(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204413(P2018-204413A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】保温具、椅子、座面の保温方法、床面の保温方法、シャワーまたは液体供給具の保持具
(51)【国際特許分類】
E03C 1/06 20060101AFI20181130BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20181130BHJP
A47K 3/12 20060101ALI20181130BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20181130BHJP
A61H 33/06 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
E03C1/06
A61H33/00 S
A47K3/12
A47K3/22
A61H33/06 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】41
【出願形態】書面
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-118123(P2017-118123)
(22)【出願日】2017年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】515271973
【氏名又は名称】特定非営利活動法人日本障害者アイデア協会
(71)【出願人】
【識別番号】599137404
【氏名又は名称】本郷 隆之
(72)【発明者】
【氏名】本郷 隆之
(72)【発明者】
【氏名】本郷 希充子
【テーマコード(参考)】
2D060
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BF06
2D132DA01
2D132FA00
2D132FC04
2D132FD00
4C094BA27
4C094BC11
4C094BC25
4C094DD14
4C094GG07
(57)【要約】
【課題】 安全且つ簡単に介助用椅子の座面や浴室の床を保温できる椅子や保温具等を提供する。
【解決手段】 入浴介助用の椅子の背面に設置する保温具である。この保温具は、シャワーを椅子に保持する保持部材と、シャワーから排出されたお湯を椅子の座面や浴室の床面に誘導する誘導部材とを備える。
保持部材でシャワーを保持し、シャワーからお湯を出すと、お湯は誘導部材により椅子の座面の中心部や浴室入り口周辺の床面に誘導され、座面や床面が保温される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーを椅子に保持する保持部材と、
前記シャワーから排出された液体を、前記椅子の座面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とする座面の保温具。
【請求項2】
前記誘導部材の液体排出部は、前記座面より上に位置することを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項3】
前記誘導部材は、前記座面の中心方向に前記液体を誘導することを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項4】
前記誘導部材の液体排出部は、前記座面の外周面に向けて液体を排出することを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項5】
前記誘導部材は、
前記液体を前記座面の中心より右方向に誘導する右誘導部と、
前記液体を前記座面の中心より左方向に誘導する左誘導部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項6】
前記誘導部材の液体排出部は、
前記椅子の座面の右外周面の近傍、
または前記座面の左外周面の近傍、
または前記座面の後方外周面の近傍、
に位置することを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項7】
前記保持部材は、シャワーヘッドの全部または一部を収納できる空間を備えることを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項8】
前記保持部材は、前記座面より上に位置することを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項9】
前記保持部材または前記誘導部材は、消毒剤または消毒剤を保持する消毒剤保持具を備えることを特徴とする請求項1記載の座面の保温具。
【請求項10】
シャワーを椅子に保持する保持部材と、
