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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-205139(P2018-205139A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】二次電池システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20181130BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20181130BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   G01R31/36
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-111093(P2017-111093)
(22)【出願日】2017年6月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅大
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和貴
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 典孝
(72)【発明者】
【氏名】望月 瞬
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA25
2G216BA34
2G216CB34
2G216CB55
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD02
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】二次電池の劣化指標を高い精度で且つ広い領域で推定できる二次電池システムを提供する。
【解決手段】組電池4の電圧Vと、電圧Vの変化量dVに対する組電池4の容量Qの変化量dQの割合である微分値dQ/dVとの関係を示す微分曲線V-dQ/dVを算出し、この微分曲線V-dQ/dV上で所定の特徴点を特定する。予め記憶された特徴点とSOHとの相関関係に基づき、特定した特徴点から組電池4のSOHを推定する。微分曲線V-dQ/dV上においてSOHに対して高い相関性を有する特徴点として、SOH100〜75%までの第1の劣化領域には特徴点P1を定め、SOH75%未満の第2の劣化領域には特徴点P2を定める。組電池4の現在のSOHが含まれる劣化領域を選択し、その劣化領域に対応する特徴点P1,P2をSOHの推定処理に適用する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の使用に伴って変化する劣化指標が複数の劣化領域に区分され、該二次電池の充放電時の容量Q及び電圧Vをパラメータとした微分特性を有する微分曲線上において、前記複数の劣化領域毎に前記劣化指標に対して相関性を有する特徴点がそれぞれ定められて、該特徴点と前記劣化指標との相関関係が予め記憶された相関関係記憶手段と、
前記二次電池の充放電時に、該二次電池の容量Q及び電圧Vに基づき前記微分曲線を算出する微分曲線算出手段と、
前記二次電池の現在の劣化指標が含まれる前記劣化領域を選択する劣化領域選択手段と、
前記微分曲線算出手段により算出された微分曲線上で、前記劣化領域選択手段により選択された劣化領域に対応する前記特徴点を特定する特徴点特定手段と、
前記劣化領域選択手段により選択された劣化領域に対応する前記相関関係を前記相関関係記憶手段から読み出し、該相関関係と前記特徴点特定手段により特定された特徴点とに基づき、前記二次電池の劣化指標を推定する劣化指標推定手段と
を備えたことを特徴とする二次電池システム。
【請求項2】
前記相関関係記憶手段は、前記特徴点と前記劣化指標との相関関係が前記二次電池の温度域毎に記憶されて温度毎に算出可能であり、
前記劣化指標推定手段は、前記二次電池の現在の温度に対応する前記特徴点と前記劣化指標との相関関係を前記相関関係記憶手段から読み出して前記劣化指標の推定に適用する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項3】
前記二次電池の劣化指標が劣化の軽度な第1の劣化領域と劣化の重度な第2の劣化領域とに区分されると共に、前記二次電池の未使用が判明している場合の車両の運用中において、
前記劣化領域選択手段は、前記二次電池の使用開始時に第1の劣化領域を選択し、該第1の劣化領域に対応する前記相関関係に基づき前記劣化指標推定手段により前記第2の劣化領域に含まれる劣化指標が推定されると、前記第1の劣化領域に代えて前記第2の劣化領域を選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池システム。
【請求項4】
前記二次電池の劣化指標が劣化の軽度な第1の劣化領域と劣化の重度な第2の劣化領域とに区分されると共に、前記第1または第2の劣化領域の何れか一方に対応する前記特徴点が他方の劣化領域で前記微分曲線上から消失する特性を有し、前記二次電池の現在の劣化指標が判明していない場合において、
