特開2018-205615(P2018-205615A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-205615(P2018-205615A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20181130BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181130BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   G02B5/28
   B32B27/00 B
   G02B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-113161(P2017-113161)
(22)【出願日】2017年6月8日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有家 隆文
(72)【発明者】
【氏名】青山 滋
(72)【発明者】
【氏名】増田 嘉丈
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
【Fターム(参考)】
2H148FA04
2H148FA09
2H148FA12
2H148FA24
2H148GA05
2H148GA19
2H148GA33
2H148GA61
4F100AA20
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK41
4F100AK42
4F100BA08
4F100EH20
4F100EH46
4F100EJ38
4F100GB07
4F100GB31
4F100JA11A
4F100JA12B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JJ02
4F100JN06
(57)【要約】
【課題】
近赤外領域を反射させつつ、可視光領域を均一に遮蔽することにより、色付くことなく、日射熱取得率を下げるフィルムを提供する。
【解決手段】
少なくとも一方の面の波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上であり、JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法で測定される彩度C*が0以上10未満であることを特徴とするフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面の波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上であり、JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法で測定される彩度C*が反射光、透過光共に0以上10未満であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上である面が、JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法で測定される反射光のa*値、b*値がそれぞれ−5以上5以下である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法で測定される透過光のa*値、b*値がそれぞれ−5以上5以下である請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上である面が、ISO 9050(2003年)に記載の測定方法で測定される可視光線反射率が15%以上50%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
熱可塑性樹脂Aを主成分とする層(A層)と熱可塑性樹脂Bを主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した構成を有しており、
前記A層、B層が交互に51層以上積層する構成のうち、1層あたりの層厚みが1μm未満の隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットが連続的に8ユニット以上含む請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。(ただし、xは0.3以上0.9以下、または1.1以上1.8以下)
【請求項6】
前記xが0.4以上0.8以下、または1.1以上1.7以下である請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
該熱可塑性樹脂Aが結晶性樹脂であり、該熱可塑性樹脂Bが非晶性樹脂である請求項1〜6いずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
窓貼り用日射調整フィルムに用いられる請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護による二酸化炭素排出規制を受けて、夏場の外部、特に太陽光による熱の流入を抑制できる遮熱ガラスを自動車や電車などの乗り物、建物の窓ガラスに用いることが注目されている。
【0003】
このような遮熱ガラスの一例として、ガラス中や合わせガラスに用いられる中間膜中に熱線吸収剤を含有させ、熱線を熱線吸収剤にて遮断するもの(たとえば特許文献1)、金属膜をガラス表面上にスパッタなどにより形成し熱線を反射させて遮断するもの(たとえば特許文献2)、屈折率の異なるポリマーが交互に積層されたポリマー多層積層フィルムをガラス及び中間膜の間に挿入して熱線を反射させて遮断するもの(たとえば特許文献3)などがある。
【0004】
