特開2018-204656(P2018-204656A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-204656(P2018-204656A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】結合構造及びステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/02 20060101AFI20181130BHJP
   B62D 1/20 20060101ALI20181130BHJP
   F16D 1/08 20060101ALI20181130BHJP
   F16D 1/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   F16D1/02 110
   B62D1/20
   F16D1/08
   F16D1/00 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-108989(P2017-108989)
(22)【出願日】2017年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】森 勝久
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC39
3D030DC40
3D030DF01
(57)【要約】
【課題】シャフトとジョイント部材とが不完全に結合されることを防止できる結合構造及びステアリング装置を提供する。
【解決手段】結合構造は、被締付部HSと締付部STとから構成される。被締付部HSは、セレーション歯15aの外径よりも小径の外径を有してセレーション歯15aが形成されたピニオンシャフト15と同軸に連結された円柱部15eと、円柱部15eの外径よりも大径の内径を有して円柱部15eを挿通し、ボルト係合溝15bとボルト挿通孔16cとが軸線Jhの方向にて一致しておらずセレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合しない非係合状態で、ボルト挿通孔16cに挿入されたボルト17と当接する円筒部材18と、円柱部15eに対して円筒部材18を回転可能に保持する保持部材としての止め輪19と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に形成されて、外周部にて軸線の方向に沿って設けられた被係合歯部と、前記外周部の周方向に設けられた環状のボルト係合溝と、を含んで構成された被締付部を端部に有するシャフトと、
前記被締付部を収容する筒状の収容穴と、前記収容穴を区画する内周部に設けられて前記被係合歯部と係合する係合歯部と、前記収容穴の一部を横切るように設けられたボルト挿通孔と、を含んで構成された締付部を有するジョイント部材と、
前記ボルト挿通孔に挿入されて締結されるボルトと、を備え、
前記被締付部が前記締付部における前記収容穴に収容され、前記被締付部の前記ボルト係合溝と前記締付部の前記ボルト挿通孔とが前記軸線の方向にて一致すると前記被係合歯部と前記係合歯部とが係合した係合状態となり、前記ボルトが前記ボルト係合溝と前記ボルト挿通孔とに挿入されて締結されることにより前記締付部が締め付けられ、前記シャフトと前記ジョイント部材とがトルク伝達可能に連結される結合構造であって、
前記被締付部は、
前記被係合歯部の外径よりも小径の外径を有して前記被係合歯部と同軸に軸外方向に連設された円柱部と、
前記円柱部の前記外径よりも大径の内径を有して前記円柱部に外嵌され、前記ボルト係合溝と前記ボルト挿通孔とが前記軸線の方向にて一致しておらず前記被係合歯部と前記係合歯部とが係合しない非係合状態で、少なくとも一部が前記収容穴に収容される円筒部材と、
前記円柱部に対して前記円筒部材を回転可能に保持する保持部材と、を備えた、結合構造。
【請求項2】
前記円筒部材は、
前記軸線の方向に沿った厚みが、
前記非係合状態において、前記締付部の前記係合歯部のうち、前記ボルト挿通孔から前記収容穴の開口側端部までに設けられた前記係合歯部の長さよりも大きく設定される、請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記保持部材は、
前記円柱部の外周面に形成された環状係止溝に装着されて、前記円筒部材に当接する止め輪である、請求項1又は請求項2に記載の結合構造。
【請求項4】
前記止め輪は、
前記円柱部に対して回転可能となるように、前記環状係止溝に装着される、請求項3に記載の結合構造。
【請求項5】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールが固定されるステアリングシャフトと、
前記ステアリングホイールに加えられる操舵トルクが前記ステアリングシャフトを介して伝達されて車両の転舵輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、
