特開2018-204522(P2018-204522A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018204522-振動抑制機能を有する圧縮機 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204522(P2018-204522A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】振動抑制機能を有する圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/06 20060101AFI20181130BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20181130BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20181130BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20181130BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   F04C29/06 D
   F04C29/12 Z
   F04C18/02 311P
   F04C29/00 B
   F04B39/00 101N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-110040(P2017-110040)
(22)【出願日】2017年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】塚 義友
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
【テーマコード(参考)】
3H003
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB03
3H003AC03
3H003BB00
3H003CD06
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB02
3H039BB07
3H039CC26
3H039CC48
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB22
3H129BB26
3H129CC23
3H129CC29
(57)【要約】
【課題】圧縮機の配管の振動を安い費用で抑制すること。
【解決手段】圧縮機(10)は、ケーシング(20)と、圧縮機構(40)と、配管(50、60、70)と、を備える。圧縮機構(40)は、ケーシングの中に設置される。流体を圧縮する配管(50、60、70)は、流体をケーシングの内部と外部との間で移動させる。配管は、内径が第1管部内径(DP)である第1管部(71)と、第1管部に保持される絞り部(Q)と、を有する。絞り部の流路面積である絞り部流路面積(AQ)は、第1管部の流路面積である第1管部流路面積(AP)よりも小さい。絞り部の全体が第1管部の中に設置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(20)と、
前記ケーシングの中に設置され、流体を圧縮する圧縮機構(40)と、
前記流体を前記ケーシングの内部と外部との間で移動させる配管(50、60、70)と、
を備え、
前記配管は、
内径が第1管部内径(DP)である第1管部(71)と、
前記第1管部に保持される絞り部(Q)と、
を有し、
前記絞り部の流路面積である絞り部流路面積(AQ)は、前記第1管部の流路面積である第1管部流路面積(AP)よりも小さく、
前記絞り部の全体が前記第1管部の中に設置されている、
圧縮機(10)。
【請求項2】
前記絞り部流路面積(AQ)の前記第1管部流路面積(AP)に対する比率(AQ/AP)は、0.6以下である、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記第1管部流路面積(AP)を有する拡管部の長さである拡管部長(LP)は、50mm以上400mm以下である、
請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記絞り部は、環状またはC字状の断面を有する絞部材(73)によって構成される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第1管部は、前記絞部材を定位置に保持する少なくとも1つの保持部(K1、K2)を有する、
