特開2018-204498(P2018-204498A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204498(P2018-204498A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20181130BHJP
   B60K 13/04 20060101ALN20181130BHJP
   B60K 13/02 20060101ALN20181130BHJP
【FI】
   F01M13/00 G
   B60K13/04 B
   B60K13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-109380(P2017-109380)
(22)【出願日】2017年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】別所 弘樹
【テーマコード(参考)】
3D038
3G015
【Fターム(参考)】
3D038BA03
3D038BA11
3D038BA12
3D038BB04
3D038BC02
3D038BC15
3D038BC22
3G015BD12
3G015BE13
3G015CA16
3G015DA02
3G015EA06
3G015EA37
(57)【要約】
【課題】構成の複雑化によるコスト増を招くことなく、スロットルバルブに水分が付着して氷結する等の不利を回避できるようにすることが望まれていた。
【解決手段】エンジンから排出されるブローバイガスを吸気路26の途中部に還元するブローバイガス還元通路32が、吸気路26のエアークリーナ28よりも流動方向下手側に接続され、吸気路26のブローバイガス還元通路32が接続された還元通路接続箇所Qの流動方向下手側箇所に、流動方向下手側ほど低い位置に位置するように下がり傾斜姿勢となり、且つ、最下端部に排水部37を備えた傾斜経路部36が設けられ、傾斜経路部36の流動方向下手側であって且つ還元通路接続箇所Qと略同じ高さ又はそれよりも高い位置に、スロットルバルブ30が備えられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
燃焼用空気を外気取入れ口から前記エンジンに向けて通流する吸気路と、
前記燃焼用空気に含まれる塵埃を除去するエアークリーナと、
前記エンジンによる前記燃焼用空気の吸気量を調節するスロットルバルブと、
前記エンジンから排出されるブローバイガスを前記吸気路の途中部に還元するブローバイガス還元通路とが備えられ、
前記ブローバイガス還元通路は、前記吸気路の前記エアークリーナよりも流動方向下手側に接続され、
前記吸気路の前記ブローバイガス還元通路が接続された還元通路接続箇所の流動方向下手側箇所に、流動方向下手側ほど低い位置に位置するように下がり傾斜姿勢となり、且つ、最下端部に排水部を備えた傾斜経路部が設けられ、
前記傾斜経路部の流動方向下手側であって且つ前記還元通路接続箇所と略同じ高さ又はそれよりも高い位置に、前記スロットルバルブが備えられている作業車。
【請求項2】
前記傾斜経路部の最下端部よりも流動方向下手側にレゾネータが備えられている請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンが搭載されている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車では、エンジンの燃焼用空気を吸気する吸気路が、車体前部から車体後部に亘って長く延び、その吸気路の途中におけるエンジンの後方側の近い位置にエアークリーナが備えられる。エアークリーナからエンジンの吸気導入口までの間には、略水平姿勢の吸気路が設けられ、その途中にスロットルバルブが備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では記載されていないが、エンジンから排出されるブローバイガスを吸気路に還元するブローバイガス還元通路は、エアークリーナからエンジンに至る経路の途中部におけるスロットルバルブに近い位置に接続されていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−13690号公報
