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特開2018-205175レーダ装置及びそのレーダ信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-205175(P2018-205175A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】レーダ装置及びそのレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/32 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   G01S7/32 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-111808(P2017-111808)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】安達 正一郎
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB07
5J070AC02
5J070AC11
5J070AH12
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK16
5J070AK28
(57)【要約】
【課題】 誤検出を抑圧し、目標のみを抽出する。
【解決手段】 実施形態のレーダ装置は、レーダ観測範囲をM(M≧2)回観測する単位を1フレームとしてN(N≧2)フレーム観測する際に、各フレーム毎のM回分の観測値を3次元または2次元座標に配列して座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を行い、目標候補のクラスタを抽出してNフレーム分のクラスタ内の観測値か代表値を出力する。すなわち、座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を行うことにより、誤検出を抑圧し、目標のみを抽出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ観測範囲をM(M≧2)回観測する単位を1フレームとし、N(N≧2)フレーム観測する際に、フレーム毎のM回分の観測値を3次元または2次元座標に配列する配列手段と、
前記配列された観測値を座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を行って目標候補のクラスタを抽出し、前記目標候補のクラスタからNフレーム分のクラスタ内の観測値または代表値を出力するクラスタ分析手段と
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
さらに、N(N≧1)フレーム分の目標候補のクラスタを用いて相関追跡処理を行う相関追跡手段を備える請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記クラスタ分析手段は、前記クラスタ分析の処理をP(P≧1)回実施する請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
さらに、前記Nフレーム分の目標候補を抽出した後、観測値を用いたフィッティング曲線を算出し、所定の幅をもつ領域内の観測値を抽出して、目標クラスタの領域内の目標観測値の欠落を補間する補間手段を備える請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記クラスタ分析手段は、クラスタ分析手法としてDBSCAN(Density-based Spatial Clustering of Applications with Noise)方式を用いる請求項1記載のレーダ装置。
【請求項6】
さらに、前記クラスタ分析により抽出した目標クラスタ候補の観測値座標を用いて3次元座標にプロットし、3次元のプロット座標を入力として、ニューラルネットワーク(NN)を用いて目標か誤検出かのフィルタ処理を行うフィルタ処理手段を備える請求項1記載のレーダ装置。
【請求項7】
レーダ観測範囲をM(M≧2)回観測する単位を1フレームとし、N(N≧2)フレーム観測する際に、フレーム毎のM回分の観測値を3次元または2次元座標に配列し、