前記シャワーから排出された液体を、前記椅子の座面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とする椅子。
【請求項11】
液体供給具を椅子に保持する保持部材と、
前記液体供給具から排出された液体を前記椅子の座面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とするの座面の保温具。
【請求項12】
シャワーを椅子に保持し、
前記シャワーから継続的に排出される液体を、前記椅子の座面に誘導することを特徴とする座面の保温方法。
【請求項13】
液体を貯えるタンクと、
前記タンクから排出された液体を、椅子の座面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とするの座面の保温具。
【請求項14】
液体を貯えるタンクと、
前記タンクから排出された液体を、椅子の座面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とする椅子。
【請求項15】
液体を貯えるタンクから排出された液体を、椅子の座面に誘導することを特徴とする座面の保温方法。
【請求項16】
シャワーを椅子に保持する保持部材と、
前記シャワーから排出された液体を、浴室の床面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とするの床面の保温具。
【請求項17】
前記誘導部材の液体排出部は、前記床面より上、且つ、前記椅子の座面より下に位置することを特徴とする請求項16記載の床面の保温具。
【請求項18】
前記誘導部材は、浴室の入り口方向に前記液体を誘導することを特徴とする請求項16記載の床面の保温具。
【請求項19】
前記誘導部材の液体排出部は、排出角度の調整手段を備えることを特徴とする請求項16記載の床面の保温具。
【請求項20】
前記誘導部材の液体排出部は、下方に液体を排出することを特徴とする請求項16記載の床面の保温具。
【請求項21】
シャワーを椅子に保持する保持部材と、
前記シャワーから排出された液体を、浴室の床面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とする椅子。
【請求項22】
液体供給具を椅子に保持する保持部材と、
前記液体供給具から排出された液体を、浴室の床面に誘導する誘導部材と、
を備えることを特徴とするの床面の保温具。
【請求項23】
シャワーを保持し、
前記シャワーから継続的に排出される液体を、浴室の床面に誘導することを特徴とする床面の保温方法。
【請求項24】
椅子の座面中心方向にシャワーの液体排出面を向けた状態で、前記椅子に前記シャワーを保持することを特徴とするシャワー保持具。
【請求項25】
前記液体排出面が前記椅子の外周面に向いた状態で前記シャワーを保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項26】
前記液体排出面が、
前記椅子の座面の近傍に位置するように前記シャワーを保持する
ことを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項27】
前記液体排出面が、
前記椅子の座面の右外周面の近傍、
または前記座面の左外周面の近傍、
または前記座面の後方外周面の近傍、
に位置するように前記シャワーを保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項28】
前記液体排出面が、
下方を向くように前記シャワーを保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項29】
前記液体排出面が、
前記座面より上に位置するように前記シャワーを保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項30】
前記シャワーのシャワーヘッドの根本部が、
前記座面より下に位置するように前記シャワーを保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項31】
前記液体排出面を有する液体排出部または前記シャワーの胴体部を保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項32】
前記シャワーと前記椅子との距離を一定に保つためのアーム部を有することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項33】
前記アーム部は、前記シャワーヘッドの長さより短いことを特徴とする請求項32記載のシャワー保持具。
【請求項34】
前記液体排出面の角度を調節するための角度調節部材を有することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項35】
前記椅子の背もたれ部に設けられることを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項36】
