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  • 特開2018206856-積層構造体及びスピン変調素子 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-206856(P2018-206856A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】積層構造体及びスピン変調素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20181130BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   H01L29/82 Z
   H01L43/08 Z
   H01L27/105 447
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-108300(P2017-108300)
(22)【出願日】2017年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
(72)【発明者】
【氏名】中田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】米村 祥吾
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA17
4M119BB01
4M119BB03
4M119CC05
4M119CC09
4M119DD17
4M119KK14
5F092AA15
5F092AB06
5F092AC08
5F092AC12
5F092AC30
5F092AD23
5F092AD24
5F092AD25
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB24
5F092BB31
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB37
5F092BB42
5F092BB43
5F092BB44
5F092BD01
5F092BD03
5F092BD05
5F092BD14
5F092BD23
5F092BE11
5F092BE12
5F092BE27
(57)【要約】
【課題】電界により強磁性体のスピン分極率を安定的に変調できる積層構造体及びスピン変調素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様にかかる積層構造体は、強磁性層と、前記強磁性層の一面に設けられたマルチフェロイック層と、前記マルチフェロイック層の前記強磁性層と反対側に設けられ、前記マルチフェロイック層の誘電率より大きい誘電率を有する強誘電体層と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性層と、
前記強磁性層の一面に設けられたマルチフェロイック層と、
前記マルチフェロイック層の前記強磁性層と反対側に設けられ、前記マルチフェロイック層の誘電率より大きい誘電率を有する強誘電体層と、を備える、積層構造体。
【請求項2】
前記マルチフェロイック層の厚みと前記強誘電体層の厚みの合計が10nm以上1000nm以下である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記マルチフェロイック層の厚みが5nm以上500nm以下である、請求項1又は2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記強誘電体層の厚みが5nm以上500nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記強誘電体層の比誘電率が10以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記強誘電体層は、LaSr1−xMnO(0≦x≦1)、BaSr1−xTiO(0≦x≦1)またはPbZrTi1−x(0≦x≦1)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記強磁性層がハーフメタルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項8】
前記強磁性層はXYZの組成式で表記されるホイスラー合金を含み、
前記組成式中のXは周期表上でCo、Fe、Ni、Cu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、Cr、Ti族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項9】
前記マルチフェロイック層はBiFeO、BiMnO、GaFeO、AlFeO、(Ga,Al)FeO、YMnO、CuFeO、Cr、NiBi13I、LiMnPO、YFe12、TbPO、LiCoPOからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層構造体と、
