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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204436(P2018-204436A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】組立カムシャフト
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/04 20060101AFI20181130BHJP
   F16C 3/18 20060101ALI20181130BHJP
   F16C 9/02 20060101ALI20181130BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20181130BHJP
   F16C 33/42 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   F01L1/04 E
   F01L1/04 D
   F16C3/18
   F16C9/02
   F16C19/46
   F16C33/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-106580(P2017-106580)
(22)【出願日】2017年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晋弘
(72)【発明者】
【氏名】外山 正基
【テーマコード(参考)】
3G016
3J033
3J701
【Fターム(参考)】
3G016AA19
3G016BA31
3G016FA38
3G016GA01
3J033AA03
3J033AA05
3J033BA02
3J033GA08
3J033GA20
3J701AA14
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA45
3J701BA46
3J701BA47
3J701FA35
3J701GA21
(57)【要約】
【課題】よりシンプルな構造を有して組み立てが容易であり、かつ、カム駒間に配置された転がり軸受におけるシャフト軸線方向の位置決めを、手間なく行うことができる組立カムシャフトを提供する。
【解決手段】シャフトに複数のカム駒が嵌入固定されると共に、転がり軸受が嵌入されて構成される組立カムシャフトであって、転がり軸受は、外輪と、シャフトの外周面により形成される内輪と、複数のころと、複数のころをシャフトの周方向に所定間隔で保持する保持器と、を有しており、保持器は、ころの軸方向の一端側を位置決めして配設される第1保持器と、ころの軸方向の他端側を位置決めして配設される第2保持器と、が分割して形成されており、第1保持器11と第2保持器21の少なくとも一方には、軸方向において対向しているカム駒に当接するように位置決め部位17又は27が軸方向に延設して形成されてある、組立カムシャフトである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに複数のカム駒が嵌入固定されると共に、複数の前記カム駒間に当該シャフトを支承する転がり軸受が嵌入されて構成される組立カムシャフトであって、
前記転がり軸受は、外輪と、前記シャフトの外周面により形成される内輪と、前記外輪と前記内輪との間の環状の隙間に配設される複数のころと、複数の前記ころを前記シャフトの周方向に所定間隔で保持する保持器と、を有しており、
前記外輪には軸方向の両端に内鍔部が形成されており、両端の前記内鍔部間に複数の前記ころが配設されており、
前記保持器は、前記ころの軸方向の一端側を位置決めして配設される第1保持器と、前記ころの軸方向の他端側を位置決めして配設される第2保持器と、が分割して形成されており、
前記第1保持器と前記第2保持器の少なくとも一方には、軸方向において対向している前記カム駒に当接するように位置決め部位が軸方向に延設して形成されており、該位置決め部位における軸方向の長さは、前記外輪が前記カム駒間に位置決めされて配設される位置となる長さである、
組立カムシャフト。
【請求項2】
請求項1に記載の組立カムシャフトであって、
前記位置決め部位は、前記第1保持器と前記第2保持器のそれぞれに、それぞれの方向に延びるように、それぞれの長さにて、設けられている、
組立カムシャフト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の組立カムシャフトであって、