前記配列された観測値を座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を行って目標候補のクラスタを抽出し、前記目標候補のクラスタからNフレーム分のクラスタ内の観測値または代表値を出力するレーダ装置のレーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダ装置及びそのレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ方式では、低RCS(Radar Cross Section:レーダ反射断面積)の目標を検出する場合には、CFAR(Constant False Alarm Rate:定誤警報確率)のスレショルドを低減させて高感度化を図っているが、スレショルドを低減させると誤検出が増えてしまう。また、低空の目標を観測する場合にも、クラッタの影響によって誤検出が増えてしまう。このように、誤検出が増えると、追跡のための航跡確立のために、検出後に目標か否かを弁別するための検定ビーム(専用のベリファイビーム)が多数必要になる。その結果、所定の時間内に目標を効率よく観測するための送受信ビームのスケジューリング(ビームマネージメント)の制約が大きくなって、全目標を観測できなくなる等の問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】CFAR処理、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.87-89(1996)
【非特許文献2】クラスタ分析、Sebastian Raschka, Python、‘機械学習プログラミング’、インプレス、pp.297-319(2016)
【非特許文献3】最小2乗推定、中溝、‘信号解析とシステム同定処理’、コロナ社、pp.10-17(1987)
【非特許文献4】DBSCAN(Density-based Spatial Clustering of Applications with Noise)Sebastian Raschka、Python機械学習プログラミング、インプレス、pp.319-323(2016)
【非特許文献5】相関追尾、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.254-259(1996)
【非特許文献6】ニューラルネットワーク、岡谷、‘深層学習’、講談社、pp.7-26(2014)
【非特許文献7】畳み込みニューラルネット、岡谷、‘深層学習’、講談社、pp.79-110(2014)
【非特許文献8】再帰型ニューラルネット、岡谷、‘深層学習’、講談社、pp.111-130(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のレーダ方式では、高感度化のためのCFARスレショルドの低減、あるいは低空の目標観測の場合のクラッタの影響による誤検出が増えると、検出後に目標か否かを弁別するための検定ビームが多数必要になり、ビームマネージメントの制約が大きくなって全目標を観測できない等の問題が生じる。
【0005】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、誤検出を抑圧し、目標のみを高精度に抽出することのできるレーダ装置とそのレーダ信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態によれば、レーダ観測範囲をM(M≧2)回観測する単位を1フレームとしてN(N≧2)フレーム観測する際に、各フレーム毎のM回分の観測値を3次元または2次元座標に配列して座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を行い、目標候補のクラスタを抽出してNフレーム分のクラスタ内の観測値か代表値を出力する。
【0007】
すなわち、本実施形態に係るレーダ装置では、座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を行うことにより、誤検出を抑圧し、目標のみを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態において、複数スキャンの3次元データ毎にスライディングさせ分割したフレーム毎にクラスタ分析する様子を示す図。
図3】第1の実施形態において、密度分布の差異を利用したクラスタ分布による誤検出抑圧と目標検出の様子を示す図。
図4】第2の実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図。
図5】第2の実施形態において、相関追跡の様子を示す図。
図6】第2の実施形態において、フレーム毎に連続した平滑値を中心にして所定のゲートを設定する様子を示す図。
図7】第2の実施形態において、クラスタ検出時に欠落した観測値がある場合に欠落を抑圧する様子を示す図。
図8】第3の実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図。
図9】第3の実施形態において、再度クラスタ分析のパラメータを変えて、クラスタ分析を行う様子を示す図。
図10】第4の実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図。
