【解決手段】基板10と、前記基板上に設けられたスペーサ18と、前記スペーサ上に前記基板との間に空隙30が形成されるように設けられた支持膜22と、前記支持膜上に設けられ、平面視において前記空隙と重なる領域における前記支持膜の最も薄い膜厚より厚い膜厚を有する下部電極12と、前記下部電極上に設けられた圧電膜14と、前記圧電膜上に、前記下部電極とで前記圧電膜の少なくとも一部を挟む共振領域50が平面視において前記空隙と重なるように設けられた上部電極16と、を具備する圧電薄膜共振器。
前記圧電膜は窒化アルミニウムを主成分とし、前記支持膜は、窒化アルミニウム膜、酸化アルニミウム膜、窒化シリコン膜およびダイヤモンドライクカーボン膜の少なくとも1つを含む請求項1から12のいずれか一項に記載の圧電薄膜共振器。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1(a)は、実施例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図1(b)および
図1(c)は、
図1(a)のA−A断面図である。
図1(a)においてスペーサ18をハッチングして図示している。
図1(b)は、例えばラダー型フィルタの直列共振器Sを、
図1(c)は例えばラダー型フィルタの並列共振器Pを示している。
図1(b)および
図1(c)において、A−A断面の奥にあるスペーサ18を白抜きで示す。
【0025】
図1(a)および
図1(b)に示すように、シリコン(Si)基板である基板10上に、スペーサ18が設けられている。スペーサ18は例えばAu(金)膜である。スペーサ18は、平面視において矩形上の頂点に位置するように設けられている。スペーサ18上に平板状の支持膜22が設けられている。支持膜22は例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜である。基板10の平坦面と支持膜22との間に空隙30が形成されている。
【0026】
支持膜22上に、下部電極12が設けられている。下部電極12は例えばCr(クロム)膜とCr膜上のRu(ルテニウム)膜とを含む。下部電極12上に、(002)方向を主軸とする窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする圧電膜14が設けられている。圧電膜14を挟み下部電極12と対向する領域(共振領域50)を有するように圧電膜14上に上部電極16が設けられている。共振領域50は、楕円形状を有し、厚み縦振動モードの弾性波が共振する領域である。共振領域50は、平面視において空隙30と重なり、スペーサ18と重ならないように設けられている。上部電極16は例えばRu膜とRu膜上に設けられたCr膜とを含む。
【0027】
上部電極16上には周波数調整膜(不図示)として酸化シリコン膜が形成されている。共振領域50内の積層膜15は、下部電極12、圧電膜14、上部電極16および周波数調整膜を含む。周波数調整膜はパッシベーション膜として機能してもよい。下部電極12および上部電極16上に各々パッド層26が設けられている。パッド層26は、例えばTi膜およびAu膜である。支持膜22には犠牲層をエッチングするためのリリース孔35が形成されている。支持膜22はリリース孔35により分断されており、支持膜22の平面形状は矩形である。
【0028】
図1(c)を参照し、並列共振器Pの構造について説明する。並列共振器Pは直列共振器Sと比較し、上部電極16の下層16a(例えばRu膜)と上層16b(例えばCr膜)との間に、Ti(チタン)層からなる質量負荷膜20が設けられている。よって、積層膜15は直列共振器Sの積層膜に加え、共振領域50内の全面に形成された質量負荷膜20を含む。その他の構成は直列共振器Sの
図1(b)と同じであり説明を省略する。
【0029】
直列共振器Sと並列共振器Pとの共振周波数の差は、質量負荷膜20の膜厚を用い調整する。直列共振器Sと並列共振器Pとの両方の共振周波数の調整は、周波数調整膜の膜厚を調整することにより行なう。
【0030】
2.0GHzの共振周波数を有する圧電薄膜共振器の場合、スペーサ18を高さが100nmの金膜とする。支持膜22を膜厚が70nmの酸化アルミニウム膜とする。下部電極12を膜厚が100nmのCr膜と膜厚が200nmのRu膜とする。圧電膜14を膜厚が1260nmのAlN膜とする。上部電極16を膜厚が230nmのRu膜(下層16a)と膜厚が50nmのCr膜(上層16b)とする。周波数調整膜を膜厚が50nmの酸化シリコン膜とする。質量負荷膜20を膜厚が40nmのTi膜とする。各層の膜厚は、所望の共振特性を得るため適宜設定することができる。
【0031】
基板10としては、Si基板以外に、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板またはGaAs基板等を用いることができる。
【0032】
