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特開2018-204288トンネル素掘り部の側壁面撮像方法および側壁面撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204288(P2018-204288A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】トンネル素掘り部の側壁面撮像方法および側壁面撮像装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20181130BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   E21D9/093 F
   E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-110248(P2017-110248)
(22)【出願日】2017年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】清水 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】刀根 航平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洸一
(72)【発明者】
【氏名】森川 健太
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054GA81
(57)【要約】
【課題】効率良く且つ安全にトンネル素掘り部の側壁面画像を撮像し得るトンネル素掘り側壁面撮像方法およびトンネル素掘り側壁面撮像装置を提供する。
【解決手段】この側壁面撮像装置10は、トンネルTの素掘り部Sに対し周方向に連続した画像を撮像可能なカメラ1と、このカメラ1をアーム21先端に装備可能且つ作業者Opが手で搬送可能に構成されるとともに素掘り部Sから離れた自身設置位置からアーム21を素掘り部S内に張り出してアーム21先端に装備したカメラ1を素掘り部Sの中央またはその近傍に配置可能なカメラクレーン2と、カメラ1での撮像時に切羽の鏡Mと側壁面Hとの境B1を指示するレーザポインタ3とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの素掘り部に対し周方向に連続した画像を撮像可能なカメラと、該カメラがアーム先端に装備されたカメラクレーンと、レーザポインタと、を用い、
前記カメラクレーンを素掘り部から離れた位置に設置するクレーン設置工程と、前記クレーン設置工程の後に、前記カメラクレーンのアームを素掘り部内に張り出してアーム先端に装備した前記カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置するカメラ配置工程と、前記カメラ配置工程の後に、切羽の鏡と側壁面との境を前記レーザポインタによって指示しつつ前記カメラを稼働し、前記レーザポインタによる指示点とともに素掘り部の側壁面を周方向に撮像する素掘り面撮像工程と、を含むことを特徴とするトンネル素掘り部の側壁面撮像方法。
【請求項2】
前記カメラクレーンに、前記アーム先端から下方に張り出す支持脚を設け、前記カメラ配置工程では、前記支持脚で前記カメラを支持して、撮像時の前記カメラの姿勢を安定させる請求項1に記載のトンネル素掘り部の側壁面撮像方法。
【請求項3】
トンネル素掘り部の側壁面に対し周方向に連続した画像を撮像可能なカメラと、
該カメラをアーム先端に装備可能且つ作業者が手で搬送可能に構成されるとともに素掘り部から離れた自身設置位置から所定長さのアームを素掘り部内に張り出してアーム先端に装備した前記カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置可能なカメラクレーンと、
前記カメラでの撮像時に、切羽の鏡と側壁面との境を指示するレーザポインタと、
を備えることを特徴とするトンネル素掘り部の側壁面撮像装置。
【請求項4】
前記カメラクレーンは、前記アーム先端から下方に張り出す支持脚を有する請求項3に記載のトンネル素掘り部の側壁面撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル素掘り部の側壁面を撮像する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを安全かつ経済的に施工するためには、トンネル周辺の地山状況を把握することが重要である。特に安全面では、切羽の状況を観察し、岩盤崩壊や剥落の発生を事前に予測しなければならない。切羽観察の方法としては、目視観察によるスケッチの作成、写真撮影が一般的に行われる。
ここで、切羽は落盤のおそれがある。そのため、切羽の素掘り部(未覆工部)周辺は作業員が侵入できないという問題がある。また、素掘り部中央は、半円弧状(馬蹄形状)のトンネル壁面の最も高い位置になる。そのため、落盤時には落石が最も遠くまで及ぶことから、作業者は、素掘り部の側壁面の撮像時に、素掘り部中央とその近傍を避けることが望ましい。
【0003】