前記第1保持器及び第2保持器には、軸方向に対向している前記カム駒に向かって前記外輪から抜けないように、前記外輪の前記内鍔部における内側面に対して軸方向において係止することのできる係止突起が形成されている、組立カムシャフト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組立カムシャフトであって、
前記第1保持器及び第2保持器にて構成される前記保持器には、複数の前記ころを前記シャフトの周方向に前記所定間隔で保持するための複数の柱部が設けられており、
複数の前記柱部のそれぞれは、
軸方向における一方端が、前記第1保持器に一体的に形成されており、
軸方向における他方端が、接続手段を介して前記第2保持器に接続されている、
あるいは、
複数の前記柱部のそれぞれは、
軸方向における一方端が、接続手段を介して前記第1保持器に接続されており、
軸方向における他方端が、前記第2保持器に一体的に形成されている、
あるいは、
周方向において1つおきの前記柱部は、
軸方向における一方端が、前記第1保持器に一体的に形成され、
軸方向における他方端が、接続手段を介して前記第2保持器に接続されており、
残りの前記柱部は、
軸方向における一方端が、接続手段を介して前記第1保持器に接続されており、
軸方向における他方端が、前記第2保持器に一体的に形成されている、
組立カムシャフト。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立カムシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関(エンジン)のカムシャフトは、滑り軸受を介して、エンジンハウジングとシリンダヘッドに支持されている。近年では、燃費向上のため、軸受が滑り軸受からシャフトと軸受との間の摩擦を低減できる転がり軸受に変更され、かつ安価で軽量化をするため、シャフト、カム駒、軸受等を別部品で成型し組み立てられている組立カムシャフトが開発され、その展開が進められている。
【0003】
転がり軸受が設けられた組立カムシャフトにおいて、転がり軸受は、軸状ころと、軸状ころを周方向に所定間隔で保持する保持器と、軸状ころ及び保持器を内周側に収容する外輪と、を有している。このような組立カムシャフトにおいて、一般的に、シャフトは一定の径を有する棒状であり、シャフトのカム駒間の(シャフト軸線方向の)寸法は、転がり軸受の外輪の(シャフト軸線方向の)寸法より大きい。このため、カム駒間に転がり軸受が嵌入された組立カムシャフトをエンジンへ組み付ける際、転がり軸受がシャフト軸線方向に、カム駒の間を自由に移動できてしまう。このため、作業者は、転がり軸受ごとにシリンダヘッドへの位置を決める必要があり、組み付け時に多くの手間を必要とする。そこで、シリンダヘッドに対する、組立カムシャフトの転がり軸受におけるシャフト軸線方向の位置決めをする種々の方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、図16及び図17に示すように、カムシャフト110と、カムシャフト110を収容するシリンダヘッド152およびベアリングキャップ151と、カムシャフト110を回転自在に支持する針状ころ軸受130(転がり軸受に相当)を備える、カムシャフトの支持構造(組立カムシャフト101)が示されている。針状ころ軸受130は、1対の円弧形状の外輪部材131、132が、円周を形成するように連ねられて外輪が形成されており、外輪の内側に針状ころ133を収納した保持器134が配置されている。外輪部材131、132のそれぞれには、外輪部材の外周から径方向外側に突出する係合爪131A、132Aを有している。そして、外輪部材131、132の対面するベアリングキャップ151とシリンダヘッド152のそれぞれには、係合爪131A、132Aを受け入れて、外輪部材131、132をベアリングキャップ151とシリンダヘッド152のそれぞれに固定し脱落を防止する凹部151A、152Aが形成されている。
【0005】
また、特許文献2には、図18及び図19に示すように、カム駒221を外周に備えた第1主軸211と、カム駒222を外周に備えた第2主軸212と、第1主軸211と第2主軸212とを連結する(転がり軸受230を備えた)連結軸213と、を有する組立カムシャフト201が開示されている。転がり軸受230は、外輪231と、保持器234と、軸状ころ233と、を有しており、連結軸213によって連結された第1主軸211と第2主軸212との間に位置決めされている。第1主軸211は円筒状であり、当該円筒の内径は、連結軸213を嵌入可能な径である。また第2主軸212も円筒状であり、当該円筒の内径は、連結軸213を嵌入可能な径である。転がり軸受230におけるシャフト軸線方向の位置は、第1主軸211における連結軸213の側の突出長さL211と、第2主軸212における連結軸213の側の突出長さL212にて位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−57741号公報
