特開2018-205028(P2018-205028A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-205028(P2018-205028A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】応力測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2055 20180101AFI20181130BHJP
   G01L 1/25 20060101ALI20181130BHJP
   G01L 1/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   G01N23/205 310
   G01L1/25
   G01L1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-108133(P2017-108133)
(22)【出願日】2017年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】高枩 弘行
(72)【発明者】
【氏名】福井 利英
(72)【発明者】
【氏名】松田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】兜森 達彦
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA25
2G001CA01
2G001DA09
2G001GA13
2G001KA07
2G001LA02
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】2次元検出法を用いて被検査体の凹部の応力を高精度に測定することが可能な応力測定方法を提供すること。
【解決手段】金属からなり、表面(2)と凹部(3)とを有する被検査体(1)の凹部(3)の応力を測定する方法であって、凹部(3)にX線を入射させるとともに、前記X線が凹部(3)で回折することにより形成される回折X線の回折環(R)を2次元検出器で検出する検出工程と、検出工程の検出結果に基づいて凹部(3)の応力を算出する算出工程と、を含み、検出工程では、被検査体の凹部(3)内の複数の部位に対してそれぞれX線を入射させるとともに、各X線が凹部(3)で回折することにより形成される回折環(R)を2次元検出器で検出すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなり、表面と当該表面から窪むとともに溝状に延びる形状を有する凹部とを有する被検査体の前記凹部の応力を測定する方法であって、
前記凹部にX線を入射させるとともに、前記X線が前記凹部で回折することにより形成される回折X線の回折環を2次元検出器で検出する検出工程と、
前記検出工程の検出結果に基づいて前記凹部の応力を算出する算出工程と、を含み、
前記検出工程では、前記被検査体の凹部内の複数の部位に対してそれぞれX線を入射させるとともに、各X線が前記凹部で回折することにより形成される回折環を前記2次元検出器で検出する、応力測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、前記複数の部位として、前記凹部内において連続的につながる部位が選択され、その部位に対して連続的にX線を入射させる、応力測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、前記連続的につながる部位として、前記凹部の延びる方向に沿って連続的につながる部位が選択される、応力測定方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、前記連続的につながる部位に対して連続的にX線を入射させるとともに、各X線が前記部位で回折することにより形成される複数の回折環を重ね合わせることにより得られる単一の回折環を前記2次元検出器で検出する、応力測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、前記凹部への前記X線の照射面積の合計が前記被検査体の結晶粒の面積の所定倍以上となるように前記凹部に前記X線を入射させる、応力測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、各X線を前記凹部に対して20°以下の低入射角で入射させる、応力測定方法。
【請求項7】
金属からなり、表面と当該表面から窪むとともに溝状に延びる形状を有する凹部とを有する被検査体の前記凹部の応力を測定する方法であって、
前記凹部にX線を入射させるとともに、前記X線が前記凹部で回折することにより形成される回折X線の回折環を2次元検出器で検出する検出工程と、
前記検出工程の検出結果に基づいて前記凹部の応力を算出する算出工程と、を含み、