前記積層構造体の前記強磁性層に順に積層された非磁性層及び第2強磁性層と、を備える、スピン変調素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体及びスピン変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体が有するスピンを利用した素子は、様々な用途で用いられている。例えば、強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子等の磁気抵抗効果素子が知られている。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド、磁気記録媒体及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)等に利用されている。
【0003】
磁気抵抗効果素子は、二つの強磁性層の磁化の向きの違いに伴う抵抗値変化を出力する。二つの強磁性層の磁化の向きが平行の状態を“0”とし、二つの強磁性層の磁化の向きが反平行の状態を“1”とすることで、磁気抵抗効果素子は2値のデータを出力できる。
【0004】
一方で、近年のデータの高容量化に伴い、データをより高密度に集積することが求められている。その一つの手段として、データを2値以上の多値で記録できる素子の開発が進められている。例えば、特許文献1及び2には、電界を利用して強磁性層のスピン分極率を変調することで、データを多値で記録できる素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−63024号公報
【特許文献2】特開2016−63062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の素子は、充分な電界を誘電分極により生じさせることができない場合があり、データを多値で安定的に記録することができない場合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電界により強磁性体のスピン分極率を充分に変調できる積層構造体及びスピン変調素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)第1の態様にかかる積層構造体は、強磁性層と、前記強磁性層の一面に設けられたマルチフェロイック層と、前記マルチフェロイック層の前記強磁性層と反対側に設けられ、前記マルチフェロイック層の誘電率より大きい誘電率を有する強誘電体層と、を備える。
【0010】
(2)上記態様にかかる積層構造体において、前記マルチフェロイック層の厚みと前記強誘電体層の厚みの合計が10nm以上1000nm以下であってもよい。
【0011】
(3)上記態様にかかる積層構造体において、前記マルチフェロイック層の厚みが5nm以上500nm以下であってもよい。
【0012】
(4)上記態様にかかる積層構造体において、前記強誘電体層の厚みが5nm以上500nm以下であってもよい。
【0013】
(5)上記態様にかかる積層構造体において、比誘電率が10以上であってもよい。
【0014】
(6)上記態様にかかる積層構造体において、前記強誘電体層は、LaSr1−xMnO(0≦x≦1)、BaSr1−xTiO(0≦x≦1)またはPbZrTi1−x(0≦x≦1)でもよい。
【0015】
(7)上記態様にかかる積層構造体において、前記強磁性層がハーフメタルであってもよい。
【0016】
(8)上記態様にかかる積層構造体において、前記強磁性層はXYZの組成式で表記されるホイスラー合金を含み、前記組成式中のXは周期表上でCo、Fe、Ni、Cu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、Cr、Ti族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素であってもよい。
【0017】
(9)上記態様にかかる積層構造体において、前記マルチフェロイック層はBiFeO、BiMnO、GaFeO、AlFeO、(Ga,Al)FeO、YMnO、CuFeO、Cr、NiBi13I、LiMnPO、YFe12、TbPO、LiCoPOからなる群から選択されるいずれかを含んでもよい。
【0018】
(10)第2の態様にかかるスピン変調素子は、上記態様にかかる積層構造体と、前記強磁性層に順に積層された非磁性層及び第2強磁性層と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
上記態様にかかる積層構造体及びスピン変調素子は、電界により強磁性体のスピン分極率を充分に変調できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態にかかるスピン変調素子を模式的に示した図である。
図2】スピン変調素子の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0022】
(スピン変調素子)
図1は、本実施形態にかかるスピン変調素子を模式的に示した図である。図1に示すスピン変調素子100は、積層構造体10と非磁性層20と第2強磁性層30とを備える。
【0023】
「積層構造体」
積層構造体10は、強磁性層1とマルチフェロイック層2と強誘電体層3とを備える。図1では、積層構造体10をスピン変調素子100の構成の一部として図示しているが、積層構造体10のみでもAMR(磁気異方性)センサ等として用いることができる。