特許文献1に記載される、熱線吸収剤を用いる方法では、外部から入射される太陽光を熱エネルギーに変換するため、その熱が室内へと放射されて遮熱効率が低下する問題がある。加えて、熱線を吸収することでガラス温度が上昇し、外気温との差によりガラス本体が破損する場合もある。また、特許文献2に記載される、金属膜をガラス表面上にスパッタなどにより形成する方法では、熱線のみではなく電磁波も遮蔽するために、自動車や建物内部で通信機器などが使用できない場合もある。
【0005】
一方、特許文献3に記載される、ポリマー多層積層フィルムは、その層厚みを制御して、反射する波長を選択できるため、近赤外領域の光を選択的に反射することができ、可視光線透過率を維持しつつ遮熱性能を向上させることができる。また、金属など電波を遮断するものを含まないために、優れた電波透過性を保持したものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−17854号公報
【特許文献2】特許第3901911号公報
【特許文献3】特許第4310312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に遮熱効率の指標の一つとして、JIS A3106で規定される日射熱取得率(Tts)が用いられる。しかしながら、日射熱取得率は波長300nm〜2000nmまで重価係数が掛けられており、中でも可視光領域(380nm〜780nm)の寄与は約50%あるため、日射熱取得率を下げるには近赤外領域だけでなく、可視光領域をある程度カット(遮蔽)する必要がある。しかし、可視光領域をカット(遮蔽)しようとする場合、波長に対して均一に遮蔽しなければ、色付きが生じてしまう。そのため、デザイン性が重視される自動車、建築物への適用には困難であった。そこで、本発明の課題は、近赤外領域を反射させつつ、可視光領域を均一に遮蔽することにより、色付くことなく、日射熱取得率を下げるフィルムを提供することを課題とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、色付くことなく、日射熱取得率を下げることが出来る。そのため、意匠性が重視される自動車や建築物のガラスなどに貼り合わせるフィルムなどに好適に用いることができ、燃費の向上や冷房効率の改善に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】積層装置1を用いて、積層比0.9にて得られる積層フィルムの層厚みプロファイル
図2】積層装置2を用いて、積層比0.9にて得られる積層フィルムの層厚みプロファイル
図3】積層装置3を用いて、積層比0.68にて得られる積層フィルムの層厚みプロファイル
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。
【0011】
本発明のフィルムは、少なくとも一方の面の波長900〜1800nmの平均反射率が50%以上であることが必要である。波長900〜1800nmの平均反射率は好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。可視光領域よりもやや大きな波長900〜1800nm(全太陽光のうち、波長900〜1800nmに占める強度の割合は約29%)の光を反射することにより、高い熱線カット性能を持つフィルムとすることができる。これは、波長900nm以降のエネルギーでいえば、約98%のエネルギーをカットできることになる。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にあるが、高い透明性が求められる用途で使用するために、可視光領域よりもやや大きな波長900〜1800nmの光を効率的に反射することにより、高い熱線カット性能を付与することができ、反射帯域を広げることで、JIS A3106で規定される日射熱取得率を65%以下とすることが出来るようになる。従って、波長900〜1800nmでの平均反射率を大きくすることで、高い熱線カット性能を付与することが可能となる。
【0012】
また、本発明のフィルムは、彩度C*が反射光、透過光共に0以上10未満である必要がある。彩度C*は、JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法により求められるa*値、b*値を用いて、下記式(1)より算出される。
【0013】
【数1】
【0014】
a*値、b*値は、JISZ8701の5.2(物体色の三刺激値)に規定する三刺激値X,Y,Zから算出される。三刺激値は用いる光源によって異なる重価係数が存在するが、本発明では太陽光に最も近い波形を持つC光源を利用して算出した値をあらわす。彩度C*は色の鮮やかさの尺度であり、透過光/反射光ともにゼロに近づくほど無彩色(色付きがない)であることを表す。彩度C*が小さいほど、デザイン性の高い自動車や建築物への適用がしやすい。好ましくは0以上10未満、さらに好ましくは0以上7未満、最も好ましくは0以上5未満となる。
【0015】
また、本発明のフィルムは、前記C光源を照射した際に、前記波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上である面の、JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法により求められる反射光のa*値、b*値がそれぞれ−5以上5以下であることも好ましい。反射光のa*値、b*値がそれぞれ−5以上5以内にあることにより、反射光が無彩色となりやすく、外から見た場合に、干渉に伴う色付きが見えない。更に好ましくは、−3以上3未満である。反射光のa*値、b*値を前記範囲内とするためには、層設計により、可視光領域の反射帯域を制御するか、可視光を吸収する吸収剤をいくつか組み合わせることで達成できる。しかし、可視光を吸収する吸収剤を用いる場合、ブリードアウトにより、長い間使用することで、ヘイズアップする場合がある。そのため、可視光を吸収する吸収剤を用いずに、層構成のみで制御したほうがコスト的にも光学性能的にも好ましい。
【0016】