スペーサ18として、Au膜以外に、Ru膜、Rh(ロジウム)膜、Pt(白金)膜、もしくはIr(イリジウム)膜等の金属膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜、もしくはダイヤモンドライクカーボン膜等の絶縁膜、またはこれらの複合膜を用いることができる。
【0033】
支持膜22としては、酸化アルミニウム膜以外に、酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜、もしくはダイヤモンドライクカーボン膜等の絶縁膜、またはこれらの複合膜を用いることができる。絶縁膜および金属膜には他元素が添加されていてもよい。
【0034】
下部電極12および上部電極16としては、RuおよびCr以外にもAl、Ti、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Pt、RhもしくはIr等の単層膜またはこれらの積層膜を用いることができる。
【0035】
圧電膜14は、窒化アルミニウム以外にも、ZnO(酸化亜鉛)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、PbTiO
3(チタン酸鉛)等を用いることができる。また、例えば、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主成分とし、共振特性の向上または圧電性の向上のため他の元素を含んでもよい。例えば、添加元素として、Sc(スカンジウム)、2族元素もしくは12族元素と4族元素との2つの元素、または2族元素もしくは12族元素と5族元素との2つの元素を用いることにより、圧電膜14の圧電性が向上する。このため、圧電薄膜共振器の実効的電気機械結合係数を向上できる。2族元素は、例えばCa(カルシウム)、Mg(マグネシウム)またはSr(ストロンチウム)である。12族元素は例えばZn(亜鉛)である。4族元素は、例えばTi、Zr(ジルコニウム)またはHf(ハフニウム)である。5族元素は、例えばTa、Nb(ニオブ)またはV(バナジウム)である。さらに、圧電膜14は、窒化アルミニウムを主成分とし、B(ボロン)を含んでもよい。
【0036】
周波数調整膜としては、酸化シリコン膜以外にも窒化シリコン膜または窒化アルミニウム等を用いることができる。質量負荷膜20としては、Ti以外にも、Ru、Cr、Al、Cu、Mo、W、Ta、Pt、RhもしくはIr等の単層膜を用いることができる。また、例えば窒化シリコンまたは酸化シリコン等の窒化金属または酸化金属からなる絶縁膜を用いることもできる。質量負荷膜20は、上部電極16の層間(Ru膜とCr膜との間)以外にも、下部電極12の下、下部電極12の層間、上部電極16の上、下部電極12と圧電膜14との間または圧電膜14と上部電極16との間に形成することができる。質量負荷膜20は、共振領域50を含むように形成されていれば、共振領域50より大きくてもよい。
【0037】
図2(a)から
図4(a)は、実施例1の直列共振器の製造方法を示す断面図である。
図2(a)に示すように、平坦主面を有する基板10上にスペーサ18を形成する。スペーサ18の膜厚は例えば100nmから500nmである。スペーサ18は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い成膜する。その後、スペーサ18をフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。スペーサ18は、リフトオフ法を用い形成してもよい。
【0038】
図2(b)に示すように、基板10上に、スペーサ18を覆うように犠牲層38を例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い形成する。犠牲層38は、スペーサ18より厚く、MgO(酸化マグネシウム)、ZnO、Ge(ゲルマニウム)またはSiO
2(酸化シリコン)等のエッチング液またはエッチングガスに容易に溶解できる材料を用いる。その後、犠牲層38の上面およびスペーサ18の上面を、例えばエッチング法またはCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、スペーサ18の膜厚と犠牲層38の膜厚はほぼ同じとなる。
【0039】
図2(c)に示すように、スペーサ18および犠牲層38上に支持膜22を、例えばスパッタリンング法、真空蒸着法またはCVD法を用い形成する。支持膜22の膜厚は例えば10nmから100nmである。支持膜22にリリース孔35(
図1(a)から
図1(c)参照)を例えばエッチング法を用い形成する。支持膜22はリフトオフ法を用い形成してもよい。
【0040】
図2(d)に示すように、支持膜22上に下部電極12を、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い形成する。下部電極12をフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いパターニングする。下部電極12はリフトオフ法を用い形成してもよい。
【0041】
