【解決手段】駆動側の摩擦板32と従動側の摩擦板31とが交互に配設され、且つ、駆動側の摩擦板32と従動側の摩擦板31との相対回転を規制する係合状態と、相対回転を許容する係合解除状態とに切り換え自在な多板摩擦式係合機構24が備えられ、隣り合う駆動側の摩擦板32同士の間に、係合状態において駆動側の摩擦板32と従動側の摩擦板31との接触を許容し、且つ、係合解除状態において隣り合う従動側の摩擦板31同士を離間させるように付勢する弾性部材43が備えられている。
駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが交互に配設され、且つ、前記駆動側の摩擦板と前記従動側の摩擦板との相対回転を規制する係合状態と、相対回転を許容する係合解除状態とに切り換え自在な多板摩擦式係合機構が備えられ、
前記駆動側の摩擦板及び前記従動側の摩擦板のうちのいずれか一方を対象摩擦板として、隣り合う前記対象摩擦板同士の間に、前記係合状態において前記駆動側の摩擦板と前記従動側の摩擦板との接触を許容し、且つ、前記係合解除状態において隣り合う前記対象摩擦板同士を離間させるように付勢する弾性部材が備えられている収穫機用伝動装置。
前記弾性部材は、隣り合う前記対象摩擦板同士に亘っており、且つ、隣り合う前記対象摩擦板同士の間に、前記対象摩擦板同士を離間させるように付勢する付勢部を備える状態で、両側の前記対象摩擦板の夫々に取り付けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の収穫機用伝動装置。
隣り合う前記対象摩擦板同士の間に、他方側の摩擦板を介在させた状態で、隣り合う前記対象摩擦板同士を連結することにより、複数の前記駆動側の摩擦板及び複数の前記従動側の摩擦板がユニット状に組付けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の収穫機用伝動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、移動部材が多板摩擦式係合機構側にスライド移動するのに伴って、隣接する駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが密着することにより、それらが摩擦係合して回転軸を制動する制動状態に切り換わる。又、移動部材が多板摩擦式係合機構とは反対側へスライド移動するのに伴って、隣接する駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板との離間が許容されることにより、それらの摩擦係合が解除されて回転軸の制動を解除する制動解除状態に切り換わる。
【0005】
しかしながら、上記従来構成では、移動部材が多板摩擦式係合機構とは反対側へスライド移動する際には、単に、隣接する駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板との離間が許容されるだけであることから、移動部材が係合解除側の終端位置に到達しても、隣接する駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが密着していることがある。このような状態において、回転軸が回転を開始すると、密着している駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板との間に残留する制動力(摩擦係合力)が連れ回りトルクとして余分な抵抗になる不都合が生じる。
【0006】
そこで、多板摩擦式係合機構が係合解除状態に切り換わったときに、駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とを確実に分離させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る収穫機用伝動装置の特徴構成は、
駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが交互に配設され、且つ、前記駆動側の摩擦板と前記従動側の摩擦板との相対回転を規制する係合状態と、相対回転を許容する係合解除状態とに切り換え自在な多板摩擦式係合機構が備えられ、
前記駆動側の摩擦板及び前記従動側の摩擦板のうちのいずれか一方を対象摩擦板として、隣り合う前記対象摩擦板同士の間に、前記係合状態において前記駆動側の摩擦板と前記従動側の摩擦板との接触を許容し、且つ、前記係合解除状態において隣り合う前記対象摩擦板同士を離間させるように付勢する弾性部材が備えられている点にある。