を備えたステアリング装置であって、
前記ステアリングシャフトは、複数の前記シャフトと、前記シャフトの間を連結する前記ジョイント部材と、から構成されており、
前記シャフトと前記ジョイント部材とが請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の結合構造により結合される、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトとジョイント部材とを結合する結合構造、及び、この結合構造を用いたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示されたステアリング機構の連結装置が知られている。この従来のステアリング機構の連結装置では、シャフトに抜け止め用の凹部を有するスプライン部が形成され、ジョイント部材の穴部にシャフトのスプライン部に対応するスプライン部が形成されるとともにボルトを挿通させるボルト孔が形成されるようになっている。そして、従来のステアリング機構の連結装置においては、シャフトのスプライン部の先端に、スプライン部よりも小径で、ボルト孔に通したボルトに当接した際にスプライン部同士が係合しない長さに設定された突部が形成されるようになっている。
【0003】
これにより、従来のステアリング機構の連結装置においては、ボルト孔に通したボルトが突部と当接しない状態、即ち、ボルト孔に通したボルトと抜け止め用の凹部とが係合した状態ではスプライン部同士が係合するようになっている。従って、組み立て作業において作業者がステアリングホイールを回動した場合、シャフトとジョイント部材とが一体に回転すれば、シャフトとジョイント部材とが完全な結合であることを確認することができる。一方、従来のステアリング機構の連結装置においては、突部がボルト孔に達しない状態ではスプライン部同士が係合しない。従って、組み立て作業において作業者がステアリングホイールを回動した場合、シャフトが空転するので、シャフトとジョイント部材との不完全な結合を発見できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−52421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のステアリング機構の連結装置においては、例えば、ボルト孔に通したボルトを規定トルク以上で締め付けた場合には、突部とジョイント部材の穴部(スプライン部)とが摩擦係合する場合がある。この場合、スプライン部同士が係合していない状態であっても、シャフトとジョイント部材とが一体に回転する可能性がある。従って、スプライン同士が係合していない、シャフトとジョイント部材との不完全な結合を防止できない虞がある。
【0006】
本発明は、シャフトとジョイント部材とが不完全に結合されることを防止できる結合構造及びステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(結合構造)
本発明に係る結合構造は、円柱状に形成されて、外周部にて軸線の方向に沿って設けられた被係合歯部と、外周部の周方向に設けられた環状のボルト係合溝と、を含んで構成された被締付部を端部に有するシャフトと、被締付部を収容する筒状の収容穴と、収容穴を区画する内周部にて被係合歯部と係合する係合歯部と、収容穴の一部を横切るように設けられたボルト挿通孔と、を含んで構成された締付部を有するジョイント部材と、ボルト挿通孔に挿入されて締結されるボルトと、を備え、被締付部が締付部における収容穴に収容され、被締付部のボルト係合溝と締付部のボルト挿通孔とが軸線の方向にて一致すると被係合歯部と係合歯部とが係合した係合状態となり、ボルトがボルト係合溝とボルト挿通孔とに挿入されて締結されることにより締付部が締め付けられ、シャフトとジョイント部材とがトルク伝達可能に連結される結合構造であって、被締付部は、被係合歯部の外径よりも小径の外径を有して被係合歯部と同軸に軸外方向に連設された円柱部と、円柱部の外径よりも大径の内径を有して円柱部に外嵌され、ボルト係合溝とボルト挿通孔とが軸線の方向にて一致しておらず被係合歯部と係合歯部とが係合しない非係合状態で、少なくも一部が収容穴に収容される円筒部材と、円柱部に対して円筒部材を回転可能に保持する保持部材と、を備える。
【0008】
これによれば、保持部材によって円柱部に保持された円筒部材は、円柱部に対して容易に回転することができる。又、円筒部材は、非係合状態においてボルト挿通孔に挿入されたボルトと当接することができるため、ボルトがボルト係合溝に挿入されていない状態で被係合歯部と係合歯部とが係合することを防止することができる。これにより、非係合状態である場合において、ボルト挿通孔に挿入されたボルトが締結されると、締付部の係合歯部と円筒部材とを摩擦係合させることができる。
【0009】