さらに、本発明のフィルムは、前記C光源を照射した際に、前記波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上である面の、JIS Z8722(2009年)に記載の測定方法により求められる透過光のa*値、b*値もそれぞれ−5以上5以下であることも好ましい。透過光が前記範囲となることで、外部の太陽光が色付くことなく透過するため、建物や自動車の内側からみても、無彩色とすることができる。更に好ましくは、−3以上3未満である。透過光のa*値、b*値がそれぞれ前記範囲内とするためには、前記と同様に層設計により、可視光領域の反射帯域を制御する方法が最も好ましい。特に、反射b値による色付きを抑制するために、紫外光を吸収する紫外線吸収剤を用いることがあるが、その場合、透過b*値が大きく増加する場合がある。そのため、紫外光を吸収する紫外線吸収剤の含有量は3%以下、より好ましくは1%以下が好ましい。
【0017】
また本発明のフィルムは、前記波長900〜1800nmの範囲における平均反射率が50%以上である面が、ISO 9050(2003年)に記載の測定方法で測定される可視光線反射率が15%以上50%以下であることが好ましい。日射取得率を下げる観点からは、可視光線反射率は高い方が好ましいが、一方で、可視光線反射率が50%を超えると、透過光が半分以上通らないため、当該フィルムを貼り合わせたガラスを用いた建物や自動車は内側からの視認性が低下する場合がある。そのため、一定程度の視認性が必要となる用途においては、可視光線反射率は15%以上50%以下であることが好ましい。透明性を維持した状態でより日射熱取得率を下げる観点から、可視光線反射率を上記の範囲としつつ、波長900nm〜1800nmの平均反射率を高くすることが好ましい。
【0018】
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂Aを主成分とする層(A層)と熱可塑性樹脂Bを主成分とする層(B層)を交互に51層以上積層した構成を有しており、前記A層、B層が交互に51層以上積層する構成のうち、1層あたりの層厚みが1μm未満の隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/x(xは0.3以上1.7以下)を満たすユニットが連続的に8ユニット以上含むフィルムであることが好ましい。一般的に、層構成は下記式(2)を満たすλ/4設計と呼ばれる構成や米国特許第5360659号に記載の711構成と呼ばれる構成が用いられる。
【0019】
【数2】
【0020】
711構成とはA層B層が交互に積層しており、A層とB層が1:7:1:1:7:1の厚み比で積層した構成となる。通常式(2)に代表されるλ/4設計の場合、波長900〜1800nmを反射させる場合、3次反射が300〜600nm付近に出現するため、波長900〜1800nmまで反射させる場合、b*値が高くなり、色付いてしまう。一方、711構成とした場合、3次の反射を抑制できるため、可視光線領域の反射を抑制できるメリットがある。しかし、更なる日射熱取得率の低減には、金属粒子をコーティングするのが一般的であるが、金属粒子のコーティングは電波も同時に遮断してしまうため、車内や屋内にいる場合に携帯電話などが使えない課題があった。そこで本出願では、可視光領域での干渉を均一に増加させることで、色付くことなく日射熱取得率を低減させる方法を検討した結果、層構成をx:7/x:x:1/x:7x:1/x(xは0.3以上0.9以下、または1.1以上1.8以下)とすることにより、可視光線反射を均一に増加させつつ、日射熱取得率を低下できることを見出した。この方法では金属粒子を使うことなく、日射熱取得率を低下させることができ、また色付くことも無いため、外観の重要な車のサイドミラーなどに好適に使用することができるようになる。さらに好ましくは、xは0.4以上0.8以下、または1.1以上1.7以下である。今回検討した結果、xが0.8以上1.1以下の場合、必要以上に可視光反射率を下げてしまうため、日射熱取得率が低下しない場合がある。一方、0.4以上0.8以下、または1.1以上1.7以下の場合、可視光反射率を適度に制御できるため、色付くことなく、日射熱取得率を制御することができる。一方、xは0.3以上0.9以下、または1.1以上1.8以下を満たすユニットが連続して8ユニット未満しか有しない場合、可視光反射が大きくなりすぎてしまい、50%を超えてしまう場合がある。
【0021】
また、前記層厚み比を満たす隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)のユニットが連続で8ユニット以上あることが好ましい。連続でユニットがあれば、干渉反射させやすいので、ユニットを分離したよりも反射率を高めることができる。従って、より好ましくは、前記層厚み比を満たすユニットが連続で30ユニット以上あることが好ましい。また、前記層厚み比を満たす連続ユニット数は多ければ多いほど反射しやすいが、下記にも記載のとおり、層数が増えると装置の大型化によるコストアップがあるため、最大でも連続で200ユニット以下であることが好ましい。
【0022】
