【実施例】
【0011】
<構成>
図1は、移動両替システムの構成の一例を示す図である。本実施例の移動両替システムは、管理会社(本部)に設置され通貨取引のレート(管理会社で規定された手数料を含む。以下、換算レートとよぶ。)を管理する管理装置1と、管理装置1との通信により換算レートを表示可能な店舗車両である複数の移動両替装置2(図示の移動両替装置2−1,2−2,2−3,2−4,…に相当)が、インターネット等のネットワークを介して接続された構成をとり、たとえば、オペレータが移動両替装置2のディスプレイに表示された換算レートに基づき両替業務を行うものである。本実施例では、一例として、4台の店舗車両である移動両替装置2−1〜2−4が、観光地A,B,C,Dにそれぞれ配置され、この状態で両替業務を行っている場合を想定する。なお、本実施例では、一例として、観光地で両替業務を行う場合について記載したが、これに限らず、店舗車両を停車することができかつ営業可能な場所であればどのような場所で両替業務を行うこととしてもよい。
【0012】
図2は、本実施例の管理装置1として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図2において、管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される制御部11と、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の各種メモリを含む記憶部12と、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む入力部13と、印刷等の出力処理を行う出力部14と、ディスプレイである表示部15と、所定のネットワークを介して外部と通信を行う通信部16とを備える。なお、
図2では、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む入力部13を備えることとしたが、本実施例の管理装置1は、これに限らず、表示部15にタッチパネルの機能を持たせることによって、入力部13を設けない構成、または入力部13と併用する構成としてもよい。
【0013】
図2において、制御部11は、本実施例の移動両替システムにおける各種機能を実現するために、所定のプログラムを実行する。記憶部12は、ROM,RAM等の内部メモリを含み、本実施例の各種機能に対応した処理および各種入力情報や、処理の過程で得られたデータ等を記憶する。制御部11では、記憶部12に記憶されているプログラムを読み出すことにより本実施例の各種機能に対応する処理を実行する。なお、記憶部12は、内部メモリに限るものではなく、たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)やSDメモリ等の外部記憶媒体であってもよいし、また、内部メモリおよび外部記憶媒体(DVDやSDメモリ等)の両方で構成されることとしてもよい。また、本実施例の管理装置1のハードウェア構成は、説明の便宜上、本実施例の処理にかかわる構成を列挙したものであり、管理装置1を構成するコンピュータのすべての機能を表現したものではない。
【0014】
図3は、移動両替装置2の構成例を示す図である。
図3において、本実施例の移動両替装置2は、管理装置1との間で通信を行う通信部21と、通信により得られる換算レートを表示するためのディスプレイである表示部22と、両替の依頼者を認識して通貨取引を撮影するカメラ等を含む撮影部23と、を備える。通信部21は、インターネット等の通信回線を利用し、管理装置1との間で、換算レートに関する情報や、撮影部23により撮影された映像データ等の送受信を行う。さらに、通信部21は、GPS車載器を含み、GPSを利用して得られる店舗車両の位置情報を管理装置1に送信する。また、表示部22は、通信部21を介して本部から送られてくる換算レートを適宜更新し、常に最新の情報を表示するものであり、たとえば、パソコンやスマートフォン等の情報通信端末のディスプレイで構成されていてもよいし、車両に備え付けられた内臓ディスプレイで構成されていてもよい。また、表示部22は、たとえば、通信部21を介して本部から通知された換算レートを記載(書き写し)可能なボード状のもの、すなわち、ホワイトボードや掲示板等を含むこととしてもよい。
【0015】
<移動両替システムによる基本動作>
