特開2018-206652(P2018-206652A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧
<>
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000004
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000005
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000006
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000007
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000008
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000009
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000010
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000011
  • 特開2018206652-鉛蓄電池用電極格子 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-206652(P2018-206652A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用電極格子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/73 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   H01M4/73 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-112083(P2017-112083)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】國澤 剛志
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017BB02
5H017CC05
5H017EE02
5H017HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上下方向の高さが大きい電極板に格子を用いて十分な寿命を確保できる、鉛蓄電池用格子の提供。
【解決手段】枠骨110と網目状の内骨120とを有する鉛蓄電池用電極格子100Aであり、枠骨は、耳と連続する上部要素111と下部要素112と一対の側部要素113,114とを具備し、内骨は上部要素から下部要素に向かって延びる縦骨121と、一方の側部要素から他方の側部要素に向かって延びる横骨122とを具備し、枠骨で囲まれた領域Rが膨張緩和領域Rxを含み、膨張緩和領域で、縦骨は連続的で、横骨は非連続的で、枠骨の第1方向の高さHと、枠骨の第2方向にのる幅WとがH≧Wを満たし、領域を、高さの中間で、上部要素側の領域Rabと下部要素側の領域Rudとに2分割するとき、領域における膨張緩和領域の面積が、領域の面積の80%以下に制限され、領域において、縦骨の50%以上が、高さHの50%以上の長さを有する電極格子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠骨と、前記枠骨に設けられた耳と、前記枠骨の内側の網目状の内骨と、を有し、
前記枠骨は、前記耳と連続する上部要素と、前記上部要素と対向する下部要素と、前記上部要素と前記下部要素とを連結する一対の側部要素と、を具備し、
前記内骨は、前記上部要素から前記下部要素に向かう第1方向に延びる縦骨と、一方の前記側部要素から他方の前記側部要素に向かう第2方向に延びる横骨と、を具備し、かつ前記枠骨で囲まれた領域Rが膨張緩和領域Rxを含み、
前記膨張緩和領域Rxにおいて、前記縦骨は、連続的であり、前記横骨は、非連続的であり、
前記枠骨の前記第1方向における高さHと、前記枠骨の前記第2方向における幅Wとが、H≧Wを満たし、
前記領域Rを、前記高さHの中間において、前記上部要素側の領域Rabと前記下部要素側の領域Rudとに2分割するとき、前記領域Rabにおける前記膨張緩和領域Rxの面積が、前記領域Rabの面積の80%以下に制限されており、
前記領域Rにおいて、前記縦骨の50%以上が、前記高さHの50%以上の長さを有する、鉛蓄電池用電極格子。