【0024】
強磁性層1は、一方向に磁化が配向した磁性体を含む。強磁性層1を構成する磁性体は、磁気異方性の強い物質を用いることが好ましい。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、FeやCo−Fe等が挙げられる。
【0025】
また強磁性層1は、ハーフメタルであることが好ましい。ハーフメタルは、片方の電子スピンが金属的なバンド構造を示し、もう片方の電子スピンが絶縁体的なバンド構造を示す物質である。ハーフメタルは、フェルミ面では理想的には1に近い大きなスピン分極率を示す。
【0026】
またハーフメタルとして、ホイスラー合金、マグネタイト(Fe)、ペロブスカイト型Mn酸化物等が知られているが、ホイスラー合金が特に好ましい。ホイスラー合金は、III−V族半導体との高い格子整合性、室温以上のキュリー温度、フェルミ面近傍での大きなバンドギャップ等の特徴を有し、室温においても高いスピン分極率を示すことができる。
【0027】
ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSi及びCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。
【0028】
マルチフェロイック層2は、強磁性層1の一面側に形成されている。マルチフェロイック層2は、磁気秩序と強誘電秩序の性質を併せ持つマルチフェロイック材料を有する。マルチフェロイック材料としては、BiFeO、BiMnO、GaFeO、AlFeO、(Ga,Al)FeO、YMnO、CuFeO、Cr、NiBi13I、LiMnPO、YFe12、TbPO、LiCoPOからなる群から選択されるいずれかを用いることができる。またマルチフェロイック材料は、特性を失わない範囲で、上記の物質の一部の元素を置換したものを用いることができる。例えば、XYOと表記される物質のXの一部を他の3価の元素で置換したり、Yの一部を3d遷移金属の他の元素で置換してもよい。またマルチフェロイック材料に酸素欠損等が生じていてもよい。これらの材料の中でもBiFeOは、キュリー温度及びネール温度が何れも高く、広い温度域で強誘電特性及び強磁性特性を示すため、特に好ましい。
【0029】
マルチフェロイック層2は、強磁性層1に少なくとも二つの影響を与える。第1の影響はマルチフェロイック層2の有する強磁性特性に由来するものであり、第2の影響はマルチフェロイック層2の有する強誘電特性に由来するものである。
【0030】
マルチフェロイック層2が強磁性特性または反強磁性特性を示すと、マルチフェロイック層2の磁化の影響を受けて、強磁性層1の磁化の向きが一方向に強く配向する(第1の影響)。すなわち、マルチフェロイック層2は、その強磁性特性または反強磁性特性により強磁性層1の磁化をピン止めする効果を有する。強磁性層1の磁化が一方向に強く固定(ピン止め)されると、強磁性層1の磁化の向きが熱等の外因により乱されることが無くなり、磁気抵抗効果に伴う抵抗値変化率(MR比)が大きくなる。
【0031】
一方で、マルチフェロイック層2が強誘電特性を示すと、マルチフェロイック層2は誘電分極する。誘電分極によって生じる電荷は、強磁性層1内のマルチフェロイック層2側の界面に電荷を誘起し、その界面電荷による電界は強磁性層1のバンド構造を変え、強磁性層1のスピン分極率を変調する(第2の影響)。スピン分極率が変調すると、スピン変調素子100の多値化が実現できる。例えば、強磁性層1のスピン分極率が1.0で第2強磁性層30と平行な場合と、強磁性層1のスピン分極率が0.5で第2強磁性層30と平行な場合とでは、強磁性層1と第2強磁性層30の間の抵抗値が異なるためである。
【0032】
マルチフェロイック層2が強磁性層1に与える影響としては、第1の影響及び第2の影響のいずれも重要である。しかしながら、マルチフェロイック層2を構成するマルチフェロイック材料は材料が限定されるため、十分な強誘電特性を示さない場合がある。
【0033】
本実施形態にかかる積層構造体は、強磁性層1と、強磁性層1の一面に設けられたマルチフェロイック層2と、マルチフェロイック層2の強磁性層1と反対側に設けられた強誘電体層3を有する。強誘電体層3は、マルチフェロイック層2よりも誘電率が大きい誘電体を含む。
【0034】
強誘電体層3の比誘電率はマルチフェロイック層2の比誘電率より大きい。そのため、強誘電体層3とマルチフェロイック層2からなる部分は、その部分がマルチフェロイック層2のみからなる場合に比較して誘電率が大きくなる。すなわち、強磁性層1とマルチフェロイック層2と強誘電体層3と導電層により構成されるキャパシタの電気容量が増加し、マルチフェロイック層2と強磁性層1の間の界面に蓄積される電荷の絶対量は増加する。電荷の絶対量が増加すると、強磁性層1に作用する電界が強くなる。以上の過程を通じて、強磁性層1のスピン分極率を大きく変調できる。すなわち、強誘電体層3は、マルチフェロイック層2を介して存在していても、第2の影響を十分効果的に強磁性層1に加えることができる。
【0035】
