【解決手段】履歴情報保存システムは、資産の履歴情報を記録する情報記録部102と、他の情報保存手段との間で保存された履歴情報を一致させる合意形成部103、が含まれる複数の情報保存手段101と、履歴情報の入出力操作を行う操作部105と、入出力時の履歴情報の制御を行う情報制御部106、が含まれる情報操作手段104を持つ。情報操作手段104から情報保存手段101に入力された履歴情報を、他の情報保存手段101との間で合意形成して一致させる。
【背景技術】
【0002】
土地、住宅やマンションなどの不動産や、車、貴重品などの動産を含む資産に関する履歴情報を管理するトレーサビリティ管理の必要性が増してきている。資産の製造や生産時の場所や部品などの情報、メンテナンスや清掃、交換に関する管理情報、所有者や流通経路などの履歴情報を一元的に管理することで、資産の経緯と現状を正確に把握することができ、資産価値の維持に役立つ。
【0003】
また資産の購入時も履歴情報が保存され、それを購入者が閲覧できれば、資産価値を不正に向上させるための細工や、購入者に見つけづらい欠陥や瑕疵を知ることができて、健全な取引に役立つため、購入者だけではなく正しい取引を望む売却者にとっても有益である。さらに、保険や担保を設定する際にも正確な資産価値の算出が可能になる。
【0004】
現在は、工場生産品や農作物などの物品に関するトレーサビリティ管理システムが提案されている。例えば、特許文献1では、製造業の製造工程における製品と部材の製品番号の関係を保持し、修理時には修理部材の製品番号に変更するトレーサビリティ管理システムが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
資産の履歴情報は、生産者から流通、メンテナンス、売買、金融と多数の組織や関係者が関係する情報のため、ある1組織に集中管理されたる特定のトレーサビリティ管理システムにすべての情報を集約することは困難であった。
【0007】
また、保存した履歴情報を後から削除や変更ができると、保存された履歴情報の正当性や信頼性が保証できないため、トレーサビリティ管理システムは保存した情報の削除や変更が不可能でなければならないが、通常のシステムでは特権を持つ管理者がおかれるため、管理者は情報の削除や変更が可能であるという問題があった。
【0008】
さらに、資産の履歴情報は、個人情報やプライバシー情報であることが多く、それぞれの履歴情報ごとに誰が書込みやや読み込みを行えるかの権限管理を行い、無関係の第三者が履歴情報を閲覧できないようにする必要がある。
【0009】
そこで本発明は、前記課題を考慮してなされたもので、それぞれの組織ごとに管理されたサーバー間で履歴情報の合意形成を行うことで、複数の組織での運用においても資産の履歴情報の信頼性を保つことのできる履歴情報保存装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、資産の履歴情報を保存する履歴情報保存装置において、前記履歴情報を保存する情報記録部と、他の情報保存手段と前記情報記録部に保存された履歴情報を一致させる合意形成部が含まれる情報保存手段と、前記履歴情報の入出力操作を行う操作部と、前記情報保存手段に前記操作部の入力された前記履歴情報を加工して書き込む、または、前記情報保存手段から前記履歴情報を読み出し加工して前記操作部に出力する操作部が含まれる情報操作手段を有することを特徴とする履歴情報保存装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、資産の履歴情報を保存する際に、システムの複数の組織での共同運用が可能で、複数の組織での運用においても資産の履歴情報の信頼性を保つことができる。また、資産の履歴情報の書き込み時に履歴情報を加工することで情報の暗号化を行ったり、読み込み時に読み込み権限を確認して履歴情報を読み出したり、その情報を復号化したりマスキングなどを行うことで、履歴情報の適切なアクセスコントロールが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の履歴情報保存システムについて、
図1から
図4に基づいて説明する。
【0013】
図1 に、本実施形態に係る履歴情報保存システムの構成例を示す。