前記劣化領域選択手段は、前記微分曲線算出手段により算出される微分曲線上において、前記一方の劣化領域に対応する前記特徴点が出現すると予測される所定領域内にピークが存在する場合に、該ピークを前記一方の劣化領域に対応する前記特徴点と見なして該一方の劣化領域を選択し、前記所定領域内にピークが存在しない場合には他方の劣化領域を選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池システム。
【請求項5】
前記劣化領域選択手段は、車両の点検時において前記二次電池が完全放電と完全充電との間で充放電されたときに、前記微分曲線上の前記所定領域内での前記ピークの有無に基づき、前記第1または第2の劣化領域を選択する
ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池システム。
【請求項6】
前記容量Q及び電圧Vをパラメータとした微分特性を有する微分曲線は、前記電圧Vと、前記電圧Vの変化量dVに対する前記容量Qの変化量dQの割合である微分値dQ/dVとの関係を示す微分曲線V-dQ/dVである
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の二次電池システム。
【請求項7】
前記二次電池の正極電極板は、活物質としてLiMnを含む
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の二次電池システム。
【請求項8】
前記二次電池の正極電極板は、活物質としてLiMO(Mは、Co,Ni,Al,Mn,Feの内、少なくとも1つを含む遷移金属元素)を含む
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池システムに係り、詳しくは、二次電池の劣化度合いを表す劣化指標(SOH:State of Health)を推定する機能を備えた二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の充放電時の容量Q及び電圧Vをパラメータとした微分特性を有する微分曲線は、二次電池の劣化状態に応じて形状が異なる。そこで、微分曲線上に出現する特徴点の推移や変化量等に基づき二次電池の劣化指標を推定する種々の手法が提案されている。
例えば特許文献1に記載された二次電池システムでは、二次電池の放電時に電池容量Qを算出すると共に、電池容量Qの変化量dQに対する電池電圧Vの変化量dVの割合である微分値dV/dQを求め、微分値dV/dQと電池容量Qとの関係から微分曲線Q-dV/dQを算出している。
【0003】
微分曲線Q-dV/dQには状態検知範囲が設定され、その範囲内においてピーク形状の裾部分の極小点及び頂点部分の極大点を特徴点として特定し、両者の電池容量Qに関する差分σ、及び微分値dV/dQに関する差分hを演算する。同様に、予め記録した微分曲線Q-dV/dQの状態検知範囲内において、ピーク形状の裾部分の極小点及び頂点部分の極大点を特徴点として特定し、両者の電池容量Qに関する初期差分σ、及び微分値dV/dQに関する初期差分hを演算する。そして、差分σと初期差分σとの比較、或いは差分hと初期差分hとの比較に基づき二次電池の劣化指標を算出している。
【0004】
また、特許文献2に記載された二次電池システムでは、二次電池の充電中に所定時間T毎に、電流値Iを積算した二次電池の充電電気量から蓄電量Qを推定すると共に、蓄電量Qの変化量dQに対する二次電池の電池電圧Vの変化量dVの割合であるdV/dQの値を算出している。そして、所定時間T毎に算出されるdV/dQの値に基づいてリアルタイムにQ-dV/dQ曲線を描き、そのQ-dV/dQ曲線K上の何れかの特徴点A〜C(極大-極小-極大点)での蓄電量QSA〜Cと、予め記憶しているQ−dV/dQ曲線上の対応する特徴点A〜Cでの蓄電量QKA〜Cとの差分値を算出し、推定した蓄電量Qを差分値により補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/157132号
【特許文献2】特開2010−257984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された二次電池システムは、劣化指標の推定精度や推定可能な領域に関して十分に満足できるものではなかった。
即ち、二次電池の劣化指標の推定精度や推定可能な領域には、微分曲線上に出現する特徴点が大きく関与する。ところが、二次電池の劣化進行に対して微分曲線上の特徴点は必ずしも相関して推移するとは限らず、また、劣化過程において特徴点が必ずしも微分曲線上に常に出現しているとは限らない。
【0007】