【請求項2】
前記領域Rabにおける前記膨張緩和領域Rxの面積が、前記領域Rabの面積の3%以上を占めている、請求項1に記載の鉛蓄電池用電極格子。
【請求項3】
前記耳が、前記上部要素の前記一方の側部要素寄りに設けられており、
前記膨張緩和領域Rxが、前記領域Rabの前記他方の側部要素寄りに設けられている、請求項1または2に記載の鉛蓄電池用電極格子。
【請求項4】
前記領域Rの50%以上において、前記縦骨と前記横骨とで形成される網目の前記第1方向の長さL1と前記第2方向の長さL2とが、L1≧L2を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用電極格子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用電極格子に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、正極板と負極板とが交互に積層された極板群を具備する。電極板は、クラッド式とペースト式に大別される。ペースト式の電極板は、格子と、格子に保持された電極材料とで構成されている。
【0003】
格子の腐食が進行すると、格子が伸びて、様々な不都合を生じることがある。そこで、特許文献1は、アンチモンを使用しない鉛−カルシウム系合金を用いた正極格子の伸びを抑制するために、格子のます目の単位縦桟長あるいは単位横桟長の約2分の1の点に、次のます目の横桟あるいは縦桟を交わらせることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−84770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大型の産業用電池では、上下方向の高さが相当に大きい電極板が用いられることがある。このような電極板に特許文献1が提案するような格子を用いると、十分な寿命を確保することが困難となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、枠骨と、前記枠骨に設けられた耳と、前記枠骨の内側の網目状の内骨と、を有し、前記枠骨は、前記耳と連続する上部要素と、前記上部要素と対向する下部要素と、前記上部要素と前記下部要素とを連結する一対の側部要素と、を具備し、前記内骨は、前記上部要素から前記下部要素に向かう第1方向に延びる縦骨と、一方の前記側部要素から他方の前記側部要素に向かう第2方向に延びる横骨と、を具備し、かつ前記枠骨で囲まれた領域Rが膨張緩和領域Rxを含み、前記膨張緩和領域Rxにおいて、前記縦骨は、連続的であり、前記横骨は、非連続的であり、前記枠骨の前記第1方向における高さHと、前記枠骨の前記第2方向における幅Wとが、H≧Wを満たし、前記領域Rを、前記高さHの中間において、前記上部要素側の領域Rabと前記下部要素側の領域Rudとに2分割するとき、前記領域Rabにおける前記膨張緩和領域Rxの面積が、前記領域Rabの面積の80%以下に制限されており、前記領域Rにおいて、前記縦骨の50%以上が、前記高さHの50%以上の長さを有する、鉛蓄電池用電極格子に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、格子の伸びが抑制されるとともに、鉛蓄電池の寿命特性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池用電極格子の外観を示す平面図である。
図2】本発明の別の実施形態に係る鉛蓄電池用電極格子の外観を示す平面図である。
図3】本発明の別の実施形態に係る鉛蓄電池用電極格子の外観を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した状態を模式的に示す斜視図である。
図5A図4の鉛蓄電池の正面図である。
図5B図5Aの鉛蓄電池のB−B線による矢示断面図である。
図6】比較例1に係る正極格子の外観を示す平面図である。
図7】比較例2に係る正極格子の外観を示す平面図である。
図8】比較例3に係る正極格子の外観を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様は、枠骨と、枠骨に設けられた耳と、枠骨の内側の網目状の内骨とを有する。枠骨は、耳と連続する上部(耳側)要素と、上部要素と対向する下部(足側)要素と、上部要素と下部要素とを連結する一対の側部要素とを具備する。内骨は、上部要素から下部要素に向かう第1方向に延びる縦骨と、一方の側部要素から他方の側部要素に向かう第2方向に延びる横骨とを具備する。