図11】第4の実施形態において、補間曲線により目標範囲を設定する様子を示す図。
図12】第5の実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図。
図13】第5の実施形態において、DBSCAN方式を説明するための図。
図14】第6の実施形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図。
図15】第6の実施形態において、ニューラルネットワーク方式を説明するための図。
図16】第6の実施形態において、ニューラルネットワークに用いられるユニットを説明するための図。
図17】第6の実施形態において、入力データとして、クラスタ分布検出、目標候補抽出により抽出した目標候補の座標をもとに、3次元の座標(X,Y,Z)の点にプロットする例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)−クラスタ分布
レーダ装置として、パルス変調や連続波の場合、またパルス変調として、PRI(Pulse Repetition Interval:パルス繰り返し周期)の区分により、速度にアンビギュイティがあるLPRF(Low Pulse Repetition Frequency:低パルス繰り返し周波数)、距離及び速度にアンビギュイティがあるMPRF(Medium Pulse Repetition Frequency:中パルス繰り返し周波数)、距離にアンビギュイティがあるHPRF(High Pulse Repetition Frequency:高パルス繰り返し周波数)の場合等に幅広く適用できるが、ここでは説明を簡単にするために、LPRFのパルス変調の場合について説明する。
【0011】
図1乃至図3を参照して、第1の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図1はその概略構成を示すブロック図、図2は複数スキャンの3次元データ毎にスライディングさせ分割したフレーム毎にクラスタ分析する様子を示す図、図3は密度分布の差異を利用したクラスタ分布による誤検出抑圧と目標検出の様子を示す図である。
【0012】
本実施形態に係るレーダ装置は、図1に示すように、複数のアンテナ素子によりモノパルスアンテナを構成し、Σ、Δの送受信ビームを形成するアンテナ1と、アンテナ1を通じて送信信号を送出し、目標からの反射信号を受信する送受信器2と、送受信器2で得られた受信信号から目標の距離・角度を観測して3次元の位置座標を演算し、クラスタ分布による検出処理を行って目標の観測値を出力する信号処理器3とを備える。
【0013】
上記送受信器2は、送受信部21、変調制御部22を備える。送受信部21は、変調制御部22のLPRFのパルス変調により生成されるモノパルスのパルス変調波をアンテナ1を通じて送信し、その送信出力の反射波を受信して、Σビーム、Δビームの受信信号(以下、Σ信号、Δ信号と記す)を出力する。
【0014】
上記信号処理器3は、Σ観測処理部31、CFAR処理部32、測距部33、Δ観測処理部34、セル抽出部35、測角部36、3次元位置座標出力部37、クラスタ分析部38を備える。
上記Σ観測処理部31は、モノパルスビームによるΣ受信信号を入力し、CPIデータを用いて、送信波形に応じたパルス圧縮やFFT等の信号処理を実施してレンジ−ドップラ(RD)データを得る。
上記CFAR処理部32は、アンテナ1のモノパルス出力によるΣ信号のRDデータを用いて、CFARにより所定のスレショルドを設定して反射点のセルを検出する。
上記測距部33は、CFARによって得られた反射点のセルについて時間軸を距離軸に変換することで目標距離を測定する(測距)。
【0015】
上記Δ観測処理部34は、モノパルスビームによるΔ受信信号を入力し、Σ観測処理部31と同様に、CPIデータを用いて、送信波形に応じたパルス圧縮やFFT等の信号処理を実施してレンジ−ドップラ(RD)データを得る。
上記セル抽出部35は、上記CFAR処理部33の処理結果を利用してΣ信号の検出セルと同一セルを抽出する。
上記測角部36は、セル抽出部35で抽出されたセルについて、測距部33で得られた目標の距離とモノパルス測角処理を行うことで、抽出セルごとのAZ,ELの角度を出力する。
【0016】
上記3次元位置座標出力部37は、測角部36を通じて得られた目標の距離と角度から目標の3次元位置座標を演算出力する。
【0017】
上記クラスタ分析部38は、振幅の大きい目標付近のセル密度が高く、誤検出付近では小さいという密度差を利用したクラスタ分析を行い、1回のCPIの処理では反射点数が十分で無い場合に、複数回のCPIの検出セルを加算した観測値を出力する。
【0018】
上記構成において、以下に本実施形態に係るレーダ信号処理方法について説明する。
【0019】