【0014】
図1に示されるように、履歴情報保存システムは、1つ以上の情報保存手段101と1つ以上の情報操作手段104を持つ。情報保存手段101は、情報記録部102と合意形成部103を持ち、他の情報保存手段101と通信可能である。
情報操作手段104は、操作部105と情報制御部106を持ち、情報保存手段101の1つ以上と通信可能である。通信は通常インターネットがよく用いられるが、データの双方向通信ができれればいかなる通信手段でもよい。
【0015】
好ましくは、履歴情報のうち一部、または、全部の情報を蓄積する情報蓄積手段107を1つ以上持つようにしてもよい。情報蓄積手段107は、情報保存手段101の全部、もしくは、一部と通信可能である。また、好ましくは、情報保存手段101の全部、もしくは、一部に情報処理部108を持つようにしてもよい。
【0016】
以上の各部101〜108の機能は、ソフトウェアとして実現可能である。また、コンピュータに所定の手段を実行させるための( あるいはコンピュータを所定の手段として機能させるための、あるいはコンピュータに所定の機能を実現させるための) プログラムとして実施することもでき、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として実施することもできる。
【0017】
情報保存手段101は、情報操作手段104の操作に従い履歴情報を保存する。通常はクラウドやサーバー上のアプリケーションとして実現されるが、ソフトウェアや物理回路などいかなる形態でもよい。履歴情報は情報保存手段101内の情報記憶部102に保存される。これはデータベースやファイルストレージなど情報が長期にわたり記録保存できるハードウェアやソフトウェアであればいかなるものでもよい。履歴情報の保存に関しては事後に変更や削除ができないように、例えばブロックチェーンのような技術が使うこともできる。
【0018】
情報操作手段104から入力された履歴情報は、当該情報操作手段104に接続された1つ以上の情報保存手段101にのみ保存される。このため、当該情報操作手段104と接続されていない情報保存手段101には、合意形成部103同士が通信を行い、情報保存手段101同士で同じ履歴情報が保存されるようにする。合意形成部103にて合意がとられるまで当該履歴情報は消去できる形で保存される。
【0019】
合意形成部103は、他の情報保存手段101内の合意形成部103と、お互いに保存された履歴情報を通信し、その履歴情報が正しいものかどうか、また、他の履歴情報と矛盾しないかを確認しあい。問題ない履歴情報のみを承認し確定したものとして他の情報保存手段101に送信する。合意形成にはいかなる方式を用いてもよいが、様々なアルゴリズムが考案されており、例えばProof of Work、Proof of Stake、Practical Byzantine Fault Tolerance(PBFT)などがある。合意形成部103で承認されなかった履歴情報は、情報記録部102から消去される。
【0020】
合意形成部103で承認し確定した履歴情報は通常すべての情報保存手段101内の情報記憶部102に保存されるが、好ましくは一部の情報保存手段101内の情報記憶部102のみに記録するようにしてもよいし、履歴情報を分割して複数の情報保存手段101内の情報記憶部102に分散させて記録してもよい。この場合はすべての情報保存手段101から当該履歴情報にアクセスできるようにするため、履歴情報、履歴情報を分割した情報へのリンク情報をすべての情報保存手段101内の情報記憶部102に保存する。
【0021】
情報操作手段104は、ユーザーや他のシステムからの操作を受けて、情報保存手段101に履歴情報を入出力する。情報操作手段104は、1システム内に複数の種類が存在することが可能で、例えば履歴情報の保存のみを行う情報操作手段104や、履歴情報の読み出しのみを行う情報操作手段104や、履歴情報の読み出しも書き込みも行える情報操作手段104や、履歴情報の承認を行う情報操作手段104や、あらかじめ決められた手続きで自動的に履歴情報の入出力を行う情報操作手段104などが考えられる。また、同一の種類の情報操作手段104が複数個存在していてもよい。
【0022】