【0010】
枠骨で囲まれた領域Rは、膨張緩和領域Rxを含む。膨張緩和領域Rxにおいて、縦骨は、連続的であり、横骨は、非連続的である。枠骨の第1方向における高さHと、枠骨の第2方向における幅Wとは、H≧Wを満たし、H>Wを満たすことが好ましい。領域Rを、高さHの中間において、上部要素側の領域Rabと下部要素側の領域Rudとに2分割するとき、領域Rabにおける膨張緩和領域Rxの面積(すなわち領域Rabと領域Rxとの重複面積)は、領域Rabの面積の80%以下に制限されている。
【0011】
ここで、膨張緩和領域Rxとは、連続的な縦骨と、格子升目の2つ分以下の長さを有する非連続的な横骨とで構成される領域である。以下、格子升目の2つ分以下の長さを有する非連続的な横骨を、線分状要素と称する。すなわち線分状要素は、隣接する一対の縦骨の間隔(または縦骨と側部要素との間隔)と同じ長さ、または、その約2倍の長さを有する。ただし、膨張緩和領域Rxの面積を、例えば2分割または3分割するように、連続的な横骨で膨張緩和領域Rxを補強することは妨げられない。
【0012】
膨張緩和領域Rxは、格子の各骨の伸びにより生じる応力集中を防ぐ役割を有する。応力集中を防ぐためには、機械的強度を相応に低減することが必要である。したがって、非連続な横骨は、連続的な縦骨の両側に交互に接続していることが好ましい。すなわち、連続的な縦骨のうち1つの升目を構成する部位には同じ側に連続して2つ以上の横骨との接続部分を有さないことが好ましい。
【0013】
枠骨で囲まれた領域Rでは、連続的な縦骨の割合が大きいほど好ましい。縦骨が非連続的であると、第1方向における電子伝導経路が複雑化し、IRドロップが顕著に増加して寿命が低下するためである。よって、縦骨の50%以上は、高さHの50%以上の長さを有することが必要であり、縦骨の80%以上が高さHの80%以上の長さを有することが好ましい。また、領域R内の縦骨は100%連続的で、全ての縦骨が高さHとほぼ同じ長さであることがより好ましい。
【0014】
縦骨が連続的とは、縦骨が複数の横骨を縦断するように第1方向に直線状または曲線状に延びていることをいう。直線状とは、略直線状もしくは実質的もしくは一般的な意味において直線状であればよく、縦骨が横骨(枠骨を除く)との分岐点において途切れることなく連続的にほとんど方向を変えずに延びている状態であればよい。また、曲線状とは、大きく屈曲する曲線ではなく、第1方向に向かうベクトルが第2方向に向かうベクトルよりも大きくなるように、縦骨が緩やかな曲線もしくは折れ曲がりを形成している状態をいう。一方、横骨が非連続的とは、横骨が、線分状要素で構成されていることと同義である。
【0015】
H≧Wを満たす格子は、足側に比べて耳側に電流分布が偏る傾向にあるため、耳側の格子部分の腐食が顕著になる。腐食による膨張応力は、耳からの押圧力を受けない幅方向(第2方向)に強く作用するため、格子が第2方向に大きく伸びる傾向がある。これに対し、格子に膨張緩和領域Rxを設けることで、格子の第2方向への伸びが顕著に抑制される。
【0016】
格子の第2方向への伸びが抑制されることで、電極板がセパレータからはみ出すことによる短絡が抑制され、格子と電極材料との密着性も維持されるため、膨張緩和領域Rxが大きいほど、鉛蓄電池の長寿命化に有利であると考えられる。しかし、実際には、膨張緩和領域Rxの面積を制限しなければ、かえって寿命性能が低下する。これは、非連続的な横骨によって電子伝導経路が複雑化し、IRドロップが増加するため、電極板全体の電流分布がより不均一になるためと考えられる。十分な寿命を確保するためには、領域Rabにおける膨張緩和領域Rxの面積を、領域Rabの面積の80%以下に制限する必要がある。これにより幅方向の電子伝導経路の複雑化が抑制され、寿命性能が低下しにくくなる。
【0017】
鉛蓄電池を更に長寿命化する観点からは、領域Rabにおける膨張緩和領域Rxの面積は、領域Rabの面積の60%以下に制限することが好ましく、30%以下に制限することがより好ましい。このように膨張緩和領域Rxを制限することにより、寿命性能の低下が抑制されるだけでなく、膨張緩和領域Rxを設けない場合に比べて、寿命性能が向上する。
【0018】
なお、領域Rudにおける膨張緩和領域Rxの面積は、格子の伸びにはほとんど影響を与えない。ただし、電極全体が均一に充放電反応に寄与する場合には、領域Rudにも膨張緩和領域Rxを設けることが好ましい。このとき、IRドロップをより小さくする観点から、領域Rudにおける膨張緩和領域Rxの面積を、領域Rudの面積の50%以下、更には30%以下もしくは15%以下に制限してもよい。
