特開2018-206988(P2018-206988A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

特開2018-206988複合電子部品、複合電子部品包装体、回路基板、及び複合電子部品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-206988(P2018-206988A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】複合電子部品、複合電子部品包装体、回路基板、及び複合電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/40 20060101AFI20181130BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   H01G4/40 301A
   H01C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-111542(P2017-111542)
(22)【出願日】2017年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(72)【発明者】
【氏名】会田 森
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082DD02
(57)【要約】
【課題】実装スペース及び製造コストを節約可能な複合電子部品を提供する。
【解決手段】複合電子部品は、第1電子部品と、第2電子部品と、を具備する。上記第1電子部品は、実装時に回路基板に対向させられる主面、並びに上記主面と直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、上記第1及び第2端面に設けられ、上記第1及び第2端面から上記主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する。上記第2電子部品は、上記主面に設けられた機能膜と、上記機能膜の両端部に、上記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、上記第1及び第2外部電極の上記主面からの厚さ以内に収まるように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装時に回路基板に対向させられる主面、並びに前記主面に直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、前記第1及び第2端面に設けられ、前記第1及び第2端面から前記主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する第1電子部品と、
前記主面に設けられた機能膜と、前記機能膜の両端部に、前記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、前記第1及び第2外部電極の前記主面からの厚さ以内に収まるように構成された第2電子部品と、
を具備する複合電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の複合電子部品であって、
前記第1及び第2電極膜は、前記第1及び第2端面に平行な方向に対向する
複合電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合電子部品であって、
前記第1電子部品は積層セラミック電子部品である
複合電子部品。
【請求項4】
請求項3に記載の複合電子部品であって、
前記積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサである
複合電子部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の複合電子部品であって、
前記第2電子部品は、抵抗素子である
複合電子部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の複合電子部品であって、
前記第2電子部品は、前記機能膜を覆う絶縁膜を更に有する
複合電子部品。
【請求項7】
相互に対向する第1及び第2主面、並びに前記第1及び第2主面に直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、前記第1及び第2端面に設けられ、前記第1及び第2端面から前記第1主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する第1電子部品と、
前記第1主面に設けられた機能膜と、前記機能膜の両端部に、前記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、前記第1及び第2外部電極の前記第1主面からの厚さ以内に収まるように構成された第2電子部品と、
を有する複合電子部品と、
取り出し口を備え、前記第2主面が前記取り出し口側を向いた状態で前記複合電子部品を収容する複数の凹部を有する収容部と、
前記凹部の前記取り出し口を覆う封止部と、
を具備する複合電子部品包装体。
【請求項8】
実装面と、前記実装面に設けられた一対の第1配線及び一対の第2配線と、前記実装面に実装された複合電子部品と、を具備し、
前記複合電子部品は、
前記実装面に対向する主面、並びに前記主面に直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、前記第1及び第2端面に設けられ、前記第1及び第2端面から前記主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する第1電子部品と、
前記主面に設けられた機能膜と、前記機能膜の両端部に、前記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、前記第1及び第2外部電極の前記主面からの厚さ以内に収まるように構成された第2電子部品と、を有する
回路基板。
【請求項9】