【特許文献2】特開2011−252444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16及び図17に示す特許文献1では、以下の手順で組立カムシャフトをシリンダヘッドに組み付けることが記載されている。作業者は、まず針状ころ133を収納したC型形状の保持器134を、弾性を利用して分割部分を広げてカムシャフト110に組み込む。次に作業者は、外輪部材132をシリンダヘッド152に固定して、外輪部材131をベアリングキャップ151に固定する。次に作業者は、保持器134が組み付けられたカムシャフト110を、シリンダヘッド152に固定された外輪部材132の上に配置する。このとき、作業者は、外輪部材132の上に保持器134が位置するように、保持器134をカムシャフト110に沿って移動及び位置決めする必要があり、手間がかかる。針状ころ軸受130を複数取り付ける場合、作業者は、カムシャフト110に取り付けられた複数の保持器134を、それぞれ適切な位置に位置決めして、各外輪部材132の上に、それぞれの保持器134が配置された状態としなければならないので、多大な手間を必要とする。その後、作業者は、外輪部材131が固定されたベアリングキャップ151を、対応するシリンダヘッド152に固定することで、シリンダヘッドへの組立カムシャフトの組み付けを完了する。
【0008】
図18及び図19に示す特許文献2に記載の構成では、カムシャフトに転がり軸受230を設けるごとに、カムシャフトを第1主軸211と第2主軸212に分けて、転がり軸受230が取り付けられた連結軸213で連結する必要がある。従って、カムシャフトに複数の転がり軸受230を設ける場合、カムシャフトの構造が複雑になると共に、組み立てる手間もかかる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、よりシンプルな構造を有して組み立てが容易であり、かつ、カム駒間に配置された転がり軸受におけるシャフト軸線方向の位置決めを、手間なく行うことができる組立カムシャフトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の発明は、シャフトに複数のカム駒が嵌入固定されると共に、複数の前記カム駒間に当該シャフトを支承する転がり軸受が嵌入されて構成される組立カムシャフトであって、前記転がり軸受は、外輪と、前記シャフトの外周面により形成される内輪と、前記外輪と前記内輪との間の環状の隙間に配設される複数のころと、複数の前記ころを前記シャフトの周方向に所定間隔で保持する保持器と、を有しており、前記外輪には軸方向の両端に内鍔部が形成されており、両端の前記内鍔部間に複数の前記軸状ころが配設されており、前記保持器は、前記ころの軸方向の一端側を位置決めして配設される第1保持器と、前記ころの軸方向の他端側を位置決めして配設される第2保持器と、が分割して形成されており、前記第1保持器と前記第2保持器の少なくとも一方には、軸方向において対向している前記カム駒に当接するように位置決め部位が軸方向に延設して形成されており、該位置決め部位における軸方向の長さは、前記外輪が前記カム駒間に位置決めされて配設される位置となる長さである、組立カムシャフトである。
【0011】
次に、第2の発明は、第1の発明に記載の組立カムシャフトであって、前記位置決め部位は、前記第1保持器と前記第2保持器のそれぞれに、それぞれの方向に延びるように、それぞれの長さにて、設けられている、組立カムシャフトである。
【0012】
次に、第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の組立カムシャフトであって、前記第1保持器及び第2保持器には、軸方向に対向している前記カム駒に向かって前記外輪から抜けないように、前記外輪の前記内鍔部における内側面に対して軸方向において係止することのできる係止突起が形成されている、組立カムシャフトである。
【0013】