【特許文献2】特開2011−185181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成では、エンジンから排出されるブローバイガスがスロットルバルブに近い位置に還元されるので、ブローバイガスに含まれる水分がスロットルバルブに付着することがある。寒冷地では、このようにスロットルバルブに付着した水分が氷結してしまい、スロットルバルブの作動が良好に行えなくなるおそれがあった。
【0006】
ところで、上記したような氷結を防止するための構成として、スロットルバルブに対してエンジン冷却水を循環供給させて昇温させる構成が考えられるが、このような構成であれば、余計な配管が必要となり、構造が複雑となってコスト高を招く不利がある。
【0007】
そこで、構成の複雑化によるコスト増を招くことなく、スロットルバルブに水分が付着して氷結する等の不利を回避できるようにすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車の特徴構成は、
エンジンと、
燃焼用空気を外気取入れ口から前記エンジンに向けて通流する吸気路と、
前記燃焼用空気に含まれる塵埃を除去するエアークリーナと、
前記エンジンによる前記燃焼用空気の吸気量を調節するスロットルバルブと、
前記エンジンから排出されるブローバイガスを前記吸気路の途中部に還元するブローバイガス還元通路とが備えられ、
前記ブローバイガス還元通路は、前記吸気路の前記エアークリーナよりも流動方向下手側に接続され、
前記吸気路の前記ブローバイガス還元通路が接続された還元通路接続箇所の流動方向下手側箇所に、流動方向下手側ほど低い位置に位置するように下がり傾斜姿勢となり、且つ、最下端部に排水部を備えた傾斜経路部が設けられ、
前記傾斜経路部の流動方向下手側であって且つ前記還元通路接続箇所と略同じ高さ又はそれよりも高い位置に、前記スロットルバルブが備えられている点にある。
【0009】
本発明によれば、ブローバイガス還元通路を通して吸気路に還元されるブローバイガスに含まれる水分は、ブローバイガス還元通路が接続された還元通路接続箇所の流動方向下手側箇所に位置する傾斜経路部において、下方側、すなわち、流動方向下手側に向けて流下案内される。そして、最下端部に備えられた排水部から吸気路の外部に排出される。又、ブローバイガス還元通路とスロットルバルブとの間に、傾斜経路部が設けられる分だけ、ブローバイガスの還元位置とスロットルバルブとを離間させることができる。
【0010】
従って、スロットルバルブに水分が侵入することを防止して、寒冷地等で使用する場合であっても、スロットルバルブに水分が付着して氷結する等の不利を回避することが可能となる。
【0011】
本発明においては、前記傾斜経路部の最下端部よりも流動方向下手側にレゾネータが備えられていると好適である。
【0012】
本構成によれば、レゾネータを設けることによって、吸気作用により発生する騒音を小さい音に抑制することができる。レゾネータは共鳴作用により消音するものであり、その内部は中空状に形成されている。傾斜経路部の最下端部よりも流動方向下手側にレゾネータが備えられることにより、排出部から排出されずに残った水分をレゾネータの内部に一時貯留させておくことができ、スロットルバルブに侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】多目的車両の全体側面図である。
図2】多目的車両の全体平面図である。
図3】原動部の平面図である。
図4】吸気装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の作業車にかかる実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、図1図4における矢印Fで示す方向が「前」、図1図4における矢印Bで示す方向が「後」、図2,3における矢印Rで示す方向が「右」、図2,3における矢印Lで示す方向が「左」である。
【0015】
〔全体構成〕
図1,2に作業車の一例としての多目的車両が示されている。この多目的車両は、荷の運搬やレクリエーション等の多目的な用途に用いられる車両である。多目的車両には、操向可能且つ駆動可能な左右一対の前車輪1と、駆動可能な左右一対の後車輪2とが備えられている。車体の前後中央部には、運転部3が備えられている。運転部3の後方には荷台4が備えられている。荷台4の下方には、原動部5が備えられている。運転部3の前方には、開閉可能なボンネット6が備えられている。ボンネット6内の空間には、エンジン冷却用のラジエータ8等が配置されている。