二次電池の劣化進行に対して特徴点の推移が良好な相関性を保っていない場合には、その特徴点に基づく劣化指標の推定精度を低下させる要因になり得る。また二次電池の劣化進行に伴って特徴点が消失すると、その時点で劣化指標の推定が不可能になるため、例えば、二次電池の寿命限界まで劣化指標を推定したいという要望に応じられない場合がある。よって、このような不具合を解消する対策が従来から要望されていた。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、二次電池の劣化指標を高い精度で且つ広い領域で推定することができる二次電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の二次電池システムは、二次電池の使用に伴って変化する劣化指標が複数の劣化領域に区分され、該二次電池の充放電時の容量Q及び電圧Vをパラメータとした微分特性を有する微分曲線上において、前記複数の劣化領域毎に前記劣化指標に対して相関性を有する特徴点がそれぞれ定められて、該特徴点と前記劣化指標との相関関係が予め記憶された相関関係記憶手段と、前記二次電池の充放電時に、該二次電池の容量Q及び電圧Vに基づき前記微分曲線を算出する微分曲線算出手段と、前記二次電池の現在の劣化指標が含まれる前記劣化領域を選択する劣化領域選択手段と、前記微分曲線算出手段により算出された微分曲線上で、前記劣化領域選択手段により選択された劣化領域に対応する前記特徴点を特定する特徴点特定手段と、前記劣化領域選択手段により選択された劣化領域に対応する前記相関関係を前記相関関係記憶手段から読み出し、該相関関係と前記特徴点特定手段により特定された特徴点とに基づき、前記二次電池の劣化指標を推定する劣化指標推定手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成した二次電池システムによれば、二次電池の充電時や放電時に、微分曲線算出手段により二次電池の容量Q及び電圧Vに基づき微分曲線が算出されると共に、劣化領域選択手段により二次電池の現在の劣化指標が含まれる劣化領域が選択される。そして、選択された劣化領域に対応する特徴点が、特徴点特定手段により微分曲線上で特定される。
【0011】
一方、選択された劣化領域に対応する相関関係が劣化指標推定手段により相関関係記憶手段から読み出され、この相関関係と微分曲線上で特定された特徴点とに基づき二次電池の劣化指標が推定される。結果として、二次電池の使用に伴って劣化が進行すると、その時々の劣化指標を含む劣化領域が選択され、劣化領域と対応する特徴点及び相関関係が劣化指標の推定に適用される。
【0012】
微分曲線上に出現する複数の特徴点は、二次電池の劣化進行に伴って劣化指標との相関性を変化させたり消失したりする。このため、例えば単一の特徴点に基づく推定処理では、二次電池の劣化進行に伴って劣化指標との相関性が保てなくなって推定精度が低下したり、或いは微分曲線上から特徴点が消失して推定不能になったりする。
本発明では、劣化指標に応じて劣化領域、ひいては劣化指標の推定に適用する特徴点を切り換えることにより、その時点の劣化指標に対して相関性を有する特徴点、換言すると劣化指標の推定に好適な特徴点が常に推定処理に適用される。このように劣化進行に伴って微分曲線上に出現する複数の特徴点を互いに補完させることにより、推定精度の向上と推定領域の拡大とを実現可能となる。
【0013】
その他の態様として、前記相関関係記憶手段が、前記特徴点と前記劣化指標との相関関係が前記二次電池の温度域毎に記憶されて温度毎に算出可能であり、前記劣化指標推定手段が、前記二次電池の現在の温度に対応する前記特徴点と前記劣化指標との相関関係を前記相関関係記憶手段から読み出して前記劣化指標の推定に適用することが好ましい(請求項2)。
【0014】
この態様によれば、二次電池の現在の温度に対応する特徴点と劣化指標との相関関係が相関関係記憶手段から読み出されて劣化指標の推定に適用される。
その他の態様として、前記二次電池の劣化指標が劣化の軽度な第1の劣化領域と劣化の重度な第2の劣化領域とに区分されると共に、前記二次電池の未使用が判明している場合の車両の運用中において、前記劣化領域選択手段が、前記二次電池の使用開始時に第1の劣化領域を選択し、該第1の劣化領域に対応する前記相関関係に基づき前記劣化指標推定手段により前記第2の劣化領域に含まれる劣化指標が推定されると、前記第1の劣化領域に代えて前記第2の劣化領域を選択することが好ましい(請求項3)。
【0015】
この態様によれば、二次電池の未使用が判明しているため、まず現在の劣化指標を含む劣化領域として劣化の軽度な第1の劣化領域が選択され、第1の劣化領域に対応する特徴点と劣化指標との相関関係に基づき劣化指標が推定される。
そして、劣化の重度な第2の劣化領域に含まれる劣化指標が推定されると、第1の劣化領域に代えて第2の劣化領域が選択され、第2の劣化領域に対応する特徴点と劣化指標との相関関係に基づき劣化指標が推定される。結果として、常に二次電池の現在の劣化指標が含まれる適切な劣化領域が選択され、その劣化領域に基づき高い精度で劣化指標を推定可能となる。
【0016】
その他の態様として、前記二次電池の劣化指標が劣化の軽度な第1の劣化領域と劣化の重度な第2の劣化領域とに区分されると共に、前記第1または第2の劣化領域の何れか一方に対応する前記特徴点が他方の劣化領域で前記微分曲線上から消失する特性を有し、前記二次電池の現在の劣化指標が判明していない場合において、前記劣化領域選択手段が、前記微分曲線算出手段により算出される微分曲線上において、前記一方の劣化領域に対応する前記特徴点が出現すると予測される所定領域内にピークが存在する場合に、該ピークを前記一方の劣化領域に対応する前記特徴点と見なして該一方の劣化領域を選択し、前記所定領域内にピークが存在しない場合には他方の劣化領域を選択することが好ましい(請求項4)。