請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第1管部は、前記第1管部内径(DP)より大きな内径を持つフレア部(F)を有し、
前記絞部材は前記フレア部に係合する突出部(73a)を有する、
請求項4または請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記第1管部に挿入される態様で前記第1管部に接続される第2管部をさらに有し、
前記絞り部は、前記第2管部の前記第1管部に挿入された端部によって構成される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項8】
前記第1管部の端部(E1)には、前記流体を授受するための接続部(71b)が設けられ、前記接続部は前記第1管部流路面積(AP)よりも小さな接続部流路面積(AC)を有する、
請求項1から7のいずれか1つに記載の圧縮機。
【請求項9】
ケーシング(20)と、
前記ケーシングの中に設置され、流体を圧縮する圧縮機構(40)と、
前記ケーシングに接続された第1管部(71)、および、前記第1管部に接続された第2管部(72)を有する配管(50、60、70)と、
を備える圧縮機(10)の製造方法であって、
少なくとも前記第1管部を加熱して膨張させ、
環状またはC字状の断面を有する絞部材(73)を前記第1管部に挿入し、
前記第2管部を前記第1管部に挿入し、ロウ付けすることによって接続し、
前記第1管部および前記第2管部を冷却することによって前記第1管部を収縮させ、
前記第1管部の内面に前記絞部材を保持させる、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動抑制機能を有する圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒回路に搭載される圧縮機には、吸入管、吐出管、インジェクション管などの、冷媒が出入りするための配管が設けられる。これらの配管は、冷媒の圧力脈動を受けて振動することがある。このような振動は、騒音を誘発したり、配管に過剰な応力を与えて損傷させたりするおそれがある。配管の振動を抑制するために、特許文献1(特開2010−185406号公報)に開示されている圧縮機では、配管にマフラが取り付けられている。
【0003】
マフラそれ自体も重量を持つので、マフラが振動するとマフラに接続されている配管が損傷するおそれがある。そこで、配管の一部に断面積の小さな絞り部を設けることが考えられる。配管に絞り部を設けることにより、配管の重量を大きく増加させずに、配管の固有振動数のシフトや冷媒の圧力脈動の平滑化などの作用によって、配管の振動が抑制されることが期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの場合、配管は銅製である。絞り部の設け方として、例えば、ある程度の剛性と小さな流路断面積を有する金属円筒部材を銅管に接続することが考えられる。しかし、異種金属からなる2つの部材をロウ付けによって接続することは一般に難しい。実際上、銅製の配管とは銅ロウを用いて接続するため、金属円筒部材には費用のかかる銅メッキを施すなどの措置が必要になる。
【0005】
本発明の課題は、圧縮機の配管の振動を安い費用で抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る圧縮機は、ケーシングと、圧縮機構と、配管と、を備える。圧縮機構は、ケーシングの中に設置され、流体を圧縮する。配管は、流体をケーシングの内部と外部との間で移動させる。配管は、内径が第1管部内径である第1管部と、第1管部に保持される絞り部と、を有する。絞り部の流路面積である絞り部流路面積は、第1管部の流路面積である第1管部流路面積よりも小さい。絞り部の全体が第1管部の中に設置されている。
【0007】
この構成によれば、絞り部は第1管部の中に配置されつつ第1管部によって保持されるので、絞り部を第1管部にロウ付けする必要がない。さらに、第1管部と絞り部が異種金属からなる場合には、ロウ付けの際に必要となったであろう金属メッキを、絞り部に施す必要がない。したがって、配管の振動を安い費用で抑制することができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る圧縮機は、第1観点に係る圧縮機において、絞り部流路面積の第1管部流路面積に対する比率が、0.6以下である。
【0009】
この構成によれば、配管には流路面積の変化が大きくなる箇所が生じる。したがって、配管の固有振動数がシフトしたり、流体の圧力脈動が平滑化されたりするなどの作用により、配管の振動がより抑制される。