第1電子部品のセラミック素体を準備するステップと、
複数種類のペーストを用いて、前記セラミック素体の主面に第2電子部品を形成するステップと、
を含む複合電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の複合電子部品の製造方法であって、
前記第2電子部品を形成するステップは、導電性ペーストを用いて電極膜を形成する第1ステップと、機能性ペーストを用いて機能膜を形成する第2ステップと、絶縁性ペーストを用いて絶縁膜を形成する第3ステップと、を含む
複合電子部品の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の複合電子部品の製造方法であって、
前記第1ステップの後に前記第2ステップを行い、前記第2ステップの後に前記第3ステップを行う
複合電子部品の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の複合電子部品の製造方法であって、
前記第2電子部品を形成するステップは、前記機能膜をトリミングするステップを更に含む
複合電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合電子部品、複合電子部品包装体、回路基板、及び複合電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の集積回路(IC:Integrated Circuit)が実装され、多種の機能を実現可能な回路基板が知られている。回路基板には、IC以外にも様々な部品が実装される。例えば、回路基板には、各IC間で送受される信号の品質を向上させるために、各ICの近傍にコンデンサや抵抗素子などの受動素子が設けられる。
【0003】
例えばウエアラブル機器に利用されるような小型の回路基板では、小型部品や埋め込み部品などを用いることにより、実装密度の向上が図られている。しかしながら、近年の回路基板の超小型化に伴い、必要な部品を実装するための実装スペースを確保することがますます難しくなってきている。
【0004】
実装スペースを節約可能な技術として、複数の電子部品を一体化させた複合電子部品が知られている。特許文献1には、コンデンサ素子の上面に抵抗素子が設けられた複合電子部品が開示されている。この複合電子部品では、コンデンサ素子の両端部に第1及び第2外部電極が設けられ、抵抗素子の両端部に第1及び第2接続電極が設けられている。
【0005】
特許文献1に記載の複合電子部品のコンデンサ素子の側面には、抵抗素子の第1及び第2接続電極をそれぞれコンデンサ素子の下面に接続するための第3及び第4外部電極が設けられている。この構成により、この複合電子部品では、コンデンサ素子の下面において4つの外部電極を回路基板に接続することにより実装可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−195236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の複合電子部品では、抵抗素子を回路基板に接続するために第3及び第4外部電極を設ける必要があるため、製造コストが増大する。また、特許文献1に記載の複合電子部品では、コンデンサ素子の上面に設けられた抵抗素子の高さの分だけ高背化するため、広い実装スペースが必要となる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、実装スペース及び製造コストを節約可能な複合電子部品、複合電子部品包装体、回路基板、及び複合電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る複合電子部品は、第1電子部品と、第2電子部品と、を具備する。
上記第1電子部品は、実装時に回路基板に対向させられる主面、並びに上記主面と直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、上記第1及び第2端面に設けられ、上記第1及び第2端面から上記主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する。
上記第2電子部品は、上記主面に設けられた機能膜と、上記機能膜の両端部に、上記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、上記第1及び第2外部電極の上記主面からの厚さ以内に収まるように構成される。
【0010】
この複合電子部品は、第2電子部品が配置された第1電子部品の主面を回路基板に対向させた状態で、回路基板に実装される。この複合電子部品では、第2電子部品が第1及び第2外部電極の主面からの厚さ以内に収まるように構成されているため、第2電子部品が回路基板への実装の妨げとはならない。
また、この複合電子部品の実装時には、第1電子部品の第1及び第2外部電極のみならず、第2電子部品の第1及び第2電極膜も、回路基板に対向する。このため、この複合電子部品では、第2電子部品の第1及び第2電極膜を回路基板に接続するための追加の構成を設ける必要がない。これにより、この複合電子部品では、製造プロセスが簡略化するため、製造コストを節約することができる。
更に、この複合電子部品では、第1電子部品のセラミック素体と回路基板との間の領域に第2電子部品が収まるため、第2電子部品のための実装スペースを別途用意する必要がない。したがって、この複合電子部品では、実装スペースを節約することができる。
【0011】
上記第1及び第2電極膜は、上記第1及び第2端面と平行な方向に対向していてもよい。
この構成では、第1及び第2外部電極と第1及び第2電極膜とを離間させて配置する設計が容易となる。
【0012】
上記第1電子部品は積層セラミック電子部品であってもよい。
上記積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサであってもよい。
上記第2電子部品は、抵抗素子であってもよい。
【0013】
上記第2電子部品は、上記機能膜を覆う絶縁膜をさらに有してもよい。