【0017】
この態様によれば、微分曲線上において、何れか一方の劣化領域に対応する特徴点が出現すると予測される所定領域内にピークが存在する場合に、ピークが一方の劣化領域に対応する特徴点と見なされて一方の劣化領域が選択され、所定領域内にピークが存在しない場合には他方の劣化領域が選択される。
結果として、常に二次電池の現在の劣化指標が含まれる適切な劣化領域が選択され、その劣化領域に基づき高い精度で劣化指標を推定可能となる。
【0018】
その他の態様として、前記劣化領域選択手段が、車両の点検時において前記二次電池が完全放電と完全充電との間で充放電されたときに、前記微分曲線上の前記所定領域内での前記ピークの有無に基づき、前記第1または第2の劣化領域を選択することが好ましい(請求項5)。
この態様によれば、車両の点検時において、二次電池が完全放電と完全充電との間で充放電されると、微分曲線上の所定領域内でのピークの有無に基づき劣化領域が選択される。
【0019】
その他の態様として、前記容量Q及び電圧Vをパラメータとした微分特性を有する微分曲線が、前記電圧Vと、前記電圧Vの変化量dVに対する前記容量Qの変化量dQの割合である微分値dQ/dVとの関係を示す微分曲線V-dQ/dVであることが好ましい(請求項6)。
この態様によれば、微分曲線V-dQ/dV上において複数の劣化領域毎に特徴点が定められ、それらの特徴点に基づき二次電池の劣化指標が推定される。
【0020】
その他の態様として、前記二次電池の正極電極板が、活物質としてLiMnを含むことが好ましい(請求項7)。
この態様によれば、LiMnの特徴点が電圧の高い領域にあることから、軽度な劣化の指標の指標として精度の高い推定が可能となる。
その他の態様として、前記二次電池の正極電極板が、活物質としてLiMO(Mは、Co,Ni,Al,Mn,Feの内、少なくとも1つを含む遷移金属元素)を含むことが好ましい(請求項8)。
【0021】
この態様によれば、LiMOの特徴点が電圧の低い領域にあることから、重度な劣化の指標の指標として精度の高い推定が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の二次電池システムによれば、二次電池の劣化指標を高い精度で且つ広い領域で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の二次電池システムを示す概略構成図である。
図2】SOH100%のときの微分曲線V-dQ/dVを示す特性図である。
図3】各SOHで充放電したときの特徴点P1に関する試験結果を示す特性図である。
図4】各SOHで充放電したときの特徴点P2に関する試験結果を示す特性図である。
図5】SOHに応じた微分曲線上での特徴点P1,P2の推移を示す説明図である。
図6】新車から運用を開始した場合にメインコントローラの劣化領域選択部により実行される劣化領域選択ルーチンを示すフローチャートである。
図7】販社等での車両点検の際に診断ツールが接続されたメインコントローラの劣化領域選択部により実行される劣化領域選択ルーチンを示すフローチャートである。
図8】履歴が不明な組電池への交換後の車両の運用中にメインコントローラの劣化領域選択部により実行される劣化領域選択ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した二次電池システムの一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の二次電池システムを示す概略構成図である。
本実施形態の二次電池システムは電気自動車に搭載されており、走行用動力源である走行モータに電力を供給している。全体として二次電池システム1は、その全体を統合制御するメインコントローラ2、及びメインコントローラ2に対して直並列に接続された複数の二次電池モジュール3から構成されている。
【0025】
二次電池モジュール3は、組電池4(二次電池)、サブコントローラ5及び充放電制御部6から構成されている。
組電池4は、所期の電池容量及び出力電圧を達成するために複数の単電池を組み合わせて構成されている。特に本実施形態の組電池4は、その正極電極板に活物質としてLiMnが含まれている。若しくは、正極電極板に活物質としてLiMO(Mは、Co,Ni,Al,Mn,Feの内、少なくとも1つを含む遷移金属元素)が含まれている。
【0026】
組電池4には電圧センサ7、電流センサ8及び温度センサ9が接続されている。電圧センサ7により組電池4の電圧Vが検出され、電流センサ8により組電池4の入出力電流Iが検出され、温度センサ9により組電池4の温度Tが検出され、それらの検出情報はサブコントローラ5に入力される。
サブコントローラ5は、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等から構成されている。サブコントローラ5は充放電制御部6を駆動して組電池4の充放電を制御する機能を奏し、充放電制御の際には、組電池4の劣化指標(以下、SOHと称する)に応じて最大許容電流や最大許容電圧を調整する。
【0027】
