特開2018-205109(P2018-205109A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-205109(P2018-205109A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】地絡点標定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   G01R31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-110635(P2017-110635)
(22)【出願日】2017年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大原 久征
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】狩野 純也
(72)【発明者】
【氏名】小林 和博
【テーマコード(参考)】
2G033
【Fターム(参考)】
2G033AA02
2G033AB01
2G033AB02
2G033AC02
2G033AD18
2G033AD21
2G033AF02
2G033AF05
2G033AG12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】微小な地絡電流に対しても地絡点を特定することが可能となる地絡点標定システムを提供する。
【解決手段】電力系統の電力線に地絡電流が流れるときに生じる磁束の磁束密度が所定の磁束密度値以下となるような、環状に形成される巻芯と、前記電力線が貫通する前記巻芯に前記地絡電流を検出するべく巻回されるコイルと、を有する複数のセンサと、前記複数のセンサのそれぞれで検出される地絡電流のうち、最も大きい電流値を示す第1地絡電流よりも小さい電流値を示す第2地絡電流を特定する比較特定部と、前記比較特定部で特定された前記第2地絡電流に対応する地絡電流波形を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記地絡電流波形において、前記第2地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、前記変化点に基づいて、前記電力系統における前記地絡電流が発生した地点を示す地絡点を標定する地絡点標定部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の電力線に地絡電流が流れるときに生じる磁束の磁束密度が所定の磁束密度値以下となるような、環状に形成される巻芯と、前記電力線が貫通する前記巻芯に前記地絡電流を検出するべく巻回されるコイルと、を有する複数のセンサと、
前記複数のセンサのそれぞれで検出される地絡電流のうち、最も大きい電流値を示す第1地絡電流よりも小さい電流値を示す第2地絡電流を特定する比較特定部と、
前記比較特定部で特定された前記第2地絡電流に対応する地絡電流波形を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅された前記地絡電流波形において、前記第2地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、前記変化点に基づいて、前記電力系統における前記地絡電流が発生した地点を示す地絡点を標定する地絡点標定部と、
を備えることを特徴とする地絡点標定システム。
【請求項2】
前記複数のセンサで検出された前記複数の地絡電流が所定の電流値以上か否かを判定する判定部を
さらに備え、
前記判定部で前記複数の地絡電流が前記所定の電流値未満であると判定された場合、
前記増幅部は、前記複数のセンサで検出される前記複数の地絡電流に対応する複数の地絡電流波形を増幅し、
前記地絡点標定部は、前記増幅部で増幅された前記複数の地絡電流波形における前記地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、前記変化点に基づいて、前記電力系統における前記地絡電流が発生した地点を示す地絡点を標定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地絡点標定システム。
【請求項3】
前記地絡点標定部は、前記変化点から逆算して前記地絡点における前記地絡電流が発生した時刻を算出することで、前記地絡点を標定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地絡点標定システム。
【請求項4】