一方、素掘り部には、地山の落盤を防止するために、可及的迅速に、コンクリートを吹付けて支保工を建込み、仕上げコンクリートが吹付けられて閉合されることから、作業者が、トンネル素掘り部の側壁面を撮像するタイミングが限られるという問題がある。
そこで、例えば特許文献1記載の技術では、定点カメラをトンネル天端に設置している。同文献では、その定点カメラで切羽を正面から適宜撮像し、複数の撮像画像により地質パターンを分析し、この地質パターンを用いて切羽前方の地山状況を予測するトンネル前方地質判定システムが開示されている。
【0004】
また、トンネルにカメラを据え付ける技術として、特許文献2には、光線を水平方向に照射する光線照射部と、この光線を直角方向に屈折させる屈折部と、この屈折部を水平軸回りに回転させて照射方向を変化させる駆動部とを備える光線照射装置を用いてカメラを所望の位置に据え付ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−120495号公報
【特許文献2】特開平04−286912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の技術では、トンネル施工に支障をきたすことがないように、定点カメラをトンネル天端に設置するため、カメラの設置工程に手間と時間がかかるという問題がある。また、特許文献2記載の技術では、光線照射装置とカメラとを個別に据え付ける必要があるため、やはりその設置工程に手間と時間がかかるという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、効率良く安全にトンネル素掘り部の側壁面を撮像し得るトンネル素掘り部の側壁面撮像方法および側壁面撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像方法は、トンネルの素掘り部に対し周方向に連続した画像を撮像可能なカメラと、該カメラがアーム先端に装備されたカメラクレーンと、レーザポインタと、を用い、前記カメラクレーンを素掘り部から離れた位置に設置するクレーン設置工程と、前記クレーン設置工程の後に、前記カメラクレーンのアームを素掘り部内に張り出してアーム先端に装備した前記カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置するカメラ配置工程と、前記カメラ配置工程の後に、切羽の鏡と側壁面との境を前記レーザポインタによって指示しつつ前記カメラを稼働し、前記レーザポインタによる指示点とともに素掘り部の側壁面を周方向に撮像する素掘り面撮像工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像方法では、カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置して周方向に連続した画像の撮像が可能である。よって、素掘り部の側壁面の撮像情報を取得することができる。そして、カメラを稼働する際は、切羽の鏡と側壁面との境をレーザポインタによって指示しつつカメラを稼働するので、側壁面の撮像情報には、レーザポインタによる指示点が写りこんでいる。
そのため、この指示点から、切羽の鏡と側壁面との境が判る。よって、この側壁面の撮像情報に基づいて画像処理を行うことにより、周方向に連続したトンネル素掘り部の内周面情報を得ることができる。さらに、トンネル延在方向で隣接する素掘り部の内周面情報を相互に連続する画像処理により、トンネル延在方向に連続したトンネル素掘り部の内周面情報を得ることができる。
【0009】
そして、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像方法では、素掘り部から離れた位置にカメラクレーンを設置し、カメラクレーンのアームを素掘り部内に張り出して、カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置するので、作業者は、素掘り部側壁面の撮像時に、素掘り部中央やその近傍を避けて作業することができる。したがって、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像方法によれば、効率良く且つ安全に素掘り部の側壁面画像を撮像できる。
ここで、切羽近傍では、トンネル内が強制換気されているため風速が速く、そのため、カメラを支持するカメラクレーンの支持状態が安定しないおそれがある。そこで、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像方法において、前記カメラクレーンに、前記アーム先端から下方に張り出す支持脚(例えば一脚)を設け、前記カメラ配置工程では、前記支持脚でカメラを支持して、撮像時のカメラの姿勢を安定させることは好ましい。
【0010】
