特開2018-2104(P2018-2104A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-2104(P2018-2104A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20171208BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20171208BHJP
【FI】
   B60C11/01 A
   B60C11/01 B
   B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-135803(P2016-135803)
(22)【出願日】2016年7月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏彦
(57)【要約】
【課題】トラクションを高めることにより悪路走破性を向上しつつ、耐偏摩耗性を向上できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部3は、ショルダー領域において、第1ブロック31と、第1ブロック31よりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロック32とを、タイヤ周方向に交互に備える。サイドウォール部2は、第1ブロック31の外側に設けられた第1突起21と、第2ブロック32の外側に設けられた第2突起22とを備える。第1突起21と第2突起22は、それぞれタイヤ径方向に延在している。第2突起22の外側端22aは、第2ブロック32の側面に接続され且つ第1突起21の外側端21aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。第1突起21の側面とサイドウォール部2の表面2aとがなす角度は、第2突起22の側面とサイドウォール部2の表面2aとがなす角度と同じかそれよりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、そのビード部からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、そのサイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部は、ショルダー領域において、第1ブロックと、前記第1ブロックよりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロックとを、タイヤ周方向に交互に備え、
前記サイドウォール部は、前記第1ブロックのタイヤ幅方向外側に設けられた第1突起と、前記第2ブロックのタイヤ幅方向外側に設けられた第2突起とを備え、
前記第1突起と前記第2突起は、それぞれタイヤ径方向に延在しており、
前記第2突起のタイヤ径方向外側端は、前記第2ブロックの側面に接続され且つ前記第1突起のタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側に配置され、
前記第1突起の側面と前記サイドウォール部の表面とがなす角度θ1は、前記第2突起の側面と前記サイドウォール部の表面とがなす角度θ2と同じかそれよりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1突起のタイヤ径方向外側端は、前記第1ブロックを区画する横溝の溝底と同じ高さかそれよりもタイヤ径方向内側に位置する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2突起のタイヤ径方向外側端は、前記第2ブロックの表面よりもタイヤ径方向内側に位置する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2突起のタイヤ径方向内側端は、前記第1突起のタイヤ径方向内側端よりもタイヤ径方向外側に位置する請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
角度θ1が80〜100度であり、角度θ2が110〜135度である請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥濘地や岩場などの悪路での走行を目的とした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
悪路での走行を目的とした空気入りタイヤに関して、タイヤ周方向に沿って配置した複数の突起をサイドウォール部に設ける技術が知られている(例えば、本出願人による特許文献1〜3参照)。この技術によれば、泥濘地や砂場、雪道などを走行する場面において、該突起の剪断抵抗によりトラクションを発生し、悪路走破性を向上することができる。
【0003】