【0016】
運転部3には、操縦者が着座する運転座席9、運転座席9に隣接して配置され、搭乗者が着座可能な補助席10、操舵操作を行うためのステアリングホイール11、変速操作を行うための変速レバー12等が備えられている。ステアリングホイール11、及び、変速レバー12は、運転座席9の前方に位置する運転パネル13に配置されている。
【0017】
荷台4は、荷を載置可能な載置状態と、荷を排出可能なダンプ状態と、に切り換え可能に構成されている。荷台4は、横向きの軸芯周りに揺動することにより、前端部を上昇させて、後端部側から荷を排出可能なダンプ状態とすることができる。荷台4の状態変更は、例えば、油圧式アクチュエータの駆動により行うことができる。
【0018】
図1に示されるように、原動部5には、水冷式のガソリンエンジン14(以下、エンジンと称する)、ベルト式無段変速機構15を収容する変速ケース16、ギヤ式変速機構17を収容するミッションケース18等が備えられている。
【0019】
図4に示されるように、エンジン14は、クランク軸が車体左右方向に沿うように、且つ、シリンダヘッド19が斜め後ろ傾斜姿勢となるように配置されている。エンジン14は、2気筒式に構成されている。変速ケース16は、エンジン14、及び、ミッションケース18の側部側に連結支持されている。ミッションケース18は、エンジン14の後部側に連結支持されている。
【0020】
エンジン14、ミッションケース18等は、車体フレーム20に支持されている。車体フレーム20は、詳述はしないが、前後方向に延びる複数のフレーム体及び横方向に延びる複数のフレーム体からなる枠組み形状に構成されている。
【0021】
原動部5には、エンジン14に外部の空気を導入する吸気装置21と、エンジン14の排気を排出する排気装置22とが備えられている。図2に示すように、吸気装置21と排気装置22とは、左右両側に振り分け配置されている。
【0022】
排気装置22には、エンジン14から排出される排気が通流する排気管23と、排気音を低減可能なマフラー24とが備えられている。排気管23は、エンジン14から機体前方に向けて延出されてから屈曲され、エンジン14の側方を迂回して、機体後方に向けて延出されている。排気管23は、変速ケース16の上方を通るように配置されている。排気管23は、エンジン14の後端部から2本延出され、マフラー24の前端部で合流したのちマフラー24に接続されている。マフラー24にて排気音が低減された排気は、車体後部の排気口25から外方に排出される。
【0023】
〔吸気装置〕
次に、吸気装置21について説明する。
図2図4に示されるように、吸気装置21には、エンジン14に導入される燃焼用空気が通流する吸気路26を構成する吸気管27、空気を除塵処理するエアークリーナ28、吸気音の消音を行うレゾネータ29、エンジン14に対する燃焼用空気の供給量を変更調節するスロットルバルブ30、吸気路26をエンジン14の各気筒に分岐させる吸気分岐部31、エンジン14から排出されるブローバイガスを吸気路26の途中部に還元するブローバイガス還元通路32等が備えられている。
【0024】
図2に示すように、吸気管27は、車体前部側から車体後端部まで前後方向に長く延設されている。吸気管27の車体前部側の端部は、ボンネット6内部の空間に位置しており、この端部に外部から空気を取り込む外気取込口33が形成されている。吸気管27は、外気取込口33から後方に延び、ボンネット6内部の空間及び運転部3の下方を通りエアークリーナ28まで延びる前部側吸気部27Aと、エアークリーナ28から車体後端部に位置するレゾネータ29まで延びる中間側吸気部27Bと、レゾネータ29からエンジン14の吸気導入口34まで延びるエンジン側吸気部27Cとを備えている。
【0025】
エアークリーナ28は、原動部5内において、エンジン14の上部の右横側方に位置して、当該エアークリーナ28の長手方向が車体左右方向に沿う状態で配置されている。エアークリーナ28はブラケット35にて支持されている。ブラケット35は、詳述はしないが車体フレーム20に支持されている。
【0026】
図4に示すように、吸気管27の中間側吸気部27Bには、流動方向下手側ほど低い位置に位置するように下がり傾斜姿勢となる傾斜経路部36が設けられている。この傾斜経路部36の最下端部には、吸気管27の内部に存在する水分を外側に排出する排水部37が備えられている。傾斜経路部36の最下端部がレゾネータ29の下端側箇所に接続されている。