次に、第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか一項に記載の組立カムシャフトであって、前記第1保持器及び第2保持器にて構成される前記保持器には、複数の前記ころを前記シャフトの周方向に前記所定間隔で保持するための複数の柱部が設けられており、複数の前記柱部のそれぞれは、軸方向における一方端が、前記第1保持器に一体的に形成されており、軸方向における他方端が、接続手段を介して前記第2保持器に接続されている、あるいは、複数の前記柱部のそれぞれは、軸方向における一方端が、接続手段を介して前記第1保持器に接続されており、軸方向における他方端が、前記第2保持器に一体的に形成されている、あるいは、周方向において1つおきの前記柱部は、軸方向における一方端が、前記第1保持器に一体的に形成され、軸方向における他方端が、接続手段を介して前記第2保持器に接続されており、残りの前記柱部は、軸方向における一方端が、接続手段を介して前記第1保持器に接続されており、軸方向における他方端が、前記第2保持器に一体的に形成されている、組立カムシャフトである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、転がり軸受は、外輪と、ころと、第1保持器及び第2保持器と、にて構成されているので、転がり軸受の構造は非常にシンプルである。また組み立てカムシャフトは、シャフトと、カム駒と、転がり軸受から構成されているので、組立カムシャフトの構造も非常にシンプルであり、組み立てが容易である。また、軸方向に延設された位置決め部位(第1保持器または第2保持器の少なくとも一方に形成されている)を、当該位置決め部位に対向しているカム駒に突き当てるだけで、転がり軸受の外輪における軸方向の位置を位置決めできる。従って、転がり軸受の位置決めを手間なく行うことができる。
【0015】
第2の発明によれば、位置決め部位が、第1保持器と第2保持器のそれぞれに設けられている。従って、第1保持器の位置決め部位が、第1保持器の側のカム駒に当接しているとともに、第2保持器の位置決め部位が、第2保持器の側のカム駒に当接している。つまり、作業者が、位置決め部位を、対向しているカム駒に突き当てることすら不要であり、作業者が何もしなくても、転がり軸受の外輪の軸方向の位置が位置決めされている。
【0016】
第3の発明によれば、第1保持器及び第2保持器の係止突起が外輪の内鍔部の内側面に係止しているため、第1保持部及び第2保持器が、転がり軸受から抜けることを防止できる。
【0017】
第4の発明によれば、保持器(第1保持器及び第2保持器)は、複数のころをシャフトの周方向に所定間隔で保持する複数の柱部を有している。そして各柱部は、片方の端部が第1保持器または第2保持器と一体的に形成され、もう片方の端部が接続手段を介して第2保持器または第1保持器に接続されている。すなわち、各柱部の両端が第1保持器と第2保持器の両方で支持されているので、柱部の剛性を適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の組立カムシャフトの組立方法の概略を説明する図である。
図2】従来の組立カムシャフトの外観を説明する斜視図である。
図3】従来の組立カムシャフトのエンジンのシリンダヘッドへの組み付けを説明する図である。
図4】第1の実施の形態の組立カムシャフト10の構成の概略を説明する斜視図である。
図5】第1の実施の形態の組立カムシャフト10Aの構成の概略を説明する斜視図である。
図6図4の組立カムシャフト10の断面図である。
図7】第1の実施の形態の第1保持器と第2保持器の概略を説明する図である。
図8図7におけるVIII−VIII断面図である。
図9図7に示す状態に対して、各柱部における第2保持器に対向している側の端部を、接続手段を介して第2保持器に接続した状態を説明する図である。
図10図7に示す係止突起に対して、異なる構造の係止突起の例(例1)を説明する図である。
図11図7に示す係止突起に対して、異なる構造の係止突起の例(例2)を説明する図である。
図12図7に示す係止突起に対して、異なる構造の係止突起の例(例3)を説明する図である。
図13】保持器に設けられている位置決め部位における、他の形状の例を説明する図である。
図14】第2の実施の形態の第1保持器と第2保持器の概略を説明する図である。
図15図14に示す状態に対して、各柱部における保持器に一体的に形成されていない側の端部を、接続手段を介して、対向している保持器に接続した状態を説明する図である。
図16】従来の組立カムシャフトの支持構造の例(従来例1)を説明する分解図である。
図17図16に示す分解図における各部材を組み付けた状態を説明する図である。
図18】従来の組立カムシャフトの構造の例(従来例2)を説明する分解図である。
図19図18に示す分解図における各部材を組み付けた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