まず、パルス変調波をアンテナ1を通じて送受信し(2)、モノパルスアンテナビームによるΣ信号の出力を用いて、送信波形に応じてパルス圧縮やFFT等の信号処理を実施してレンジ−ドップラ信号を得て(31)、CFAR(非特許文献1)により所定のスレショルドを設定して目標検出し(32)、検出したレンジセルにより目標距離を出力する(33)。
【0020】
さらに、モノパルスアンテナビームのΔ信号についても、同様の信号処理を実施し(34)、Σ信号の検出セルと同一セルを抽出し(35)、モノパルス測角処理によるAZ,ELの角度を出力する(36)。距離と角度がわかれば、3次元位置座標を出力できる(37)。
【0021】
この3次元座標データをクラスタ分析する(非特許文献2)(38)。クラスタ分析は、所定の条件に従い、入力値をグルーピングして区分する手法であり、本実施形態においては、目標とクラッタやノイズによる誤検出を弁別して、目標のみを抽出するために用いる。目標と誤検出の弁別は、例えば、目標付近の反射点の密度が、誤検出の場合よりも大きいことを利用する。
【0022】
複数スキャン観測する場合、図2に示すように、スキャンM,M+1,…,M+mそれぞれの3次元データ毎に、スライディングさせたフレームN,N+1,…に分割し、そのフレーム毎にクラスタ分析を行う。密度分布の差異を利用したクラスタ分布による誤検出抑圧と目標検出の様子を図3に示す。すなわち、図3(a)に示すように、複数スキャン分の誤検出と目標について密度差によるクラスタ分析を行い、図3(b)に示すように、高密度の目標のみのクラスタを抽出する。
【0023】
目標のクラスタを抽出した場合には、クラスタ内の観測値をそのまま出力するか、代表値としてクラスタ内3次元座標の平均値や振幅を用いた次式による重心値を観測値として出力する。
【数1】
【0024】
以上のように、本実施形態に係るレーダ装置は、所定の観測範囲をM(M≧2)回観測する単位を1フレームとしてN(N≧2)フレーム観測する際に、各フレーム毎のM回分の観測値を3次元または2次元座標に配列して、クラスタ分析し、目標候補のクラスタを抽出してNフレーム分のクラスタ内の観測値か代表値を出力する。すなわち、3次元座標軸における目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析により、誤検出を抑圧し、目標のみを抽出することができる。
【0025】
(第2の実施形態)−相関追跡による誤検出抑圧
図4乃至図7を参照して、第2の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図4はその概略構成を示し、図5は相関追跡の様子を示し、図6はフレーム毎に連続した平滑値を中心にして所定のゲートを設定する様子を示し、図7はクラスタ検出時に欠落した観測値がある場合に欠落を抑圧する様子を示している。
【0026】
第1の実施形態の構成では、抽出したクラスタ以外の観測値である誤検出が残留する場合がある。本実施形態では、その対策について述べる。
【0027】
本実施形態に係るレーダ装置は、図4に示すように相関追跡部39を備え、第1の実施形態と同様の方法でクラスタを検知した後、そのクラスタの代表値により相関追跡処理(非特許文献5)を行う。相関追跡は、図5に示すように、まず、最初のスキャンの代表値を予測値とし、所定のゲート内の代表値の中で、最も予測値に近い代表値を選定し、次の予測値を算出する。フレーム毎に連続した平滑値を中心にして、図6に示すように所定のゲートを設定し、ゲート外の観測値を誤検出として抑圧(削除)しつつゲート内の観測値を抽出する。この場合、図7(a)に示すように、クラスタ検出時に欠落した観測値がある場合でも、図7(b)に示すように、相関追跡のゲート内の観測値を再抽出することにより、欠落を抑圧することができる。
【0028】
以上のように、第2の実施形態に係るレーダ装置は、N(N≧1)フレーム分の目標候補のクラスタを用いて、相関追跡処理することにより誤検出を抑圧する。このように、抽出したクラスタを用いて相関追跡処理することにより、残留誤検出を抑圧することができる。
【0029】
(第3の実施形態)−複数回のクラスタ分析
図8及び図9を参照して、第3の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図8はその概略構成を示し、図9は再度クラスタ分析のパラメータを変えてクラスタ分析を行う様子を示している。
【0030】