図3(a)に示すように、下部電極12および基板10上に圧電膜14を、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い形成する。
図3(b)に示すように、上部電極16をスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い成膜する。上部電極16をフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。上部電極16はリフトオフ法を用い形成してもよい。
【0042】
図3(c)に示すように、圧電膜14を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。
図4(a)に示すように、下部電極12および上部電極16上にパッド層26を、例えばスパッタリング法および真空蒸着法を用い形成する。パッド層26をフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。パッド層26はリフトオフ法を用い形成してもよい。その後、周波数調整膜を例えばスパッタリング法またはCVD法を用い形成する。フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い周波数調整膜を所望の形状にパターニングする。
【0043】
図4(b)および
図4(c)は、実施例1の並列共振器の製造方法を示す断面図である。
図4(b)に示すように、並列共振器Pにおいては、
図3(a)の後、上部電極16の下層16aを形成する。質量負荷膜20を、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法を用い成膜する。質量負荷膜20をフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。その後、上部電極16の上層16bを形成する。上部電極16を所望の形状にパターニングする。
図4(c)に示すように、
図3(c)および
図4(a)の工程を行う。
【0044】
図4(a)および
図4(c)の後、リリース孔35を介し、犠牲層38のエッチング液を支持膜22下の犠牲層38に導入する。これにより、犠牲層38が除去される。犠牲層38をエッチングする媒体としては、犠牲層38以外の共振器を構成する材料をエッチングしない媒体であることが好ましい。特に、エッチング媒体は、エッチング媒体が接触するスペーサ18および支持膜22がエッチングされない媒体であることが好ましい。以上により、
図1(b)に示した直列共振器Sおよび
図1(c)に示した並列共振器Pが作製される。
【0045】
実施例1によれば、支持膜22はスペーサ18上に設けられている。基板10と支持膜22との間に空隙30が形成されている。平面視において共振領域50は空隙30に重なる。下部電極12の膜厚は、支持膜22の膜厚以上である。このように、支持膜22の少なくとも一部が薄いため、共振領域50における共振特性の劣化が抑制できる。また、支持膜22が設けられているため、下部電極12および/または上部電極16等にクラックが形成される等の機械的な劣化を抑制できる。
【0046】
支持膜22が薄くとも支持膜22の強度を確保するためには、支持膜22のヤング率および/または硬度が大きいことが好ましい。例えば、支持膜22のヤング率は積層膜の中で最も厚い圧電膜14のヤング率より大きいことが好ましい。また、支持膜22の硬度は圧電膜14の硬度より大きいことが好ましい。また、下部電極12と導通しないように、支持膜22は絶縁体であることが好ましい。
【0047】
表1に窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルニミウム(Al
2O
3)、窒化シリコン(SiN)およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)のヤング率およびビッカース硬度を示す。
【表1】
【0048】
表1に示すように、酸化アルニミウム、窒化シリコンおよびダイヤモンドライクカーボンのヤング率は、窒化アルミニウムのヤング率と同程度か大きい。酸化アルニミウム、窒化シリコンおよびダイヤモンドライクカーボンのビッカース硬度は、窒化アルミニウムのビッカース強度より大きい。よって、圧電膜14の主成分が窒化アルミニウムのとき、支持膜22は、窒化アルミニウム膜、酸化アルニミウム膜、窒化シリコン膜およびダイヤモンドライクカーボン膜の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0049】
[実施例1の変形例1]
図5(a)は、実施例1の変形例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図5(b)は、
図5(a)のA−A断面図である。
図5(a)では、共振領域50、スペーサ18(ハッチング)、支持膜22およびパッド層26を図示し、下部電極12および上部電極16の図示を省略している。