また、特許文献3に記載のタイヤでは、トレッド部が、ショルダー領域において、第1ブロックと、その第1ブロックよりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロックとを、タイヤ周方向に交互に備える。かかる構成によれば、路面突起の引っ掛かりによりトラクションが向上するものの、第2ブロックの突き出た部分で接地圧が高くなるため、その部分が優先的に摩耗することによる偏摩耗(特にヒールアンドトウ摩耗や肩落ち摩耗)を生じやすい。それ故、耐偏摩耗性が十分とは言えず、これを更に改善する余地があった。
【0004】
特許文献4には、タイヤ周方向に沿って配置した複数の突起をサイドウォール部に設けた空気入りタイヤが記載されている。しかし、これは、ランフラットタイヤが備えるサイドウォール補強層を冷却するための技術であり、上述した耐偏摩耗性の問題に対して、その解決手段を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−291936号公報
【特許文献2】特開2010−264962号公報
【特許文献3】特開2013−119277号公報
【特許文献4】特開2013−249065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トラクションを高めることにより悪路走破性を向上しつつ、耐偏摩耗性を向上できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビード部と、そのビード部からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、そのサイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、ショルダー領域において、第1ブロックと、前記第1ブロックよりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロックとを、タイヤ周方向に交互に備え、前記サイドウォール部は、前記第1ブロックのタイヤ幅方向外側に設けられた第1突起と、前記第2ブロックのタイヤ幅方向外側に設けられた第2突起とを備え、前記第1突起と前記第2突起は、それぞれタイヤ径方向に延在しており、前記第2突起のタイヤ径方向外側端は、前記第2ブロックの側面に接続され且つ前記第1突起のタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側に配置され、前記第1突起の側面と前記サイドウォール部の表面とがなす角度θ1は、前記第2突起の側面と前記サイドウォール部の表面とがなす角度θ2と同じかそれよりも小さいものである。
【0008】
この空気入りタイヤでは、第1ブロックよりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロックと、タイヤ径方向に延在した第1突起及び第2突起により、泥濘地などを走行する場面でトラクションを発生することができる。しかも、第2突起のタイヤ径方向外側端(以下、単に「外側端」と呼ぶ場合がある)が第2ブロックの側面に接続され且つ第1突起の外側端よりもタイヤ径方向外側に配置されていることにより、第2ブロックと第2突起とが協働して大きな剪断抵抗を生じさせ、トラクションを高めて悪路走破性を向上できる。更に、角度θ1と角度θ2が上記の関係を満たすことにより第2ブロックの剛性が高められ、偏摩耗(特にヒールアンドトウ摩耗や肩落ち摩耗)の発生を抑えて耐偏摩耗性を向上できる。
【0009】
前記第1突起のタイヤ径方向外側端は、前記第1ブロックを区画する横溝の溝底と同じ高さかそれよりもタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、第1突起の外側端を第2突起の外側端から適度に離して、第2突起の剪断抵抗によるトラクションを良好に発生させることがでる。
【0010】
前記第2突起のタイヤ径方向外側端は、前記第2ブロックの表面よりもタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、第2突起の外側端への荷重集中を避けられるので、偏摩耗の発生を抑制するうえで有効である。
【0011】
前記第2突起のタイヤ径方向内側端は、前記第1突起のタイヤ径方向内側端よりもタイヤ径方向外側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、タイヤ径方向における第1突起と第2突起との長さの差が大きくなり過ぎず、ダイナミックアンバランスを良好に低減できる。
【0012】
角度θ1が80〜100度であり、角度θ2が110〜135度であることが好ましい。この場合、角度θ1は相対的に小さいが、上記のように90度前後に設定されることで、第1突起の剛性は然程に低下しない。そして、角度θ2を上記の如く設定することにより第2突起の剛性を良好に確保し、延いては第2ブロックの剛性を高めて耐偏摩耗性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を概略的に示すタイヤ子午線半断面図