この構成では、第2電子部品の機能膜を絶縁膜によって保護することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る複合電子部品包装体は、複合電子部品と、収容部と、封止部と、を具備する。
上記複合電子部品は、第1電子部品と、第2電子部品と、を有する。
上記第1電子部品は、相互に対向する第1及び第2主面、並びに上記第1及び第2主面と直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、上記第1及び第2端面に設けられ、上記第1及び第2端面から上記第1主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する。
上記第2電子部品は、上記第1主面に設けられた機能膜と、上記機能膜の両端部に、上記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、上記第1及び第2外部電極の上記第1主面からの厚さ以内に収まるように構成される。
上記収容部は、取り出し口を備え、上記第2主面が上記取り出し口側を向いた状態で上記複合電子部品を収容する複数の凹部を有する。
上記封止部は、上記凹部の上記取り出し口を覆う。
【0015】
本発明の一形態に係る回路基板は、実装面と、上記実装面に設けられた一対の第1配線及び一対の第2配線と、上記実装面に実装された複合電子部品と、を具備する。
上記複合電子部品は、第1電子部品と、第2電子部品と、を有する。
上記第1電子部品は、上記実装面に対向する主面、並びに上記主面と直交する第1及び第2端面を含むセラミック素体と、上記第1及び第2端面に設けられ、上記第1及び第2端面から上記主面に延出する第1及び第2外部電極と、を有する。
上記第2電子部品は、上記主面に設けられた機能膜と、上記機能膜の両端部に、上記第1及び第2外部電極から離間して設けられた第1及び第2電極膜と、を有し、上記第1及び第2外部電極の上記主面からの厚さ以内に収まるように構成される。
【0016】
本発明の一形態に係る複合電子部品の製造方法は、第1電子部品のセラミック素体を準備するステップと、複数種類のペーストを用いて、上記セラミック素体の主面に第2電子部品を形成するステップと、を含む。
この構成では、ペーストを用いて第2電子部品を形成することにより、第2電子部品を第1電子部品の外部電極の厚さ以内に収めることができる。
【0017】
上記第2電子部品を形成するステップは、導電性ペーストを用いて電極膜を形成する第1ステップと、機能性ペーストを用いて機能膜を形成する第2ステップと、絶縁性ペーストを用いて絶縁膜を形成する第3ステップと、を含んでもよい。
上記第1ステップの後に上記第2ステップを行い、上記第2ステップの後に上記第3ステップを行ってもよい。
上記第2電子部品を形成するステップは、上記機能膜をトリミングするステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、実装スペース及び製造コストを節約可能な複合電子部品、複合電子部品包装体、回路基板、及び複合電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る複合電子部品の正面図である。
図2】上記複合電子部品の斜視図である。
図3】上記複合電子部品の図2のA−A'線に沿った断面図である。
図4】上記複合電子部品の図2のB−B'線に沿った断面図である。
図5】上記複合電子部品の等価回路を示す図である。
図6】上記複合電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
図7】上記複合電子部品の製造過程を示す斜視図である。
図8】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図9】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図10】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図11】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図12】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図13】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図14】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図15】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図16】上記複合電子部品の製造過程を示す平面図である。
図17】上記複合電子部品を実装可能な回路基板の部分斜視図である。
図18】上記複合電子部品が実装された回路基板の部分斜視図である。
図19】回路基板に実装された上記複合電子部品の図15のD−D'線に沿った断面図である。
図20】回路基板に実装された上記複合電子部品の図15のE−E'線に沿った断面図である。
図21】上記複合電子部品の接続例を示す図である。
図22】本発明の一実施形態に係る複合電子部品包装体の平面図である。
図23】上記複合電子部品包装体の図19のF−F'線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸及びZ軸が示されている。X軸、Y軸及びZ軸は全図において共通である。
【0021】
[複合電子部品1]
(全体構成)
図1〜4は、本発明の一実施形態に係る複合電子部品1を示す図である。図1は、複合電子部品1の正面図である。図2は、複合電子部品1の斜視図である。図3は、複合電子部品1の図2のA−A'線に沿った断面図である。図4は、複合電子部品1の図2のB−B'線に沿った断面図である。
【0022】
複合電子部品1は、2つの電子部品が組み合わされて構成されている。具体的には、複合電子部品1は、第1電子部品である積層セラミックコンデンサ10と、第2電子部品である抵抗素子20と、を具備する。抵抗素子20は、積層セラミックコンデンサ10のZ軸方向下側に設けられている。
【0023】