従って、非係合状態の場合には、係合歯部に摩擦係合した円筒部材は、係合歯部(即ち、ジョイント部材)の回転に伴って自由回転(空転)する。このため、非係合状態の場合には、係合状態の場合に比べて、例えば、係合歯部(ジョイント部材)を回転させるための力(トルク)が極めて小さくなるとともに、シャフトとジョイント部材とは一体回転しない。これにより、非係合状態、即ち、シャフトとジョイント部材とが不完全に結合されることを確実に発見して確実に防止することができる。
【0010】
(ステアリング装置)
本発明に係るステアリング装置は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールが固定されるステアリングシャフトと、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクがステアリングシャフトを介して伝達されて車両の転舵輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、を備えたステアリング装置であって、ステアリングシャフトは、複数のシャフトと、シャフト同士を連結するジョイント部材と、から構成されており、シャフトとジョイント部材とが上記結合構造により結合される。
【0011】
これによれば、ステアリング装置のステアリングシャフトを構成するシャフトとジョイント部材とは、円筒部材及び保持部材を有する結合構造により結合される。これにより、ステアリング装置の組み付け作業時において、非係合状態の場合には、係合状態の場合に比べて、ステアリングホイールを回転させるための力(トルク)が極めて小さくなる。又、ステアリングホイールの回転に伴って、シャフトとジョイント部材とが一体に回転しない。これにより、ステアリング装置の組み付け作業時において、非係合状態の発生を確実に発見するとともに防止することができ、シャフトとジョイント部材とが不完全に結合されることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る結合構造が適用されるステアリング装置の概略図である。
図2図1のII−II断面における結合構造及び転舵機構(ラックアンドピニオン機構)の構成を示す断面図である。
図3図2のセレーション歯の非係合状態の場合における結合構造の状態を説明するための断面図である。
図4】本発明の実施形態の第一変形例に係る保持部材を示す一部断面図である。
図5】本発明の実施形態の第二変形例に係る保持部材を示す一部断面図である。
図6】本発明の実施形態の第三変形例に係る保持部材を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る結合構造及びステアリング装置について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態及び各変形例の相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付してある。又、説明に用いる各図は、概略図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0014】
(ステアリング装置)
本実施形態に係るステアリング装置Aの構成について説明する。図1に示すように、ステアリング装置Aは、操舵機構10及び転舵機構20を備えている。
【0015】
操舵機構10は、転舵輪28を転舵するためにステアリングホイール11に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト12を備える。ステアリングホイール11が固定されるステアリングシャフト12は、コラムシャフト13、中間シャフト14及びピニオンシャフト15の複数のシャフトから構成されている。そして、コラムシャフト13及び中間シャフト14の間と、中間シャフト14及びピニオンシャフト15の間は、それぞれジョイント部材としてのユニバーサルジョイントUJを介して連結されて構成される。尚、本実施形態においては、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJとの連結部位を例示して説明する。
【0016】
ピニオンシャフト15は、図2に示すように、一端側の端部に被締付部HSが設けられている。被締付部HSは、円柱状に形成されて外周部にて軸線Jhの方向に沿って設けられた被係合歯部としてのセレーション歯15aと、軸線Jhの周方向に設けられた環状のボルト係合溝15bと、を含んで構成されている。被締付部HSは、ユニバーサルジョイントUJの後述する締付部STを構成する筒状のヨーク16に収容される。セレーション歯15aは、締付部STの係合歯部としてのセレーション歯16bと係合するようになっている。ボルト係合溝15bは、後述するように挿入されたボルト17と係合し、ユニバーサルジョイントUJのヨーク16がピニオンシャフト15から脱落することを防止する。尚、本実施形態においては、図2に示すように、形成されたセレーション歯15aの軸線Jhの方向にて略中央部分にボルト係合溝15bが設けられるようになっている。