また本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂Aは熱可塑性樹脂Bと光学的に異なる性質を有することが好ましい。光学的に異なる性質とは、面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向から選ばれる方向のいずれかにおいて、屈折率が0.01以上異なることをいう。また、ここでいう交互に積層されてなるとは、異なる樹脂からなる層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、たとえば異なる光学的性質を有する2つのポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂Bからなる場合、各々の層をA層、B層と表現すれば、A(BA)n(nは自然数)といったように規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係によって特定の波長の光を反射させることが可能となる。また、積層する層の全総数が多いほど広い帯域に渡り高い反射率を得ることが出来る。好ましくは51層以上であり、より好ましくは201層以上である。前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い光線カット性能を備えた積層フィルムが得られるようになる。また、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストの増加や、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性の悪化が生じるために、現実的にはそれぞれ1200層以内が実用範囲となる。
【0023】
本発明のフィルムは、隣接する6層の層厚みの和が、フィルムの厚み方向に対して連続した層厚み分布を有することが好ましい。隣り合う層の厚みが一定であれば、単波長の反射のみになってしまう。また、層厚み分布は連続していたほうが、干渉反射は強くなるため、反射率の向上に繋がる。そのため、厚み方向に対して、ある一定の傾斜を連続で有する層厚み分布であることが好ましい。連続とは、A(BA)nとした場合に、n=10以上であり、さらに好ましくは20以上である。
【0024】
本発明のフィルムに用い得る熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)などのポリオレフィン、シクロオレフィンとしては、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルを用いることが好ましく、ポリエステルとしては芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールあるいはそれらの誘導体を用いて得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
【0025】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
前記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体並びにポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体の中から選択されるポリエステルを用いることが好ましい。
【0027】
特に前記の中でも、高屈折率側の樹脂はポリエチレンナフタレート系の樹脂を使うことが好ましい。そうすることで、低屈樹脂との屈折率差がつきやすいため、反射帯域の増加とフィルム厚みの減少を同時に達成することができる。
【0028】
また、前記熱可塑性樹脂には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、良流動化剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0029】
また本発明の積層フィルムは、厚みが1μm以上の層を有することが好ましい。特に表層に1μm以上の層を有することが好ましい。層厚みが1μm以上の層を有することで、幅方向に積層厚みムラの発生を抑制でき、幅方向の光学性能を安定させることが可能となる。特に、表層が1μm以上の場合、ガラスと貼合した際に、ガラスとの界面での干渉を抑制し、虹ムラの発生を抑制することが可能となる。そのため、本発明の積層フィルムは、表層には1μm以上、さらに好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上の層を有することが好ましい。さらに、積層フィルムの表層以外(内部)にも1μm以上の層を有することが好ましい。特に、後述するフィルムの製造段階における各スリットプレートの端が形成する層(表層厚膜層、もしくは中間厚膜層にあたる部分)に有することが好ましい。各スリットプレートの際表層にあたる部分はせん断による樹脂の発熱の影響を受けるため、積層ムラが生じやすい。そのため、積層フィルムの間、特にフィルム製造段階におけるスリットプレートとの境にあたる層は1μm以上、さらに好ましくは2μm以上の層があることが好ましい。
【0030】
本発明のフィルムの該熱可塑性樹脂Aの未配向状態での屈折率が1.55〜1.7、該熱可塑性樹脂Bの未配向状態での屈折率が1.5〜1.65であることが好ましい。未配向状態での屈折率とは、積層フィルムのそれぞれの樹脂を削り取った後、融解させた樹脂の屈折率のことである。熱可塑性樹脂Aの未配向状態での屈折率が1.55〜1.7まであれば、延伸後にも屈折率が高くなりやすい。一方で、該熱可塑性樹脂Bの未配向状態での屈折率が1.5〜1.65、さらに好ましくは1.55〜1.6であれば、延伸後の熱可塑性樹脂の屈折率差をつけやすい。前記の測定方法としては、延伸した積層フィルムを削り取った後、一度高温で融解させた後、各種測定法方法で屈折率を測定することで測定することができる。また、樹脂を配向させた後に隣接する層(すなわちA層とB層)の屈折率差をつけるためには、A層に用いる樹脂が結晶性であり、かつB層に用いる樹脂が、融点以上の熱処理によって配向が緩和し、屈折率が小さくなる樹脂、または非晶性もしくは非晶性熱可塑性樹脂と結晶性熱可塑性樹脂の混合物とすることが好ましい。この場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において更に屈折率差を広げることが可能となり、反射率が30%以上となる反射帯域を有することが容易となる。
【0031】