前記所定の磁束密度値は、前記電力線に前記地絡電流が流れる際の前記磁束密度の増加率と、前記磁束密度に対応する透磁率の増加率との一致の度合いに基づいて定められる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の地絡点標定システム。
【請求項5】
前記巻芯は、前記磁束密度が前記所定の磁束密度値以下となるような断面積及び長さを有して構成される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の地絡点標定システム。
【請求項6】
前記センサは、前記コイルの巻数が所定の巻数以下になるように定められてなる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の地絡点標定システム。
【請求項7】
前記電力系統は、22kVの特別高圧配電系統である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の地絡点標定システム。
【請求項8】
前記時刻は、GPSから送信される時刻情報に基づいて特定される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の地絡点標定システム。
【請求項9】
電力系統の電力線に地絡電流が流れるときに生じる磁束の磁束密度が、前記磁束密度の変化に対応する透磁率の変化の度合いに基づいて定められる所定の磁束密度値以下となるような、環状に形成される巻芯と、前記電力線が貫通する前記巻芯に前記地絡電流を検出するべく巻回されるコイルと、を有する複数のセンサのそれぞれで検出される地絡電流のうち、最も大きい電流値を示す第1地絡電流よりも小さい電流値を示す第2地絡電流を特定し、
特定された前記第2地絡電流に対応する地絡電流波形を増幅し、
増幅された前記地絡電流波形において、前記第2地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、前記変化点に基づいて、前記電力系統における前記地絡電流が発生した地点を示す地絡点を標定する
ことを特徴とする地絡点標定方法。
【請求項10】
地絡点標定システムに用いられる演算処理装置に、
電力系統の電力線に地絡電流が流れるときに生じる磁束の磁束密度が、前記磁束密度の変化に対応する透磁率の変化の度合いに基づいて定められる所定の磁束密度値以下となるような、環状に形成される巻芯と、前記電力線が貫通する前記巻芯に前記地絡電流を検出するべく巻回されるコイルと、を有する複数のセンサのそれぞれで検出される地絡電流のうち、最も大きい電流値を示す第1地絡電流よりも小さい電流値を示す第2地絡電流を特定する機能と、
特定された前記第2地絡電流に対応する地絡電流波形を増幅する機能と、
増幅された前記地絡電流波形において、前記第2地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、前記変化点に基づいて、前記電力系統における前記地絡電流が発生した地点を示す地絡点を標定する機能と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡点標定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電力系統で地絡事故が発生したときに、地絡点を検出するための電流検出センサが知られている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−268723号公報
【特許文献2】特開2004−132762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、地絡検出単位区間において零相電流の位相を検出することにより、当該地絡検出単位区間に地絡が生じているか否かを判定する方法が開示されている。しかし、特許文献1に係る方法では、当該地絡検出単位区間で地絡事故が生じているか否かを判定できるものの、当該地絡検出単位区間のどの地点で地絡事故が生じているかを特定することができないため、地絡点の特定に時間を要する虞があった。
【0005】
