特開2018-20669(P2018-20669A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-20669(P2018-20669A)
(43)【公開日】2018年2月8日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20180112BHJP
【FI】
   B60C11/03 C
   B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-152998(P2016-152998)
(22)【出願日】2016年8月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
(57)【要約】
【課題】ウォーミングアップ性能及び操縦安定性能を共に向上させる。
【解決手段】トレッド部1を、タイヤ幅方向中央部のセンター領域2と、センター領域2の両側のショルダー領域3とに区画する。センター領域2に、タイヤ周方向に延びる複数の主溝4によって形成されるリブ7を備える。ショルダー領域3に、車両前進時のタイヤ回転方向とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する複数の傾斜溝10,15と、傾斜溝10,15によって囲まれたショルダーブロック18とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を、タイヤ幅方向中央部のセンター領域と、前記センター領域の両側のショルダー領域とに区画し、
前記センター領域に、タイヤ周方向に延びる複数の主溝によって形成されるリブを備え、
前記ショルダー領域に、車両前進時のタイヤ回転方向とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する複数の傾斜溝と、前記傾斜溝によって囲まれたショルダーブロックとを備えていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センター領域の主溝と、前記ショルダー領域の傾斜溝とは独立して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダーブロックは、前記センター領域側からタイヤ回転方向とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダーブロックを区画する傾斜溝のうち、タイヤ幅方向の最内側又は最外側の少なくともいずれか一方に位置する傾斜溝を他の傾斜溝よりも幅狭としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、タイヤ赤道線の近傍からタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ回転方向とは反対側へ傾斜して延在する複数本の傾斜主溝を備えたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また他の空気入りタイヤとして、主溝に連通してタイヤ幅方向外側に逆向きで傾斜して延びる横溝と、主溝に連通せずに反タイヤ回転方向側に隣接する横溝の1本と交差してタイヤ幅方向外側にタイヤ接地端まで延びる屈曲状の副溝とを所定のピッチで交互に配置したものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、前記いずれの空気入りタイヤであっても、走行開始段階で、トレッド部を早期に温度上昇させるためのウォーミングアップ性能については考慮されていない。また、ウォーミングアップ性能を向上させた場合の操縦安定性能についての考察もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−181000号公報
【特許文献2】特開2002−87023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウォーミングアップ性能及び操縦安定性能を共に向上させることができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
トレッド部を、タイヤ幅方向中央部のセンター領域と、前記センター領域の両側のショルダー領域とに区画し、
前記センター領域に、タイヤ周方向に延びる複数の主溝によって形成されるリブを備え、