前記椅子の背もたれ部の下部にに設けられることを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項37】
前記椅子の座面と背もたれ部とを連結する連結材に設けられることを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項38】
前記椅子の座部、または前記椅子の脚の上部、または前記椅子の肘掛けに設けられることを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
【請求項39】
椅子の座面中心方向にシャワーの液体排出面を向けた状態で、前記椅子に前記シャワーを保持するシャワー保持具を備える椅子。
【請求項40】
椅子の座面中心方向に液体供給具の排出口を向けた状態で、前記椅子に前記液体供給具を保持することを特徴とする液体供給具の保持具。
【請求項41】
椅子の座面中心方向にシャワーの液体排出面を向けた状態で、前記椅子に前記シャワーを保持し、
前記液体排出面から継続的に液体を排出することを特徴とする座面の保温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子(主に入浴介助用の椅子)、その椅子の座面や浴室の床を保温するための器具等に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者施設では高齢者の入浴介助を行っており、その入浴介助の方法の一例は以下の通りである(
図13)。なお、ここでは足に障害のある歩行困難者(介助者の助けがないと歩行できない高齢者)を例に説明する。
脱衣所で介助者91は高齢者92の着衣を脱がせた後、介助者91は両手で高齢者92の両手を支え、入浴介助用の椅子93のところまで誘導し、高齢者92を椅子93に座らせる。
【0003】
しかし、椅子93の座面94が冷たい場合があり、高齢者92に不快な思いをさせてしまうことが多々ある。高齢者施設では何人もの高齢者を入浴させるので、座面94が常に濡れていて、座面94が冷たくなるからである。
これに対し、介助者91は高齢者92を椅子93に誘導する前に、座面94にシャワーのお湯をかけて座面94を温めるようにしている。
しかし、高齢者92は迅速に行動できないため、座面94を温めても、誘導する間に座面94が冷めてしまう。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】楽天市場ホームページ、http://product.rakuten.co.jp/product/−/b37134c58b8caf2d4e5b67cc255cf5f5/?scid=s_kwa_pla_mdc、2017年5月22日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それを防ぐため、介助者91は高齢者92を椅子93の近くまで誘導したところで、一旦高齢者92の片手を離し、シャワーで座面94を温めている。
しかし、歩行困難な高齢者92を片手だけで支えると、高齢者92がバランスを崩して転倒する恐れがあり危険であった。特に、介助者91は、片手で高齢者92を支えながらシャワーを操作するので、注意散漫となり事故が起こりやすくなる。また、高齢者92を片手で支えながらシャワーを座面94にかけるのは介助者91にとって難しく面倒な作業でもあった。
なお、この問題は椅子93の座面94だけで起こることではない。浴室の床95もすぐに冷たくなり高齢者92に不快な思いをさせるという問題が起こっていた。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、安全且つ簡単に介助用椅子の座面や浴室の床を保温できる椅子や保温具等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明では、以下の保温具や保温方法等が提供される。
(1)シャワーを椅子に保持する保持部材と、前記シャワーから排出された液体を、前記椅子の座面に誘導する誘導部材と、を備える座面の保温具。
(2)前記誘導部材の液体排出部は、前記座面より上に位置する。
(3)前記誘導部材は、前記座面の中心方向に前記液体を誘導する。
(4)前記誘導部材の液体排出部は、前記座面の外周面に向けて液体を排出する。
(5)前記誘導部材は、前記液体を前記座面の中心より右方向に誘導する右誘導部と、前記液体を前記座面の中心より左方向に誘導する左誘導部と、を備える。
(6)前記誘導部材の液体排出部は、前記椅子の座面の右外周面の近傍、または前記座面の左外周面の近傍、または前記座面の後方外周面の近傍、に位置する。
(7)前記保持部材は、シャワーヘッドの全部または一部を収納できる空間を備える。
(8)前記保持部材は、前記座面より上に位置する。
(9)前記保持部材または前記誘導部材は、消毒剤または消毒剤を保持する消毒剤保持具を備える。