またサブコントローラ5は、組電池4のSOHを推定するために必要な微分曲線を算出する微分曲線算出部10(微分曲線算出手段)を備えている。本実施形態では微分曲線としてV-dQ/dVを用いている。微分曲線V-dQ/dVとは、組電池4の電圧Vと、電圧Vの変化量dVに対する組電池4の容量Qの変化量dQの割合である微分値dQ/dVとの関係を示すものである。
【0028】
微分曲線算出部10は、組電池4の充電時または放電時(本発明の「充放電時」に相当)に所定時間毎に組電池4の容量Qを逐次算出すると共に、これに同期して電圧Vを取得し、電圧Vの変化量dVに対する組電池4の容量Qの変化量dQの割合である微分値dQ/dVを算出する。そして、得られた微分値dQ/dVと電圧Vとの関係を示す曲線として微分曲線V-dQ/dVを算出する。
【0029】
図2はSOH100%のときの微分曲線V-dQ/dVを示す特性図であり、微分値dQ/dVを縦軸とし、電圧Vを横軸として微分曲線V-dQ/dVが表されている。組電池4の充電または放電に伴って組電池4の充電率(SOC:State of Charge)と共に電圧Vが増加または低下し、それに応じて微分値dQ/dVが変化することにより、微分曲線V-dQ/dV上にはSOHに対して相関性を有する特徴点として極小点や極大点(例えばP1,P2)が出現している。
【0030】
微分曲線算出部10は、算出した微分曲線V-dQ/dV及び温度センサ9により検出された電池温度T(以下、これらを実測データと称する)をメインコントローラ2に出力する。SOHの推定に微分曲線V-dQ/dV上の何れの特徴点を適用するかは本発明の特徴部分であるため、その手法については後に詳述する。
なおサブコントローラ5は、組電池4の充放電に伴う入出力電流Iを所定時間毎に積算して組電池4のSOCを算出し、その情報もメインコントローラ2に出力する。
【0031】
一方、メインコントローラ2はサブコントローラ5と同様に、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等から構成されている。
メインコントローラ2は、入出力部12、データ保存部13(相関関係記憶手段)、劣化領域選択部14(劣化領域選択手段)、特徴点特定部15(特徴点特定手段)、SOH推定部16(劣化指標推定手段)及び充放電指令部17から構成されている。
【0032】
データ保存部13は、入出力部12を介して各二次電池モジュール3のサブコントローラ5から入力された実測データを記憶する。またデータ保存部13には、予め微分曲線V-dQ/dV上の特定の特徴点と組電池4のSOHとの相関関係を示すデータ(以下、基準データと称する)が温度域毎に記憶されている。
基準データの作成処理は、以下の通りである。
【0033】
まず、本実施形態の組電池4と同一規格の組電池4の劣化試験を実施し、未使用の組電池4の充放電を繰り返して寿命限界(例えばSOH70%)まで段階的に劣化させる。劣化過程の各SOHにおいて、異なる複数の温度域の下で組電池4を充放電してSOCを変化させる。
そして、上記した微分曲線算出部10の処理と同じく、充放電により得られた電圧V及び容量Qに基づき微分値dQ/dVを算出し、電圧Vと微分値dQ/dVとの関係を示す微分曲線V-dQ/dVを算出した上で、微分曲線V-dQ/dV上に出現した特定の特徴点の位置(V,dQ/dV)を求める。結果として特定の特徴点と組電池4のSOHとの相関関係が温度域毎に定められ、各二次電池モジュール3の共通の基準データとして予めデータ保存部13に記憶される。
【0034】
SOH推定部16は、データ保存部13に記憶された各二次電池モジュール3の実測データを読み出して逐次基準データと比較して、それぞれの二次電池モジュール3について現在の組電池4のSOHを推定する。詳しくは、実測データの電池温度Tに基づき温度域を特定し、その温度域に対応する各SOHの基準データの中から、実測データの特定の特徴点の位置に対して一致または最も近い特徴点を有する基準データを選択し、その基準データのSOHを推定値と見なす。特徴点の比較は、例えば特徴点の電圧Vを指標としたり、或いは電圧V及びdQ/dVを指標としたりする。
【0035】
このときの実測データは微分曲線V-dQ/dVの全領域が算出されている必要はなく、上記特定の特徴点を含むものであれば特徴点の特定、ひいてはSOHの推定が可能である。本発明の劣化指標推定手段は、このような部分的な微分曲線V-dQ/dVを算出する場合も含むものとする。
なお、各SOH間及び各温度域間は基準データを特定できないため、補間処理により基準データを算出してもよい。
【0036】
また、特徴点に基づくSOHの推定手法は上記に限るものではなく、精度が高ければ他の手法でもよい。
そして、後述するように本実施形態では、組電池4のSOHの領域を2つに区分した劣化領域毎に、SOHに対して相関性を有する特徴点を微分曲線V-dQ/dV上で定め、現在のSOHが含まれる劣化領域を選択して対応する特徴点に基づきSOHを推定する。このときの劣化領域を選択する機能を劣化領域選択部14が奏し、劣化領域に対応する特徴点を特定する機能を特徴点特定部15が奏するが、その詳細については後に詳述する。
【0037】
充放電指令部17は、SOH推定部16により推定されたSOH等に基づき、各二次電池モジュール3のサブコントローラ5に入出力部12を介して充放電制御の指令を出力する。例えば所定値未満のSOHが推定された二次電池モジュール3に対しては、充放電時の最大許容電流や最大許容電圧を制限する指令を出力する。この指令に基づくサブコントローラ5による充放電制御により、劣化の進行した組電池4の保護が図られる。