(積層セラミックコンデンサ10)
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極12aと、第2外部電極12bと、を具備する。セラミック素体11は、X軸方向を向いた第1及び第2端面11a,11bと、Z軸方向を向いた第1及び第2主面11c,11dと、Y軸方向を向いた第1及び第2側面11e,11fと、を有する。
【0024】
セラミック素体11の各面を接続する稜部は面取りされていてもよい。なお、セラミック素体11の形状は、図1〜4に示すものに限定されない。例えば、セラミック素体11の端面11a,11b、主面11c,11d、及び側面11e,11fは曲面であってもよい。セラミック素体11は全体として丸みを帯びた形状であってもよい。
【0025】
外部電極12a,12bは、セラミック素体11のX軸方向両端面を覆い、X軸方向両端面に接続する主面11c,11d及び側面11e,11fに延出している。これにより、外部電極12a,12bのいずれにおいても、X−Z平面に平行な断面及びX−Y平面に平行な断面の形状がU字状である。
【0026】
なお、外部電極12a,12bは、セラミック素体11の第1主面11cに延出していればよく、セラミック素体11の第2主面11d及び側面11e,11fには延出していなくてもよい。例えば、外部電極12a,12bは、セラミック素体11の第1主面11cのみに延出し、X−Z平面に平行な断面の形状がL字状であってもよい。
【0027】
外部電極12a,12bはそれぞれ、電気の良導体により形成され、積層セラミックコンデンサ10の端子として機能する。外部電極12a,12bを形成する電気の良導体としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金を用いることができる。
【0028】
外部電極12a,12bは、特定の構成に限定されない。例えば、外部電極12a,12bは、単層構造であっても複層構造であってもよい。複層構造の外部電極12a,12bは、例えば、下地膜と表面膜との2層構造や、下地膜と中間膜と表面膜との3層構造として構成されていてもよい。
【0029】
セラミック素体11は、複数の第1内部電極13aと、複数の第2内部電極13bと、を有する。内部電極13a,13bは、それぞれXY平面に平行に延びるシート状に形成され、Z軸方向に沿って交互に間隔をあけて配置されている。したがって、内部電極13a,13bは、Z軸方向に対向している。
【0030】
第1内部電極13aは、第1端面11aに引き出され、第1外部電極12aに接続している。第1内部電極13aは、第2外部電極12bからは離間している。第2内部電極13bは、第2端面11bに引き出され、第2外部電極12bに接続している。第2内部電極13bは、第1外部電極12aからは離間している。
【0031】
内部電極13a,13bは、典型的にはニッケル(Ni)を主成分とし、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。なお、内部電極13a,13bは、ニッケル以外にも、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)の少なくとも1つを主成分としていてもよい。
【0032】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスによって形成されている。つまり、内部電極13a,13bは、誘電体セラミックスによって覆われている。誘電体セラミックスとしては、内部電極13a,13b間の誘電体セラミック層の容量を大きくするために、高誘電率のものが用いられる。
【0033】
典型的には、セラミック素体11を形成する誘電体セラミックスとしては、チタン酸バリウム(BaTiO)系材料の多結晶体、つまりバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の多結晶体が用いられる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では大容量が得られる。
【0034】
なお、誘電体セラミックスは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)系、チタン酸カルシウム(CaTiO)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO)系、酸化チタン(TiO)系などであってもよい。
【0035】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極12a,12b間に電圧が印加されると、内部電極13a,13b間の複数の誘電体セラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、外部電極12a,12b間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0036】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10には、複合電子部品1のための特別な設計を用いることなく、任意の既存の設計を自由に用いることができる。したがって、複合電子部品1では、積層セラミックコンデンサ10の容量やサイズなどをフレキシブルに選択することが可能である。
【0037】
積層セラミックコンデンサ10は、例えば、バイパスコンデンサとして用いられる。積層セラミックコンデンサ10の容量は、例えば、1pF〜1mFとすることができる。積層セラミックコンデンサ10では、例えば、X軸方向の寸法を1.0mmとし、Y軸及びZ軸方向の寸法を0.5mmとすることができる。
【0038】
(抵抗素子20)
抵抗素子20は、抵抗膜21と、第1電極膜22aと、第2電極膜22bと、絶縁膜23と、を有する。抵抗素子20は、セラミック素体11の第1主面11cのX軸方向中央領域に設けられている。つまり、抵抗素子20は、セラミック素体11の第1主面11cに延出した外部電極12a,12b間の領域に配置されている。
【0039】