(10)シャワーを椅子に保持する保持部材と、前記シャワーから排出された液体を、前記椅子の座面に誘導する誘導部材と、を備える椅子。
(11)液体供給具を椅子に保持する保持部材と、前記液体供給具から排出された液体を前記椅子の座面に誘導する誘導部材と、を備える座面の保温具。
(12)シャワーを椅子に保持し、前記シャワーから継続的に排出される液体を、前記椅子の座面に誘導する座面の保温方法。
(13)液体を貯えるタンクと、前記タンクから排出された液体を、椅子の座面に誘導する誘導部材と、を備えることを特徴とするの座面の保温具。
(14)液体を貯えるタンクと、前記タンクから排出された液体を、椅子の座面に誘導する誘導部材と、を備えることを特徴とする椅子。
(15)液体を貯えるタンクから排出された液体を、椅子の座面に誘導する座面の保温方法。
(16)シャワーを椅子に保持する保持部材と、前記シャワーから排出された液体を、浴室の床面に誘導する誘導部材と、を備えることを特徴とするの床面の保温具。
(17)前記誘導部材の液体排出部は、前記床面より上、且つ、前記椅子の座面より下に位置する。
(18)前記誘導部材は、浴室の入り口方向に前記液体を誘導する。
(19)前記誘導部材の液体排出部は、排出角度の調整手段を備える。
(20)前記誘導部材の液体排出部は、下方に液体を排出する。
(21)シャワーを椅子に保持する保持部材と、前記シャワーから排出された液体を、浴室の床面に誘導する誘導部材と、を備えることを特徴とする椅子。
(22)液体供給具を椅子に保持する保持部材と、前記液体供給具から排出された液体を、浴室の床面に誘導する誘導部材と、を備えることを特徴とするの床面の保温具。
(23)シャワーを保持し、前記シャワーから継続的に排出される液体を、浴室の床面に誘導することを特徴とする床面の保温方法。
(24)椅子の座面中心方向にシャワーの液体排出面を向けた状態で、前記椅子に前記シャワーを保持することを特徴とするシャワー保持具。
(25)前記液体排出面が前記椅子の外周面に向いた状態で前記シャワーを保持することを特徴とする請求項24記載のシャワー保持具。
(26)前記液体排出面が、前記椅子の座面の近傍に位置するように前記シャワーを保持する。
(27)前記液体排出面が、前記椅子の座面の右外周面の近傍、または前記座面の左外周面の近傍、または前記座面の後方外周面の近傍、に位置するように前記シャワーを保持する。
(28)前記液体排出面が、下方を向くように前記シャワーを保持する。
(29)前記液体排出面が、前記座面より上に位置するように前記シャワーを保持する。
(30)前記シャワーのシャワーヘッドの根本部が、前記座面より下に位置するように前記シャワーを保持する。
(31)前記液体排出面を有する液体排出部または前記シャワーの胴体部を保持する。
(32)前記シャワーと前記椅子との距離を一定に保つためのアーム部を有する。
(33)前記アーム部は、前記シャワーヘッドの長さより短い。
(34)前記液体排出面の角度を調節するための角度調節部材を有する。
(35)前記椅子の背もたれ部に設けられる。
(36)前記椅子の背もたれ部の下部にに設けられる。
(37)前記椅子の座面と背もたれ部とを連結する連結材に設けられる。
(38)前記椅子の座部、または前記椅子の脚の上部、または前記椅子の肘掛けに設けられる。
(39)椅子の座面中心方向にシャワーの液体排出面を向けた状態で、前記椅子に前記シャワーを保持するシャワー保持具を備える椅子。
(40)椅子の座面中心方向に液体供給具の排出口を向けた状態で、前記椅子に前記液体供給具を保持することを特徴とする液体供給具の保持具。
(41)椅子の座面中心方向にシャワーの液体排出面を向けた状態で、前記椅子に前記シャワーを保持し、
前記液体排出面から継続的に液体を排出することを特徴とする座面の保温方法。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明を利用すれば、安全且つ簡単に介助用の椅子の座面や浴室の床を保温できる。
(2)本発明では、シャワーから排出されるお湯の向きや、シャワーの排出面の位置や向きを適切にできるので、入浴する高齢者等の体に直接お湯がかかることがない。また、高齢者等が座る椅子の座面の中心部分を確実に保温することができる。更に、床面も必要な部分を確実に保温できる。よって、高齢者等は快適に入浴できる。
(3)本発明では、シャワーヘッドを保温具に挿入するだけで、椅子の座面や床面を保温できるので、介助者の作業負担が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】 実施例2に係る保温具1を備えた椅子4の側面図である。
【
図7】 実施例3に係る保温具5の斜視図および保温具5を取り付けた椅子2の側面図である。
【
図8】 実施例4に係るシャワー保持部材6を備えた椅子4の側面図および背面図である。
【
図9】 実施例5に係るシャワー保持部材7を備えた椅子4の側面図および背面図である。
【
図10】 実施例6に係る保温具8の斜視図および保温具8を備えた椅子4の側面図である。
【