図5(b)において、スペーサ18の断面をハッチングで示し、A−A断面の奥にあるスペーサ18を白抜きで示す。以下同様である。
【0050】
図5(a)および
図5(b)に示すように、スペーサ18は共振領域50を囲むように設けられている。スペーサ18の内周は共振領域50の外周に沿って設けられている。例えばスペーサ18の内周が共振領域50の外周に沿った領域では、スペーサ18の内周と共振領域50の外周との距離はほぼ一定である。共振領域50の長軸方向にはスペーサ18が設けられていない。スペーサ18が設けられていない領域は、リリース孔35と空隙30をつなげる導入路33となる。導入路33は、犠牲層38のエッチング液をリリース孔35から犠牲層38に導入する通路である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0051】
[実施例1の変形例2]
図6(a)は、実施例1の変形例2に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図6(b)は、
図6(a)のA−A断面図である。
図6(a)および
図6(b)に示すように、共振領域50の長軸方向および短軸方向に導入路33が設けられている。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0052】
犠牲層38を効率よく除去するためには、実施例1のように、空隙30は大きいことが好ましい。支持膜22の破壊を抑制するためには、実施例1の変形例1および2のように、スペーサ18の内周を共振領域50の外周に沿って設けることが好ましい。導入路33は、平面視において共振領域50の外周のうち最も離れた2箇所(楕円形では長軸方向の2箇所)とリリース孔35をつなぐように設けることが好ましい。これにより、犠牲層38を効率よく除去できる。
【0053】
パッド層26(パッド)は、共振領域50外において下部電極12および上部電極16の少なくとも一方上に設けられている。パッド層26には、例えばバンプまたはボンディングワイヤのような接続部材が接合される。このため、パッド層26には応力が加わりやすく支持膜22が破壊されやすい。そこで、実施例1の変形例1および2のように、平面視においてスペーサ18をパッド層26の少なくとも一部に重なるように設ける。これにより、支持膜22をより補強できる。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、支持膜22内に厚膜部24および薄膜部23を設ける例である。
図7(a)は、実施例2およびその変形例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図7(b)および
図7(c)は、それぞれ実施例2およびその変形例1における
図7(a)のA−A断面図である。
図7(a)では、共振領域50、スペーサ18、支持膜22、厚膜部24およびパッド層26を図示し、下部電極12および上部電極16の図示を省略している。スペーサ18および厚膜部24をハッチングで図示している。
図7(b)において、スペーサ18および支持膜22の断面をハッチングで示し、A−A断面の奥にあるスペーサ18および支持膜22を白抜きで示す。以下同様である。
【0055】
[実施例2およびその変形例1]
図7(a)から
図7(c)に示すように、支持膜22に薄膜部23と厚膜部24が設けられている。厚膜部24の膜厚は薄膜部23の膜厚より大きい。厚膜部24は、パッド層26と共振領域50とを横断するように設けられている。平面視において厚膜部24はパッド層26を含む。また、厚膜部24は、支持膜22の対向する辺の間に設けられている。
【0056】
図7(b)のように、実施例2では、支持膜22の上面は平面であり、厚膜部24では薄膜部23に対し下面が下に突出している。
図7(c)のように、実施例2の変形例1では、支持膜22の下面は平面であり、厚膜部24では薄膜部23に対し上面が上方に突出している。下部電極12の上面は平坦である。
【0057】
[実施例2の変形例2から5]
図8(a)から
図8(d)は、実施例2の変形例2から5に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図8(a)に示すように、実施例2の変形例2では、支持膜22は膜22aおよび22bを有している。膜22bは膜22a上に設けられている。膜22aの膜厚は一定である。薄膜部23は膜22aからなり、厚膜部24は膜22aと22bからなる。その他の構成は実施例2の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0058】
図8(b)に示すように、実施例2の変形例3では、厚膜部24および薄膜部23上で下部電極12の膜厚は一定である。これにより、下部電極12の上面には凸部が設けられる。圧電膜14の上面は平坦である。その他の構成は実施例2の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0059】