【0010】
本発明の第3観点に係る圧縮機は、第1観点または第2観点に係る圧縮機において、第1管部流路面積を有する拡管部の長さである拡管部長が、50mm以上400mm以下である。
【0011】
この構成によれば、拡管部には拡管部長が確保される。したがって、配管の固有振動数がシフトしたり、流体の圧力脈動が平滑化されたりするなどの作用により、配管の振動がより抑制される。
【0012】
本発明の第4観点に係る圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る圧縮機において、絞り部が、環状またはC字状の断面を有する絞部材によって構成される。
【0013】
この構成によれば、流体は剛性を有する絞部材の環状またはC字状の断面の中央の通路を通過する。したがって、配管の振動をより抑制できる。
【0014】
本発明の第5観点に係る圧縮機は、第4観点に係る圧縮機において、第1管部が、絞部材を定位置に保持する少なくとも1つの保持部を有する。
【0015】
この構成によれば、第1管部の保持部によって絞部材は定位置に保持される。したがって、配管の振動モードが変わりにくいので、振動抑制の効果が安定する。
【0016】
本発明の第6観点に係る圧縮機は、第4観点または第5観点に係る圧縮機において、第1管部が、第1管部内径より大きな内径を持つフレア部を有する。絞部材はフレア部に係合する突出部を有する。
【0017】
この構成によれば、第1管部のフレア部との係合によって絞部材は定位置に保持される。したがって、配管の振動モードが変わりにくいので、振動抑制の効果が安定する。
【0018】
本発明の第7観点に係る圧縮機は、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る圧縮機において、第1管部に挿入される態様で第1管部に接続される第2管部をさらに有する。絞り部は、第2管部の第1管部に挿入された端部によって構成される。
【0019】
この構成によれば、絞り部は第2管部の端部によって構成される。したがって、絞り部を構成するために配管以外の特別な部品を用意する必要がないので、配管の振動抑制の効果をより安い費用で得ることができる。
【0020】
本発明の第8観点に係る圧縮機は、第1観点から第7観点のいずれか1つに係る圧縮機において、第1管部の端部には、流体を授受するための接続部が設けられる。接続部は第1管部流路面積よりも小さな接続部流路面積を有する。
【0021】
この構成によれば、小さな流路面積を有する絞り部と接続部が、第1管部における大きな流路面積を有する箇所を挟む。したがって、配管の中にマフラが構成されるので、配管の振動がより効果的に抑制される。
【0022】
本発明の第9観点に係る製造方法は、ケーシングと、圧縮機構と、配管と、を備える圧縮機を製造する。圧縮機構は、ケーシングの中に設置され、流体を圧縮する。配管は、ケーシングに接続された第1管部、および、第1管部に接続された第2管部を有する。製造方法は、少なくとも第1管部を加熱して膨張させ、環状またはC字状の断面を有する絞部材を第1管部に挿入し、第2管部を第1管部に挿入し、ロウ付けすることによって接続し、第1管部および第2管部を冷却することによって第1管部を収縮させ、第1管部の内面に絞部材を保持させる。
【0023】
この構成によれば、絞部材は焼き嵌めによって第1管部に固定される。したがって、絞部材と銅管部の間のクリアランスが小さいので、絞部材の移動が不活発になり、それに伴う絞部材と銅管部との衝突が抑制される。結果として、振動や騒音が低減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る圧縮機によれば、配管の振動を安い費用で抑制することができる。
【0025】
本発明に係る製造方法によれば、圧縮機の配管の振動抑制に寄与する絞り部を安い費用で構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】空気調和機の冷媒回路100を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る圧縮機10の断面図である。
図3】圧縮機10の断面の拡大図である。
図4】インジェクション経路の模式図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る圧縮機10の断面の拡大図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る圧縮機10の断面の拡大図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る圧縮機10の断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧縮機10を用いた空気調和機の冷媒回路100である。冷媒回路100は、室外機110、室内機200、冷媒配管90を有する。