図2】該タイヤのトレッド部とサイドウォール部を示す平面視展開図
図3】該タイヤの要部の外輪郭形状を示す断面図
図4】第1突起及び第2突起の断面図
図5】比較例のタイヤにおける平面視展開図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を概略的に示すタイヤ子午線半断面図であり、図2のA−A断面に相当する。図2は、該タイヤのトレッド部とサイドウォール部を示す平面視展開図である。図3は、該タイヤの要部の外輪郭形状を示す断面図である。
【0015】
空気入りタイヤTは、泥濘地や岩場を含む悪路での走行を目的としたオフロード用空気入りラジアルタイヤである。このタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部1は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、ビードコア1aのタイヤ径方向外側に配置されたビードフィラー1bとを備える。
【0016】
この空気入りタイヤTは、更に、一対のビード部1の間に設けられたカーカス4と、トレッド部3におけるカーカス4の外周に設けられたベルト5とを備える。カーカス4は、全体としてトロイド状をなし、その端部がビードコア1aとビードフィラー1bを挟み込むようにして巻き上げられている。ベルト5は、内外に積層された2枚のベルトプライからなり、その外周側にトレッドゴム6が設けられている。トレッドゴム6の表面には、主溝33や横溝34を含むトレッドパターンが形成されている。
【0017】
カーカス4の内周側には、空気圧保持のためにインナーライナー7が設けられている。インナーライナー7は、空気が充填されるタイヤTの内部空間に面している。サイドウォール部2において、インナーライナー7はカーカス4の内周側に直接的に貼り付けられており、それらの間に他の部材は介在していない。
【0018】
トレッド部3は、ショルダー領域において、第1ブロック31と、第1ブロック31よりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロック32とを、タイヤ周方向に交互に備える。ショルダー領域は、トレッド部3のタイヤ幅方向外側に位置する接地端を含む領域である。第1ブロック31と第2ブロック32は、それぞれ、タイヤ周方向に沿って延びた主溝33と、その主溝33に交差して延びた横溝34とによって区画されている。このようなブロックがショルダー領域に設けられていれば、他の領域のトレッドパターンは特に限定されない。
【0019】
本実施形態では、図2のように、タイヤ周方向に沿って第1ブロック31と第2ブロック32とが1つずつ交互に配置され、トレッドゴム6全体の接地端側エッジがタイヤ周方向に沿って凹凸状をなす。タイヤ赤道TCから第2ブロック32の接地端側エッジまでの距離は、タイヤ赤道TCから第1ブロック31の接地端側エッジまでの距離よりも大きく、それらの差は第2ブロック32の突出量Pに相当する。第2ブロック32の剪断抵抗によるトラクションを良好に得るうえで、突出量Pは1.5mm以上であることが好ましい。
【0020】
サイドウォール部2は、第1ブロック31のタイヤ幅方向外側に設けられた第1突起21と、第2ブロック32のタイヤ幅方向外側に設けられた第2突起22とを備える。第1突起21及び第2突起22は、いわゆるバットレス領域において、タイヤTのプロファイルラインに沿ったサイドウォール部2の表面2aから隆起している。バットレス領域は、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側の領域であって、平坦な舗装路での通常走行時には接地しない部分である。泥濘地や砂場のような軟弱路では、車両の重みによりタイヤが沈み込むため、バットレス領域が擬似的に接地する。
【0021】
図3に拡大して示すように、第1突起21と第2突起22は、それぞれタイヤ径方向に延在している。より具体的に、第1突起21は、タイヤ径方向外側端21a(以下、外側端21a)とタイヤ径方向内側端21b(以下、内側端21b)との間で延在し、第2突起22は、タイヤ径方向外側端22a(以下、外側端22a)とタイヤ径方向内側端22b(以下、内側端22b)との間で延在している。第2突起22の外側端22aは、第2ブロック32の側面に接続され且つ第1突起21の外側端21aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0022】
このタイヤTでは、泥濘地や砂場、雪道などの軟弱路を走行する場面において、第2ブロック32、第1突起21及び第2突起22の剪断抵抗によりトラクションを発生する。しかも、第1ブロック31よりもタイヤ幅方向外側に突き出た第2ブロック32の側面に、第1突起21よりもタイヤ径方向外側に突き出た第2突起22の外側端22aを接続しているため、第2ブロック32と第2突起22とが協働して大きな剪断抵抗を生じ、その結果、トラクションを高めて悪路走破性を向上できる。
【0023】