電極膜22a,22bは、セラミック素体11の第1主面11cのY軸方向両端部に、Y軸方向に対向するように配置されている。電極膜22a,22bは、外部電極12a,12bから離間している。したがって、抵抗素子20は、積層セラミックコンデンサ10から独立して機能する。
【0040】
電極膜22a,22bはそれぞれ、電気の良導体により形成され、抵抗素子20の端子として機能する。電極膜22a,22bを形成する電気の良導体としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属や合金を用いることができる。
【0041】
電極膜22a,22bは、特定の構成に限定されない。例えば、電極膜22a,22bは、単層構造であっても複層構造であってもよい。複層構造の電極膜22a,22bは、例えば、下地膜と表面膜との2層構造や、下地膜と中間膜と表面膜との3層構造として構成されていてもよい。
【0042】
抵抗膜21は、抵抗材料で形成され、電極膜22a,22b間をY軸方向に延びる。抵抗膜21のY軸方向両端部は、電極膜22a,22b上に重なることにより、電極膜22a,22bに接続されている。抵抗膜21は、第1及び第2電極膜22a,22b間に所定の電気抵抗値を付与する機能膜として構成される。
【0043】
抵抗膜21を形成する抵抗材料は、特定の種類に限定されず、抵抗素子20に要求される電気抵抗値などに応じて、公知の抵抗材料から選択可能である。抵抗膜21の形成に利用可能な抵抗材料としては、例えば、六ホウ化ランタン(LaB)や二酸化ルテニウム(RuO)などが挙げられる。
【0044】
抵抗素子20では、抵抗膜21と各電極膜22a,22bとが重なった領域が狭いと、抵抗膜21と電極膜22a,22bと間の接触抵抗が大きくなるため、電気抵抗値のばらつきが発生しやすくなる。この観点から、抵抗膜21は、各電極膜22a,22bに対して、Y軸方向に70μm以上重なっていることが好ましい。
【0045】
絶縁膜23は、抵抗膜21上に設けられ、抵抗膜21の全体を覆っている。絶縁膜23は、電極膜22a,22bのY軸方向外側の部分を覆わずに露出させている。これにより、複合電子部品1を回路基板Cに実装する際に、電極膜22a,22bを回路基板Cに直接接続することが可能となる。
【0046】
絶縁膜23は、抵抗膜21を保護する保護膜として機能する。つまり、絶縁膜23は、抵抗膜21への異物の付着などの外部環境の影響による抵抗膜21の電気抵抗値の変化を防止する。また、絶縁膜23は、外部からの衝撃などによって抵抗膜21に損傷が加わることを防止する。
【0047】
絶縁膜23は、抵抗膜21を保護することが可能な絶縁体材料で形成される。絶縁膜23を形成する絶縁体材料は、特定の種類に限定されず、公知の絶縁体材料から選択可能である。絶縁膜23の形成に利用可能な絶縁体材料としては、例えば、各種ガラス材料や各種樹脂材料などが挙げられる。
【0048】
抵抗素子20は、外部電極12a,12bの第1主面11cからの厚さ以内に収まるようにZ軸方向に薄く構成されている。つまり、図1に示すように、抵抗素子20の第1主面11cからのZ軸方向の最大寸法t20は、外部電極12a,12bのZ軸方向の最大寸法t12以下である。
【0049】
なお、抵抗素子20の構成は、上記に限定されず、様々に変更可能である。例えば、抵抗膜21が電極膜22a,22b上に重なっていなくてもよく、電極膜22a,22bが抵抗膜21上に重なっていてもよい。また、抵抗膜21を保護する必要がない場合には、絶縁膜23を設けなくてもよい。
【0050】
更に、セラミック素体11の第1主面11cにおける抵抗素子20の配置は、電極膜22a,22bが外部電極12a,12bから離間していればよく、上記とは異なっていてもよい。例えば、電極膜22a,22bがX軸方向に対向して配置され、抵抗膜21がX軸方向に延びていてもよい。
【0051】
(等価回路)
図5(A)は、積層セラミックコンデンサ10の等価回路を示している。図5(B)は、抵抗素子20の等価回路を示している。図5(C)は、複合電子部品1の等価回路を示している。図5(A)〜(C)に示すように、複合電子部品1は、積層セラミックコンデンサ10と抵抗素子20とを組み合わせた回路構成となっている。
【0052】
また、複合電子部品1では、積層セラミックコンデンサ10の端子である外部電極12a,12bと、抵抗素子20の端子である電極膜22a,22bと、が相互に絶縁されている。これにより、複合電子部品1では、積層セラミックコンデンサ10及び抵抗素子20の機能を独立して得ることができる。
【0053】
なお、積層セラミックコンデンサ10の外部電極12a,12bと抵抗素子20の電極膜22a,22bとを、回路基板Cの実装面上の配線などによって適宜接続することにより、積層セラミックコンデンサ10と抵抗素子20とを直列接続や並列接続とすることも可能である。
【0054】
[複合電子部品1の製造方法]
図6は、複合電子部品1の製造方法を示すフローチャートである。図7〜13は、複合電子部品1の製造過程を示す図である。以下、複合電子部品1の製造方法について、図6に沿って、図7〜13を適宜参照しながら説明する。
【0055】
(ステップS01:セラミック素体11を準備)
ステップS01では、図7に示すセラミック素体11を準備する。図7に示すセラミック素体11には、図1〜4に示す外部電極12a,12bや抵抗素子20が設けられていない。セラミック素体11では、端面11a,11bにそれぞれ、内部電極13a,13bが露出している。
【0056】
(ステップS02:導電性ペーストを塗布)
ステップS02では、セラミック素体11における外部電極12a,12b及び電極膜22a,22bを形成する領域に、導電性ペーストを塗布する。これにより、図8に示すように、外部電極12a,12bの未焼成の下地膜112a,112bと、電極膜22a,22bの未焼成の下地膜122a,122bと、が形成される。
【0057】
導電性ペーストとしては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属ペーストを用いることができる。また、下地膜112a,112bと下地膜122a,122bとで、異なる導電性ペーストを用いてもよい。