つづいて、上記のように構成される移動両替システムの実施例を具体的に説明する。なお、本実施例の移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4…)は、それぞれGPSを利用して得られた自装置の位置情報を、適宜、管理装置1に通知し、管理装置1は、受信したすべての位置情報を記憶部12に記憶すること、を前提とする。
【0016】
移動両替装置2として動作する店舗車両は、観光地,公共施設,駅前等、両替を希望するユーザ(たとえば、外国人観光客,外国人居住者等)が集まる場所に自由に移動可能であり、所定の場所に停車して両替専門の出張店舗として開店することにより両替業務をサポートするものである。この店舗では、オペレータが、移動両替装置2の表示部22に表示された換算レートに従い両替業務を行う。たとえば、観光地A内に店舗車両(
図1の移動両替装置2−1)を停車して両替業務を行う場合において、米ドル通貨を所有する外国人観光客から日本円への両替を依頼された場合、オペレータは、表示部22に表示された換算レートに基づいて、日本円の希望金額(紙幣等の内訳を含む)を米ドルに換算し、その金額を依頼者に提示して通貨取引を行う。
【0017】
また、本実施例においては、移動両替装置2が両替業務を行っている営業場所(営業場所を含む地域)ごとに異なる換算レートを適用する。たとえば、複数の移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4)がそれぞれ所定の観光地(たとえば、観光地A,B,C,D)に出張して両替業務を行う場合、本部の管理者は、管理装置1を操作して、観光地毎に異なる手数料を設定し、この手数料を換算レートに反映し、観光地毎の換算レートを記憶部12に記憶しておく。具体的には、管理装置1の制御部11が、管理者の入力操作(マウスおよびキーボード等の入力部13の操作)により設定された手数料に基づいて換算レートを計算し、その計算結果を、適宜、記憶部12に登録する。
図4は、記憶部12に記憶された換算レートDBの一例を示す図である。
図4では、たとえば、観光客等が多い観光地または観光客に人気のある観光地ほど高い手数料を設定した場合の、観光地ごとの換算レートが示されている。
【0018】
この場合、管理装置1の制御部11は、それぞれの観光地に停車した移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4)から得られる位置情報に基づいて営業場所を特定する。そして、たとえば、観光地Aで両替業務を行っている移動両替装置2−1(
図1参照)については観光地Aに対応付けて記憶されている換算レート等の情報(
図4の観光地名,通貨名,換算レート,指定可能紙幣等の情報)を記憶部12から読み出し、通信部16を介した通信により移動両替装置2−1と連携して、観光地Aに対応する換算レートを閲覧することが可能なページを生成するための画像処理、および生成したページを移動両替装置2−1の表示部22に表示させるための表示制御、を実行する。また、管理装置1の制御部11は、他の観光地(B,C,D)で両替業務を行っている移動両替装置2(2−2,2−3,2−4)についても上記と同様に、それぞれ対応する換算レート等の情報を記憶部12から読み出し、各移動両替装置2と連携して、それぞれの観光地に対応付けられた換算レートを、対応する移動両替装置2の表示部22に表示させる。
【0019】
一方、移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4)の表示部22は、通信部21を介した通信により管理装置1と連携して、営業中の観光地に対応付けられた換算レートを閲覧することが可能なページを生成するための画像処理、および生成したページを表示させるための表示制御、を実行する。
図5は、表示部22に表示された換算レートの一例を示す図である。
【0020】
なお、上記では、一例として観光地ごとに換算レートが異なる場合について説明したが、これに限らず、手数料については適宜設定可能であり、たとえば、本部からの移動距離に応じて手数料を加算することとしてもよい。
図6は、記憶部12に記憶された換算レートDBの一例を示す図であり、具体的には、本部からの移動距離が長いほど高い手数料を設定した場合の換算レートの一例が示されている。この場合、管理装置1の制御部11は、それぞれの移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4)から得られる位置情報に基づいて本部からの移動距離を計算し、たとえば、本部からの移動距離xが10km以内の移動両替装置2については「x<10km」に対応付けて記憶されている換算レート等の情報(