前記ショルダー領域に、車両前進時のタイヤ回転方向とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する複数の傾斜溝と、前記傾斜溝によって囲まれたショルダーブロックとを備えていることを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0008】
この構成により、接地した際、ショルダー領域では、ショルダーブロックが変形しやすいため、発熱が促進されることになりウォーミングアップ性能を向上させることができる。また、センター領域では、リブが形成されているため、所望の剛性を維持することができ、操縦安定性能に優れている。
【0009】
前記センター領域の主溝と、前記ショルダー領域の傾斜溝とは独立して形成されているのが好ましい。
【0010】
この構成により、ショルダー領域での剛性を高めることができ、コーナリング性能を向上させることが可能となる。
【0011】
前記ショルダーブロックは、前記センター領域側からタイヤ回転方向とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜しているのが好ましい。
【0012】
この構成により、ショルダーブロックでの発熱を、センター領域側、あるいは、ショルダー領域のタイヤ幅方向外側へと伝達しやすくなり、トレッド部の全体での発熱を均一で効果的なものとできる。
【0013】
前記ショルダーブロックを区画する傾斜溝のうち、タイヤ幅方向の最内側又は最外側の少なくともいずれか一方に位置する傾斜溝を他の傾斜溝よりも幅狭とするのが好ましい。
【0014】
この構成により、ショルダーブロックのタイヤ幅方向の内側又は外側の角部での接地に伴う変形を隣接する陸部で支持することにより、ショルダーブロックの剛性の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ショルダー領域に形成したショルダーブロックにより、接地時の変形を容易として早期に温度を上昇させやすくすることができ、ウォーミングアップ性能を向上させることが可能となる。また、センター領域に形成したリブにより、接地時の剛性を維持することができ、操縦安定性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るタイヤのトレッド部の一部を示す展開図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図1のセンターリブに形成したサイプの簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部1の一部を示す展開図である。図示しないが、この空気入りタイヤは、一対のビードコア間にカーカスを掛け渡し、カーカスの中間部の外周側に巻き付けたベルトによって補強し、そのタイヤ外径方向にトレッド部1を有する構成となっている。
【0019】
トレッド部1は、タイヤ幅方向(図1中、矢印W方向で示す。)の中央部に位置するセンター領域2と、その両側に位置するショルダー領域3とに区分される。ここでは、トレッド部1に、20℃におけるJIS−A硬度が40〜70のゴム材料が使用されている。このゴム材料は、レース用ウェットタイヤ、インターメディエイトタイヤに使用されるものである。なお、以下に記載する各溝寸法については、レース用インターメディエイトタイヤでの値である。
【0020】
センター領域2には、タイヤ周方向(図1中、上下方向)に延びる3本の主溝4(センター主溝5及びその両側のサイド主溝6)により2列でセンターリブ7(図1中、左側の第1リブ8と、右側の第2リブ9)が形成されている。ここでは、センター主溝5の深さを4.0mm、開口幅を12.4mm、垂直面に対する側面の傾斜角度を25°としている。また、サイド主溝6の深さを5.0mm、開口幅を12mm、垂直面に対する側面の傾斜角度を25°としている。
【0021】
ショルダー領域3には、タイヤ回転方向(図1中、矢印Rで示す。)とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜する主横溝10が形成されている。図2に示すように、主横溝10は、サイド主溝6から徐々に離れるようにタイヤ周方向に向かう第1傾斜溝部11(図2中、ハッチングで示す。)を有する。第1傾斜溝部11に続く第2傾斜溝部12(図2中、2線ハッチングで示す。)は、第1傾斜溝部11から徐々に幅広となると共に、サイド主溝6からさらに離れるようにタイヤ周方向に対する傾斜角度が大きくなっている。第2傾斜溝部12の終端部分からは、大きく湾曲してさらに幅広となった第1横溝部13(図2中、3線ハッチングで示す。)が接地面の両側端である接地端を超えてタイヤ幅方向外側へと延びている。