また、特許文献2には、送配電線路の零相電流および零相電圧を検出することにより、各地点におけるサージ到達時刻の差を算出することで地絡点を標定するシステムが開示されている。当該システムは、零相電流の波形データと零相電圧の急変を検出した時点を示す時刻データとに基づいてサージ到達時刻を算出する機能を有する。しかし、特許文献2に係るシステムでは、変電所の遮断器が動作するようなサージ電流の大きな地絡事故に対しては機能するものの、遮断器が動作しないようなサージ電流の小さな地絡事故に対しては地絡点の特定ができない虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明は、電力系統の電力線に地絡電流が流れるときに生じる磁束の磁束密度が所定の磁束密度値以下となるような、環状に形成される巻芯と、前記電力線が貫通する前記巻芯に前記地絡電流を検出するべく巻回されるコイルと、を有する複数のセンサと、前記複数のセンサのそれぞれで検出される地絡電流のうち、最も大きい電流値を示す第1地絡電流よりも小さい電流値を示す第2地絡電流を特定する比較特定部と、前記比較特定部で特定された前記第2地絡電流に対応する地絡電流波形を増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記地絡電流波形において、前記第2地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、前記変化点に基づいて、前記電力系統における前記地絡電流が発生した地点を示す地絡点を標定する地絡点標定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の特徴については、添付図面および本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微小な地絡電流に対しても地絡点を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る地絡点標定システムを示す図である。
図2】本実施形態に係るセンサ箱を示す図である。
図3】本実施形態に係る電流検出用のセンサを示す図である。
図4】本実施形態に係る巻芯の特性を示す図である。
図5】本実施形態に係る巻芯の特性を示す図である。
図6】本実施形態に係る地絡点標定装置の構成の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る地絡点標定システムの動作フローを示す図である。
図8】本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置の地絡電流波形の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係る第2電流検出装置の地絡電流波形のゲインを増幅した一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置の地絡電流波形の一例を示す図である。
図11】本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置の地絡電流波形のゲインを増幅した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下の説明において、同一符号を付した部分は同一の要素を表し、その基本的な構成および動作は同様であるものとする。
【0011】
===地絡点標定システム100===
図1を参照しつつ、地絡点標定システム100について、以下のとおり説明する。図1は、本実施形態に係る地絡点標定システム100を示す図である。
【0012】
地絡点標定システム100は、電力系統(本実施形態では22kV配電系統)において地絡事故が発生した箇所(以下、「地絡点P」と称する。)を標定するためのシステムである。図1に示すように、地絡点標定システム100は、電力系統において、電源側に設けられる第1電流検出装置110と、負荷側に設けられる第2電流検出装置120と、地絡点Pを標定する地絡点標定装置130と、を含んで構成されている。図1では、説明の便宜上、第1電流検出装置110および第2電流検出装置120の2台が電力系統に設けられるように示されているが、電流検出装置は2台を超えて設けられていてもよい。
【0013】
==第1,第2電流検出装置110,120==
図2図3図4図5を参照しつつ、第1,第2電流検出装置110,120について、以下のとおり説明する。図2は、本実施形態に係るセンサ箱112を示す図である。図3は、本実施形態に係る電流検出用のセンサ111を示す図である。図4図5は、本実施形態に係る巻芯111aの特性を示す図である。なお、以下説明においては、代表的に、第1電流検出装置110について説明をするが、第2電流検出装置120についても同様であり、不図示の電流検出装置についても同様とする。
【0014】
第1電流検出装置110は、電力系統に設置され、電力系統の電力の状態に応じて変動する物理量を計測する装置である。第1電流検出装置110は、例えば、配電線300の電流あるいは電圧を含む電力系統の電力の状態に応じて変動する物理量を計測するセンサ111と、それを収容するセンサ箱112と、センサ111による計測結果を地絡点標定装置130に送信する計測端末113と、を含んで構成されている。