図6の移動距離,通貨名,換算レート,指定可能紙幣等の情報)を記憶部12から読み出す。そして、上記と同様の処理で、管理装置1と各移動両替装置2が相互に連携し、本部からの移動距離に対応付けられた換算レートが、各移動両替装置2の表示部22に表示される。
【0021】
また、上記では、一例として、法定通貨同士(円とドル,円とユーロ等)の両替を前提として説明を行ってきたが、これに限らず、本実施例においては、仮想通貨(ビットコイン,イーサリアム,リップル等)から法定通貨(円,ドル等)への両替も対応可能である。たとえば、換算レートして「1ビットコイン→270000円」等が表示部22に表示されている場合、オペレータは、表示部22に表示された換算レートに基づいて、受け取ったビットコインの量に応じた金額(日本円)を計算し、その金額を両替の依頼者に提示して通貨取引を行う。この際、両替の依頼者は、個人用ウォレット内のビットコインのうち、両替を希望する量のビットコインを、管理会社が管理する専用ウォレットに送り、オペレータは、受け取ったビットコインの量に応じた両替を行うことになる。
【0022】
<監視機能>
また、本実施例の移動両替装置2は、店頭に設置された監視カメラ(動画撮影用)を含む撮影部23を有することとし、たとえば、撮影部23が、内臓センサー(たとえば、人感センサー)により両替の依頼者(外国人観光客等)を認識して、依頼毎に通貨取引の状況を監視カメラで撮影し、その映像データ(撮影時刻等の情報を含む)を、通信部21を介して管理装置1に送信する。一方、管理装置1側では、制御部11が、通信部16経由で受信した通貨取引の映像データを画像処理して表示部15に表示させる。これにより、管理者による通貨取引の監視が可能となる。また、制御部11は、受信した映像データを送信元の移動両替装置2および撮影時刻等と関連付けて、映像情報DBとして一定期間にわたり記憶部12に登録する。
図7は、記憶部12に登録された映像情報DBの一例を示す図である。その後、制御部11は、登録後一定期間が経過した時点で、または一定期間経過後に管理者により削除操作が行われた場合に、登録された映像情報を記憶部12から削除する。
【0023】
<偽札鑑定支援機能>
さらに、移動両替装置2の撮影部23には、上記監視カメラの他に、たとえば、静止画像を撮影可能なカメラ(静止画撮影用カメラ)を備えることも可能である。この静止画撮影用カメラは、オペレータの手元付近でかつ依頼者から見えない位置に設置されることが望ましい。本実施例においては、上述した通貨取引の最中、または通貨取引の後に、移動両替装置2を用いて業務を行うオペレータが、両替の依頼者から受け取った紙幣にブラックライトを照射し、ブラックライトが照射された紙幣を、静止画撮影用カメラを操作して撮影することを可能とする。
【0024】
この場合、本実施例の移動両替装置2は、撮影部23が、上記のように通貨取引の状況(動画)を撮影するとともに、さらに、両替の依頼者から受け取った紙幣(ブラックライトが照射された紙幣)の静止画を撮影し、それらの映像データ(動画および静止画)を関連付けて、通信部21を介して管理装置1に送信する。一方、管理装置1側では、制御部11が、通信部16経由で受信した通貨取引の映像データ(動画)を画像処理して表示部15に表示させるとともに、ブラックライトが照射された紙幣の映像データ(静止画)についても画像処理して表示部15に表示させる。これにより、管理者による通貨取引の監視が可能となると同時に、管理者側による偽札の鑑定も可能となる。すなわち、通貨取引に使用された紙幣が偽札かどうかを、取引現場に行くことなく、管理装置1のディスプレイに表示された静止画に基づいて判断することが可能となる。また、鑑定の結果、使用された紙幣が偽札であると判断した場合には、紙幣の映像データ(静止画)に関連付けられた通貨取引の映像データ(動画)に基づいて、その偽札を使用した依頼者を特定することも可能である。
【0025】
また、制御部11は、受信した映像データ(動画および静止画)を送信元の移動両替装置2および動画の撮影時刻等と関連付けて、映像情報DBとして一定期間にわたり記憶部12に登録する。
図8は、記憶部12に登録された映像情報DBの一例を示す図である。ここでは、映像データに関する情報に加え、鑑定結果(偽札または真札)が記憶されている。その後、制御部11は、登録後一定期間が経過した時点で、または一定期間経過後に管理者により削除操作が行われた場合に、登録された映像情報を記憶部12から削除する。