【0008】
本発明によれば、係合状態では駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板との相対回転が規制されるので、従動側の摩擦板が回転する構成であれば、動力を伝達する動力伝達状態に設定でき、従動側の摩擦板が固定されていれば、駆動側の摩擦板の回転を制動する制動状態に設定することができる。係合解除状態では、駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板との相対回転が許容されるので、動力遮断状態あるいは非制動状態(自由回転状態)に設定できる。係合状態と係合解除状態との切り換えは、例えば、アクチュエータによる操作や手動操作等により行われる。
【0009】
そして、係合解除状態では、隣り合う駆動側の摩擦板同士の間、あるいは、隣り合う従動側の摩擦板同士の間に、弾性部材が備えられる。弾性部材は、係合状態においては弾性変形することにより、駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板との接触を許容する。弾性部材は、係合解除状態においては、隣り合う対象摩擦板同士が離間するように付勢される。その結果、隣り合う対象摩擦板同士が確実に離間するので、駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが密着することがなくなる。
【0010】
その結果、係合解除状態において、隣接する駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが確実に離間する状態となり、連れ回りトルクが発生して余分な抵抗になる等の不利を回避することが可能となった。
【0011】
本発明においては、前記弾性部材は、前記対象摩擦板の外周側部分に取り付けられていると好適である。
【0012】
弾性部材が、例えば、対象摩擦板の内周側部分に取り付けられる構成であれば、対象摩擦板の内周側部分が分離するように付勢力により押されるが、対象摩擦板の外周側が片持ち状に撓み変形して摩擦板同士の分離が適正に行えないおそれがある。
【0013】
そこで、本構成では、弾性部材が対象摩擦板の外周側部分に取り付けられる。この構成により、弾性部材による付勢力が、対象摩擦板の外周側部分に作用するので、付勢力が対象摩擦板の全体に作用して摩擦板同士を分離させ易いものになる。
【0014】
本発明においては、前記対象摩擦板に、径方向外側に突出し且つ外周側に位置する回り止め用の係止部材に係止する係止部が備えられ、前記弾性部材は、前記係止部に取り付けられていると好適である。
【0015】
本構成によれば、弾性部材が取り付けられる係止部は、駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが接触する接触作用領域よりも径方向外方に突出している。つまり、径方向外側に突出している回り止め用の係止部を利用して、駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板とが接触する接触作用領域を狭めることなく、弾性部材を取り付けることができる。
【0016】
本発明においては、前記弾性部材は、隣り合う前記対象摩擦板同士に亘っており、且つ、隣り合う前記対象摩擦板同士の間に、前記対象摩擦板同士を離間させるように付勢する付勢部を備える状態で、両側の前記対象摩擦板の夫々に取り付けられていると好適である。
【0017】
本構成によれば、弾性部材が両側の対象摩擦板の夫々に取り付けられ、それら対象摩擦板同士の間に付勢部を備えるので、例えば、組み付け時に少し位置がずれて弾性部材が適正に作用しなくなる等の不利がなく、常に適正に対象摩擦板同士を離間させるように付勢する状態となる。
【0018】
本発明においては、前記対象摩擦板に取り付け孔が形成され、
前記弾性部材は、隣り合う前記対象摩擦板夫々の前記取り付け孔を貫通する状態で取り付けられ、
前記弾性部材に、隣り合う前記対象摩擦板同士の間に位置して、前記対象摩擦板同士を離間させるように付勢する第1付勢部と、
隣り合う前記対象摩擦板夫々の並び方向での外側に位置して、隣り合う前記対象摩擦板夫々と前記並び方向での外方側に位置する他の前記対象摩擦板とを離間させるように付勢する第2付勢部とが備えられていると好適である。
【0019】