【0019】
鋳造により得られる格子(以下、鋳造格子と称する。)を用いた場合は、領域Rabに膨張緩和領域Rxを設けるとともに、その面積を上記のように制限することで、格子の伸びが顕著に抑制され、かつ寿命性能も顕著に向上する。これは、膨張緩和領域Rxの面積を制限することで、電子伝導経路の複雑化が抑制されるだけでなく、湯流れの悪化が低減され、腐食の起点となる鋳巣の発生が抑制されるためと考えられる。また、これらの作用が相まって、腐食の進行も抑制されるものと考えられる。
【0020】
鋳造格子は、例えば、大型の産業用電池で多用されている。大型の産業用電池では厚い格子が必要である。厚い格子は、打ち抜き加工またはエキスパンド加工で形成することが困難であるため、通常、鋳造格子が用いられる。
【0021】
格子の伸びを十分に抑制するとともに、良好な寿命性能を得る観点から、領域Rabにおける膨張緩和領域Rxの面積は、領域Rabの面積の3%以上を占めることが好ましく、5%以上を占めることがより好ましく、8%以上を占めることが更に好ましい。ただし、領域Rabにおける膨張緩和領域Rxの面積が、領域Rabの面積の3%より小さくても、相応の効果を得ることができる。
【0022】
耳が上部要素の一方の側部要素寄りに設けられている場合、膨張緩和領域Rxは、少なくとも領域Rabの他方の側部要素寄りに設けられていることが好ましい。耳が上部要素の一方の側部要素寄りに設けられている場合、領域Rabの他方の側部要素寄りは、最も伸びを生じやすい領域である。最も伸びを生じやすい領域には、小さい膨張緩和領域Rxを設けるだけでも、格子の伸びを抑制する効果は顕著になる。膨張緩和領域Rxが小さいほど、電子伝導経路の複雑化を抑制できるとともに、鋳造格子においては湯流れが良好になる。
【0023】
耳が上部要素の一方の側部要素寄りに設けられている場合、領域Rabの当該一方の側部要素寄りは、耳から第1方向の圧力を受けているため、領域Rabの他方の側部要素寄りが延びやすい。よって、領域Rを幅Wの中央において、耳側である一方の側部要素側の領域RAと他方の側部要素側の領域RBとに2分割するとき、膨張緩和領域Rxは、領域RAよりも領域RBにおいて大きな面積を占めていることが好ましい。このとき領域RAは、膨張緩和領域Rxを有さなくてもよい。
【0024】
なお、耳が上部要素の中央に跨るように設けられている場合には、耳直下に応力が集中し、応力が領域Rの両サイドに作用するため、両サイドが伸びやすくなる。よって、膨張緩和領域Rxを両サイド(上記領域RAおよびRBに対応)に形成することが好ましい。このとき膨張緩和領域Rxを領域Rの幅Wにおける中央領域と重複しないように形成してもよい。
【0025】
縦骨と横骨とで形成される網目の少なくとも一部は、第1方向の長さL1と第2方向の長さL2とが、L1≧L2を満たすことが好ましく、L1>L2を満たすことがより好ましい。L2がL1より小さくなるほど、横骨が伸びる場合でも伸びの影響が分散され、幅方向におけるトータルの伸び量が低減されやすい。格子の全領域の50%以上、更には80%以上において、網目がL1≧L2を満たすことが好ましく、L1>L2を満たすことがより好ましい。また、膨張緩和領域Rxの80%以上、更には90%以上において、網目がL1≧L2を満たすことがより好ましく、L1>L2を満たすことが更に好ましい。い。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、一実施形態に係る格子100Aの外観を示す平面図である。図2および図3は、格子100Aの変形例である格子100Bおよび格子100Cであり、膨張緩和領域Rxの面積が格子100Aよりも大きい場合を示している。
【0027】
図1〜3に示す格子100A〜100Cは、それぞれ枠骨110と、枠骨110の内側の網目状の内骨120と、枠骨110に設けられた耳130とを有する。枠骨110は、耳130と連続する上部要素111と、上部要素111と対向する下部要素112と、上部要素111と下部要素112とを連結する一対の側部要素113、114とを具備する。枠骨110で囲まれた領域Rにおいて、内骨120は、上部要素111から下部要素112に向かう第1方向(図中、矢印Xが示す方向)に延びる縦骨121と、一方の側部要素113から他方の側部要素114に向かう第2方向(図中、矢印Yが示す方向)に延びる横骨122とを具備するとともに膨張緩和領域Rx123を含む。
【0028】