図8(c)に示すように、実施例2の変形例4では、厚膜部24および薄膜部23上で圧電膜14の膜厚は一定である。また、上部電極16の膜厚は一定である。これにより、下部電極12、圧電膜14および上部電極16の上面には各々凸部が設けられる。その他の構成は実施例2の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0060】
図8(d)に示すように、実施例2の変形例5では、支持膜22は膜22aおよび22bを有している。膜22bは膜22a下に設けられている。膜22aの膜厚は一定である。薄膜部23は膜22aからなり、厚膜部24は膜22aと22bからなる。その他の構成は実施例2の変形例4と同じであり説明を省略する。
【0061】
[実施例2の変形例6および7]
図9(a)および
図9(b)は、実施例2の変形例6および7に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図9(a)に示すように、実施例2の変形例6では、支持膜22は膜22aおよび22bを有している。膜22aの膜厚は一定である。膜22bは膜22a下に設けられている。薄膜部23は膜22aからなり、厚膜部24は膜22aと22bからなる。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0062】
図9(b)に示すように、実施例2の変形例7では、支持膜22は膜22aおよび22bを有している。膜22bは膜22a上に設けられている。その他の構成は実施例2の変形例6と同じであり説明を省略する。
【0063】
実施例2およびその変形例によれば、支持膜22は薄膜部23と厚膜部24とを有する。厚膜部24により支持膜22を補強することができる。下部電極12は、薄膜部23より厚ければよい。すなわち、下部電極12の膜厚は、平面視において空隙30と重なる領域(または共振領域50)における支持膜22の最も薄い膜厚より大きい。下部電極12の膜厚は、平面視において空隙30と重なる領域(または共振領域50)における支持膜22の最も厚い膜厚より大きいことがより好ましい。
【0064】
共振特性の劣化を抑制するため、下部電極12の膜厚は、空隙30と重なる領域(または共振領域50)における支持膜22の最も薄い膜厚の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。下部電極12の膜厚は、空隙30と重なる領域(または共振領域50)における支持膜22の最も厚い膜厚以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上がさらに好ましい。支持膜22の機械的な強度を確保するため、下部電極12の膜厚は、空隙30と重なる領域(または共振領域50)における支持膜22の最も薄い膜厚の10倍以下が好ましい。
【0065】
実施例2およびその変形例6および7のように、厚膜部24の下面は薄膜部23の下面より下方に突出していてもよい。実施例2の変形例1から5のように、厚膜部24の上面は薄膜部23の上面より上方に突出していてもよい。
【0066】
支持膜22の上面に凸部が存在すると、実施例2の変形例1および2のように、下部電極12の膜厚が異なる。または下部電極12、圧電膜14および上部電極16の少なくとも一つの上面に凸部が形成される。このため、共振特性が劣化する可能性がある。よって、実施例2およびその変形例6および7のように、共振領域50内の支持膜22の上面は平面であることが好ましい。
【0067】
実施例2およびその変形例では、厚膜部24の膜厚が一定の例を説明したが、厚膜部24の膜厚は一定でなくてもよい。厚膜部24と薄膜部23は単一の膜でもよい。厚膜部24は薄膜部23の膜22aと膜22aと異なる膜22bを含んでもよい。膜22aと22bは同じ材料の膜でもよいし、異なる材料の膜でもよい。
【実施例3】
【0068】
[実施例3およびその変形例1]
実施例3は、薄膜部23および厚膜部24の平面形状を異ならせる例である。
図10(a)および
図10(b)は、実施例3およびその変形例1に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
【0069】
図10(a)に示すように、実施例3では、厚膜部24は2本の平行な直線状である。
図10(b)に示すように、実施例3の変形例1では、厚膜部24は幅が実施例2より狭い直線状であり、平面視においてパッド層26の一部と重なる。その他の構成は、実施例2およびその変形例と同じであり説明を省略する。実施例3およびその変形例1のように、共振領域50内の厚膜部24の面積は共振領域50の面積の1/2以下が好ましく、1/5以下がより好ましい。これにより、圧電薄膜共振器の共振特性の劣化を抑制できる。
【0070】
[実施例3の変形例2]
図11(a)は、実施例3の変形例2に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図11(b)は、
図11(a)のA−A断面図である。
図11(a)および