【0028】
(1−1)室外機110
室外機110は、熱源として機能する。室外機110は、圧縮機10、四路切替弁111、室外熱交換器112、室外膨張弁113、エコノマイザ熱交換器114、インジェクション膨張弁115、中間圧冷媒管路116、液閉鎖弁117、ガス閉鎖弁118を有する。
【0029】
圧縮機10は、流体である冷媒を圧縮するものである。圧縮機10は、吸入管50から吸入したガス状の低圧冷媒を圧縮して、ガス状の高圧冷媒を吐出管60から吐出する。四路切替弁111は、冷房運転時には実線、暖房運転時には破線で示した接続を形成する。室外熱交換器112は、図示しないファンを利用して冷媒と空気との間で熱交換を行うものであり、冷房運転時には凝縮器、暖房運転時には蒸発器として機能する。室外膨張弁113は開度調整可能な弁であり、冷媒の減圧機として機能する。液閉鎖弁117およびガス閉鎖弁118は、開閉可能な弁であり、空気調和機のメンテナンス時などに閉鎖される。
【0030】
エコノマイザ熱交換器114は、冷媒の凝縮器から排出された液冷媒を過冷却するものである。エコノマイザ熱交換器114は、主経路114aと副経路114bを有する。主経路114aは、過冷却の対象となる液冷媒が通過する経路である。副経路114bは、過冷却の動作に必要な冷熱源として作用するガス冷媒が通過する経路である。この冷熱源として作用するガス冷媒は、インジェクション膨張弁115が液冷媒を減圧することによって生成された中間圧ガス冷媒である。副経路114bを出た中間圧ガス冷媒は、中間圧冷媒管路116を通過して圧縮機10のインジェクション管70へ向かう。
【0031】
(1−2)室内機200
室内機200は、利用者がいる部屋の空気の温度を調整するものである。室内機200は、室内熱交換器201、室内膨張弁202を有する。室内熱交換器201は、図示しないファンを利用して冷媒と空気との間で熱交換を行うものであり、冷房運転時には蒸発器、暖房運転時には凝縮器として機能する。室内膨張弁202は開度調整可能な弁であり、冷媒の減圧機として機能する。
【0032】
(1−3)冷媒配管90
冷媒配管90は、室外機110と室内機200の間で冷媒を移動させる経路として機能する。冷媒配管90は、液冷媒配管91とガス冷媒配管92を有する。液冷媒配管91は、液閉鎖弁117と室内膨張弁202を連通させるものであり、主に液冷媒または気液二相冷媒を移動させる。ガス冷媒配管92はガス閉鎖弁118と室内熱交換器201を連通させるものであり、主にガス冷媒を移動させる。
【0033】
(2)詳細構成
図2は、圧縮機10の断面図である。圧縮機10は、ケーシング20、モータ30、クランク軸35、圧縮機構40、第1支持部材27、第2支持部材28、吸入管50、吐出管60、インジェクション管70を有する。
【0034】
(2−1)ケーシング20
ケーシング20は、圧縮機10の構成部品および冷媒を収容し、冷媒の高圧に耐えうる強度を有する。ケーシング20は、互いに接合された円筒部21、上部22、下部23を有する。
【0035】
(2−2)モータ30
モータ30は、電力の供給を受けて、圧縮機構40のための動力を発生させるものである。モータ30は、ステータ31とロータ32を有する。ステータ31は、ケーシング20に直接的または間接的に固定されている。ロータ32は、ステータ31と磁気的な相互作用を行うことによって、回転することができる。
【0036】
(2−3)クランク軸35
クランク軸35は、モータ30が発生させた動力を圧縮機構40に伝達するものである。クランク軸35はロータ32と共に回転する。クランク軸35は主軸部36と偏心部37を有している。主軸部36はロータ32に固定されており、ロータ32と同心である。偏心部37は主軸部36から偏心しており、圧縮機構40に連結している。クランク軸35が回転することによって、偏心部37が公転する。
【0037】
(2−4)圧縮機構40
圧縮機構40は、流体であるガス冷媒を圧縮する。圧縮機構40は、固定スクロール41および可動スクロール42を有する。固定スクロール41はケーシング20に直接的または間接的に固定されている。可動スクロール42は固定スクロール41に対して公転可能である。固定スクロール41と可動スクロール42によって圧縮室43が規定されている。偏心部37の公転に追従して、可動スクロール42が公転運動をする。これによって圧縮室43の容積が変動し、ガス冷媒が圧縮される。圧縮工程を経た高圧ガス冷媒は、固定スクロール41に設けられた吐出口44から圧縮機構40の外へ出て、ケーシング20の内部空間に充満する。