図4は、第1突起21と第2突起22の断面図であり、図2のB−B断面に相当する。本実施形態では、第1突起21の断面が四角形状をなし、より具体的には長方形状をなす。また、本実施形態では、第2突起22の断面が四角形状をなし、より具体的には表面2aに向けて拡幅した台形状をなす。第1突起21の側面とサイドウォール部2の表面2aとがなす角度θ1は、第2突起22の側面とサイドウォール部2の表面2aとがなす角度θ2と同じかそれよりも小さく設定される。本実施形態では、角度θ1が角度θ2よりも小さい例を示す。
【0024】
トレッド部3のショルダー領域では、第2ブロック32が第1ブロック31よりもタイヤ幅方向外側に突き出ていることから、その第2ブロック32の突き出た部分に荷重が集中して摩耗が進行し、偏摩耗(特にヒールアンドトウ摩耗や肩落ち摩耗)を生じやすい。しかし、このタイヤTでは、角度θ1と角度θ2の関係を上記の如く設定しているため、第2ブロック32の剛性が高められ、そのような偏摩耗の発生を抑えて耐偏摩耗性を向上できる。角度θ1は角度θ2と同じでも構わないが、偏摩耗の発生を抑えるうえで角度θ1を角度θ2よりも小さくすることが好ましい。
【0025】
また、岩場などを走行する場面では、第1突起21と第2突起22が外傷因子(例えば、岩肌の角張った部分)をサイドウォール部2の表面2aから遠ざけるように作用するため、このタイヤTは耐外傷性にも優れる。第1突起21及び第2突起22は、少なくとも片方のサイドウォール部2に設けられていればよいが、悪路走破性や耐外傷性を向上する観点から、両方のサイドウォール部2に設けられることが好ましい。
【0026】
外側端21aを外側端22aから適度に離すうえで、第1突起21の外側端21aは、第1ブロック31を区画する横溝34の深さの半分よりもタイヤ径方向内側に位置することが好ましく、その横溝34の溝底と同じ高さかそれよりもタイヤ径方向内側に位置することがより好ましい。本実施形態では、外側端21aが横溝34の溝底と同じ高さに位置しており、第1ブロック31の側面には接続されていない。タイヤ径方向における外側端21aと外側端22aとの距離D1は、例えば3.0〜20.0mmに設定される。
【0027】
第2突起22の外側端22aは、横溝34の溝底よりもタイヤ径方向外側に配置され、既述のように第2ブロック32の側面に接続される。本実施形態では、第2突起22の外側端22aが、第2ブロック32の表面よりもタイヤ径方向内側に位置し、第2ブロック32の表面と第2突起22の外側端22aとが段差を形成している。これにより、接地幅が広くなり過ぎないため、第2ブロック32に起因した偏摩耗(特にヒールアンドトウ摩耗や肩落ち摩耗)の発生を抑制できる。
【0028】
本実施形態では、第2突起22の内側端22bが、第1突起21の内側端21bよりもタイヤ径方向内側に位置する。これにより、タイヤ径方向における第1突起21と第2突起22との長さの差が大きくなり過ぎず、バットレス領域におけるゴムボリュームの変動を抑えて、ダイナミックアンバランスを良好に低減できる。タイヤ径方向における内側端21bと内側端22bの距離D2は、例えば3.0〜20.0mmに設定される。距離D1と距離D2との差は、10.0mm以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態では、内側端21bと内側端22bが、それぞれタイヤ最大幅位置35よりもタイヤ径方向外側に配置されている。タイヤ最大幅位置35は、タイヤTのプロファイルラインがタイヤ幅方向においてタイヤ赤道TCから最も離れる位置である。該プロファイルラインは、突起等を除いたサイドウォール部2の外表面となる輪郭線であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定される子午線断面形状を持つ。
【0030】
本実施形態では、内側端21bが凹状の円弧面によって形成され、この内側端21bではタイヤ径方向内側に向かって第1突起21の高さが漸減している。このため、第1突起21の根元でのクラックの発生が抑えられる。これと同様に、内側端22bも凹状の円弧面によって形成されているため、第2突起22の根元でのクラックの発生が抑えられる。
【0031】
本実施形態では、図2のように、第1突起21と第2突起22とがタイヤ周方向に分断され互いに独立して形成されているが、これに限られない。サイドウォール部2の表面2aを基準とした第1突起21の高さH1は、外側端21aのエッジから内側端21bのエッジまで略一定である。これと同様に、第2突起22の高さH2は、外側端22aのエッジから内側端22bのエッジまで略一定である。本実施形態では高さH1と高さH2が実質的に同一であるが、これに限られない。第2ブロック32の剛性を高める観点、及び悪路走破性や耐外傷性を向上する観点から、高さH1及び高さH2は、それぞれ5mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましい。
【0032】