本発明のフィルムは、窓貼り用日射調整用フィルムとして好適に用いることができる。特に、可視光線透過率が重視されない、車のサイドガラスやリアガラス、建物の窓貼り用のフィルムとして好適に利用できる。このような利用をするためには、フィルムの片面に粘着層を付けることが好ましい。また粘着層としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適に用いられる。また窓ガラスに貼り、太陽光に晒すことを前提としているため、粘着層にはフィルムのUVによる劣化抑制として、波長200〜400nmに吸収帯域を有するUV吸収剤を添加することが好ましい。
【0032】
次に、本発明のフィルムの好ましい製造方法について、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの二種のポリエステル樹脂を用いた積層フィルムを例に挙げて以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、積層フィルムの積層構造の形成自体は、特開2007−307893号公報の〔0053〕〜〔0063〕段の記載を参考とすれば実現できるものである。
【0033】
ポリエステル樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量が均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などが取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出された多層に積層されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も好ましい。
【0034】
また、複数のポリエステル樹脂からなる積層フィルムを作製する場合には、複数の樹脂を2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出し、積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、任意の層厚み構成を形成することも可能となる。この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となったものである。
【0035】
このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、上述と同様にキャスティングフィルムが得られる。
【0036】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸されることが好ましい。ここで、二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいう。延伸は、逐次に二方向に延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0037】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸をいい、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては、本発明の積層フィルムを構成する樹脂の中で最もガラス転位点の高い樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃の範囲が好ましい。
【0038】
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0039】
また、幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては、本発明の積層フィルムを構成する樹脂の中で最もガラス転位点の高い樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃の範囲が好ましい。
【0040】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点Tm以下の温度で熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、フィルムの寸法安定性が向上する。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
【0041】
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
【0042】
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては、本発明の積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃の範囲が好ましい。
【0043】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。
【0044】
本発明のフィルムは、色付きが少なく、特に波長900〜1800nmの熱線を反射することができる。また、粘着剤等を介してガラスに貼り付けることが容易であるため、建材、自動車の窓貼り用日射調整フィルムや熱線反射フィルムなどに好適に用いることができる。
【0045】
[物性の測定方法]
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込められるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率にて観察を実施した。
【0046】
(2)層厚みの算出方法
(1)項で得られたTEM写真画像を画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel 2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ2(間引き2)でデータ採用した後に、5点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(Visual Basic for Applications)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合う明るさが極大の領域と極小の領域の間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