【0015】
センサ111で計測される物理量は、基本的に、配電線300の電流あるいは電圧などの物理量として説明するが、力率や周波数などを含んでいても良い。本実施形態では、これらの物理量に対する夫々の計測器をまとめてセンサ111と称する。
【0016】
なお、一般的に特別高圧の電力系統は三相であるが、図1では、記載の簡略化のために配電線300を1本のみ記載している。実際には、図2に示すように、配電線300の各相にそれぞれセンサ箱112を設けている。そして、それぞれのセンサ箱112は、各相の配電線300に装着されて、それぞれのセンサ箱112に収容されるセンサ111で電力系統の電力の状態に応じて変動する物理量が計測される。
【0017】
計測端末113は、配電線300の各相のセンサ111によって計測された物理量の計測値を、通信路200を介して地絡点標定装置130に送信する装置である。
【0018】
計測端末113は、センサ111で計測された配電線300の各相の物理量の値を用いて、電力系統の電力の状態に応じて変動する他の物理量の値を算出して、地絡点標定装置130に送信することもできる。
【0019】
計測端末113は、例えば、配電線300の各相の電流値を取得し、取得した電流値を合成することにより、零相電流を算出して、それを地絡点標定装置130に送信する。あるいは、計測端末113は、配電線300の各相の電圧値を取得し、取得した電圧値を合成することにより、零相電圧を算出して、それを地絡点標定装置130に送信することとしてもよい。
【0020】
なお、計測端末113は、GPS衛星1000から現在時刻を受信しているため、計測端末113で計測された電流値や電圧値および算出された零相電流や零相電圧と、時刻情報と、を対応付けて地絡点標定装置130に送信する。なお、以下において、零相電流を地絡電流として説明することもある。
【0021】
ところで、本実施形態に係る電力系統は22kV配電系統であるため、変電所(不図示)に設けられる変圧器(不図示)の接地方式は、抵抗接地方式や非接地方式が採用されている。抵抗接地方式は、変圧器の中性点と大地とを抵抗を介して導体で接続して接地する方式であり、非接地方式は、中性点接地を行わない方式である。
【0022】
そのため、配電線300に地絡が発生した場合に、変電所に設けられる変圧器の接地方式の違いによって、地絡電流のレンジが大きく異なる。例えば、抵抗接地方式では、中性点が抵抗で接地されているため、地絡電流が数百A(アンペア)程度になり、非接地方式では、数十mA(ミリアンペア)程度である。
【0023】
このような場合であっても、本実施形態に係るセンサ111は、接地方式が抵抗接地方式であるか非接地方式であるかによらず地絡電流を検出することができるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、センサ111は、配電線300が貫通するように設けられる環状の巻芯111aと、配電線300が地絡した際に配電線300に生ずる地絡電流を検出するべく巻芯111aに巻回されるコイル111bと、を有して構成されている。センサ111は、配電線300に地絡電流が流れると、巻芯111aの磁束Φが変化し、それに伴ってコイル111bを流れる電流が変化する。コイル111bを流れる電流を不図示の検出器により検出することにより、配電線300に流れる地絡電流を検出することができる。
【0025】
ここで、巻芯111aは、配電線300に地絡電流が流れる際に生ずる磁束の磁束密度Bが所定の磁束密度値以下となるように形成されている。巻芯111aに生ずる磁束の磁束密度Bがなるべく小さくなるようにセンサ111を形成することにより、センサ111が検出可能な地絡電流のレンジを拡大することができる。これにより、22kV配電系統の変圧器の接地方式が抵抗接地方式あるいは非接地方式のいずれであっても、地絡電流を検出することが可能となる。
【0026】
つまり、巻芯111aに生ずる磁束の磁束密度Bが所定の磁束密度値以下になるように小さくすることにより、各相の配電線300に装着されるセンサ111の計測値のばらつきを小さくすることができ、これにより地絡電流を広帯域に計測することが可能となる。以下に、図4及び図5を参照しながら、巻芯111aについて、より詳細に説明する。
【0027】
図4では、巻芯111aの比透磁率μrと、巻芯111aに生ずる磁束の磁束密度Bと、の関係を示す。巻芯111aがパーマロイコアである場合の特性曲線を例示するが、比透磁率μrの値は、磁束密度Bによって大きく異なることがわかる。このため、各相のセンサ111の特性のばらつきを抑えるためには、できるだけ比透磁率μrの変動が小さくなるような範囲の磁束密度Bが巻芯111aに発生することが必要である。