膨張緩和領域Rx123において、縦骨121は、連続的であり、複数の横骨122を縦断するように第1方向に直線状に延びている。すなわち、縦骨121は、横骨122との分岐点において途切れることなく延びている。
【0029】
一方、膨張緩和領域Rx123において、横骨122は、非連続的であり、横骨122は、隣接する一対の縦骨121間(または側部要素とこれに隣接する縦骨との間)に介在する複数の線分状要素122Aで構成されている。すなわち、非連続な横骨122は、格子の升目1つ分の長さを有し、千鳥状もしくはジグザグに第2方向に沿って配された複数の線分状要素122Aの集合である。
【0030】
縦骨および横骨は、縦骨と横骨との区別が明確であればよく、縦骨同士および横骨同士が、互いに平行でも非平行でもよく、ラジアル状に配置されてもよい。縦骨は、膨張緩和領域Rx以外においては、部分的に非連続でもよく、例えば、枠骨の上部要素や下部要素付近において一部が非連続でもよい。
【0031】
枠骨110の第1方向Xにおける高さHと、枠骨110の第2方向Yにおける幅Wとは、H≧Wを満たす。ただし、格子100Aの高さHは、耳130を除く高さであり、上部要素111の耳130を有さない部分の上端から下部要素112の下端までの距離である。また、幅Wは、一方の側部要素113の外端と他方の側部要素114の外端とを結ぶ距離である。
【0032】
H/W比が大きくなるほど(縦長になるほど)、格子中での電流分布に偏りが生じやすく、特にH/W比が1.5以上の場合には電流が集中しやすい耳付近の腐食が顕著になる傾向がある。よって、膨張応力を緩和する必要性が大きく、膨張緩和領域Rx123を設ける効果が顕著に表れる。
【0033】
H/W比が大きい場合、そのような格子を具備する電極板を収容する電槽では、テーパーによる上部と下部の幅の差が大きくなる。格子の上部が第2方向に伸びると、セパレータの出しろ(極板からのはみ出し部分)を超えてしまい、逆極性の極板と接触し、短絡を生じ得る。よって、H/W比が大きいほど、第2方向における伸びを抑制する必要性が高い。
【0034】
膨張緩和領域Rx123は、両端が途切れている線分状要素122Aを有する部分であればよい。このとき、膨張緩和領域Rx123の面積は、膨張緩和領域Rx123とそれ以外の領域との境界に相当する連続的な縦骨121Xと連続的な横骨122Yとを含む矩形で囲まれた面積である。
【0035】
枠骨110で囲まれた領域Rを、高さHの中間において、上部要素111側の領域Rabと下部要素112側の領域Rudとに2分割するとき、領域Rabにおける膨張緩和領域Rx123の面積は、領域Rabの面積の80%以下に制限されている。領域Rabの面積に占める膨張緩和領域Rx123の面積が80%を超えると、第2方向Yにおける電子伝導経路が複雑になり過ぎるため、電流分布の偏りが更に大きくなり、局所的な腐食が進行しやすくなるため、寿命性能が低下する。
【0036】
図1の格子100Aでは、領域Rabにおける膨張緩和領域Rx123の面積の割合は、領域Rabの面積の10%である。一方、図2の格子100Bおよび図3の格子100Cでは、領域Rabにおける膨張緩和領域Rx123の面積の割合は、それぞれ領域Rabの面積の30%および60%である。
【0037】
なお、領域Rudにおける膨張緩和領域Rxの面積は、特に制限されず、膨張緩和領域Rxがなくてもよい。特にH/W比が1.5以上の場合には、耳側に電極反応が偏る傾向があるため、領域Rudにおける膨張緩和領域Rxの有無はほとんど影響しない。ただし、電極全体が均一に充放電反応に寄与する場合には、領域Rudにも膨張緩和領域Rxを設けることが好ましい。
【0038】
耳130は、上部要素111の一方の側部要素113寄りに設けられている。図1の格子100Aおよび図2の格子100Bでは、膨張緩和領域Rx123は、領域Rabのできるだけ他方の側部要素114寄りの一部に設けられ、領域RAには、膨張緩和領域Rx123は設けられていない。図3の格子100Cでは、領域Rabと領域RBの重複領域全体と、領域Rabと領域RAとの重複領域のできるだけ他方の側部要素114寄りの一部に設けられている。すなわち、領域Rabと領域RAとの重複領域において、一方の側部要素113寄りには、膨張緩和領域Rx123は設けられていない。これにより、格子の第2方向への伸びの抑制効果と鉛蓄電池の長寿命化とを確保しつつ、格子の耳130の直下での構造的破損も抑制されやすくなる。
【0039】