また、第2傾斜溝部12の終端部分から第1傾斜溝部11よりも幅狭となって第2横溝部14(図2中、クロスハッチングで示す。)がさらに斜めに延びている。主横溝10は、タイヤ周方向に一定周期で配置されている。タイヤ周方向に隣接する主横溝10間では、一方の第1傾斜溝部11及び第2傾斜溝部12の前半部と、他方の第2傾斜溝部12の後半部分及び第2横溝部14とがタイヤ幅方向から見てオーバーラップするように配置されている。ここでは、第1傾斜溝部11の深さを2.5mm、開口幅を3.2mm、垂直面に対する側面の傾斜角度を10°としている。また、第2傾斜溝部12の深さを5.0mm、開口幅を6.3〜9.6mm、垂直面に対する側面の傾斜角度を20°としている。また、第1横溝部13の深さを4.0mm、開口幅を10.9mm、垂直面に対する側面の傾斜角度を20°としている。また、第2横溝部14の深さを2.5mm、開口幅を2.0mm、垂直面に対する側面の傾斜角度を0°としている。
【0022】
このように、主横溝10は、サイド主溝6の近傍からタイヤ回転方向とは逆方向に向かってタイヤ幅方向外側に斜めに延びている。したがって、ウェット路面を走行する際、主横溝10内に侵入した水はスムーズに流動する。しかも、主横溝10は接地端を超えて延びているので、優れた排水機能を発揮する。
【0023】
第1傾斜溝部11の一端側(サイド主溝側)からタイヤ幅方向外側に向かって副横溝15が延びている。副横溝15は、タイヤ周方向に一定周期で配置されている。そして、副横溝15は、タイヤ周方向に隣接する他の主横溝10の第2傾斜溝部12に交差し、第2横溝部14と合流した後、接地端を超えてタイヤ幅方向外側へと延びている。なお、副横溝15は、主横溝10に比べて接地端からのタイヤ幅方向外側への突出寸法が小さく、幅寸法も小さくなっている。
【0024】
主横溝10の第1傾斜溝部11及び第2傾斜溝部12と、副横溝15の一部とでタイヤ周方向にジグザグ状に連続する補助主溝16を形成している。そして、センター領域2の主溝4とショルダー領域3の横溝とは交差しておらず、サイド主溝6と補助主溝16とによってタイヤ周方向に連続するショルダーリブ17が形成されている。これにより、センター領域2及びこれに沿ったショルダー領域3の一部の剛性が高められている。
【0025】
タイヤ周方向に隣接する一方の主横溝10の第1傾斜溝部11及び第2傾斜溝部12の前半部と、他方の主横溝10の第2傾斜溝部12の後半部分及び第2横溝部14と、タイヤ周方向に隣接する一対の副横溝15とがそれぞれ傾斜溝を構成している。そして、これら傾斜溝によって第1ショルダーブロック18が区画されている。このため、第1ショルダーブロック18は、タイヤ周方向(タイヤ回転方向Rとは逆方向)に向かってタイヤ幅方向に傾斜している。
【0026】
主横溝10の第2傾斜溝部12の後半部、第1横溝部13、及び、副横溝15によって第2ショルダーブロック19が形成されている。タイヤ幅方向から見ると、1つの第1ショルダーブロック18に対して2つの第2ショルダーブロック19が対応して設けられている。つまり、タイヤ幅方向外側に向かってショルダーブロックを細分化することにより、その剛性を弱め、ショルダー領域3での接地性が向上するようにしている。
【0027】
センターリブ7、ショルダーリブ17、第1ショルダーブロック18、及び、第2ショルダーブロック19が本発明の陸部を構成している。これら陸部には、複数のサイプ20がそれぞれ形成されている。
【0028】
図2に示すように、センターリブ7(第1リブ8及び第2リブ9)に形成されるセンターサイプ21は、各主溝4から斜めに延びており、タイヤ周方向に所定間隔で形成されている。第1リブ8に形成されるセンターサイプ21は、中心線からタイヤ幅方向外側に向かってタイヤ回転方向とは逆方向(図1中、上方)へと傾斜している。ここでは、センターサイプ21のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を約20°としている。サイプ20は、一端(第1端)がセンター主溝5に連通し、他端(第2端)が第1リブ8内で終端する第1サイプ22と、一端(第1端)がサイド主溝6に連通し、他端(第2端)が第1リブ8内で終端する第2サイプ23とで構成されている。第1サイプ22と第2サイプ23とは、タイヤ周方向に交互に形成されている。
【0029】