【0038】
(2−5)第1支持部材27、第2支持部材28
第1支持部材27はクランク軸35の主軸部36を軸支する。第1支持部材27は、ケーシング20に直接的または間接的に固定されている。第1支持部材27は、固定スクロール41を直接的または間接的に支持してもよい。
【0039】
第2支持部材28はクランク軸35の主軸部36を軸支する。第2支持部材28は、ケーシング20に直接的または間接的に固定されている。
【0040】
(2−6)吸入管50、吐出管60、インジェクション管70
吸入管50、吐出管60、インジェクション管70は、ケーシング20の内部と外部との間で冷媒を移動させるために、ケーシング20に設けられている。
【0041】
吸入管50は、低圧ガス冷媒を吸入して圧縮室43へ導入するためのものである。吸入管50は、上部22に設けられている。
【0042】
吐出管60は、吐出口44から吐出されてケーシング20の内部空間に充満している高圧ガス冷媒を、ケーシング20の外部へ吐出するためのものである。吐出管60は、円筒部21に設けられている。
【0043】
インジェクション管70は、圧縮機10の圧縮効率を改善し、ひいては冷媒回路100の冷凍能力を向上させるためのものである。インジェクション管70は、冷媒回路100に存在する中間圧ガス冷媒を圧縮室43へ案内する。インジェクション管70は、上部22に設けられている。
【0044】
(3)インジェクション管70の詳細
図3は、圧縮機10の断面の拡大図である。本実施形態において、インジェクション管70は第1管部71からなる。この第1管部71は、銅管部71aと接続部71bを有する。
【0045】
銅管部71aは銅製の管路であり、第1端E1と第2端E2とを有する。第1端E1は接続部71bに接続される。第2端E2は冷媒回路100の中間圧冷媒管路116(図1)に接続される。銅管部71aの中には、絞部材73が挿入されている。絞部材73は、例えば鉄のような剛性材料からなる。代替的に、絞部材73は、樹脂、あるいは柔軟性を有する部材からなっていてもよい。絞部材73は、環状またはC字状の断面を有する。断面の中央は冷媒の通路として機能する。絞部材73の全体が第1管部71の銅管部71aの中に設置されている。絞部材73は第2端E2の近傍に配置されている。絞部材73は、銅管部71aよりも小さな流路断面積を有する絞り部Qを構成している。絞部材73は、銅管部71aに設けられた2つの保持部K1および保持部K2によって移動を規制され、定位置に保持されている。保持部K1および保持部K2は、例えば、銅管部71aに設けられた点状あるいは環状の凹部からなるカシメである。保持部K1および保持部K2という2つの保持部に代えて、単一の保持部K1のみによって絞部材73の下側への移動のみを規制してもよい。
【0046】
接続部71bは、ケーシング20の内部と外部が冷媒を授受するためのものである。接続部71bは例えば剛体であり、相対的に大きな流路断面積を有する広大部R1、および相対的に小さな流路断面積を有する狭小部R2が形成されている。接続部71bは、ケーシング20および圧縮機構40に固定されている。接続部71bの先端は、固定スクロール41に埋設されている。この先端において、狭小部R2の端部はインジェクション噴射孔Jを形成している。固定スクロール41には、狭小部R2と圧縮室43を連通させる冷媒経路41aが形成されている。インジェクション噴射孔Jはこの冷媒経路41aに接続している。
【0047】
図4は、インジェクション管70を構成する第1管部71の模式図である。冷媒は、絞部材73、銅管部71a、接続部71bを、順に通過する。絞部材73が形成する絞り部Qの流路面積は、絞り部流路面積AQである。絞部材73すなわち絞り部Qの長手方向の長さは絞り部長さLQである。第1管部71の銅管部71aにおける絞部材73よりも下流の下流部R3の流路面積は、第1管部流路面積APである。第1管部71の接続部71bの広大部R1の流路面積もまた、第1管部流路面積APである。第1管部71の下流部R3および接続部71bの広大部R1からなる区間を拡管部と呼ぶ。拡管部の流路面積は第1管部流路面積APである。拡管部の長さは拡管部長LPである。第1管部71の接続部71bの狭小部R2の流路断面積は、接続部流路面積ACである。第1管部71の銅管部71aの内径は第1管部内径DPである。
【0048】
絞り部流路面積AQは、第1管部流路面積APよりも小さい。絞り部流路面積AQの第1管部流路面積APに対する比率AQ/APは、0.6以下である。拡管部長LPは、50mm以上400mm以下である。接続部流路面積ACは、第1管部流路面積APよりも小さい。