図1〜3からは明らかではないが、縦骨と横骨とで形成される網目のほとんど(少なくとも領域Rの50%以上)において、第1方向の長さL1と第2方向の長さL2とが、L1≧L2を満たすことが好ましく、L1>L2を満たすことがより好ましい。また、膨張緩和領域Rxのほとんど(少なくとも80%以上)において、L1≧L2を満たすことが好ましく、L1>L2を満たすことがより好ましい。L1>L2を満たす網目において、L1/L2比は1.1以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。ただし、L1/L2比は1.8以下とすることが、第2方向の電子伝導経路を十分に確保する観点から好ましい。
【0040】
電極板の厚さ方向における枠骨110の厚さTは、特に限定されず、鋳造格子の場合、例えば2〜7mmである。内骨120の断面積Sも、特に限定されないが、例えば1〜20mm2である。
【0041】
網目一つあたりの面積が大きいほど、格子の膨張を抑制する効果は大きくなるが、電子伝導経路が少なくなる。格子の太さ、形状等に応じて、両者のバランスを考慮して、網目一つあたりの面積(L1×L2)を制御すればよい。
【0042】
図4は、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した一例を模式的に示す斜視図である。図5Aは、図1の鉛蓄電池の正面図であり、図5Bは、図5AのB−B線による矢示断面図である。
【0043】
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液12とを収容する電槽10を具備する。極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。
【0044】
複数の負極板2のそれぞれの上部には、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。複数の正極板3のそれぞれの上部にも、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。そして、負極板2の耳部同士は負極用ストラップ5aにより連結され一体化されている。同様に、正極板3の耳部同士も正極用ストラップ5bにより連結されて一体化されている。負極用ストラップ5aの上部には負極柱6aの下端部が固定され、正極用ストラップ5bの上部には正極柱6bの下端部が固定されている。
【0045】
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、負極格子(集電体)と、負極電極材料とで構成されている。大型の鉛蓄電池用の負極格子は、既に述べたように、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成される。
【0046】
格子に用いる鉛合金としては、Pb−Sb系合金、Pb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金などが好ましく用いられる。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなど含んでもよい。負極格子は、組成の異なる複数の鉛合金層を有してもよい。
【0047】
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を必須成分として含み、有機防縮剤、炭素質材料、硫酸バリウムなどの添加剤を含み得る。充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
【0048】
有機防縮剤は、リグニンもしくはリグニン誘導体を用いてもよく、合成有機防縮剤を用いてもよい。合成有機防縮剤は、硫黄元素を含む有機高分子であり、一般に、分子内に複数の芳香環を含むとともに、硫黄含有基として硫黄元素を含んでいる。硫黄含有基の中では、安定形態であるスルホン酸基もしくはスルホニル基が好ましい。スルホン酸基は、酸型で存在してもよく、Na塩のように塩型で存在してもよい。
【0049】
負極板は、負極格子に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成工程では、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
【0050】
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
【0051】
(正極板)
鉛蓄電池の正極板は、正極格子(集電体)と、正極電極材料とを具備する。正極格子は、負極格子と同様に形成すればよく、大型の鉛蓄電池用の正極格子は、鉛または鉛合金の鋳造により形成される。
【0052】