●[従来の組立カムシャフトの組立方法の例、及びシリンダヘッドへの組付手順の例(図1図3)]
まず、図1図3を用いて、従来の組立カムシャフト310の組立方法の例と、従来の組立カムシャフト310をシリンダヘッド52へ組み付ける組付手順の例を説明する。図1は、従来の組立カムシャフトの組立方法の例を説明する図であり、図2は、組み立てられた組立カムシャフト310の外観の例を説明する図である。また図3は、図2に示した組立カムシャフト310を、シリンダヘッド52に組み付ける際の手順を説明する図である。なお、図1図3に記載しているX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交しており、X軸方向はシャフト軸線方向を示し、Z軸方向は鉛直上方を示している。
【0020】
一般的に、組立カムシャフトは、例えば、カム駒を焼嵌めやシャフトの外周とカム駒の軸孔の内壁にスプラインを設けて嵌め込む方法等によって、シャフトに固定されて組み立てられる。ここでは、焼嵌めでカム駒をシャフトに固定する方法の場合で、組立カムシャフト310を組み立てる手順について簡単に説明する。シャフト343は、図1図3に示すように、外径が一定の棒状である。なお図1図3では、説明のためにシャフト343の長さを、ほぼ2個のカム駒分の長さとしているが、実際にはもっと長手方向に長い。以下、シャフト343における位置Bに第1カム駒341を位置決めし、位置Cに第2カム駒342を位置決めする例を説明する。焼嵌めの例であるため、常温では、「シャフト343の外径」>「第1カム駒341、第2カム駒342の貫通孔の内径」に設定されている。
【0021】
まずシャフト343を、図1に示すように、長手方向が鉛直方向となるように保持する。そして、「第1カム駒341の貫通孔の内径」>「シャフト343の外径」となるまで熱した第1カム駒341を、図1に示すように、シャフト343に外嵌する(位置A)。なお位置Bには位置決め用の治具JGが配置されており、治具JGは、第1カム駒341の温度が徐々に低下してシャフト343に対して強固に嵌合されるまで、第1カム駒341を位置Bに維持する。第1カム駒341の焼嵌め後、シャフト343に転がり軸受330を外嵌する。そして第1カム駒341の場合と同様にして、位置Cに治具JGを配置して、第2カム駒342をシャフト343に焼嵌めする。
【0022】
図2は、図1の組立手順に従って組み立てられた組立カムシャフト310である。シャフト軸線方向において、第1カム駒341と転がり軸受330との間、及び、第2カム駒342と転がり軸受330との間には、隙間が設けられている。従って、転がり軸受330は、この隙間の分だけ、シャフト軸線方向に自由に移動可能である。
【0023】
図3に示すように、組立カムシャフト310の転がり軸受330は、シリンダヘッド52とシリンダヘッドカバー51に挟み込まれて保持される。第1カム駒341と第2カム駒342が焼嵌めされたシャフト343は、保持された転がり軸受330によって、シリンダヘッド52とシリンダヘッドカバー51に対して回転自在に支持される。組立カムシャフト310をシリンダヘッド52に組み付けた場合、転がり軸受330の外輪331は、シリンダヘッド52の内鍔部52Aと内鍔部52Bの間と、シリンダヘッドカバー51の内鍔部51Aと内鍔部51Bの間に配置される。しかし、転がり軸受330は、シャフト343の軸線方向に固定されておらず、第1カム駒341と第2カム駒342の間を自由に移動できてしまう。例えば、図3中に点線で示した位置や2点鎖線で示した位置に、転がり軸受330が移動した場合、シリンダヘッド52とシリンダヘッドカバー51にて転がり軸受330を挟み込もうとしても、転がり軸受330の外輪331が、内鍔部51A、52A、あるいは内鍔部51B、52Bと干渉してしまい、組み付けることができない。
【0024】
従って、作業者は、組立カムシャフト310をシリンダヘッド52に組み付ける際、転がり軸受330の外輪331の位置を、自身の手で移動させて、シリンダヘッド52の内鍔部52Aと52Bとの間に位置決めする必要がある。実際には、1本の組立カムシャフトには、例えば8個のカム駒(4気筒の場合)が固定され、4個の転がり軸受が設けられている場合がある。この場合、作業者は、各転がり軸受におけるシャフト軸線方向の位置を、自身の手で微調整しなければならないので、非常に手間がかかる。また、シャフトを水平方向に対して傾斜させてしまうと、傾斜した方向に転がり軸受が勝手に移動してしまうので、シャフトを水平方向に維持した状態で、転がり軸受の位置を1個ずつ微調整しなければならない。以降に説明する本実施の形態では、転がり軸受の保持器の構造に特徴を有し、転がり軸受の外輪の位置決め(シャフト軸線方向の位置決め)を、手間なく行うことができる組立カムシャフトについて説明する。