ユーザーや他のシステム、決められて手続きなどによる履歴情報の入出力操作は、操作部105にて入力もしくは出力される。操作部105は入出力操作を行う操作者に適したインタフェースを持つ。例えば人間のユーザーが操作する場合はコマンドインタフェースやGUIなどを持ち、他のシステムや機器からの操作はAPIや信号変換装置などを持つ。
【0023】
情報制御部106は、履歴情報の入出力時に履歴情報を加工し制御する。制御の条件はいかなるものでもよく、例えば、操作者、日時、場所、操作インタフェースの種類、履歴情報の種類やサイズなどを組み合わせることができる。どのような制御をするかについても任意であり、例えば、履歴情報の暗号化や復号化、ハッシュ化、マスク化、プログラムや手続きによる情報の変更、一部もしくは全部の削除、他の情報との結合などがある。
【0024】
情報蓄積部107は、情報保存手段101に保存するのに適さない履歴情報を蓄積する。情報蓄積部107にどのような種類の情報を保存するかは任意であり、都度ユーザーが決定することもできるし、情報のサイズが大きい履歴情報や、アクセス頻度が低い履歴情報など決められた条件に合致したものとしてもよい。
【0025】
情報処理部108は、情報記憶部102に履歴情報の代わりにプログラムが保存された場合に当該プログラムを実行処理する。プログラムは履歴情報と同様に、情報操作手段104にて入出力され、情報保存手段101内の情報記憶部102に保存される。情報処理部108にてプログラムを実行することにより、情報記憶部102や情報蓄積手段107に保存された情報の加工を行ったり、情報操作手段104への入出力を行うことができる。これにより、履歴情報の処理自動化が実現でき、いわゆるスマートコントラクトを実現することができる。
【0026】
図2に、情報記録部102のデータ構造の一例を示す。
【0027】
図2に示されるように、本データ構造は、履歴情報レコード201の列として構成され、一つの履歴情報レコード201は、レコードID202、記録者ID203、記録日時204、履歴情報206で構成される。好ましくは、一つの履歴情報レコード201に履歴情報種別205、付加情報207、承認情報208の一つ以上を持つようにしてもよい。
【0028】
レコードID202は、当該履歴情報レコードを一意に判別するための情報であり、履歴情報レコードを一意に判別できるような情報であれば、どのようなID体系でもよい。
【0029】
記録者ID203は、当該履歴情報レコードを保存したユーザーを一意に判別するための情報であり、ユーザーを一意に判別することができればどのようなものでもよい。また匿名化処理などがなされていてもよい。
【0030】
記録日時204は、当該履歴情報レコードを保存した時の日時情報であり、日時が特定できればどのようなものでもよい。
【0031】
履歴情報種別205は、当該履歴情報レコードの履歴情報206がどのような種類の情報かを判別するための情報である。履歴情報種別205を持つことによって、履歴情報206の中身を見ることなく情報の種類を判別することができる。履歴情報種別205は、どのような形式でもよい。
【0032】
履歴情報206は、保存された履歴情報であり、例えば資産の製造者、仕様、使用部品、流通情報、修理情報、メンテナンス情報、売買情報、保険や金融に関する情報など、さまざまな情報を保存することができる。また、プログラムを保存することもでき、当該プログラムを情報処理部108で実行処理することができる。また、履歴情報やプログラムの情報の全部、もしくは、一部が別の場所に保存されている場合は、その情報へのリンク情報を保存することもできる。
【0033】
付加情報207は、当該レコードに付帯する情報であり、例えば当該レコードの入出力操作履歴や、合意形成の進捗情報、プログラムの実行状況などを保存することができる。
【0034】
承認情報208は、当該レコードの履歴情報が正しいものであるかのプログラム、もしくは、ユーザーによる承認履歴に関する情報であり、承認可否、承認者、承認日時、承認可否コメントの少なくとも1つ以上を含む。承認可否、承認者、承認日時、承認可否コメントの形式はどのようなものでもよい。また、1つの履歴情報レコード201に承認情報208を複数持つこともできる。
【0035】
図3に、履歴情報の保存手順の一例を表したフローチャートを示す。