前記検出工程では、前記被検査体の凹部内の単一の部位に対して互いに異なる複数の入射角でX線を入射させるとともに、各X線が前記凹部で回折することにより形成される回折環を前記2次元検出器で検出する、応力測定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、前記複数の入射角は、特定の入射角に対して所定角度増加させた入射角を上限値とし前記特定の入射角に対して前記所定角度減少させた入射角を下限値とする範囲から選択される、応力測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の応力測定方法において、
前記検出工程では、前記特定の入射角は、20°以下の低入射角から選択される、応力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の応力を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、非破壊で金属からなる被検査体の応力(残留応力)を測定する方法として、特許文献1等に見られるように、2次元検出器を用いた2次元検出法(いわゆるcosα法)が普及している。この方法は、特定の入射角Ψで被検査体に入射したX線が被検査体での回折により生じる回折X線の回折環に基づいて応力を測定する方法である。この2次元検出法における測定の精度は、概ねsin2Ψに比例するため、被検査体に入射させるX線の入射角Ψが45°から変化するにしたがって測定精度が低下する。このため、2次元検出法では、通常、X線の被検査体への入射角Ψは、25°〜65°に設定される。特許文献1では、入射角Ψは30°に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−27550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2次元検出法は、被検査体のうち比較的平坦な部位の応力については高精度な測定が可能であるものの、被検査体の凹部の応力ついては、高精度に測定することが困難である。具体的に、被検査体の測定部が当該測定部の周囲の部位の表面から凹状に窪んだ形状を有する凹部である場合、入射X線や回折X線が被検査体に干渉するので、明確な回折環が検出されないか、回折環が検出されたとしても、その回折環のうち回折X線が被検査体の近傍を通過した部分については精度が低くなる。そのため、入射X線の入射角Ψを十分に大きく確保することが困難となる。よって、2次元検出法で高精度に凹部の応力を測定することは困難である。換言すれば、凹部の応力を高精度に測定することが求められる場合、通常、2次元検出法の適用は困難である。
【0005】
本発明の目的は、2次元検出法を用いて被検査体の凹部の応力を高精度に測定することが可能な応力測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する手段として、本発明は、金属からなり、表面と当該表面から窪むとともに溝状に延びる形状を有する凹部とを有する被検査体の前記凹部の応力を測定する方法であって、前記凹部にX線を入射させるとともに、前記X線が前記凹部で回折することにより形成される回折X線の回折環を2次元検出器で検出する検出工程と、前記検出工程の検出結果に基づいて前記凹部の応力を算出する算出工程と、を含み、前記検出工程では、前記被検査体の凹部内の複数の部位に対してそれぞれX線を入射させるとともに、各X線が前記凹部で回折することにより形成される回折環を前記2次元検出器で検出する、応力測定方法を提供する。
【0007】
本応力測定方法では、検出工程において、凹部内の複数の部位のそれぞれに入射した各X線に対応する複数の回折環を2次元検出器で検出するので、凹部内に入射した単一のX線に対応する単一の回折環のみを検出する場合に比べ、検出工程の検出結果に含まれる回折情報(回折に寄与する結晶の情報)が多くなる。よって、算出工程における凹部の応力の算出の精度が高まる。このため、例えば20°以下の低入射角でX線が凹部に入射された場合においても、精度よく凹部の応力を測定することができる。
【0008】
この場合において、前記検出工程では、前記複数の部位として、前記凹部内において連続的につながる部位が選択され、その部位に対して連続的にX線を入射させることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、凹部内において互いに離間する部位に対して個別にX線が入射される場合に比べ、測定部位ごとの測定条件の設定が不要となる。よって、検出工程の作業が簡素化される。
【0010】
さらにこの場合において、前記検出工程では、前記連続的につながる部位として、前記凹部の延びる方向に沿って連続的につながる部位が選択されることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、凹部の応力の測定精度がさらに高まる。具体的に、凹部の応力は、当該凹部の延びる方向に沿ってほぼ均一であると考えられるため、その方向に沿って並ぶ複数の部位において回折環を検出することにより、測定精度が向上する。