【0028】
図4を参照すると、磁束密度Bが小さいほど比透磁率μrの変動が小さいことがわかる。そこで、磁束密度Bが3000ガウス以下の場合の磁束密度Bと比透磁率μrとの関係を拡大して図5に示す。比透磁率μrの変化と磁束密度Bの変化が線形の関係、つまり配電線300に地絡電流が流れる際の磁束密度Bの増加率と比透磁率μrの増加率とが一致する関係にあれば、磁束密度Bの変化に対して比透磁率μrの変化が安定する。そして、この比透磁率μrが安定する磁束密度Bの範囲が各相のセンサ111のばらつきが少ない領域となる。
【0029】
また、図5を参照すると、磁束密度Bの増加に伴って比透磁率μrがリニアに増加する範囲は、磁束密度Bが所定値以下の範囲であることが分かる。図5に示す場合では、磁束密度Bが1000ガウス以下となる範囲が好ましい。もちろん、比透磁率μrの変化と磁束密度Bの変化は完全に線形の関係を有さなくても良く、それぞれの増加率あるいは変化率が所定範囲内にあれば良い。
【0030】
このように、配電線300に地絡電流が流れる際に巻芯111aに生ずる磁束の磁束密度Bが、磁束密度Bの変化に対する比透磁率μrの変化の度合いに基づいて定められる所定の磁束密度値以下となるようにすることで、センサ111が検出可能な電流のレンジを拡大することができ、22kV配電系統の変圧器の接地方式が抵抗接地方式あるいは非接地方式のいずれであっても、地絡電流を検出することが可能となる。
【0031】
また、このように、磁束密度Bの変化に対する比透磁率μrの変化の度合いに基づいて、磁束密度Bの上限値である上述した所定の磁束密度値を定めることにより、巻芯111aに用いる材料について図4に示したような比透磁率μrと磁束密度Bとの特性を基に、磁束密度Bの上限値を定めることが可能となる。
【0032】
なお、巻芯111aに生ずる磁束の磁束密度Bは、磁束Φに比例するが、巻芯111aの断面積S及び長さ(円周長)Lに反比例する。そのため、巻芯111aは、地絡電流が発生した場合に巻芯111aに生ずる磁束の磁束密度Bが所定の磁束密度値以下に抑制されるように、断面積S及び長さLが所定値以上になるように構成される必要がある。一方で、巻芯111aの大型化にもある程度の限度があることから、巻芯111aは、磁束密度Bが所定の磁束密度値以下に抑制されつつも、ある下限値以上になるような断面積S及び長さLを有するように構成されることになる。
【0033】
また、配電線300が地絡した際にコイル111bに流れる電流は、コイル111bの巻回数に反比例する。そのため、本実施形態に係るセンサ111は、コイル111bの巻回数が所定の巻数以下になるように定められている。コイル111bの巻数を所定の巻数以下にすることによって、微弱な地絡電流であっても2次電流のレベルが増加することで検出することが可能となるため、地絡電流の検出可能なレンジを広げることが可能となる。
【0034】
例えば、非接地方式の電力系統の地絡を検出する場合に、一つの巻芯111a内に3相分の配電線300をまとめて貫通させるようなことを行わなくても、各相の配電線300にそれぞれセンサ111を設け、それぞれ数十mA程度の地絡電流を検出することが可能となる。
【0035】
このため、22kV配電系統の変圧器の接地方式が抵抗接地方式あるいは非接地方式のいずれであっても、地絡電流を検出することが可能となる。
【0036】
==地絡点標定装置130==
図6を参照しつつ、地絡点標定装置130について、以下のとおり説明する。図6は、本実施形態に係る地絡点標定装置130の構成の一例を示す図である。
【0037】
地絡点標定装置130は、地絡事故が発生したときに生じる地絡電流を上述した第1,第2電流検出装置110,120で検出するとともに、該地絡電流を増幅することで、地絡電流の検出時刻を特定して地絡点Pを標定する装置である。
【0038】
配電線300の地絡事故で生じる地絡電流は、伝播する距離が長くなるにつれて減衰する。そのため、地絡点Pから地絡電流を検出する地点までの距離が長大である場合、地絡電流を検出することが困難であった。そこで、地絡点標定装置130は、上述した第1及び第2電流検出装置110,120を用いて、減衰して小さい地絡電流を検出するとともに、該地絡電流に対応する地絡電流波形を特定するとともに、地絡電流波形のゲインを増幅する。増幅された地絡電流波形に基づいて、該地絡電流の発生時刻を示す変化点を特定し、変化点に基づいて地絡点Pを標定する。
【0039】
このような機能を有する地絡点標定装置130は、図6に示すように、演算処理部131と、主記憶部132と、入力部133と、出力部134と、補助記憶部135と、を含んで構成され、それぞれが通信可能に接続されている。