本構成によれば、弾性部材は、取り付け孔を貫通する状態で対象摩擦板に取り付けられるので、別途、取り付け用の部材を用いる必要はなく、取り付け構造が簡単になる。弾性部材は、第1付勢部の付勢力によって隣り合う対象摩擦板同士を離間させることができ、しかも、第2付勢部の付勢力によって、当該弾性部材が取付られる対象摩擦板の外方側に位置する他の対象摩擦板とを離間させることができる。
【0020】
その結果、多板摩擦式係合機構に備えられる複数の対象摩擦板の夫々について、互いに離間させることができるので、係合解除状態において、全ての駆動側の摩擦板と従動側の摩擦板について隣り合うもの同士を確実に離間させることが可能となる。
【0021】
本発明においては、隣り合う前記対象摩擦板同士の間に、他方側の摩擦板を介在させた状態で、隣り合う前記対象摩擦板同士を連結することにより、複数の前記駆動側の摩擦板及び複数の前記従動側の摩擦板がユニット状に組付けられると好適である。
【0022】
本構成によれば、隣り合う対象摩擦板同士をそれらの間に他方側の摩擦板を介在させた状態で弾性部材を用いて連結して、それらをユニット状に組付けた状態で、装置に装着することができる。その結果、複数の駆動側の摩擦板及び複数の従動側の摩擦板を別々に装着させる場合に比べて、煩わしさの少ない状態で能率よく作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る収穫機用伝動装置の実施形態を普通型コンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に、稲や麦などを収穫対象とする普通型コンバインが示されている。このコンバインは、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ走行装置2を装備した走行機体を備え、その走行機体の前部に、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送部3が横軸芯周りで揺動昇降自在に連結されている。そして、機体フレーム1上に、刈取搬送部3からの刈取穀稈に対して扱き処理を施すとともに、その扱き処理で得られた脱穀処理物に対して選別処理を施す脱穀装置4、脱穀装置4からの穀粒を貯留する穀粒タンク5、穀粒タンク5に貯留される穀粒を機外に排出するための穀粒排出装置6、操縦者が搭乗して運転操作を行う運転部7等が備えられている。
【0026】
運転部7は機体前部右側に位置し、運転部7の後方に穀粒タンク5が位置している。脱穀装置4が左側に位置し、穀粒タンク5が右側に位置する状態で、脱穀装置4と穀粒タンク5とが左右方向に並ぶ状態で備えられている。そして、運転部7の下方側には、駆動用のエンジン8が備えられ、エンジン8の動力が各部に伝達される。
【0027】
刈取搬送部3は、機体走行に伴って、植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分ける分草具9、収穫対象の植立穀稈を後方に向けて掻き込む回転リール10、収穫対象の植立穀稈の株元側を切断するバリカン形の刈取装置11、切断後の刈取穀稈を左右方向の中央側の所定箇所に寄せ集め後方に向けて送り出す横送りオーガ12、刈取穀稈を脱穀装置4に向けて搬送するフィーダ13等を備えて構成されている。そして、刈取搬送部3は、図示しない油圧シリンダにより横軸芯周りで昇降揺動自在に支持されている。
【0028】
脱穀装置4は、詳述はしないが、フィーダ13より搬送されてくる刈取穀稈を扱き処理したのち、扱き処理物を穀粒、二番物、排ワラ屑等に選別するように構成されている。穀粒は穀粒タンク5に貯留され、刈取作業終了後に、穀粒タンク5に貯留される穀粒は、周知構造のスクリューコンベアからなる穀粒排出装置6により機外に排出される。
【0029】
〔伝動機構〕
走行機体の前部位置で左右方向での中央位置には左右のクローラ走行装置2に駆動力を伝える伝動装置を内装したミッションケース15が備えられている。
図2に示すように、ミッションケース15の上部には静油圧式の無段変速装置16が連結されており、この無段変速装置16に、図示しないベルト式伝動機構及び伝動軸14を介してエンジン8の駆動力が伝えられ、無段変速装置16からの駆動力はミッションケース15内の伝動機構に伝えられる。
【0030】