【0038】
また充放電指令部17は、何れかの二次電池モジュール3で寿命限界を下回るSOHが推定された場合等には、運転席に設けられた表示部18に車両点検を促すメッセージを表示する。これにより販社等で車両点検が実施されて、必要に応じて組電池4が交換される。
また充放電指令部17は、推定された特徴点をSOCの補正にも利用する。各二次電池モジュール3のサブコントローラ5からSOCが入力されると、それぞれの二次電池モジュール3に対して推定されている特徴点に基づきSOCを補正し、全ての二次電池モジュール3の補正後のSOCから車両の航続可能距離を算出する。航続可能距離は表示部18に表示され、充電スタンド等で組電池4を充電するタイミングの参考にされる。また補正後のSOCは、各二次電池モジュール3での組電池4の充放電制御にも反映される。
【0039】
なお、以上の説明では、各二次電池モジュール3の組電池4全体を対象として、電圧V、電流I及び温度Tの検出処理、微分曲線V-dQ/dVの算出処理、SOHの推定処理を実施したが、これに限るものではない。例えば、組電池4を構成する単電池毎に各処理を実施したり、或いは複数の単電池からなる単電池群毎に各処理を実施したりしてもよい。
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、二次電池の劣化進行に対して微分曲線V-dQ/dV上の特徴点は必ずしも相関して推移するとは限らず、また、劣化過程において特徴点が必ずしも微分曲線V-dQ/dV上に常に出現しているとは限らない。このため、特許文献1,2の二次電池システムでは、SOHの推定精度や推定可能な領域に関して十分とは言い難かった。
【0040】
このような不具合を鑑みて本発明者は、特許文献1,2の技術では、SOHの全領域に亘って特定の特徴点を適用している点が不具合の要因であるとの知見に至った。即ち、SOHの全領域に亘って良好な相関性を保ちつつ出現し続ける特徴点が存在しないため、何れかのSOHで特徴点との相関が保てなかったり、特徴点が消失したりするのである。
以上の知見に基づき本発明者は、SOHの領域を限定すれば相関性を保ちつつ出現し続ける特徴点は存在するため、そのような微分曲線V-dQ/dV上に出現する複数の特徴点を互いに補完させる対策を見出した。
【0041】
本実施形態の組電池4は、例えばSOH100%、電池温度25℃において図2に示す微分曲線V-dQ/dVが得られており、微分曲線V-dQ/dV上に出現している複数の特徴点の中から、SOHの推定に好適な特徴点としてP1及びP2を選択した。特徴点P1は3.9V以上の領域で出現する下向きのピーク(極小点)であり、特徴点P2は、完全放電後の充電により最初に出現する上向きのピーク(極大点)であり、共に劣化の進行に伴って高電圧側に推移する特性を有する。
【0042】
このような組電池4を劣化試験に供して、劣化進行に伴う特徴点P1,P2の推移を確認した。なお劣化試験の手順は、上記したデータ保存部13に記憶すべき基準データを作成する劣化試験と同様である。
図3は各SOHで充放電したときの特徴点P1に関する試験結果を示す特性図、図4は同じく各SOHで充放電したときの特徴点P2に関する試験結果を示す特性図、図5はSOHの低下に応じた微分曲線V-dQ/dV上での特徴点P1,P2の推移を示す説明図である。図3,4中の実線と破線とは温度条件を異にし(25℃と0℃)、実線同士及び破線同士は温度条件を含めて同一内容で実施されたものである。
【0043】
図3,5に示すように特徴点P1に関しては、SOH100〜75%までの領域において各温度条件で共に良好な再現性が得られるものの、SOH75%未満になると特徴点P1が消失してSOHを推定不能となる。この結果は、SOH100〜75%までの領域では、特徴点P1がSOHに対して高い相関性を有することを意味する。
図4,5に示すように特徴点P2に関しては、SOH100〜75%までの領域では何れの温度条件でも再現性に乏しい(太実線と細実線との乖離、太破線と細破線との乖離)。しかし、SOH75%未満の領域になると各温度条件で共に良好な再現性が得られ、しかも組電池4の寿命限界のSOH70%よりも低い領域まで再現性が保たれている。この結果は、SOH75%以下の領域では、特徴点P2がSOHに対して高い相関性を有することを意味する。
【0044】
以上の結果から本実施形態では、SOH100〜75%までの領域(劣化の軽度な第1の劣化領域)では特徴点P1を指標とし、SOH75%未満の領域(劣化の重度な第2の劣化領域)では特徴点P2を指標としてSOHを推定している。即ち、各特徴点P1,P2が互いに補完する関係で推定処理に適用されることで、上記SOHの推定精度や推定可能な領域に関する問題が解決されており、以下に処理の詳細を説明する。
【0045】
上記知見に基づき本実施形態では第1及び第2の劣化領域に応じて異なる特徴点P1,P2を適用しているため、予めメインコントローラ2のデータ保存部13に記憶される基準データに関しても、劣化領域毎に内容を異にしている。詳しくは第1の劣化領域については、100〜75%までの各SOHと特徴点P1との相関関係がそれぞれ温度域毎に記憶されている。同様に第2の劣化領域については、75%未満(下限は53%程度まで)の各SOHと特徴点P2との相関関係がそれぞれ温度域毎に記憶されている。