【0047】
(3)反射率、透過率、日射熱取得率、可視光線反射率
5cm×5cmで切り出したサンプルを日立製作所(株)製分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で反射率測定を行った。反射率測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した後、サンプルの長手方向を上下方向にして測定した。測定条件:スリットは2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定し、方位角0度における反射率、透過率を得た。得られたスペクトルを元に、1nm毎の反射率を波長900−1800nmに渡って平均化した。
【0048】
また、反射率測定及び透過率測定の結果を用い、ISO 9050に記載されている計算方法を用いて、日射熱取得率、可視光線反射率を計算した。なお、ISO9050では、太陽光エネルギーに重荷係数を用いて計算しているため、可視光線領域での反射率と可視光線反射率は厳密には同じでない。
【0049】
(4)屈折率(面内配向屈折率)
JIS K7142(1996)A法に従って測定した。また、積層フィルムの未配向状態の屈折率は、各層を削り取った後、一度融点以上で加熱した後、前記方法にて屈折率を測定した。
【0050】
(5)フィルムのTm測定
測定するフィルムを切り出し、示差熱量分析(DSC)を用いてJIS−K−7122(1987年)に従って、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、25℃から300℃まで20℃/minで昇温(第一の昇温)しその状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷した。引き続いて、再度室温から20℃/min.の昇温速度で300℃まで昇温(第二の昇温)を行って測定を行った。得られた示差操作熱量測定チャート(第二の昇温カーブ)を用いて、融点Tmを求めた。なお、複数存在する場合には、それぞれ温度が一番高い値でもって、それぞれの値とした。
【0051】
(6)積層フィルムを構成する材料の構造解析
積層フィルムを構成する材料の構造解析方法は、特に手法は限定されないが、以下のような方法が例示できる。例えば、まずガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)により重量ピークを確認する。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、推定される構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認する。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)にて、構造式上の水素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素原子の個数に由来するプロトン吸収線面積を確認する。これらの結果を合わせて総合的に判断することが好ましい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度0.60、Tm=268℃のポリエチレンナフタレート(PEN)を用い、熱可塑性樹脂Bとして、シクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂とPET(東レ(株)製)を82:18の質量比となるように混合したもの(表中でPETG系樹脂と示す)を用いた。なお、未配向状態での屈折率は、PENが1.65、PETG系樹脂が1.58であった。
【0053】
準備した熱可塑性樹脂A,Bは、それぞれ、ベント付き二軸押出機にて290℃で溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、フィルムの厚膜層を除いた厚みの比(以下、積層比)がA層/B層=0.9になるように計量しながら、積層装置1にて合流させた。積層装置1の形成層は図1に示すが、A層とB層を交互に823層積層させ、両表面がA層となるように積層した。また本検討では1枚のスリットプレートにそれぞれ275層のスリットを有するプレートを3枚用いたが、各スリットプレート間での層乱れを抑制するために、A層同士を重ね合わせて1層を形成するため、合計で823層となる。またA層同士を重ね合わせて形成された層は、合計で5μmとなるように設計した。積層装置1のスリット間隙はA1:B1:A2:B2:A3:B3=1:7:1:1:7:1となるようにスリットをしているため、各実厚みの比は約0.9:7.7:0.9:1.1:6.3:1.1となる。積層装置1にて合流させた後、T−ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、キャストフィルムを得た。
【0054】
得られたキャストフィルムを、135℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に4.2倍延伸し、その後一旦冷却した。延伸時のフィルム温度は135℃であった。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に(ガラス転移温度が18℃のポリエステル樹脂)/(ガラス転移温度が82℃のポリエステル樹脂)/平均粒径100nmのシリカ粒子からなる塗液を塗布し、透明・易滑・易接着層を形成した。
【0055】