【0049】
(4)特徴
(4−1)
絞部材73は第1管部71の銅管部71aの中に配置されつつ第1管部71の銅管部71aによって保持される。よって、絞部材73を第1管部71にロウ付けする必要がない。さらに、絞部材73を構成する鉄が、第1管部71の銅管部71aを構成する銅とは異種の金属であるにもかかわらず、ロウ付けの際に必要となったであろう銅メッキを、絞部材73に施す必要がない。したがって、インジェクション管70の振動を安い費用で抑制することができる。
【0050】
(4−2)
絞部材73の存在により、インジェクション管70には流路面積の変化が大きくなる箇所が生じる。したがって、インジェクション管70の固有振動数がシフトしたり、冷媒の圧力脈動が平滑化されたりするなどの作用により、インジェクション管70の振動がより抑制される。
【0051】
(4−3)
拡管部には拡管部長LPが確保される。したがって、インジェクション管70の固有振動数がシフトしたり、冷媒の圧力脈動が平滑化されたりするなどの作用により、インジェクション管70の振動がより抑制される。
【0052】
(4−4)
冷媒は絞部材73の環状またはC字状の断面の中央の通路を通過する。したがって、インジェクション管70の振動をより抑制できる。
【0053】
(4−5)
第1管部71の銅管部71aの保持部K1および保持部K2によって絞部材73は定位置に保持される。したがって、インジェクション管70の振動モードが変わりにくいので、振動抑制の効果が安定する。
【0054】
(4−6)
小さな絞り部流路面積AQを有する絞部材73と、小さな接続部流路面積ACを有する接続部71bとが、第1管部における大きな第1管部流路面積APを有する箇所を挟む。したがって、インジェクション管70の中にマフラが構成されるので、インジェクション管70の振動がより効果的に抑制される。
【0055】
(5)変形例
(5−1)第1変形例
上述の第1実施形態では、絞部材73はインジェクション管70に設けられている。これに代えて、絞部材73は吸入管50または吐出管60に設けられても良い。
【0056】
この構成によれば、吸入管50または吐出管60の振動を安い費用で抑制することができる。
【0057】
(5−2)第2変形例
上述の第1実施形態では、接続部71bは部分的に固定スクロール41に埋設されている。これに代えて、接続部71bは第1支持部材27に少なくとも部分的に埋設されてもよい。
【0058】
この構成によれば、インジェクション噴射孔Jは第1支持部材27に位置する。したがって、中間圧ガス冷媒は、第1支持部材27を介して固定スクロール41に規定された圧縮室43へ安定して供給される。
【0059】
(5−3)第3変形例
上述の第1実施形態では、小さな絞り部流路面積AQを有する絞部材73に加えて、小さな接続部流路面積ACを有する接続部71bを採用することによって、インジェクション管70の中にマフラが構成される。これに代えて、小さな接続部流路面積ACを有する接続部71bを採用しなくともよい。この場合、小さな流路面積は絞部材73によってのみ形成される。
【0060】
この構成によれば、マフラによる圧力脈動の低減の効果は低下する場合があるものの、インジェクション管70の固有振動数のシフトやその他の要因により、インジェクション管70の振動が抑制される場合がある。したがって、振動抑制をより安い費用で達成することができる。
【0061】
<第2実施形態>
(1)構成
図5は、本発明の第2実施形態に係る圧縮機10の断面の拡大図である。圧縮機10は、インジェクション管70Aを有する。本実施形態と第1実施形態との相違点は、インジェクション管70Aが第1管部71に加えて第2管部72を有する点、および、絞部材73が第1管部71および第2管部72の接続箇所において固定される点である。
【0062】
第1管部71の銅管部71aの第2端E2はフレア部Fを有する。フレア部Fの内径は、第1管部71の銅管部71aのフレア部F以外の領域が有する第1管部内径DPよりも大きい。フレア部Fには、第2管部72が挿入されている。第2管部72は銅管である。第2管部72は、冷媒回路100の中間圧冷媒管路116と別体の管路であって中間圧冷媒管路116に接続するものであってもよい。あるいは、第2管部72は、中間圧冷媒管路116と一体の管路であってもよい。第1管部71の銅管部71aと第2管部72は、銅ロウによってロウ付けされることによって、互いと接続している。
【0063】
絞部材73は大きな外径を持つ突出部73aを有する。突出部73aは、フレア部Fに係合するように構成されている。外径の大きなフレア部Fに挿入されている第2管部72は、突出部73aの移動を図中上方から規制している。