タイヤ周方向における第1突起21の幅W1は、その第1突起21に隣接した第1ブロック31の接地端側エッジの長さと同じかそれよりも短いことが好ましい。また、タイヤ周方向における第2突起22の幅W2は、その第2突起22に隣接した第2ブロック32の接地端側エッジの長さと同じかそれよりも短いことが好ましい。本実施形態では、図2のように、第1突起21と第2突起22が、それぞれ隣接するブロックの接地端側エッジからタイヤ周方向にはみ出ていないため、横溝34に侵入した泥土の排出を妨げない。本実施形態では幅W1と幅W2とが実質的に同一であるが、これに限られない。第2ブロック32の剛性を高める観点から、幅W1及び幅W2は20.0mm以上が好ましい。
【0033】
角度θ1は、好ましくは80〜100度であり、このように90度前後に設定することで、第1突起21の剛性は然程に低下しない。角度θ2は、好ましくは110〜135度であり、これによって第2突起22の剛性が良好に確保される。角度θ2を大きくし過ぎると第2突起22の剪断抵抗が小さくなるため、角度θ2を135度以下に設定することが好ましい。したがって、かかる角度設定により、第1突起21と第2突起22の剪断抵抗によるトラクションを良好に発生させることができるとともに、第2ブロック32の剛性を高めて耐偏摩耗性を向上できる。
【0034】
本実施形態では、図4のように第1突起21と第2突起22の断面形状が偏平であり、幅W1は高さH1よりも大きく、幅W2は高さH2よりも大きい。また、本実施形態では、第1突起21の両側の側面において角度θ1が互いに同じであり、第2突起22の両側の側面において角度θ2が互いに同じであるが、これらを互いに異ならせても構わない。但し、その場合であっても、角度θ1及び角度θ2の各々が上記範囲内にあることが望ましく、角度θ1の各々は角度θ2の各々と同じかそれよりも小さく設定される。
【0035】
上述した各寸法値は、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態で測定したものである。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim"、或いはETRTOであれば"Measuring Rim" とする。また、正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0036】
本発明の空気入りタイヤは、前述の如き作用効果を有して悪路走破性を向上できるため、泥濘地や岩場を含む悪路での走行を目的としたオフロードレース用や、災害現場への派遣車両用として、ピックアップトラックなどのライトトラックに好適に用いることができる。
【0037】
本発明の空気入りタイヤは、上記の如きトレッド部のショルダー領域のブロック及びサイドウォール部の突起を設けたこと以外は、通常の空気入りタイヤと同等に構成できる。したがって、従来公知の材料、形状、構造、製法などは、いずれも本発明に採用できる。
【0038】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。タイヤの各性能評価は、下記(1)、(2)のようにして行った。
【0040】
(1)悪路走破性
サイズLT265/70R17の空気入りタイヤを実車(外国製、小型トラック)に装着し、泥濘地を含む悪路を5km走行するのに要した時間を計測した。該タイヤは、17×7.5JJのリムに組み付け、前輪の空気圧を420kPaとし、後輪の空気圧を520kPaとした。比較例の結果を100とする指数で評価し、数値が小さいほど悪路走破性に優れていることを示す。
【0041】
(2)耐偏摩耗性(耐ヒールアンドトウ摩耗性)
上記のタイヤを用いて一般路を12000km走行し、ショルダー領域における第2ブロックの先着側(踏み込み側)と後着側(蹴り出し側)との段差量(摩耗量の差)を計測した。比較例の結果を100とする指数で評価し、数値が小さいほど段差量が少なくて耐偏摩耗性に優れることを示す。
【0042】
前述の実施形態で説明した構成を有する空気入りタイヤを実施例1,2とした。また、サイドウォール部の突起の構造を除き、実施例1と同じ構成を有する空気入りタイヤを比較例とした。比較例では、図5に示すように同一形状の突起8がサイドウォール部に一律に配列されている。この突起8は、前述の実施形態で示した第1突起21と同じものである。
【0043】
【表1】
【0044】
表1より、実施例1,2では、比較例と比べて、悪路走破性が向上しているとともに、耐偏摩耗性が向上していることが分かる。特に角度θ1を角度θ2よりも小さくした実施例2では、実施例1よりも耐偏摩耗性に優れる結果となった。
【符号の説明】
【0045】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
6 トレッドゴム
21 第1突起
21a 第1突起の外側端
21b 第1突起の内側端
22 第2突起
22a 第2突起の外側端
22b 第2突起の内側端
31 第1ブロック
32 第2ブロック
33 主溝
34 横溝
35 タイヤ最大幅位置
図1
図2
図3
図4
図5