【0026】
<情報共有機能>
また、上記偽札鑑定支援機能により管理装置1側で偽札が使用されたものと判断された場合、すなわち、
図8に示す映像情報DBの鑑定結果欄に「偽札」情報が登録された場合、管理装置1の制御部11は、鑑定結果欄に登録された「偽札」情報に関連付けられた映像データ(偽札が取引されたときの動画等)を記憶部12から読み出し、この映像データを、偽札が使用されたことを示す偽札情報メールに添付して、通信部16を介してすべての移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4…)に送信する。また、地元の警察署との間で所定の通信手段(インターネット,専用回線等)が構築されている場合には、制御部11の制御により、偽札が取引された旨を、そのときの映像情報(動画,静止画,位置情報、撮影時刻等を含む)とともに、警察に通知することも可能である。一方、管理装置1から偽札情報メールを受信した移動両替装置2では、オペレータの操作によって表示部22において画像処理が行われることにより、偽札情報メールの内容を表示可能であり、さらに、偽札が使用されたときの映像を再生させることも可能である。これにより、すべての移動両替装置2のオペレータが偽札使用の事実を共有することができる。
【0027】
<位置検索機能>
また、上述したように、本実施例の移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4…)は、それぞれGPSを利用して得られた自装置の位置情報を管理装置1に通知している。本実施例では、位置情報を受信した管理装置1が、すべての移動両替装置2の位置情報を記憶部12に登録し、たとえば、専用の位置検索アプリがインストールされたスマートフォン、タブレット端末、およびパソコン等の情報通信端末3を使用するユーザに、移動両替装置2の位置検索サービスを提供する。
図9は、位置検索サービスを提供する場合のシステム構成を示す図である。
【0028】
たとえば、情報通信端末3を所有するユーザが位置検索アプリを起動し、このアプリのトップページが表示された状態において、ユーザ操作により「店舗検索」を指示するためのアイコンがタップされた場合、情報通信端末3は、通信機能を利用してその旨を管理装置1に通知する。そして、この通知を受けた管理装置1の制御部11は、通信部16を介した情報通信端末3との通信により情報通信端末3と連携して、地図上に店舗(たとえば、両替が可能な周辺の店舗)の位置が示された新たなページを生成する画像処理、および生成したページを情報通信端末3のディスプレイに表示させるための表示制御、を実行する。
図10は、位置検索結果の一例を示す図であり、図示の丸数字1〜4が移動両替装置2の位置を示している。これにより、本実施例では、たとえば、外国人観光客が、専用の位置検索アプリを利用して、移動両替装置2の位置を検索することが可能となる。
【0029】
また、図示の移動両替装置2の位置(丸数字1〜4)をタップする操作により、たとえば、情報通信端末3と管理装置1の制御部11が通信により連携し、タップされた位置に対応する換算レート(
図4または
図6参照)を制御部11が記憶部12から読み出し、この換算レートを情報通信端末3のディスプレイに表示可能な構成(表示画面は、たとえば、
図5参照)とすることとしてもよい。これにより、本実施例では、周辺の移動両替装置2の位置を知ることができるとともに、さらに、周辺の移動両替装置2における換算レートを確認することができるため、たとえば、近さを優先する場合(両替を急ぐ場合)や、換算率を優先する場合(特に両替を急いでいない場合)等、ユーザの現在の状況に応じて選択肢をひろげることができる。
【0030】
なお、上記では、一例として、両替が可能な周辺の店舗を地図上に配置および表示する場合を示したが、提供可能な位置検索サービスはこれに限るものではなく、たとえば、手数料の安い店舗の検索、住所を指定した周辺店舗検索、等も可能である。
【0031】
このように、本実施例の移動両替システムは、管理会社で規定する手数料に基づいて通貨取引のレートである換算レートを計算し、当該換算レートを管理する管理装置1と、両替の営業場所を移動可能な店舗車両として動作し、管理装置1と連携して画像処理を行うことによってディスプレイに換算レートを表示する複数の移動両替装置2(2−1,2−2,2−3,2−4…)と、を備える構成とした。これにより、周辺に両替可能な店舗がない観光地等、所望の場所で両替業務を行うことが可能となる。