【0017】
更に、ピニオンシャフト15のセレーション歯15aの軸外方向、即ち、ピニオンシャフト15の一端側の端部には、セレーション歯15aの外径よりも小径の外径を有し、セレーション歯15aの形成されたピニオンシャフト15と同軸となるように連設された円柱部15eが一体に形成されている。円柱部15eは、セレーション歯15a及びボルト係合溝15bとともに被締付部HSを構成する。
【0018】
ピニオンシャフト15の他端側には、転舵機構20の後述するラックハウジング22に設けられるニードル軸受23によって回転可能に支持される小径段部15cが形成される。又、ピニオンシャフト15は、セレーション歯15aと小径段部15cとの間にピニオン歯15dが形成される。
【0019】
ユニバーサルジョイントUJは、図2に示すように、筒状の収容穴16aを有するヨーク16を備えている。ヨーク16は、被締付部HS、即ち、セレーション歯15a、ボルト係合溝15b、円柱部15e、及び、後述するように円柱部15eに組み付けられる円筒部材18、止め輪19を収容する。収容穴16aを区画するヨーク16の内周部には、ピニオンシャフト15のセレーション歯15aと係合するセレーション歯16bが設けられている。又、ユニバーサルジョイントUJ(ヨーク16)には、収容穴16aの一部を横切るようにボルト17を挿入させるボルト挿通孔16cが設けられる。尚、ユニバーサルジョイントUJは、ヨーク16に連結された十字軸(図示省略)を有しており、十字軸は中間シャフト14が挿入されるヨーク(図示省略)と連結される。これにより、ユニバーサルジョイントUJは、中間シャフト14とピニオンシャフト15とを一体回転可能(操舵トルク伝達可能)に連結するようになっている。
【0020】
ボルト17は、図2に示すように、収容穴16aに設けられたボルト挿通孔16cに挿入され、ボルト係合溝15bに係合する。ボルト17は、ボルト係合溝15bとボルト挿通孔16cとが軸線Jhの方向にて一致してセレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合した係合状態でボルト係合溝15b及びボルト挿通孔16cに挿入され、ユニバーサルジョイントUJがピニオンシャフト15から脱落することを防止する。ボルト17は、図示を省略するナットとともにボルト挿通孔16cに締結されることにより、ヨーク16の内径を縮める。これにより、セレーション歯15a及びセレーション歯16bが係合状態である場合には、図2に示すように、セレーション歯15aに対してセレーション歯16bを相対的に接近させて、強固な係合状態を実現するようになっている。
【0021】
円筒部材18は、図2に示すように、ピニオンシャフト15に設けられた円柱部15eに対して、軸線Jhの周り(周方向)に回転可能に外嵌されて組み付けられる。即ち、円筒部材18の内周部18aは、その内径が円柱部15eの外径よりも大径となるように設定されており、円柱部15eの外周部に対して隙間を有した状態で組み付けられる。又、円筒部材18の外周部18bは、その外径がユニバーサルジョイントUJのヨーク16、より詳しくは、収容穴16aに形成されたセレーション歯16bの内径(最小内径)よりも僅かに小径となるように設定されている。ここで、円筒部材18は、ボルト17が規定トルク以上のトルクによって締結された際に発生する最大締付力によってヨーク16の内周部(より詳しくは、セレーション歯16b)が径方向に押圧する状況であっても、変形しない程度の機械強度を有している。
【0022】
又、図3に示すように、円筒部材18は、後述するように、ボルト係合溝15bとボルト挿通孔16cとが軸線Jhの方向にて一致しておらずセレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合しない非係合状態で少なくとも一部が収容穴16aに収容され、例えば、ボルト挿通孔16cに挿入されたボルト17と当接するようになっている。又、円筒部材18は、円筒部材18の軸線Jhの方向に沿った方向の寸法Lc、即ち、厚み寸法Lcについては、非係合状態において、収容穴16aに設けられたセレーション歯16bのうち、軸線Jhの方向にてボルト挿通孔16cから収容穴16aの開口側端部16a1までに設けられたセレーション歯16bの長さLuよりも大きくなるように設定されている。これにより、後述するようにセレーション歯同士の非係合状態においては、セレーション歯16bが円筒部材18と係合する。
【0023】