これに対し、第1の影響はマルチフェロイック層2の磁化と強磁性層1の磁化との交換相互作用により生じる。交換相互作用を生み出す交換バイアスは、到達距離が短い。そのため、強磁性層1とマルチフェロイック層2は近接している方が望ましい。
【0036】
マルチフェロイック層2の厚みと強誘電体層3の厚みの合計は、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上800nmであることがより好ましく、50nm以上500nmであることがさらに好ましい。
【0037】
厚みは、ガス流量、成膜時間、などの各パラメータにより調整することができる。厚みは、作製したスピン変調素子100について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した10点のデータの平均値として求められる。なお、これらの層の厚みが薄く、原子数個分の厚みしかない場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定した原子数から厚みを求めることができる。
【0038】
マルチフェロイック層2の厚みと強誘電体層3の厚みの合計が小さすぎると、充分な強誘電特性を発現できない場合がある。また、マルチフェロイック層2又は強誘電体層3のいずれか一方の内部の電界が強くなり、絶縁破壊を生じ、誘電体層としての機能が損なわれる恐れがある。一方で、マルチフェロイック層2の厚みと強誘電体層3の厚みの合計が大きすぎると、強磁性層1とマルチフェロイック層2の間に蓄積される電荷の絶対量が小さくなり、マルチフェロイック層2が強磁性層1に与える第2の影響が小さくなる。
【0039】
マルチフェロイック層2の厚みは5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上450nm以下であることがより好ましく、15nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
マルチフェロイック層2が薄すぎると、充分な強誘電特性を発現できない場合がある。また、マルチフェロイック層2の内部の電界が強くなり、絶縁破壊を生じ、誘電体としての機能が損なわれる恐れがある。一方で、マルチフェロイック層2が厚すぎると、強磁性層1とマルチフェロイック層2の間に蓄積される電荷の絶対量が小さくなり、マルチフェロイック層2が強磁性層1に与える第2の影響が小さくなる。
【0041】
強誘電体層3の厚みは5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上450nm以下であることがより好ましく、15nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
強誘電体層3が薄すぎると、充分な強誘電特性を発現できない場合がある。また、強誘電体層3の内部の電界が強くなり、絶縁破壊を生じ、誘電体層としての機能が損なわれる恐れがある。一方で、強誘電体層3が厚すぎると、強磁性層1とマルチフェロイック層2と強誘電体層3と導電層により構成されるキャパシタの電気容量が減少するため、強磁性層1とマルチフェロイック層2の間に蓄積される電荷の絶対量が小さくなり、第2の影響が小さくなる。
【0043】
強誘電体層3は、マルチフェロイック層2よりも誘電率が大きければ特に問わない。例えば、LaSr1−xMnO(0≦x≦1)、BaSr1−xTiO(0≦x≦1)、PbZrTi1−x(0≦x≦1))を用いることができる。
【0044】
強誘電体層3の比誘電率は、10以上10000以下であることが好ましく、20以上9000以下であることがより好ましく、30以上8000以下であることがさらに好ましい。強誘電体層3の比誘電率が大きければ、強磁性層1とマルチフェロイック層2と強誘電体層3と導電層により構成されるキャパシタの電気容量が増し、強磁性層1とマルチフェロイック層2の界面の蓄積電荷の絶対量が大きくできる。
【0045】
「非磁性層」
非磁性層20は絶縁体でも、半導体でも、金属でもよい。非磁性層20が絶縁体からなる場合、強磁性層2、非磁性層20及び第2強磁性層30からなる積層体は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子となり、非磁性層20が半導体もしくは金属からなる場合、強磁性層2、非磁性層20及び第2強磁性層30からなる積層体は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子となる。
【0046】
非磁性層20には、公知の材料を用いることができる。例えば、非磁性層20が絶縁体もしくは半導体からなる場合、その材料としては、Hexagonal−BN、Graphene、HfO、Y、TaO、GaO、TiO、InO、BaO、CaF、Al、SiO、MgO、及び、MgAl等を用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAlはコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、MR比を大きくすることができる。またMgOやMgAlのMg、Alの一部もしくはすべてが、Zn,Cd、Ag、Pt、Pb、Ga、In、Ge等に置換された材料等も非磁性層20として用いることができる。
【0047】