図11】 実施例6に係る保温具8の先端の断面図および排水管83の動きを表した底面図である。
【
図12】 実施例7に係る椅子4の側面図およびホース固定部材88を備えた椅子4の背面図である。
【
図13】 従来の入浴介助の様子を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
本発明は、保温具1を椅子2に取付けた「保温具を備える椅子4」に関するものであり、保温具1にシャワー3を保持し、シャワー3から出るお湯で椅子2を保温するものである。以下、本発明の実施例1を図に基づいて説明する。
【0012】
まずは、椅子2の座面23を保温するための保温具1について説明する。
図1は保温具1の斜視図である。
保温具1は、円筒状の本体部11と、管状の誘導管12とからなる。本実施例のおいて、本体部11は保持部材としての役割を果たし、誘導管12は誘導部材としての役割を果たす。
本体部11は、内部空間13を有し、その上面14は開口しており、底面15は円形の板状部材であり通孔16を有する。本体部11の内部空間13(内部空間13の直径および深さ)は、後述するシャワーヘッド34を挿入可能な大きさであり、ここにシャワーヘッド34を挿入すれば、シャワー3を椅子2に保持できる(詳しくは後述する)。
本体部11は円筒形状でなくても良い。シャワー2を保持できるものであれば、どのような形状であっても良い。例えば、楕円形上の筒でもよく、四角柱などの多角形形状の筒でも良い。また、本体部11は筒状でなくても良い。広く市販されているシャワーフック(シャワーヘッドの根元部分を保持する断面がC字型のフック)などでも良い。すなわち、本体部11はシャワー2を椅子2に保持できるものであれば、どのようなものであっても良い。
【0013】
誘導管12は、本体部11から下方に伸びる垂直管17と、本体部11の軸に対して外方に向かうお湯の排出管18とからなる。垂直管17の上面開口部は通孔16と連通しているので、本体部11の内部空間13に液体(お湯)を入れれば、お湯は排出管18の内部通路を通って排出口19(液体排出部)から排出される
本実施例では管状の部材(誘導管12)を誘導部材としているが、管状の部材に限らない。お湯を、後述する椅子2の座面23に誘導できるものではれば、他の部材であっても良い。
【0014】
図2(a)は、入浴介助用の椅子2の側面図である。
椅子2は、脚20と、座板21と、座板用クッション22と、背もたれ部(背板25と、座板21と背板25とを連結する連結パイプ24とからなる背もたれ部)と、背面クッション26とからなる。
図2(b)は椅子2の上面図である。座板用クッション22の上面(座面23)は、破線で示した各領域を有する。すなわち、座面23は、中心面27と外周面28(中心面の右外周面28aと、中心面の前方外周面28bと、中心面の左外周面28cと、中心面の後方外周面28dとからなる外周面28)とからなる。なお、
図2(b)は座面23の領域相互の位置関係を示したものに過ぎず、各領域の大きさはこの図に示したものに限らない。
【0015】
図3はシャワー3(液体供給具)の側面図である。
シャワー3は、広く市販されている一般的なものであり、お湯を排出する排出面31(液体排出面)を有するお湯の排出部30と、胴体部32と、根元部33と、ホース36と、ホース36と根元部33とを連結する連結部35とからなる。なお、排出部30と胴体部32と根元部33とでシャワーヘッド34を形成する。
【0016】
図4は、保温具1を椅子2に取り付けた「保温具1を備えた椅子4」の側面概略図である。
保温具1は椅子2の背面(背板25の裏面)に取付け、固定される。なお、固定手段は既知の手段であり、例えば、接着や溶接による固定手段や、螺子やボルト・ナットによる固定手段が考えられる。また、保持具1と椅子2とを一体的に形成しても良い。
保温具1は、以下の条件を満たすよう椅子2に設置・固定される(ただし、これに限るものではない)。保温具1は座面23より上に位置する。
排水口19は座面23より上に位置する。排水口19は外周面28(ここでは後方外周面28bであるが、右外周面aまたは左外周面cであってもよい)の近傍に位置し、外周面28に向かってお湯を排出する。排水口19は下方を向き、且つ、外周面28の方向を向き、且つ、座面23の中心方向に向くようにする。
近傍とは、原則として、排水口19が外周面28から離れすぎて排水口19から排出されたお湯が座面23の中心面27に飛び散らない距離を指すがこれに限るものではない。近傍とは、排水口19と外周面28とが接する状態から、排水口19と外周面29との距離が8センチメートル以内を言うが、これに限るものではない。
【0017】
次に、
図4に基づき保温具1を備えた椅子4の使用方法を説明する。
保温具1の内部空間13内にシャワーヘッド34の全部または一部を挿入してシャワー3を保持し、シャワー3の排出面31からお湯(液体)を出す。お湯は保温器1の内部空間13に貯まると共に、排出口19から座面23の後方外周面bに向かって排出される。排出口19から排出されたお湯は、