正極格子に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb−Ca系合金またはPb−Ca−Sn系合金が好ましい。正極格子は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は複数でもよい。
【0053】
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。
【0054】
未化成の正極板は、正極格子に正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。その後、未化成の正極板を化成する。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、硫酸などを練合することで調製される。
【0055】
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、必要に応じてゲル化させてもよい。化成後で満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば1.10〜1.35g/cm3であり、1.20〜1.35g/cm3であることが好ましい。
【0056】
(セパレータ)
負極板と正極板との間には、通常、セパレータが配置される。セパレータには、不織布、微多孔膜などが用いられる。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。例えば、セパレータの60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維、パルプ繊維などを用いることができる。不織布は、繊維以外の成分、例えば耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーなどを含んでもよい。微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤(ポリマー粉末、オイルなど)を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。微多孔膜は、ポリマー成分を主体とするものが好ましい。ポリマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0057】
鉛蓄電池は、液式電池(ベント型電池)でもよく、制御弁式電池(VRLA型)でもよい。ただし、膨張緩和領域Rxによる格子の伸びの抑制と寿命特性の向上は、電極が厚み方向に圧迫される制御弁式電池において特に顕著となる。電極が厚み方向に圧迫されると、格子の腐食および電極材料の膨張収縮による応力が電極の面方向のみで緩和され、厚み方向では緩和されにくいためである。
【0058】
以下、本発明の実施形態について実施例および比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
《実施例1》
(1)正極板の作製
Pb−Ca−Sn系合金を鋳造して、図1に示す構造を有する格子100Aを作製した。次に、鉛粉を含む正極ペーストを調製し、格子Aに正極ペーストを充填し、熟成乾燥し、未化成の正極板を作製した。格子の緒元は下記の通りである。
【0060】
枠骨の厚さT:4mm
内骨の断面積S:2.5mm2
高さH:200mm
幅W:120mm
H/W:1.67
L1:15mm
L2:12mm
L1/L2:1.25
Rに占めるRxの割合:5%
Rabに占めるRxの割合:10%
【0061】
(2)負極板の作製
Pb−Ca−Sn系合金を鋳造して、図6に示す構造を有する格子100Rを作製した。次に、鉛粉、水、希硫酸、硫酸バリウム、カーボンブラックおよび有機防縮剤を混合して、負極ペーストを調製した。格子Rに負極ペーストを充填し、熟成乾燥し、未化成の負極板を得た。
【0062】
(3)鉛蓄電池の作製
未化成の負極板を、ガラスマットセパレータおよび正極板と積層し、未化成の負極板4枚と未化成の正極板3枚とで極板群を形成した。
【0063】
極板群をポリプロピレン製の電槽に電解液とともに収容して、電槽内で化成を施し、2V、定格10時間率容量が50Ahである制御弁式の鉛蓄電池とした。
【0064】
[評価]
75℃で定電流(0.1CA)による過充電試験を5日間行い、その後、2日間休止させる操作を4週間繰り返した。1週間毎に0.1CAで、以下の容量試験を実施し、下記(a)〜(c)の項目について評価を行った。結果を表1に示す。なお、本明細書中、1CAとは電池の公称容量(Ah)と同じ数値の電流値(A)である。例えば、公称容量が30Ahの電池であれば、1CAは30Aであり、1mCAは30mAである。