また、非磁性層20が金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。
【0048】
「第2強磁性層」
第2強磁性層30は、強磁性層1と非磁性層20と磁気抵抗効果素子を形成する。強磁性層1が固定層の場合、第2強磁性層30は自由層となり、強磁性層1が自由層の場合、第2強磁性層30は固定層となる。
【0049】
第2強磁性層30の材料には、公知のものを用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。またより高い出力を得るために、第2強磁性層30にホイスラー合金を用いてもよい。
【0050】
上述のように、本実施形態にかかるスピン変調素子は、強誘電体層3を有するため、強磁性層1に充分な電界を与えることができる。その結果、強磁性体のスピン分極率を充分に変調でき、データを多値で安定的に保持することができる。
【0051】
(スピン変調素子の製造方法)
スピン変調素子100の製造方法について説明する。まず、基材を準備する。基材は、積層構造体10の積層方向に電圧を印加するために、導電性を有する材料を用いることが好ましい。基材が導電性を有することで、電極を兼ねることができる。
【0052】
次いで、準備した基材上に、強誘電体層3、マルチフェロイック層2、強磁性層1、非磁性層20、第2強磁性層30を順に積層する。これらの層は、GMR素子やTMR素子等の磁気抵抗効果素子の強磁性層及び非磁性層と同様の方法で積層することができる。例えば、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーション法、CVD(化学気相成長)法、分子線エピタキシャル(MBE)法等を用いることができる。
【0053】
また第2強磁性層30の非磁性層20と反対側の面には、電極を積層することが好ましい。電極を設けることで、強磁性層1全面に均一に電流を流すことができる。
【0054】
(スピン変調素子の動作)
次いで、スピン変調素子の動作を説明すると共に、どのように多値化が実現されるかについて説明する。
【0055】
図2は、スピン変調素子100の動作を説明するための模式図である。スピン変調素子100は、第2強磁性層30と強磁性層1に流れる電流を制御するスイッチSW1と、マルチフェロイック層2および強誘電体層3に電界を印加するスイッチSW2とが接続されている。
【0056】
まず図2(a)及び(b)に示すように、スイッチSW2が開いている場合、マルチフェロイック層2には電界が印加されない。そのため、スピン変調素子100は、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが反平行の第1状態(図2(a))と、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが平行の第2状態(図2(b))と、の2状態をとる。強磁性層1の磁化の向きは、スイッチSW1を閉じることで、積層体の積層方向にスピン偏極電流を流し、スピントランスファートルク(STT)により反転させる。
【0057】
次いで、図2(c)及び(d)に示すように、スイッチSW2を閉じ、強磁性層1と電極40との間(マルチフェロイック層2および強誘電体層3)に電界を加える。マルチフェロイック層2と強誘電体層3に電界が印加されると、マルチフェロイック層2と強誘電体層3は誘電分極の方向を反転する。誘電分極によって生じる電界は、強磁性層1のバンド構造を変え、強磁性層1のスピン分極率を変調する。
【0058】
例えば、マルチフェロイック層2と強誘電体層3に正電圧を印加する(図2(c)電圧V方向)と、電界によって強磁性層1のダウンスピンのバンド構造にバンドベンディングが誘起される。そのため、強磁性層1のマルチフェロイック層2側の界面に少数スピンキャリアが誘起され、強磁性層1のスピン分極率は減少する。図2(c)及び(d)では、スピン分極率の減少を矢印の大きさで模式的に図示している。
【0059】
図2(c)及び(d)に示すように、強磁性層1のスピン分極率が減少した状態でも、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが反平行の第3状態(図2(c))と、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが平行の第4状態(図2(d))と、の2状態をとる。
【0060】
すなわちスピン変調素子100は、スイッチSW1とスイッチSW2を制御することで、4つの状態が生み出される。4つの状態は、第1状態、第3状態、第4状態、第2状態の順で抵抗値が大きい。
【0061】
スピン変調素子100は、強磁性層1とマルチフェロイック層2の間に、強誘電体層3を有するため、強磁性層1に充分な電界が与えられる。そのため、誘電分極に伴うスピン分極率の変化が大きくなり、第1状態と第3状態、及び、第2状態と第4状態の抵抗値差が大きくなる。結果、安定した多値記録を行うことができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…強磁性層、2…マルチフェロイック層、3…強誘電体層、10…積層構造体、20…非磁性層、30…第2強磁性層、40…電極、100…スピン変調素子、SW1,SW2…スイッチ
図1
図2