各サイプ20には、両端部を除く部分、すなわち、第2端から少し離れた位置に波形部24が形成されている。波形部24は、三角形を左右交互に突出させた1周期で構成されている。波形部24は、センターリブ7(第1リブ8又は第2リブ9)のほぼ中央部に位置している。図3に示すように、各サイプ20では、波形部24が他の部分よりも深くなっている(図3では、波形部24の断面形状は簡略化して表示している。)。但し、サイプ20の両端部(波形部24が形成されていない部分)の深さは、主溝4、主横溝10又は副横溝15の深さの60%以下とされている。ここでは、主溝4の深さに対して60%以下、すなわち3.0mm以下としている。但し、後述する各サイプのように、連通する溝深さに応じて1.5mm〜3.0mm以下の範囲で変更することができる。
【0030】
ショルダーリブ17に形成される第1ショルダーサイプ25は、サイド主溝6と補助主溝16とを連通するように形成されている。第1ショルダーサイプ25は、第1リブ8又は第2リブ9に形成したセンターサイプ21に対し、タイヤ周方向の対応する位置に設けられ、タイヤ幅方向の傾斜が反対側となっている。波形部24は、前記センターリブ7に形成したものと同様であり、ショルダーリブ17のタイヤ幅方向の中央部に形成され、サイプ20の両端部よりも深くなっている。
【0031】
各第1ショルダーブロック18に形成される第2ショルダーサイプ26は、主横溝10の第1傾斜溝部11及び第2傾斜溝部12の前半部と、隣接する主横溝10の第2傾斜溝部12の後半部及び第2横溝部14とを連通するように形成されている。第2ショルダーサイプ26は、第1ショルダーブロック18毎に、この第1ショルダーブロック18をタイヤ周方向にほぼ4等分するように3本ずつ形成されている。また、第2ショルダーサイプ26は、ショルダーリブ17に形成した第1ショルダーサイプ25に対し、タイヤ周方向にずれており、隣接する第1ショルダーサイプ25の間に位置している。さらに、第2ショルダーサイプ26は、タイヤ幅方向に対して前記第1ショルダーサイプ25とは反対側に傾斜している。なお、波形部24は、前記センターリブ7や前記ショルダーリブ17に形成したものと同様であり、第1ショルダーブロック18のタイヤ幅方向の中央部に形成され、サイプ20の両端部よりも深く形成されている。
【0032】
各第2ショルダーブロック19に形成される第3ショルダーサイプ27は、第2ショルダーブロック19をタイヤ周方向に3等分するように形成され、第2ショルダーサイプ26とほぼ同じ方向に延びている。第3ショルダーサイプ27の一端は主横溝10の第2傾斜溝部12の後半部又は第2横溝部14に連通している。第3ショルダーサイプ27の他端は、接地端を超えて延び、第2ショルダーブロック19の途中で終端している。なお、波形部24は、前記センターリブ7、前記ショルダーリブ17、あるいは、前記第1ショルダーブロック18に形成したものと同様であり、第2傾斜溝部12の後半部と接地端との中央位置に形成され、サイプ20の両端部よりも深く形成されている。
【0033】
タイヤ周方向に隣り合うサイプ20と主溝又は横溝によって囲まれた小ブロックBでは、タイヤ周方向成分(縦)hとタイヤ幅方向成分(横)wの比(縦横比)h/wは、次のように設定されている。
【0034】
センター領域2では、センターリブ7の途中で終端するセンターサイプ21について、センター主溝5又はサイド主溝6まで延長する仮想線(図2中、2点鎖線で示す。)を想定し、得られた平行四辺形で構成される領域を小ブロックB1(図2中、ドットハッチングで示す。)としている。小ブロックB1では、センターサイプ21(仮想線を含む)のタイヤ幅方向成分をw1a,w2aとし、センター主溝5及びサイド主溝6との境界部分のタイヤ周方向成分をh1a,h2aとしたとき、縦横比Ceを、A/B(A=(w1a+w2a)/2,B=(h1a+h2a)/2)とする。ここでは、この縦横比Ceは、1.2以上、1.6以下の範囲としている。これにより、路面走行時の前後方向のトラクション性能(制動性能)を向上できる。
【0035】
ショルダー領域3のショルダーリブ17では、タイヤ周方向に隣り合う第1ショルダーサイプ25、サイド主溝6及び補助主溝16で囲まれた領域を小ブロックB2(図2中、ドットハッチングで示す。)としている。小ブロックB2では、各第1ショルダーサイプ25のタイヤ幅方向成分をw1b,w2bとし、サイド主溝6及び補助主溝16との境界部分のタイヤ周方向成分をh1b,h2bとしたとき、縦横比Sh1をA/B(A=(w1b+w2b)/2,B=(h1b+h2b)/2)としている。ここでは、ショルダーリブ17の小ブロックB2での縦横比Sh1は、1.0以上、1.2以下の範囲としている。但し、第1ショルダーサイプ25の縦横比Sh1は1.0に近い方が、ショルダーリブ17をタイヤ周方向及びタイヤ幅方向のいずれへも均等に変形させることができる点で好ましい。
【0036】