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、135℃の熱風で予熱後、140℃の温度で横方向に均一な延伸速度で4.0倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に3%の弛緩処理を施し、その後、室温まで徐冷後、巻き取った。得られた積層フィルムの厚みは72μmであった。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合は、連続的なユニット数は0であった。
【0056】
得られたフィルムは可視光線透過率が高く、透明なフィルムであった。ただし、反射のa*値とb*値の絶対値が高いため、わずかではあるがやや紫色に色付いたフィルムとなった。また近赤外領域では、850〜1700nm程度を反射しており、その平均反射率は高いめ、日射熱取得率は低かった。
【0057】
(実施例2)
厚膜層を除く積層比=0.79となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。各実厚みの比はおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=0.8:8.9:0.8:1.3:5.5:1.3となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
得られたフィルムは72μmで、反射・透過ともに色付きのないフィルムが得られた。また波長900〜1800nmまでの反射率増加したため、日射熱取得率は実施例1よりも低下し、遮熱性能が向上した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
厚膜層を除く積層比=0.68となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。各実厚みの比はおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=0.7:10:0.7:1.5:4.8:1.5となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
得られたフィルムは72μmで、反射、透過ともに色付きのないフィルムが得られた。また900〜1800nmまでの反射率は実施例2に比較して、低下したものの、可視光線反射率が増加したため、日射熱取得率が低下し、遮熱性能としては向上する結果となった。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
厚膜層を除く積層比=0.57となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。各実厚みの比はおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=0.57:12:0.57:1.75:4.0:1.7となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
得られたフィルムは70μmで、反射、透過ともに色付きのないフィルムが得られた。また900〜1800nmまでの反射率は実施例3に比較して、やや低下したものの、可視光線反射率の増加量が大きくなり、結果として日射熱取得率が大きく低下し、遮熱性能が向上した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
厚膜層を除く積層比=0.34となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。各実厚みの比はおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=0.34::20:0.34:2.9:2.38:2.9となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は0であった。
得られたフィルムは70μmで反射、透過ともにb値の絶対値が大きくなっており、青く色付いたフィルムとなった。また900〜1800nmまでの反射率は実施例4に比較して、低下したものの、可視光線反射率の増加量が大きい分、日射熱取得率が低下し、遮熱性能が向上した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例5)
厚膜層を除く積層比=1.0となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。各層の実厚みの比はおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=1:7::1:1:7:1となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は0であった。
得られたフィルムは72mで反射のb値が大きく、わずかではあるがやや青色に色付いたフィルムとなった。また900〜1800nmまでの反射率は大きかったが、可視光線反射率が低い分、日射熱取得率は大きかった。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例6)
厚膜層を除く積層比=1.4となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。得られたフィルムはおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=1.4:5:1.4:0.71:10.8:0.71となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
得られたフィルムは73μmで反射、透過ともに色付きのないフィルムが得られた。また900〜1800nmまでの反射率は実施例6に比較して低下したものの、可視光線反射率の増加量が大きい分、日射熱取得率が低下し、遮熱性能が向上した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例7)