図11(b)に示すように、厚膜部24は十字状に設けられている。支持膜22の平面形状は矩形であり、厚膜部24は矩形の4辺の間に連続して設けられている。共振領域50は全て厚膜部24である。その他の構成は実施例2の変形例1と同じであり説明を省略する。実施例3の変形例2のように、共振領域50は厚膜部24でもよい。これにより、共振領域50の支持膜22を補強できる。
【0071】
[実施例3の変形例3]
図12(a)は、実施例3の変形例3に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図12(b)は、
図12(a)のA−A断面図である。
図12(a)および
図12(b)に示すように、厚膜部24は共振領域50の両側において長軸方向に延伸して設けられ、平面視においてパッド層26を含んでいる。支持膜22の平面形状は矩形であり、厚膜部24は矩形の対向する一対の辺の間に連続して設けられている。共振領域50は全て薄膜部23である。その他の構成は実施例3の変形例2と同じであり説明を省略する。実施例3の変形例3のように、共振領域50は薄膜部23でもよい。これにより、共振特性の劣化を抑制できる。
【0072】
[実施例3の変形例4]
図13(a)は、実施例3の変形例4に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図13(b)は、
図13(a)のA−A断面図である。
図13(a)および
図13(b)に示すように、厚膜部24は共振領域50を囲むように設けられている。その他の構成は実施例3の変形例3と同じであり説明を省略する。実施例3の変形例4のように、厚膜部24が共振領域50を囲むことで、共振領域50の支持膜22を補強できる。
【0073】
[実施例3の変形例5]
図14(a)は、実施例3の変形例5に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図14(b)は、
図14(a)のA−A断面図である。
図14(a)および
図14(b)に示すように、厚膜部24は共振領域50の両側において共振領域50の短軸方向に延伸するように設けられている。その他の構成は実施例3の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0074】
[実施例3の変形例6]
図15(a)は、実施例3の変形例6に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図15(b)は、
図15(a)のA−A断面図である。
図15(a)および
図15(b)に示すように、支持膜22の平面形状は矩形であり、共振領域50の両側に設けられた2つの厚膜部24はそれぞれ矩形の3辺の間に連続して設けられている。その他の構成は実施例3の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0075】
[実施例3の変形例7]
図16(a)は、実施例3の変形例7に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図16(b)は、
図16(a)のA−A断面図である。
図16(a)および
図16(b)に示すように、支持膜22の平面形状は矩形であり、共振領域50の両側に設けられた2つの厚膜部24はそれぞれ矩形の接続する2辺の間に連続して設けられている。その他の構成は実施例3の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0076】
[実施例3の変形例8]
図17(a)は、実施例3の変形例8に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図17(b)は、
図17(a)のA−A断面図である。
図17(a)および
図17(b)に示すように、スペーサ18は共振領域50の周りに複数設けられ、厚膜部24はスペーサ18間に連続して設けられている。支持膜22の平面形状は矩形であり、スペーサ18は矩形の4頂点に対応する位置に設けられている。厚膜部24は、4つのスペーサ18間に連続して設けられている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。実施例3の変形例8のように、スペーサ18間に連続して厚膜部24を設けることで、支持膜22をより補強できる。
【0077】
[実施例3の変形例9]
図18(a)は、実施例3の変形例9に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図18(b)は、
図18(a)のA−A断面図である。
図18(a)および
図18(b)に示すように、1つの支持膜22に複数の共振領域50が設けられている。複数の共振領域50の両側に厚膜部24が設けられ、複数の共振領域50の間に厚膜部24が設けられている。共振領域50の両側の厚膜部24と共振領域50間の厚膜部24は接続されている。その他の構成は実施例3の変形例5と同じであり説明を省略する。複数の共振領域50の両側に厚膜部24を設けることで、複数の共振領域50における支持膜22を補強することができる。複数の共振領域50の間に厚膜部24を設けることで、支持膜22を補強することができる。