第1及び第2の実施形態では、誤検出が残留する場合がある。本実施形態に係るレーダ装置は、その対策のためになされたもので、図8に示すように、クラスタ分析部38aにおいて、複数回のクラスタ分析を、パラメータを変えて行う。すなわち、図9(a)に示すような分布が得られた状態で、まず第1または第2の実施形態と同様の方法でクラスタ検知する。その結果、図9(b)に示すような残留誤検出があった場合、観測値の密度分布が変化する。そこで、本実施形態では、図9(c),(d)に示すように、パラメータを変えて順次クラスタ分析を行う。パラメータとしては、例えば、第5の実施形態で述べるDBSCAN方式(非特許文献4)の場合は、ゲート半径とゲート内の観測値の点数等である。このクラスタ分析を所定の回数(≧2)繰り返すことにより、誤検出を抑圧することができる。この際、目標の観測値を抑圧する場合も想定されるが、第2または第4の実施形態で述べる手法を用いて、欠落した目標の観測値の復活させることができる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るレーダ装置は、クラスタ分析処理を複数回P(P≧2)回実施して誤検出を抑圧する。これにより、1回のクラスタ分析では抑圧できない残留誤検出を抑圧することができる。
【0032】
(第4の実施形態)−クラスタ補間による目標抽出(フィッティング)
図10及び図11を参照して、第4の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図10はその概略構成を示し、図11は補間曲線により目標範囲を設定する様子を示している。
【0033】
第1乃至第3の実施形態では、誤検出を抑圧する手法について述べた。この際に、目標のクラスタに欠落が生じる場合がある。第2の実施形態の相関追跡処理により、欠落の影響を抑圧する手法について述べたが、本実施形態では、他の対策について述べる。
【0034】
本実施形態に係るレーダ装置は、図10に示すように、第2の実施形態のクラスタ分析部31aと相関追跡部39との間に目標補間部3Aを配置した構成である。すなわち、本実施形態では、図11(a)〜(d)に示すように、クラスタを抽出した後、L(L≧1)フレームの観測値を用いて、目標候補範囲を抽出する。この際に、最小2乗曲線(非特許文献3)等を用いて補間曲線を抽出する。
【0035】
ここで、最小2乗法による補間関数の算出手法について述べる。説明変数をベクトルx、目的変数をベクトルyで表現すると、次式となる。
【数2】
【0036】
(2)式のデータの最小2乗曲線を算出するには、次式を最小化するパラメ−タθを算出することに対応する。
【数3】
【0037】
fが多項式の場合は、次式の通りθは各項の係数である。
【数4】
【0038】
(3)式のθ(多項式の場合はap)は、一般的に非線形推定問題として、次式の条件により算出できる(非特許文献3)。
【数5】
【0039】
(5)式は、一般的に次式の繰り返し演算により算出できる。
【数6】
【0040】
以上の処理により算出したフィッティング曲線を中心に、図11(d)に示す所定の幅の領域を設定し、その領域内の観測値を全て抽出する。これにより、クラスタ検出時に欠落した目標の観測値を復活させることができる。
【0041】
なお、本実施形態の手法は、補間曲線を算出する際に、Lフレーム分の(xq,yq)のデータを用いるが、Lフレームのデータをスライディングさせながら、1〜L、2〜L+1、…等に選定すると、最初のLフレ−ム以降のデータを取得した後は、連続した補間曲線を得ることができ、クラスタ分析により欠落したデータを補正することができる。これにより抽出した目標補間値をそのまま観測値(X,Y,Z)として出力するか、更に誤検出を抑圧するために、相関追尾処理(39)した後に、観測値を出力する。
【0042】
以上のように、第4の形態に係るレーダ装置は、Nフレーム分の目標候補を抽出した後、観測値を用いたフィッティング曲線を算出し、所定の幅をもつ領域内の観測値を抽出して、目標クラスタの領域内の目標観測値の欠落を補間する。このように、クラスタ分析によって目標観測値の抽出に欠落が生じた場合でも、補間処理により目標クラスタ範囲を補間するようにしているので、目標観測値の欠落を抑圧することができる。
【0043】
(第5の実施形態)−DBSCAN方式
図12及び図13を参照して、第5の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図12はその概略構成を示し、図13はDBSCAN方式による処理を示している。
【0044】
本実施形態では、クラスタ分析手法としてDBSCAN(非特許文献4)を用いる手法について述べる。
【0045】
本実施形態に係るレーダ装置は、図12に示すように、クラスタ分析部38bにおいてDBSCAN方式を採用し、図13に示すように、半径εのサークル範囲とこのサークル範囲内の観測値数MinPtsを設定し、密度の差異によりクラスタを分類する。設定した半径ε、観測値数MinPtsを満足するクラスタ毎に、複数のクラスタを生成し、それ以外はノイズとして分類できる。
【0046】