【0064】
(2)特徴
第1管部71の銅管部71aのフレア部Fとの係合によって絞部材73は定位置に保持される。したがって、インジェクション管70Aの振動モードが変わりにくいので、振動抑制の効果が安定する。
【0065】
(3)変形例
第1実施形態の変形例を本実施形態に適用してもよい。
【0066】
<第3実施形態>
(1)構成
図6は、本発明の第3実施形態に係る圧縮機10の断面の拡大図である。圧縮機10は、インジェクション管70Bを有する。本実施形態と第2実施形態との相違点は、絞部材73が焼き嵌めにより第1管部71の銅管部71aに固定されている点である。焼き嵌めに好都合となるよう、絞部材73は環状の断面を有することが好ましいが、C字状の断面を有してもよい。絞部材73は第2実施形態で採用されている突出部73aを持つ必要がない。絞部材73を銅管部71aに挿入する際に、通常は摩擦抵抗を受けるので、意図せぬ位置ずれが起こりにくいからである。しかし、絞部材73が突出部73aを有していれば、絞部材73の位置決めをより正確に行うことができる。また、銅管部71aは、第1実施形態で採用されている保持部K1、保持部K2を持つ必要がない。
【0067】
焼き嵌めは、第1管部71の銅管部71aと第2管部72を接続する際に加えられる熱を利用して行われる。第2管部72は、冷媒回路100の中間圧冷媒管路116と別体の管路であって中間圧冷媒管路116に接続するものであってもよい。あるいは、第2管部72は、中間圧冷媒管路116と一体の管路であってもよい。
【0068】
圧縮機10のインジェクション管70Bの製造方法は、具体的には次の通りである。まず、少なくとも第1管部71の銅管部71aを加熱して膨張させる。次に、絞部材73を膨張している銅管部71aに挿入する。絞部材73と銅管部71aの間には大きなクリアランスが生じないように寸法設計されているので、挿入に際して絞部材73は銅管部71aから摩擦抵抗を受ける。したがって、製造者の意に反して絞部材73が銅管部71aの中を滑って移動することはない。次に、第2管部72を第1管部71の銅管部71aに挿入する。次に、銅ロウを用いてロウ付けすることにより第1管部71と第2管部72とを接続する。最後に、第1管部71および第2管部72を冷却する。これにより、第1管部71の銅管部71aが収縮し、第1管部71の銅管部71aの内面に絞部材73が保持される。
【0069】
(2)特徴
絞部材73は焼き嵌めによって第1管部71の銅管部71aに固定される。したがって、絞部材73と銅管部71aの間のクリアランスが小さいので、絞部材73の移動が不活発になり、それに伴う絞部材73と銅管部71aとの衝突が抑制される。結果として、振動や騒音が低減される。焼き嵌めに用いる熱として、第1管部71と第2管部72のロウ付けの際に使われるものを流用できるので、絞り部Qを安い費用で構成できる。
【0070】
(3)変形例
第1実施形態の変形例を本実施形態に適用してもよい。
【0071】
<第4実施形態>
(1)構成
図7は、本発明の第4実施形態に係る圧縮機10の断面の拡大図である。圧縮機10は、インジェクション管70Cを有する。本実施形態と第3実施形態との相違点は、絞部材73を有しない点である。すなわち、絞り部Qは、第2管部72によって構成される。
【0072】
第2管部72の端部には、外形および内径の小さな絞り部Qが形成されている。第2管部72は第1管部71の銅管部71aに挿入される態様で第1管部71に接続されている。第2管部72は第1管部71の銅管部71aのフレア部Fと係合する。絞り部Qはフレア部Fを超えて、銅管部71aの内部に延びている。第1管部71の銅管部71aは、第2端E2において銅ロウによってロウ付けされることによって、第2管部72と接続されている。
【0073】
(2)特徴
絞り部Qは第2管部72の端部によって構成される。したがって、絞り部Qを構成するために配管以外の特別な部品を用意する必要がないので、配管の振動抑制の効果をより安い費用で得ることができる。
【0074】
(3)変形例
第1実施形態の変形例を本実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 圧縮機
20 ケーシング
30 モータ
40 圧縮機構
50 吸入管
60 吐出管
70 インジェクション管
71 第1管部
71a 銅管部
71b 接続部
72 第2管部
73 絞部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2010−185406号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7