【0012】
また、前記検出工程では、前記連続的につながる部位に対して連続的にX線を入射させるとともに、各X線が前記部位で回折することにより形成される複数の回折環を重ね合わせることにより得られる単一の回折環を前記2次元検出器で検出することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、検出工程がさらに簡素化される。
【0014】
また、前記検出工程では、前記凹部への前記X線の照射面積の合計が前記被検査体の結晶粒の面積の所定倍以上となるように前記凹部に前記X線を入射させることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、検出工程の検出結果に含まれる回折情報がより多くなるので、測定精度が一層高まる。
【0016】
また、前記検出工程では、各X線を前記凹部に対して20°以下の低入射角で入射させることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、入射X線及び回折X線の被検査体との干渉を有効に回避しつつ、高精度に凹部の応力を測定することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、金属からなり、表面と当該表面から窪むとともに溝状に延びる形状を有する凹部とを有する被検査体の前記凹部の応力を測定する方法であって、前記凹部にX線を入射させるとともに、前記X線が前記凹部で回折することにより形成される回折X線の回折環を2次元検出器で検出する検出工程と、前記検出工程の検出結果に基づいて前記凹部の応力を算出する算出工程と、を含み、前記検出工程では、前記被検査体の凹部内の単一の部位に対して互いに異なる複数の入射角でX線を入射させるとともに、各X線が前記凹部で回折することにより形成される回折環を前記2次元検出器で検出する、応力測定方法を提供する。
【0019】
本応力測定方法では、検出工程において、凹部の単一の部位に対して互いに異なる入射角で入射した複数のX線のそれぞれに対応する複数の回折環を2次元検出器で検出するので、凹部に対して単一の入射角で入射したX線に対応する単一の回折環のみを検出する場合に比べ、検出工程の検出結果に含まれる回折情報(回折に寄与する結晶の情報)が多くなる。よって、算出工程における凹部の応力の算出の精度が高まる。このため、例えば20°以下の低入射角でX線が凹部に入射された場合においても、精度よく凹部の応力を測定することができる。
【0020】
この場合において、前記検出工程では、前記複数の入射角は、特定の入射角に対して所定角度増加させた入射角を上限値とし前記特定の入射角に対して前記所定角度減少させた入射角を下限値とする範囲から選択されることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、検出工程において、特定の入射角で入射したX線の照射部位の近傍(応力がほぼ均一と評価可能な領域)において多くの回折情報を得ることが可能となる。よって、測定精度が高まる。
【0022】
さらにこの場合において、前記検出工程では、前記特定の入射角は、20°以下の低入射角から選択されることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、入射X線及び回折X線の被検査体との干渉を有効に回避しつつ、高精度に凹部の応力を測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、2次元検出法を用いて被検査体の凹部の応力を高精度に測定することが可能な応力測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態の応力測定方法の検出工程を示す概略図である。
図2】本発明の第2実施形態の応力測定方法の検出工程を示す概略図である。
図3】第1実施例における入射X線の移動方向の例を示す図である。
図4】入射X線の照射面積と信頼度との関係(CrMo系低合金鋼)を示すグラフである。
図5】入射X線の照射面積と信頼度との関係(NiCrMo系低合金鋼)を示すグラフである。
図6】入射X線の揺動角と信頼度との関係(CrMo系低合金鋼)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の応力測定方法について、図1を参照しながら説明する。この応力測定方法は、2次元検出器(図示略)を用いて鋼材等の金属からなる被検査体1(クランクシャフト等)の凹部3の応力を測定するものである。図1に示されるように、凹部3は、被検査体1の表面2から窪むとともに溝状に延びる形状を有する。本応力測定方法は、検出工程と、算出工程と、を含む。
【0028】