【0027】
吸気管27のエンジン側吸気部27Cは、レゾネータ29の上部側箇所に接続されている。エンジン側吸気部27Cには、流動方向上手側にスロットルバルブ30が備えられ、流動方向下手側に吸気分岐部31が備えられている。レゾネータ29への接続箇所とエンジン14の吸気導入口65とは略同じ高さに設定され、エンジン側吸気部27Cは、略水平姿勢で前後方向に延びている。
【0028】
吸気分岐部31は、エアークリーナ28を通過して清浄化されたのち、スロットルバルブ30にて吸気量が調節された状態で供給される空気を、2系統に分岐してエンジン14の各気筒の燃焼室に供給する。
【0029】
ブローバイガス還元通路32が、エアークリーナ28よりも流動方向下手側であって、且つ、吸気管27の中間側吸気部27Bにおける傾斜経路部36よりも流動方向上手側の箇所に接続されている。そして、吸気管27の中間側吸気部27Bにおけるブローバイガス還元通路32が接続される箇所は、ブラケット38を介してエンジン14に支持されている。すなわち、図4に示すように、エンジン14の後部側箇所に支持部材39が固定され、支持部材39が後方に向けて延設されている。この支持部材39の後上部側箇所にブラケット38が連結され、ブラケット38の上部箇所が吸気管27の中間側吸気部27Bに設けられたフランジ部40に連結されている。
【0030】
エンジン14のピストンと気筒(シリンダ)との間の隙間からクランクケースに漏れ出したブローバイガスは、ブローバイガス還元通路32を通して吸気路26内に還元され、吸気路26を通してエンジン14に再度供給されて燃焼室内で燃焼する。
【0031】
図3,4に示すように、吸気路26におけるブローバイガス還元通路32が接続された還元通路接続箇所Qの流動方向下手側箇所に傾斜経路部36が設けられているから、ブローバイガスに含まれる水分は、傾斜経路部36を流下案内されて最下端部の排水部37から外部に排出されることになる。又、還元通路接続箇所Qとスロットルバルブ30とが離間するので、ブローバイガスに含まれる水分がスロットルバルブ30に侵入するおそれが少ないものとなる。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、傾斜経路部36の最下端部にレゾネータ29が接続されるものを示しているが、この構成に代えて、レゾネータ29を傾斜経路部36の上流側に設けるようにしてもよく、エアークリーナ28よりも上流側に設けてもよい。又、このようなレゾネータ29を備えていない構成としてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態では、エアークリーナ28の長手方向が車体横方向に沿うように配置されているものが例示されているが、この構成に代えて、エアークリーナ28の長手方向が機体前後方向に沿うように配置されていてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では、吸気管27の外気取込口33が、ボンネット6内に形成される空間に位置しているものが例示されているが、この構成に代えて、例えば、吸気管27の外気取込口33が、運転部3の運転座席9の後部箇所等の塵埃の混入が比較的少ない空気の存在する箇所に位置するものとしてもよい。
【0035】
(4)上記実施形態では、動力源として、ガソリンエンジン14を備えたものを示したが、この構成に代えて、ディーゼルエンジンを備える構成でもよく、エンジンと走行用電動モータとを併用する構成でもよく、あるいは、電動モータだけを備える構成でもよい。
【0036】
(5)上記実施形態では、ベルト式無段変速機構15が備えられているものが例示されているが、この構成に代えて、例えば、ベルト式無段変速機構15に代えて、静油圧式無段変速装置が備えられていてもよい。
【0037】
(6)上記実施形態では、運転部に二人乗車可能な構成としたが、3人以上の人間が乗車可能な構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、エンジンが搭載されている作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
14 エンジン
26 吸気路
28 エアークリーナ
29 レゾネータ
30 スロットルバルブ
32 ブローバイガス還元通路
33 外気取入れ口
36 傾斜経路部
37 排水部
Q 還元通路接続箇所
図1
図2
図3
図4