省電力化にもつながる。
(7)導水シートを、コンクリート用の鋲でトンネルの内壁に留めて設置するだけの単純な作業で導水路を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る湧水の集水構造を採用したトンネルの概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【実施例】
【0011】
<1>全体構成
図1に示すトンネルAは、トンネルの内壁Bから湧水が生じやすい構造を呈したものを想定しており、斜坑、調査坑、避難坑、連絡坑などの、二次覆工コンクリートを設けないトンネルや、鉱山などを想定している。
そして、このトンネルAの坑内には、本発明に係る清濁分離排水構造として、導水路10、湧水側排水路20および濁水側排水路30を少なくとも設けている。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>導水路
導水路10は、トンネルの内壁Bから漏水した湧水を集水するための要素である。
本実施例では、トンネルの内壁Bに沿って導水シート11を配置し、導水シート11の両端が側壁B1の下端部近傍に達する態様を呈しており、この内壁Bと導水シート11との間の隙間でもって導水路10を構成している。
よって、内壁Bから漏水した湧水Cは、導水シート11に落ちて重力に従って流下し、側壁B1の下端部近傍へと集まる。
【0013】
<2.1>導水シートの設置方法
導水シート11の設置方法としては、例えば、コンクリート用の鋲打機で内壁Bに導水シート11を直接固定する方法や、トンネルAの内周側に骨組部材を組立てこのフレーム部材に導水シート11を敷設することで、坑内にビニールハウスのような構造体を形成する方法などがある。
よって、導水シート11と内壁Bとの離間距離は特段限定しない。
本実施例では、コンクリート用の鋲打機でもって、内壁Bの周方向に所定間隔を設けてコンクリート用の鋲を打ち込むことで、内壁Bの周方向にわたって連続する鋲打部12を形成している。
この鋲打部12をトンネルAの軸方向に間隔を空けて複数設けることで、鋲打部12の間の空間からなる帯状の導水部10を形成する。
よって、導水部10はトンネルAの軸方向に向かって連続して形成された態様となる。
【0014】
また、トンネルAの軸方向または周方向に向かって複数の導水シート11を重ねあわせて配置する場合には、シート間の隙間から湧水Cが漏れ出ないように留意する必要がある。
【0015】
<2.1.1>導水シートの素材
導水シート11は、遮水性と可撓性を備えた面状部材であり、塩ビシートやゴムシートなどを用いることができる。
【0016】
<2.1.2>導水シートの色
導水シート11は、透明色または半透明色のものを用いることが好ましい。
これは、導水シート11の設置後に、内壁Bの目視点検が常に出来る状態にするためである。
【0017】
<2.2>導水路の形状
本実施例では、トンネルの内壁Bの断面に沿って導水シート11を配置しているが、本発明に係る導水シート11の敷設軌跡は、湧水Cが導水シート11上の一部の箇所に滞留しないような形状であれば、当該態様に限定されるものではない。
【0018】
<3>湧水側排水路
湧水側排水路20は、前記導水路10を流れた湧水Cを集水して排水するための要素である。
本実施例では、湧水側排水路20を、トンネルの内壁Bを構成する側壁B1の下端部の両側に設けており、前記導水路10を構成する導水シート11をつたって流下してきた湧水Cを受け入れている。
【0019】
<3.1>濁水との分離
湧水側排水路20は、湧水Cとは別に現場発生する濁水Dの濁水側排水路30とは別の流路として形成する必要がある。
本実施例では、濁水Dの濁水側排水路30はトンネルAの路盤途上に設けており、湧水側排水路20と連通しない態様としている。
このように、湧水Cのための湧水側排水路20と、濁水Dのための濁水側排水路30とを分離しておくことで、通常設けている濁水Dの濁水側排水路30に湧水Cが流入することはなく、湧水Cは濁水処理を必要としない清水として処理することができる。
【0020】
<3.2>勾配付与による自然排水
湧水側排水路20は、トンネルAの坑外に向かって勾配を設けて、集めた湧水Cを自然流下によって排水可能に構成してもよい。
この勾配は、現場条件によって自然に有する態様、意図的に設けた態様、のいずれの態様も含まれる。
例えば、トンネルAが坑外を裾側とした斜坑である場合には、トンネルAの路盤に沿って湧水側排水路20を構築していけば、湧水Cが坑外に自然流下していく構造となり、好適である。
【0021】
<4>まとめ
このように、本実施例に係る構造によれば、トンネル側壁から漏水した湧水を、濁水の排水路とは別に集排水することで、湧水による路盤のぬかるみを防止するとともに、湧水を濁水として処理する必要が無く、濁水処理費用の節減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0022】
A トンネル
B 内壁
B1 側壁
C 湧水
D 濁水
10 導水路
11 導水シート
12 鋲打部
20 湧水側排水路
30 濁水側排水路
図1