【0046】
換言すると、第1の劣化領域では100〜75%までの各SOHと特徴点P2との相関関係は不要であり、第2の劣化領域では75%未満の各SOHと特徴点P1との相関関係は不要である。このため、組電池4の劣化過程において、まず第1の劣化領域では100〜75%までの各SOHと特徴点P1との相関関係を特定できればよいため、例えば微分曲線V-dQ/dV上に特徴点P1が必ず出現する3.9Vから完全充電までの間で充放電を行う。組電池4のSOHが低下して第2の劣化領域に移行すると、75%未満の各SOHと特徴点P2との相関関係を特定できればよいため、例えば微分曲線V-dQ/dV上に特徴点P2が必ず出現する完全放電から3.9Vまでの間で充放電を行う。これにより、基準データの作成ための事前の試験の内容が簡略化され、その所要時間及び工数を大幅に節減することができる。
【0047】
このようにして基準データがデータ保存部13に記憶され、車両が運用されているときの組電池4の充放電の際には、二次電池モジュール3毎に現在の組電池4のSOHが含まれる劣化領域が劣化領域選択部14により選択される。そして、選択された劣化領域に対応する特徴点P1,P2が、各二次電池モジュール3からの実測データの微分曲線V-dQ/dV上で特徴点特定部15により特定される。
【0048】
一方、選択された劣化領域に対応する特徴点P1,P2とSOHとの相関関係の中から、温度域に対応する相関関係が劣化指標推定部によりデータ保存部13から読み出され、この相関関係と微分曲線V-dQ/dV上で特定された特徴点P1,P2とに基づき二次電池のSOHが推定される。結果として、二次電池の使用に伴って劣化が進行すると、まず第1の劣化領域が選択され、SOHが75%まで低下すると、次いで第2の劣化領域が選択される。
【0049】
そして各劣化領域では、その劣化領域内のSOHに対してそれぞれ高い相関性を有する特徴点P1,P2、換言すると劣化指標の推定に好適な特徴点P1,P2が常にSOHの推定処理に適用される。従って、各劣化領域においてSOHの推定精度を大幅に向上できると共に、特徴点P1,P2の互いの補完によりSOHを推定可能な全体としての領域を拡大することができる。
【0050】
ところで、以上のように各劣化領域に対応する基準データ及び実測データを選択するには、劣化領域が判明している必要があり、そのためには組電池4の現在のSOHが特定されている必要がある。
SOHを特定する手法は状況に応じて相違する。例えば新車から車両の運用を開始した場合、各二次電池モジュール3の組電池4は未使用から次第に劣化するため、運用当初の組電池4のSOHは100%と見なせる。また、新品の組電池4に交換された場合も同様である。
【0051】
図6はこのような場合に車両の運用中にメインコントローラ2の劣化領域選択部14により実行される劣化領域選択ルーチンを示すフローチャートである。
各二次電池モジュール3の組電池4は劣化の進行を異にするため、二次電池モジュール3毎に図6のルーチンが実行されて個別に劣化領域が選択される。また、当該ルーチンで選択された劣化領域はイグニションスイッチのOFF操作後もバッテリバックアップされ、次のイグニションスイッチのON操作時に再び同一の劣化領域が選択される。
【0052】
まず、ステップS1で第1の劣化領域を選択する。車両の運用開始により当該ルーチンを最初に実行した時点では、全ての二次電池モジュール3の組電池4のSOHが100%のため、組電池4の現在のSOHを含む劣化領域として劣化の軽度な第1の劣化領域が選択されたのである。そして、選択された第1の劣化領域に対応する特徴点P1が、各二次電池モジュール3からの実測データの微分曲線V-dQ/dV上で特定されると共に、温度域に対応する各SOHの基準データとの比較に基づき、各二次電池モジュール3のSOHが推定される。
【0053】
組電池4の劣化進行に応じて推定されるSOHは次第に低下し、続くステップS2でSOHが75%未満になったか否かを判定し、判定がNo(否定)のときには一旦ルーチンを終了する。そして、ステップS2の判定がYes(肯定)になると、続くステップS3で第2の劣化領域を選択し、その後にルーチンを終了する。従って、以降は第2の劣化領域に対応する特徴点P2が実測データの微分曲線V-dQ/dV上で特定され、各SOHの基準データとの比較に基づきSOHが推定される。
【0054】
一方、組電池4のSOHが不明な場合には、別の手法により劣化領域が選択される。例えば販社に車両が持ち込まれた場合には、搭載されている組電池4の劣化がどの程度進行しているかが不明であり、また履歴が判らない組電池4に交換された場合にも、その劣化の進行状態は不明である。
図7は販社等での車両点検の際に診断ツールが接続されたメインコントローラ2の劣化領域選択部14により実行される劣化領域選択ルーチンを示すフローチャートである。二次電池モジュール3毎に実行される点は、図6のルーチンと同様である。
【0055】