このような構成であれば、切羽側の素掘り部内に張り出している状態のカメラを支持脚で支持し、撮像時のカメラの姿勢を安定させてからカメラを作動させることができるので、風速が速いトンネル内でカメラを稼働する上で好適である。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像装置は、トンネル素掘り部の側壁面に対し周方向に連続した画像を撮像可能なカメラと、該カメラをアーム先端に装備可能且つ作業者が手で搬送可能に構成されるとともに素掘り部から離れた自身設置位置から所定長さのアームを素掘り部内に張り出してアーム先端に装備した前記カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置可能なカメラクレーンと、前記カメラでの撮像時に、切羽の鏡と側壁面との境を指示するレーザポインタと、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像装置は、カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置して周方向に連続した画像の撮像が可能である。よって、素掘り部の側壁面の撮像情報を容易に取得できる。そして、カメラを稼働する際は、切羽の鏡と側壁面との境をレーザポインタによって指示しつつカメラを稼働できるので、側壁面の撮像情報に、レーザポインタによる指示点を写り込ませることができる。そのため、この指示点から、切羽の鏡と側壁面との境が判る。よって、この側壁面の撮像情報に基づいて画像処理を行うことにより、周方向に連続したトンネル素掘り部の内周面情報を得ることができる。さらに、トンネル延在方向で隣接する素掘り部の内周面情報を相互に連続する画像処理により、トンネル延在方向に連続したトンネル素掘り部の内周面情報を得ることができる。
【0012】
そして、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像装置は、素掘り部から離れた位置にカメラクレーンを設置し、所定長さのアームを素掘り部内に張り出させて、カメラを素掘り部の中央またはその近傍に配置可能に構成されているので、作業者は、素掘り部の側壁面の撮像時に、素掘り部中央やその近傍を避けて作業することができる。したがって、本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像装置によれば、効率良く且つ安全に素掘り側壁面画像を撮像できる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明によれば、効率良く且つ安全に、素掘り部の側壁面の画像を撮像できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様に係るトンネル素掘り部の側壁面撮像装置の一実施形態を説明する模式図である。
図2図1に示す側壁面撮像装置の要部を説明する模式図である。
図3図1に示す側壁面撮像装置を用いたトンネル素掘り部の側壁面撮像方法を説明する模式的平面図である。
図4図1に示す側壁面撮像装置を用いたトンネル素掘り部の側壁面撮像方法を説明する模式的平面図である。
図5図3の変形例を説明する模式的平面図である。
図6】レーザポインタによる指示点を説明する模式的平面図である。
図7】連続化処理前の、複数の側壁面撮像画像の一例を示す図((a)〜(q))である。
図8】画像処理による連続化処理後の側壁面撮像画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態ないし変形例は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態ないし変形例に特定するものではない。
【0016】
まず、側壁面撮像装置について説明する。本実施形態の側壁面撮像装置は、トンネル切羽の素掘り部において、周方向に沿って地山の側壁面を撮影する装置である。
図1に示すように、この側壁面撮像装置10は、トンネル切羽の素掘り部において、カメラ1と、カメラ1をアーム21の先端に装備可能なカメラクレーン2と、作業者Opが手で操作するレーザポインタ3とを備える。なお、側壁面撮像装置10を構成する、レーザポインタ3とカメラクレーン2とは別体であるが、側壁面撮像装置10として常に同時に使用するものであることから、相互を可撓性のあるワイヤ等の連結部材で連結しておくことは好ましい。
【0017】
カメラ1は、トンネル素掘り部の側壁面に対し周方向に連続した画像を撮像可能なドームカメラを用いている。カメラクレーン2は、作業者Opが手で搬送可能に構成されており、素掘り部Sから離れた自身設置位置からアーム21を切羽側の素掘り部内に張り出して、アーム21先端に装備したカメラ1を素掘り部の中央またはその近傍に配置可能なものを用いている。レーザポインタ3は、カメラ1での撮像時に、切羽の鏡と側壁面との境を作業者Opが指示するためのものである。
詳しくは、このカメラクレーン2は、同図に示すように、三脚25と、三脚の上部中央の回転台28に立設された支柱27と、支柱27に途中部分が俯仰可能に枢支された所定長さ(例えば後述のD1=2〜3m程度)のアーム21とを有し、アーム21が俯仰および旋回可能になっている。
【0018】
アーム21には、その先端にカメラ1を着脱可能なカメラ取付部26が設けられ、また、後端にはカウンタウェイト22が取付けられている。ここで、このカメラクレーン2は、アーム21先端のカメラ取付部26から下方に張り出す支持脚24が装着されている。本実施形態の支持脚24は一脚である。