検出工程では、X線を照射可能な照射部4から照射されたX線を凹部3に入射させるとともに、前記X線が凹部3で回折することにより形成される回折X線の回折環Rを2次元検出器で検出する。具体的に、この検出工程では、凹部3内の複数の部位に対して一定の入射角ΨでそれぞれX線を入射させるとともに、各X線が凹部3で回折することにより形成される回折環Rを2次元検出器で検出する。なお、このとき、被検査体1を固定した状態で照射部4を移動させてもよいし、照射部4を固定した状態で被検査体1を移動させてもよい。また、前記複数の部位として、凹部3内において連続的につながる部位が選択される。より好ましくは、前記複数の部位として、凹部3の延びる方向に沿って連続的につながる部位が選択される。この検出工程では、前記連続的につながる部位に対して照射部4から一定の入射角Ψで連続的にX線を入射させるとともに、各X線が前記部位で回折することにより形成される複数の回折環Rを重ね合わせることにより得られる単一の回折環Rを2次元検出器で検出する。また、凹部3内の連続的につながる部位に照射するX線の面積は、被検査体1の結晶粒の面積の所定倍(例えば18000倍)以上に設定されることが好ましい。また、本実施形態では、凹部3へのX線の入射角Ψは、5°以上20°以下の低入射角に設定される。
【0029】
算出工程では、検出工程の検出結果(前記単一の回折環R)に基づいて凹部3の応力が算出される。
【0030】
以上に説明したように、本実施形態の応力測定方法では、検出工程において、凹部3内の複数の部位のそれぞれに入射した各X線に対応する複数の回折環Rを2次元検出器で検出するので、凹部3内に入射した単一のX線に対応する単一の回折環のみを検出する場合に比べ、検出工程の検出結果に含まれる回折情報(回折に寄与する結晶の情報)が多くなる。よって、算出工程における凹部3の応力の算出の精度が高まる。このため、例えば5°以上20°以下の低入射角でX線が凹部3に入射された場合においても、精度よく凹部3の応力が測定される。よって、本実施形態の応力測定方法では、被検査体1が、凹部3への入射X線の入射角Ψを十分に大きく確保することが困難な形状を有する場合(入射角Ψを大きくすると入射X線又は回折X線が被検査体1と干渉する場合や、照射部4と被検査体1とが干渉する場合等)であったとしても、入射X線及び回折X線の被検査体1との干渉を有効に回避しつつ、高精度に凹部3の応力を測定することが可能となる。
【0031】
また、検出工程では、前記複数の部位として、凹部3の延びる方向に沿って連続的につながる部位が選択されるので、凹部3の応力の測定精度がさらに高まる。具体的に、凹部3の応力は、当該凹部3の延びる方向に沿ってほぼ均一であると考えられるため、その方向に沿って連続的につながる部位についての回折環Rを検出することにより、測定精度が向上する。
【0032】
なお、検出工程では、X線が入射される凹部3内の複数の部位として、凹部3の延びる方向に沿って間欠的に並ぶ部位が選択され、各部位で入射X線が回折することにより形成された複数の回折環Rを検出してもよい。この場合、算出工程では、各回折環Rから求められる複数の検出値(応力の値)の平均値が算出される。ただし、上記実施形態のように、前記複数の部位として、凹部3の延びる方向に沿って連続的につながる部位が選択され、その部位に対して連続的にX線が入射されることにより、凹部3内において間欠的に並ぶ複数の部位にX線を入射させる場合に比べ、測定部位ごとの測定条件の設定が不要となるため、検出工程の作業が簡素化される。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の応力測定方法について、図2を参照しながら説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0034】
本実施形態では、図2に示されるように、検出工程では、凹部3内の単一の部位に対し、互いに異なる複数の入射角Ψで照射部4からX線を入射させるとともに、各X線が凹部3で回折することにより形成される回折環Rを2次元検出器で検出する。前記複数の入射角Ψは、前記低入射角(5°以上20°以下)から選択された特定の入射角Ψに対して所定角度(3°〜7°程度)増加させた入射角を上限値とし前記特定の入射角に対して前記所定角度減少させた入射角を下限値とする範囲から選択される。本実施形態では、検出工程において、凹部3に対して前記範囲の下限値から上限値まで、あるいは上限値から下限値まで連続的にX線を入射させるとともに、各X線が凹部3で回折することにより形成される複数の回折環を重ね合わせることにより得られる単一の回折環を2次元検出器で検出する。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態の応力測定方法では、検出工程において、凹部3の単一の部位に対して互いに異なる入射角Ψで入射した複数のX線のそれぞれに対応する複数の回折環Rを2次元検出器で検出するので、凹部3に対して単一の入射角で入射したX線に対応する単一の回折環Rのみを検出する場合に比べ、検出工程の検出結果に含まれる回折情報(回折に寄与する結晶の情報)が多くなる。具体的に、入射X線の入射角Ψが異なれば、凹部3へのX線の侵入深さが異なるため、凹部3に対して複数の入射角ΨでX線を入射させることにより、検出工程の検出結果に含まれる回折情報が多くなる。よって、算出工程における凹部3の応力の算出の精度が高まる。