図2に示すように、無段変速装置16の出力軸17からの動力を、高速、中速、低速の3段階に変速するギア変速式の副変速装置18、副変速装置18から中継伝動ギア19を介して伝達される変速後の動力を左右のクローラ走行装置2に選択的に伝達する左右一対のサイドクラッチブレーキ20、入力ギア22aを介して伝達された左右のサイドクラッチブレーキ20からの動力を減速したのち左右の走行駆動軸21に伝達する左右一対の減速機構22等が備えられている。
【0031】
各サイドクラッチブレーキ20は、夫々、中継伝動ギア19から対応するクローラ走行装置2への伝動を断続する噛み合い式のサイドクラッチ23と、対応するクローラ走行装置2を制動する多板式のサイドブレーキ(多板摩擦式係合機構の一例)24とを備えている。
【0032】
左側のサイドクラッチブレーキ20が、左側の減速機構22及び左側の走行駆動軸21を介して左側のクローラ走行装置2に作用し、かつ、右側のサイドクラッチブレーキ20が、右側の減速機構22及び右側の走行駆動軸21を介して右側のクローラ走行装置2に作用するように構成している。
【0033】
走行機体が直進走行するときは、左右両側のサイドクラッチ23が共に入り状態となり、左右一対のクローラ走行装置2が同速度で回転駆動される。又、旋回走行するときは、旋回内側のクローラ走行装置2に対応するサイドクラッチ23を遮断状態に切り換えて回転速度を減速して緩旋回したり、旋回内側のクローラ走行装置2に対応するサイドブレーキ24を制動状態にして急旋回したりすることができる。
【0034】
図3に示すように、各サイドクラッチ23は、クラッチ用伝動軸25に相対回転可能に外嵌された筒軸26、筒軸26の外周部にスプライン嵌合する状態で外嵌され且つ一側端に噛合部27Aを備えた移動側回転体27、クラッチ用伝動軸25にスプライン外嵌され且つ被噛合部28Aを備えた駆動側回転体28、噛合部27Aと被噛合部28Aとが噛み合う入り位置に向けて移動側回転体27を付勢する圧縮バネ29などを備えている。筒軸26は、外周部に減速機構22の入力ギア22aに噛み合うギア30を備えている。
【0035】
移動側回転体27が、圧縮バネ29の作用によって入り位置に摺動することにより、移動側回転体27の噛合部27Aと駆動側回転体28の被噛合部28Aとが噛み合う伝動状態に切り換わり、かつ、圧縮バネ29の作用に抗して切り位置に摺動することにより、移動側回転体27の噛合部27Aと駆動側回転体28の被噛合部28Aとが噛み合いを解除する遮断状態に切り換わる。
【0036】
サイドクラッチ23が伝動状態に切り換わると、中継伝動ギア19を介してクラッチ用伝動軸25に伝達される動力が、駆動側回転体28、移動側回転体27、筒軸26、減速機構22、及び、走行駆動軸21に伝達され、クローラ走行装置2が駆動される。
【0037】
各サイドブレーキ24は、ギア30に嵌まり合う状態で外嵌される環状の複数のブレーキディスク32(駆動側の摩擦板の一例)、ブレーキディスク32と交互に配置された環状の複数のセパレータプレート(従動側の摩擦板の一例)31、セパレータプレート31の外周部を覆う状態で支持するブレーキハウジング34等を備えている。複数のセパレータプレート31の横方向外方側には、移動側回転体27が押圧操作可能な状態で備えられている。
【0038】
図5に示すように、筒軸26に形成されたギア30における左右方向の外方側端部には、他の部分よりも少し径方向外方に突出する突部30Aが形成されている。この突部30Aは、ブレーキディスク32の歯底よりも少し大径に形成されており、ブレーキディスク32を組み込む際に、ブレーキディスク32が抜け外れるのを防止することができる。
【0039】
図3に示すように、ミッションケース15は、その左右の側壁におけるクラッチ用伝動軸25の軸芯方向での各サイドクラッチブレーキ20との対向箇所に、ブレーキディスク32、セパレータプレート31などの通過を許容する開口15Aが形成されている。この開口15Aを塞ぐカバー部材35がボルト連結によって着脱可能に取り付けられている。ミッションケース15における開口15Aの内方側箇所に一体的にブレーキハウジング34が形成されている。
【0040】
左右両側のカバー部材35は夫々、駆動側回転体28の通過を許容する補助開口35Aを備え、かつ、この補助開口35Aを塞ぐ補助カバー部材36をボルト連結によって着脱可能に備えている。各補助開口35Aは、クラッチ用伝動軸25の軸芯を中心とする円形に形成されている。各補助カバー部材36は、補助開口35Aに内嵌する大径部36Aと、カバー部材35との間に環状の油室37を形成する小径部36Bとを備えている。そして、その小径部36Bの内部に、クラッチ用伝動軸25の端部を支持するベアリング38を備えている。