さらに、アーム21の先端側には、カメラ1の姿勢を維持するための水平姿勢維持機構23が付設されている。本実施形態の水平姿勢維持機構23は、支柱側に枢支された第一プーリ23aと、カメラ取付部側に枢支されて第一プーリ23aと同径の第二プーリ23bと、これらプーリ相互に掛け回された連動ワイヤ23cとを有する。
【0019】
水平姿勢維持機構23は、アーム21の俯仰に伴って第一プーリ23aと第二プーリ23bとが同期して回転することにより、アーム21の俯仰角にかかわらず、カメラ取付部26の姿勢が維持されるようになっている。なお、本実施形態の水平姿勢維持機構23はプーリ式の例であるが、これに限らず、カメラ取付部26の姿勢維持が可能であれば、例えば平行リンク機構により水平姿勢維持機構23を構成してもよい。
【0020】
カメラ1は、図2に要部を拡大図示するように、ベース部11と、ベース部11に支持されてCCDイメージセンサを含む撮影光学系を有するカメラ部12と、カメラ部12を水平支軸と垂直支軸それぞれに対してそれらの軸心回りに回動する回動機構13と、カメラ部12を保護する半球状のドームカバー14と、回動機構13の回動処理およびドームカバー14のレンズ効果を考慮したフォーカス補正処理を含む撮像処理を実行するコントローラ15と、を備える。コントローラ15からは、カメラ1の動作に必要な電力の供給および信号の授受を行うためのケーブル16がベース部11の外部に導出されている。ケーブル16は、後述する撮像用コンピュータ32に接続される。
【0021】
回動機構13は、カメラ部12のチルト方向(垂直方向)の回転中心をドームカバー14の中心から天頂方向にずらして構成されている。これにより、カメラ1は、カメラ部12のチルト方向での撮像範囲が180°よりも広域になっており、トンネルの素掘り部に対し周方向に連続した画像を撮像可能になっている。
【0022】
次に、上述した側壁面撮像装置10を用いたトンネル素掘り部の側壁面撮像方法について説明する。
トンネル素掘り部の側壁面を撮像する際は、まず、図3に示すように、切羽Kの近傍の安全な場所に撮像作業用車両30を停車する。この撮像作業用車両30には、照明装置31と、撮像用コンピュータ32とが搭載されている。
次いで、作業者Opは、素掘り部Sから離れた位置に、上述した側壁面撮像装置10のカメラクレーン2を設置する(クレーン設置工程)。カメラ1から導出されているケーブル16は、撮像用コンピュータ32のコネクタ部に接続する。カメラクレーン2の三脚25の設置場所は、同図のように、掘削面中心CLからカメラクレーン2のアーム21のリーチ分(本実施形態の例では所定長さD1=2300mm程度)を鋼製巻尺で測って三脚25を設置する。
【0023】
掘削面中心CLについては、切羽Kの手前の支保工のセンタに位置するロックボルトを目印に位置決めする。作業者Opは、水準器により、三脚25の回転台28の水平(つまり、カメラ取付部26の水平)を取る。作業者Opは、同図のように、作業者Opの安全距離D2を確保しつつ、カメラクレーン2をトンネル軸方向に対し直交する姿勢でカメラ1をカメラ取付部26に取付ける。これにより、カメラクレーン2の水平姿勢維持機構23によりカメラ取付部26も水平になる。
【0024】
ここで、三脚25の設置位置は、掘削面中心CLに置かなくても、カメラ1を切羽Kの中央に持っていくこともできる。例えば図5に変形例を示すように、掘削面中心CLに対して左右いずれか側方に、三脚25を設置することは好ましい。
つまり、素掘り部Sの中央は、半円弧状(馬蹄形状)のトンネル壁面の最も高い位置になる。そのため、落盤時には掘削面中心CLにて落石が最も遠くまで及ぶことから、作業者Opは、トンネル素掘り部Sの側壁面Hの撮像時に、素掘り部中央とその近傍を避けることが望ましい。なお、図5において符号Daで示す破線部分は、落石が及ぶ範囲のイメージを示している。
【0025】
次いで、作業者Opは、図3に示すように、クレーン設置工程の後に、カメラクレーン2のアーム21を手で回動させてカメラ1を切羽下まで持っていき、カメラ1を切羽Kに近づける。カメラクレーン2のアーム21を切羽K側の素掘り部S内に張り出してアーム先端に装備したカメラ1を素掘り部Sの中央またはその近傍に配置する(カメラ配置工程)。同図に示す符号Rは、作業者Opがカメラクレーン2のアーム21を手で回動させるイメージを示している。
ここで、本実施形態では、図1に示したように、カメラクレーン2には、アーム先端から下方に張り出す支持脚24を設けているので、カメラ配置工程では、この支持脚24でカメラ1を支持して、撮像時のカメラ1の姿勢を安定させることができる。
【0026】
次いで、切羽Kの後方にて、照明装置31を点灯するとともに、撮像用コンピュータ32でカメラ1の撮像方向を操作して、切羽Kに対するカメラ1のセット位置を確認する。吹付け面Fと素掘り部Sとの境B2を目安にして、「右」「左」「天」でその境B2が写っていなければ、カメラ1の固定方向ないしは三脚25の水平姿勢を確認してカメラ1を再セットする。
なお、トンネル軸方向でのカメラ1の姿勢調整については、撮像用コンピュータ32でカメラ1の水平方向での撮像方向を旋回操作して確認したときに、「吹付け面と素掘り部の境B2」が見えれば問題ない(OK)と判断する。事後に、例えば事務所にて写真編集用コンピュータで画像の調整をして、隣接する素掘り部相互の地層の境を画像処理にて合わせることができるからである。