【0058】
導電性ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などの各種印刷法を用いることができる。これにより、セラミック素体11の正確な位置に導電性ペーストを塗布することができる。また、導電性ペーストの塗布には、印刷法以外にも、例えば、ディップ法やスプレー法などを用いてもよい。
【0059】
(ステップS03:焼成1)
ステップS03では、ステップS02でセラミック素体11に塗布された導電性ペーストを焼成する。これにより、セラミック素体11における図8に示す位置に、焼結した外部電極12a,12bの下地膜112a,112b及び電極膜22a,22bの下地膜122a,122bが形成される。
【0060】
ステップS03では、例えば、焼成温度を900℃とし、焼成時間を15分とすることができる。また、ステップS03は、導電性ペーストを構成する金属材料の酸化を防止するために、還元雰囲気下、あるいは、酸素分圧10ppm以下の低酸素分圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0061】
なお、ステップS01において未焼成のセラミック素体11を準備してもよい。この場合、ステップS03において、セラミック素体11と、外部電極12a,12bの下地膜112a,112bと、電極膜22a,22bの下地膜122a,122bと、を同時に焼成することができる。
【0062】
(ステップS04:抵抗ペーストを塗布)
ステップS04では、ステップS03で得られた下地膜112a,112b及び下地膜122a,122bが形成されたセラミック素体11の第1主面11c上に抵抗ペーストを塗布する。これにより、図9に示すように、下地膜122a,122b間を接続するように未焼成の抵抗膜21が形成される。
【0063】
抵抗ペーストは、抵抗膜21を形成するための機能性ペーストとして構成される。ステップS04では、抵抗ペーストとして、例えば、六ホウ化ランタン(LaB)ペーストを用いることができる。抵抗ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などの各種印刷法を用いることができる。
【0064】
(ステップS05:焼成2)
ステップS05では、ステップS04でセラミック素体11に形成された未焼成の抵抗膜21を焼成する。六ホウ化ランタン(LaB)は、導電性ペーストよりも焼結温度が低く、ステップS05では、例えば、焼成温度を850℃とすることができる。なお、焼成時間は適宜決定可能である。
【0065】
ステップS05における焼成温度をステップS03における焼成温度より低くすることによって、ステップS05において下地膜112a,112b及び下地膜122a,122bが変質することを防止することができる。また、ステップS05は、下地膜112a,112b及び下地膜122a,122bの酸化を防止するために、還元雰囲気下、あるいは、酸素分圧10ppm以下の低酸素分圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0066】
(ステップS06:トリミング)
ステップS06では、ステップS05で焼成された抵抗膜21をトリミングする。より詳細に、ステップS06では、図10に示すように、抵抗膜21のY軸方向中央部をレーザ照射によって除去することにより、X軸方向に延びるスリットSを形成する。これにより、抵抗膜21を高精度に設計値どおりの電気抵抗値とすることができる。
【0067】
また、抵抗膜21に寸法や位置などの構造的なばらつきがあっても、スリットSの形成によって抵抗素子20の電気抵抗値の初期値のばらつきの発生を防止することができる。抵抗膜21と下地膜122a,122bとの重なり面積を変えることにより、抵抗素子20の電気抵抗値の初期値を調整することができる。
【0068】
スリットSの構成は、抵抗素子20に求められる電気抵抗値の精度などに応じて決定可能である。例えば、図11に示すように、X軸方向に延びる複数のスリットSを形成してもよい。また、図12に示すように、スリットSがY軸方向に屈曲していてもよい。更に、図13に示すように、複数のスリットSがX軸方向の一端及び他端から交互に延びていてもよい。これらの構成では、抵抗膜21の電気抵抗値をより高精度に調整可能である。
【0069】
なお、図14に示すように、ステップS04において抵抗膜21のX軸方向の寸法をやや大きめに調整し、本ステップS06においてX軸方向両端部の少なくとも一部を除去してもよい。これにより、抵抗膜21の寸法及び抵抗素子20の電気抵抗値の初期値を確実かつ高精度に調整することができる。
【0070】
(ステップS07:絶縁性ペーストを塗布)
ステップS07では、ステップS06でトリミングされた抵抗膜21を覆うように絶縁性ペーストを塗布する。これにより、図15に示すように、未焼成の絶縁膜23が形成される。絶縁性ペーストは、電極膜22a,22bの下地膜122a,122bの少なくとも一部が露出するように配置される。
【0071】
絶縁性ペーストは、絶縁膜23を形成する絶縁体材料のペーストとして構成される。ステップS07では、絶縁性ペーストとして、例えば、ガラスペーストなどを用いることができる。絶縁性ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などの各種印刷法を用いることができる。
【0072】
(ステップS08:焼成3)
ステップS08では、ステップS07でセラミック素体11に形成された未焼成の絶縁膜23を焼成する。絶縁性ペーストは、抵抗ペーストよりも焼結温度が低く、ステップS08では、例えば、焼成温度を650℃とすることができる。なお、焼成時間は適宜決定可能である。
【0073】
ステップS08における焼成温度をステップS05における焼成温度より更に低くすることによって、ステップS08において下地膜112a,112b、下地膜122a,122b、及び抵抗膜21が変質することを防止することができる。また、ステップS08は、下地膜112a,112b及び下地膜122a,122bの酸化を防止するために、還元雰囲気下、あるいは、酸素分圧10ppm以下の低酸素分圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0074】