【0041】
カバー部材35の内周部と補助カバー部材36の小径部36Bの外周部との間に、移動側回転体27を摺動操作する環状のピストン39が備えられ、環状の油室37に圧油が供給されると、ピストン39は、クラッチ用伝動軸25の軸芯方向に摺動する。このピストン39の摺動により、対応する移動側回転体27をクラッチ用伝動軸25の軸芯方向に摺動操作して、サイドクラッチ23を遮断状態に切り換えるとともに、サイドブレーキ24を制動状態に切り換えるように構成されている。尚、圧油の制御は、旋回操作レバー42の操作に基づいて図示しない油圧制御弁により行われる。
【0042】
図4,6に示すように、セパレータプレート31の外周側部分に、径方向外側に突出し且つ外周側に位置する回り止め用の係止部材としてのブレーキハウジング34に係止する係止部40が備えられている。係止部40は、セパレータプレート31から一体的に延設される状態で、周方向に等間隔をあけて6個形成されている。
【0043】
セパレータプレート31を内装するブレーキハウジング34の内周側には、係止部40に対応する形状の係合溝41が形成され、係止部40が係合溝41に入り込み係合することにより、セパレータプレート31の回転が規制される。
【0044】
環状の油室37に圧油が供給され、ピストン39が押圧作用すると、移動側回転体27が左右中央側に移動操作され、複数のセパレータプレート31及びブレーキディスク32を押圧して、複数のセパレータプレート31及びブレーキディスク32が圧接する制動状態(係合状態の一例)に切り換わる。又、圧油供給が停止され、移動側回転体27の左右中央側への押圧操作を停止すると、圧縮バネ29の作用によって制動解除状態に切り換わる。
図3では、動作を理解し易くするために、図面中の左側は、制動解除状態(係合解除状態)を表し、右側は、制動状態(係合状態)を表している。制動解除状態においては、サイドクラッチ23は伝動状態となり、制動状態においては、サイドクラッチ23は遮断状態となる。
【0045】
図3,6,7に示すように、隣り合うセパレータプレート31(対象摩擦板の一例)同士の間に、係合状態においては、ピストン39の押圧力により弾性変形してセパレータプレート31とブレーキディスク32との接触を許容し、且つ、係合解除状態においては、ピストン39の押圧力が無くなり元の状態に復帰して隣り合うセパレータプレート31同士を離間させる分離用操作体43(弾性部材の一例)が備えられている。
【0046】
図6に示すように、分離用操作体43は、弾性体の一例であるゴムからなり、セパレータプレート31の外周側部分に位置する係止部40に取り付けられている。分離用操作体43は、隣り合うセパレータプレート31同士に亘っており、且つ、隣り合うセパレータプレート31同士の間に、それらを離間させるように付勢する付勢部Fを備える状態で、両側のセパレータプレート31の夫々に取り付けられている。
【0047】
説明を加えると、セパレータプレート31の係止部40に挿通する状態で取り付け孔44が形成され、分離用操作体43は、隣り合うセパレータプレート31夫々の取り付け孔44を貫通する状態で取り付けられている。分離用操作体43は、略円柱状であり、長手方向の中央部に中央側大径部45が設けられ、中央側大径部45の長手方向両側にセパレータプレート31の取り付け孔44に内嵌される小径部46が設けられている。両側の小径部46の長手方向端部側には、小径部46よりも大径の端部側大径部47が設けられている。
【0048】
分離用操作体43は、弾性変形可能であるから、弾性変形させながら端部側からセパレータプレート31の取り付け孔44に挿入して、
図7に示すように、両側の小径部46がセパレータプレート31の取り付け孔44に内嵌される状態に装着することができる。このように分離用操作体43を装着することにより、中央側大径部45が隣り合うセパレータプレート31同士を離間させるように付勢する付勢部Fを構成する。又、長手方向両側端部の端部側大径部47により抜け外れを防止できる。
【0049】
複数の分離用操作体43が、セパレータプレート31の外周部に周方向に等間隔をあけて6個形成された係止部40に夫々取り付けられる。分離用操作体43の取付構造について説明する。
図4,7に示すように、隣り合う2枚ずつのセパレータプレートに亘る状態で、周方向に並ぶ6個の係止部40のうち1つ置きの係止部(
図7のI、III、Vの3つの係止部40)にて分離用操作体43が取り付けられている。又、残り3つの係止部40(