【0027】
次いで、カメラ配置工程の後に、作業者Opは、図4に示すように、切羽の鏡と側壁面との境B1をレーザポインタ3によって指示しつつカメラ1を稼働して、レーザポインタ3による指示点Pとともに素掘り部Sの側壁面Hを周方向に順次に連続して撮像する(素掘り面撮像工程)。なお、作業者Opは、一名でも複数名でもよい。図7に、自動撮影によって周方向に連続して自動撮像して得た複数の内周面情報の一例((a)〜(q))を示す。
【0028】
ここで、図6に示すように、鏡Mと側壁面Hとの境B1は直角な隅部ではなく、凹凸が複合して連続するR形状なので、画像撮影後では判断しにくいところ、本実施形態では、撮影後の写真(複数の内周面情報)には、レーザポインタ3による指示点Pが撮影される。そのため、その指示点Pを境B1と判断して容易に写真を加工することができる。
つまり、撮像用コンピュータ32が実行する画像処理では、複数の内周面情報に対し、レーザポインタ3による指示点Pから境B1を判断して、境B1よりも切羽の鏡Mの側の画像は削除し、レーザポインタ3の指示点Pが直線に並ぶように連続する画像を加工することで、周方向に連続したトンネル素掘り部Sの内周面情報(一の素掘り部Sでの周壁面の展開画像)を得ることができる(図8参照)。さらに、トンネル延在方向で隣接する素掘り部の内周面情報を相互に連続する画像処理により、トンネルTの軸方向に連続する周壁面の展開画像を作成することができる。
【0029】
次に、上述したトンネル素掘り部の側壁面撮像装置10およびこれを用いたトンネル素掘り部の側壁面撮像方法の作用効果について説明する。
上述したように、本実施形態のトンネル素掘り部の側壁面撮像方法では、側壁面撮像装置10のカメラクレーン2を設置し、カメラ1を素掘り部Sの中央またはその近傍に配置して周方向に連続した画像の撮像が可能である。よって、素掘り部Sの側壁面Hの撮像情報を取得できる。
【0030】
そして、カメラ1を稼働する際は、作業者Opがレーザポインタ3によって切羽の鏡と側壁面との境B1を指示しつつカメラ1を稼働するので、側壁面の撮像情報には、レーザポインタ3による指示点Pが写りこんでいる。そのため、この指示点Pから、切羽の鏡と側壁面との境B1が判る。
よって、この側壁面の撮像情報に基づいて、画像処理を行うことにより、周方向に連続したトンネル素掘り部の内周面情報を得ることができる。さらに、トンネル延在方向で隣接する素掘り部の内周面情報を相互に連続する画像処理により、トンネル延在方向に連続したトンネル素掘り部の側壁面の内周面情報を得ることができる。
【0031】
そして、このトンネル素掘り部の側壁面撮像方法では、素掘り部Sから離れた切羽Kとは反対側にカメラクレーン2を設置し、カメラクレーン2のアーム21を切羽K側の素掘り部S内に張り出して、カメラ1を素掘り部Sの中央またはその近傍に配置できるので、作業者Opは、素掘り部の側壁面の撮像時に、素掘り部中央とその近傍を避けることができる。したがって、危険なトンネル切羽に近付くことなく、効率良く且つ安全に素掘り側壁面画像を撮像できる。
【0032】
また、このトンネル素掘り部の側壁面撮像方法では、作業者Opが手で搬送可能なカメラクレーン2と、周方向に連続した画像を撮像可能なカメラ1とを組み合わせて構成しているので、切羽Kの周方向画像を安価に撮影できる。また、カメラクレーン2を使用することで、作業者Opが切羽Kに近づくことなく切羽画像を安全に撮影できる。さらに、カメラ1として、ドームカメラを使用することで、カメラ1を一度セッティングすれば、周方向の撮像はカメラ1が自動的に実行するので、撮り忘れなく容易に撮影できる。
【0033】
ここで、切羽Kの近傍では、トンネル内が強制換気されているため風速が速く、そのため、カメラ1を支持するカメラクレーン2の支持状態が安定しないおそれがある。これに対し、本実施形態では、カメラクレーン2のカメラ取付部26に、アーム先端から下方に張り出す支持脚24を設け、カメラ配置工程では、この支持脚24でカメラ1を支持して、撮像時のカメラ1の姿勢を安定させているので、撮像時のカメラ1の姿勢を安定させてからカメラ1を作動させることができる。そのため、風速が速いトンネル内でカメラ1を稼働する上で好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 カメラ
2 カメラクレーン
3 レーザポインタ
4 支持脚
10 トンネル素掘り部の側壁面撮像装置
11 ベース部
12 カメラ部
13 回動機構
14 ドームカバー
15 コントローラ
16 ケーブル
21 アーム
22 カウンタウェイト
23 水平姿勢維持機構
24 支持脚
25 三脚
26 カメラ取付部
27 支柱
28 回転台
30 撮像作業用車両
31 照明装置
32 撮像用コンピュータ
B1 鏡と側壁面との境
B2 吹付け面と素掘り部との境
Da 落石が及ぶ範囲
F 吹付け面
K 切羽
M (切羽の)鏡
H (素掘り部の)側壁面
Op 作業者
P 指示点
S 素掘り部
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8