図5に示された2本の連結パイプ24の間を通り、座面23の後方外周面28b上に到達し、座面23の中心面27および座面23の前方外周面28dへと流れる。これにより、座面23はシャワー3からお湯が継続的に出ている間(内部空間13内にお湯が貯まっている間)は温かい状態が続き、座面23を保温できる。
なお、排出口19から排出されたお湯は、座面23の中心面27には直接届かないので(中心面27には座面23の上面を這うように伝わり流れるので)、高齢者92の臀部にお湯は直接かからない。高齢者92の臀部にお湯が直接かかると高齢者92が驚き不快な思いをするが、本実施例ではお湯は外周面28に直接かかるので、この問題を防止できるのである。
また、排出口19を左右2つに分けて(右誘導部と左誘導部とを設けて)、一方は座面23の中心より右側に、他方は座面23の中心より左側にお湯を誘導するようにしても良い。さらに、排出口19を水平方向に幅広にすれば(垂直方向を細くすれば)お湯を座面23全体に届けることができる。
【実施例2】
【0018】
次に、本発明の実施例2を
図6に基づいて説明する。
図6は保温具1を備えた椅子4の側面図である。
本実施例は、シャワー3を使用せず、保温具1の本体部11を貯水タンクとして使用するものである。
保温具1の内部空間13にお湯を入れる。ここではシャワー3を使用せず、図示しないお風呂の浴槽内からお湯を桶で汲み出し、内部空間13に入れる。これにより、内部空間13内にお湯が貯まっている間は実施例1と同様に座面23を保温できる。また、実施例1はシャワー3からお湯を出し続けるため水道代が高額になってしまうが、本実施例の場合は水道代を節約できる。
なお、貯水タンク内に消毒剤10aおよび消毒剤10aを保持する消毒剤保持具10を設け、貯水タンク内のお湯を消毒成分を含むお湯にしても良い。このようにすれば、座面23や浴室内の床を清潔に保つことができる。また、この消毒剤保持具10は実施例1の本体部11または誘導管12にも設けても良い。
【実施例3】
【0019】
次に、本発明の実施例3を
図7に基づいて説明する。
図7(a)は実施例1の保温具1とほぼ同様の保温具5の斜視図であり、保温具1とはフック50(椅子2への取付部材)を備える点で異なる。フック50は、本体部11の上縁から上方に伸びる鈎上の部材である。
図7(b)は、このフック50を椅子2に取り付けた状態を表す側面図である。背板25と背面クッション26との間にフック50の先端を挿入し、フック50の上端を椅子2の背板25の上端で保持する。このようにすれば、保温具1を備えていない市販の椅子2にも容易に保温具1を取付け、設置できる。
【実施例4】
【0020】
次に、本発明の実施例4を
図8に基づいて説明する。
実施例1では、本体部11(シャワーの保持部材)と誘導管12(お湯の誘導部材)とを備える保温具1について説明した。本実施例では、シャワーの保持部材(保持具)だけを備える椅子4(お湯の誘導部材を備えない椅子4)について説明する。
図8(a)は
図8(b)に示す保持具6でシャワー3を保持した椅子4の側面図であり、
図8(b)は保持具6を備えた椅子4の背面図である。
保持具6は、シャワー3を保持するためのU字型部材61と、U字型部材61を椅子4に固定するための固定部材62とからなる。保持具6は、椅子4の背もたれ部の下部(連結パイプ24)に固定されるのが好ましいが、椅子4の座部(座板21)または脚20の上部または図示しない椅子4の肘掛けに固定しても良い。また、U字型部材61は、固定部材62に回転可能な部材により接続(U字型部材61の先端が、座面23の中心点に近づく方向および遠ざかる方向に回転可能に接続)されていることが好ましい。シャワー3をより適切な位置に設置できる。
【0021】
この保持具6は以下の条件を満たすよう椅子2に設置・固定される(ただし、これに限るものではない)。U字型部材61は、椅子2の座面23の外周面28(ここでは後方外周面28bであるが、右外周面aまたは左外周面cであってもよい)の近傍に位置し、シャワー3から排出されたお湯が外周面28に向かうようにする。U字型部材61はシャワーヘッド34の排水部30または胴体部32を保持する。シャワー3を保持具61で保持した場合、シャワー3の排水面31は座面23より上に位置し、シャワー3の根元部33は座面23の下に位置し、排水面31は外周面28(ここでは後方外周面28bであるが、右外周面aまたは左外周面cであってもよい)の近傍に位置し、排水面31は下方を向き、且つ、外周面28の方向を向き、且つ、座面23の中心方向に向くようにする。
この保持具6は構成が簡素なので、小さくて嵩張らず、製造コストも安くすることができる。
【実施例5】
【0022】
次に、本発明の実施例5を
図9に基づいて説明する。
実施例4では、シャワー3の排出部30または胴体部32を保持する保持具6について説明したが、本実施例ではシャワー3の根元部33を保持する保持具(アーム7)について説明する。
図9(a)はアーム7を取り付けた椅子4の側面図であり、