【0065】
<容量試験>
定電流(0.1CA)で1.7V/セルまで放電し、その後、定電流(0.2C)で放電量の90%まで充電し、更に、定電流(0.05C)で放電量の45%(トータルで放電量の135%)まで充電した。
【0066】
(a)格子の伸び
4週間の過充電試験を行った後、電池を解体し、格子の枠骨の第2方向(幅方向)へ最も膨らんでいる部分の寸法を各電池で測定し、初期寸法と比較して伸び率を求めた。伸び率は、後述の比較例1の正極板の格子Rを基準(100%)とし、相対値で求めた。
【0067】
(b)鋳巣
正極板の格子の膨張緩和領域を平面方向にスライスし、鋳巣の数を目視で計測した。鋳巣の数が最も少なかったものを100とし、以下の4段階で評価した。
◎:100以上110未満の場合
○:110以上140未満の場合
△:140以上170未満の場合
×:170以上200未満の場合
【0068】
(c)寿命
1週間毎に行った容量試験において容量が定格容量の70%以下になった時点を寿命と判断し、以下の3段階で評価した。
◎:4週間以上の場合
○:3週間以上4週間未満の場合
△:2週間以上3週間未満の場合
×:2週間未満の場合
【0069】
【表1】
【0070】
《実施例2》
格子Aと同じPb−Ca−Sn系合金を鋳造して、図2に示す構造を有する格子100B(Rに占めるRxの割合:15%、Rabに占めるRxの割合:30%)を作製し、これを用いたこと以外、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製し、評価した。
【0071】
《実施例3》
格子Aと同じPb−Ca−Sn系合金を鋳造して、図3に示す構造を有する格子100C(Rに占めるRxの割合:30%、Rabに占めるRxの割合:60%)を作製し、これを用いたこと以外、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製し、評価した。
【0072】
《比較例1》
格子Aと同じPb−Ca−Sn系合金を鋳造して、負極格子と同じく図6に示す構造を有する格子100R(Rに占めるRxの割合:0%)を作製し、これを正極格子として用いたこと以外、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製し、評価した。
【0073】
《比較例2》
格子Aと同じPb−Ca−Sn系合金を鋳造して、図7に示す構造を有する格子100D(Rに占めるRxの割合:50%、Rabに占めるRxの割合:100%)を作製し、これを用いたこと以外、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製し、評価した。
【0074】
《比較例3》
格子Aと同じPb−Ca−Sn系合金を鋳造して、図8に示す構造を有する格子100E(Rに占めるRxの割合:50%、Rabに占めるRxの割合:100%)を作製し、これを用いたこと以外、実施例1と同様に鉛蓄電池を作製し、評価した。
【0075】
表1より、領域Rに膨張緩和領域Rxを設けることで格子の伸びが顕著に抑制されることや、その効果は、膨張緩和領域Rxが領域Rabの10%でも十分に発現されることが理解できる。また、適度な大きさの膨張緩和領域Rxを設けることで、寿命特性が顕著に向上することがわかる。一方、鋳巣を低減し、寿命特性を向上させる観点からは、膨張緩和領域Rxを領域Rabの全体に形成せず、膨張緩和領域Rxを部分的に設けることが必要であることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る鉛蓄電池用電極格子は、制御弁式および液式の鉛蓄電池に適用可能であり、自動車、バイクなどの始動用電源や、電動車両(フォークリフトなど)などの産業用蓄電装置などの電源として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1:鉛蓄電池、2:負極板、3:正極板、4:セパレータ、5a:負極用ストラップ、5b:正極用ストラップ、6a:負極柱、6b:正極柱、10:電槽、11:極板群、12:電解液、100A,100B,100C,100D,100E,100R:格子、110:枠骨、111:上部要素、112:下部要素、113,114 側部要素、120:内骨、121:縦骨、121X:連続的な縦骨、122:横骨、122Y:連続的な横骨、130:耳
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8