ショルダー領域3の第1ショルダーブロック18では、タイヤ周方向に隣り合う第2ショルダーサイプ26と、タイヤ周方向両側の副横溝15とによって囲まれた領域を小ブロックB3(図2中、ドットハッチングで示す。)としている。小ブロックB3では、各第2ショルダーサイプ26のタイヤ幅方向成分をw1c,w2cとし、主横溝10(第1傾斜溝部11及び第2傾斜溝部12の前半部)と主横溝10(第2傾斜溝部12の後半部及び第2横溝部14)との境界部分のタイヤ周方向成分をh1c,h2cとしたとき、縦横比Sh2をA/B(A=(w1c+w2c)/2,B=(h1c+h2c)/2)としている。ここでは、第1ショルダーブロック18での縦横比Sh2は、0.8以上、1.0以下の範囲としている。これによれば、第1ショルダーブロック18でのタイヤ幅方向への剛性を高めてコーナリング性能を向上させることができる。
【0037】
ショルダー領域3の第2ショルダーブロック19では、タイヤ周方向に隣り合う第3ショルダーサイプ27と主横溝10(第2傾斜溝部12の後半部)又は第2横溝部14と、接地端とで囲まれた領域を小ブロックB4(図2中、ドットハッチングで示す。)としている。小ブロックB4では、各第3ショルダーサイプ27のタイヤ幅方向成分をw1d,w2dとし、第2傾斜溝部12の後半部又は第2横溝部14の境界部分と、接地端とでのタイヤ周方向成分をh1d,h2dとしたとき、縦横比Sh3をA/B(A=(w1d+w2d)/2,B=(h1d+h2d)/2)としている。ここでは、第2ショルダーブロック19での縦横比Sh3は、0.4以上、0.8以下の範囲としている。これによれば、第2ショルダーブロック19でのタイヤ幅方向への剛性を高めてコーナリング性能を向上させることができる。
【0038】
なお、前記各縦横比Ce,Sh1,Sh2,Sh3は、Ce>Sh1>Sh2>Sh3を満足させる必要がある。
【0039】
このように、陸部に少なくとも一端側が主溝4又は主横溝10(副横溝15)に連通する複数のサイプ20を形成したタイヤによれば、路面走行時に変形しやすく走行開始直後から発熱しやすい。つまり、ウォーミングアップ性能を向上できる。また、レース用タイヤであるので、発熱することで、操縦安定性能も向上する。
【0040】
波形部24によって陸部の剛性が高められているので、サイプ20を形成しているにも拘わらず、操縦安定性が損なわれることがない。
【0041】
波形部24によって接地時のエッジ長さを長くすることができるため、路面との接触量が増えて放熱させやすくなり、ウォーミングアップ後に必要以上に温度上昇することがない。また、陸部の中央部分で水膜を切断しやすくなり、ウェット性能を高めることができる。
【0042】
サイプ20は、中央部が深くなっているため、陸部での接地圧力分布を均一なものとして均一な発熱を行わせることができる。
【0043】
特に、センター領域2では、サイプ20を一端でのみ主溝4に連通させ、他端はセンターリブ7内で終端するようにしており、その終端位置側に波形部24も形成しているので、センターリブ7の剛性を維持することができる。しかも、隣接するリブに形成するサイプ20の傾斜方向を反対側とすることで変形の偏りを防止することができる。
【0044】
また、第1ショルダーブロック18を傾斜溝によって囲まれた独立した構造としているので、路面に接地した際に変形しやすく、従って発熱性に優れており、良好なウォーミングアップ性能を発揮する。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
前記実施形態では、サイプ20に形成する波形部24を三角形を左右交互に突出させた1周期で構成したが、三角形に限らず、サイン波形、矩形等、種々の形状を採用することができる。また、1周期に限らず、0.5周期、1.5周期、2周期の波形とすることも可能である。波形部24を2周期以下の波形とすることで、深い部分の長さを制限し、剛性が低下し過ぎず、陸部に所望の剛性を維持させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…トレッド部
2…センター領域
3…ショルダー領域
4…主溝
5…センター主溝
6…サイド主溝
7…センターリブ
8…第1リブ
9…第2リブ
10…主横溝
11…第1傾斜溝部
12…第2傾斜溝部
13…第1横溝部
14…第2横溝部
15…副横溝
16…補助主溝
17…ショルダーリブ
18…第1ショルダーブロック
19…第2ショルダーブロック
20…サイプ
21…センターサイプ
22…第1サイプ
23…第2サイプ
24…波形部
25…第1ショルダーサイプ
26…第2ショルダーサイプ
27…第3ショルダーサイプ
図1
図2
図3