【0078】
[実施例3の変形例10]
図19(a)は、実施例3の変形例10に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図19(b)は、
図19(a)のA−A断面図である。
図19(a)および
図19(b)に示すように、複数の共振領域50の間に厚膜部24が設けられている。その他の構成は実施例3の変形例9と同じであり説明を省略する。
【0079】
実施例3の変形例3−9のように、平面視において共振領域50の両側に厚膜部24が設けられ、共振領域50に厚膜部24は設けられていない。これにより、共振領域50における支持膜22をより補強し、かつ共振特性の劣化を抑制できる。
【0080】
実施例3およびその変形例1−4、6−7および9のように、スペーサ18は、共振領域50を囲むように複数設けられ、平面視において、厚膜部24は、複数のスペーサ18のうち一対のスペーサ18の間の領域から、別の一対のスペーサ18の間の領域にかけて設けられている。これにより、共振領域50における支持膜22をより補強できる。
【0081】
実施例3の変形例8のように、平面視において、厚膜部24は、複数のスペーサ18のうち少なくとも2つの間に連続して設けられている。これにより、支持膜22をより補強できる。
【0082】
実施例3の変形例9および10のように、1つの支持膜22に共振領域50が複数設けられ、複数の共振領域50は、複数のスペーサ18のうち複数の共振領域50の配列方向に隣接するスペーサ18間に設けられている。このような構造では、支持膜22が破損しやすい。そこで、実施例3の変形例9のように、厚膜部24を複数の共振領域50の配列方向に直交する方向の両側にそれぞれ直交する方向からみて共振領域50と重なるように連続して設け、複数の共振領域50に設けない。これにより、複数の共振領域50における支持膜22をより補強することができる。
【0083】
また、実施例3の変形例9および10のように、厚膜部24を複数の共振領域50の間に設け、複数の共振領域50内に設けない。これにより、複数の共振領域50における支持膜22をより補強することができる。
【0084】
実施例3およびその変形例1−4、6および7のように、平面視において厚膜部24を応力が加わりやすいパッド(パッド層26)の少なくとも一部に重なるように設ける。これにより、支持膜22をより補強できる。
【実施例4】
【0085】
図20(a)は、実施例4に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図20(b)は、
図20(a)のA−A断面図である。
図20(a)および
図20(b)に示すように、1つの支持膜22に1つの共振領域50が設けられている。スペーサ18は、共振領域50の片側に設けられ、反対側には設けられていない。スペーサ18が設けられた領域は薄膜部23であり、スペーサ18以外の領域は厚膜部24である。その他の構成は実施例3と同じであり説明を省略する。実施例4のように、共振領域50の片側にのみスペーサ18が設けられていると、支持膜22は破壊されやすい。そこで、スペーサ18のない領域に厚膜部24を設けることで、支持膜22を補強できる。
【0086】
[実施例4の変形例1]
図21(a)は、実施例4の変形例1に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図21(b)は、
図21(a)のA−A断面図である。
図21(a)および
図21(b)に示すように、厚膜部24はスペーサ18から共振領域50の反対側の支持膜22の端部に延伸している。その他の構成は実施例4と同じであり説明を省略する。実施例4の変形例1のように、線状の厚膜部24がスペーサ18からスペーサ18と反対側の支持膜22の端部まで延伸する。これにより、支持膜22を補強できる。
【0087】
[実施例4の変形例2]
図22(a)は、実施例4の変形例2に係る圧電薄膜共振器の平面図、
図22(b)は、
図22(a)のA−A断面図である。
図22(a)および
図22(b)に示すように、支持膜22の平面形状は矩形であり、スペーサ18は矩形の一辺に沿って設けられ、厚膜部24は矩形の他の辺に沿って設けられている。その他の構成は実施例4と同じであり説明を省略する。実施例4の変形例2のように、支持膜22の矩形形状のうちスペーサ18が設けられていない辺に沿って厚膜部24が設けられている。これにより、支持膜22を補強できる。
【0088】
実施例4およびその変形例のように、1つの支持膜22において、スペーサ18は、共振領域50に対して一方の側に設けられ、共振領域50に対して一方の側の反対の側には設けられていない。この構造では支持膜22が破壊されやすい。そこで、厚膜部24をスペーサ18とスペーサ18の反対側の支持膜22の端部との間に連続的に設ける。これにより、支持膜22をより補強することができる。厚膜部24は共振領域50の少なくとも一部に設けられていてもよいし、共振領域50内に設けられてなくてもよい。