図9(b)はアーム7の上面図である。アーム7は、椅子2とシャワー3との距離を一定に保つために(椅子2からシャワー3を遠ざけるために)、一定の長さを有する細長の立方体部材である。アーム7は、シャワーヘッド34の長さより短く形成する。シャワーヘッド34より長くすると、お湯が座面23に届かないからである。
アーム7は、椅子2の脚20に通すための円形の孔(脚用孔71)と、シャワー3の根本33を保持するための空間72とを備える。脚用孔71の直径は、脚20の直径よりやや大きく形成されている。この保持具6の脚用孔70を脚20の下から通し、脚20の上部で止める。次に、シャワー3の根元部33を空間72に挿入する。これによりシャワー3を椅子2に保持することができ、また排水面31を座面23の外周面28の近傍に位置させることができる。なお、アーム7は、脚部20ではなく、座部(座板21)または背もたれ部(連結パイプ24)に設けても良い。
【実施例6】
【0023】
次に、本発明の実施例6(床面の保温具8)を
図10に基づいて説明する。
図10(a)は保温具8の斜視図であり、
図10(b)は保温具8を備えた椅子4の側面図である。
保温具8は実施例1の保温具1と似ているが、誘導管14の他に、誘導管14よりも下方に長く伸びる誘導管81(床面への誘導部材)を備える点で保温具1とは異なる。誘導管81は誘導管14を長くしたものであるが、その基本構造は誘導管14と同様である。
誘導管81は、浴室の床面85を保温するためのものであり、上下方向に伸びる垂直管82と、お湯を斜め下に排出する排出管83とからなる。排出管83の排出口84(液体排出部)は、床面85のよりも上に位置し、且つ、座面23よりも下に位置する。この保温具8を使用することにより、座面23だけでなく床面85も保温することができる。
なお、排出口84の先端を細くして、増圧により遠くまでお湯が届くようにしても良い。
【0024】
排出管82は、水平方向に回転可能な部材である。
図11(a)は誘導管80の下方先喘部を拡大した断面図であり、
図11(b)は誘導管81(排出管83)の底面図である。
排出管83の内周の直径は垂直管82の外周の直径にとほぼ同じ長さであり、垂直管82を排出管83に回転可能に嵌め込むことができる。これにより
図11(b)のように排出管83は360度回転可能となる。これにより、椅子4の角度を変えても、常にお湯を温めたい方向(好ましくは浴室の入り口方向)に排出することができる。また、
なお、誘導管81の排出口84だけでなく、誘導管14の排出口19も同様の構造として回転可能にしても良い。
【実施例7】
【0025】
次に、本発明の実施例7を
図12に基づいて説明する。
図12(a)は椅子4の側面図であり、
図12(b)は椅子4の背面図である。
本実施例は、実施例6の誘導管14および誘導管81をゴム状部材で形成された弾力性・柔軟性のあるホースにしたものである。ホースは広く市販されているので低コストにでき、弾力性・柔軟性があるので扱いが容易となる。
【0026】
なお、ホースの先端を固定するため
図12(b)のようなホース固定部材87を椅子4に設けても良い。ホース固定部材87は、ホースの直径よりやや大きい内径を有するリング状部材88と、リング状部材88を椅子4に固定するための部材89(例えば椅子4とリング状部材88双方を接着して結合させる板状部材)とからなる。このホース固定部材87を設置すれば、ホース先端を意図する方向(温めたい箇所の方向)に固定できる。なお、脚20に固定するホース固定部材87は、4本の脚20すべてに設置することもできるし、任意の1本の脚20に設置しても良い。
【0027】
上記実施例では、特定の例に基づいて本発明の内容を説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明の趣旨に沿うものであれば、異なる位置・角度・大きさ・形状・素材であてもよい。
また、本発明は、介護施設のみならず個人の自宅等でも利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 保温具、2 椅子、3 シャワー、4 保温具を備える椅子、5 保温具、6 保持具、7 アーム、10 消毒剤保持具、10a 消毒剤、11 本体部、12 誘導管、13 内部空間、14 上面、15 底面、16 通孔、17 垂直管、18 排出管、20 脚、21 座板、22 座板用クッション、23 座面、24 連結パイプ、25 背板、26 背面クッション、27 中心面、28 外周面 28a 右外周面、28b 前方外周面、28c 左外周面、28d 後方外周面、30 排出部 31 排出面、32 胴体部 33 根元部 34 シャワーヘッド、35 連結部、36 ホース、50 フック、61 U字型部材、62 固定部材、71 脚用孔、72 空間、81 誘導管、82 垂直管、83 排出管、84 排出口、85 床、87 ホース固定部材 88 リング状部材 91 介助者、92 高齢者、93 椅子 94 座面、95 床