(ステップS09:メッキ)
ステップS09では、ステップS08後の下地膜112a,112b及び下地膜122a,122bにメッキを施すことにより、外部電極12a,12b及び電極膜22a,22bの表面膜を形成する。これにより、図16に示すように、外部電極12a,12b及び電極膜22a,22bが得られる。
【0075】
外部電極12a,12b及び電極膜22a,22bの表面膜は、例えば、銅(Cu)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、金(Au)、亜鉛(Zn)などを主成分として形成することができる。また、表面膜の形成には、電解メッキなどの湿式メッキを用いても、スパッタリングなどの乾式メッキを用いてもよい。
【0076】
(作用効果)
以上のとおり、本実施形態に係る製造方法では、抵抗素子20の電極膜22a,22b、抵抗膜21、及び絶縁膜23のすべてをペーストの塗布によって形成するため、セラミック素体11の第1主面11c上に抵抗素子20をマウントする必要がない。これにより、複合電子部品1の製造プロセスを簡略化することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る製造方法では、セラミック素体11の第1主面11c上に抵抗素子20を直接設ける。つまり、セラミック素体11が抵抗素子20の基板としての機能を兼ねるため、抵抗素子20用の基板を用意する必要がない。このため、複合電子部品1の製造コストが低減される。
【0078】
(変形例)
複合電子部品1の製造方法は、上記に限定されず、必要に応じて変更可能である。例えば、ステップS01では、外部電極12a,12bの下地膜112a,112bが予め設けられたセラミック素体11を準備してもよい。また、抵抗膜21を形成した後に電極膜22a,22bを形成してもよい。
【0079】
[回路基板C]
図17は、複合電子部品1を実装可能な回路基板Cの一例を模式的に示す部分斜視図である。回路基板Cは、各種回路モジュールを含み、両主面の少なくとも一方に回路が形成された基板である。図17には、複合電子部品1を実装可能に構成された実装面C1が示されている。
【0080】
回路基板Cの実装面C1には、積層セラミックコンデンサ10の外部電極12a,12bが接続される配線C2a,C2bと、抵抗素子20の電極膜22a,22bが接続される配線C3a,C3bと、が形成されている。各配線C2a,C2b,C3a,C3bの端部にはランドLが設けられ、各ランドL上にははんだHが配置されている。
【0081】
図18は、複合電子部品1が実装された回路基板Cの一例を模式的に示す斜視図である。図18に示す回路基板Cの実装面C1に複合電子部品1が実装される際には、まず、セラミック素体11の第1主面11cを実装面C1に対向させた状態で、複合電子部品1が回路基板Cの実装面C1上に配置される。
【0082】
このとき、積層セラミックコンデンサ10の外部電極12a,12bのみならず、抵抗素子20の電極膜22a,22bも、回路基板Cの実装面C1に設けられたランドLに対向する。このように、複合電子部品1では、追加の構成を設けることなく、抵抗素子20の電極膜22a,22bを回路基板Cに接続することができる。
【0083】
また、抵抗素子20が積層セラミックコンデンサ10の外部電極12a,12bの第1主面11cからの厚さ以内に収まるように構成されているため、複合電子部品1は外部電極12a,12bによって回路基板C上に安定した姿勢で保持される。つまり、抵抗素子20が、複合電子部品1の回路基板Cへの実装の妨げとはならない。
【0084】
複合電子部品1が回路基板Cの実装面C1上に配置された状態で、例えばリフロー炉などで回路基板Cを加熱することにより、各ランドL上のはんだHを溶融させる。このとき、はんだHは、回路基板Cの各ランドL上に濡れ広がるとともに、複合電子部品1の外部電極12a,12b及び電極膜22a,22b上にも濡れ広がる。
【0085】
その後、回路基板Cを冷却させることによりはんだHを凝固させると、回路基板Cの各ランドLと、複合電子部品1の外部電極12a,12b及び電極膜22a,22bと、がはんだHを介して接続される。これにより、図18に示す複合電子部品1が実装された回路基板Cが得られる。
【0086】
このように、複合電子部品1では、積層セラミックコンデンサ10及び抵抗素子20を回路基板Cに一括して実装可能であるため、実装プロセスを簡略化することができる。このため、複合電子部品1を用いることにより、積層セラミックコンデンサ10及び抵抗素子20を備えた回路基板Cの製造コストを節約することができる。
【0087】
また、複合電子部品1では、積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11と回路基板Cの実装面C1との間の領域に抵抗素子20が収まるため、抵抗素子20のための実装スペースを別途用意する必要がない。したがって、複合電子部品1では、実装スペースを節約することができる。
【0088】
更に、複合電子部品1では、積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11と回路基板Cの実装面C1との間の領域に抵抗素子20が収まるため、外部からの衝撃などが抵抗素子20に加わりにくい。したがって、複合電子部品1では、抵抗素子20が損傷を受けることを防止することができる。
【0089】
図19は、複合電子部品1が実装された回路基板Cの図18のD−D'線に沿った断面図である。図20は、複合電子部品1が実装された回路基板Cの図18のE−E'線に沿った断面図である。図19,20には、複合電子部品1と回路基板Cとを接続しているはんだHの状態が示されている。
【0090】
積層セラミックコンデンサ10の外部電極12a,12bでは、はんだHがZ軸方向上方に濡れ上がることにより、はんだHのフィレットが形成されている。これにより、複合電子部品1は、回路基板Cの実装面C1上に良好に保持され、回路基板Cの実装面C1から外れにくくなる。
