【実施例】
【0011】
<1>全体構成
図1に示すトンネルAは、トンネルの内壁Bから湧水が生じやすい構造を呈したものを想定しており、斜坑、調査坑、避難坑、連絡坑などの、二次覆工コンクリートを設けないトンネルや、鉱山などを想定している。
そして、このトンネルAの坑内には、本発明に係る清濁分離排水構造として、導水路10、湧水側排水路20および濁水側排水路30を少なくとも設けている。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>導水路
導水路10は、トンネルの内壁Bから漏水した湧水を集水するための要素である。
本実施例では、トンネルの内壁Bに沿って導水シート11を配置し、導水シート11の両端が側壁B1の下端部近傍に達する態様を呈しており、この内壁Bと導水シート11との間の隙間でもって導水路10を構成している。
よって、内壁Bから漏水した湧水Cは、導水シート11に落ちて重力に従って流下し、側壁B1の下端部近傍へと集まる。
【0013】
<2.1>導水シートの設置方法
導水シート11の設置方法としては、例えば、コンクリート用の鋲打機で内壁Bに導水シート11を直接固定する方法や、トンネルAの内周側に骨組部材を組立てこのフレーム部材に導水シート11を敷設することで、坑内にビニールハウスのような構造体を形成する方法などがある。
よって、導水シート11と内壁Bとの離間距離は特段限定しない。
本実施例では、コンクリート用の鋲打機でもって、内壁Bの周方向に所定間隔を設けてコンクリート用の鋲を打ち込むことで、内壁Bの周方向にわたって連続する鋲打部12を形成している。
この鋲打部12をトンネルAの軸方向に間隔を空けて複数設けることで、鋲打部12の間の空間からなる帯状の導水部10を形成する。
よって、導水部10はトンネルAの軸方向に向かって連続して形成された態様となる。
【0014】
また、トンネルAの軸方向または周方向に向かって複数の導水シート11を重ねあわせて配置する場合には、シート間の隙間から湧水Cが漏れ出ないように留意する必要がある。
【0015】
<2.1.1>導水シートの素材
導水シート11は、遮水性と可撓性を備えた面状部材であり、塩ビシートやゴムシートなどを用いることができる。
【0016】
<2.1.2>導水シートの色
導水シート11は、透明色または半透明色のものを用いることが好ましい。
これは、導水シート11の設置後に、内壁Bの目視点検が常に出来る状態にするためである。
【0017】
<2.2>導水路の形状
本実施例では、トンネルの内壁Bの断面に沿って導水シート11を配置しているが、本発明に係る導水シート11の敷設軌跡は、湧水Cが導水シート11上の一部の箇所に滞留しないような形状であれば、当該態様に限定されるものではない。
【0018】
<3>湧水側排水路
湧水側排水路20は、前記導水路10を流れた湧水Cを集水して排水するための要素である。
本実施例では、湧水側排水路20を、トンネルの内壁Bを構成する側壁B1の下端部の両側に設けており、前記導水路10を構成する導水シート11をつたって流下してきた湧水Cを受け入れている。
【0019】
<3.1>濁水との分離
湧水側排水路20は、湧水Cとは別に現場発生する濁水Dの濁水側排水路30とは別の流路として形成する必要がある。
本実施例では、濁水Dの濁水側排水路30はトンネルAの路盤途上に設けており、湧水側排水路20と連通しない態様としている。
このように、湧水Cのための湧水側排水路20と、濁水Dのための濁水側排水路30とを分離しておくことで、通常設けている濁水Dの濁水側排水路30に湧水Cが流入することはなく、湧水Cは濁水処理を必要としない清水として処理することができる。
【0020】
<3.2>勾配付与による自然排水
湧水側排水路20は、トンネルAの坑外に向かって勾配を設けて、集めた湧水Cを自然流下によって排水可能に構成してもよい。
この勾配は、現場条件によって自然に有する態様、意図的に設けた態様、のいずれの態様も含まれる。
例えば、トンネルAが坑外を裾側とした斜坑である場合には、トンネルAの路盤に沿って湧水側排水路20を構築していけば、湧水Cが坑外に自然流下していく構造となり、好適である。
【0021】
<4>まとめ
このように、本実施例に係る構造によれば、トンネル側壁から漏水した湧水を、濁水の排水路とは別に集排水することで、湧水による路盤のぬかるみを防止するとともに、湧水を濁水として処理する必要が無く、濁水処理費用の節減に寄与することができる。