【実施例】
【0036】
続いて、上記各実施形態の実施例について順に説明する。この実施例では、被検査体1の一部が切り出された試験片(10mm×10mm)が用いられた。また、被検査体1としては、CrMo系低合金鋼からなるものとNiCrMo系低合金鋼からなるものとが用いられた。この試験片に対して照射部4から入射させるX線として、波長が0.117mmのCr−Kαが用いられ、また、このX線のビーム径φは、約1.5mmとされた。なお、照射部4として、パルステック社製のμ−X360が用いられた。
【0037】
この実施例の検出工程では、前記試験片に対し4点曲げ試験機で応力を印加した状態で当該試験片に前記X線を入射させ、Fe(2,1,1)の回折面における回折環(2θ≦156°)を2次元検出器で検出した。なお、θは、回折角である。そして、算出工程では、その検出結果に基づいて応力を算出した。
【0038】
(第1実施形態の実施例)
まず、第1実施形態の実施例について、図3図5を参照しながら説明する。図3は、試験片に入射させる入射X線の移動方向の例を示している。図4は、入射X線の入射角Ψが5°、10°及び35°の場合におけるX線の照射面積と信頼度との関係を示すグラフである。この図4は、試験片としてCrMo系低合金鋼からなるものが用いられた場合の結果である。図5は、入射X線の入射角Ψが7°、10°及び30°の場合におけるX線の照射面積と信頼度との関係を示すグラフである。この図5は、試験片としてNiCrMo系低合金鋼からなるものが用いられた場合の結果である。なお、信頼度は、cosα線図(特許文献1の図6に示される図に相当する図)の直線性に関する誤差(測定された回折環に基づく算出値と理論値とのフィッティングの誤差)を応力換算した値を意味する。よって、この値が小さい程、高精度に測定が行われたと評価できる。
【0039】
図4及び図5に示されるように、単一のX線による照射面積(本実施例では約1.8mm)から照射面積が増えるにしたがって信頼度が低減する(測定精度が向上する)傾向にあることが分かる。これは、X線の照射面積が大きくなるにしたがって回折X線から得られる回折情報が多くなるからである。また、上記傾向は、特に、低入射角(図3では5°及び10°、図4では7°及び10°)において顕著であることが分かる。また、図5から、X線の照射面積が11mm以上の範囲では、信頼度の値が一定の値に飽和する傾向が確認された。
【0040】
また、X線の照射面積は、被検査体1の結晶粒の面積の所定倍(本実施例における測定では18000倍)以上に設定されることが好ましい。この理由は、次のとおりである。例えば、被検査体1の結晶粒の面積が0.001mmであり、単一の入射X線の照射面積が1.8mmである場合、約1800個の結晶粒からの回折環Rに基づいて応力が評価される。ここで、入射角Ψが10°である場合、入射角Ψが45°である場合に比べて測定精度が約0.34倍になるため、入射角Ψが10°である場合において入射角Ψが45°である場合と同程度の精度を得るためには、回折情報を約10倍(0.34の二乗倍)にする、つまり、約18000個の結晶粒からの回折環Rに基づいて応力を評価する必要がある。そのため、X線の照射面積は、単一の入射X線の照射面積の10倍の18mmにする必要がある。この照射面積は、結晶粒の面積の約18000倍に相当する。
【0041】
(第2実施形態の実施例)
次に、第2実施形態の実施例について、図6を参照しながら説明する。図6は、入射X線の入射角Ψが10°、15°、20°及び35°の場合における入射X線の揺動角(入射角Ψに対して増加及び減少させる角度)と信頼度との関係を示すグラフである。この図6は、試験片としてCrMo系低合金鋼からなるものが用いられた場合の結果である。例えば、入射角Ψが10°で揺動角が3°の場合の信頼度の値は、入射角Ψを7°から13°の範囲で連続的に変化させることにより得られた回折環Rに基づく算出値である。
【0042】
この図6から、単一の(揺動角が0°の)X線に基づく信頼度の値よりも、入射角Ψを所定の角度範囲で揺動させた場合の信頼度の値の方が小さい(測定精度が高い)ことが分かる。これは、入射角Ψを所定角度増減させることによって回折X線から得られる回折情報が多くなるからである。また、このことは、特に、低入射角(10°、15°及び20°)において顕著である。
【符号の説明】
【0043】
1 被検査体
2 表面
3 凹部
4 照射部
R 回折環
図1
図2
図3
図4
図5
図6