保持部材としての止め輪19は、C字状に形成されており、図2に示すように、円柱部15eの外周面に形成された環状係止溝15e1に装着される。尚、止め輪19としては、スナップリングやサークリップを採用することができる。止め輪19は、図2に示すように、環状係止溝15e1の溝底における外径よりも大径に設定されており、円柱部15eに対して回転可能となるように、環状係止溝15e1に装着される。止め輪19は、環状係止溝15e1に装着された状態で円筒部材18に当接する。これにより、止め輪19は、円筒部材18を円柱部15eに対して回転可能に保持するとともに、円筒部材18が軸線Jhの方向に沿って移動することを規制する。
【0024】
再び図1に戻り、転舵機構20は、ラックアンドピニオン機構を構成しており、ラック軸21及び略円筒状に形成されたラックハウジング22を備えている。ラック軸21は、軸線の方向に沿って直線往復移動可能にラックハウジング22に支持される。ラック軸21は、図2に示すように、ピニオンシャフト15に形成されたピニオン歯15dと噛合するラック歯21aが形成されている。ラックハウジング22は、ラック軸21を収容するラック軸収容部22a及びピニオンシャフト15を収容するピニオンシャフト収容部22bから構成される。ラック軸収容部22aは、ラック軸21を収容する。ラック軸収容部22aには、ラック軸21のラック歯21aをピニオンシャフト15のピニオン歯15dに向けて押圧する押圧機構24が収容されている。
【0025】
ピニオンシャフト収容部22bは、図2に示すように、有底筒状であり、ラック軸21の軸線の方向に対して角度を有して、ピニオンシャフト15を回転可能に収容する(図1を参照)。ピニオンシャフト収容部22bの底部には、ニードル軸受23が組み付けられている。又、ピニオンシャフト収容部22bの中央部には、ボールベアリング25が組み付けられており、ピニオンシャフト15を回転可能に保持している。ボールベアリング25は、ピニオンシャフト収容部22bに形成された周溝に装着される止め輪26により、軸線Jhの方向に沿った移動が規制されている。更に、ピニオンシャフト収容部22bの開口部には、ピニオンシャフト15を回転可能に収容した状態で、開口を塞ぐダストシール27が設けられる。
【0026】
再び図1に戻り、転舵機構20のラック軸21の両端部には、図示を省略するタイロッド及びナックルを介して転舵輪28が連結される。これにより、操舵機構10のステアリングホイール11が操舵されると、この操舵に伴う操舵トルクがステアリングシャフト12の回転を介して転舵機構20に伝達される。この場合、ピニオンシャフト15の回転は、ピニオン歯15dに噛合するラック歯21aによって、ラック軸21の直線往復移動に変換され、ラック軸21の軸線の方向に沿った移動がタイロッド及びナックルを介して転舵輪28に伝達される。これにより、転舵輪28が転舵されて、車両の進行方向が変更される。
【0027】
尚、図示を省略するが、ステアリング装置Aにおいては、ステアリングホイール11から転舵輪28までのトルク伝達経路上に操舵補助機構が設けられる。操舵補助機構は、油圧又は電動モータ等を駆動源とし、トルク検出装置が検出するトルク伝達経路に入力された操舵トルクに応じて、操舵補助トルクを付与するようになっている。これにより、ステアリング装置Aは、油圧式パワーステアリング装置、又は、電動パワーステアリング装置として構成される。
【0028】
(結合構造)
図2に示すように、被締付部HSは、ピニオンシャフト15に設けられたセレーション歯15a、ボルト係合溝15b、円柱部15e、環状係止溝15e1、円筒部材18、及び、止め輪19から構成される。締付部STは、ヨーク16の収容穴16a、セレーション歯16b及びボルト挿通孔16cから構成される。被締付部HSにおいては、円筒部材18がピニオンシャフト15の円柱部15eを挿通した状態で、円柱部15eの環状係止溝15e1に装着された止め輪19によって回転可能に保持される。
【0029】
被締付部HSを締付部STに結合する場合、収容穴16aに対して、被締付部HS、即ち、円柱部15e、円筒部材18及び止め輪19が挿入され、更に、セレーション歯15a及びボルト係合溝15bが挿入される。続いて、収容穴16aに設けられたボルト挿通孔16cにボルト17が挿入される。
【0030】
ここで、ボルト17の挿入については、図2に示すように、被締付部HSが収容穴16aに対して挿入され、且つ、セレーション歯15a及びセレーション歯16bが係合した係合状態、即ち、軸線Jhの方向にてボルト係合溝15bとボルト挿通孔16cとが一致した完全な挿入状態で可能となる。但し、ボルト17の挿入については、図3に示すように、セレーション歯15a及びセレーション歯16bが係合していない非係合状態、即ち、円柱部15eの先端が軸線Jhの方向にてボルト挿通孔16cに達しない不完全な挿入状態でも可能となる。即ち、ボルト挿通孔16cは収容穴16aの一部を横切るように設けられているので、セレーション歯15a及びセレーション歯16bの係合状態又は非係合状態でのみ、ボルト挿通孔16cにボルト17を挿入することが可能となる。
【0031】