図7のII、IV,VIの3つの係止部40)では、1組(2枚)のセパレータプレート31のうちの一方のセパレータプレート31と、隣り合う組の一方のセパレータプレート31とに亘る状態で、分離用操作体43が取り付けられている。尚、
図7は、複数のセパレータプレート31を周方向に展開した状態の断面図を示している。
【0050】
従って、隣り合うセパレータプレート31同士は、周方向に略等間隔(120度)ずつ離れた3つの係止部40において、分離用操作体43によって互いに連結されている。そこで、2枚のセパレータプレート31の間に、ブレーキディスク32を挟んだ状態で、2枚のセパレータプレート31を分離用操作体43によって連結することにより、複数(
図3に示す例では、8枚)のセパレータプレート31と複数(同、7枚)のブレーキディスク32がユニット状に組付けられる。機体への組付け時には、複数のセパレータプレート31と複数のブレーキディスク32とをユニット状に組付けた状態で、ブレーキハウジング34に装着することが可能である。
【0051】
組付けの順序としては、カバー部材35を取り外した状態で、先に、複数のセパレータプレート31と複数のブレーキディスク32とがユニット状に組まれたものをブレーキハウジング34に装着し、その後、筒軸26、移動側回転体27等を装着する。装着された後は、筒軸26のギア30に形成された突部30Aによりブレーキディスク32等の抜け外れを防止できる。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)分離用操作体43(弾性部材)を次のように構成してもよい。
図8に示すように、隣り合うセパレータプレート31同士の間に位置して、セパレータプレート31同士を離間させるように付勢する第1付勢部F1と、隣り合うセパレータプレート31夫々の並び方向での外側に位置して、隣り合うセパレータプレート31夫々と並び方向での外方側に位置する他のセパレータプレート31とを離間させるように付勢する第2付勢部F2とを備える構成である。
【0053】
説明を加えると、上記実施形態と異なる点は、分離用操作体43は、長手方向両側端部側に設けられる端部側大径部47の軸芯方向の長さが、中央側大径部45の長さと略同じ長さである。中央側大径部45が第1付勢部F1を構成し、端部側大径部47が第2付勢部F2を構成する。このように構成することにより、第1付勢部F1の付勢力によって隣り合うセパレータプレート31同士を離間させることができ、第2付勢部F2の付勢力によって、並び方向両側の外方側に位置する他のセパレータプレート31と離間させることができる。
【0054】
又、分離用操作体43(弾性部材)を次のように構成してもよい。
図9に示すように、中央側大径部45が第1付勢部F1を構成し、端部側大径部47が第2付勢部F2を構成する点は上述の実施形態と同じであるが、並び方向の一端側の端部側大径部47aが中央側大径部45の長さと略同じ長さであり、他端側の端部側大径部47bは短い形状となる構成である。この実施形態では、並び方向両側の外方側に位置する他のセパレータプレート31との間は、長い端部側大径部47aと短い端部側大径部47bとが接当して離間させることができる。
【0055】
(2)上記実施形態では、分離用操作体43(弾性部材)が、対象摩擦板(セパレータプレート31)の外周側部分に位置する係止部40に取り付けられる構成としたが、この構成に代えて、対象摩擦板の径方向内方側箇所に取り付けられる構成としてもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、分離用操作体43(弾性部材)が、隣り合う対象摩擦板(セパレータプレート31)夫々の取り付け孔44を貫通する状態で取り付けられる構成としたが、この構成に代えて、対象摩擦板(セパレータプレート31)の側面に接着する状態で取り付けられる構成でもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、分離用操作体43(弾性部材)が、対象摩擦板としてセパレータプレート31に取り付けられる構成としたが、この構成に代えて、対象摩擦板としてブレーキディスク32に取り付けられる構成としてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、多板摩擦式係合機構として多板式のブレーキ24に適用したが、この構成に代えて、多板摩擦クラッチに適用してもよい。