【0091】
この一方で、抵抗素子20の電極膜22a,22bでは、はんだHがZ軸方向に濡れ上がることなく、フィレットが形成されない。このため、抵抗素子20を回路基板Cに接続するはんだHは、ある程度の柔軟性を有する。これにより、回路基板Cの撓みによる応力が吸収されるため、複合電子部品1に損傷が加わりにくくなる。
【0092】
図21は、2つの集積回路(IC1,IC2)が設けられた回路基板Cにおける複合電子部品1の接続例を示す図である。図21(A)(B)に示す回路基板ではいずれも、IC1とIC2とを接続する配線に、複合電子部品1の積層セラミックコンデンサ10及び抵抗素子20が接続されている。
【0093】
図21(A)に示す例では、IC1及びIC2が、4本の配線Vcc,Gnd,Vout1,Vout2によって接続されている。複合電子部品1の積層セラミックコンデンサ10が配線Gndと配線Vout1との間に接続され、複合電子部品1の抵抗素子20が配線Vccと配線Vout2との間に接続されている。
【0094】
図21(B)に示す例では、IC1及びIC2が、3本の配線Gnd,Vout1,Vout2によって接続されている。複合電子部品1の積層セラミックコンデンサ10が配線Gndと配線Vout1との間に接続され、複合電子部品1の抵抗素子20が配線Gndと配線Vout2との間に接続されている。
【0095】
図21(A)に示す構成では、複合電子部品1の積層セラミックコンデンサ10と抵抗素子20とが電気的に接続されていない。この一方で、図21(B)に示す構成では、複合電子部品1の積層セラミックコンデンサ10と抵抗素子20とが配線Gndを介して電気的に接続されている。
【0096】
[複合電子部品包装体200]
図22は、本実施形態に係る複合電子部品1が包装された複合電子部品包装体200の平面図である。図23は、複合電子部品包装体200の図22のF−F'線に沿った断面図である。複合電子部品包装体200は、複合電子部品1と、収容部210と、封止部220と、を具備する。
【0097】
収容部210は、Y軸方向に延びるキャリアテープとして構成される。収容部210は、Y軸方向に沿って間隔をあけて配列された複数の凹部211を有する。各凹部211はそれぞれ、複合電子部品1を1つずつ収容する。各凹部211には、Z軸方向上方に開放された取り出し口211aが設けられている。
【0098】
封止部220は、収容部210をZ軸方向上方から覆うカバーテープとして構成される。つまり、封止部220は、収容部210の各凹部211の取り出し口211aを塞ぎ、収容部210の各凹部211を封止している。封止部220は、剥離可能なように収容部210に貼り付けられている。
【0099】
複合電子部品1は、収容部210の凹部211内に、セラミック素体11の第1主面11cをZ軸方向下方に向け、セラミック素体11の第2主面11dをZ軸方向上方に向けた状態で配置されている。つまり、セラミック素体11の第2主面11dが取り出し口211a側を向いている。
【0100】
複合電子部品1の実装時には、封止部220を収容部210からY軸方向に沿って剥離させながら、収容部210の凹部211を順次開放する。そして、開放された凹部211内の複合電子部品1は、チップマウンタによってセラミック素体11の第2主面11dを吸着された状態で、取り出し口211aから取り出される。
【0101】
チップマウンタは、吸着している複合電子部品1を回路基板Cの実装面C1上の所定の位置に移動させる。このとき、セラミック素体11の第1主面11cが実装面C1に対向している。そして、チップマウンタによる第2主面11dの吸着を解除することにより、複合電子部品1を回路基板Cの実装面C1上に配置される。
【0102】
このように、複合電子部品包装体200を用いることにより、セラミック素体11のZ軸方向上下の向きを間違えることなく、複合電子部品1を実装可能となる。また、実装時に、収容部210の凹部211内の複合電子部品1の向きを変更する必要がないため、複合電子部品1を容易に実装可能となる。
【0103】
なお、収容部210は、複合電子部品1を収容可能な凹部211が配列されていればよく、キャリアテープに限定されない。例えば、収容部210は、凹部211が格子状に配列されたチップトレイなどであってもよい。また、封止部220は、凹部211を封止できればよく、カバーテープに限定されない。
【0104】
また、収容部210及び封止部220を形成する材料は、特定の種類に限定されない。収容部210及び封止部220を形成する材料としては、例えば、合成樹脂や紙などを用いることができる。また、収容部210及び封止部220は、同種の材料で形成されていても、異なる材料で形成されていてもよい。
【0105】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0106】
例えば、複合電子部品の第1電子部品は、一対の外部電極を有していればよく、積層セラミックコンデンサに限定されない。第1電子部品は、例えば、インダクタ、バリスタ、サーミスタなどのコンデンサ以外の積層セラミック電子部品であってもよい。更に、第1電子部品は、抵抗素子などの積層構造を有さない電子部品であってもよい。
【0107】
また、複合電子部品の第2電子部品は、機能膜と一対の電極膜とを有していればよく、抵抗素子に限定されない。第2電子部品は、例えば、ミアンダ配線パターンで形成された機能膜を有するインダクタであってもよく、強誘電体で形成された機能膜を有するコンデンサであってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…複合電子部品
10…積層セラミックコンデンサ(第1電子部品)
11…セラミック素体
11a,11b…端面
11c,11d…主面
12a,12b…外部電極
20…抵抗素子(第2電子部品)
21…抵抗膜
22a,22b…電極膜
23…絶縁膜
200…複合電子部品包装体
210…収容部
211…凹部
211a…取り出し口
220…封止部
C…回路基板
C1…実装面
H…はんだ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23