係合状態においては、図2に示すように、ボルト17は、ボルト挿通孔16c及びボルト係合溝15bに挿入される。そして、ボルト17が締結されることにより、セレーション歯16bがヨーク16の径方向にてセレーション歯15aに向けて押圧され、セレーション歯15aとセレーション歯16bとが強固に係合される。これにより、係合状態においてボルト17がボルト挿通孔16c挿入された場合には、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJ(中間シャフト14)とが一体回転可能に結合される。その結果、ピニオンシャフト15がステアリングホイール11に入力された操舵トルクを転舵機構20に伝達する。
【0032】
一方、非係合状態においても、図3に示すように、ボルト17は、ボルト挿通孔16cに挿入される。この場合、ボルト17は、軸線Jhの方向にて円筒部材18と当接するので、セレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合状態に移行できない。そして、ボルト17が締結されることにより、見かけ上、ヨーク16(収容穴16a)と被締付部HSとが連結される。しかしながら、この場合には、セレーション歯16bの先端側(長さLuの部分)は、厚み寸法Lc(Lc>Lu)を有する円筒部材18と係合する。これにより、非係合状態においてボルト17が締結された場合には、ユニバーサルジョイントUJ(ヨーク16)とともに円筒部材18が一体回転するのみであり、ピニオンシャフト15はヨーク16と一体回転しない(空転する)。その結果、ピニオンシャフト15はステアリングホイール11に入力された操舵トルクを転舵機構20に伝達しない。
【0033】
ところで、ピニオンシャフト15が転舵機構20に操舵トルクを伝達しない場合、例えば、ステアリング装置Aの組み付け作業において作業者がステアリングホイール11を回転させると、小さな操舵トルクでステアリングホイール11を回転させることに気づく。又、作業者は、ステアリングホイール11を回転させたにもかかわらず、転舵機構20に連結された転舵輪28が転舵されないことに気づく。この場合、作業者は、見かけ上、ボルト17が締結されているがセレーション歯15aとセレーション歯16bとが非係合状態であると判断することができる。
【0034】
従って、この場合には、例えば、一旦ボルト17の締結を解除し、ヨーク16の収容穴16aに対してピニオンシャフト15を挿入し直してセレーション歯15aとセレーション歯16bとを係合状態とする。そして、再度ボルト17をボルト挿通孔16c及びボルト係合溝15bに挿入して、ボルト17を締結する。これにより、ステアリングホイール11に入力された操舵トルクは、ピニオンシャフト15を介して転舵機構20に伝達され、転舵輪28を転舵させる。この場合には、転舵輪28を転舵させるので、作業者がステアリングホイール11に入力する操舵トルクは、非係合状態の場合に比べて大きくなる。従って、作業者は、セレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合状態となり、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJ(即ち、中間シャフト14)との結合が正常に完了したと判断する。
【0035】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態に係る被締付部HSと締付部STとの結合構造は、ステアリングホイール11と、ステアリングホイール11が固定されるステアリングシャフト12と、ステアリングホイール11に加えられる操舵トルクがステアリングシャフト12を介して伝達されて車両の転舵輪28を転舵するラックアンドピニオン機構である転舵機構20と、を備え、ステアリングシャフト12が、コラムシャフト13、中間シャフト14及びピニオンシャフト15の複数のシャフトと、少なくとも中間シャフト14及びピニオンシャフト15の間を連結するジョイント部材としてのユニバーサルジョイントUJと、から構成されるステアリング装置Aに適用される。
【0036】
上記実施形態に係る結合構造は、円柱状に形成されて、外周部にて軸線Jhの方向に沿って設けられた被係合歯部としてのセレーション歯15aと、軸線Jhの周方向に設けられた環状のボルト係合溝15bと、を含んで構成された被締付部HSを端部に有するピニオンシャフト15と、被締付部HSを収容するヨーク16の筒状の収容穴16aと、収容穴16aを区画する内周部に設けられてセレーション歯15aと係合する係合歯部としてのセレーション歯16bと、収容穴16aの一部を横切るように設けられたボルト挿通孔16cと、を含んで構成された締付部STを有するユニバーサルジョイントUJと、ボルト挿通孔16cに挿入されて締結されるボルト17と、を備え、被締付部HSが締付部STおける収容穴16aに収容され、被締付部HSのボルト係合溝15bと締付部STのボルト挿通孔16cとが軸線Jhの方向にて一致するとセレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