【0036】
履歴情報入力ステップS31は、操作部105にて履歴情報を入力するステップである。通常ユーザーの入力操作によって履歴情報を入力するが、他のシステムやセンサなどから機械的に履歴情報を入力してもよい。
【0037】
履歴情報制御ステップS32は、情報制御部106にて履歴情報を加工し制御するステップである。
【0038】
履歴情報レコード作成ステップS33は、履歴情報制御ステップS32にて加工し制御された履歴情報に情報を付与して、履歴情報レコード201を作成するステップである。作成された履歴情報レコード201は、情報記録部103に消去可能な形式で保存される。
【0039】
合意形成ステップS34は、合意形成部103の間で当該履歴情報レコード201が問題ないかを確認し、合意するステップである。
【0040】
合意形成ステップS34にて、当該履歴情報の合意が取れなかった場合は、履歴情報レコード消去ステップS35で、当該履歴情報レコード201を消去する。
【0041】
合意形成ステップS34にて、当該履歴情報の合意がとれた場合は、履歴情報レコード保存ステップS36で、当該履歴情報レコード201を、他の情報保存手段101に送信する。合意形成された履歴情報レコード201を受け取った情報保存手段101は、当該履歴情報レコード201を情報記録部102に保存する。履歴情報の全部、もしくは、一部を情報蓄積手段107に保存する場合は、履歴情報レコード保存ステップS36にて当該履歴情報の全部、もしくは、一部を情報蓄積手段107に保存する。
【0042】
図4に、履歴情報の読み出し手順の一例を表したフローチャートを示す。
【0043】
読み出し条件入力ステップS41は、操作部105にて読み出す履歴情報の条件を入力するステップである。通常ユーザーの入力操作によって条件を入力するが、あらかじめ決められた手続きによって条件を設定してもよい。好ましくは、情報処理部108で実行されたプログラムによって、読み出す履歴情報の条件を設定してもよい。
【0044】
履歴情報レコード読み出しステップS42は、読み出し条件入力ステップS41で入力された履歴情報の条件に従って、情報記録部102から履歴情報レコード201を読み出し、履歴情報を取り出すステップである。他の情報保存手段101もしくは情報蓄積手段107に保存されている情報へのリンク情報を含む場合は、リンク先の履歴情報も合わせて読み出す。
【0045】
履歴情報制御ステップS43は、情報制御部106にて読み出された履歴情報を加工し制御するステップである。
【0046】
履歴情報出力ステップS44は、履歴情報制御ステップS43にて加工し制御された履歴情報を、操作部105から出力するステップである。出力先はどのようなものでもよく、例えばディスプレイや他のシステムへの通信などがある。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において種々変形して実施することができる。
【0048】
すなわち、この発明の実施形態で例示した構成は一例であって、それ以外の構成を排除する趣旨のものではなく、例示した構成の一部を他のもので置き換えたり、例示した構成の一部を省いたり、例示した構成に別の機能あるいは要素を付加したり、それらを組み合わせたりすることなどによって得られる別の構成も可能である。
【0049】
また、例示した構成と論理的に等価な別の構成、例示した構成と論理的に等価な部分を含む別の構成、例示した構成の要部と論理的に等価な別の構成なども可能である。
【0050】
また、例示した構成と同一もしくは類似の目的を達成する別の構成、例示した構成と同一もしくは類似の効果を奏する別の構成なども可能である。
【0051】
また、この発明の実施形態で例示した各種構成部分についての各種バリエーションは、適宜組み合わせて実施することが可能である。また、この発明の実施形態は、個別装置としての発明、関連を持つ2 以上の装置についての発明、システム全体としての発明、個別装置内部の構成部分についての発明、またはそれらに対応する方法の発明等、種々の観点、段階、概念またはカテゴリに係る発明を包含・内在するものである。
【0052】
従って、この発明の実施形態に開示した内容からは、例示した構成に限定されることなく発明を抽出することができるものである。