まずステップS11で、各二次電池モジュール3の組電池4を完全放電させた後に完全充電し、続くステップS12で、このとき各二次電池モジュール3のサブコントローラ5により算出された微分曲線V-dQ/dV上に特徴点P1が出現しているか否かを判定する。上記したように特徴点P1は3.9V以上の領域で出現する極小点であるため、この電圧域を予め特徴点P1が出現すると予測される所定領域として定めておき、ステップS12では具体的には、この所定領域内に下向きのピークが存在するか否かを判定する。ピークが存在する場合には、そのピークを特徴点P1と見なしてステップS12でYesの判定を下す。
【0056】
そして、特徴点P1はSOH75%未満の領域(他方の劣化領域)では消失する特性を有するため、このときの組電池4のSOHは75%以上であると推測できる。よって、この場合にはステップS13に移行し、組電池4の現在のSOHを含む劣化領域として劣化の軽度な第1の劣化領域を選択してルーチンを終了する。また、所定領域内にピークが存在しないとしてステップS12でNoの判定を下した場合には、特徴点P1の消失に基づきSOHが75%未満であると推測できる。この場合にはステップS14に移行し、現在のSOHを含む劣化領域として劣化の重度な第2の劣化領域を選択する。
【0057】
なお、第1または第2の劣化領域を選択した後の特徴点P1,P2に基づくSOHの推定処理は、図6の場合と同様であるため重複する説明は省略する。そして、第1の劣化領域を選択した場合には、図6に基づき説明したように、推定されたSOHが75%未満になった時点で第2の劣化領域に切り換えればよい。
図8は履歴が不明な組電池4への交換後の車両の運用中にメインコントローラ2の劣化領域選択部14により実行される劣化領域選択ルーチンを示すフローチャートである。二次電池モジュール3毎に実行される点は、図6,7のルーチンと同様である。また、図7の場合と同じく、予め特徴点P1が出現すると予測される3.9V以上の電圧域が所定領域として定められている。
【0058】
車両の運用中には、メインコントローラ2からの指令に基づき各二次電池モジュール3の組電池4が充放電制御されており、それぞれの組電池4の電圧VはSOCと共に常に増減している。メインコントローラ2は、まずステップS21で組電池4の電圧Vが所定領域を横切ったか否かを判定し、Noのときには一旦ルーチンを終了する。
そして、ステップS21の判定がYesになると、続くステップS22で、各二次電池モジュール3からの微分曲線V-dQ/dV上の所定領域内に下向きのピークが存在するか否かを判定する。ピークが存在する場合にはピークを特徴点P1と見なしてYesの判定を下し、続くステップS23で組電池4の現在のSOHを含む劣化領域として劣化の軽度な第1の劣化領域を選択する。また、ピークが存在しない場合にはステップS22でNoの判定を下してステップS24に移行し、現在のSOHを含む劣化領域として劣化の重度な第2の劣化領域を選択する。
【0059】
なお、第1または第2の劣化領域を選択した後の特徴点P1,P2に基づくSOHの推定処理、及び第1の劣化領域を選択した場合のSOH75%に基づく第2の劣化領域への切換については、図7の場合と同様であるため重複する説明は省略する。
ところで図8に基づく説明では、通常通りに組電池4を充放電制御した上で、電圧Vが所定領域を横切ったときにピークの有無に応じて劣化領域を選択したが、これに限るものではない。組電池4のSOCと共に電圧Vは増減するため、組電池4の負担を増加させない範囲で積極的に電圧Vが所定領域を横切るように充放電制御を実施してもよい。この場合でも、上記と同様に適切に劣化領域を選択できる。
【0060】
以上のように図6〜8の何れの場合でも、常に二次電池の現在のSOHが含まれる適切な劣化領域が選択されることから、その劣化領域に基づきSOHの推定精度を一層向上することができる。
一方、各二次電池モジュール3の組電池4は、正極電極板に活物質としてLiMn、若しくは、LiMO(Mは、Co,Ni,Al,Mn,Feの内、少なくとも1つを含む遷移金属元素)が含まれている。LiMnの場合には、その特徴点が電圧の高い領域にあることから、軽度な劣化の指標の指標として精度の高い推定が可能となる。またLiMOの場合には、その特徴点が電圧の低い領域にあることから、重度な劣化の指標の指標として精度の高い推定が可能となる。
【0061】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、電気自動車に搭載された二次電池システム1として具体化したが、本発明は車両用に限定されるものではなく、例えば、工場や店舗等で利用される定置型の二次電池システムに具体化してもよい。
また上記実施形態では、組電池4のSOHを第1及び第2劣化領域に区分したが、本発明はこれに限定されるものではない。異なるSOHの領域で高い相関性を有する特徴点が微分曲線V-dQ/dV上に3つ以上存在する場合には、各特徴点に対応するようにSOHの領域を3つ以上の劣化領域に区分してもよい。
【符号の説明】
【0062】
4 組電池(二次電池)
10 微分曲線算出部(微分曲線算出部手段)
13 データ保存部(相関関係記憶手段)
14 劣化領域選択部(劣化領域選択手段)
15 特徴点特定部(特徴点特定手段)
16 SOH推定部(劣化指標推定手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8