合した係合状態となり、ボルト17がボルト係合溝15bとボルト挿通孔16cとに挿入されて締結されることにより締付部STが締め付けられ、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJとがトルク伝達可能に連結される結合構造であって、被締付部HSは、セレーション歯15aの外径よりも小径の外径を有してセレーション歯15aと同軸に軸外方向に連設された円柱部15eと、円柱部15eの外径よりも大径の内径を有して円柱部15eに外嵌され、ボルト係合溝15bとボルト挿通孔16cとが軸線Jhの方向にて一致しておらずセレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合しておらず、即ち、セレーション歯15aとセレーション歯16bとが係合しない非係合状態で、少なくとも一部が収容穴16aに収容される円筒部材18と、円柱部15eに対して円筒部材18を回転可能に保持する保持部材としての止め輪19と、を備える。
【0037】
これによれば、非係合状態である場合において、ボルト挿通孔16cに挿入されたボルト17が締結されると、締付部STのセレーション歯16bと円筒部材18とが摩擦係合することとなる。そして、止め輪19によって円柱部15eに保持された円筒部材18は、円柱部15eに対して容易に回転することができる。
【0038】
従って、非係合状態の場合には、セレーション歯16bに摩擦係合した円筒部材18は、セレーション歯16b(即ち、ユニバーサルジョイントUJ及び中間シャフト14)の回転に伴って自由回転する。即ち、ピニオンシャフト15に対して空転する。このため、非係合状態の場合には、係合状態の場合に比べて、例えば、セレーション歯16b(ユニバーサルジョイントUJ)を回転させるための力(操舵トルク)が極めて小さくなるとともに、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJとは一体回転しない。これにより、非係合状態、即ち、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJ(中間シャフト14)とが不完全に結合されることを確実に発見して確実に防止することができる。
【0039】
この場合、円筒部材18は、軸線Jhの方向に沿った厚みLcが、被係合状態において、締付部STの収容穴16aに設けられたセレーション歯16bのうち、ボルト挿通孔16cから収容穴16aの開口側端部16a1までに設けられたセレーション歯16bの長さLuよりも大きく設定される。
【0040】
これによれば、非係合状態の場合において、円筒部材18は、セレーション歯16bと確実に摩擦係合することができる。従って、非係合状態により、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJ(中間シャフト14)とが不完全に結合されることをより確実に発見して確実に防止することができる。
【0041】
これらの場合、止め輪19は、円柱部15eの外周面に形成された環状係止溝15e1に装着されて、円筒部材18に当接する。
【0042】
これによれば、極めて簡単な構造により円筒部材18を円柱部15eに対して回転可能となるように適切に保持することができる。従って、円筒部材18の組み付け作業(保持作業)が容易になるとともに、製造コストの増大を抑制することができる。
【0043】
この場合、止め輪19は、円柱部15eに対して回転可能となるように、環状係止溝15e1に装着される。
【0044】
これによれば、止め輪19が円柱部15eに対して回転することができるので、円柱部15eに対して円筒部材18が確実に回転するように保持することができる。従って、ピニオンシャフト15とユニバーサルジョイントUJ(中間シャフト14)とが不完全に結合されることをより確実に発見して確実に防止することができる。
【0045】
(上記実施形態の第一変形例)
上記実施形態においては、ピニオンシャフト15の円柱部15eに環状係止溝15e1を形成し、円柱部15eに円筒部材18を挿入した状態で保持部材としての止め輪19を環状係止溝15e1に装着するようにした。このように、保持部材としての止め輪19を環状係止溝15e1に装着することに代えて、図4に示すように、円柱部15eに円筒部材18を挿入した状態で、保持部材としての円環部材30を円柱部15eに圧入するようにすることも可能である。この場合、円環部材30が軸線Jhの方向にて円筒部材18と隙間を有して圧入されることにより、円筒部材18は円柱部15eに対して回転可能に保持される。従って、この第一変形例においても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0046】
(上記実施形態の第二変形例)