具体的には、設定した半径ε以内に少なくとも設定された観測値数MinPtsの隣接点がある点は、コア点とし、半径ε以内の隣接点の個数がMinPtsに満たない場合はボーダー点とみなされる。コア点でもボーダー点でもないような点は、ノイズ点とする。これにより、目標による反射点(コア点とボーダー点)と誤検出(ノイズ点)を弁別できる(非特許文献4)。
【0047】
以上のように、本実施形態に係るレーダ装置は、クラスタ分析手法として、DBSCANを用いる。これにより、目標と誤検出の密度分布の差異によるクラスタ分析を効率よく行うことができる。
【0048】
(第6の実施形態)−ニューラルネットワーク
図14乃至図17を参照して、第6の実施形態に係るレーダ装置を説明する。図14はその概略構成を示し、図15はニューラルネットワーク方式の概念を示し、図16はニューラルネットワークに用いられるユニットの構成を示し、図17は、入力データとして、クラスタ分布検出、目標候補抽出により抽出した目標候補の座標をもとに、3次元の座標(X,Y,Z)の点にプロットする例を示している。
【0049】
本実施形態では、クラスタ検知手法として、目標と誤検出の密度差に着目する。さらに、目標と誤検出の弁別能力を高めるために、選定した目標クラスタを中心とした所定の範囲の座標データを入力として、ニューラルネットワーク(非特許文献6)を用いて識別する手法を適用できる。ニューラルネットワーク(NN)の具体例としては、畳み込みニューラルネット(非特許文献6)や再帰型ニューラルネット(非特許文献7)等を用いることができる。この場合、目標と誤検出の密度差の他、空間的な広がりの特徴の差を特徴量として抽出して弁別することができる。
【0050】
本実施形態に係るレーダ装置は、図14に示すように、目標補間部3Aと相関追跡部39との間に目標候補抽出フィルタ3Bを配置した構成である。
【0051】
上記目標候補抽出フィルタ3Bにおいては、3次元データ生成部3B1、列ベクトル変換部3B2、NN(ニューラルネットワーク)処理部3B3、フィルタ3B4を備え、目標補間部3Aにおいて、クラスタ分布による検出結果から抽出した目標候補をもとに、ニューラルネットワークNNにより目標か誤検出かを識別し、目標候補のみを抽出する。そのために用いるNNの構成例を図15(多層パーセプトロン方式)を示し、そのユニット構成を図16に示す(非特許文献6)。NNを構成する各ユニットは、定式化すると次式となる。
【数7】
【0052】
活性化関数としては、シグモイド関数(非特許文献6)等、種々適用できる。
【0053】
入力データとしては、クラスタ分布による検出31b、目標候補抽出33により抽出した目標候補の座標をもとに、図17に示すように3次元の座標(X,Y,Z)の点にプロットし、3次元のデータ(Nx、Ny、Nz)を、目標の存在しない空間の点も含めて、1次元の列ベクトル(1〜Nx×Ny×Nz)に変換して、NNに入力する。NNのウェイトの学習としては、シミュレータや実測値により、真値(目標か誤検出かの教師信号)の既知の3次元の学習用のデータとを生成し、生成した信号(X,Y,Z)と教師信号(目標か誤検出か)を用いて、事前に学習しておく。目標か誤検出かの識別は、2値分類や多クラス分類(クラス数=2)に相当する。
【0054】
一般的に多クラス分類とすると、学習用の訓練データは次式で定義できる。
【数8】
【0055】
また、誤差関数Eを次式の2乗誤差で定義する。
【数9】
【0056】
これが最も小さくなるように、wを選択する。このためには確率的勾配降下法(非特許文献6)等を用いればよい。
【0057】
学習後の実際の処理の際には、固定したウェイトを用いて、図15のNNを動作させ、目標か誤検出か目標候補フィルタ3B4を通過させて、目標候補のみを用いて相関追跡部39に入力し、目標の観測値(X,Y、Z)を出力する。以上により、より誤検出の影響の少ない目標信号の観測値を出力できる。
【0058】
以上のように、第6の実施形態に係るレーダ装置は、クラスタ分析により抽出した目標クラスタ候補の観測値座標を用いて3次元座標にプロットし、3次元のプロット座標を入力として、ニューラルネットワーク(NN)を用いて目標か誤検出かのフィルタ処理をする。これにより、NN処理を用いて目標と誤検出を識別することができ、より誤検出を抑圧した処理を行うことができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…アンテナ、
2…送受信器、21…送受信部、22…変調制御部、
3…信号処理器、31…Σ観測処理部、32…CFAR処理部、33…測距部、34…Δ観測処理部、35…セル抽出部、36…測角部、37…3次元位置座標出力部、38,38a,38b…クラスタ分析部、39…相関追跡部、3A…目標補間部、3B…目標候補抽出フィルタ、3B1…3次元データ生成部、3B2…列ベクトル変換部、3B3…NN(ニューラルネットワーク)処理部、3B4…フィルタ。
図1
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