【0040】
演算処理部131は、例えばCPUあるいはMPUなどで構成されている。演算処理部131は、主記憶部132に補助記憶部135から一時的に蓄えられたプログラムを読み出し命令を実施したり、情報を読み書きすことにより、各種機能を実現する。演算処理部131の各構成要素については、詳細に後述する。主記憶部132は、例えば、RAMなど揮発性メモリで構成されている。入力部133は、通信路200を介して電流検出装置から出力される各種情報が入力されるネットワークインターフェイスである。出力部134は、通信ネットワークに各種情報が出力されるネットワークインターフェイスである。補助記憶部135は、演算処理部131が処理するためのプログラムを格納する装置である。補助記憶部135は、例えば、ハードディスクドライブ、SSDあるいは光学式記憶装置など不揮発性メモリで構成されている。
【0041】
<<演算処理部131>>
演算処理部131は、判定部131aと、比較特定部131bと、増幅部131cと、地絡点標定部131dと、を含んで構成されている。
【0042】
判定部131aは、第1,第2電流検出装置110,120で検出された地絡電流が所定の電流値以上か否かを判定する機能を有する。検出された地絡電流が所定の電流値以上である場合は、検出された地絡電流のうち最も大きい電流値を示す地絡電流(以下、「第1地絡電流」と称する。)よりも小さい地絡電流(以下、「第2地絡電流」と称する。)を基準として後述する変化点を特定するために、処理を移行させる。一方、地絡電流が所定の電流値未満である場合は、地絡電流を検出した全ての電流検出装置(本実施形態では、第1,第2電流検出装置110,120)を基準として変化点を特定するために、処理を移行させる。
【0043】
比較特定部131bは、第1,第2電流検出装置110,120で検出された夫々の地絡電流を比較する機能を有する。さらに、比較特定部131bでは、第2地絡電流を検出した電流検出装置を特定する。
【0044】
増幅部131cは、第1,第2電流検出装置110,120で検出された地絡電流に対応する地絡電流波形のゲインを増幅する機能を有する。これにより、後述する地絡電流波形の変化点を明確にできる。さらに、増幅部131cは、地絡電流波形の立ち上がり(立ち下がり)角度が最も大きくなる増幅度を算定する機能を有する。増幅度とは、特定された電流検出装置で検出される地絡電流波形のゲインを増幅する度合をいう。
【0045】
地絡点標定部131dは、ゲインが増幅された地絡電流波形に基づいて、地絡電流が発生した時刻を示す変化点を特定する機能を有する。さらに、地絡点標定部131dは、変化点に基づいて、電力系統における地絡電流が発生した地絡点Pを標定する機能を有する。
【0046】
このような演算処理部131を有する地絡点標定装置130は、高周波領域の地絡電流を高精度に検出できる第1,第2電流検出装置110,120で検出される微弱な地絡電流を増幅して、正確に変化点を特定することにより、地絡点Pを標定することができる。以下、地絡点Pを標定する標定手順について、詳細に説明する。
【0047】
===地絡点の標定手順===
図7図11を参照しつつ、地絡点標定システム100における地絡点の標定手順について、以下のとおり説明する。図7は、本実施形態に係る地絡点標定システム100の動作フローを示す図である。図8は、本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置110,120の地絡電流波形の一例を示す図である。図9は、本実施形態に係る第2電流検出装置120の地絡電流波形のゲインを増幅した一例を示す図である。図10は、本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置110,120の地絡電流波形の一例を示す図である。図11は、本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置110,120の地絡電流波形のゲインを増幅した一例を示す図である。
【0048】
電力系統において地絡事故が発生する(S100)。第1及び第2電流検出装置110,120は、配電線300に流れる地絡電流を検出し、地絡電流に関する情報を地絡点標定装置130に送信する(S101)。上述したように、本実施形態に係る第1及び第2電流検出装置110,120は、地絡点Pから長大な距離が離れていても、高精度に地絡電流を検出できる。なお、本標定手順においては、一例として、第1電流検出装置110と第2電流検出装置120の間で生じる地絡点Pを標定する手順について説明するが、言うまでもなく、3台以上の電流検出装置を用いても同様に標定できる。