【0089】
また、実施例1の変形例2のように、厚膜部24を支持膜22の外周のうちスペーサ18が設けられていない領域に沿って設け、共振領域50に設けない。これにより、支持膜22をより補強することができ、かつ共振特性の劣化を抑制できる。
【実施例5】
【0090】
図23(a)および
図23(b)は、実施例5およびその変形例1に係る圧電薄膜共振器の断面図である。
図23(a)に示すように、下部電極12、圧電膜14および上部電極16を覆うように保護膜21が設けられている。保護膜21は、水分等が拡散し難い膜である。これにより、圧電膜14の劣化を抑制できる。その他の構成は実施例1から4およびその変形例と同じであり説明を省略する。
【0091】
窒化アルミニウムのように圧電膜14が潮解性のある場合、保護膜を設けることで、圧電膜14の加水分解を抑制できる。保護膜21は、水分等が拡散し難い材料である窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、ダイヤモンドライクカーボン膜の少なくとも1つの膜であることが好ましい。支持膜22にも水分等が拡散し難い材料とすることが好ましい。
【0092】
[実施例5の変形例1]
図23(b)に示すように、圧電膜14に挿入膜28が挿入されている。挿入膜28は共振領域50の外周領域の少なくとも一部に設けられ、共振領域50の中央領域に設けられていない。その他の構成は実施例5と同じであり説明を省略する。実施例5の変形例1では、挿入膜28によりQ値等を向上できる。挿入膜28としては、酸化シリコン膜のように圧電膜14よりヤング率および/または音響インピーダンスの小さい材料を用いることが好ましい。挿入膜28は下部電極12と上部電極16との間に設けられていればよい。
【0093】
[実施例5の変形例2]
図24は、実施例5の変形例2に係る圧電薄膜共振器の平面図である。
図24に示すように、共振領域50の平面形状は辺が互いに非平行な四角形である。その他の構成は実施例1から5およびその変形例と同じであり説明を省略する。実施例5の変形例2のように、共振領域50の形状は多角形でもよい。
【実施例6】
【0094】
実施例6は、フィルタの例である。
図25は、実施例6に係るフィルタの回路図である。
図25に示すように、端子T1とT2との間に、直列共振器S1からS4が直列に接続され、並列共振器P1からP3が並列に接続されている。直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3の少なくとも1つの圧電薄膜共振器を実施例1から5およびその変形例の圧電薄膜共振器とすることができる。
【0095】
[実施例6の変形例1]
図26は、実施例6の変形例1に係るフィルタの平面図である。
図27(a)および
図27(b)は、
図26のA−A断面図である。
図26、
図27(a)および
図27(b)に示すように、単一基板10および単一の支持膜22上に、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3が設けられている。各共振器間は、下部電極12および上部電極16を介し電気的に接続されている。
【0096】
下部電極12および/または上部電極16上にパッド層26が設けられている。パッド層26は、端子T1、T2およびグランド端子Tgに対応する。パッド層26にはボンディングワイヤまたはバンプが設けられる。端子T1、T2およびグランド端子Tgに対応するパッド層26に重なるようにスペーサ18が設けられている。複数の共振領域50を全体として囲むように複数のスペーサ18が設けられている。
【0097】
図27(a)では挿入膜28が設けられておらず、
図27(b)では挿入膜が設けられている。
【0098】
[実施例6の変形例2]
図28は、実施例6の変形例2に係るフィルタの平面図である。
図28に示すように、支持膜22の平面形状は矩形でなく、共振領域50、下部電極12および上部電極16の形状に沿った形状である。その他の構成は実施例6の変形例2と同じであり説明を省略する。
【0099】
実施例6の変形例1および2のように、フィルタを構成する圧電薄膜共振器は単一の支持膜22に設けられていてもよい。実施例6およびその変形例における直列共振器および並列共振器の個数は適宜設定することができる。
【実施例7】
【0100】
実施例7はデュプレクサの例である。
図29は、実施例7に係るデュプレクサの回路図である。
図29に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例6およびその変形例のフィルタとすることができる。
【0101】
マルチプレクサの例としてデュプレクサを説明したが、マルチプレクサはトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0102】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。