【0025】
●[第1の実施の形態の組立カムシャフト10と10Aの構成(図4図13)]
図4図13を用いて第1の実施の形態の形態について説明する。図4は、第1の実施の形態の組立カムシャフト10の構成の概略を説明する図である。組立カムシャフト10は、第1カム駒41、第2カム駒42、転がり軸受30、シャフト43で構成される。図5は、第1の実施の形態の別例である組立カムシャフト10Aの構成の概略を説明する図である。組立カムシャフト10Aは、組立カムシャフト10に対して、転がり軸受30Aにおける保持器34A(第1保持器11Aと第2保持器21A)が組立カムシャフト10における保持器34(第1保持器11と第2保持器21)と相違する。従って、主に組立カムシャフト10を用いて説明する。なお、説明の都合上、図4における転がり軸受30の外輪31と図5における転がり軸受30Aの外輪31は、点線で表し省略している。なお、図4図5図6図13に記載しているX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交しており、X軸方向はシャフト軸線方向を示し、Z軸方向は鉛直上方を示している。
【0026】
図6に示すように、転がり軸受30は、外輪31と、シャフト43の外周面により形成される内輪37と、外輪31と内輪37との間の環状の隙間に配設される複数の針状ころ33と、保持器34と、を有している。
【0027】
図6で示すように、外輪31には軸方向の両端に内鍔部31A、31Bがそれぞれ形成されており、内鍔部31Aと31Bの間に複数の針状ころ33が配設されている。
【0028】
図4に示すように、保持器34は、複数の針状ころ33を、外輪31と内輪37(図6参照)との間の環状の隙間に、シャフト43の周方向に沿って所定の間隔で保持する。保持器34は、第1保持器11と第2保持器21で構成されている。針状ころ33は、針状ころ係止爪33Aによって保持器34に係止されて、シャフト43の径方向に対して保持されている。
【0029】
また、図6に示すように、位置決め部位17は、シャフト43の軸方向において対向している第1カム駒41に当接するように第1保持器11に延設されている。また、位置決め部位27は、シャフト43の軸方向において対向している第2カム駒42に当接するように第2保持器21に延設されている。位置決め部位17はシャフト43の全周を覆い第1環状部12を形成して、位置決め部位27はシャフト43の全周を覆い第2環状部22を形成している。
【0030】
図6で示すように、軸方向長さL1は、外輪31が対向する第1カム駒41に位置決めされて配設される位置決め部位17の長さである。また、軸方向長さL2は、外輪31が対向する第2カム駒42に位置決めされて配設される位置決め部位27の長さである。軸方向長さL1とL2は、外輪31の外鍔部32Aから第1カム駒41までと、外鍔部32Bから第2カム駒42までの間の隙間を埋めるため、L1+L2=(第1カム駒41と第2カム駒42のシャフト43の軸線方向の間隔)−(外輪31のシャフト43の軸線方向の長さ)、である必要がある。
【0031】
これにより、第1保持器11の位置決め部位17は第1カム駒41に当接し、外輪31は、第1カム駒41から軸方向長さL1で位置決めされる。さらに、第2保持器21の位置決め部位27は第2カム駒42に当接し、外輪31は、第2カム駒42から軸方向長さL2で位置決めされる。
【0032】
従って、図3におけるシリンダヘッド52に、組立カムシャフト10を組み付けた場合、作業者は、転がり軸受30の外輪31の位置を、自身の手で移動させて1個ずつ微調整して、シリンダヘッド51の内鍔部51Aと内鍔部51Bの間に位置決めする必要がない。これにより、組立カムシャフト10の転がり軸受30の外輪31の位置決めを、手間なく容易に行うことができる。
【0033】
図4で示している第1保持器11と第2保持器21のそれぞれは、樹脂または金属から溶接や深絞り等により円筒状に形成されている。また、図5で示している第1保持器11Aと第2保持器21Aのそれぞれは、樹脂または金属からなる平板状の部材を丸めて円筒状にして形成されている。以下、組立カムシャフト10Aを用いて保持器の詳細な説明をする。
【0034】