厚膜層を除く積層比=1.7となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。得られたフィルムはおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=1.7:4.1:1.7:0.58:11.9:0.58となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
得られたフィルムは77μmで、反射、透過ともに色付きのないフィルムが得られた。また900〜1800nmまでの反射率は実施例7に比較して低下したものの、可視光線反射率の増加量が大きい分、日射熱取得率が低下し、遮熱性能が向上した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
厚膜層を除く積層比=1.8となるようA層とB層の流量を調整した以外は実施例1と同様の方法を用いて製膜した。得られたフィルムはおおよそA1:B1:A2:B2:A3:B3=1.8:3.8:1.8:0.55:11.9:0.55となる。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
得られたフィルムは77μmで反射、透過ともに色付きのないフィルムが得られた。また900〜1800nmまでの反射率は実施例7に比較して、低下したものの、可視光線反射率の増加量が大きい分、日射熱取得率が低下し、遮熱性能が向上した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
積層装置2を使用して製膜した以外は実施例1と同様の方法で製膜した。積層装置2はλ/4設計から構成される積層装置で、900〜1800nmまで反射するように設計された積層装置であり、全層数は225層である。層構成を図2に示す。
【0066】
得られた積層フィルムは900〜1800nmまでの反射率が高く、日射熱取得率も低いものの、400〜600nmまで干渉反射があり、青く色付いていた。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例4)
積層装置3を使用して製膜した以外は実施例1と同様の方法で製膜した。積層装置3は711構成から構成される積層装置だが、波長900〜1400nmまでを反射させるように設計された積層装置であり、層数は561層である。この装置に積層比0.68で樹脂を導入した際の層構成を図3に示す。得られた積層フィルムの層厚みを測定したところ、隣接する6層(隣接する6層を1ユニットとする)の層厚みの比(A1:B1:A2:B2:A3:B3、またはB1:A1:B2:A2:B3:A3)が、x:7/x:x:1/x:7x:1/xを満たすユニットは、xが0.3以上1.7以下である場合、最大で連続的に45ユニット、xが0.4以上0.8以下、もしくは1.1以上1.7以下である場合も、連続的なユニット数は45であった。
【0068】
得られた積層フィルムは900〜1400nmまでの反射率が高いため、900〜1800nmの平均反射率は50%を超えるが、均一に可視光反射率を上げることができないため、色付いたフィルムとなった。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例8)
熱可塑性樹脂Bとして、スピログリコールを21mol%、シクロヘキサンジカルボン酸を15mol%共重合したPETとポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製)を85:15の比率で混合した樹脂(表中、SPG系樹脂と示す。)を用いた以外は実施例4と同様にして行った。SPG系樹脂の屈折率は1.55であった。
【0070】
得られたフィルムは実施例4に比較して、屈折率差が拡大したため、全体の反射率が向上した結果、900〜1800nmの平均反射率が大きく増加した。また、樹脂の屈折率差が大きくなっただけなので、可視光反射率も均一に増加し、結果として日射熱取得率は大きく低下した。
【0071】
(比較例5)
熱可塑性樹脂A、B共にPENにした以外は実施例1と同様の方法で行った。これにより、擬似単膜を得ることができる。
続いて、ハードコート層を形成するための塗材として、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)と光開始剤(BASFジャパン製 IRGACURE(登録商標)184)を重量比99:1で混合させたものをMEK(メチルエチルケトン)で固形部濃度40%に調整した塗剤Aを得る。この塗剤Aと、セシウム酸化タングステン粒子Cs0.33WO3の固形分濃度18.5質量%のスラリーを重量比2:7の割合で混合してハードコート層形成用の塗剤Bとした。この塗剤をワイヤーバーコーターにて基材フィルムの片面にコーティングしたのち、熱風オーブンにて80℃で2分間乾燥させ、UV照射装置にて紫外線を300mJ/cm照射して塗膜を硬化させてハードコート層を形成し、積層フィルムを得た。得られたハードコート層の厚みは3.5μmであった。
その結果、日射熱取得率は大きく低下したものの、透過光のa*値、b*値が大きくなり、C*値が大きく増加することが分かった。吸収剤自体が可視光領域を吸収するため、緑色のフィルムとなった。
【0072】
(比較例6)
実施例1で得られたフィルムに比較例5で用いたハードコート層を形成した。
その結果、実施例1に比較して、日射熱取得率を大きく低減させることが出来た。ただし、透過光のa*値、b*値が増加し、透過光が緑色となるフィルムとなった。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の積層フィルムは、特に透明性に優れ、且つ広帯域に渡って、熱線反射することが可能なため、建材、自動車、液晶ディスプレイなど種々の用途に用いられ、特に特定の波長の光を反射させる光学フィルムとして利用できる。また、曲率の高いガラスへも貼り合わせることが出来る。
図1
図2
図3