上記実施形態においては、円柱部15eに円筒部材18を挿入した状態で保持部材としての止め輪19を環状係止溝15e1に装着するようにした。このように、保持部材としての止め輪19を環状係止溝15e1に装着することに代えて、図5に示すように、円柱部15eに貫通孔15e2を設け、円柱部15eに円筒部材18を挿入した状態で、貫通孔15e2に保持部材としてのピン部材31を挿入するようにすることも可能である。この場合、貫通孔15e2は、円柱部15eに円筒部材18を保持する位置に対応して設けられることにより、円筒部材18は貫通孔15e2に挿入されたピン部材31により、円柱部15eに対して回転可能に保持される。従って、この第二変形例においても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0047】
(上記実施形態の第三変形例)
上記実施形態においては、保持部材として、円柱部15e及び円筒部材18とは別部品となる止め輪19を用いるようにした。このように、別部品である止め輪19を保持部材として用いることに代えて、図6に示すように、円筒部材18の内周部18aに径方向にて内方に向けて凸状となる環状突起32を保持部材として一体に設けることも可能である。この場合には、環状突起32を有する円筒部材18を円柱部15eに圧入し、円柱部15eに設けられた環状係止溝15e1に環状突起32を係合させる。この場合においても、環状突起32と環状係止溝15e1との間に隙間を設定することにより、円筒部材18は、円柱部15eに対して回転可能に保持される。従って、この第三変形例においては、円筒部材18と保持部材である環状突起32とを一体に形成することができるので、製造コストをより低減することができる。その他の効果については、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0048】
尚、保持部材を円柱部15e又は円筒部材18と一体化することに関しては、例えば、円柱部15eに円筒部材18を挿入した状態で、円柱部15eの突出部分を塑性変形により径方向にて外方に拡径させることも可能である。この場合には、円柱部15eの拡径部分が保持部材となり、拡径部分と円筒部材18と軸線Jhの方向にて隙間を有することにより、円筒部材18は回転可能に保持される。
【0049】
本発明の実施に当たっては、上記実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態及び上記各変形例においては、ステアリングシャフト12を構成する中間シャフト14とピニオンシャフト15とをユニバーサルジョイントUJを用いて結合するようにした。これに代えて、コラムシャフト13と中間シャフト14とをユニバーサルジョイントUJを用いて結合するようにすることも可能である。
【0051】
又、上記実施形態においては、環状係止溝15e1に装着された止め輪19が円柱部15eに対して回転するようにした。しかしながら、円筒部材18が回転可能に保持される場合には、止め輪19が円柱部15eに対して回転不能に装着されてもよい。
【0052】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、ボルト係合溝15bをセレーション歯15aの略中央部分に設けるようにした。これに代えて、例えば、ボルト係合溝15bをセレーション歯15aよりもピニオン歯15dの側に設けることも可能である。
【0053】
更に、上記実施形態及び各変形例においては、結合構造をステアリング装置Aに適用するようにした。結合構造の適用に関しては、ステアリング装置Aに限定されず、シャフト同士を一体回転可能に結合する他の装置、例えば、車両のデファレンシャル装置と車軸との結合や、トランスミッションシャフト等に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…操舵機構、11…ステアリングホイール、12…ステアリングシャフト、13…コラムシャフト、14…中間シャフト、15…ピニオンシャフト、15a…セレーション歯(被係合歯部)、15b…ボルト係合溝、15c…小径段部、15d…ピニオン歯、15e…円柱部、15e1…環状係止溝、15e2…貫通孔、UJ…ユニバーサルジョイント(ジョイント部材)、16…ヨーク、16a…収容穴、16a1…開口側端部、16b…セレーション歯(係合歯部)、16c…ボルト挿通孔、17…ボルト、18…円筒部材、18a…内周部、18b…外周部、19…止め輪(保持部材)、20…転舵機構、21…ラック軸、21a…ラック歯、22…ラックハウジング、22a…ラック軸収容部、22b…ピニオンシャフト収容部、23…ニードル軸受、24…押圧機構、25…ボールベアリング、26…止め輪、27…ダストシール、28…転舵輪、30…円環部材(保持部材)、31…ピン部材(保持部材)、32…環状突起(保持部材)、A…ステアリング装置、HS…被締付部、ST…締付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6