図7図9は、円筒状の第1保持器11Aと第2保持器21Aをシャフト43(図5参照)の周方向に展開した図である。図7は、第1保持器11Aにおける柱部15と、第2保持器21Aによるシャフト43の周方向に対する針状ころ33の保持について、説明する図である。図9は、各柱部15における第2保持器21Aに対向している側の端部を、接続手段を介して第2保持器21Aに接続した状態を説明する図である。なお、説明の都合上、針状ころ係止爪33A(図5参照)は省略する。
【0035】
図5で示すように、第1保持器11Aと第2保持器21Aは、保持器係合部16、26をそれぞれ有している場合もある。保持器係合部16(26)は、図7で示すように、保持器係合凸部16A(26A)と保持器係合凹部16B(26B)で構成されている。第1保持器11Aには、保持器係合凸部16Aと保持器係合凹部16Bがそれぞれ設けられている。第2保持器21Aには、保持器係合凸部26Aと保持器係合凹部26Bがそれぞれ設けられている。これにより、第1保持器11Aは、保持器係合凸部16Aが保持器係合凹部16Bに係合することで、平板状の部材が丸められて、円筒状に形成されている。また、第2保持器21Aは、保持器係合凸部26Aが保持器係合凹部26Bに係合することで、平板状の部材が丸められて、円筒状に形成されている。図7において、第1保持器11Aの第1カム駒41に当接していない端部には、2点鎖線で示されている針状ころ33をシャフト43(図5参照)の周方向に所定間隔で保持するための複数の柱部15が設けられている。柱部15は、軸方向における一方端が第1保持器11Aに一体的に形成されており、他方端は、柱先端接続部29を介して第2保持器21Aに接続されている。
【0036】
図9に示すように、シャフト43(図5参照)の周方向に隣接する2本の柱部15と、第1保持器11Aの端面と第2保持器21Aの端面によって、スロットSが形成されている。組み立てられた組立カムシャフト10Aの転がり軸受30Aにおいて、針状ころ33は、スロットSに回動自在に収納されている。組立カムシャフト10Aが組み付けられた状態で、シャフト43が回転すると、針状ころ33は、回転しながらシャフト43の周方向に沿って移動する。このとき、針状ころ33の軸線方向に沿う円周面が、柱部15の長手方向の端面を押して、保持器34Aをシャフト43の周方向に回転させる。この場合において、柱部15の長手方向の端面が受ける負荷は、柱部15が設けられている第1保持器11Aの端部と、柱部15の一方端が接続されている柱先端接続部29と、に分散されてかかる。これにより、柱部15が第1保持器11Aの端部だけで支えられている場合に比べて、シャフト43の速い回転に対しても、柱部15が撓むことがなく、針状ころ33をスロットS内に適切に保持できる。
【0037】
図4に示すように、第1保持器11に係止突起14が周方向に所定の間隔で設けられて、第2保持器21に係止突起24が周方向に等間隔で設けられている。図6において、係止突起14は、第1保持器11がシャフト43の軸方向に外輪31から第1カム駒41に向かって抜けないように、外輪31の内鍔部31Aにおける内側面に対して軸方向に形成されている。また、係止突起24は、第2保持器21がシャフト43の軸方向に外輪31から第2カム駒42に向かって抜けないように、外輪31の内鍔部31Bにおける内側面に対して軸方向に形成されている。図8において、係止突起14と24が設けられている第1保持器11(11A)と第2保持器21(21A)の断面の形状を示す。係止突起14と24は、第1保持器11(11A)と第2保持器21(21A)のそれぞれの一部にまたは全周にわたって凸形状を設けることで形成される。係止突起14と24の凸形状と大きさは、外輪31の内鍔部31A、31Bのそれぞれに、第1保持器11と第2保持器21をそれぞれ外輪31の内側に係止できる程度であれば良い。第1保持器11と第2保持器21を金属で成形した場合、係止突起14と24は、プレス加工で形成しても良い。例えば、係止突起14A(24A)は緩やかな曲線を持った凸形状で(図10参照)、係止突起14B(24B)は三角形の凸形状で(図11参照)、係止突起14C(24C)は緩やかな傾斜を持った凸形状で(図12参照)で形成されている。
【0038】
第1の実施の形態において、位置決め部位は、位置決め部位17が第1保持器11に設けられて、位置決め部位27が第2保持器21に設けられている。位置決め部位は、位置決め部位17と位置決め部位27のいずれか一方のみでもあっても良い。例えば、位置決め部位17だけを設けた場合、転がり軸受30は、組立カムシャフト10を水平方向から傾けて、位置決め部位17を第1カム駒41に当接させることで位置決めできる。
【0039】
また、組立カムシャフト10の位置決め部位17(27)は、全円周に設けられていなくても良い。例えば、図13に示すように、転がり軸受30Zは、位置決め部位17Z(27Z)が第1保持器11の周方向に3箇所設けられている。