【0049】
判定部131aは、第1及び第2電流検出装置110,120から受信する地絡電流に関する情報に基づいて、地絡電流の電流値が所定の電流値以上か否かを判定する(S102)。
【0050】
地絡電流が所定の電流値以上である場合(S102:YES)、比較特定部131bに処理を移行させる。
【0051】
次に、比較特定部131bは、第1電流検出装置110および第2電流検出装置120のそれぞれで検出される地絡電流の電流値を比較する(S103)。そして、比較特定部131bは、最も大きい地絡電流よりも小さい地絡電流を示す電流検出装置を特定する(S104)。つまり、配電線300における地絡電流は地絡点Pを基準として電源側よりも負荷側の方が小さい電流値を示すため、比較特定部131bは、負荷側の第2電流検出装置120を特定する。比較特定部131bは、増幅部131cに処理を移行させる。
【0052】
上述したS102(:YES)〜S104について、より具体的に説明する。図8(A)では、第1電流検出装置110で検出される地絡電流に対応する地絡電流波形(以下、「第1地絡電流波形」と称する。)を示している。図8(A)に示すように、第1地絡電流波形は、電流値I0を示す定常電流に地絡電流が重畳することにより形成される。また、第1地絡電流波形は、t1時点付近で発生していることがわかる。図8(B)では、第2電流検出装置120で検出される地絡電流に対応する地絡電流波形(以下、「第2地絡電流波形」と称する。)を示している。第2地絡電流波形は、t2時点付近で発生していることがわかる。そして、図8(A)、図8(B)に示すように、電流値I1及びI2を示す夫々の地絡電流は、所定の電流値Ipを超える。つまり、判定部131aは、第1及び第2地絡電流検出装置で検出される地絡電流の電流値I1及びI2が所定の電流値Ipを超えることを判定する。そして、比較特定部131bは、電流値I1を示す第1地絡電流よりも電流値I2を示す第2地絡電流の方が小さいことを特定する。したがって、本標定手順では、第2電流検出装置120が特定されることとして、以下説明を続ける。
【0053】
次に、増幅部131cは、特定された第2電流検出装置120で検出される第2地絡電流波形のゲインを増幅する増幅度を算出する(S105)。増幅度は、後述する変化点を特定できる程度に第2地絡電流波形のゲインを増幅する度合である。増幅部131cは、算出した増幅度で第2地絡電流波形のゲインを増幅する(S106)。
【0054】
上述したS105、S106について、より具体的に説明する。図9では、第2地絡電流波形のゲインを増幅した地絡電流波形(以下、「第2増幅地絡電流波形」と称する。)を示している。第2地絡電流波形のゲインを増幅するということは、第2地絡電流波形の振幅を増幅させることをいう。これにより、第2増幅地絡電流波形における立ち下がり角度Bが増幅前の立ち下がり角度Aに比べて鋭くなる。
【0055】
一方、地絡電流が所定の電流値未満である場合(S102:NO)、増幅部131cに処理を移行させる。
【0056】
上述したS102(:NO)について、より具体的に説明する。図10(A)では第1地絡電流波形を示し、図10(B)では第2地絡電流波形を示している。第1及び第2電流検出装置110,120で検出され、電流値I3及びI4を示す夫々の地絡電流は、所定の電流値Ipを超えないことがわかる。つまり、判定部131aは、第1及び第2地絡電流検出装置で検出される地絡電流の電流値I3及びI4が所定の電流値Ipを超えないことを判定する。
【0057】
次に、増幅部131cは、第1電流検出装置110および第2電流検出装置120のそれぞれで検出される地絡電流に対応する第1地絡電流波形および第2地絡電流波形のゲインを、増幅部131cの性能の範囲内における所定の増幅度で増幅する(S107)。これにより、後述する変化点を特定しやすくなる。
【0058】
次に、地絡点標定部131dは、図11(A)に示すように、第1地絡電流波形のゲインを増幅した第1増幅地絡電流波形における地絡電流の検出時刻t3を特定し、図11(B)に示すように、第2地絡電流波形のゲインを増幅した第2増幅地絡電流波形における地絡電流の検出時刻t4を特定する(S108)。なお、検出時刻t3および検出時刻t4を変化点と称する。これにより、地絡点標定部131dは、地絡点Pを標定することができる(S109)。
【0059】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0060】
===まとめ===