【0040】
●[第2の実施の形態における保持器34Zの構成(図14図15)]
第2の実施の形態の組立カムシャフトは、第1の実施の形態の組立カムシャフト10Aにおける保持器34Aが保持器34Zである点で相違する。従って、主に保持器34Zについて説明する。図14図15は、第2の実施の形態における第1保持器11Zと第2保持器21Zを展開した図である。図14は、第1保持器11Zの柱部15と第2保持器21Zの柱部25によるシャフト43(図5参照)の周方向に対する針状ころ33の保持について説明する図である。図15は、第1保持器11Zと第2保持器21Zとの間の接続について説明する図である。なお、説明の都合上、針状ころ係止爪33A(図5参照)は省略する。第2の実施の形態の保持器34Zは、第1保持器11Aのみに柱部を有する保持器34A(図7参照)に対して、第1保持器11Zと第2保持器21Zの双方に柱部が設けられている点で相違する。その他の構成については、第1の実施の形態と同じであるため、第1保持器11Zと第2保持器21Zについてのみ詳細に説明する。
【0041】
図14図15に示すように、第1保持器11Zと第2保持器21Zは、柱部15と柱部25がそれぞれ設けられている。柱部15は、軸方向における一方端が第1保持器11Zに一体的に形成されており、他方端は、柱先端接続部29を介して第2保持器21Zに接続されている。また柱部25は、軸方向における一方端が第2保持器21Zに一体的に形成されており、他方端は、柱先端接続部29を介して第1保持器11Zに接続されている。
【0042】
柱部を第1保持器11Zと第2保持器21Zに設けることにより、第1保持器11Zまたは第2保持器21Zのいずれか一方に設ける場合に比べて、柱部15、25にかかるシャフト43の回転による負荷を、第1保持器11Zと第2保持器21Zに分散できる。また、第1保持器11Zと第2保持器21Zを同一の形状で形成することもできる。
●[本願の効果]
【0043】
以上に説明したように、本発明の組立カムシャフトは、よりシンプルな構造を有して組み立てが容易であり、かつ、カム駒間に配置された転がり軸受におけるシャフト軸線方向の位置決めを、手間なく行うことができる。
【0044】
本発明の、組立カムシャフトは、本実施の形態で説明した構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、組立カムシャフトの組立手順も、本実施の形態において説明したものに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲であれば何でも良い。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【0045】
本実施の形態にて説明した組立カムシャフトの位置決めの構成、構造等は、カムシャフトに限定されず、バランスシャフトなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10、10A 組立カムシャフト
11、11A、11Z 第1保持器
12 第1環状部
14 係止突起
15 柱部
16 保持器係合部
16A 保持器係合凸部
16B 保持器係合凹部
17 位置決め部位
21、21A、21Z 第2保持器
22 第2環状部
24、24A、24B、24C 係止突起
25 柱部
26 保持器係合部
26A 保持器係合凸部
26B 保持器係合凹部
27 位置決め部位
29 柱先端接続部
30、30A 転がり軸受
31 外輪
31A、31B 内鍔部
32A、32B 外鍔部
33 針状ころ
33A 針状ころ係止爪
34、34A、34Z 保持器
37 内輪
41 第1カム駒
42 第2カム駒
43 シャフト
51 シリンダヘッドカバー
52 シリンダヘッド
101 組立カムシャフト
110 カムシャフト
130 針状ころ軸受
131、132 外輪部材
131A、132A 係合爪
134 保持器
151 ベアリングキャップ
151A、152A 凹部
152 シリンダヘッド
201 組立カムシャフト
211 第1主軸
212 第2主軸
213 連結軸
221 カム駒
222 カム駒
230 転がり軸受
231 外輪
233 軸状ころ
234 保持器
310 組立カムシャフト
330 転がり軸受
331 外輪
341 第1カム駒
342 第2カム駒
343 シャフト
L1、L2 軸方向長さ
L211、L212 突出長さ
JG 治具
S スロット

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19