以上説明したように、本実施形態に係る地絡点標定システム100は、電力系統の電力線に地絡電流が流れるときに生じる磁束の磁束密度が、該磁束密度の変化に対応する透磁率の変化の度合いに基づいて定められる所定の磁束密度値以下となるような、環状に形成される巻芯111a,121aと、配電線300が貫通する巻芯111a,121aに地絡電流を検出するべく巻回されるコイル111b,121bと、を有する複数のセンサ111,121と、複数のセンサ111,121のそれぞれで検出される地絡電流のうち、最も大きい電流値を示す第1地絡電流よりも小さい電流値を示す第2地絡電流を特定する比較特定部131bと、比較特定部131bで特定された第2地絡電流に対応する地絡電流波形を増幅する増幅部131cと、増幅部131cで増幅された地絡電流波形において、第2地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、変化点に基づいて、電力系統における地絡電流が発生した地点を示す地絡点Pを標定する地絡点標定部131dと、備える。本実施形態によれば、高周波領域の地絡電流を高感度に検出できるセンサ111,121を用いて、微小な地絡電流をも検出することができ、その地絡電流波形のゲインを増幅しつつ、変化点を正確に特定し、地絡点Pを標定することができる。
【0061】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100は、複数のセンサ111,121で検出された複数の地絡電流が所定の電流値以上か否かを判定する判定部131aをさらに備え、判定部131aで複数の地絡電流が所定の電流値未満であると判定された場合、増幅部131cは、複数のセンサ111,121で検出される複数の地絡電流に対応する複数の地絡電流波形を増幅し、地絡点標定部131dは、増幅部131cで増幅された第1,第2増幅地絡電流波形における地絡電流の発生時刻を表す変化点を特定し、変化点に基づいて、電力系統における地絡電流が発生した地点を示す地絡点Pを標定する。本実施形態によれば、地絡電流波形を増幅することで変化点を正確に特定し、地絡点Pを標定することができる。
【0062】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100の地絡点標定部131dは、変化点から逆算して地絡点Pにおける地絡電流が発生した時刻を算出することで、地絡点Pを標定する。本実施形態によれば、正確に特定された変化点に基づいて、正確に地絡点Pを標定することができる。
【0063】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100における所定の磁束密度値は、配電線300に地絡電流が流れる際の磁束密度の増加率と透磁率の増加率との一致の度合いに基づいて定められる。本実施形態によれば、磁束密度Bの変化に対して比透磁率μrの変化が安定するため、各相のセンサ111,121のばらつきを少なくできる。
【0064】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100の巻芯111a,121aは、磁束密度が前記所定の磁束密度値以下となるような断面積及び長さを有して構成される。本実施形態によれば、センサ111,121の大型化を抑制できる。
【0065】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100のセンサ111,121は、コイル111b,121bの巻数が所定の巻数以下になるように定められていなる。本実施形態によれば、微弱な地絡電流であっても2次電流のレベルが増加することで検出することが可能となるため、センサ111,121における、地絡電流の検出可能なレンジを広げることができる。
【0066】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100を適用する電力系統は、22kVの特別高圧配電系統である。本実施形態によれば、周波数特性の高いセンサを用いるため、一般的に抵抗接地方式あるいは非接地方式が適用される22kV特別高圧配電系統においても、正確に地絡点Pを標定できる。
【0067】
又、本実施形態に係る地絡点標定システム100における時刻は、GPSから送信される時刻情報に基づいて特定される。本実施形態によれば、正確な時刻により、正確に地絡点Pを標定できる。
【符号の説明】
【0068】
10 地絡点標定システム
111,121 センサ
111a,121a 巻芯
111b,121b コイル
131a 判定部
131b 比較特定部
131c 増幅部
131d 地絡点標定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11